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特許7386325ガスタービンの燃焼器、及び、ガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃焼器、及び、ガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/34 20060101AFI20231116BHJP
   F02C 7/228 20060101ALI20231116BHJP
   F02C 7/236 20060101ALI20231116BHJP
   F23R 3/18 20060101ALI20231116BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F23R3/34
F02C7/228
F02C7/236
F23R3/18
F23R3/42 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022512616
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013809
(87)【国際公開番号】W WO2021201093
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2020063062
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福場 信一
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 智志
(72)【発明者】
【氏名】木下 泰希
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健太
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡介
(72)【発明者】
【氏名】松村 嘉和
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102669(JP,A)
【文献】特開2019-020071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を供給可能な燃料ノズルをそれぞれ含み、互いに独立的に制御可能な燃料供給系統を有する第1燃料ノズルグループ及び第2燃料ノズルグループと、
前記燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスが流通可能な燃焼領域が内側に形成される筒体と、
前記第1燃料ノズルグループ及び前記第2燃料ノズルグループの一方に対応するように周方向に沿って部分的に延在し、前記筒体の内周面から径方向内側に向けて突出する第1絞り部と、
を備え、
前記第1絞り部は、軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う前記燃料ノズルの間に配置される複数の第1絞りピースを含む、ガスタービンの燃焼器。
【請求項2】
前記複数の第1絞りピースは、周方向に沿って間隔をあけて配置され、請求項1に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項3】
前記複数の第1絞りピースは、周方向に沿って延在する連結部材によって互いに連結されている、請求項2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項4】
前記複数の第1絞りピースは、前記絞りピースの径方向内側縁部から径方向外側に向けて形成された溝部を有する溝付絞りピースを含む、請求項2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項5】
前記溝付絞りピースは、前記溝部によって互いに分割された第1ピース部材及び第2ピース部材を備える、請求項4に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項6】
前記溝部は、前記溝付絞りピースの周方向に沿った略中心位置に設けられる、請求項4に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項7】
前記第1燃料ノズルグループ及び前記第2燃料ノズルグループの他方に対応するように周方向に沿って部分的に延在し、前記筒体の内周面から径方向内側に向けて突出する第2絞り部を更に備え、
前記第1絞り部及び前記第2絞り部は、互いに異なる軸方向位置に設けられる、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項8】
前記第2絞り部は、周方向に沿って間隔をあけて配置された複数の第2絞りピースを含む、請求項7に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項9】
前記複数の第2絞りピースは、軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う燃料ノズルの間に配置される、請求項8に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項10】
前記複数の第2絞りピースは、周方向に沿って延在する連結部材によって互いに連結されている、請求項8に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項11】
前記複数の第2絞りピースは、前記第2絞りピースの径方向内側縁部から径方向外側に向けて形成された溝部を有する溝付絞りピースを含む、請求項8に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項12】
前記溝付絞りピースは、前記溝部によって互いに分割された第1ピース部材及び第2ピース部材を備える、請求項11に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項13】
前記溝部は、前記溝付絞りピースの周方向に沿った略中心位置に設けられる、請求項11に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項14】
前記第1燃料ノズルグループに含まれる前記燃料ノズルは、部分負荷運転時に、前記第2燃料ノズルグループに含まれる前記燃料ノズルより燃料噴射量が多く制御され、
前記第1絞り部は前記第2燃料ノズルグループに対応するように設けられ、
前記第2絞り部は前記第1燃料ノズルグループに対応するように設けられ、
前記第1絞り部は、前記第2絞り部より上流側に設けられる、請求項7に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項15】
前記第1絞り部及び前記第2絞り部は、前記筒体の上流側端部からの距離と前記燃焼ガスに含まれるCOの酸化速度との比が等しくなるように設けられる、請求項7に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の燃焼器を備える、ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンの燃焼器、及び、ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンに用いられる燃焼器は、例えば、燃料を供給可能な燃料ノズルと、燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスが流通可能な燃焼領域が内側に形成される筒体と、を備える。燃料ノズルから供給された燃料は、燃焼によって燃料ガスとなり、筒体の燃焼領域を介して下流側に設けられるタービンを駆動する。
【0003】
この種のガスタービンの燃焼器では、筒体の内壁面の近傍における燃焼ガスの温度が中心部に比べて低くなることで、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素(CO)が二酸化炭素(CO)に化学反応するタイミングが遅れ、一酸化炭素の発生が増加することがある。このような課題に対して、特許文献1では、燃焼器が有する筒体の内壁面に絞り部材を設けることにより、内壁面の近傍における燃焼ガスを中心部に向けて流すことで、高温の燃焼ガスと混合して燃焼を促進し、一酸化炭素の発生を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/058931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでガスタービンの燃焼器では、定格運転時より運転負荷が小さな部分負荷運転時に、燃料の燃焼による発熱と圧力変動とが相互作用することで燃焼振動が発生することがある。このような燃焼振動を防ぐために、例えば、ガスタービンの燃焼器が有する複数の燃料ノズルを、燃料噴射量が大きなグループと、燃料噴射量が小さなグループとに分類し、両者を非対称に配置することが考えられる。しかしながら、燃料噴射量が小さなグループに属する燃料ノズルでは、燃焼ガスの温度が比較的低くなるため、噴射された燃料によって形成される火炎の形成領域が下流側まで拡大し、一酸化炭素の排出量が増加してしまう。
【0006】
本開示の少なくとも一態様は上述の事情に鑑みなされたものであり、部分負荷運転時に燃焼振動を防ぎながら、一酸化炭素の発生を好適に抑制可能なガスタービンの燃焼器、及び、ガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るガスタービンの燃焼器は、上記課題を解決するために、
燃料を供給可能な燃料ノズルをそれぞれ含み、互いに独立的に制御可能な燃料供給系統を有する第1燃料ノズルグループ及び第2燃料ノズルグループと、
前記燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスが流通可能な燃焼領域が内側に形成される筒体と、
前記第1燃料ノズルグループ及び前記第2燃料ノズルグループの一方に対応するように周方向に沿って部分的に延在し、前記筒体の内周面から径方向内側に向けて突出する第1絞り部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一態様によれば、部分負荷運転時に燃焼振動を防ぎながら、一酸化炭素の発生を好適に抑制可能なガスタービンの燃焼器、及び、ガスタービンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの全体構成図である。
図2図1の燃焼器を周辺構成とともに示す断面図である。
図3図2の領域Lの拡大図である。
図4図3の複数の燃料ノズルを燃焼器軸線に沿って下流側から示す模式図である。
図5】比較例に係る燃焼器において、部分負荷運転時に筒体内に形成される火炎を模式的に示す断面図である。
図6図5の破線上の温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示す図である。
図7】本開示の幾つかの実施形態に係る燃焼器において、部分負荷運転時に筒体内に形成される火炎を模式的に示す断面図である。
図8図7の第1絞り部を側方から示す拡大図である。
図9図7の第1絞り部を単体で抽出して示す斜視図である。
図10図7に対応する温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示す図である。
図11】溝付絞りピースを含む第1絞り部の一例を示す図である。
図12図11の溝付絞りピースを径方向内側から燃焼ガスの流れとともに示す図である。
図13図7の変形例である。
図14図13の第1絞り部及び第2絞り部を透過的に示す筒体の側面図である。
図15図13の複数の燃料ノズルを燃焼器軸線に沿って下流側から示す模式図である。
図16図13に対応する温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示す図である。
図17】溝付絞りピースを含む第2絞り部の一例を示す図である。
図18図17の溝付絞りピースを径方向内側から燃焼ガスの流れとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
図1は本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン1の全体構成図である。ガスタービン1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン5と、を備える。
【0012】
圧縮機2は、軸線Asに沿って延びる圧縮機ロータ6と、圧縮機ロータ6を外周側から覆う圧縮機ケーシング7と、を有する。圧縮機ロータ6は軸線Asを中心とする柱状をなしており、その外周面には圧縮機動翼8が取り付けられている。圧縮機動翼8は、軸線Asに対する周方向に間隔をあけて複数配列されることで圧縮機動翼段9を構成する。圧縮機ロータ6上には、このような圧縮機動翼段9が、軸線As方向に間隔をあけて複数列にわたって設けられている。
【0013】
圧縮機ケーシング7の内周側には、圧縮機動翼8に対して軸線As方向に互い違いになるように複数列にわたって配列された圧縮機静翼段11が設けられている。圧縮機静翼段11は、圧縮機動翼段9に対応するように、軸線Asの周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼10を含んで構成される。
【0014】
燃焼器3は、本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器であり、圧縮機2によって生成された高圧空気に対して、燃料を混合して燃焼させることで高温高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、後述するタービン5に供給されることで、タービン5を駆動する。尚、燃焼器3の構成については詳しく後述する。
【0015】
タービン5は、燃焼器3によって生成された燃焼ガスによって駆動されるガスタービンであり、軸線Asに沿って延びるタービンロータ12と、タービンロータ12を外周側から覆うタービンケーシング13と、を有する。タービンロータ12は、軸線Asを中心とする柱状をなしており、その外周面にはタービン動翼14が取り付けられている。タービン動翼14は、軸線Asに対する周方向に間隔をあけて複数配列されることでタービン動翼段15を形成する。タービンロータ12上には、このようなタービン動翼段15が、軸線As方向に間隔をあけて複数列にわたって設けられている。
【0016】
タービンケーシング13の内周側には、タービン動翼14に対して軸線As方向に互い違いになるように複数列にわたって配列されたタービン静翼段17が設けられている。タービン静翼段17は、軸線Asの周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼16を含んで構成される。
【0017】
圧縮機ロータ6及びタービンロータ12は、同軸(軸線As)上に位置して互いに連結されてガスタービンロータ18を形成する。ガスタービンロータ18の軸端には、例えば発電機20が接続される。また、圧縮機ケーシング7及びタービンケーシング13は、互いに連結されてガスタービンケーシング19を構成する。
【0018】
上記構成を有するガスタービン1では、圧縮機ロータ6が回転することで、圧縮機2が高圧空気を生成する。高圧空気は燃焼器3に導かれて燃料とともに燃焼されることにより、高温高圧の燃焼ガスが生成される。続いて、燃焼ガスがタービン5に導かれると、燃焼ガスがタービン動翼14及びタービン静翼16に順次衝突することにより、タービンロータ12(ガスタービンロータ18)に対して、運動エネルギーが与えられる。ガスタービンロータ18は、このように与えられた運動エネルギーによって、軸線As回りに回転される。ガスタービンロータ18の回転は、ガスタービンロータ18の軸端に連結された発電機20に伝達され、発電等に用いられる。
【0019】
図2図1の燃焼器3を周辺構成とともに示す断面図である。燃焼器3は、ガスタービンケーシング19に支持される外筒21と、外筒21に支持され、燃料を供給可能な燃料ノズル22と、燃料ノズル22を外側から覆うスワラ支持筒23と、スワラ支持筒23の下流側に接続される筒体24(燃焼筒)と、を有する。
【0020】
燃料ノズル22から噴射された燃料は、スワラ支持筒内部で圧縮空気と混合され、筒体24内に供給される。スワラ支持筒23は、燃焼器軸線Acを中心とする円筒状を有する。燃焼器軸線Acは、軸線As(図1を参照)に対して交差する方向に延びている。軸線Asと燃焼器軸線Acとの交差角度は、鋭角(90度未満)に設定されている。スワラ支持筒23の下流側の端部には筒体24が接続されている。燃料ノズル22から供給された燃料は、筒体24内の燃焼領域で、圧縮機2から供給される圧縮空気と混合された後、燃焼されることで、燃焼ガスが生成される。燃焼ガスは筒体24を介してタービン5に供給される。
【0021】
尚、以降の説明で用いられる上流、下流、上流側、下流側等の表現は、筒体24の内側を流れる燃焼ガスの流れ方向に基づく。つまり、上記の筒体24を基準として燃料ノズル22が設けられる側を上流側と称し、燃料ノズル22を基準として筒体24が設けられる側を下流側と称する。また、燃焼ガスの流通方向とは、燃焼器軸線Ac方向に沿う方向を意味する。更に、スワラ支持筒23内と筒体24内とを流れる燃焼ガスの流れを適宜「主流」と称する。
【0022】
図3図2の領域Lの拡大図であり、図4図3の複数の燃料ノズル22を燃焼器軸線Acに沿って下流側から示す模式図である。燃焼器3が備える複数の燃料ノズル22は、互いに独立的に制御可能な複数の燃料ノズルグループを含む。具体的には、複数の燃料ノズル22は、第1燃料供給系統30Aを有する第1燃料ノズルグループ32Aと、第2燃料供給系統30Bを有する第2燃料ノズルグループ32Bを含む。図3及び図4では、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22を符号22Aで示し、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22を符号22Bで示している。
【0023】
また図3では、図示をわかりやすくするために、第1燃料ノズルグループ32Aに属する1つの燃料ノズル22に接続された第1燃料供給系統30Aと、第2燃料ノズルグループ32Bに属する1つの燃料ノズル22に接続された第2燃料供給系統30Bとが、代表的に示されている(図3で図示されていない他の燃料ノズル22は、特段の記載がない限りにおいて、図3で図示しあれた燃料ノズル22と同構成を有する)。
【0024】
第1燃料供給系統30Aは、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aに接続される第1燃料供給路34Aと、第1燃料供給路34Aに設けられた第1燃料流量調整弁36Aと、を有する。第1燃料流量調整弁36Aは開度を調整することで、第1燃料供給路34Aを介して第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aに供給される燃料の流量を調整可能な弁装置である。第2燃料供給系統30Bは、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bに接続される第2燃料供給路34Bと、第2燃料供給路34Bに設けられた第2燃料流量調整弁36Bと、を有する。第2燃料流量調整弁36Bは開度を調整することで、第2燃料供給路34Bを介して第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bに供給される燃料の流量を調整可能な弁装置である。
【0025】
第1燃料流量調整弁36A及び第2燃料流量調整弁36Bの開度は、不図示のコントロールユニットからの制御信号に応じて、互いに独立的に制御可能である。これにより、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22A、及び、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bは、燃料供給量が独立的に制御可能に構成される。これにより、例えば、ガスタービン1の出力が定格出力より小さくなる部分負荷運転時には、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aの燃料供給量を、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bの燃料供給量を互いに異ならせることで、部分負荷運転時に生じやすい燃焼振動を防ぐことができる。本実施形態では、部分負荷運転時には、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aの燃料供給量は、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bの燃料供給量より多くなるように制御される。
【0026】
第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aの数と、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bの数は、互いに異なるように設定されてもよい。図4に示すように、本実施形態の燃焼器3は全部で8つの燃料ノズル22を備えており、8つの燃料ノズル22のうち5つが第1燃料ノズルグループ32Aに属し、残りの3つが第2燃料ノズルグループ32Bに属する。部分負荷運転時には、前述したように、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aの燃料供給量、及び、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bの燃料供給量が互いに異なるように制御されるが、このように第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aの数と、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bの数を互いに異ならせることで、より効果的に燃焼振動を防止することができる。
【0027】
ここで本実施形態に係る燃焼器3は、燃料ノズル22の下流側に位置する筒体24の内周面に後述の第1絞り部40が設けられるが、まず比較例として、第1絞り部40を有さない比較例について説明する。図5は比較例に係る燃焼器3´において、部分負荷運転時に筒体24内に形成される火炎を模式的に示す断面図であり、図6図5の破線上の温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示す図である(図6の上方は図5の破線Aに沿った温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示し、図6の下方は図5の破線Bに沿った温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示す)。
【0028】
筒体24の内部には、燃焼領域より上流側に配置された燃料ノズル22から供給される燃料の燃焼によって火炎が形成される。図5では、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aによって形成される第1火炎38A´と、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bによって形成される第2火炎38B´とが、それぞれ示されている。部分負荷運転時には、前述したように、燃焼振動の発生を防止するために、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aの燃料供給量が、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bの燃料供給量より多くなるように制御される。そのため第1火炎38A´は、燃焼ガスの温度が比較的高く、筒体24の上流側端部から距離L1´にわたって形成される。また燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度は、距離L1´に対応する筒体24の比較的上流側でピークを示し、下流側に向かうに従って減少することで、筒体24の下流側端部Lendでは基準値を満足している。これは、第1燃料ノズルグループ32Aに対応する第1火炎38A´では燃焼ガスの温度が十分に高いため、燃焼で生じた一酸化炭素が筒体24の燃焼領域を通過する際に、十分に酸化されることで二酸化炭素に化学反応し、消費されていることを示している。
【0029】
一方で第2火炎38B´は、燃焼ガスの温度が比較的低く、第1火炎38A´より下流側に至るまで距離L2´の広い範囲にわたって形成されている(L2´>L1´)。また燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度は、距離L2´に対応する筒体24の比較的下流側でピークを示し、筒体24の下流側端部Lendにおいても基準値を超える高い値を示している。そのため、下流側端部Lendにおける一酸化炭素の濃度を基準値以下に抑えるためには、部分負荷運転時の負荷を比較的大きくせざるを得ず、良好なターンダウン性能(低負荷運転性能)を得ることが難しい。
【0030】
このような課題は以下に説明するように、燃料ノズル22の下流側に位置する筒体24の内周面に第1絞り部40が設けられることによって解消可能である。図7は本開示の幾つかの実施形態に係る燃焼器3において、部分負荷運転時に筒体24内に形成される火炎を模式的に示す断面図であり、図8図7の第1絞り部40を側方から示す拡大図であり、図9図7の第1絞り部40を単体で抽出して示す斜視図であり、図10図7に対応する温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示す図である。
【0031】
燃焼器3は、第1燃料ノズルグループ32A及び第2燃料ノズルグループ32Bの一方に対応するように、周方向に沿って延在する第1絞り部40を有する。本実施形態では、第1絞り部40は、部分負荷運転時に燃料供給量が少なく制御される第2燃料ノズルグループ32Bに対応するように設けられる。図4に示す例では、燃焼器軸線Acに沿って下流側から見た場合に、第2燃料ノズルグループ32Bに属する各燃料ノズル22Bの配置領域に重なる範囲に、第1絞り部40が設けられている。これにより、第2燃料ノズルグループ32Bに属する各燃料ノズル22Bから供給される燃料の燃焼によって生じる燃焼ガスの少なくとも一部が、第1絞り部40に当たるように構成されている。
【0032】
尚、筒体24の内部を流れる燃焼ガスが燃焼器軸線Ac周りに旋回成分を有する場合には、第2燃料ノズルグループ32Bに属する各燃料ノズル22Bの配置領域に対して、第1絞り部40の範囲が所定の位相差を有して設けられてもよい。
【0033】
第1絞り部40は、筒体24の内周面から径方向内側に向けて突出するように形成される。具体的に説明すると、図8に示すように、第1絞り部40は、筒体24の内部を上流側から下流側に向けて流れる燃焼ガスを受けるように、燃焼器軸線Acに対して斜めに形成された受け面42を有する。このような燃焼器3は第1絞り部40を有することにより、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bからの燃料による燃焼ガスが、第1絞り部40の受け面42によって、温度が比較的高い筒体24の径方向内側に向けて偏向される。
【0034】
これにより、図10に示すように、第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bからの燃料による燃焼ガスの温度は、第1絞り部40に対応する位置L2において上昇する。これにより、図5及び図6を参照して前述した比較例の場合に比べて第2火炎38Bの形成範囲が減少し(上流側に移動し)、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の消費が促進される。これにより、筒体24の下流側端部Lendにおける一酸化炭素の濃度が減少する。その結果、下流側端部Lendにおける一酸化炭素の濃度を基準値以下に抑えながら運転可能な負荷領域が拡大するため、比較例に比べてターンダウン性能(低負荷運転性能)を向上することができる。
【0035】
また第1絞り部40は、図4及び図9に示すように、周方向に沿って部分的に延在する。すなわち、第1絞り部40は非対称的な構成を有するため、部分負荷運転時に生じやすい燃焼振動を好適に抑制できる。
【0036】
また第1絞り部40は、周方向に沿って間隔をあけて配置された複数の絞りピース40aを含んでもよい。第1絞り部40は筒体24の内部を流れる燃焼ガスを受けることによって温度が上昇するため、冷却用媒体として冷却空気44として供給される(図7を参照)。ここで冷却空気44は、圧縮機2から供給される圧縮空気の一部が利用されているため、冷却空気44が増加すると、燃料ノズル22からの燃料と混合することによって燃焼ガスの生成に用いられる圧縮空気が減少し、NOx排出量が増加するおそれがある。そこで本実施形態では、第1絞り部40を複数の絞りピース40aに分割して構成することで、第1絞り部40が有する熱容量を低下させ、少ない冷却空気44で第1絞り部40の温度上昇を抑制することができる。これにより、燃料ノズル22からの燃料と混合することによって燃焼ガスの生成に用いられる圧縮空気を十分に確保し、NOx排出量を抑えることができる。
【0037】
これらの複数の絞りピース40aは、図4のように軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う燃料ノズル22Bの間に配置される。このような位置は、燃料ノズル22Bに重なる位置に比べて燃焼ガスの温度が低くなりやすいことから、第1絞り部40によって径方向内側の高温ガスおよび燃料ノズル中央部の高温ガスを絞り下流に流すことで、燃焼ガスの温度上昇を効果的に促進できる。
【0038】
また、これらの複数の絞りピース40aは、図9に示すように、周方向に沿って延在する連結部材40bによって互いに連結されることで一体的に構成されていてもよい。これにより、筒体24の内周面に対する第1絞り部40の取り付け作業が容易になる。
【0039】
ここで第1絞り部40を構成する複数の絞りピース40aは、溝部41を有する溝付絞りピース45を含んでいてもよい。図11は溝付絞りピース45を含む第1絞り部40の一例を示す図であり、図12図11の溝付絞りピース45を径方向内側から燃焼ガスの流れとともに示す図である。
【0040】
尚、図11及び図12では、第1絞り部40が互いに独立した部材(別部材)である複数の絞りピース40aから構成されている場合を例示しているが、図9のように複数の絞りピース40aは連結部材40bによって連結されていてもよい。また図11では、第1絞り部40が備える複数の絞りピース40aのうち一部が溝付絞りピース45として構成された場合を示しているが、複数の絞りピース40aにおける溝付絞りピース45の割合は任意でよい。また全ての絞りピース40aを溝付絞りピース45としてもよいし、全ての絞りピース45を前述の実施形態のように溝なし絞りピースとしてもよい。
【0041】
溝付絞りピース45は、径方向内側縁部43から径方向外側に向けて延在するように形成された溝部41を有する。本実施形態では、溝部41は径方向内側縁部43から径方向外側縁部47に至るまで延在することで、溝付絞りピース45が第1ピース部材45a及び第2ピース部材45bに分割されている。このように溝付絞りピース45を小さな部材の組み合わせとして構成することで、筒体への取付を容易に行うことができる。
【0042】
尚、溝部41は、径方向内側縁部43から径方向外側に向けて部分的に切りかかれた(すなわち、径方向外側縁部47まで到達しない)凹部として構成されていてもよい。この場合、溝付絞りピース45は、第1ピース部材45a及び第2ピース部材45bは部分的に連結された構成となる。
【0043】
第1絞り部40が上流側から受ける燃焼ガスは、溝付絞りピース45の溝部41を通過すると、図12に示すように、溝付絞りピース45の下流側に渦46を形成する。この渦46は、筒体24の軸方向に垂直な断面において、面内方向で旋回するように形成される。このような渦46によって筒体24の内部において燃焼ガスが攪拌され、燃焼を促進することができる。
【0044】
尚、溝部41の形状やサイズは任意に設定可能であるが、溝部41が大きすぎると前述した第1絞り部40による燃焼ガスの径方向への偏向による燃焼促進効果が減少してしまい、逆に溝部41が小さすぎると溝部41によって形成される渦46による燃焼促進効果が減少してしまうため、これらのバランスを考慮して決定するとよい。また溝部41の大きさは、複数の燃料ノズル22の周方向における配置間隔(ピッチ)に対して十分に小さいことが好ましく、例えば絞り高さ以下に設定されるとよい。
【0045】
尚、溝部41は、溝付絞りピース45の周方向に沿った略中心位置に設けられる。このよう溝部41の位置を設定することで燃焼を促進するための渦46を効果的に生じさせることができる。
【0046】
図13図7の変形例であり、図14図13の第1絞り部40及び第2絞り部50を透過的に示す筒体24の側面図であり、図15図13の複数の燃料ノズル22を燃焼器軸線Acに沿って下流側から示す模式図であり、図16図13に対応する温度及び一酸化炭素の濃度の分布を示す図である。
【0047】
本変形例に係る燃焼器3は、前述の第1絞り部40に加えて、第2絞り部50を更に備える。第2絞り部50は、第1燃料ノズルグループ32A及び第2燃料ノズルグループ32Bの他方に対応するように、周方向に沿って延在するように設けられる。本変形例では、第1絞り部40が第2燃料ノズルグループ32Bに対応して設けられているため、第2絞り部50は第1燃料ノズルグループ32Aに対応して設けられている。つまり、燃焼器3の部分負荷運転時に、燃料噴射量が少なく制御される第2燃料ノズルグループ32Bに対応する第1絞り部40は、燃料噴射量が多く制御される第1燃料ノズルグループ32Aに対応する第2絞り部50より上流側に設けられる。
【0048】
第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22Bは、第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22Aに比べて燃料噴射量が少ないため、図13に示すように、第2火炎の形成範囲が広範囲に及び、燃焼温度も比較的低くなるため、第1燃料ノズルグループ32A側に比べて一酸化炭素が発生しやすい。そのため、第2燃料ノズルグループ32Bに対応する第1絞り部40を、第1燃料ノズルグループ32Aに対応する第2絞り部50より上流側に配置することで、燃料ノズルに近い位置で内周面近傍の燃焼ガスを中央部に向けて流すことができる。これにより、第2燃料ノズルグループ32Bにおける燃焼ガスの燃焼をより促進し、燃焼ガスから排出される一酸化炭素を効果的に低減できる。
【0049】
第2絞り部50は、図8を参照して前述した第1絞り部40と略同様の形状を有しており、筒体24の内周面から径方向内側に向けて突出するように設けられる。これにより、第2絞り部50が設けられた内周面の近傍における燃焼ガスが、温度が比較的高くなる筒体24の径方向内側に向けて流される。その結果、他方側の第1燃料ノズルグループ32Aに対応する燃焼ガスについても燃焼を促進し、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素をより効果的に低減できる。図16では、第2絞り部50が設けられた距離L3の近傍において第1燃料ノズルグループ32Aにおける燃焼ガス温度が更に上昇するとともに、燃焼ガスに含まれる一酸化濃度がより低減されていることが示されている(尚、図16では図示をわかりやすく示すために、距離L1,L1´、L2、L2´、L3の相対的位置関係を他の図面から適宜変更している)。
【0050】
このような第2絞り部50は、第1絞り部40と同様に筒体24の内周面に周方向に沿って部分的に延在するが、図13及び図14に示すように、第1絞り部40とは互いに異なる軸方向位置に設けられることにより、非対称的な構成を有する。そのため、第1絞り部40に加えて第2絞り部50を追加的に設けた場合においても、部分負荷運転時の燃焼振動を効果的に抑制できる。
【0051】
第1絞り部40及び第2絞り部50は、筒体24の下流側端部Lendまでの距離と燃焼ガスに含まれるCOの酸化速度との比が等しくなるように設けられる。具体的に説明すると、筒体24の上流側端部から第1絞り部40までの距離L2、第1絞り部40に対応する第2燃料ノズルグループ32Bに属する燃料ノズル22BにおけるCOの酸化速度V2、筒体24の上流側端部から第2絞り部50までの距離L3、及び、第2絞り部50に対応する第1燃料ノズルグループ32Aに属する燃料ノズル22AにおけるCOの酸化速度V1は、次式を満たすように設計される(ここで筒体24の全長をLとすると、L2´´=L-L2、L3´=L-L3である)。
L2´´/V1=L3´/V2
第1絞り部40及び第2絞り部50をこのような位置関係に配置することで、第1燃料ノズルグループ32A及び第2燃料ノズルグループ32Bに属する各燃料ノズル22からの燃焼ガスに含まれる一酸化炭素を効果的に低減できる。
【0052】
また第2絞り部50は、第1絞り部40と同様に、周方向に沿って間隔をあけて配置された複数の絞りピース50aを含んでもよい。このように第2絞り部50を複数の絞りピース50aに分割して構成することで、第2絞り部50が有する熱容量を低下させ、少ない冷却空気44で第2絞り部50の温度上昇を抑制することができる。これにより、第1燃料ノズルグループ32A側においても、燃料ノズル22からの燃料と混合することによって燃焼ガスの生成に用いられる圧縮空気を十分に確保し、NOx排出量を抑えることができる。
【0053】
これらの複数の絞りピース50aは、図15のように軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う燃料ノズル22Aの間に配置される。このような位置は、燃料ノズル22Aに重なる位置に比べて燃焼ガスの温度が低くなりやすいことから、第2絞り部50によって燃焼ガスを径方向内側に流すことで、燃焼ガスの温度上昇を効果的に促進できる。
【0054】
また、これらの複数の絞りピース50aもまた、図15に示すように、周方向に沿って延在する連結部材50bによって互いに連結されることで一体的に構成されてもよい。これにより、筒体24の内周面に対する第2絞り部50の取り付け作業が容易になる。
【0055】
ここで第2絞り部50を構成する複数の絞りピース50aは、溝部51を有する溝付絞りピース55を含んでいてもよい。図17は溝付絞りピース55を含む第2絞り部50の一例を示す図であり、図18図17の溝付絞りピース55を径方向内側から燃焼ガスの流れとともに示す図である。
【0056】
尚、図17及び図18では、第2絞り部50が互いに独立した部材(別部材)である複数の絞りピース50aから構成されている場合を例示しているが、図15のように複数の絞りピース50aは連結部材50bによって連結されていてもよい。また図17では、第2絞り部50が備える複数の絞りピース50aのうち一部が溝付絞りピース55として構成された場合を示しているが、複数の絞りピース50aにおける溝付絞りピース55の割合は任意でよい。また全ての絞りピース50aを溝付絞りピース55としてもよいし、全ての絞りピース55を前述の実施形態のように溝なし絞りピースとしてもよい。
【0057】
溝付絞りピース55は、径方向内側縁部53から径方向外側に向けて延在するように形成された溝部51を有する。本実施形態では、溝部51は径方向内側縁部53から径方向外側縁部57に至るまで延在することで、溝付絞りピース55が第1ピース部材55a及び第2ピース部材55bに分割されている。このように溝付絞りピース55を小さな部材の組み合わせとして構成することで、筒体への取付を容易に行うことができる。
【0058】
尚、溝部51は、径方向内側縁部53から径方向外側に向けて部分的に切りかかれた(すなわち、径方向外側縁部57まで到達しない)凹部として構成されていてもよい。この場合、溝付絞りピース55は、第1ピース部材55a及び第2ピース部材55bは部分的に連結された構成となる。
【0059】
第2絞り部50が上流側から受ける燃焼ガスは、溝付絞りピース55の溝部51を通過すると、図18に示すように、溝付絞りピース55の下流側に渦56を形成する。この渦56は、筒体24の軸方向に垂直な断面において、面内方向で旋回するように形成される。このような渦56によって筒体24の内部において燃焼ガスが攪拌され、燃焼を促進することができる。
【0060】
尚、溝部51の形状やサイズは任意に設定可能であるが、溝部51が大きすぎると前述した第2絞り部50による燃焼ガスの径方向への偏向による燃焼促進効果が減少してしまい、逆に溝部51が小さすぎると溝部51によって形成される渦56による燃焼促進効果が減少してしまうため、これらのバランスを考慮して決定するとよい。また溝部51の大きさは、複数の燃料ノズル22の周方向における配置間隔(ピッチ)に対して十分に小さいことが好ましく、例えば絞り高さ以下に設定されるとよい。
【0061】
尚、溝部51は、溝付絞りピース55の周方向に沿った略中心位置に設けられる。このよう溝部51の位置を設定することで燃焼を促進するための渦56を効果的に生じさせることができる。
【0062】
以上説明したように上述の各実施形態によれば、部分負荷運転時に燃焼振動を防ぎながら、一酸化炭素の発生を好適に抑制可能なガスタービン1の燃焼器3を提供できる。
【0063】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0064】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0065】
(1)一態様に係るガスタービンの燃焼器は、
燃料を供給可能な燃料ノズルをそれぞれ含み、互いに独立的に制御可能な燃料供給系統を有する第1燃料ノズルグループ及び第2燃料ノズルグループと、
前記燃料の燃焼によって生成された燃焼ガスが流通可能な燃焼領域が内側に形成される筒体と、
前記第1燃料ノズルグループ及び前記第2燃料ノズルグループの一方に対応するように周方向に沿って部分的に延在し、前記筒体の内周面から径方向内側に向けて突出する第1絞り部と、
を備える。
【0066】
上記(1)の態様によれば、筒体の内周面上には、第1燃料ノズルグループ及び第2燃料ノズルグループの一方に対応するように、径方向内側に向けて突出する第1絞り部が設けられる。これにより、第1絞り部が設けられた内周面の近傍における燃焼ガスは、温度が比較的高い筒体の径方向内側に向けて偏向されることで燃焼が促進され、一酸化炭素が効果的に低減される。また第1絞り部は周方向に沿って部分的に延在する非対称な構成を有するため、部分負荷運転時においても燃焼振動が生じにくい。このようにして、部分負荷運転時に燃焼振動を防ぎながら、一酸化炭素の発生を好適に抑制可能なガスタービンの燃焼器を実現できる。
【0067】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第1絞り部は、周方向に沿って間隔をあけて配置された複数の絞りピースを含む。
【0068】
上記(2)の態様によれば、第1絞り部は複数の絞りピースを含んで構成される。第1絞り部は燃焼ガスを偏向する際に、燃焼ガスから受ける熱量による温度上昇を抑制するために、冷却空気が供給されることがある。本態様では、第1絞り部を複数の絞りピースに分割して構成することで、第1絞り部が有する熱容量を低下させ、少ない冷却空気で温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0069】
(3)他の態様では、上記(2)の態様において、
前記複数の絞りピースは、軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う前記燃料ノズルの間に配置される。
【0070】
上記(3)の態様によれば、第1絞り部を構成する複数の絞りピースは、軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う燃料ノズルの間に配置される。このような位置は、燃料ノズルに重なる位置に比べて比較的温度が低いことから、第1絞り部における温度上昇を抑制することに効果的である。
【0071】
(4)他の態様では、上記(2)又は(3)の態様において、
前記複数の絞りピースは、周方向に沿って延在する連結部材によって互いに連結されている。
【0072】
上記(4)の態様によれば、第1絞り部を構成する複数の絞りピースは周方向に沿って延在する連結部材によって互いに連結されることで一体的に構成される。これにより、筒体の内周面に対する第1絞り部の取り付け作業が容易になる。
【0073】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記複数の絞りピースは、前記絞りピースの径方向内側縁部から径方向外側に向けて形成された溝部を有する溝付絞りピースを含む。
【0074】
上記(5)の態様によれば、第1絞り部材が備える複数の絞りピースの少なくとも一部は溝付絞りピースとして構成される。溝付絞りピースは、径方向内側縁部から径方向外側に向けて形成された溝部を有する。溝部は、絞りピースが受ける燃焼ガスが通過する際に、絞りピースの下流側に渦を形成することにより、燃焼を効果的に促進できる。
【0075】
(6)他の態様では、上記(5)の態様において、
前記溝付絞りピースは、前記溝部によって互いに分割された第1ピース部材及び第2ピース部材を備える。
【0076】
上記(6)の態様によれば、溝付絞りピースは、第1ピース部材と第2ピース部材とが溝部によって互いに分割された構成を有する。このように溝付絞りピースを小さな部材の組み合わせとして構成することで、筒体への取付を容易に行うことができる。また第1ピース部材と第2ピース部材との間に十分な溝部を形成することができるため、溝部によって形成される渦を大きくすることができ、より燃焼を促進できる。
【0077】
(7)他の態様では、上記(5)又は(6)の態様において、
前記溝部は、前記溝付絞りピースの周方向に沿った略中心位置に設けられる。
【0078】
上記(7)の態様によれば、溝付絞りピースでは、溝付絞りピースの周方向に沿った略中心位置に溝部を設けることにより、燃焼を促進するための渦を効果的に生じさせることができる。
【0079】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記第1燃料ノズルグループ及び前記第2燃料ノズルグループの他方に対応するように周方向に沿って部分的に延在し、前記筒体の内周面から径方向内側に向けて突出する第2絞り部を更に備え、
前記第1絞り部及び前記第2絞り部は、互いに異なる軸方向位置に設けられる。
【0080】
上記(8)の態様によれば、前述の第1絞り部に加えて、第1燃料ノズルグループ及び第2燃料ノズルグループの他方に対応する第2絞り部が設けられる。第2絞り部は、第1絞り部と同様に、径方向内側に向けて突出するように構成されることで、第2絞り部が設けられた筒体の内周面の近傍において、燃焼ガスを径方向内側に偏向する。これにより、他方側においても燃焼ガスの燃焼が促進され、一酸化炭素を効果的に低減できる。また第2絞り部は、第1絞り部と互いに異なる軸方向位置において、周方向に沿って部分的に延在する非対称な構成を有する。そのため、第1絞り部に加えて第2絞り部を追加的に設けた場合においても、部分負荷運転時の燃焼振動を効果的に抑制できる。
【0081】
(9)他の態様では、上記(8)の態様において、
前記第2絞り部は、周方向に沿って間隔をあけて配置された複数の絞りピースを含む。
【0082】
上記(9)の態様によれば、第2絞り部は複数の絞りピースを含んで構成される。第2絞り部は、前述の第1絞り部と同様に、筒体の内部を流れる燃焼ガスを受けることによる温度上昇を抑制するために、冷却空気が供給されることがある。本態様では、第2絞り部を複数の絞りピースに分割して構成することで、第2絞り部が有する熱容量を低下させ、少ない冷却空気で温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0083】
(10)他の態様では、上記(9)の態様において、
前記複数の絞りピースは、軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う燃料ノズルの間に配置される。
【0084】
上記(10)の態様によれば、第2絞り部を構成する複数の絞りピースもまた、前述の第1絞り部と同様に、軸方向から見て、周方向に沿って隣り合う燃料ノズルの間に配置される。このような位置は、燃料ノズルに重なる位置に比べて比較的温度が低いことから、第2絞り部における温度上昇を抑制することに効果的である。
【0085】
(11)他の態様では、上記(9)又は(10)の態様において、
前記複数の絞りピースは、周方向に沿って延在する連結部材によって互いに連結されている。
【0086】
上記(11)の態様によれば、第2絞り部を構成する複数の絞りピースもまた、前述の第1絞り部と同様に、周方向に沿って延在する連結部材によって互いに連結されることで一体的に構成される。これにより、筒体の内周面に対する第2絞り部の取り付け作業が容易になる。
【0087】
(12)他の態様では、上記(9)から(11)のいずれか一態様において、
前記複数の絞りピースは、前記絞りピースの径方向内側縁部から径方向外側に向けて形成された溝部を有する溝付絞りピースを含む。
【0088】
上記(12)の態様によれば、第2絞り部材が備える複数の絞りピースの少なくとも一部は溝付絞りピースとして構成される。溝付絞りピースは、径方向内側縁部から径方向外側に向けて形成された溝部を有する。溝部は、絞りピースが受ける燃焼ガスが通過する際に、絞りピースの下流側に渦を形成することにより、燃焼を効果的に促進できる。
【0089】
(13)他の態様では、上記(12)の態様において、
前記溝付絞りピースは、前記溝部によって互いに分割された第1ピース部材及び第2ピース部材を備える。
【0090】
上記(13)の態様によれば、溝付絞りピースは、第1ピース部材と第2ピース部材とが溝部によって互いに分割された構成を有する。このように溝付絞りピースを小さな部材の組み合わせとして構成することで、筒体への取付を容易に行うことができる。また第1ピース部材と第2ピース部材との間に十分な溝部を形成することができるため、溝部によって形成される渦を大きくすることができ、より燃焼を促進できる。
【0091】
(14)他の態様では、上記(12)又は(13)の態様において、
前記溝部は、前記溝付絞りピースの周方向に沿った略中心位置に設けられる。
【0092】
上記(14)の態様によれば、溝付絞りピースでは、溝付絞りピースの周方向に沿った略中心位置に溝部を設けることにより、燃焼を促進するための渦を効果的に生じさせることができる。
【0093】
(15)他の態様では、上記(8)から(14)のいずれか一態様において、
前記第1燃料ノズルグループに含まれる前記燃料ノズルは、部分負荷運転時に、前記第2燃料ノズルグループに含まれる前記燃料ノズルより燃料噴射量が多く制御され、
前記第1絞り部は前記第2燃料ノズルグループに対応するように設けられ、
前記第2絞り部は前記第1燃料ノズルグループに対応するように設けられ、
前記第1絞り部は、前記第2絞り部より上流側に設けられる。
【0094】
上記(15)の態様によれば、第2燃料ノズルグループに対応する第1絞り部は、第1燃料ノズルグループに対応する第2絞り部より上流側に設けられる。第2燃料ノズルグループに属する燃料ノズルは、第1燃料ノズルグループに属する燃料ノズルに比べて燃料噴射量が少ないため、火炎の形成範囲が広範囲にわたり、燃焼温度も比較的低くなるため、第1燃料ノズルグループに属する燃焼ノズルに比べて一酸化炭素が発生しやすい。そのため、第2燃料ノズルグループに対応する第1絞り部を、第1燃料ノズルグループに対応する第2絞り部より上流側に配置することで、燃料ノズルに近い位置で内周面近傍の燃焼ガスを中央部に偏向して燃焼を促進し、一酸化炭素を低減できる。
【0095】
(16)他の態様では、上記(8)から(15)のいずれか一態様において、
前記第1絞り部及び前記第2絞り部は、前記筒体の上流側端部からの距離と前記燃焼ガスに含まれるCOの酸化速度との比が等しくなるように設けられる。
【0096】
上記(16)の態様によれば、第1絞り部及び第2絞り部をこのような位置関係に配置することで、第1燃料ノズルグループ及び第2燃料ノズルグループに属する各燃料ノズルからの燃焼ガスに含まれる一酸化炭素を効果的に低減できる。
【0097】
(17)一態様に係るガスタービンは上記(1)から(16)のいずれか一態様の燃焼器を備える。
【0098】
上記(17)の態様によれば、上記構成の燃焼器を備えることで、部分負荷運転時に燃焼振動を防ぎながら、一酸化炭素の発生を好適に抑制可能なガスタービンを実現できる。
【符号の説明】
【0099】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
5 タービン
6 圧縮機ロータ
7 圧縮機ケーシング
8 圧縮機動翼
9 圧縮機動翼段
10 圧縮機静翼
11 圧縮機静翼段
12 タービンロータ
13 タービンケーシング
14 タービン動翼
15 タービン動翼段
16 タービン静翼
17 タービン静翼段
18 ガスタービンロータ
19 ガスタービンケーシング
20 発電機
21 外筒
22 燃料ノズル
23 スワラ支持筒
24 筒体
30A 第1燃料供給系統
30B 第2燃料供給系統
32A 第1燃料ノズルグループ
32B 第2燃料ノズルグループ
34A 第1燃料供給路
34B 第2燃料供給路
36A 第1燃料流量調整弁
36B 第2燃料流量調整弁
38A 第1火炎
38B 第2火炎
40 第1絞り部
40a 絞りピース
40b 連結部材
41 溝部
43 径方向内側縁部
45 溝付絞りピース
45a 第1ピース部材
45b 第2ピース部材
46 渦
47 径方向外側縁部
50 第2絞り部
50a 絞りピース
50b 連結部材
51 溝部
53 径方向内側縁部
55 溝付絞りピース
55a 第1ピース部材
55b 第2ピース部材
56 渦
57 径方向外側縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18