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  • 特許-インペラ、及び遠心圧縮機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】インペラ、及び遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20231116BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F04D29/30 C
F04D29/28 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022517072
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016172
(87)【国際公開番号】W WO2021215471
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2020076704
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩範
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直
(72)【発明者】
【氏名】平谷 文人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 勲
(72)【発明者】
【氏名】松尾 哲也
(72)【発明者】
【氏名】白川 太陽
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-021574(JP,A)
【文献】特開2014-092138(JP,A)
【文献】特開2016-065548(JP,A)
【文献】特開2019-152166(JP,A)
【文献】特開2016-191311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28 - 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とする円盤状のハブと、
該ハブの前記軸線方向一方側を向く面から突出し、周方向に配列された複数のブレードと、
を備え、
前記ブレードにおける前記ハブからチップ側に離間する方向である翼高さ方向を含む断面視で、前記ブレードには、回転方向の後方側に向かって凸となるように湾曲する凹面が形成され、
前記断面視で、前記ブレードのチップ側の端縁とハブ側の端縁とを結んだ仮想線と前記ブレードのミッドスパンとの前記仮想線に対して直交する方向に沿った距離を凹み量と定義した場合に、
前記ブレードは、前縁側から後縁側にかけて前記凹み量が増加する部分を有するとともに、
前記ブレードの前記後縁の位置において、前記ミッドスパンにおける翼角は、前記ハブ側の翼角及び前記チップ側の翼角よりも小さい
インペラ。
【請求項2】
前記凹み量が増加する部分では、前記前縁側から前記後縁側にかけて前記凹面の曲率が増加するように構成される請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記凹面は、前記ブレードの前縁側から40~100%となる部分の少なくとも一部に形成されている請求項1又は2に記載のインペラ。
【請求項4】
前記ブレードの前記後縁の位置において、前記ハブ側の前記翼角および前記チップ側の前記翼角の何れか小さい方と前記ミッドスパンにおける前記翼角との差分をdβ、前記ハブ側の前記翼角と前記チップ側の前記翼角との差分の絶対値をΔβと定義した場合に、
dβ>Δβの関係を満たす請求項1乃至3の何れか1項に記載のインペラ。
【請求項5】
dβ>Δβ+2°の関係を満たす請求項に記載のインペラ。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のインペラと、
該インペラを覆うケーシングと、
を備える遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インペラ、及び遠心圧縮機に関する。
本願は、2020年4月23日に日本国特許庁に出願された特願2020-076704号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機に用いられるインペラは、円盤状のハブと、ハブの一方側の面に設けられた複数のブレードと、を備えている。
【0003】
上記のようなインペラでは、圧力比の向上を図る場合、ブレードのバックワード角を小さくすることで、出口の絶対流速の周方向成分を増加させる手法がとられることが従来一般的である。なお、バックワード角とは、ブレードの後縁における接線が回転軸線の径方向に対してなす角度を指す。このような形状を有するインペラの具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-109193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような形状のインペラでは、ブレードのハブからチップまで一様に翼負荷が大きくなるため、インペラ内部の圧力勾配に起因した二次流れや翼端の漏れ渦などの流動構造に起因した損失が大きくなる。このため、効率の低下や安定作動領域の縮小を招く虞がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、圧力比が高く、かつ効率も高いインペラ、及び遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るインペラは、軸線を中心とする円盤状のハブと、該ハブの前記軸線方向一方側を向く面から突出し、周方向に配列された複数のブレードと、を備え、前記ブレードにおける前記ハブからチップに向かう翼高さ方向を含む断面視で、前記ブレードには、回転方向の後方側に向かって凸となるように湾曲する凹面が形成され、前記ブレードは、前縁側から後縁側にかけて前記凹面の曲率が増加する部分を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、圧力比が高く、かつ効率も高いインペラ、及び遠心圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る遠心圧縮機の構成を示す断面図である。
図2】本開示の実施形態に係るインペラの構成を示す斜視図である。
図3】本開示の実施形態に係るインペラの構成を示す子午面図である。
図4】本開示の実施形態に係るインペラの翼角分布を示す図である。
図5A】本開示の実施形態に係るフルブレードの翼高さ方向における形状を示した図である。
図5B】本開示の実施形態に係るフルブレードの翼高さ方向における形状を示した図である。
図6】本開示の実施形態に係るブレードの翼角を定義するための図である。
図7】本開示の実施形態に係るフルブレードの翼角とキャンバー線の関係を示す説明図である。
図8】本開示の実施形態に係るインペラの二次流れの様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(遠心圧縮機の構成)
以下、本開示の実施形態に係る遠心圧縮機100について、図1から図8を参照して説明する。図1に示すように、遠心圧縮機100は、回転軸10と、インペラ1と、ケーシング30と、ディフューザベーン40と、を備えている。なお、本発明において、ディフューザベーン40は必須な構成ではなく、ディフューザベーンを備えていない遠心圧縮機に対して本発明を適用しても良い。
【0011】
回転軸10は、軸線Acに沿って延びるとともに、当該軸線Ac回りに回転可能である。回転軸10の外周面には、インペラ1が固定されている。インペラ1は、ハブ2と、複数のブレード5,7(フルブレード5、及びスプリッタブレード7)と、を有している。
ハブ2は、軸線Acを中心とする円盤状をなしている。ハブ2の外周面は、軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って径方向内側から外側に向かって湾曲する曲面状をなしている。
【0012】
図2に示されるように、フルブレード5は、ハブ2の周面上に流体の入口部3から出口部4まで延びるように設けられた長翼である。スプリッタブレード7は、ハブ2の周面上で隣り合うフルブレード5,5間に形成される流体の各流路6においてフルブレード5の前縁5aよりも下流側から出口部4まで延びるように設けられた短翼である。また、図2における矢印(符号N)は、インペラ1の回転方向を示している。
【0013】
図3に示されるように、フルブレード5は、入口部3側の縁である前縁5aと、出口部4側の縁である後縁5bと、ハブ2と接続する側の縁であるハブ側縁5cと、ハブ側縁5cと対向する縁であるチップ側縁5dとを有している。スプリッタブレード7は、入口部3側の縁である前縁7aと、出口部4側の縁である後縁7bと、ハブ2と接続する側の縁であるハブ側縁7cと、ハブ側縁7cと対向する縁であるチップ側縁7dとを有している。チップ側縁5d,7dはそれぞれ、図示しないケーシングの内壁面に面し、ケーシングの内壁面との間に隙間(以下、「クリアランス」という)が形成されている。なお、フルブレード5の詳細な構成については後述する。
【0014】
ケーシング30は、これら回転軸10、及びインペラ1を外周側から囲っている。ケーシング30の内部には、インペラ1を収容するとともに外部から導かれた流体を圧縮する圧縮流路Pと、圧縮流路Pの径方向外側に接続された出口流路Fと、が形成されている。
圧縮流路Pは、インペラ1の外形に対応するように、軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って次第に拡径している。圧縮流路Pの径方向外側の出口には出口流路Fが接続されている。
【0015】
出口流路Fは、ディフューザ流路F1と、出口スクロールF2と、を有している。ディフューザ流路F1は、圧縮流路Pから導かれた流体の静圧を回復させるために設けられている。ディフューザ流路F1は、圧縮流路Pの出口から径方向外側に向かって延びる円環状をなしている。軸線Acを含む断面視では、ディフューザ流路F1の流路幅は延在方向の全域にわたって一定である。ディフューザ流路F1中には複数のディフューザベーン40が設けられていても良い。
【0016】
ディフューザ流路F1の径方向外側の出口には、出口スクロールF2が接続されている。出口スクロールF2は、軸線Acの周方向に延びる渦巻き状をなしている。出口スクロールF2は、円形の流路断面を有している。出口スクロールF2の一部には、高圧流体を外部に導くための排気孔が形成されている(図示省略)。
【0017】
(フルブレードの構成)
図4は、フルブレード5のハブ側縁5c及びチップ側縁5dの翼角の前縁5aから後縁5bまでの分布を示している。図4では、フルブレード5の子午面長さ方向に、フルブレード5の子午面長さに対するフルブレード5の前縁5aからフルブレード5の子午面長さ方向の長さの比mの軸をとっている。mの定義から、前縁5aの位置はm=0となり、後縁5b,7bの位置はm=1となる。また、mの値が同じであることは、インペラ1を子午面方向から視認した場合の位置が同じであることを意味している。図4中の実線はチップ側縁5dの翼角分布を示し、破線はハブ側縁5cの翼角分布を示し、一点鎖線はこれらチップ側縁5dとハブ側縁5cとの間の部分(ミッドスパン5m)の翼角分布を示している。ここで、ブレードの翼高さ方向におけるハブ側縁5cの位置を0%スパン位置、チップ側縁5dの位置を100%スパン位置とした場合に、図4におけるミッドスパン5mの位置は、50%スパン位置(チップ側縁5dとハブ側縁5cとの中間位置)である。ただし、本発明においてミッドスパン5mの位置は50%スパン位置には限定されない。ミッドスパン5mの位置を30~70%スパン位置の範囲内における任意のスパン位置として、後述する凹面Rの位置を定義してもよい。
【0018】
図6は、ブレード5の任意のスパン位置において入口部3から出口部4まで子午面長さ方向に沿って平面上に展開した図である。当該展開図において、縦軸はブレード5の回転方向、横軸は子午面長さ方向を示している。この平面上において、ブレード(フルブレード5又はスプリッタブレード7)と子午面長さ方向とのなす角度βを翼角と定義する。つまり、ブレードの後縁の位置における翼角β(バックワード角)は、ブレードの後縁位置における翼面の接線が子午面長さ方向に対してなす角度を指している。また、図7を参照すれば、軸方向z、半径方向R、軸周りの回転角度θで表される座標系において、座標点1と座標点2との間の微小区間における翼角βは、下記式(1)により規定される。
tanβ=R・dθ/dm・・・・(1)
ここで、dθ=θ-θ、dm=√(Z-Z+(R-Rであり、Sはキャンバー線である。
【0019】
図4に示した実施形態では、フルブレード5では、前縁5a側では、チップ側縁5dの翼角βtが最も大きく、次いでミッドスパン5mの翼角βmが大きい。また、前縁5a側ではハブ側縁5cの翼角βhが最も小さい(βt>βm>βh)。一方で、前縁5a側から後縁5b側に向かうにつれて、翼角分布は変化する。具体的には、後縁5b側では、ハブ側縁5cの翼角βhが最も大きく、次いでチップ側縁5dの翼角βtが大きい。また、後縁5b側では、ミッドスパン5mの翼角βmが最も小さい(βh>βt>βm)。
【0020】
また、図示しない実施形態では、後縁5b側において、チップ側縁5dの翼角βtが最も大きくても良い。また、チップ側縁5dの翼角βtとハブ側縁5cの翼角βhとが同じ大きさであっても良い。この場合においても、後縁5b側では、ミッドスパン5mの翼角βmが最も小さい(βt≧βh>βm)。
【0021】
図5A図5Bは、本開示の実施形態に係るブレードの翼高さ方向における形状を示した図である。ここで、図5A図5Bは、前縁から40~100%となる部分(m=0.4~1.0)におけるフルブレードの形状(翼厚中心線)を示しており、図5Aの方が、図5Bよりも前縁5a側に位置している。
【0022】
つまり、図4の翼角分布は、図2および図5A図5Bに示すように、本実施形態に係るフルブレード5では、ハブ2からチップ側に離間する方向である翼高さ方向を含む断面視で、回転方向Nの後方側に向かって凸となるように湾曲する凹面Rが形成されていることを意味している。
【0023】
さらに、上述した断面視で、フルブレード5のチップ側縁5dとハブ側端縁5cとを結んだ仮想線ILと前記ブレードのミッドスパンとの前記仮想線に対して直交する方向に沿った距離を凹み量dと定義した場合に、フルブレード5は、前縁5a側から後縁5b側にかけて凹み量dが増加する部分(d>d)を有している。図5Bにおけるミッドスパン5mにおける凹み量dは、図5Aにおけるミッドスパン5mにおける凹み量dよりも大きくなっている。
【0024】
さらに、図4から読み取れるように、フルブレード5は、前縁5a側から後縁5b側にかけて凹面Rの曲率が増加する部分を有している。図5Bにおけるミッドスパン5mにおける凹面Rの曲率は、図5Aにおけるミッドスパン5mにおける凹面Rの曲率よりも大きくなっている。ここで、凹面Rの曲率とは凹面Rに少なくとも2箇所で接する最小仮想円の曲率半径の逆数として定義される。
【0025】
この凹面Rは、フルブレード5の前縁5a側から40~100%となる部分(m=0.4~1.0)の少なくとも一部に形成されていることが望ましい。また、この凹面Rは、翼面を流れるの二次流れが特に強い前縁5aから60%となる部分(m=0.6)に少なくとも形成されていることが望ましい。また、この凹面Rにおける最も曲率が大きい部分は、フルブレード5の前縁5a側から60~70%となる部分(m=0.6~0.7)に形成されていることが望ましい。
【0026】
本実施形態に係るフルブレード5では、上述したように、フルブレード5の後縁5bの位置において、ミッドスパン5mの翼角βmが、ハブ側の翼角βh及びチップ側の翼角βtよりも小さい。
また、本実施形態に係るフルブレード5では、図4に示したように、フルブレード5の後縁5bの位置において、フルブレード5の後縁5bの位置において、ハブ側の翼角βhおよびチップ側の翼角βtの何れか小さい方(min(βh、βt))とミッドスパン5mにおける翼角βmとの差分をdβ、ハブ側の翼角βhとチップ側の翼角βtとの差分の絶対値(|βh-βt|)をΔβと定義した場合に、dβ>Δβの関係を満たす。望ましくは、dβ>Δβ+2°の関係を満たす。さらに望ましくは、dβ>Δβ+5°の関係を満たす。
【0027】
(作用効果)
【0028】
上記構成によれば、フルブレード5には回転方向の後方側に向かって凸となるように湾曲する凹面Rが形成されている。さらに、フルブレード5には、前縁5a側から後縁5b側にかけてこの凹面Rの凹み量dが増加する部分(d>d)が形成されている。図8に示すように、フルブレード5に沿って流体が流れる場合、凹面Rに向かって積極的に流れが引き込まれる。これにより、二次流れが凹面Rに捕捉され、チップ側縁5dではなく、後縁5b側に向かって導かれる(図8中の実線)。一方で、上記の凹面Rが形成されていない場合、破線矢印で示すように、二次流れは遠心力によって前縁5a側からチップ側縁5dに向かって流れてしまう。その結果、損失が増大してしまう。一方で、本実施形態によれば、このような二次流れによる損失を低減することができる。したがって、上記の構成によれば、dβをΔβよりも大きくした分だけインペラ1の圧縮比を高めることができる。
【0029】
ここで、上述の二次流れは、ブレードの前縁側から40~100%となる部分、特に前縁側から60%近傍の部分で発生しやすいことが知られている。上記構成によれば、このように二次流れが発生しやすい部分に凹面が形成されていることで、より積極的に二次流れを低減することができる。
【0030】
上記構成によれば、ミッドスパン5mには、フルブレード5の後縁5bの位置において、ミッドスパン5mの翼角βmが、ハブ側の翼角βh及びチップ側の翼角βtよりも小さくなっている。さらに、上述したように、dβ>Δβの関係を満たす。望ましくは、dβ>Δβ+2°の関係を満たす。さらに望ましくは、dβ>Δβ+5°の関係を満たす。
したがって、dβをΔβよりも大きくした分だけインペラ1の圧縮比を高めることができる。
【0031】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上述した実施形態では、上述した凹面Rがフルブレード5に形成される場合を例にして説明したが、このような凹面Rは、スプリッタブレード7に形成されていてもよいものである。
【0032】
<付記>
各実施形態に記載のインペラ1、及び遠心圧縮機100は、例えば以下のように把握される。
【0033】
(1)第1の態様に係るインペラ1は、軸線Acを中心とする円盤状のハブ2と、該ハブ2の前記軸線Ac方向一方側を向く面から突出し、周方向に配列された複数のブレード5と、を備え、前記ブレード5における前記ハブ2からチップ側に離間する方向である翼高さ方向を含む断面視で、前記ブレード5には、回転方向の後方側に向かって凸となるように湾曲する凹面Rが形成され、前記断面視で、ブレード5のチップ側の端縁5dとハブ側の端縁5cとを結んだ仮想線ILとブレード5のミッドスパン5mとの仮想線ILに対して直交する方向に沿った距離を凹み量dと定義した場合に、ブレード5は、前縁側から後縁側にかけて凹み量dが増加する部分を有する。
【0034】
上記構成によれば、ブレード5には回転方向の後方側に向かって凸となるように湾曲する凹面が形成されている。さらに、ブレード5には、前縁5a側から後縁5b側にかけて凹み量dが増加する部分が形成されている。ブレード5に沿って流体が流れる場合、凹面Rに向かって積極的に流れが引き込まれる。これにより、二次流れが凹面Rに捕捉され、チップ側ではなく、後縁5b側に向かって導かれる。したがって、二次流れによる損失を低減することができ、これによりインペラ1の圧縮比を高めることもできる。
【0035】
(2)第2の態様に係るインペラ1では、前記凹み量dが増加する部分では、前縁側から後縁側にかけて凹面Rの曲率が増加するように構成される。
【0036】
上記構成によれば、上記凹み量dが増加する部分において、前縁側から後縁側にかけて凹面Rの曲率が増加するように構成されることで、より効果的に二次流れによる損失を低減し、インペラ1の圧縮比を高めることができる。
【0037】
(3)第3の態様に係るインペラ1では、ブレード5の後縁5bの位置において、ブレード5のハブ側の端縁5cとチップ側の端縁5dとの間であるミッドスパン5mにおける翼角βmは、ハブ側の翼角βh及びチップ側の翼角βtよりも小さい。
【0038】
上記構成によれば、ミッドスパン5mのバックワード角(後縁における翼角)をハブ2やシュラウドと比較して小さくすることで、二次流れや漏れ流れとの関連が深いハブ2やシュラウドなどの壁面付近の負荷は出来るだけ変えずに(流動構造に起因した圧力損失をできる限り抑制しつつ)、圧力比を向上させることができる。
【0039】
(4)第4の態様に係るインペラ1では、前記凹面Rは、前記ブレード5の前縁側から40~100%となる部分に形成されている。
【0040】
ここで、上述の二次流れは、ブレード5の前縁5b側から40~100%となる部分で特に発生しやすいことが知られている。上記構成によれば、このように二次流れが発生しやすい部分に凹面Rが形成されていることで、より積極的に二次流れを低減することができる。
【0041】
(5)第5の態様に係るインペラ1では、上記(3)第3の態様において、ブレード5の後縁5aの位置において、ハブ側の翼角βhおよびチップ側の翼角βtの何れか小さい方とミッドスパンにおける翼角βmとの差分をdβ、ハブ側の翼角βhとチップ側の翼角βtとの差分の絶対値をΔβと定義した場合に、dβ>Δβの関係を満たす。
【0042】
上記構成によれば、上記(3)第3の態様に記載した作用効果を高めることができる。
【0043】
(6)第6の態様に係るインペラ1では、上記(5)第5の態様において、dβ>Δβ+2°の関係を満たす。
【0044】
上記構成によれば、上記(3)第3の態様に記載した作用効果をより一層高めることができる。
【0045】
(7)第7の態様に係る遠心圧縮機100は、インペラ1と、該インペラを覆うケーシング30と、を備える。
【0046】
上記構成によれば、圧力比が高く、かつ効率が向上した遠心圧縮機を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
100 遠心圧縮機
1 インペラ
2 ハブ
3 入口部
4 出口部
5 フルブレード
5a 前縁
5b 後縁
5c ハブ側縁
5d チップ側縁
5m ミッドスパン
6 流路
7 スプリッタブレード
10 回転軸
30 ケーシング
40 ディフューザベーン
Ac 軸線
F 出口流路
F1 ディフューザ流路
F2 出口スクロール
P 圧縮流路
R 凹面
Pl 平面

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8