(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】光デバイス、フォトニック検出器、および光デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H01S5/14
(21)【出願番号】P 2022513361
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076737
(87)【国際公開番号】W WO2021058653
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-25
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーザー カタリン
(72)【発明者】
【氏名】ストヤノヴィチ ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】スティール コリン
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247894(JP,A)
【文献】特開2007-114141(JP,A)
【文献】特開2005-017410(JP,A)
【文献】特開2005-010340(JP,A)
【文献】特開2002-005614(JP,A)
【文献】特開2001-330669(JP,A)
【文献】特開2000-221130(JP,A)
【文献】米国特許第07355720(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 5/50
G01B 9/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ(1)の利得素子(11)と、波長選択性フィードバック素子(2)と、感知素子(3)と、を備え
、前記感知素子(3)は、圧力や温度といった物理的な測定値を光路の変化に変換するように動作可能であり、この光路の変化は、基準経路を介した干渉によって感知される、光センサ用光デバイスであって、
- 前記波長選択性フィードバック素子(2)と前記感知素子(3)との少なくとも一部は、共通のセンサパッケージ(4)に配置され、
- 前記利得素子(11)は、光信号を生成し増幅するように配置され、
- 前記利得素子(11)および前記波長選択性フィードバック素子(2)は、前記半導体レーザ(1)の外部共振器(15)の少なくとも一部を形成することによって、前記光信号に応じてレーザ発振を維持するためのフィードバック機構を提供し、
- 前記波長選択性フィードバック素子(2)は、前記光信号の一部を取り出し、前記光信号の前記一部を前記感知素子(3)に向け、
前記光路の変化をプローブするように配置されて
おり、
前記波長選択性フィードバック素子(2)は、
格子周期Λを有する少なくとも1つの回折入力格子(22)であって、前記外部共振器(15)は、前記光信号が前記格子周期Λに適合した波長を有するように配置されている、少なくとも1つの回折入力格子(22)と、
少なくとも1つのさらなる出力格子(23)と、
基板本体(21)であって、少なくとも1つの入力格子(22)および少なくとも1つのさらなる出力格子(23)が、前記基板本体(21)内または前記基板本体(21)の同一側面上に配置されている、前記基板本体(21)と、
を備える、光デバイス。
【請求項2】
前記利得素子(11)および前記外部共振器(15)は、前記共通のセンサパッケージ(4)内に配置されている、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記利得素子(11)は、端面発光型半導体レーザの活性利得領域または面発光型半導体レーザの活性利得領域を備える、請求項1から
2のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項4】
- 前記基板本体(21)の前記
同一側面は、前記
同一側面と平行に前記基板本体(21)の長手方向に沿って走る
、前記基板本体(21)の光軸(24)を画定し、
- 少なくとも1つの出力格子(23)は、少なくとも1つの入力格子(22)の下流に位置し、前記入力格子(22)の入力側(25)は、前記利得素子(11)
と前記出力格子(23)の出力側(26)とに面
する、
請求項
1から3のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項5】
- 前記
外部共振器(15)は、レーザ共振器(12)を備え、前記レーザ共振器(12)は、前記レーザ共振器(12)の長手方向に沿って走るレーザ軸(16)を有し、
- 前記レーザ軸(16)は、前記基板本体(21)の前記光軸(24)に対して同軸である、または、
- 前記レーザ軸(16)は、前記基板本体(21)の前記光軸(24)に対して傾いている、
請求項
4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記外部共振器(15)は、前記半導体レーザ(1)の後面ミラー(13)と、前面ミラーとしての前記少なくとも1つの入力格子(22)と、を備える、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項7】
- 前記外部共振器(15)は、前記半導体レーザ(1)の後面ミラー(13)と前面ミラーとしての半透明ミラーと、を備え、
- 前記入力格子(22)は、前記後面ミラー(13)と前記半透明ミラーの両方の下流に配置されている、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
- 前記入力格子は、少なくとも、第1の格子周期を有する第1のセクション(28)と、第2の格子周期を有する第2のセクション(29)と、を備え、
- 前記第1のセクション(28)は、前記入力側(25)を備え、
- 前記第2のセクション(29)は、前記光軸(24)に沿って前記第1のセクション(28)の下流に位置し、
- 前記第1のセクション(28)は、前記光信号を半導体レーザ(1)に反射して戻すために配置され、前記第2のセクションは、前記光信号を前記感知素子(3)に向けるために配置されている、
請求項
4から
5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項9】
- 波長選択性フィードバック素子と感知素子の少なくとも一部とを共通のセンサパッケージに配置すること
であって、前記感知素子は、圧力や温度といった物理的な測定値を光路の変化に変換するように動作可能であり、この光路の変化は、基準経路を介した干渉によって感知される、配置することと、
- 利得素子が光信号を生成および増幅するように動作可能であるように、少なくとも1つの前記波長選択性フィードバック素子および感知素子に対して前記利得素子を配置することと、
- 前記利得素子と前記波長選択性フィードバック素子とを用いて半導体レーザの光共振器の少なくとも一部を形成することにより、前記光信号に応じたレーザ発振を持続させるためのフィードバック機構を提供することと、
- 前記波長選択性フィードバック素子を配置して、前記光信号の一部を取り出し、前記光信号の前記一部を前記感知素子に向け、前記
光路の変化をプローブすることと、
を備え
、
前記波長選択性フィードバック素子(2)は、
格子周期Λを有する少なくとも1つの回折入力格子(22)であって、前記光共振器は、前記光信号が前記格子周期Λに適合した波長を有するように配置されている、少なくとも1つの回折入力格子(22)と、
少なくとも1つのさらなる出力格子(23)と、
基板本体(21)であって、少なくとも1つの入力格子(22)および少なくとも1つのさらなる出力格子(23)が、前記基板本体(21)内または前記基板本体(21)の同一側面上に配置されている、前記基板本体(21)と、
を備える、光センサ用光学素子を製造する方法。
【請求項10】
前記利得素子(11)および外部共振器(15)は、前記共通のセンサパッケージ(4)内に配置されている、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光デバイス、フォトニック検出器、および光デバイスの製造方法を含む光センサの分野に関する。
【0002】
光センサは、多くの場合、独自の光源を同じセンサパッケージに統合して搭載している。例えば、飛行時間センサ、スペクトルセンサ、近接センサなどである。半導体レーザは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)やファブリペロ端面発光半導体レーザなど、光センサの他の部品と一緒にウェハーレベルで製造することができるため、光源として可能性があり、その後同じセンサパッケージに統合することができるため、高度に統合され専用のセンサ解決策が提供される。
【0003】
外部共振器は、特にブラッグ格子などの回折格子などで補完することで、半導体レーザの性能を向上させるために用いることができる。外部共振器は、モード安定性、すなわちレーザの位相安定性を向上させ、レーザのスペクトル線幅やノイズを低減させることができる。外部共振器の一部として回折格子を用いると、周波数安定度や同調幅が向上する。マルチモードレーザダイオードは、外部回折格子の援助によりシングルモードとなる。例えば、DFBやDBRの半導体レーザは、長い共振器にもかかわらず、一般的にシングルモードである。副次的な効果として、外部共振器はレーザの変換効率を向上させる可能性がある。シングルモード動作、モード安定性、周波数安定性、低線幅、低ノイズなどの特性は、半導体レーザを干渉計と組み合わせて使用する際に重要な要素となる場合がある。
【0004】
外部共振器は、ブラッグ格子などの回折格子で補完することができる。回折格子は、その回折方程式によって決定される回折の次数を有することができる。例えば、1つの回折次数が、レーザ工程からの入射波をレーザ共振器に戻すように配置されている場合、回折格子は、半導体レーザの波長選択的フィードバック素子として機能することができる。回折格子は、例えば、レーザの前面ミラーまたは後面ミラーに本質的に取って代わることができる。回折格子の別の回折次数は、例えば、レーザ共振器の外側に向けられ、レーザターゲットに向けられることができる。回折格子を配置してレーザの外部共振器を作るには、例えばリトロー(Littrow)型構成(
図5a)、リットマン-メトカーフ(Littman-Metcalf)型構成(
図5b)、または透過型構成(
図5c)のような、様々なセットアップが存在する。
【0005】
干渉計の原理で動作する集積型光センサシステムは数多くある。このような光センサは、半導体レーザ光源と感知素子とを備えてもよい。感知素子は、物理的な測定値(圧力、温度など)を光路の変化に変換し、例えば、基準光路との干渉によって感知する。光センサは、ブラッグ格子のような1つまたは複数の回折素子を有していてもよい。これらの回折格子は、入力、出力、またはセンサのコア内部でカプラとして機能することができる。回折格子は波長選択性があり、レーザ波長と格子周期の不一致は、システム性能を低下させる可能性がある。
【0006】
しかし、干渉計の感度をよくするためには、レーザ光源は、安定した波長と小さなノイズ線幅をサポートするシングルモードであることが必要である。ファブリペロ端面発光半導体レーザは、長手方向がマルチモードである。シングルモードの単一波長光源を得るためには、特別な工夫が必要な場合が多い。通常、このようなレーザは、分布フィードバック型レーザ(DFB)や分布ブラッグ反射器型レーザ(DBR)に置き換わりうる。VCSEL半導体レーザは、設計上、長手方向はシングルモードであるが、横方向はマルチモードとすることができる。半導体レーザは温度依存性があり、温度上昇に伴いレーザ波長が長くなりうる。
【0007】
レーザと感知素子の波長合わせは、レーザダイオードと感知素子の波長精度がそれぞれ良好であることで対応できることが多い。ファブリペロレーザの代わりに、DFBレーザやDBRレーザが使われることが多い。これらのレーザダイオードは、それぞれレーザ共振器の端にブラッグ格子を内蔵しているため、ほとんどシングルモードで動作する。しかし、例えば、DFBレーザの場合、製造時に長手方向がデュアルモードになってしまうものがある。そのため、製造時に選別され、さらに価格が上昇しる。さらに正確で安定した波長は、1つまたは複数の回折格子で作られた外部共振器の助けを借りて、レーザダイオードから得られる。しかし、これはかさばる解決策であり、大量生産よりも研究室での使用に適している。温度に対する安定性を確保するため、レーザダイオードモジュールは通常、ペルチェセルなどを用いて温度補償される。上記の解決策はすべて高価であり、かさばる。
【0008】
半導体レーザ光源と光感知デバイスであって回折格子やブラッグ格子などの回折光学素子を1つ以上含む光感知デバイスとを備える光センサシステムを考察する。このような装置では、最適な性能を得るために、レーザの波長と回折光学素子の間の良好なマッチングが必要となる場合がある。半導体レーザは、波長の広がり(デバイス間)、マルチモード(複数の発光波長を同時に持つこと)、温度による波長の変化などを示すことがある。半導体レーザが格子を含む光センサシステムの光源として使用され、格子周期と波長の関係が重要である場合(多くの実用例でそうである)、上記のいずれかの影響により、レーザ波長と格子周期が不一致となり、システム(レーザ+光センサ)性能が損なわれる可能性がある。例えば、導波路からブラッグ格子によって、ある方向に向かってレーザビームが取り出されている(coupled out)と仮定する。このとき、レーザの波長が変わったり、格子周期が変わったり、あるいはその両方が異なる速度で変化すると、回折されたビームの方向が変わってしまう。これは、システムの性能に影響を与える可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レーザ特性を改善した光デバイス、光デバイスの製造方法およびフォトニック検出器を提供することを目的とする。
【0010】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる展開および実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
任意の1つの実施形態に関連して記載される任意の特徴は、単独で、または本明細書に記載される他の特徴と組み合わせて使用されてもよく、また、代替案として記載されない限り、実施形態の他の任意の1つ以上の特徴、または実施形態の他の任意の組み合わせと組み合わせてもよいことが理解されよう。さらに、以下に記載されていない等価物および変更も、添付の特許請求の範囲に定義されている光デバイス、光デバイスの製造方法、およびフォトニック検出器の範囲から逸脱することなく採用することができる。
【0012】
以下は、光センサの分野における改良概念に関するものである。この改良された概念は、集積型光センサのレーザ特性を改善する手段を提案するものである。例えば、光センサのための光デバイスは、半導体レーザの利得素子、波長選択性フィードバック素子、および感知素子を備える。波長選択性フィードバック素子、例えば回折格子は、感知素子と共通体を作ることが提案されている。このように、波長選択性フィードバック素子は、半導体レーザの外部共振器の一部とすることができる。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、光センサ用の光デバイスは、半導体レーザの利得素子、波長選択性フィードバック素子、および感知素子を備える。波長選択性フィードバック素子と感知素子の少なくとも一部は、共通のセンサパッケージに配置される。利得素子と波長選択性フィードバック素子とは、半導体レーザの外部共振器の少なくとも一部を形成する。
【0014】
利得素子は、光信号を生成し増幅するために配置される。例えば、利得素子は、半導体レーザ内の光利得源とみなすことができる半導体材料からの活性レーザ媒質(利得媒質または発振媒質とも呼ばれる)を備える。この利得素子と波長選択素子とにより、光信号に応じてレーザ発振を持続させるためのフィードバック機構が提供される。利得は、例えば、レーザ媒質がポンプ源によって励起された場合、利得素子における誘導放出に起因する。光信号は、レーザ発振によって生成され、所定の波長の電磁波を構成する。光信号の波長は、赤外線(IR)、可視光線(Vis)、または紫外線(UV)のスペクトルであってよい。波長選択性フィードバック素子は、光信号の一部を取り出すように配置される。当該光信号の一部は、感知素子に向けられ、感知素子の物理的特性を測定する。当該光信号の一部は、感知素子をプローブするために使用されるレーザ光とみなすことができる。
【0015】
この光デバイスにより、半導体レーザは、リアルタイムでも感知素子(またはターゲット)に最適な波長、例えばセンサ格子周期にチューニングすることができる。これにより、レーザはターゲットに波長を追従し、光デバイスを最適な動作点に保つことができる。一方、現在のシステムでは、格子と感知素子の両方が(例えば温度によって)異なる変化をする可能性があるため、動作開始時にレーザ波長を正確に調整し、その後、光デバイスの環境条件をできるだけ安定させる必要がある。半導体レーザは、ターゲットから独立してレーザ波長を調整するのに代えて、ターゲット、すなわち感知素子によって規定される波長に自ら調整することができる。これは、外部共振器が、少なくとも部分的に、一般的な外部共振器レーザの場合のように、レーザに取り付けられるのではなく、レーザターゲットと共通の本体を形成しているために可能である。この改良された概念は、レーザとセンサの統合など、用途のタイプによって支持される。光デバイスのすべての部品に対して、固定された基準波長は存在しない。その代わり、ターゲットはその特性を自由に変化させることができるため、レーザ波長の「マスター」となりる。レーザは「マスター」によって与えられた周波数に追従するため、「スレーブ」とみなすことができる。波長選択性フィードバック素子のレーザによる追従は、連続的に、例えばリアルタイムで行われる。これにより、例えば、波長の安定性を確保し、熱膨張を避けるために、レーザとセンサ素子を一定の環境条件に保つという制約を軽減することができる。
【0016】
少なくとも1つの実施形態では、利得素子と外部共振器は、共通のセンサパッケージ内に配置されている。このようにして、少なくとも波長選択性フィードバック素子、感知素子、利得素子、および外部共振器が、すべて共通のセンサパッケージに配置される。これにより、光デバイスのコンパクトな設計が可能となる一面もある。光デバイスは、共通のセンサパッケージにフォトニック検出器を作成するために、追加の部品で補完されることがある。一方、同じセンサパッケージ内に部品を配置することで、レーザ特性をより向上させることができる。ある意味において、少なくとも1つの波長選択性フィードバック素子、感知素子、利得素子および外部共振器は、共通のセンサパッケージによって、機械的、光学的および熱的に結合される。この結合により、光デバイスのこれらの部品は、環境条件からすべて同様の影響を受ける。半導体レーザの波長は、波長選択性フィードバック素子の周期に追従するため、例えば光路の安定性に対する熱膨張の影響を打ち消すことができる。一般に、波長選択性フィードバック素子が共通のセンサパッケージの一部であれば、利得素子やレーザは共通のセンサパッケージの外側にあることが可能である。
【0017】
共通のセンサパッケージは、光デバイスの部品を整列するために配置される。例えば、共通のセンサパッケージは、光デバイスを閉じ込める金型構造のような枠体を備える。例えば、フレーム本体は、少なくとも波長選択性フィードバック素子と感知素子とが取り付けられる側壁および/またはカバー部を有してもよい。
【0018】
一般的なセンサパッケージの別の例は、シリコンなどの半導体の単一片であり、その中に、例えばフォトリソグラフィー、エッチング、注入、拡散、酸化などの半導体デバイス製造手順によって、少なくとも波長選択性フィードバック素子と感知素子の両方が埋め込まれている。例えば、波長選択性素子は、半導体表面の例えば誘電体(二酸化ケイ素、窒化ケイ素など)からなる光導波路にエッチングされた(ブラッグ)格子とすることができ、感知素子は、同じ半導体の一部にエッチングされた同じ格子とMEMS膜の組合せとすることができる。両素子が共有する半導体基板により、両素子の熱的/機械的膨張が同じになるようにする。
【0019】
少なくとも1つの実施形態において、波長選択性フィードバック素子は、格子周期Λを有する少なくとも1つの回折入力回折格子を備える。外部共振器は、光信号が格子周期に適合する波長を有するように配置される。
【0020】
少なくとも1つの回折型入力格子は、入力格子を介してレーザ光として感知素子に向けて照射される光信号の追従を支援する。「格子周期に合わせる」という用語は、半導体レーザおよび/または感知素子および/または入力格子が、温度、歪みなどの環境条件の変化により擾乱を受けた場合、半導体は光信号を入力格子の格子周期に適合させることを意味する。このとき、格子周期への「適合」は、光デバイスを記述する格子方程式(例えば、ブラッグ方程式)の観点から定義することができる。
【0021】
したがって、半導体レーザ、入力格子、感知素子は、機械的歪みや温度などの異なる環境条件にさらされる可能性があるが、共通のセンサパッケージによる結合と波長選択性フィードバックにより、互いに追従し合うことになる。このため、光デバイスは、外部条件の変動があっても、意図したレーザ特性を維持し、あるいは向上させることができる。例えば、レーザ光として取り出された光信号またはその一部は、入力格子によって決定された波長にロックされた状態に保たれる。これは、製造時に要求される精度を下げることにもなる。つまり、レーザ波長とセンサ格子は、ある程度の「不一致」を許容されるのである。一緒に配置された場合、レーザ波長λで表される光信号は、入力格子周期Λに整列する。これは、最終的には半導体レーザが自ら調整し、少なくともある程度は不一致を相殺するため、格子周期とレーザに余裕を持たせることができる。この光デバイスは、製造者や顧客がデバイスを熱的機械的に安定化させる手段を提供しなければならない場合に比べて、安価で小型化やフォトニック検出器への組み込みが容易である。
【0022】
少なくとも1つの実施形態において、利得素子は、端面発光半導体レーザの活性利得領域を備える。あるいは、利得素子は、面発光半導体レーザの活性利得領域を備える。これらのタイプの半導体レーザは、半導体ダイオード接合を活性利得領域(または活性レーザ媒質)として用いる。
【0023】
少なくとも1つの実施形態において、利得素子は、活性レーザ媒質が配置されるレーザ共振器を備える。レーザ共振器は、例えば、後面ミラーと半透明の前面ミラーとを備える。レーザ共振器は、利得素子と波長選択性フィードバック素子とによって形成される外部共振器とは異なることに留意されたい。しかし、発振過程は、レーザ共振器ではなく、外部共振器によって大きく左右される。例えば、半透明の前面ミラーは、前面ミラーとしての入力格子によって画定され得る外部共振器の発振過程に影響を与えない。
【0024】
「外部共振器」という用語は、レーザ共振器に対して外部にあるものと理解することができる。半導体レーザの場合、本書では、「レーザ共振器」は、半導体のボリュームに限定された光共振器を指定し、典型的には、その表面にコーティングされたミラーによって画定される。反対に、「外部共振器」は、ミラー(またはリフレクタ)の少なくとも1つを有する光共振器で、半導体のボリュームに対して外部にあるものを指す。レーザ共振器は、そのままで、つまり半導体レーザをそのまま一般的なセンサパッケージに実装することができる。あるいは、半導体レーザは、例えば、半透明の前面ミラーが除去されるか、反射防止コーティングで置き換えられるように変更することができる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、光デバイスは、少なくとも1つのさらなる出力格子と、基板本体とをさらに備える。少なくとも1つの入力格子および少なくとも1つのさらなる出力格子は、基板本体の中または基板本体上に配置され、例えば、基板本体の主表面に連続する。基板本体は、シリコンなどの半導体、または目標波長に対してまたは目標波長の範囲内で透明な他の材料(SiO2、Si3N4など)を備えてもよい。例えば、シリコンは、ある程度、赤外線(IR)に対して透明である。また、IRで発光するVCSELレーザを使用する場合、IRを目標波長または範囲とすることができる。また、他の用途では、VisやUVなどの他の波長域で透明な基板を使用することもできる。このように、基板本体は、光信号やレーザ光の光導波路として機能することができる。
【0026】
基板本体は、基板本体の表面、例えば格子の下に、拡散された/埋め込み、または堆積された光導波路を含んでもよい。この光導波路は、その実効屈折率neffによって特徴付けられる、格子間、例えば入力と第1の格子との間、第2の格子と出力との間に、それぞれ光を閉じ込め、伝達することができる。光導波路は任意選択であるが、損失低減やレーザビームと格子の相互作用を増大させるのに役立つことがある。
【0027】
入力と出力の両方の格子を基板本体に配置してもよい。こうすることで、それらの格子周期は、一定かつ明確に画定された比率となる。いずれかの格子が(例えば温度変化により)ある係数で拡大した場合、他の格子も同じ係数で拡大するはずである。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、基板本体の主表面は、主表面に平行に基板本体の長手方向に沿って走る光軸を画定する。少なくとも1つの出力格子は、少なくとも1つの入力格子の下流に配置される。入力格子の入力側は利得素子に面し、出力側は出力格子に関連付けられる。光導波路は、光軸によって特徴付けられることができ、ひいては、光導波路は、光軸の具体化であると考えることができる。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、半導体レーザは、レーザ共振器の長手方向に沿って走るレーザ軸を有するレーザ共振器を備える。レーザ軸は、基板本体の光軸に対して同軸である。本実施形態は、微小角入射のリトロー型セットアップと考えることができる。入力格子は、半導体レーザの外部共振器の前面ミラーとして機能する。格子周期Λと実効屈折率を変化させると、それに応じてsin θd=0の関係が成り立つようにレーザの波長λが変化する。項θdは、回折角を表す。レーザから取り出されたビームは、回折格子周期Λや実効屈折率の変動とは無関係に、入力格子に対して垂直な状態を保つことができる。
【0030】
あるいは、レーザ軸を基板本体の光軸に対して傾斜させる。これにより、入力格子を外部共振器の一部とみなすことができるリトローまたはリトマンメトカーフ構成など、さまざまなタイプのセットアップを実施することができる。リットマン-メトカーフセットアップの場合、外部共振器は、外部共振器の前面ミラーとして機能する少なくとももう1つのミラーによって補完されることが可能である。このセットアップでも、レーザ波長λは、格子周期Λと実効屈折率の変動に追従するように強制される。
【0031】
少なくとも1つの実施形態において、外部共振器は、半導体レーザの後面ミラーと、前面ミラーとしての少なくとも1つの入力格子とを備える。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では、外部共振器は、半導体レーザの後面ミラーと、前面ミラーとしての半透明ミラーとを備える。さらに、入力格子は、後面ミラーおよび半透明ミラーの下流に配置される。外部共振器は、リットマン-メトカーフ構成に基づいて実装することができる。例えば、レーザ軸は、基板本体の光軸に対して同軸とすることができる。入力格子は、レーザ軸と同軸であるコリメートレンズの下流に配置することができる。入力格子の1つの次数は、光信号を反射するように配置することができ、入力格子の別の次数は、光信号を透過するように配置することができる。反射用と透過用の2つの次数を構成するために、入力格子をレーザ軸に対して傾斜させてもよい。例えば、傾斜角は、レーザ軸に対して45度であってもよい。
【0033】
少なくとも1つの実施形態において、入力格子は、少なくとも、第1の格子周期を有する第1のセクションと、第2の格子周期を有する第2のセクションと、を備える。第1のセクションは、入力側を備える。第2のセクションは、光軸に沿って第1のセクションの下流に位置する。第1のセクションは、光信号を反射して半導体レーザに戻すために配置される。第2のセクションは、光信号を感知素子へ向けるように配置される。
【0034】
設計上の制約から、少なくとも感知素子用と外部共振器用とにそれぞれ2つ以上の回折次数を持つ入力格子を実装することができない場合がある。しかし、入力格子をセクションに分割することで、光デバイスの設計の自由度を高めることができる。例えば、入力格子は、それぞれ異なる周期を有するセクションを有していてもよい。1つのセクションは、半導体レーザに反射して戻すために使用される第1の周期で配置され、2つ目のセクションは、レーザ光を感知素子に向けるために配置された第2の格子周期を持つ。一般的に、温度や機械的ストレスなどのパラメータを変化させたときに起こりうる変形を互いに相関させるために、両方のセクションは同じ基板を共有している。
【0035】
少なくとも1つの実施形態では、フォトニック検出器は、上記の概念に基づく光デバイスの少なくとも1つを備える。さらに、フォトニック検出器は、光センサ、光フロントエンド、電気フロントエンドおよび/または処理ユニットのうちの少なくとも1つを含む統合センサチップを備える。少なくとも1つの光デバイスと統合されたセンサチップは、共通のセンサパッケージに配置される。
【0036】
フォトニック検出器は、単一デバイスの統合された光学的な解決策として実装することができる。光デバイスの他に、センサ信号を受信するためのアナログまたはデジタル光フロントエンド、フォトニック検出器の動作を制御するためのアナログ電気フロントエンド、Cortexプロセッサなどの処理ユニット、同期復調器、統合レーザドライバおよび/または光フィルタを含む、同じ共通のセンサパッケージに実装される部品がある。
【0037】
少なくとも1つの実施形態において、フォトニック検出器は、基準ビームと感知ビームとの干渉のために配置された基準経路および感知経路を備える。例えば、感知経路は、外部共振器、入力格子、出力格子、および感知素子を含む。基準経路は感知素子を通過しない。感知経路からの出力信号は、感知素子で偏向された後、基準経路からの出力信号と重畳されることがある。干渉により最終的な出力が生成され、これがフォトニックデバイスの出力を構成する。この出力の処理または前処理は、例えば処理ユニットによって、すでにオンチップで実行されてもよい。
【0038】
少なくとも1つの実施形態において、フォトニック検出器は、集積型光干渉計、差分自由空間光干渉計、光学式音響センサ、光学式オーディオマイク、光学式オーディオスピーカ制御デバイス、光学式オーディオディスプレイ面マイクまたはスピーカ、非接触型3次元表面マッピングおよび感知デバイス、非接触型フォトニック環境感知デバイス、および/または圧力センサの少なくとも1つを備える。
【0039】
少なくとも1つの実施形態において、光センサのための光デバイスの製造方法は、以下のステップを含む。まず、波長選択性フィードバック素子の少なくとも一部と感知素子とを共通のセンサパッケージに配置する。利得素子が、光信号を生成し増幅するように動作可能であるように、少なくとも1つの波長選択性フィードバック素子および感知素子に対して利得素子が配置される。利得素子と波長選択性フィードバック素子を用いて、半導体レーザの光共振器の少なくとも一部が形成される。これにより、光信号の波長に応じたレーザ発振を持続させるためのフィードバック機構が設けられる。最後に、波長選択性フィードバック素子は、光信号の一部をカップリングし、光信号の一部を感知素子に向け、感知素子の物理的特性をプローブするために配置される。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、利得素子と外部共振器は、共通のセンサパッケージに配置されている。
【0041】
光センサのための光デバイスを製造する方法のさらなる実施態様は、上述した光デバイスおよびフォトニック検出器の様々な実施態様および実施形態から容易に導かれ、その逆もまた同様である。
【0042】
以下では、上に示した概念を、実施形態の例が示されている図面に関してさらに詳細に説明する。以下に提示される実施形態および図において、類似または同一の要素には、それぞれ同一の参照数字が付されている場合がある。しかし、図面に図示された要素および互いの大きさの関係は、縮尺どおりとみなされるべきではなく、むしろ、層、部品、および領域などの個々の要素は、より良い図示またはより良い理解を可能にするために誇張される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、光デバイスの実施形態の一例を示す。
【
図2】
図2は、入力格子の一例の回折モードを示す。
【
図3】
図3は、光デバイスの他の実施形態の一例を示す。
【
図4】
図4は、他の入力格子の一例の回折モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、光デバイスの一例を示す図である。この光デバイスは、半導体レーザ1の利得素子11と、波長選択性フィードバック素子2と、感知素子3と、を備える。波長選択性フィードバック素子2と感知素子3は、共通のセンサパッケージ4内に配置されている。利得素子11も、共通のセンサパッケージ4内に配置され得るし(図示せず)、描かれているように共通のセンサパッケージ4の外部にある外部部品であり得る。共通のセンサパッケージ4は、光デバイスの部品を収容し、整列させるように配置される。例えば、共通のセンサパッケージ4は、少なくとも波長選択性フィードバック素子2および感知素子3が取り付けられる枠体を備える。枠体は、例えば、型成形することができる。他の例は、素子2および3を共通のシリコン基板に作り込むことであり、この基板は、したがって、共通のセンサパッケージを表す。さらに、共通のセンサパッケージ4は、例えば、光デバイスを完全なフォトニック検出器に補完する光センサ、制御およびデータ処理ユニットなどのフォトニック検出器の部品をさらに備えてもよい。
【0045】
通常、光デバイスは、様々な光センサやフォトニック検出器に使用することができる。このようにして、光デバイスは、例えば、集積型光干渉計、差分自由空間光干渉計、光学式音響センサ、光オーディオマイク、光学式オーディオスピーカ制御、光オーディオディスプレイ面マイクおよびスピーカ、非接触3D表面マッピングおよび感知、非接触フォトニック環境感知、圧力センサおよび外部共振器レーザに用途を見出すことができる。また、半導体レーザの利得素子、ブラッグ格子などの波長選択性フィードバック素子、および感知素子を備えるセンサであれば、本明細書で説明する光デバイスと併用することができる。感知素子3は、例えば圧力、温度などの物理的な測定値を光路変化に変換し、それを例えば基準経路との干渉によって感知することができる任意の素子とみなすことができる。
【0046】
半導体レーザ1の利得素子11は、活性利得領域(または活性レーザ媒質)、例えば半導体ダイオード接合を備える。さらに、利得素子11は、活性レーザ媒質が配置されたレーザ共振器12を備える。本実施形態におけるレーザ共振器12は、後面ミラー13と半透明の前面ミラー14とを備える。このような構成は、半導体レーザ、例えば端面発光半導体レーザ、面発光半導体レーザ、例えば垂直共振器型面発光レーザ、またはVCSELによって実施することができる。
【0047】
波長選択性フィードバック素子2は、基板本体21を備える。基板本体21は、例えば、シリコンなどの半導体や、目的とする波長に対して透明である、または目的とする波長の範囲にある他の材料を備えてもよい。例えば、シリコンは、赤外線、IRに対して-ある程度-透明である。また、IRで発光するVCSELレーザを使用する場合、IRをターゲット波長または範囲とすることができる。他の用途でも、基板、ターゲット波長、レーザ発光について同様に考察することができる。感知用途の赤外線半導体レーザの波長は、780~850nm(AlGaAs)、900~980nm(InGaAs)である。
【0048】
基板本体21には、ブラッグ格子などの第1の回折格子22が配置されている。本実施形態では、基板本体21は光導波路を備え、ブラッグ格子は、光導波路に作製され、例えば基板21の屈折率、または導波路の屈折率の周期的な変化を伴う回折格子である。この周期的な変化により、格子反射のブラッグ条件を満たす中心波長を中心にその帯域幅内で大きな反射率を得ることができる。ブラッグ条件を満たす場合、格子の波数は、入射波と反射波の波数の差に一致する。その結果、他の波長はブラッグ格子の影響を弱く受けるだけ、あるいは受けない。同様に、入射角度を変更すると、反射がほとんど、あるいは全くなくなることもある。これらの特性により、例えば、ブラッグ格子を光フィルタとして使用することができる。さらに、第1の回折格子を担持する基板本体21は、フォトニック導波路として使用することができ、またはフォトニック導波路を含み、格子のおかげで、導波路からまたは導波路に取り出される波長をそれぞれ選択することが可能である。
【0049】
また、同じ基板本体21には、第2の回折格子23が設けられていてもよい。第2の回折格子23は、同様にブラッグ格子であってもよく、第1の回折格子22と間隔をあけて配置されていてもよい。例えば、基板本体21は、光軸24を画定する主表面を有する。光軸24は、基板本体21の長手方向に沿って延びている。光軸24を考慮すると、第2の回折格子23は、第1の回折格子22の入力側25が利得素子11に面し、出力側26が第2の回折格子23に関連付けられて、第1の回折格子22の下流側に位置する。利得素子11と、2つのブラッグ格子22,23を有する基板本体21とは、共通の光軸24に対して同軸上に配置されている。
【0050】
第1の回折格子22、略して入力格子は、センサとレーザの両方の動作をそれぞれ容易にするために、少なくとも2つの回折次数を有するように設計されている。少なくとも1つの回折次数は、利得素子11、またはレーザ共振器12に向けられる。格子22の第2の回折次数は、まず、感知素子3の方に向けられる(矢印A3参照)。次いで、感知素子3上で反射され、第2の格子23を介して出力導波路に取り出された後に、このビームは、出力26に到達する。典型的には、出力側26は、例えば、光センサの方を向いているか、またはフォトニック検出器の一部である。このように、入力格子22は、光センサに向かってまたはフォトニック検出器に光を透過させ、利得素子11またはレーザ共振器12に光を逆反射させるために、当該2つの回折次数を許容する周期Λを有する。このようにして、入力格子22、例えばブラッグ格子は、半導体レーザ1のための外部ミラーにもなる。ひいては、半導体レーザ1が外部共振器レーザとなる。
【0051】
なお、第2の格子23は、機能的には、波長選択性フィードバックの一部でなくてもよい。第2の格子23は、感知素子3から入射する光ビームを出力(導波路)に結合するように動作可能である。物理的に、第2の格子23は、例えば、間隔を空けて配置されるか、または第1の(入力)格子22と連続することができる。
【0052】
外部共振器15は、利得素子11、すなわちレーザ共振器12と、入力格子22と、を備える。レーザ共振器12は後面ミラー13を構え、この後面ミラーも実質的に外部共振器15の後面ミラーを構成する。しかしながら、半透明の前面ミラー14は、外部共振器15の発振過程に影響を与えず、むしろ前面ミラーとしての入力格子22によって画定される。実際、前面ミラー14は、除去されてもよく、または、例えば、反射防止コーティングによって置換されてもよい。
【0053】
感知素子3は、共通のセンサパッケージ4内に、例えば(光軸24に対して)入力格子22および出力格子23の間に対向して光軸24に沿って配置されている。入力回折格子22、感知素子3、出力回折格子23の間には、光路27が設けられている。感知素子3は、物理的な測定値、例えば圧力、温度などを光路27の変化に変換する任意の素子とすることができ、その後、例えば基準経路との干渉によって感知することができる。この例では、感知素子3は、共通のセンサパッケージ4内に配置されたMEMS膜によって実装される。
【0054】
入力回折格子22は、外部共振器15の前面ミラーであると同時に、感知素子をプローブするためのセンサ部品であると考えることができる。半導体レーザ1は、そのターゲットである感知素子3と2つの格子22、23を備える光デバイスとともに波長λの相関がある外部共振器レーザを構成し、光デバイスおよび/または光センサの動作中に、後述するように最適波長に追従する。
【0055】
入力信号により、利得素子11の活性レーザ媒質が励起される。光信号、またはレーザ光が生成され、外部共振器15において励起放出を誘導する。例えば、
図1の矢印A1は、レーザ入力波として入力格子22に向かって横切る光を表している。そして、外部共振器15の前面ミラーとして機能する入力格子22で光が反射される。より詳細には、入力格子22の1次回折を利用して、外部レーザ共振器15に光を後方回折させる。反射された次数の光は、図面の矢印A2によって示されている。入力格子22で反射された後、光は、前面ミラー14を介して後面ミラー13まで、後方へ横切られる。その結果、光信号のレーザ工程と光増幅が確立される。このようにして、レーザ発振を持続させることができる。反射波のおかげで、入力格子22は、半導体レーザ1の外部波長選択ミラーとなる。
【0056】
光信号の一部は、外部共振器15に反射されずに、入力格子22によって回折される(矢印A3参照)。光信号のこの一部は、レーザ出力(またはレーザ光)を提供し、感知素子3に向かって回折される。入力格子22の別の回折次数は、感知のためにレーザ光を抽出して感知素子3へ向けるために使用される。この回折次数は、矢印A3で示される同じビームに関連する。レーザ光は、感知素子で反射され、最終的に出力格子23に向かって偏向される。偏向は、感知素子3によって変化する。例えば、上述したMEMS膜のような感知素子の移動は、光路27の長さを変える。光路長に応じて、偏向されたレーザ光は、特性入射角の下で出力格子23に当たり、その格子方程式に従って、出力格子23を介して基板本体21または出力導波路に結合され得る(矢印A4参照)。
【0057】
図2は、入力格子の一例の回折モードである。入力格子22は、波長選択性を有しているため、入力格子で反射した波長で半導体レーザ1を強制的に発光させる。半導体レーザ1は、利得素子11の利得媒質の帯域幅が通常数ナノメートルと比較的大きいおかげで、その発振周波数を変位させることができる。
図1からのセンサ入力側25は、(最終的にはその光軸24に沿った導波路を含む)基板本体21内に配置された周期Λを伴う入力格子22を示す
図2に詳細に示されている。基板(または導波路)は、実効屈折率n
effによって特徴付けられる。さらに、
図2は、入射波kiと、導波路から取り出された波(抽出波または回折波kdまたはレーザ光と書かれる)およびレーザ共振器12に向かって戻され、フィードバックを提供する波(反射波krと書かれる)の2つの回折波と、を示している。矢印A1~A3は、
図1に対応する。
【0058】
図1に示す実施形態は、リトロー型のセットアップと考えることができ、極端な微小入射の場合、すなわち、sin θ
i=1である(θ
iは、
図4のように、入射ビームkiと格子表面への垂線との間の角度である)。レーザ共振器12は、このセットアップでは、基板本体21の光軸24と同軸であるレーザ軸16を有する。
【0059】
入力格子22が反射板として機能し、レーザ入力波(矢印A1参照)のエネルギーを、基板本体21を介して同じ導波路を後方に進む波(反射波、矢印A2参照)に結合して外部レーザ共振器15へ向かうためには、格子周期Λと波長は、ブラッグ条件、この場合は、
【数1】
によって関連付けられなければならない。ここで、m=±1,±2,±3,...は回折次数を表し、λはレーザ波長を表す。実効屈折率n
effは、誘導モード
【数2】
の伝搬定数を介して定義される。ここで、n
effは、例えば、誘導コアとクラッドの屈折率の間の値を有する。上式は、半導体レーザ1がブラッグ条件を満たす波長で強制的に発振することを示しており、レーザ波長λが(レーザ)利得帯域幅内に収まるようにmが選択されている。
【0060】
(例えば、ブラッグ回折格子として実装された)入力格子22が、レーザからの入射波kiのエネルギーを抽出波kdに結合するためには、
図2に示すように、回折角θ
dの下で、格子周期Λと波長λは、さらに次の式、
【数3】
によって関連付けられる。ここで、q=±1,±2,±3,...は回折次数を表す。ブラッグ条件と後者の式の両方が成り立ち、m/q=2となるようにmとqを選ぶと、sin θ
d=0になる。
【0061】
この関係は、格子周期Λや実効屈折率neffの変動によらず一定である。言い換えれば、入力格子が半導体レーザ1の外部共振器15の前面ミラーとして機能する場合、レーザ波長λは、sin θd=0が成り立つように格子周期Λや実効屈折率neffの変動に追従する。抽出波kdで表される抽出ビームは、波長λ、格子周期Λ、および実効屈折率neffの変動に依存せず、入力格子22に対して垂直(θd=0)な状態を保つ。
【0062】
逆に、ブラッグ条件が成立しない場合、すなわち、入力格子22が半導体レーザ1の外部共振器15の一部でない場合、一方ではレーザ波長λの変動、他方では格子周期Λおよび実効屈折率neffの変動に応じて、回折角度θdはゼロから逸脱する。その結果、取り出されたビームは初期の方向(入力格子に垂直な方向)から逸脱する。これは、一方のレーザ波長λと他方の格子/導波路パラメータが無関係に変化してしまうためである。
【0063】
他の実施形態では、2つ以上の回折次数を有する入力格子、すなわち上記のように少なくとも1つは感知素子用、もう1つは外部共振器用を実装することは不可能かもしれない。しかしながら、入力格子22は、複数のセクションに分割することができる。例えば、入力回折格子は、それぞれ異なる格子周期を有するセクションを有してもよい。一方のセクションは、半導体レーザへの反射に使用される第1の周期で配置され、第2の格子周期を有する第2のセクションは、レーザ光を感知素子へ向けるために配置される。典型的には、変動するパラメータ(温度または機械的応力など)の下で可能な変形を互いに相関させるために、両方のセクションは同じ基板21を共有する。入力格子の少なくとも1つのセクションは、共通のセンサパッケージ4に配置される。
【0064】
図3は、光デバイスの実施形態の他の一例を示す図である。この光デバイスは、半導体レーザ1の利得素子11と、波長選択性フィードバック素子2と、感知素子3と、を備える。波長選択性フィードバック素子2の一部と感知素子3とは、共通のセンサパッケージ4に配置されている。また、入力格子22の全体を共通のセンサパッケージ4内に配置することもできる(図示せず)。利得素子11も、共通のセンサパッケージ4内に配置することができ(図示せず)、あるいは、描かれているように、共通のセンサパッケージ4の外部にある外部部品としてもよい。
【0065】
光デバイスの様々な部品は、
図1および
図2の実施形態に関して説明したそれぞれの対応するものと同様である。したがって、以下の議論は、相違点に焦点を当てる。別様の記載がない場合、
図1および
図2に関して上述した部品の特性は、
図3および
図4の実施形態に等しく適用される。
【0066】
本実施形態では、利得素子11、すなわちレーザ共振器12は、
図1内と同様のもの、すなわち後面ミラー13と半透明の前面ミラー14とを備えてもよい。ただし、利得素子11、またはレーザ共振器12は、基板本体21の光軸24に対して傾いている。すなわち、半導体レーザ1の利得素子11とレーザ共振器12とに共通するレーザ軸16は、同軸ではなく、基板本体21の基板軸24に対して傾いている。基板本体21は、2つのブラッグ格子22,23を有する。波長選択性フィードバック素子2は、入力格子22を備える。入力格子22と出力格子23は、共通の基板本体21に、その光軸24に沿って配置されている。出力格子23は、入力側25が利得素子11に対向し、出力側26が出力回折格子23に関連付けられて、入力格子22の下流側に配置されている。入力格子22は、2つのセクション28および29を備える。入力格子の第1のセクション28は入力側25を備え、入力格子の第2のセクション29は光軸24に沿って第1のセクションの下流に位置する。
【0067】
第1のセクション28は、レーザからの入射波ki(矢印A1)のエネルギーを、一部は、導波路/基板を伝搬して第2のセクション29に向かう誘導波に、一部は、後方に反射されて利得素子11に向かう波kr(矢印A2)に結合するように配置されている。それゆえ、入力格子22は、半導体レーザ1の外部共振器15をも画定する。入力格子の第1のセクション28は、第2のセクション29および/または出力格子23から空間的に離れていてもよく(ただし、そうでなくてもよい)、また、第2のセクションおよび/または出力格子と異なる格子周期を有していてもよい。それにもかかわらず、すべての格子(入力格子のセクションおよび出力格子のセクション)は、それらの格子周期が一定かつ良好に画定された比率になるように、共通の基板本体21に配置されている。いずれかの格子が(例えば温度変化により)係数の分だけ膨張した場合、他の格子も同じ係数の分だけ膨張するはずである。
【0068】
図4は、
図3に示した実施形態の一例における入力格子22の波とそれに対応する回折次数を示す図である。
図4の図面は、入力格子22の2つのセクション(28および29)を、それぞれの周期およびビーム角で表している。入力格子22の第1のセクション28(図の左側)は、回折次数を介して、kr(矢印A2)で表される波をレーザ共振器12に後方に、すなわち後面ミラーに向かって戻す、または反射することによって、半導体レーザ1の外部レーザ共振器と見なすことができる。レーザからの入射波kiは、格子表面の法線に対して第1の入射角θ
iの下で第1のセクション28に当たる。波krは、したがって、格子表面の法線に対して同じ角度θ
iの下でレーザ共振器内に(回折次数として)後方に反射される。レーザ波長λは、格子のセクション28のブラッグ条件によって規定され、
【数4】
である。ここで、m=±1、±2、±3は、回折次数を表し、Λ
iは、第1のセクション28の格子周期、λは、レーザ波長である。この式は、n
effに依存しないことに留意されたい。光は、格子に当たり、格子の「空気」側からレーザに回折して戻され、格子は、このように古典的な自由空間の回折格子のように機能する。もし光が光導波路を介して来たとするなら、式は異なり、n
effの寄与があるはずである。
【0069】
入力格子の同じセクション28は、入力波kiと実効屈折率n
effの誘導波モードkgとの間の結合を確保している(矢印A4参照)。したがって、
【数5】
は回折次数を表し、ここで、q=±1,±2,±3,…である。
【0070】
入力格子の第2のセクション29(
図4の右側)は、誘導波モードkgを、法線に対して第2の回折角度θ
dで感知素子に向かって波kd(矢印A3)に取り出す。したがって、
【数6】
であり、p=±1,±2,±3,…は、回折次数を表す。これらの式は、回折角または結合角であるθ
dとθ
iを、温度によって最も変化する他のパラメータ、例えばレーザ波長λや格子周期Λ
i,Λ
dの関数として表す。回折角または結合角θ
iとθ
dは、次を表す。
【0071】
・ θi:入力格子22の第1の格子セクション28の表面に対する法線と、レーザから入射する光波A1との間で形成される「入射」角度。これは、同一の法線と、入力格子の第1のセクション28によって後方に反射(実際には回折)され、利得素子11に向かう光波A2と、の間の角度と等しい。
【0072】
・ θd:これは、入力格子22の第2のセクション29の表面に対する垂線と、このセクション29によって感知素子3に向かって抽出(または回折)される光波A3と、の間に形成される「回折」角である。
【0073】
入力格子がレーザの外部共振器と等しいという制約がなければ、レーザ波長λの(例えば温度による)変化は、格子の膨張とは無関係である。その結果、抽出角θ
dは、温度とともに変化し、センサ内の光路方向が変動し、センサ性能に影響を与える。しかし、本実施形態では、ブラッグ条件により各種パラメータが連動しており、入力格子は半導体レーザの外部共振器として使用される。これにより、レーザ波長λは、入力格子28のブラッグ条件に適合するように制約される。ブラッグ条件と結合(取り出し)角θ
dとθ
iの式を組み合わせることによって、注入(結合)角と抽出(取り出し)角について、以下の式、
【数7】
と、
【数8】
と、が得られる。
【0074】
最後の2つの式は、注入時(Λi,格子28)と抽出時(Λd,格子29)の格子周期の変動が相関し(Λi/Λd=定数)、レーザ波長λが注入角θiに対応して入力格子28でブラッグ条件に合致するよう拘束されていることから、注入角と抽出角は、一定であり、レーザ波長λおよび格子周期から独立していることを示している。したがって、センサ内部の光路方向は、(例えば、温度や応力の変動に伴う)波長や格子周期の変動とは無関係に、変化しないままである。しかし、実効屈折率neffによる温度依存性は残る。この温度依存性は,通常のファブリペロやVCSELレーザのセットアップにおけるレーザ波長の温度変化よりも結合角への影響が小さいのが一般的である。提案する光デバイスは、温度変化および/または機械的ストレスに対して安定性が向上していることがわかった。入力格子22上に2つの格子セクション28および29を有することは、例えばp≠qで、入射角および回折角が等しくない、より一般的な用途を支援する。
【符号の説明】
【0075】
1 半導体レーザ
2 波長選択性フィードバック素子
3 感知素子
4 センサパッケージ
11 利得素子
12 レーザ共振器
13 後面ミラー
14 前面ミラー
15 外部共振器
16 レーザ軸
21 基板本体
22 1次回折(入力)格子
23 2次回折(出力)格子
24 光軸
25 入力側
26 出力側
27 光路
28 入力格子の第1のセクション
29 入力格子の第2のセクション
A1 入射波を示す矢印
A2 反射波を示す矢印
A3 回折波を示す矢印
A4 誘導波を示す矢印