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特許7386344滑り防止用伝導性樹脂組成物及びそれを含む成形品
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  • 特許-滑り防止用伝導性樹脂組成物及びそれを含む成形品 図1
  • 特許-滑り防止用伝導性樹脂組成物及びそれを含む成形品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】滑り防止用伝導性樹脂組成物及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20231116BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20231116BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231116BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20231116BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08L23/06
C08J5/00 CER
C08K3/04
C08L23/08
C08L31/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022529340
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2020015087
(87)【国際公開番号】W WO2021107426
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0154304
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0048232
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】カン、チョル イ
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジェ ギュ
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007353(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0029710(KR,A)
【文献】国際公開第2020/195799(WO,A1)
【文献】特開2015-183016(JP,A)
【文献】特表2009-521535(JP,A)
【文献】国際公開第2015/059936(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の摩擦力はASTM D1894準拠(荷重200g、速度150mm/min)で10N以上で、表面抵抗値はASTM D257準拠で10乃至10Ω/sqで提供する滑り防止用伝導性樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物は粘着性樹脂に炭素充填材を含み、
前記粘着性樹脂は、ポリオレフィンエラストマー(POE)、エチレン酢酸共重合体(EVA)、 超低密度ポリエチレン(VLDPE)及びオレフィンブロック共重合体(OBC)から選択された少なくともいずれか1つ以上を含み、
前記粘着性樹脂の重量平均分子量は10,000乃至800,000である
ことを特徴とする滑り防止用伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
前記粘着性樹脂100重量部に対して、炭素充填材0.1乃至40重量部を含む
請求項1に記載の滑り防止用伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭素充填材は炭素ナノチューブ(CNT)、グラファイト(graphite)、カーボンブラック(Carbon black)、カーボンファイバー(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)から選択された少なくともいずれか1つを含む
請求項1に記載の滑り防止用伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
前記粘着性樹脂100重量部に対して、炭素ナノチューブ(CNT)0.1乃至10重量部、カーボンブラック(Carbon black)1乃至15重量部及びグラフェン(Graphene)0.1乃至10重量部から選択された少なくともいずれか1つを含む
請求項1に記載の滑り防止用伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
前記粘着性樹脂100重量部に対して、酸化防止剤及び加工助剤から選択された少なくともいずれか1つを0.01乃至10重量部含む
請求項1に記載の滑り防止用伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記粘着性樹脂のメルトインデックス(MI)はASTM D1238準拠で190℃の2.16Kgで0.5乃至60g/10minである
請求項1に記載の滑り防止用伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
前記粘着性樹脂の比重は0.85乃至0.96g/ccである
請求項1に記載の滑り防止用伝導性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の滑り防止用伝導性樹脂組成物を含む
ことを特徴とする成形品。
【請求項9】
前記成形品はシート、パッド、フィルム、包装紙、パイプ、ポーチ、内装材、容器及び電子部品製造用トレイから選択される少なくともいずれか1つである
請求項8に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り防止機能を持つ伝導性樹脂組成物及びそれを含む成形品に関し、滑り防止のために粘着剤をコーティングしたり伝導性を付与するために帯電防止剤を添加する従来の方式と異なり、高い表面摩擦力を提供できる粘着性樹脂に炭素充填材を含むことで低い表面抵抗を提供して優れた電気伝導性を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会で携帯電話、テレビ、コンピュータなどの電子製品の使用は必須不可欠なもので、その発展の速度はもちろんのこと、その様相も急変している。このような電子製品を製造するために様々な電子部品が使用され、電子製品の迅速な大量生産のために大半が自動化工程で進められている。この時、自動化工程で使用される電子部品の移送のためのトレイ(tray)は通常、伝導性ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂組成物を真空成形して使用されている。これらは比較的工程が簡単かつ生産単価が安価で経済的であるが、電子部品の移送中に低い表面摩擦力によって生じる部品の滑り現象で部品表面にスクラッチが生じ、これは伝導性の喪失につながり静電気問題が生じたりフィルム表面にスクラッチが生じて不良を誘発する問題点を引き起こす。また、トレイに積載される電子部品の位置を固定するためにトレイにキャビティを成形して使用するが、この場合、製品別に互いに異なる規格のトレイが必要となりトレイの生産、保管、管理コストが大きく増加するようになる。
【0003】
このような問題を解決するために、自動化生産工程では滑りを防止するためにマット又はパッドなどを主に使用している。この場合、主にマットやパッド表面に粘着性塗料をコーティングして滑り防止機能を付与する場合が大半である。
【0004】
これと関連する技術として、特許文献1を見てみると、優れた摩擦抵抗低減性能を持つ塗料組成物に関する技術を開示している。バインダ樹脂としてエステル化合物と、シリルアクリレート系単量体をラジカル重合性不飽和単量体でさらに含んで分子量及び親水親油バランスを調節することによって長期間均一な摩耗率を示して防汚性及び優れた摩擦抵抗低減性能を持つものを開示している。ただし、上記特許のように塗料組成物をコーティングする場合は時間経過によって塗料の粘着性が弱くなったり塗料が剥がれる問題がある。
【0005】
一方、電子部品生産のための自動化工程で滑り防止とともに必要な静電気防止機能を提供するためには主に帯電防止剤を用いて静電気防止機能を付与している。これと関連する技術として、特許文献2では静電気防止機能に優れたシートを開示している。シート本体の上下部にハイブリッドコーティング液コーティング層を含み、上記ハイブリッドコーティング液は溶媒、ポリウレタン樹脂、アンチブロッキング剤、耐摩耗性向上剤、スリップ防止剤、消泡剤及び静電気防止剤からなることを技術的特徴とする。ただし、上記特許のように静電気防止剤又は帯電防止剤を使用した場合、表面抵抗が1010Ω/sq以上の高い抵抗を示すため、優れた静電気防止性能を提供するには多少限界がある。
【0006】
よって、本発明は、上記問題点を解決し、より簡単な工程を提供して加工性を向上させ、成形品の表面摩擦力に優れ、低い表面抵抗で優れた伝導性を持つ樹脂組成物を提供しようとする長い研究の果てに完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2016-0007099号(2016.01.20)
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2017-0033986号(2019.03.28)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題点をすべて解決することを目的とする。
本発明の目的は、樹脂成形品に高い表面摩擦力を提供できる樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、樹脂成形品に低い表面抵抗値を提供できる樹脂組成物を提供して、優れた電気伝導性を付与することにある。
【0010】
本発明の目的は、成形品の加工性を単純化して生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、樹脂成形品の摩擦力はASTM D1894準拠で10N以上で、表面抵抗値はASTM D257準拠で10乃至10Ω/sqで提供する滑り防止用伝導性樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明の一実施例によれば、上記滑り防止用伝導性樹脂組成物は表面摩擦力に優れた粘着性樹脂に炭素充填材を含んで提供される。
【0014】
本発明の一実施例によれば、上記粘着性樹脂は超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸共重合体(EVA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体(SEBS)、エーテルブロックアミド共重合体(PEBA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、熱可塑性エステルエラストマー(TPEE)、シリコンゴム、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)から選択された少なくともいずれか1つ以上を含むことができる。
【0015】
本発明の一実施例によれば、上記炭素充填材は炭素ナノチューブ(CNT)、グラファイト(Graphite)、カーボンブラック(Carbon black)、カーボンファイバー(carbon fiber)及びグラフェン(Graphene)から選択された少なくともいずれか1つ以上を含むことができる。
【0016】
本発明の一実施例によれば、上記滑り防止用伝導性樹脂組成物を含む成形品が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明による樹脂で製造される成形品の場合、高い表面摩擦力を提供して長時間使用しても優れた滑り防止機能を提供できる。
【0018】
本発明による樹脂で製造される成形品の場合、低い表面抵抗を提供して、優れた静電気防止効果と電気伝導性を提供できる。
【0019】
本発明による樹脂を適用して成形する場合、従来の方式に比べて、加工方法が単純で加工性及び生産性の効率性を向上させることができる。
【0020】
本発明による上記成形品を電子部品の製造工程に使用するトレイに適用した場合、部品の移動工程で滑り防止効果(non-slip)及び低い表面抵抗を提供して電子部品及び素材を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による樹脂を含む成形品(シート)の表面摩擦力の測定方法を示した図である。
図2】本発明による樹脂を含む成形品(シート)の滑り防止及び静電気防止特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されることはない。
ここに記載していない内容は当該技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【実施例
【0023】
[実施例]
<実施例1:伝導性樹脂組成物の製造>
粘着性樹脂100重量部(ハンファソリューション社製EVA 1834 80重量部、ダウ社製Engage 8137 POE 20重量部)に炭素ナノチューブ(CNT)2重量部、カーボンブラック(Carbon black)8重量部、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系)0.1重量部及び加工助剤(脂肪酸アミド系)0.3重量部を含む滑り防止用伝導性樹脂組成物を製造した。
【0024】
製造された滑り防止用伝導性樹脂組成物を金型のキャビティに充填した後、プレスで圧力を加えた後、冷却固化させて成形品(シート)を製造した。
【0025】
<実施例2>
粘着性樹脂100重量部(ハンファソリューション社製EVA 1834 20重量部、ダウ社製Engage 8137 POE 80重量部)を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0026】
<実施例3>
粘着性樹脂100重量部(ハンファソリューション社製EVA 1834 20重量部、ダウ社製FLEXOMER DFDB-9042 NT VLDPE 80重量部)を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0027】
<実施例4>
粘着性樹脂100重量部(ハンファソリューション社製EVA 1834 20重量部、ダウ社製Infuse 9807 OBC 80重量部)を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0028】
<実施例5>
粘着性樹脂100重量部(ハンファソリューション社製EVA 1834)に対してカーボンブラック14重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0029】
<実施例6>
粘着性樹脂100重量部(ダウ社製Engage 8137 POE)に対してカーボンブラック14重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0030】
<実施例7>
粘着性樹脂100重量部(ダウ社製FLEXOMER DFDB-9042 NT VLDPE)に対してカーボンブラック14重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0031】
<実施例8>
粘着性樹脂100重量部(ダウ社製Infuse 9807 OBC)に対してカーボンブラック14重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0032】
<実施例9>
粘着性樹脂100重量部(ハンファソリューション社製EVA 1834)に対してカーボンブラック8重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0033】
<実施例10>
粘着性樹脂100重量部(ハンファソリューション社製EVA 1834)に対してカーボンブラック11重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0034】
[比較例]
<比較例1>
商業的に市販されている伝導性PETシートを備えた。
【0035】
<比較例2>
商業的に市販されているPET樹脂層に帯電防止コーティングされたシートを備えた。
【0036】
[実験例1:表面摩擦力測定]
ASTM D1894準拠で表面摩擦力を測定した。実施例及び比較例による成形品(パッド)をスタンドに固定した後、PETフィルムが付着された治具を引っ張りながらかかる力を測定する。これについて[図1]に示した。なお、これに対する結果を[表1]で示した。
【0037】
[実験例2:表面抵抗測定]
ASTM D257方法によって表面抵抗を測定した。これに対する結果は[表1]で示している。
【表1】
【0038】
表1の結果を見てみると、本発明による滑り防止用伝導性樹脂組成物を提供して成形した製品の場合、表面摩擦力は10N乃至40Nで提供でき、比較例が1N以下で提供されることに比べて顕著に高い表面摩擦力を提供できることを確認できた。
【0039】
また、表面抵抗値は10乃至10Ω/sqの範囲で提供でき、比較例の表面抵抗値が10乃至10Ω/sqの範囲で提供されることに比べて顕著に低いことを確認できる。したがって、低い表面抵抗を提供して優れた静電気防止機能と電気伝導性を提供できることを確認できた。
【0040】
したがって、本発明の場合、電子部品の製造工程に使用するトレイに適用した場合、部品の移動工程で滑り防止効果(non-slip)及び低い表面抵抗を提供して電子部品及び素材を保護できることを確認できた。
【0041】
加えて、別途の工程を追加する必要なく粘着性樹脂自体で摩擦力を提供することにより、製造方法も容易な点から加工方法が単純で加工性及び生産性の効率性を向上させることができる。
【0042】
以上、本発明が具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されるわけではなく、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば、かかる記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
よって、本発明の思想は上記説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、後述する特許請求の範囲と均等又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範疇に属すると言える。
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように十分に詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はない。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、各々の開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得る。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例を参照して詳細に説明する。
【0043】
滑り防止性能とは、高い表面摩擦力を意味し、摩擦力とは製品の荷重を支持する面とその面の接触面積を最大化して、接触面に発生する運動を妨害する力を付与することを意味する。電子製品を生産するための自動化工程で電子部品移送用トレイ(tray)の場合、移送中に部品が滑ることを防止するために、本発明は高い表面摩擦力を提供できる滑り防止用伝導性樹脂組成物を提供しようする。
【0044】
本発明の一実施例によれば、樹脂成形品の表面摩擦力はASTM D1894準拠で10N以上で、表面抵抗値はASTM D257準拠で10乃至10Ω/sqで提供できる滑り防止用伝導性樹脂組成物を提供しようとする。
【0045】
本発明の一実施例によれば、上記滑り防止用伝導性樹脂組成物は表面摩擦力に優れた粘着性基本樹脂(base resin)に炭素充填材を含んで提供され、必要に応じて相溶化剤、酸化防止剤、加工助剤などをさらに含むことができる。
【0046】
本発明の一実施例によれば、高い表面摩擦力を提供して滑り防止効果を提供するために粘着性を付与する基本樹脂(base resin)に超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸共重合体(EVA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体(SEBS)、エーテルブロックアミド共重合体(PEBA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、熱可塑性エステルエラストマー(TPEE)、シリコンゴム、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)から少なくとも1つ以上の樹脂を提供できる。好ましくはポリオレフィンエラストマー(POE)、エチレン酢酸共重合体(EVA)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)及びオレフィンブロック共重合体(OBC)から選択される少なくともいずれか1つ以上を提供できる。
【0047】
粘着性樹脂に提供され得るポリオレフィンエラストマー(POE)はエチレンとアルファオレフィンを共重合させて得られる重合体を意味し、アルファオレフィン共単量体の種類及び含量によって基本性質が変わる特性を持つ。アルファオレフィンの含量が増加するほど結晶化度が減少して密度が減少し光学性及び柔軟性は増加する。したがって、本発明のポリオレフィンエラストマー(POE)はアルファオレフィンでブテン及びオクテンを共重合したもので結晶化度34%以下であることを特徴とする。好ましくは結晶化度13乃至24%に0.85乃至0.88g/cm範囲のポリオレフィンエラストマー(POE)でメルトインデックス(MI)はASTM D1238準拠で190℃の2.16Kgで0.5乃至60g/10minで提供される。また、上記ポリオレフィンエラストマー(POE)の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供される。比重が低いほどスティッキー(Sticky)な特性を示すので、上記範囲の比重を提供して、滑り防止特性を向上させることを助けることができる。
【0048】
エチレン酢酸共重合体(EVA)はエチレンと酢酸ビニル(vinyl acetate)単量体を共重合させて得られる重合体を意味し、一般にエチレン単量体で作られたポリエチレン製品の基本性質に酢酸ビニルの性質が加えられた特性を持つ。エチレン単量体に比べて酢酸ビニル単量体はアセトキシ(acetoxy)基を含んでおり、この含量が高くなるほど極性(polar)の性質を提供する。酢酸ビニルの含有量が増加することにより光学性(光沢度)が良くなり密度は増加するが、結晶化度は低下して柔軟性は増加するようになる。また、エチレン酢酸共重合体(EVA)の場合、滑り性を示すが酢酸ビニル含量が増加すると摩擦係数が大きくなって滑りにくくなる。したがって、本発明のエチレン酢酸共重合体(EVA)は酢酸ビニル(VA)の含有率が10乃至50重量%であることを特徴とする。含量が10重量%未満の場合は加工が難しい問題点があり、50重量%を超過する場合は結晶化度で不利な点がある。したがって、上記範囲10乃至50重量%を提供して、優れた滑り防止(non-slip)効果を提供できる。その上、エチレン酢酸共重合体(EVA)のメルトインデックス(MI)はASTM D1238準拠で190℃の2.16Kgで0.5乃至80g/10minで提供される。また、エチレン酢酸共重合体(EVA)の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供される。
【0049】
超低密度ポリエチレン(VLDPE)は0.890乃至0.914g/cm範囲の密度を持つポリエチレンの類型で直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のようにメタロセン触媒を使用する低圧重合技術で生産され、他の類型のポリエチレンに比べてアルファオレフィン含量が高いことが特徴である。アルファオレフィンのアルキル分枝はパッキング密度と結晶性を下げる効果があり、高い靭性と弾性を示し引張強さと融点は非常に低い。その上、超低密度ポリエチレン(VLDPE)のメルトインデックス(MI)はASTM D1238準拠で190℃の2.16Kgで0.5乃至80g/10minで提供される。また、超低密度ポリエチレン(VLDPE)の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供される。
【0050】
オレフィンブロック共重合体(OBC)はエチレン系又はプロピレン系繰り返し単位と、α-オレフィン系繰り返し単位を含む複数のブロック又はセグメントを含むオレフィンブロック共重合体であって、0.860乃至0.890g/cm範囲の密度を持つ。ブロック共重合体はソフトセグメントと称される軟質の弾性ブロックと、ハードセグメントと称される硬質の結晶性ブロックを共に含むことができ、これにより、優れた弾性と耐熱性などの物性を共に示すことができる。より具体的には、このようなブロック共重合体はソフトセグメントのガラス転移温度以上では上記ブロック共重合体が軟質特性を示すことができ、溶融温度より高い温度に至って熱可塑性挙動を示すため、比較的優れた加工性を示すことができる。その上、オレフィンブロック共重合体(OBC)のメルトインデックス(MI)はASTM D1238準拠で190℃の2.16Kgで0.5乃至20g/10minで提供される。また、オレフィンブロック共重合体(OBC)の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供される。
【0051】
本発明の一実施例によれば、上記粘着性樹脂はポリオレフィンエラストマー(POE)、エチレン酢酸共重合体(EVA)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)及びオレフィンブロック共重合体(OBC)から選択される少なくともいずれか1つ以上が溶融混練されることができ、上記溶融混練とは80℃乃至190℃の条件で押出機、ニーダー、ロールミールなどを用いて進めることができ、通常の技術者が実施できる適切な加工範囲内で進めることができる。
【0052】
本発明の一実施例によれば、上記粘着性樹脂100重量部に対して、炭素充填材0.1乃至40重量部を含んで提供される。
【0053】
本発明の一実施例によれば、上記炭素充填材は炭素ナノチューブ(CNT)、グラファイト(Graphite)、カーボンブラック(Carbon Black)、カーボンファイバー(carbon fiber)及びグラフェン(Graphene)から選択される少なくともいずれか1つ以上を含んで提供される。従来の帯電防止剤の投入によって静電気防止効果を提供する場合は表面抵抗値が相対的に高いが、それに対して伝導性炭素充填材によって静電気防止効果を提供する場合はより低い表面抵抗値を提供でき、よって、優れた静電気防止効果と電気伝導性を提供できる。また、最終製品の引張伸び率、光沢などの物性を向上させ、向上した衝撃補強効果を共に提供できる。
【0054】
本発明の一実施例によれば、上記粘着性樹脂100重量部に対して、炭素ナノチューブ(CNT)0.1乃至10重量部、カーボンブラック(Carbon black)1乃至15重量部及びグラフェン(Graphene)0.1乃至10重量部から選択された少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。すなわち、上記範囲のような組成物を提供することによって高い表面摩擦力を提供できる基本樹脂に伝導性を提供できる炭素充填材を溶融混練して優れた静電気防止性能を同時に提供できる。特に、本発明の場合、摩擦力の高い樹脂に伝導性の炭素充填材を含むことによって加工工程を単純化できる長所がある。この場合、上記粘着性樹脂はエチレン酢酸共重合体(EVA)20乃至80重量部に対して、ポリオレフィンエラストマー(POE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)又はオレフィンブロック共重合体(OBC)を20乃至80重量部含むことができる。
【0055】
特に、粘着性樹脂100重量部に対して、炭素ナノチューブ(CNT)が0.1乃至10重量部で提供され、低い炭素含有量に比べて優れた電気伝導度を提供しながらも樹脂の粘着特性を維持して高い表面摩擦力を提供でき、カーボンブラック(Carbon black)1乃至15重量部を含むことで、加工時に樹脂流れによる内部構造の変化にも所定水準以上の電気伝導度も維持できる効果を提供できる。また、グラフェン0.1乃至10重量部を含むことで電気伝導度の向上は勿論のこと、モジュラスの向上による引張強度及び屈曲強度を向上させる効果を提供できる。
【0056】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物は酸化防止剤及び加工助剤から選択される少なくともいずれか1つ以上をさらに含むことができる。この場合、上記粘着性樹脂100重量部に対して、酸化防止剤及び加工助剤から選択された少なくともいずれか1つを0.01乃至10重量部含んで提供される。
【0057】
酸化防止剤の場合、樹脂組成物に含まれて成形される最終製品の酸化を防止し、酸化防止剤の種類には一次酸化防止剤(primary antioxidant)、二次酸化防止剤(secondary antioxidant)がある。一次酸化防止剤にはヒンダードフェノール(hindered phenol)系、ラクトン(lactone)系が使用され、二次酸化防止剤にはリン(phosphite)系、チオエステル(thioester)系が使用される。一次酸化防止剤の役割はラジカルスカベンジャー(radical scavenger)でヒンダードフェノール(hindered phenol)系は酸素中心ラジカル(oxygen centered radical)を処理する。二次酸化防止剤はヒドロペルオキシド分解者(hydroperoxide(ROOH) decomposer)として作用する。酸化防止剤は大半の樹脂において一次と二次酸化防止剤を共に使用することで上昇効果をさらに増加させるので、ヒンダードフェノール(hindered phenol)系、ラクトン(lactone)系及びリン(phosphite)系が適切な割合で混合されて使用されている。フェノール系は2,6-di-t-Butyl-4-methylphenol、2,2-Methylenebis(4-methyl-6-t-butylphenol)などが提供されることができ、リン系の場合はBis(2,4-di-t-butyl)、Tris(2,4-di-t-butylphenyl)-phosphiteなどが提供され得る。酸化防止剤の場合、粘着性樹脂100重量部に対して0.01乃至5重量部を含むことができる。
【0058】
加工助剤の場合、押出物の表面を滑らかにして成形品の品質を高めることができる。金型面や押出機表面と樹脂との粘着性を防止しスリップ性を向上するための添加剤で樹脂と混練されて融解粘度を低下させて成形加工性を向上し樹脂加工時にペレット間のケーキング現象を防止する。このような加工助剤はアクリルポリマー、スチレン共重合物、ミネラルオイル、ペトロラタム、パラフィンワックス、石油レジン、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、金属石鹸、脂肪酸アミド、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリブテン、有機シリコンなどが提供されることができ、これに限定されない。また、加工助剤の場合、粘着性樹脂100重量部に対して0.01乃至5重量部を含むことができる。
【0059】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物を含んで成形された最終成形品の表面摩擦力はASTM D1894準拠で10N以上で提供でき、好ましくは10N乃至40Nで提供され得る。図1を参照すると、本発明による樹脂を含む成形品(シート)の表面摩擦力の測定方法を示した図であって、図2を参照すると、表面の高い摩擦力を提供して置かれた物体が横衝撃によって動かないように支持できるように助けられることが確認できる。
【0060】
また、最終成形品の表面抵抗値は10乃至10Ω/sqで、比較的低い表面抵抗値を提供して優れた静電気防止機能を提供でき、該当機能によって電子部品及び素材を保護できる。特に従来の滑り防止マット又はパッドの場合、静電気防止機能を付与するために帯電防止剤を含んで製造される場合は表面抵抗値が1010Ω/sqを超過して提供されるが、それに対して、本発明の場合は炭素充填材を含むことで表面抵抗値を10乃至10Ω/sqに減少させることができる。
【0061】
本発明の一実施例によれば、上記滑り防止用伝導性樹脂組成物を含む成形品が提供される。成形品の製造には射出成形(Injection Molding)、射出ブロー成形(Injection Blow Molding)、真空成形(Vacuum Molding)又はTダイを用いた押出シート成形方法が提供されることができ、上記方法は成形材料を加熱溶融させて予め閉じられた金型のキャビティに射出充填した後、冷却固化させて成形品を得るか、または成形材料を金型に上げた後、加熱してから真空をかけて金型に密着成形する方法で進めることができる。また、通常の技術者が実施できる範囲内で適切な範囲内で変形して進められることは無論である。
【0062】
本発明の一実施例によれば、上記成形品はシート、パッド、フィルム、包装紙、パイプ、ポーチ、内装材、容器、電子部品製造用トレイから選択される少なくともいずれか1つである成形品で提供されることができ、好ましくは電子部品製造用トレイに適用されることができ、これに限定されない。

図1
図2