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特許7386330プロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットおよびその作製方法、燃料電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】プロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットおよびその作製方法、燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1069 20160101AFI20231116BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20231116BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20231116BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20231116BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20231116BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/1067 20160101ALI20231116BHJP
【FI】
H01M8/1069
H01M4/86 B
H01M4/86 H
H01M4/88 K
H01M4/90 X
H01M4/92
H01M8/0258
H01M8/10 101
H01M8/1004
H01M8/1067
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022513992
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2021135193
(87)【国際公開番号】W WO2022156382
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】202110059435.3
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522078587
【氏名又は名称】江蘇華思飛新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】潘 大弟
(72)【発明者】
【氏名】朱 華
(72)【発明者】
【氏名】李 凱帥
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-062062(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0102349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットの作製方法であって、
極拡散層において正極触媒活性材料と正極触媒溶剤とを少なくとも混合して得る正極触媒ペーストを塗布し、前記正極触媒ペーストを固化させることにより、少なくとも正極触媒層を形成して正電極を得ることと、
極拡散層において負極触媒活性材料と負極触媒溶剤とを少なくとも混合して得る負極触媒ペーストを塗布し、前記負極触媒ペーストを固化させることにより、少なくとも負極触媒層を形成して負電極を得ることとを含み、
前記正極触媒ペースト又は/及び前記負極触媒ペーストにはポリマー電解質樹脂を含み、
前記正極拡散層において前記正極拡散層に近接する前記正極触媒層を形成するとともに前記ポリマー電解質樹脂を固化させることにより、前記正極拡散層から離間するポリマー電解質層を成長して形成し、
または/および前記負極拡散層において前記負極拡散層に近接する前記負極触媒層を形成するとともに前記ポリマー電解質樹脂を固化させることにより、前記負極拡散層から離間するポリマー電解質層を成長して形成することと、
前記ポリマー電解質層を前記正極触媒層と前記負極触媒層との間に位置させるように前記正電極と前記負電極とを複合させることとをさらに含み、
前記ポリマー電解質層に、ポリマー電解質のみを含む ことを特徴とする作製方法。
【請求項2】
前記正極触媒ペースト及び前記負極触媒ペーストにも、ポリマー電解質樹脂を含む
請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
記ポリマー電解質樹脂が、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびスルホン化ポリスルホン樹脂のうちの少なくとも1種を含み、
正極触媒ペースト及び負極触媒ペーストにおいて、前記ポリマー電解質樹脂の質量濃度は、2%~20%であり、前記正極触媒ペーストにおいて、前記正極触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、前記正極触媒活性材料において、前記正極触媒活性材料とポリマー電解質樹脂の質量比は、1:(0.2~0.5)であり、前記負極触媒活性材料において、前記負極触媒活性材料とポリマー電解質樹脂の質量比は、1:(0.2~0.5)である
請求項2に記載の作製方法。
【請求項4】
前記正極触媒ペースト及び負極触媒ペーストに、高沸点溶剤をさらに含み、前記高沸点溶剤の沸点が前記正極触媒溶剤及び負極触媒溶剤の沸点より高く、
正極触媒溶剤及び負極触媒溶剤が、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールおよびプロピルアルコールのうちの少なくとも1種を含み、前記高沸点溶剤が、エチレングリコールまたはグリセリンを含み、
正極触媒ペースト及び負極触媒ペーストに、開孔剤をさらに含み、
記開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含み、
前記正極触媒ペーストにおいて、記触正極媒活性材料と高沸点溶剤と開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)であり、
前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料と高沸点溶剤と開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)である
請求項3に記載の作製方法。
【請求項5】
プロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットの作製方法であって、
正極拡散層において正極触媒活性材料と正極触媒溶剤とを少なくとも混合して得る正極触媒ペーストを塗布し、前記正極触媒ペーストを乾燥させることにより、少なくとも正極触媒層を形成して正電極を得ることと、
負極拡散層において負極触媒活性材料と負極触媒溶剤とを少なくとも混合して得る負極触媒ペーストを塗布し、前記負極触媒ペーストを乾燥させることにより、少なくとも負極触媒層を形成して負電極を得ることとを含み、
前記正極触媒ペースト又は/及び前記負極触媒ペーストには多孔質ポリマーを含み、
前記正極拡散層において前記正極拡散層に近接する前記正極触媒層を形成するとともに前記多孔質ポリマーを乾燥させることにより、前記正極拡散層から離間する多孔質ポリマー層を形成し
または/および前記負極拡散層において前記負極拡散層に近接する前記負極触媒層を形成するとともに前記多孔質ポリマーを乾燥させることにより、前記負極拡散層から離間する多孔質ポリマー層を形成することと、
前記多孔質ポリマー層を酸液またはアルカリ液に浸漬させ、乾燥してポリマー電解質層を形成することと
前記ポリマー電解質層を前記正極触媒層と負極触媒層との間に位置させるように前記正電極と前記負電極とを複合させることとをさらに含み、
前記ポリマー電解質層に、ポリマー電解質のみを含む
ことを特徴とする作製方法。
【請求項6】
前記正極触媒ペースト及び前記負極触媒ペーストにも、多孔質ポリマーを含む
請求項5に記載の作製方法。
【請求項7】
前記酸液は、リン酸溶液、硫酸溶液、塩酸溶液または硝酸溶液であり、
前記酸液の質量濃度は、5%~15%であり、
前記アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液のうちの少なくとも一方であり、
前記アルカリ液の質量濃度は、5%~15%である
請求項5または6に記載の作製方法。
【請求項8】
記多孔質ポリマーが、ポリベンゾイミダゾールを含み、
正極触媒ペースト及び負極触媒ペーストにおいて、前記多孔質ポリマーの質量濃度は、2%~20%であり、
前記正極触媒ペーストにおいて、前記正極触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、
前記正極触媒ペーストにおいて、前記正極触媒活性材料と多孔質ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)であり、前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料と多孔質ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)であ
請求項6に記載の作製方法。
【請求項9】
前記正極触媒ペースト及び負極触媒ペーストに、高沸点溶剤をさらに含み、
前記高沸点溶剤の沸点が前記正極触媒溶剤及び負極触媒溶剤の沸点より高く、
正極触媒溶剤及び負極触媒溶剤が、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールおよびプロピルアルコールのうちの少なくとも1種を含み、
前記高沸点溶剤が、エチレングリコール、グリセリンを含み、
正極触媒ペースト及び負極触媒ペーストに、開孔剤をさらに含み、
記開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含み、
正極触媒ペーストにおいて、前記正極触媒活性材料と高沸点溶剤と開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)であり、前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料と高沸点溶剤と開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)であ
請求項6に記載の作製方法。
【請求項10】
プロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットの作製方法であって、
正極拡散層において正極触媒活性材料と正極触媒溶剤とを少なくとも混合して得る正極触媒ペーストを塗布し、前記正極触媒ペーストを乾燥させることにより、少なくとも正極触媒層を形成して正電極を得ることと、
負極拡散層において負極触媒活性材料と負極触媒溶剤とを少なくとも混合して得る負極触媒ペーストを塗布し、前記負極触媒ペーストを乾燥させることにより、少なくとも負極触媒層を形成して負電極を得ることとを含み、
前記正極触媒ペースト又は/及び前記負極触媒ペーストには疎水性ポリマーを含み、
正極触媒層又は/及び負極触媒層をポリマー電解質樹脂溶液に浸漬させ、乾燥して前記正極触媒層又は/及び負極触媒層において多孔質ポリマー層を成長して形成することと、
前記多孔質ポリマー層を酸液またはアルカリ液に浸漬させ、乾燥してポリマー電解質層を形成することと、
前記ポリマー電解質層を前記正極触媒層と前記負極触媒層との間に位置させるように前記正電極と前記負電極とを複合させることとをさらに含み、
前記ポリマー電解質層に、ポリマー電解質のみを含む
ことを特徴とする作製方法。
【請求項11】
前記正極触媒ペースト及び前記負極触媒ペーストにも、疎水性ポリマーを含む
請求項10に記載の作製方法。
【請求項12】
記ポリマー電解質樹脂溶液の質量濃度は、3%~10%であり、
記ポリマー電解質樹脂は、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびスルホン化ポリスルホン樹脂のうちの少なくとも1種を含む
請求項10または11に記載の作製方法。
【請求項13】
記酸液は、リン酸溶液、硫酸溶液、塩酸溶液または硝酸溶液であり、
記酸液の質量濃度は、5%~15%であり、
記アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液のうちの少なくとも一方であり、
記アルカリ液の質量濃度は、5%~15%である
請求項10に記載の作製方法。
【請求項14】
記疎水性ポリマーは、PTFE乳液またはジメチルシリコーンオイルであり、
正極触媒ペースト及び負極触媒ペーストにおいて、前記疎水性ポリマーの質量濃度は、2%~20%であり、
前記正極触媒ペーストにおいて、前記正極触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、
前記正極触媒ペーストにおいて、前記正極触媒活性材料と疎水性ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)であり、前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料と疎水性ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)であ
請求項11に記載の作製方法。
【請求項15】
前記正極触媒ペースト及び触媒ペーストに、開孔剤をさらに含み、
記開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含み、
前記正極触媒ペーストにおいて、前記正極触媒活性材料と開孔剤の質量比は、1:(0.1~0.33)であり、前記負極触媒ペーストにおいて、前記負極触媒活性材料と開孔剤の質量比は、1:(0.1~0.33)であ
請求項10または11に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願の相互参照
本出願は、2021年01月20日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が2021100594353であり、名称が「プロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットおよびその作製方法、燃料電池」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【0002】
本出願は、燃料電池の技術分野に属し、具体的に、プロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットおよびその作製方法、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、一般的に、核心素子である膜電極ユニットを積み重ね、または統合することにより形成され、各膜電極ユニットが、少なくともプロトン交換膜、正極および負極を含む。その作動原理として、水素ガス(またはメタノール)が正極に供給され、酸素ガス(または空気)が負極に供給され、水素ガスが正極の表面でイオン化して水素イオンおよび電子が生成され、電子が外部負荷回路経由で負極に伝導され、水素イオンが、移動してプロトン交換膜を通って負極に到達し、負極で酸素ガスおよび電子と反応して水を生成するとともに熱エネルギーを放出する。
【0004】
膜電極ユニットの作製方法は一般的に2つあり、その1つが、プロトン交換膜の両側にそれぞれ触媒およびイオン交換ポリマーを含むペーストを塗布し、さらにガス拡散層と複合させて、正極、プロトン交換膜および負極が順に形成された積層構造を形成する方法であり、もう1つが、ガス拡散層に、触媒およびイオン交換ポリマーを含むペーストを塗布して正極および負極を得、さらにプロトン交換膜と複合させて、正極、プロトン交換膜および負極が順に形成された積層構造を形成する方法である。
【0005】
上記の2つの方法により形成された燃料電池は、いずれもプロトン交換膜を利用したものであり、プロトン交換膜が、使用中に高温下で膨潤しやすく、すなわち、膜基材(例えば、PTFE)におけるイオン交換ポリマーの分解、溶解が発生し、プロトン交換膜自体の構造が破壊され、だんだん機能が失われ、さらに、プロトン交換膜と触媒層との分離を招き、燃料電池の劣化が加速される。
【0006】
また、膜電極ユニットのコストは、燃料電池全体のコストの約60%を占め、プロトン交換膜が膜電極ユニットの中核部材の1つであり、いままで、デュポン(DuPont)社のNafionシリーズ膜が最も使われている。プロトン交換膜の使用で、燃料電池全体のコストの削減が制限されている。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、従来のプロトン交換膜を別途設置することが不要で、触媒層において材料としてポリマー電解質のみが含まれるポリマー電解質層を設けてプロトン交換の目的を達することができる、プロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットおよびその作製方法、燃料電池を提供することを目的とする。
【0008】
第1局面において、本出願に係るプロトン交換膜なしの燃料電池用電極ユニットを提供は、ポリマー電解質層と、ポリマー電解質層の2つの表面にそれぞれ形成された負極触媒層および正極触媒層と、負極触媒層のポリマー電解質層から離間する側に形成された負極拡散層と、正極触媒層のポリマー電解質層から離間する側に形成される正極拡散層とを含み、ポリマー電解質層の材料としてポリマー電解質のみを含む。
【0009】
本出願に係る電極ユニットは、従来のプロトン交換膜の使用が不要で、高温条件下でのプロトン交換膜の膨潤という問題を根本から解決できるとともに、生産コストを低減することもできる。そして、ポリマー電解質層は、材料としてポリマー電解質のみ含まれ、高温に耐えることができ、プロトン交換の効果がより優れる。
【0010】
1種の可能な実施形態において、ポリマー電解質層は、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、および酸液またはアルカリ液により浸漬したポリベンゾイミダゾールのうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
1種の可能な実施形態において、ポリマー電解質層の厚さは、1~10μmであり、燃料電池用電極ユニットの厚さは、200μm未満である。ポリマー電解質層は、厚さが比較的に薄く、従来のプロトン交換膜の厚さよりはるかに薄いため、電極ユニットの内部抵抗を低減させることができ、電極ユニットのエネルギー密度を向上させることができる。
【0012】
1種の可能な実施形態において、負極触媒層および正極触媒層のうちの少なくとも一方は、ポリマー電解質材料と触媒活性材料とを含み、
ポリマー電解質材料が、ポリマー電解質層におけるポリマー電解質材料と同じである。
【0013】
触媒層において材料がポリマー電解質層と同じであるポリマー電解質粉末が混合され、電解質と触媒顆粒とが連結構造を形成し、微細顆粒間に不規則の連結、積層が形成され、これによって、ミクロ孔通路が形成され、ガス輸送および反応を促進する作用を有し、燃料と触媒顆粒との接触面積が増加した。
【0014】
1種の可能な実施形態において、触媒活性材料とポリマー電解質材料の質量比は、1:(0.1~0.5)である。任意選択で、触媒活性材料の粒径は、0.1~1nmであり、ポリマー電解質材料の粒径は、0.2~5μmであり、触媒層の空隙率は、10%~90%である。
【0015】
触媒効果を保証するとともに燃料と触媒顆粒との接触面積を増加させるように、触媒層の空隙率を調整することができる。
【0016】
1種の可能な実施形態において、触媒活性材料は、貴金属触媒および金属酸化物触媒のうちの少なくとも一方を含み、
任意選択で、貴金属触媒が、Pt触媒、Pt基複合触媒およびPt/C触媒のうちの少なくとも1種を含み、
任意選択で、金属酸化物触媒が、イリジウム酸化物、ルビジウム酸化物およびルテニウム酸化物のうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
1種の可能な実施形態において、負極拡散層および正極拡散層のうちの少なくとも一方の材料は、炭素繊維紙、炭素繊維織布、カーボン紙、発泡金属および不織布から選択される1種である。任意選択で、発泡金属は、発泡ニッケル、発泡銅、発泡アルミニウム、発泡亜鉛および発泡チタンから選択される1種である。任意選択で、負極拡散層および正極拡散層が、いずれも炭素繊維紙である。
【0018】
第2局面において、本出願に係る燃料電池は、負極ガスガイド溝と、正極ガスガイド溝と、負極ガスガイド溝と正極ガスガイド溝との間に設置される上記の燃料電池用電極ユニットとを備える。
【0019】
第3局面において、本出願に係る、上記の燃料電池用電極ユニットの作製方法は、正極拡散層において正極触媒層を形成して正電極を得ることと、負極拡散層において負極触媒層を形成して負電極を得ることと、正極触媒層および負極触媒層のうちの少なくとも一方においてポリマー電解質層を成長させることと、ポリマー電解質層を正極触媒層と負極触媒層との間に位置させるように正電極と負電極とを複合させることとを、含む。
【0020】
上記の方法によれば、従来のプロトン交換膜を使用しない電極ユニットを調製することができ、調製できたポリマー電解質材料のみが含まれるポリマー電解質層が、プロトンの通過を許すとともに電子伝達を阻止でき、高温条件下で作動することができ、プロトン伝達効果がより優れる。
1種の可能な実施形態において正極拡散層において正極触媒層を形成するとともにポリマー電解質樹脂層を形成し、正電極を得、
または/および負極拡散層において負極触媒層を形成するとともにポリマー電解質樹脂層を形成し、負電極を得、
ポリマー電解質樹脂層を正極触媒層と負極触媒層との間に位置させるように正電極と負電極とを複合させる。
【0021】
触媒層を調製すると同時にポリマー電解質樹脂層を調製し、電極ユニットを作製するとき別途のプロトン交換膜を使用することが不要で、調製が比較的に簡単で、従来のプロトン交換膜の使用が不要になる。
【0022】
1種の可能な実施形態において、正電極および負電極のうちの少なくとも一方の調製方法は、
触媒活性材料と触媒溶剤とポリマー電解質樹脂とを混合して触媒ペーストを得ることと、
触媒ペーストを拡散層の表面に塗布して固化させることにより、拡散層において拡散層に近接する触媒層および拡散層から離間するポリマー電解質樹脂層を形成することとを含む。
【0023】
触媒ペースト層を固化させるとき、触媒および一部のポリマー電解質樹脂が拡散層に近接する側に堆積して触媒層を形成し、一部のポリマー電解質が浮き上がり、乾燥しながら比較的に薄いポリマー電解質層構造が成長し、これによって、プロトンの通過を許すとともに電子伝達を防止できるように形成される。
【0024】
任意選択で、ポリマー電解質樹脂は、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびスルホン化ポリスルホン樹脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
任意選択で、触媒ペーストにおいて、ポリマー電解質樹脂の質量濃度は、2%~20%であり、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、触媒活性材料とポリマー電解質樹脂の質量比は、1:(0.2~0.5)である。
【0026】
1種の可能な実施形態において、触媒ペーストに、高沸点溶剤をさらに含み、高沸点溶剤の沸点が触媒溶剤の沸点より高い。溶剤の急速な揮発を防止することができ、ポリマー電解質と触媒との物理的分離に十分の時間を提供し、これによって、触媒が堆積し、ポリマー電解質が浮き上がってポリマー電解質層を形成する。
【0027】
任意選択で、触媒溶剤は、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールおよびプロピルアルコールのうちの少なくとも1種を含み、高沸点溶剤が、エチレングリコールまたはグリセリンを含む。
【0028】
任意選択で、触媒ペーストにおいて、触媒層の空隙率を調整する開孔剤をさらに含む。
【0029】
任意選択で、開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種であり、任意選択で、触媒活性材料と高沸点溶剤と開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)である。
【0030】
1種の可能な実施形態において、正極拡散層において正極触媒層を形成するとともに多孔質ポリマー層を形成し、正電極を得、
または/および負極拡散層において負極触媒層を形成するとともに多孔質ポリマー層を形成し、負電極を得、
多孔質ポリマー層を酸液またはアルカリ液に浸漬させ、乾燥してポリマー電解質層を形成し、
ポリマー電解質層を正極触媒層と負極触媒層との間に位置させるように正電極と負電極とを複合させる。
【0031】
触媒層を調製すると同時に多孔質ポリマー層を調製し、そして酸液またはアルカリ液に浸漬させたあと、プロトン交換機能を備えるポリマー電解質層として形成され、これによって、電極ユニットを作製するときに別途のプロトン交換膜を使用することが不要で、調製が比較的に簡単で、従来のプロトン交換膜の使用が不要になる。
任意選択で、酸液は、リン酸溶液、硫酸溶液、塩酸溶液または硝酸溶液である。任意選択で、酸液の質量濃度は、5%~15%である。
【0032】
任意選択で、アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液のうちの少なくとも一方である。任意選択で、アルカリ液の質量濃度は、5%~15%である。
【0033】
1種の可能な実施形態において、正電極および負電極のうちの少なくとも一方の調製方法は、触媒活性材料と触媒溶剤と多孔質ポリマーとを混合して触媒ペーストを得ることと、触媒ペーストを拡散層の表面に塗布し、乾燥することにより、拡散層において拡散層に近接する触媒層および拡散層から離間する多孔質ポリマー層を形成することとを含む。
【0034】
触媒ペースト層を固化させるとき、触媒および一部の多孔質ポリマー層が拡散層に近接する側に堆積して触媒層を形成し、一部の多孔質ポリマー層が浮き上がり、乾燥しながら比較的に薄い多孔質ポリマー層構造が成長し、後の電極ユニットの作製に備える。
【0035】
任意選択で、ポリマー電解質の材料は、ポリベンゾイミダゾールを含む。任意選択で、触媒ペーストにおいて、多孔質ポリマーの質量濃度は、2%~20%であり、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、触媒活性材料と多孔質ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)である。
【0036】
任意選択で、触媒ペーストに、高沸点溶剤をさらに含み、高沸点溶剤の沸点が触媒溶剤の沸点より高い。
【0037】
任意選択で、触媒溶剤は、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールおよびプロピルアルコールのうちの少なくとも1種を含み、高沸点溶剤は、エチレングリコールまたはグリセリンを含む。
【0038】
任意選択で、触媒ペーストに、開孔剤をさらに含み、任意選択で、開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
任意選択で、触媒活性材料と高沸点溶剤と開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)である。
【0039】
1種の可能な実施形態において、正極拡散層において正極触媒層を形成して正電極を得、負極拡散層において負極触媒層を形成して負電極を得、
正電極および負電極のうちの少なくとも一方の触媒層をポリマー電解質樹脂溶液に浸漬させ、乾燥して触媒層においてポリマー電解質樹脂層を形成し、
ポリマー電解質樹脂層を正極触媒層と負極触媒層との間に位置させるように正電極と負電極とを複合させる。
【0040】
浸漬の方式により1層の単独のポリマー電解質樹脂層を形成することにより、プロトン交換の役割を果たし、電極ユニットの調製に別途のプロトン交換膜を使用することが不要で、調製が比較的に簡単で、従来のプロトン交換膜の使用が不要になる。
【0041】
任意選択で、ポリマー電解質樹脂溶液の質量濃度は、3%~10%であり、
任意選択で、ポリマー電解質樹脂は、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびスルホン化ポリスルホン樹脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0042】
1種の可能な実施形態において、正極拡散層において正極触媒層を形成して正電極を得、負極拡散層において負極触媒層を形成して負電極を得、
正電極および負電極のうちの少なくとも一方の触媒層を多孔質ポリマー溶液に浸漬させ、乾燥して触媒層において多孔質ポリマー層を形成し、
多孔質ポリマー層を酸液またはアルカリ液に浸漬させ、乾燥してポリマー電解質層を形成し、
ポリマー電解質層を正極触媒層と負極触媒層との間に位置させるように正電極と負電極とを複合させる。
【0043】
まず浸漬の方式により1層の単独の多孔質ポリマー層を形成し、そして酸液またはアルカリ液に浸漬させ、プロトン交換機能を備えるポリマー電解質層を形成し、これによって、電極ユニットを調製するときに別途のプロトン交換膜を使用することが不要で、調製が比較的に簡単で、従来のプロトン交換膜の使用が不要になる。
【0044】
任意選択で、多孔質ポリマー樹脂溶液の質量濃度は、3%~10%であり、任意選択で、多孔質ポリマー樹脂は、ポリベンゾイミダゾールである。
任意選択で、酸液は、リン酸溶液、硫酸溶液、塩酸溶液または硝酸溶液であり、任意選択で、酸液の質量濃度は、5%~15%である。
【0045】
任意選択で、アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液のうちの少なくとも一方であり、任意選択で、アルカリ液の質量濃度は、5%~15%である。
【0046】
1種の可能な実施形態において、正電極および負電極のうちの少なくとも一方の調製方法は、触媒活性材料と触媒溶剤と疎水性ポリマーとを混合して触媒ペーストを得ることと、触媒ペーストを拡散層の表面に塗布し、乾燥することにより、拡散層において触媒層を形成することとを含む。
【0047】
まず触媒層を形成し、触媒層に疎水性ポリマーと触媒顆粒とが含まれる。一方、乳液が顆粒状のものであり、顆粒同士が結合し、触媒が乳液で被覆されることが避けられ、触媒と燃料ガスとが十分な接触面積を有し、反応速度を上げることができる。他方、触媒層の疎水性がより優れ、表面反応で生成した水による、その後の触媒反応への影響を避けることができる。
【0048】
任意選択で、疎水性ポリマーは、PTFE乳液またはジメチルシリコーンオイルであり、任意選択で、触媒ペーストにおいて、疎水性ポリマーの質量濃度は、2%~20%であり、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%であり、触媒活性材料と疎水性ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)である。
【0049】
1種の可能な実施形態において、触媒ペーストにおいて、触媒層の空隙率を調整する開孔剤をさらに含み、任意選択で、開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含み、任意選択で、触媒活性材料と開孔剤の質量比は、1:(0.1~0.33)である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本出願の実施例による電極ユニットの模式的構成図の一である。
図2】本出願の実施例による電極ユニットの模式的構成図の二である。
図3】本出願の実施例1による電池正極の走査型電子顕微鏡写真の一である。
図4】本出願の実施例1による電池正極の走査型電子顕微鏡写真の二である。
図5】本出願の実施例1による電池正極の走査型電子顕微鏡写真の三である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願の一部の実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、これらの図面に基づいて、発明能力を用いることなく得た他の関連図面も本出願の保護範囲に属する。
【0052】
発明者が研究したところ、現在使用しているプロトン交換膜は、一般的に、Nafionシリーズ膜であり、例えば、パーフルオロスルホン酸樹脂を溶融状態に加熱して(一般的に、温度を160~230℃にコントロールした)押出成形で成膜し、成膜したあと、軟化状態に加熱し、複合、強化して得たパーフルオロスルホン酸プロトン交換膜である。パーフルオロスルホン酸プロトン交換膜を用いてMEA膜電極を調製して、燃料電池を作製する。この燃料電池は、60℃を超える条件下で作動するとき、発電能力が大幅に低下し、80℃を超える条件下で作動するとき、プロトン交換膜が変化し、燃料電池の安全性が大きく影響される。上記の問題の主な原因は、高温条件下でプロトン交換膜に膨潤が発生するからである。
【0053】
図1は、本出願の実施例による電極ユニットの模式的構成図の一である。図2は、本出願の実施例による電極ユニットの模式的構成図の二である。図1および図2に示すように、本出願に係る電極ユニットは、プロトン交換膜の使用が不要で、高温条件下でのプロトン交換膜の膨潤という問題を根本から解決できるとともに、生産コストを低減することもできる。
【0054】
本出願に係る電極ユニットの作製方法は、正極拡散層110において正極触媒層120を形成して正電極を得ることと、負極拡散層130において負極触媒層140を形成して負電極を得ることと、正極触媒層120および負極触媒層140のうちの少なくとも一方においてポリマー電解質層150を成長させることと、ポリマー電解質層150を正極触媒層120と負極触媒層140との間に位置させるように正電極と負電極とを複合させることとを含む。
【0055】
図1を参照し、正極触媒層120および負極触媒層140のそれぞれにおいてポリマー電解質層150を成長させることにより、図1に示される電極ユニットを形成する。図2を参照し、正極触媒層120においてポリマー電解質層150を成長させることにより、図2に示される電極ユニットを形成する。他の実施例において、負極触媒層140のみにおいてポリマー電解質層150を成長させてもよく、本出願では限定しない。
【0056】
本出願において、該ポリマー電解質層150は、材料としてポリマー電解質のみが含まれ、プロトンの通過を許すとともに電子の伝達を阻止することができ、従来技術におけるプロトン交換膜と異なって、膜構造を調製することが不要で、直接に触媒層において成長させ、ポリマー電解質層150によれば、厚さが比較的に薄くかつ均一であるため、電極ユニットの内部抵抗を低減させることができ、電極ユニットのエネルギー密度を向上させることができる。
【0057】
さらに、本出願に係る電極ユニットは、多種の方法で作製することができ、以下、そのうちの3種の作製方法をそれぞれ説明する。
第1種の方法は、下記の通りである。
【0058】
S110において、触媒ペーストを調製する。
触媒活性材料と触媒溶剤とポリマー電解質樹脂とを混合して触媒ペーストを得る。
【0059】
上記のポリマー電解質樹脂は、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびスルホン化ポリスルホン樹脂のうちの少なくとも1種を含む。例えば、ポリマー電解質溶液は、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液、パーフルオロカルボン酸樹脂溶液、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂溶液およびスルホン化ポリスルホン樹脂溶液のうちの少なくとも1種である。
【0060】
任意選択で、触媒ペーストにおいて、ポリマー電解質樹脂の質量濃度は、2%~20%である。例示的に、触媒ペーストにおいて、ポリマー電解質樹脂の質量濃度は、2%、5%、10%、15%または20%である。
【0061】
上記の触媒活性材料は、貴金属触媒および金属酸化物触媒のうちの少なくとも一方を含む。例えば、触媒活性材料は、金属触媒、または金属酸化物触媒、または金属触媒と金属酸化物触媒との混合物である。
【0062】
任意選択で、貴金属触媒は、Pt触媒、Pt基複合触媒およびPt/C触媒のうちの少なくとも1種を含む。金属酸化物触媒は、イリジウム酸化物、ルビジウム酸化物およびルテニウム酸化物のうちの少なくとも1種を含む。
【0063】
任意選択で、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%である。例示的に、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%、15%、25%、35%または45%である。
【0064】
任意選択で、触媒活性材料とポリマー電解質樹脂の質量比は、1:(0.2~0.5)である。例示的に、触媒活性材料とポリマー電解質樹脂の質量比は、1:0.2、1:0.3、1:0.4または1:0.5である。
【0065】
さらに、触媒活性材料の粒径は、0.1~1nmであり、ポリマー電解質樹脂材料の粒径は、0.2~5μmである。例示的に、触媒活性材料の粒径は、0.1~0.5nmまたは0.5~1nmであり、ポリマー電解質材料の粒径は、0.2~1μm、1~3μmまたは3~5μmである。
【0066】
上記の触媒溶剤は、水、有機溶剤などであってもよい。例えば、有機溶剤は、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールおよびプロピルアルコールのうちの少なくとも1種である。
【0067】
本出願の実施例において、触媒ペーストの性能を向上させるため、触媒ペーストに高沸点溶剤(高沸点溶剤の沸点が触媒溶剤の沸点より高い)、開孔剤などを添加してもよい。任意選択で、高沸点溶剤は、エチレングリコールまたはグリセリンであり、開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0068】
任意選択で、触媒活性材料と前記高沸点溶剤と前記開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)である。例示的に、触媒活性材料と前記高沸点溶剤と前記開孔剤の質量比は、1:0.1:0.1、1:3:0.33、1:1:0.2または1:2:0.3である。
S120において、正電極および負電極を調製する。
【0069】
触媒ペーストを拡散層の表面に塗布して固化させることにより、拡散層において拡散層に近接する触媒層および拡散層から離間するポリマー電解質樹脂層を形成する。
【0070】
任意選択で、拡散層を40~120℃に加熱して、触媒ペーストを拡散層の表面にスプレー塗布し、固化を行う。任意選択で、固化が80~150℃の条件下で行われる。
【0071】
上記の拡散層は、炭素繊維紙、炭素繊維織布、カーボン紙、発泡金属および不織布から選択される1種である。任意選択で、発泡金属は、発泡ニッケル、発泡銅、発泡アルミニウム、発泡亜鉛および発泡チタンから選択される1種である。さらに、負極拡散層130および正極拡散層110は、いずれも炭素繊維紙である。
【0072】
正電極について、まず、正極拡散層110を40~120℃に加熱し、そして調製できた正極触媒ペーストを正極拡散層110の1つの表面に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布ができたあと、80~150℃の条件下で1~6h固化させて、正極拡散層110において正極拡散層110に近接する正極触媒層120および正極拡散層110から離間するポリマー電解質層を形成したものを正電極とする。
【0073】
負電極について、まず、負極拡散層130を40~120℃に加熱し、そして、調製できた負極触媒ペーストを負極拡散層130の1つの表面に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布ができたあと、80~150℃の条件下で1~6h固化させて、負極拡散層130において負極拡散層130に近接する負極触媒層140および負極拡散層130から離間するポリマー電解質層を形成したものを負電極とする。
【0074】
なお、正電極および負電極を調製するとき、正電極および負電極の両方ともステップS110により調製できた触媒ペーストを使用するとは限らなく、正電極および負電極のうちの少なくとも一方の調製に、ステップS110により調製できた触媒ペーストを使用すればよい。
【0075】
S130において、電極ユニットを調製する。
ポリマー電解質層150を正極触媒層120と負極触媒層140との間に位置させるようにS120により調製できた正電極と負電極とを複合させる。
【0076】
任意選択で、ポリマー電解質層150を正極触媒層120と負極触媒層140との間に位置させるようにS120により調製できた正電極と負電極とを合着させ、そして、熱間圧接温度が100~150℃であり、圧力が0.1~0.4MPaである条件下で120~300sの熱間圧接を行う。
【0077】
正電極における正極触媒層120の、正極拡散層110から離間する側にポリマー電解質層150が形成され、普通の触媒ペーストを利用して負電極の調製を行い、負極触媒層140にポリマー電解質層150が形成されていない場合、調製できた電極ユニットの負極触媒層140と正極触媒層120との間に1層のポリマー電解質層150を有する(図2を参照)。
【0078】
負電極における負極触媒層140の、負極拡散層130から離間する側にポリマー電解質層150が形成され、普通の触媒ペーストを利用して正電極の調製を行い、正極触媒層120にポリマー電解質層150が形成されていない場合、調製できた電極ユニットの負極触媒層140と正極触媒層120との間に1層のポリマー電解質層150を有する。
【0079】
正電極における正極触媒層120の、正極拡散層110から離間する側にポリマー電解質層150が形成され、負電極における負極触媒層140の、負極拡散層130から離間する側にポリマー電解質層150が形成される場合、調製できた電極ユニットの負極触媒層140と正極触媒層120との間に2層のポリマー電解質層150を有する(図1を参照)。
【0080】
第2種の方法は、下記の通りである。
S210において、触媒ペーストを調製する。
触媒活性材料と触媒溶剤と多孔質ポリマーとを混合して触媒ペーストを得る。
【0081】
上記の触媒活性材料は、第1種の方法における触媒活性材料と同じであるため、ここで説明を省略する。上記の溶剤は、第1種の方法における溶剤と同じであるため、ここで説明を省略する。本実施例において、触媒ペーストに高沸点溶剤および開孔剤のうちの少なくとも一方をさらに含んでもよく、高沸点溶剤、開孔剤が第1種の方法における高沸点溶剤、開孔剤と同じであるため、ここで説明を省略する。
【0082】
上記の多孔質ポリマーは、ポリベンゾイミダゾールである。任意選択で、触媒ペーストにおいて、多孔質ポリマーの質量濃度は、2%~20%である。例示的に、触媒ペーストにおいて、多孔質ポリマーの質量濃度は、2%、5%、10%、15%または20%である。
【0083】
任意選択で、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%である。例示的に、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%または45%である。
【0084】
触媒活性材料と多孔質ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)である。例示的に、触媒活性材料と多孔質ポリマーの質量比は、1:0.2、1:0.3、1:0.4または1:0.5である。本出願の実施例において、触媒ペーストの性能を向上させるため、触媒ペーストに高沸点溶剤(高沸点溶剤の沸点が触媒溶剤の沸点より高い)、開孔剤などを添加してもよい。任意選択で、高沸点溶剤は、エチレングリコールまたはグリセリンであり、開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0085】
任意選択で、触媒活性材料と前記高沸点溶剤と前記開孔剤の質量比は、1:(0.1~3):(0.1~0.33)である。例示的に、触媒活性材料と前記高沸点溶剤と前記開孔剤の質量比は、1:0.1:0.1、1:3:0.33、1:1:0.2または1:2:0.3である。
S220において、正電極および負電極を調製する。
【0086】
触媒ペーストを拡散層の表面に塗布し、乾燥させ、拡散層において拡散層に近接する触媒層および拡散層から離間する多孔質ポリマー層を形成し、多孔質ポリマー層を酸液またはアルカリ液に浸漬させ、乾燥してポリマー電解質層を形成する。
【0087】
任意選択で、拡散層を60~180℃に加熱して、触媒ペーストを拡散層の表面にスプレー塗布し、固化を行う。任意選択で、固化が80~160℃の条件下で行われる。
上記の拡散層は、第1種の方法における拡散層と同じであるため、ここで説明を省略する。
【0088】
正電極について、まず、正極拡散層110を60~180℃に加熱し、そして、調製できた正極触媒ペーストを正極拡散層110の1つの表面に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布ができたあと、80~160℃の条件下で1~5h固化させて、正極拡散層110において正極拡散層110に接近する正極触媒層120および正極拡散層110から離間する多孔質ポリマー層を形成する。このとき、多孔質ポリマー層は、プロトンの通過を許すとともに電子伝達を阻止する機能を有していない。さらに、酸液またはアルカリ液に5~4h浸漬させて80~200℃の条件下で乾燥したものを正電極とし、このとき、プロトンの通過を許すとともに電子伝達を阻止できるポリマー電解質層150を得ることができる。
【0089】
負電極について、まず、負極拡散層130を60~180℃に加熱し、そして、調製できた負極触媒ペーストを負極拡散層130の1つの表面に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布ができたあと、80~160℃の条件下で1~5h固化させて、負極拡散層130において負極拡散層130に近接する負極触媒層140および負極拡散層130から離間する多孔質ポリマー層を形成する。このとき、多孔質ポリマー層は、プロトンの通過を許すとともに電子伝達を阻止する機能を有していない。さらに、酸液またはアルカリ液に5~4h浸漬させて80~200℃の条件下で乾燥したものを負電極とし、このとき、プロトンの通過を許すとともに電子伝達を阻止できるポリマー電解質層150を得ることができる。
【0090】
なお、正電極および負電極を調製するとき、正電極および負電極の両方ともステップS210により調製できた触媒ペーストを使用するとは限らなく、正電極および負電極のうちの少なくとも一方の調製に、ステップS210により調製できた触媒ペーストを使用すればよい。
【0091】
本出願の実施例において、酸液は、リン酸溶液、硫酸溶液、塩酸溶液または硝酸溶液である。任意選択で、酸液の質量濃度は、5%~15%である。例示的に、酸液の質量濃度は、5%、8%、12%または15%である。
【0092】
本出願の実施例において、アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液のうちの少なくとも一方である。任意選択で、アルカリ液の質量濃度は、5%~15%である。例示的に、アルカリ液の質量濃度は、5%、8%、12%または15%である。
【0093】
S230において、電極ユニットを調製する。
ポリマー電解質層150を正極触媒層120と負極触媒層140との間に位置させるようにS220により調製できた正電極と負電極とを複合させる。
【0094】
任意選択で、ポリマー電解質層150を正極触媒層120と負極触媒層140との間に位置させるようにS220により調製できた正電極と負電極とを合着させ、そして、熱間圧接温度が100~150℃であり、圧力が0.1~0.4MPaである条件下で120~300sの熱間圧接を行う。
【0095】
第2種の方法によれば、第1種の方法と同様に、1層のポリマー電解質層150または2層のポリマー電解質層150を有する電極ユニットを形成することができるため(図1および図2を参照)、ここで説明を省略する。
【0096】
第3種の方法は、下記の通りである。
S310において、触媒ペーストを調製する。
触媒活性材料と触媒溶剤と疎水性ポリマーとを混合して触媒ペーストを得る。
【0097】
上記の触媒活性材料は、第1種の方法における触媒活性材料と同じであるため、ここで説明を省略する。上記の溶剤は、第1種の方法における溶剤と同じであるため、ここで説明を省略する。本実施例において、触媒ペーストに高沸点溶剤および開孔剤のうちの少なくとも一方をさらに含んでもよく、高沸点溶剤、開孔剤が第1種の方法における高沸点溶剤、開孔剤と同じであるため、ここで説明を省略する。
【0098】
上記の疎水性ポリマーは、PTFE乳液またはジメチルシリコーンオイルである。任意選択で、触媒ペーストにおいて、疎水性ポリマーの質量濃度は、2%~20%である。例示的に、触媒ペーストにおいて、疎水性ポリマーの質量濃度は、2%、5%、10%、15%または20%である。
【0099】
任意選択で、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%~45%である。例示的に、触媒ペーストにおいて、触媒活性材料の質量濃度は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%または45%である。
【0100】
任意選択で、触媒活性材料と疎水性ポリマーの質量比は、1:(0.2~0.5)である。例示的に、触媒活性材料と疎水性ポリマーの質量比は、1:0.2、1:0.3、1:0.4または1:0.5である。
【0101】
本出願の実施例において、触媒ペーストの性能を向上させるため、触媒ペーストに開孔剤などを添加してもよい。開孔剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0102】
任意選択で、触媒活性材料と前記開孔剤の質量比は、1:(0.1~0.33)である。例示的に、触媒活性材料と前記高沸点溶剤と前記開孔剤の質量比は、1:0.1、1:0.33、1:0.2または1:0.3である。
【0103】
S320において、正電極および負電極を調製する。
触媒ペーストを拡散層の表面に塗布し、乾燥させ、拡散層において触媒層を形成し、そして、ポリマー電解質溶液に浸漬させ、乾燥して触媒層の表面においてポリマー電解質層150を成長させることにより電極を形成する。ポリマー電解質溶液の質量濃度は、3%~8%である。
【0104】
上記のポリマー電解質の材料は、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、および酸液またはアルカリ液により浸漬したポリベンゾイミダゾールのうちの少なくとも1種を含む。任意選択で、ポリマー電解質溶液の質量濃度は、3%、5%、7%または8%である。
【0105】
ポリマー電解質溶液が、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液、パーフルオロカルボン酸樹脂溶液、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂溶液およびスルホン化ポリスルホン樹脂溶液のうちの少なくとも1種を含む場合、電極の調製方法は、下記の通りである。拡散層を60~110℃に加熱し、そしてステップS310による触媒ペーストを拡散層の表面にスプレー塗布し、そして、100~180℃の条件下で30~120min乾燥して、拡散層の表面において触媒層を形成する。触媒層を有する拡散層をポリマー電解質溶液(溶剤がイソプロピルアルコールである)に入れて12~24h浸漬させ、取り出して80~190℃の条件下で乾燥して、触媒層の表面においてポリマー電解質層150構造を形成する。
【0106】
ポリマー電解質溶液がポリベンゾイミダゾール溶液である場合、電極の調製方法は、下記の通りである。拡散層を60~110℃に加熱し、そしてステップS310による触媒ペーストを拡散層の表面にスプレー塗布し、そして、100~180℃の条件下で30~120min乾燥して、拡散層の表面において触媒層を形成する。触媒層を有する拡散層をポリマー電解質溶液(溶剤がイソプロピルアルコールである)に入れて12~24h浸漬させ、取り出して80~190℃の条件下で乾燥して、さらに酸液またはアルカリ液(酸液は、リン酸溶液である。任意選択で、アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液のうちの少なくとも一方である)に12~24h浸漬させ、取り出して乾燥して、触媒層の表面においてポリマー電解質層150構造を形成する。
【0107】
なお、正電極および負電極を調製するとき、正電極および負電極の両方とも触媒ペーストをポリマー電解質溶液に浸漬してポリマー電解質層150を形成するとは限らなく、正電極および負電極のうちの少なくとも一方が、ポリマー電解質溶液に浸漬してポリマー電解質層150を形成すればよい。
【0108】
S330において、電極ユニットを調製する。
ポリマー電解質層150を正極触媒層120と負極触媒層140との間に位置させるようにS320により調製できた正電極と負電極とを複合させる。
【0109】
任意選択で、ポリマー電解質層150を正極触媒層120と負極触媒層140との間に位置させるようにS320により調製できた正電極と負電極とを合着させ、そして、熱間圧接温度が100~150℃であり、圧力が0.1~0.4MPaである条件下で120~300sの熱間圧接を行う。
【0110】
第3種の方法によれば、1層のポリマー電解質層150または2層のポリマー電解質層150を有する電極ユニットを形成することができるため(図1および図2を参照)、ここで説明を省略する。
【0111】
上記の3種の作製方法のいずれによっても、プロトン交換膜を設けない電極ユニットを形成することができる。該電極ユニットは、ポリマー電解質層150と、ポリマー電解質層150の2つの表面にそれぞれ形成される負極触媒層140および正極触媒層120と、負極触媒層140のポリマー電解質層150から離間する側に形成される負極拡散層130および正極触媒層120のポリマー電解質層150から離間する側に形成される正極拡散層110とを有し、ポリマー電解質層150が負極触媒層140および正極触媒層120のうちの少なくとも一方に成長される。
【0112】
任意選択で、ポリマー電解質は、パーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、および酸液またはアルカリ液により浸漬したポリベンゾイミダゾールのうちの少なくとも1種を含む。
【0113】
本出願の実施例において、ポリマー電解質層150の厚さは、1~10μmであり、燃料電池用電極ユニットの厚さは、200μm未満であり、ポリマー電解質層150の空隙率は、10%~90%である。例えば、ポリマー電解質層150の厚さは、1~3μmであり、燃料電池用電極ユニットの厚さは、100~120μmであり、ポリマー電解質層150の空隙率は、10%~30%である。ポリマー電解質層150の厚さは、3~6μmであり、燃料電池用電極ユニットの厚さは、120~150μmであり、ポリマー電解質層150の空隙率は、30%~60%である。ポリマー電解質層150の厚さは、6~10μmであり、燃料電池用電極ユニットの厚さは、150~190μmであり、ポリマー電解質層150の空隙率は、60%~90%である。
【0114】
本出願は、負極ガスガイド溝と、正極ガスガイド溝と、負極ガスガイド溝と正極ガスガイド溝との間に設置される上記の燃料電池用電極ユニットを備える燃料電池をさらに提供する。
【0115】
本出願の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭にするため、以下、本出願の実施例における技術案を明瞭かつ完全に説明する。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件又はメーカーの勧めの条件下で行うことが可能である。使用する試剤又は器械の、製造メーカーが明記されていないものが、市販の従来品を使用することが可能である。
【0116】
実施例1
正極の調製
【0117】
60wt%のPt/C触媒0.02gを秤量してビーカーに入れ、超純水2gを加え、マグネチックスターラーにより、1200rpmの回転速度で8min撹拌し、ペーストを得た。
【0118】
上記のペーストに質量濃度が5%であるパーフルオロスルホン酸樹脂溶液0.5gを添加し、さらに、上記のペーストをホモミキサーに入れて撹拌し、撹拌の回転速度を1800rpmにし、撹拌時間を15minにした。
【0119】
第2回の撹拌が完了したあと、ペーストにイソプロピルアルコール4gを加え、そしてペーストにエチレングリコール1gを添加し、5minの超音波処理を行ったあとに酢酸アンモニウム溶液(0.1gの酢酸アンモニウムを0.5gの超純水に溶解して形成した酢酸アンモニウム溶液)を加え、30minの超音波処理をさらに行って触媒ペーストを得た。
【0120】
炭素繊維紙を正極拡散層として使用し、まず、炭素繊維紙を5cm×6cmの長方形に裁断し、加熱プラットフォームに置いて加熱し、加熱温度を100℃にした。そして、調製できた触媒ペーストを炭素繊維紙に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布が完了したあと、温度が120℃である条件下で4h固化させ、固化ができた電極を燃料電池の正極として使用した。
【0121】
負極の調製
33wt%のPt/C触媒0.01gを秤量してビーカーに入れ、超純水2gを加え、水および触媒をホモミキサーに置いて、1200rpmの回転速度で8min撹拌し、ペーストを得た。
【0122】
上記のペーストに質量濃度が5%であるパーフルオロスルホン酸樹脂溶液0.1gを添加し、上記のペーストをホモミキサーに入れてさらに撹拌し、撹拌の回転速度を1800rpmにし、撹拌時間を15minにした。
【0123】
第2回の撹拌が完了したあと、ペーストにイソプロピルアルコール2gを加え、そしてペーストにエチレングリコール0.5gを添加し、5minの超音波処理を行ったあとに酢酸アンモニウム溶液(0.08gの酢酸アンモニウムを0.25gの超純水に溶解して形成した酢酸アンモニウム溶液)を加え、30minの超音波処理をさらに行って触媒ペーストを得た。
【0124】
炭素繊維紙を負極拡散層として使用し、まず、炭素繊維紙を5cm×6cmの長方形に裁断し、加熱プラットフォームに置いて加熱し、加熱温度を100℃にした。そして、調製できた触媒ペーストを炭素繊維紙に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布が完了したあと、温度が120℃である条件下で4h固化させ、固化ができた電極を燃料電池の正極として使用した。
【0125】
電極ユニットの作製
固化ができた電極を2.5cm×5cmの長方形に裁断し、正、負極板を合着させて熱間圧接を行い、熱間圧接の温度を120℃にし、熱間圧接の時間を200sにし、圧力を2MPaにした。
【0126】
放電性能評価
圧接ができた正、負極をシリカゲルでガスガイド溝に接着し、負極に水素ガスを導入し、水素ガス圧力が0.3MPaであり、正極において空気を利用して酸素ガスを供給した。電池を活性化させ、活性化された電池に対して放電評価を行い、電池温度が60℃であり、電圧が0.61Vであったとき、電流密度が880mAh/cmであった。
【0127】
実施例2
本実施例による方法は、ペーストにエチレングリコールを添加しなかったところだけにおいて実施例1による方法と相違している。
【0128】
実施例3
本実施例による方法は、ペーストに酢酸アンモニウム溶液を添加しなかったところだけにおいて実施例1による方法と相違している。
【0129】
実施例4
本実施例による方法は、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液の質量濃度が10%であったところだけにおいて実施例1による方法と相違している。
【0130】
実施例5
本実施例による方法は、下記のところにおいて、実施例1による方法と相違している。負極触媒ペーストの調製方法として、33wt%のPt/C触媒0.01gを秤量してビーカーに入れ、超純水2gを加え、水および触媒をホモミキサーに置いて、1200rpmの回転速度で8min撹拌し、ペーストを得た。上記のペーストにイソプロピルアルコール2gを加え、そしてペーストにエチレングリコール0.5gを添加し、5minの超音波処理を行ったあとに酢酸アンモニウム溶液(0.08gの酢酸アンモニウムを0.25gの超純水に溶解して形成した酢酸アンモニウム溶液)を加え、30minの超音波処理をさらに行って触媒ペーストを得た。
実施例1~実施例5を表1にまとめる。
【0131】
【表1】
【0132】
表1から分かるように、実施例1~実施例5による方法のいずれによっても、従来のプロトン交換膜を使用しない電極ユニットを得ることができ、実施例1および実施例3による方法で作製した電極ユニットの放電性能が特に優れる。
【0133】
図3は、本出願の実施例1による電池正極の走査型電子顕微鏡写真の一であり、図4は、本出願の実施例1による電池正極の走査型電子顕微鏡写真の二であり、図5は、本出願の実施例1による電池正極の走査型電子顕微鏡写真の三である。図3は、平面走査型電子顕微鏡写真であり、図3から、電池正極の上面(2つの矢印で示される箇所)に1層の薄層構造が見え、その上面にポリマー電解質層構造が形成されていることがわかった。図4および図5は、電極正極を外したあとの断面走査型電子顕微鏡写真である。図4および図5から分かるように、電解質と触媒顆粒とが連結構造を形成し、微細顆粒間に不規則の連結、積層が形成され、これによって、ミクロ孔通路が形成され、ガス輸送および反応を促進する作用を有し、燃料と触媒顆粒との接触面積が増加した。
【0134】
実施例6
正極の調製
60wt%のPt/C触媒0.02gを秤量してビーカーに入れ、超純水2gを加え、水および触媒を超音波装置に入れて20min超音波振動させ、さらにエタノール1gを加え、40min超音波振動させてペーストを得た。
【0135】
ポリベンゾイミダゾール15gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーにジメチルアセトアミド85gを加えてマグネチックスターラーに入れて撹拌し、質量濃度が15%であるポリベンゾイミダゾール溶液を得た。ポリベンゾイミダゾール溶液1gを秤量して上記のペーストに加え、40min超音波振動させて触媒ペーストを得た。
【0136】
炭素繊維紙を正極拡散層として使用し、まず、炭素繊維紙を5cm×6cmの長方形に裁断し、加熱プラットフォームに置いて加熱し、加熱温度を120℃にした。そして、調製できた触媒ペーストを炭素繊維紙に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布が完了したあと、温度が140℃である条件下で4h固化させ、固化ができた電極を燃料電池の正極として使用した。
最後、調製できた電極をリン酸溶液に浸入させ、20h浸漬し、浸漬が完了したあと、電極を150℃下で乾燥した。
【0137】
負極の調製
60wt%のPt/C触媒0.01gを秤量してビーカーに入れ、超純水1gを加え、水および触媒を超音波装置に入れて20min超音波振動させ、さらにエタノール1gを加え、40min超音波振動させてペーストを得た。
【0138】
ポリベンゾイミダゾール15gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーにジメチルアセトアミド85gを加えてマグネチックスターラーに入れて撹拌し、質量濃度が15%であるポリベンゾイミダゾール溶液を得た。ポリベンゾイミダゾール溶液1.5gを秤量して上記のペーストに加え、40min超音波振動させて触媒ペーストを得た。
【0139】
炭素繊維紙を負極拡散層として使用し、まず、炭素繊維紙を5cm×6cmの長方形に裁断し、加熱プラットフォームに置いて加熱し、加熱温度を120℃にした。そして、調製できた触媒ペーストを炭素繊維紙に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布が完了したあと、温度が140℃である条件下で4h固化させ、固化ができた電極を燃料電池の正極として使用した。
最後、調製できた電極をリン酸溶液に浸入させ、20h浸漬し、浸漬が完了したあと、電極を150℃下で乾燥した。
【0140】
電極ユニットの作製
調製できた電極を2.5cm×5cmの長方形に裁断し、正、負極板を合着させて熱間圧接を行い、熱間圧接の温度を120℃にし、熱間圧接の時間を200sにし、圧力を2MPaにした。
【0141】
放電性能評価:
圧接ができた正、負極をシリカゲルでガスガイド溝に接着し、負極に水素ガスを導入し、水素ガス圧力が0.3MPaであり、正極において空気を利用して酸素ガスを供給した。電池を活性化させ、活性化された電池に対して放電評価を行い、電池温度が120℃であり、電圧が0.63Vであったとき、電流密度が600mAh/cmであり、電池温度が80℃であり、電圧が0.63Vであったとき、電流密度が600mAh/cmであり、電池温度が150℃であり、電圧が0.63Vであったとき、電流密度が450mAh/cmであった。
【0142】
上記の内容から分かるように、該電池が高温下で作動することができ、高温下で作動する燃料電池の触媒被毒が避けられ、燃料電池の使用寿命が長く、電池の作動が安定である。
【0143】
実施例7
本実施例による方法は、ペーストにエタノールを添加しなかったところだけにおいて実施例6による方法と相違している。
【0144】
実施例8
本実施例による方法は、リン酸溶液の代わりに水酸化カリウム溶液を使用したところだけにおいて実施例6による方法と相違している。
【0145】
実施例9
本実施例による方法は、ポリベンゾイミダゾール溶液の質量濃度が10%であるところだけにおいて実施例6による方法と相違している。
【0146】
実施例10
本実施例による方法は、ポリベンゾイミダゾール溶液の質量濃度が20%であるところだけにおいて実施例6による方法と相違している。
【0147】
実施例11
本実施例による方法は、下記のところにおいて、実施例6による方法と相違している。60wt%のPt/C触媒0.01gを秤量してビーカーに入れ、超純水1gを加え、水および触媒を超音波装置に入れて20min超音波振動させ、さらにエタノール1gを加え、40min超音波振動させて触媒ペーストを得た。
実施例6~実施例11を表2にまとめる。
【0148】
【表2】
【0149】
表2から分かるように、実施例6~実施例11による方法のいずれによっても、従来のプロトン交換膜を使用しない電極ユニットを得ることができ、実施例9および実施例10による方法で作製した電極ユニットの放電性能が特に優れる。
【0150】
実施例12
正極の調製
60wt%のPt/C触媒0.02gを秤量してビーカーに入れ、超純水2gを加え、乳化撹拌器により撹拌し、撹拌の回転速度を2000rpmにし、乳化時間を20minにした。さらにイソプロピルアルコール3g、60%のPTFE乳液2.5gを添加して、撹拌乳化を行い、撹拌の回転速度を10000rpmにコントロールした。
【0151】
炭酸水素アンモニウム1gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーに超純水5gを加え、マグネチックスターラーにより30min撹拌し、質量濃度が20%である炭酸水素アンモニウム溶液を得た。炭酸水素アンモニウム溶液2gを秤量して上記のペーストに加え、超音波装置に入れて120min超音波振動させて触媒ペーストを得た。
【0152】
炭素繊維紙を正極拡散層として使用し、まず、炭素繊維紙を5cm×6cmの長方形に裁断し、加熱プラットフォームに置いて加熱し、加熱温度を100℃にした。そして、調製できた触媒ペーストを炭素繊維紙に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布が完了したあと、温度が140℃である条件下で100min乾燥し、電極を得た。
【0153】
パーフルオロスルホン酸樹脂5gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーにイソプロピルアルコール95gを加え、マグネチックスターラーにより100min撹拌し、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液を得た。スプレー塗布ができた電極をパーフルオロスルホン酸樹脂溶液に入れて20h浸漬させ、電極を取り出して160℃の条件下で乾燥し、電池正極を得た。
【0154】
負極の調製
60wt%のPt/C触媒0.01gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーに超純水1gを加え、乳化撹拌器により撹拌してペーストを得た。撹拌の回転速度を2000rpmにし、乳化時間を20minにした。さらにイソプロピルアルコール1.5g、60%のPTFE乳液1.5gを添加して、撹拌乳化を行い、撹拌の回転速度を10000rpmにコントロールした。
【0155】
炭酸水素アンモニウム0.5gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーに超純水2.5gを加え、マグネチックスターラーにより30min撹拌し、質量濃度が20%である炭酸水素アンモニウム溶液を得た。炭酸水素アンモニウム溶液1gを秤量して上記のペーストに加え、超音波装置に入れて120min超音波振動させて触媒ペーストを得た。
【0156】
炭素繊維紙を負極拡散層として使用し、まず、炭素繊維紙を5cm×6cmの長方形に裁断し、加熱プラットフォームに置いて加熱し、加熱温度を100℃にした。そして、調製できた触媒ペーストを炭素繊維紙に均一にスプレー塗布し、スプレー塗布が完了したあと、温度が140℃である条件下で100min乾燥し、電極を得た。
【0157】
パーフルオロスルホン酸樹脂2.5gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーにイソプロピルアルコール47.5gを加え、マグネチックスターラーにより100min撹拌し、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液を得た。スプレー塗布ができた電極をパーフルオロスルホン酸樹脂溶液に入れて20h浸漬させ、電極を取り出して160℃の条件下で乾燥し、電池正極を得た。
【0158】
電極ユニットの作製
調製できた電極を2.5cm×5cmの長方形に裁断し、正、負極板を合着させて熱間圧接を行い、熱間圧接の温度を120℃にし、熱間圧接の時間を200sにし、圧力を2MPaにした。
【0159】
放電性能評価:
圧接ができた正、負極をシリカゲルでガスガイド溝に接着し、負極に水素ガスを導入し、水素ガス圧力が0.3MPaであり、正極において空気を利用して酸素ガスを供給した。電池を活性化させ、活性化された電池に対して放電評価を行い、電池温度が60℃であり、電圧が0.61Vであったとき、電流密度が560mAh/cmであり、電池温度が90℃であり、電圧が0.65Vであったとき、電流密度が610mAh/cmであった。
【0160】
実施例13
本実施例による方法は、下記のところにおいて実施例12による方法と相違している。
正極の調製
ポリベンゾイミダゾール5gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーにジメチルアセトアミド95gを加え、マグネチックスターラーにより100min撹拌してポリベンゾイミダゾール溶液を得た。スプレー塗布ができた電極をポリベンゾイミダゾール溶液に入れて20h浸漬させ、電極を取り出して160℃の条件下で乾燥し、リン酸溶液に入れて20h浸漬させ、乾燥して電池正極を得た。
【0161】
負極調製:
ポリベンゾイミダゾール2.5gを秤量してビーカーに入れ、ビーカーにジメチルアセトアミド47.5gを加え、マグネチックスターラーにより100min撹拌してポリベンゾイミダゾール溶液を得た。スプレー塗布ができた電極をポリベンゾイミダゾール溶液に入れて20h浸漬させ、電極を取り出して160℃の条件下で乾燥し、リン酸溶液に入れて20h浸漬させ、乾燥して電池正極を得た。
【0162】
実施例14
本実施例による方法は、ペーストに炭酸水素アンモニウム溶液を添加しなかったところだけにおいて実施例12による方法と相違している。
【0163】
実施例15
本実施例による方法は、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液の質量濃度が10%であるところだけにおいて実施例12による方法と相違している。
実施例12~実施例15を表3にまとめる。
【0164】
【表3】
【0165】
表3から分かるように、実施例12~実施例15による方法のいずれによっても、従来のプロトン交換膜を使用しない電極ユニットを得ることができ、実施例14による方法で作製した電極ユニットの放電性能が特に優れる。
【0166】
上記説明した実施例は、本出願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本出願の実施例対する詳細な説明は、本出願の選択された実施例にすぎず、保護しようとする本出願の範囲を限定するものではない。本出願の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本出願の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0167】
110…正極拡散層
120…正極触媒層
130…負極拡散層
140…負極触媒層
150…ポリマー電解質層
図1
図2
図3
図4
図5