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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】走行支援方法、及び、走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20231116BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W40/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022531082
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2020000547
(87)【国際公開番号】W WO2021255488
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 真知子
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕史
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/220807(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193535(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/027349(WO,A1)
【文献】特開2016-38837(JP,A)
【文献】特開2019-34627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行支援装置が、
自車両が走行する走行車線の隣接車線における障害物を検出し、
前記障害物を検出した場合には、前記障害物の前記自車両側の側方に走行範囲を設定し、
前記走行範囲において前記自車両が前記障害物に向かって前記隣接車線を走行してくる他車両の進行の妨げとならないように、経路及び車速の少なくとも一方を設定し、
設定した前記経路又は/及び車速を用いて走行支援を実行する、
走行支援方法であって、
前記走行支援装置は、
前記自車両が、前記走行範囲に向かって停車制御を行うか否かを判定し、
前記停車制御を行う場合、スペースがあれば、前記走行範囲の手前、前方、または、側方で停車させるように、前記経路又は/及び車速を設定する、
走行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の走行支援方法であって、
前記自車両が前記走行範囲に向かって減速制御を行う場合には、前記走行範囲において前記自車両が停車しないように前記経路及び車速を設定し、設定した前記経路及び車速を用いて走行支援を実行する、走行支援方法。
【請求項3】
請求項2に記載の走行支援方法であって、
さらに、前記自車両が減速後に停車する場合、前記走行車線内において前記走行範囲の側方に停車可能か否かを判定し、
前記自車両が前記走行範囲の側方に停車可能な場合には、前記走行範囲の側方で停車するように前記経路及び車速を設定し、
前記自車両が前記走行範囲の側方に停車可能でない場合には、前記走行範囲の手前又は前方で停車するように前記経路及び車速を設定する、走行支援方法。
【請求項4】
請求項1に記載の走行支援方法であって、
前記障害物に向かって前記隣接車線を走行する他車両を検出する場合には、前記走行範囲において前記自車両と前記他車両とが車幅方向において閾値距離以下に接近するか否かを判定し、
前記自車両と前記他車両とが前記閾値距離以下に接近する場合には、前記自車両と前記他車両とが前記閾値距離以下に接近しないように前記車速を設定する、走行支援方法。
【請求項5】
請求項4に記載の走行支援方法であって、
前記自車両と前記他車両とが前記閾値距離以下に接近する場合には、前記自車両と前記他車両とが前記閾値距離以下に接近しないように前記車速に加えて前記経路を設定する、走行支援方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
さらに、前記自車両の走行車線と、前記障害物が検出される隣接車線との間における分離帯の有無を検出し、
前記分離帯が検出されない場合にのみ、前記経路及び車速を設定する、走行支援方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
前記他車両の速度が速いほど、前記走行範囲を大きく設定する、走行支援方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
前記走行車線及び隣接車線の車幅が狭いほど、前記走行範囲の車幅方向の範囲幅を短く設定する、走行支援方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
前記障害物が大きいほど、前記走行範囲を大きく設定する、走行支援方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
前記隣接車線は側道と交差し、
前記障害物から前記側道までの距離が短いほど、前記走行範囲の前後方向の範囲長を短くし、車幅方向の範囲幅を長く設定する、走行支援方法。
【請求項11】
自車両が走行する走行車線の隣接車線における障害物を検出し、
前記障害物を検出した場合には、前記障害物の前記自車両側の側方に走行範囲を設定し、
前記走行範囲において前記自車両が前記障害物に向かって前記隣接車線を走行してくる他車両の進行の妨げとならないように、経路及び車速の少なくとも一方を設定し、
設定した前記経路又は/及び車速を用いて走行支援を実行する、
コントローラを備える走行支援装置であって、
前記コントローラは、
前記自車両が、前記走行範囲に向かって停車制御を行うか否かを判定し、
前記停車制御を行う場合、スペースがあれば、前記走行範囲の手前、前方、または、側方で停車させるように、前記経路又は/及び車速を設定する、
ことによって前記走行支援を実行する、
走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法、及び、走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両の走行経路に存在する障害物を検出し、当該障害物の状態に応じて自車両の走行を支援するシステムが検討されている。例えば、JP2018-536539Aには、自車両の走行車線の路肩に存在する駐車車両や歩行者などの対象物を検知し、対象物の相対速度に応じて車速の上限値を低くする車両の制御方法が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
JP2018-536539Aに開示された技術によれば、自車両の走行車線に存在する障害物に応じて走行支援を行うことができる。しかしながら、自車両の走行車線に隣接する隣接車線に障害物が存在する場合には、そのような障害物に応じた走行支援を行うことはできない。
【0004】
本発明の目的は、自車両の走行車線に隣接する隣接車線に障害物が存在する場合において、その障害物を考慮した走行支援を行うことである。
課題を解決するための手段
【0005】
本発明のある態様の走行支援方法によれば、走行支援装置が、自車両が走行する走行車線の隣接車線における障害物を検出し、障害物を検出した場合には、障害物の自車両側の側方に走行範囲を設定し、走行範囲において自車両が障害物に向かって隣接車線を走行してくる他車両の進行の妨げとならないように、経路及び車速の少なくとも一方を設定し、設定した経路又は/及び車速を用いて走行支援を実行する。この走行支援方法では、走行支援装置は、自車両が、走行範囲に向かって停車制御を行うか否かを判定する。そして、停車制御を行う場合、スペースがあれば、走行範囲の手前、前方、または、側方で停車させるように、経路又は/及び車速を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、各実施形態に共通する走行支援装置の概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両の周囲の状況を示す図である。
図3図3は、走行支援制御を示すフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両の周囲の状況を示す図である。
図5図5は、第3実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両の周囲の状況を示す図である。
図6図6は、他の実施例の自車両の周囲の状況を示す図である。
図7図7は、第4実施形態の走行支援制御を示すフローチャートである。
図8図8は、第5実施形態の走行支援制御を示すフローチャートである。
図9図9は、第6実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両の周囲の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の各実施形態に共通する運転支援装置100の概略構成図である。この図に示すように、運転支援装置100は、カメラ110、GPS受信機120、センサ130、通信インターフェース140、地図データベース150、ウィンカー(方向指示器)160、アクチュエータ170、コントローラ180を備える。運転支援装置100は、例えば自動運転や運転支援機能を有する車両(自車両A)に搭載される。
【0009】
カメラ110は、自車両Aの外部状況を撮像する撮像機器であり、自車両Aの外部状況に関する撮像情報を取得する。カメラ110は、例えば、自車両Aのフロント、リア、左右ドアの車室外側に設けられるアラウンドビューモニタカメラ、フロントガラスの車室内側または外側に設けられるフロントカメラ、及び自車両Aの後方に設置されるリアカメラなどである。カメラ110は、外部状況に関する撮像情報をコントローラ180へ出力する。
【0010】
GPS受信機120は、GPS衛星から送信される信号(GPSデータ)を周期的に受信する。GPS受信機120は、受信したGPSデータをコントローラ180へ出力する。
【0011】
センサ130は、レーダー131、ジャイロセンサ132及び車速センサ133などを含み、自車両Aの走行状態、及び、自車両Aの周囲に存在する物体の状態を検出する。レーダー131は電波を利用して自車両Aの外部の物体を検出する。電波は、例えばミリ波であり、レーダー131は、電波を自車両Aの周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して物体を検出する。レーダー131は、例えば周囲の物体までの距離または方向を物体情報として取得することができる。ジャイロセンサ132は、自車両Aの方位を検出する。車速センサ133は、自車両Aの車速を検出する。センサ130は、取得した物体情報、検出した自車両Aの方位、車速をコントローラ180へ出力する。
【0012】
通信インターフェース140は、無線通信により外部から自車両Aの周囲状況を取得する。通信インターフェース140は、例えば渋滞情報、交通規制情報等の交通情報や、天気情報等をリアルタイムに送信する高度道路交通システム(ITS)から種々の情報を受信する。ITSは、他車両との間の車車間通信、路側機との間の路車間通信等を含む。通信インターフェース140は、例えば、車車間通信により、自車両Aの周囲の他車両の加減速度、自車両Aに対する相対位置等を取得する。
【0013】
地図データベース150には、地図情報が記憶されている。地図情報には、カーブの曲率等を含む道路の形状、勾配、幅員、制限速度、交差点、信号機、車線数等に関する情報が含まれる。地図データベース150に記憶されている地図情報は、後述するコントローラ180により、いつでも参照可能な状態になっている。
【0014】
ウィンカー160は、運転者の操作またはコントローラ180からの指令により作動及び停止される。ウィンカー160の作動及び停止情報はコントローラ180に出力される。
【0015】
アクチュエータ170は、コントローラ180からの指令に基づいて自車両Aの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ170は、駆動アクチュエータ171、ブレーキアクチュエータ172、及びステアリングアクチュエータ173等を含む。
【0016】
駆動アクチュエータ171は、自車両Aの駆動力を調節するための装置である。自車両Aが走行駆動源としてのエンジンを搭載している自動車である場合には、駆動アクチュエータ171はエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を調節するスロットルアクチュエータ及びエンジンに対する燃料供給量(燃料噴射量)を調節する燃料噴射弁などで構成される。
【0017】
自車両Aが走行駆動源としてのモータを搭載しているハイブリッド車両または電気自動車である場合には、駆動アクチュエータ171はモータに供給する電力を調節可能な回路(インバータ及びコンバータなど)等で構成される。
【0018】
ブレーキアクチュエータ172は、コントローラ180からの指令に応じてブレーキシステムを操作し、自車両Aの車輪へ付与する制動力を調節する装置である。ブレーキアクチュエータ172は、油圧ブレーキまたは回生ブレーキ等で構成される。
【0019】
ステアリングアクチュエータ173は、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータ等で構成される。コントローラ180によりステアリングアクチュエータ173の動作を制御して、車輪の舵角を制御することができる。
【0020】
コントローラ180は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インターフェース(I/Oインターフェース)を備えたコンピュータで構成される。コントローラ180は、特定のプログラムを実行することにより、特定の制御を実現するための処理を実行する。なお、コントローラ180は、一つのコンピュータで構成しても良いし、複数のコンピュータで構成しても良い。
【0021】
コントローラ180は、目的地情報及び地図情報等を用いて、目的地までの走行経路(操舵タイミングを含む)、及び、当該経路における走行車速(加減速を含む)等を示す走行支援情報を生成し、生成した走行支援情報が示す経路及び車速に従って自車両Aの走行を支援する。
【0022】
図2は、本実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両Aの周囲の状況を示す図である。この図においては、右方の追越車線L1、及び、追越車線L1の左方に隣接する走行車線L2の2つの車線が示されている。なお、この例においては。法令等で左側通行が求められている場合には、右側に追越車線があり、左側に走行車線があるものとする。これらの車線L1、L2は共に走行方向が下方から上方であり、前方の信号が停止表示(赤)であるものとする。
【0023】
追越車線L1においては、自車両Aが走行しており、自車両Aの前方には停止線の手前まで3台の先行車両B1~B3が停車して列をなしている。
【0024】
図左方の走行車線L2においては、追越車線L1に存在する先行車両B1~B3の最後尾に位置する先行車両B3の左後方において、車線L2の左方寄り(路肩寄り)に駐車車両Cが停車している。また、駐車車両Cの後方に、駐車車両Cへと走行する他車両Dが存在する。なお、駐車車両Cは障害物の一例であり、駐車車両C以外に、工事現場などの静止物、また、歩行者や自転車などの所定の速度以下での走行物体が障害物であってもよい。以下においては、障害物が駐車車両Cであるものとして説明する。
【0025】
ここで、他車両Dの走行予定経路が点線で示されている。この走行予定経路によれば、他車両Dは、駐車車両Cを回避するために一旦側方にずれる回避経路を走行する。詳細には、走行車線L2を走行している他車両Dは、駐車車両Cの後方にてセンターラインを越えて追越車線L1に進入し、駐車車両Cの側方を通過した後に再度走行車線L2へと戻り走行を継続する。
【0026】
そこで、本実施形態の走行支援方法においては、コントローラ180は、自車両Aが隣接車線L2に駐車車両Cを検出すると、駐車車両Cを避けるような他車両Dの走行経路を予測する。そして、コントローラ180は、駐車車両Cの車線L1側の側方に他車両Dが走行できるような走行範囲Xを設定する。なお、この図において、走行範囲Xは、駐車車両Cの側方を中心として、前後方向に所定の範囲長、幅方向に所定の範囲幅を有するように設けられている。この図において、範囲長は駐車車両Cの全長よりも長い。
【0027】
そして、コントローラ180は、停車する先行車両B3に向かって走行する自車両Aが、走行範囲Xを含む位置に停車しないように走行支援を行う。例えば、この図においては、自車両Aが走行範囲Xの駐車車両Cとは反対側の側方のA’の位置に停車するように走行経路を変更する。このようにすることで、停車した自車両A’が、駐車車両Cを回避するためにその側方を走行する他車両Dの走行の妨げになることがなくなる。
【0028】
再び、図1を参照すれば、このような制御を行うコントローラ180は、自車位置検出部181、走行支援情報生成部182、周囲車両情報取得部183、走行範囲設定部184、状況判定部185、及び、走行支援部186等、各種制御処理を実行する機能部を有している。以下では、これらの構成の詳細について説明する。
【0029】
自車位置検出部181は、GPS受信機120からのGPSデータと、センサ130により検出された自車両Aの方位、車速とから、自車両Aの現在位置、車速及び進行方位を常時検出する。また、自車位置検出部181は、地図データベース150を参照して、自車両Aの地図上の位置を検出する。
【0030】
自車位置検出部181は、検出された自車両Aの現在位置、車速、進行方位及び地図上における位置と、カメラ110により取得された外部状況に関する撮像情報と、センサ130により取得された物体情報とから、自車両Aの周囲の道路情報を取得する。道路情報には、自車両Aの周囲の道路の形状、勾配、幅員、制限速度、交差点、信号機、車線の種別、車線数等に関する情報が含まれる。
【0031】
走行支援情報生成部182は、自車位置検出部181により検出された自車両Aの位置や周囲の道路状況、及び、設定された目的地等の情報を用いて、自車両Aの走行経路を生成する。さらに、走行支援情報生成部182は、走行経路に沿って自車両Aを走行させる場合の速度情報(加減速や操舵のタイミング等を含む)を生成する。このように生成される走行経路及び速度情報によって走行支援情報が生成され、この走行支援情報に基づいて自車両Aの走行が支援される。
【0032】
周囲車両情報取得部183は、カメラ110により取得された外部状況に関する撮像情報と、センサ130により取得された物体情報と、通信インターフェース140により取得された自車両Aの周囲状況とから、周囲車両情報を取得する。周囲車両情報には、自車両Aの対向車線を走行する車両の走行状況が含まれる。
【0033】
そして、周囲車両情報取得部183は、取得した周囲車両情報を用いて、車線L1の前方の信号の表示、及び、先行車両Bの走行状況、隣接車線L2の障害物、他車両Dの有無やその走行状態等を検出する。なお、障害物は、駐車車両Cや工事現場などの静止物であってもよいし、歩行者や自転車などの所定の速度以下で走行する物体であってもよい。
【0034】
走行範囲設定部184は、自車両Aの隣接車線L2において、他車両Dが検出された障害物を避けて走行するような走行経路を求め、障害物の側方に走行範囲Xを設定する。なお、他車両Dが実際に検出されない場合であっても、走行範囲設定部184は、駐車車両Cの後方から他車両Dが接近すると仮定して、障害物の側方に走行範囲Xを設定する。
【0035】
一例として、走行範囲Xの前後方向の範囲長、及び、車幅方向の範囲幅は以下のように定められる。一般に、他車両Dが障害物を回避して走行する場合には、障害物の側方に向かって操舵を開始してから、車線L2に再び戻るまでに5~10秒程度の回避時間を要することが知られている。また、他車両Dは、障害物を回避する間、車速を低下させる。そこで、走行範囲Xは、障害物の側方において、前後方向に障害物を中心とした所定の範囲長を有し、車幅方向に所定の車幅方向が有するように設定される。範囲長として、例えば回避時間の半分において他車両Dが減速して走行すると予測される距離が設定される。また、範囲幅としては他車両Dの車幅にマージンを加えた長さが設定される。このように、走行範囲Xは、他車両Dの走行状態に応じて定められる。なお、他車両Dが検出されない場合には、車線L2の形状や法定速度などの情報に基づいて走行範囲Xを設定してもよい。
【0036】
状況判定部185は、自車両Aの走行状況の判定を行う。例えば、状況判定部185は、自車両Aの直前の先行車両B3が停車すると予測される場合であって、走行支援情報生成部182により生成された走行支援情報を用いて走行支援が行われる場合に、自車両Aが走行範囲Xに所定の閾値時間以上存在するか否かを判定する。以下では、このように、自車両Aが走行範囲Xに所定の閾値時間以上存在することを「滞留する」と称して説明する。
【0037】
そして、状況判定部185は、自車両Aが走行範囲Xに滞留すると判定される場合には、走行支援情報を変更して、自車両Aが走行範囲Xに滞留しないように制御する。このようにすることで、走行範囲Xに自車両Aが停車しなくなり、他車両Dは走行範囲Xを走行して障害物を回避可能となるため、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることが抑制される。
【0038】
走行支援部186は、自車両Aの走行支援を行う。なお、状況判定部185により走行支援情報が変更される場合には、走行支援部186は、変更された走行支援情報に基づいて自車両Aの走行支援を行う。なお、走行支援部186は、経路情報及び速度情報を示す走行支援情報に沿って自車両Aを操作するだけでなく、自車両Aのディスプレイへのアイコン表示や音声メッセージでの伝達により、運転者に走行支援情報の提供を行ってもよい。そのため、自動運転レベルが低い場合などにおいては、本実施形態に係る走行支援制御を表示により実現することができる。
【0039】
図3は、コントローラ180により実行される走行支援制御のフローチャートである。なお、この走行支援制御は、所定の周期で繰り返し実行される。また、走行支援制御は、コントローラ180に記憶されたプログラムが実行されることにより行われてもよい。
【0040】
ステップS1において、コントローラ180(走行支援情報生成部182)は、自車位置検出部181により検出された自車両Aの位置、及び、設定された目的地等の情報等に基づいて、自車両Aの走行経路及び速度情報を定める。これにより、走行支援情報が生成される。
【0041】
ステップS2において、コントローラ180(周囲車両情報取得部183)は、自車両Aの前方の停止信号等に応じて直前の先行車両B3の走行状態を予測し、自車両Aが停車制御を行うか否かを判定する。自車両Aが停車制御を行う場合には(S2:Yes)、次にステップS3の処理が行われる。自車両Aが停車制御を行わない場合には(S2:No)、次に、ステップS7の処理において、ステップS1において生成した走行支援情報を用いた走行支援が行われる。
【0042】
ステップS3において、コントローラ180(周囲車両情報取得部183)は、自車両Aの隣接車線L2において所定の速度以下で移動する、または、停止している物体を障害物として検出する。障害物が検出される場合には(S3:Yes)、次にステップS4の処理が行われる。障害物が検出されない場合には(S3:No)、次に、ステップS7の処理において走行支援制御が行われる。
【0043】
ステップS4において、コントローラ180(走行範囲設定部184)は、隣接車線において障害物の後方を走行する他車両Dが障害物を避けて走行するような蛇行経路を予測し、障害物の側方に他車両Dが走行可能な走行範囲Xを設定する。なお、他車両Dが存在しない場合であっても、障害物の後方に他車両Dが存在すると仮定して走行範囲Xを設定する。
【0044】
ステップS5において、コントローラ180(状況判定部185)は、走行支援情報生成部182により生成された走行支援情報が用いられる場合において、走行範囲設定部184により設定された走行範囲Xに、自車両Aが所定時間以上存在するか否か、すなわち、滞留するか否かを判定する。自車両Aが走行範囲Xに滞留する場合には(S5:Yes)、走行支援情報を変更するために、次にステップS6の処理が行われる。一方、自車両Aが走行範囲Xに所定時間以上滞留しない場合には(S5:No)、次にステップS7の処理が行われる。
【0045】
ステップS6の処理において、コントローラ180(状況判定部185)は、自車両Aが走行範囲Xに所定時間以上存在しないように、走行支援情報を変更する。例えば、自車両Aを走行範囲Xの手前に停車させ、また、スペースがあれば走行範囲Xの前方や側方に停車するように走行経路を変更する。前方の先行車両B3の再発進がすぐに行われると予測される場合には、先行車両B3の再発進まで自車両Aを減速させてもよい。
【0046】
ステップS7において、コントローラ180(走行支援部186)は、走行支援情報に従って自車両Aの走行を支援する。ステップS6において走行支援情報が変更されている場合には、変更した走行支援情報に基づいて走行支援がされる。その結果、自車両Aが走行範囲Xに滞留することがなくなるので、隣接車線L2を走行する他車両Dの障害物を回避するようの走行の妨げとなることが抑制される。
【0047】
なお、ステップS2の処理において、コントローラ180(周囲車両情報取得部183は、自車両Aが停車制御を行っているか否かを判定したがこれに限らない。例えば、自車両Aが減速しているか否か、又は、所定の速度以下で徐行しているか否か等を判定してもよい。このような判定により、自車両Aが減速中や徐行中である場合に、後続のステップS5において自車両Aが走行範囲Xにおいて所定時間存在するか否かを判定することができる。
【0048】
また、ステップS5において、コントローラ180(状況判定部185)は、走行範囲設定部184により設定された走行範囲Xに、自車両Aが所定時間以上存在するか否かを判定、すなわち、滞留するか否かを判定したがこれに限らない。コントローラ180は、走行範囲Xに自車両Aが停車するか否かを判定してもよく、このような判定制御を用いることにより、自車両Aが走行範囲Xに停車してしまい他車両Dの進行の妨げとなることが抑制される。また、コントローラ180は、自車両Aの走行範囲Xにおける滞留及び停車の有無の判定に限らず、自車両Aが走行範囲Xにおいて他車両Dの進行の妨げとなるか否かを判定してもよく、この判定制御によって自車両Aが他車両Dの進行の妨げとなることを抑制できる。
【0049】
また、ステップS6の処理において、コントローラ180(状況判定部185)は、走行支援情報を変更したがこれに限らない。例えば、所定の間隔で走行支援情報を設定しているような場合には、走行支援情報は変更されず、自車両Aが走行範囲Xにおいて所定時間存在しないように走行支援情報が所定の周期で設定されることとなる。
【0050】
また、これらステップS1~S7の走行支援制御は、隣接車線L2に他車両Dが走行しない場合にも行われる。すなわち、コントローラ180は、隣接車線L2に障害物を検出すると、障害物の後方に他車両Dを検出しなくても、他車両Dが走行していると仮定して走行範囲Xを設定する。このようにすることで、隣接車線における他車両Dの走行の妨げとなることを抑制することができる。
【0051】
第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0052】
第1実施形態の走行支援方法によれば、自車両Aの隣接車線L2に障害物を検出し(S3:Yes)、隣接車線L2において障害物に向かって走行する他車両Dが障害物を回避して走行できるような自車両Aの走行車線L1側の走行範囲Xを障害物の側方に設定し(S4)、走行範囲Xにおいて自車両Aが他車両Dの進行の妨げとなるか否かを判定し(S5)、進行の妨げとなる場合には(S5:Yes)、妨げとならないように経路及び車速を設定し(S6)、設定した前記経路及び車速を用いて走行支援を実行する(S7)。
【0053】
ここで、障害物の側方の走行範囲Xに自車両Aが滞留している状態では、隣接車線L2において障害物に向かって走行する他車両Dは、自車両Aにより進路が塞がれているため、障害物の側方を走行して障害物を回避することができない。しかしながら、本実施形態の走行支援制御により走行範囲Xにおいて自車両Aが他車両Dの走行の妨げとならなくなる。その結果、潜在的に発生するおそれのある、駐車車両Cに向かって走行してくる他車両Dによる渋滞の発生を回避できる。
【0054】
また、自車両A及び他車両Dが駐車車両Cの側方で停車してしまうと、渋滞が発生するおそれがある。このような状態において、隣接車線において駐車車両Cに向かって緊急車両が走行してくる場合には、自車両A及び他車両Dは、緊急車両が走行可能なように移動する必要があるが、そのような移動を自動または手動で行うには時間を要してしまう。本実施形態においては、障害物の側方において他車両Dの走行の妨げとならず渋滞が抑制されるので、緊急車両は駐車車両Cの側方を走行することができる。また、他車両Dは駐車車両Cを回避して走行できるので、燃費の向上を図ることができる。
【0055】
第1実施形態の走行支援方法によれば、より詳細には、自車両Aが走行範囲Xにおいて所定時間以上滞在するか否かを判定し(S5)、自車両Aが走行範囲Xにおいて所定時間以上滞在する場合には、存在しないように経路及び車速を設定し(S6)、変更した前記経路及び車速を用いて走行支援を実行する(S7)。このようにすることで、走行領域Xには自車両Aが所定時間以上滞留しなくなるため、他車両Dは障害物を避けるために走行領域Xを走行できる。その結果、自車両Aが走行領域Xにおいて他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0056】
第1実施形態の走行支援方法によれば、自車両Aが走行範囲Xの外で停車するように経路を変更する。このように自車両Aの停車位置を走行領域Xの外に設定することで、自車両Aが走行領域Xにおいて他車両Dの走行の妨げとなることが抑制される。なお、このような走行支援は、自車両Aが走行範囲Xで比較的長時間存在すると予測される場合に行われるのが好ましい。自車両Aが走行範囲Xに長時間滞留する場合には、車速を変化させたとしても、自車両Aの走行範囲Xでの存在時間を十分に減少させるのが難しいおそれがある。そこで、自車両Aを走行範囲Xの外に停車させるように経路を変更することにより、自車両Aの走行範囲Xでの滞留を抑制でき、他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0057】
また、車線幅が広く、車線L1内の走行範囲Xの側方に自車両Aの停車スペースがある場合には、自車両Aが走行範囲Xの側方で停車するように経路を変更する。このように制御されることにより、自車両Aは走行範囲Xの外に停車することになるとともに、走行範囲Xの手前に停車する場合と比較すると、自車両Aの走行車線の後方において発生しうる渋滞車列をより短くすることができる。
【0058】
第1実施形態の走行支援方法によれば、自車両Aが走行範囲Xで停車しないように速度を変更する。このような走行支援は、自車両Aが走行範囲Xで比較的短時間存在すると予測される場合に行われるのが好ましい。自車両Aが走行範囲Xに存在する時間が閾値時間よりも長いが比較的短時間である場合には、走行経路を変更せずに車速を変化させることで、走行範囲Xでの滞留を抑制できる可能性がある。例えば、先行車両B3の再発進が近い場合には、自車両Aを停車させずに減速させて、再発進までの間、走行範囲Xを走行させてもよい。また、先行車両B3の再発進が確認できたら再加速してもよい。このようにすることで、自車両Aの停車及び再発進が低減されるので、前後方向の揺れの発生を防ぐことができる。
【0059】
(変形例)
第1実施形態においては、走行範囲Xが他車両Dの走行状態に応じて設定される例について説明した。本変形例においては、走行範囲Xの前後方向の範囲長、及び、車幅方向の範囲幅が、その他の要因により変更される例について説明する。
【0060】
第1の例としては、他車両Dの速度が速いほど、走行範囲Xの範囲長及び範囲幅を長く設定する。他車両Dの速度が速いほど障害物を回避する際の他車両Dの車速は早くなる。そのため、所定の秒数での走行距離が長くなるので範囲長を長くする必要がある。また、車幅方向のマージンを大きくする必要があるので、範囲幅を長くする必要がある。このように、他車両Dの速度が速いほど、範囲長及び範囲幅を長くすることで、自車両Aが障害物の側方で他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。なお、他車両Dの速度が速い場合において、範囲長及び範囲幅のうちのいずれか一方だけを変更することによっても、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなる可能性を低減することができる。
【0061】
第2の例としては、車線L1及びL2の車幅が狭いほど、走行範囲Xの範囲長及び範囲幅を長く設定する。車幅が狭いほど、他車両Dが障害物を回避する際の車幅方向のマージンを大きくする必要がある。このように、車線L1及びL2の車幅が狭いほど、障害物の側方において他車両Dが走行しうる走行範囲Xの範囲幅を長く設定されることで、自車両Aが障害物の側方で他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0062】
第3の例としては、障害物が大きいほど、走行範囲Xの範囲長及び範囲幅を長く設定する。障害物の大きさが大きければ、他車両Dの障害物の回避経路は長くなるため、走行範囲Xの範囲長及び範囲幅を長くする。このようにすることで、障害物の側方に走行範囲Xとして十分大きな領域が設定されるので、他車両Dが比較的大きな障害物を回避して走行する際に、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。なお、障害物が大きい場合において、範囲長及び範囲幅のうちのいずれか一方だけを変更することによっても、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなる可能性を低減することができる。
【0063】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、駐車車両Cが検出される隣接車線L2が、自車両Aの走行車線L1と同じ進行方向である例について説明した。第2実施形態においては、隣接車線L2が、自車両Aの走行車線L1の対向車線である例について説明する。
【0064】
図4は、第2実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両Aの周囲の状況を示す図である。この図においては、法令等で左側通行が求められている場合において、図左方にある走行車線L1、及び、図右方にある対向車線L2の2つの車線が示されており、走行車線L1の前方の信号が停止表示(赤)であるものとする。なお、本実施形態の走行支援制御は、図3に示された第1実施形態の走行支援制御と同様であるものとする。
【0065】
走行車線L1においては、自車両Aが走行しており、その前方において停止線の手前まで複数の先行車両B1~B3が停車して列をなしている。対向車線L2においては、走行車線L1の先行車両B3の右後方に駐車車両Cが停車している。そして、駐車車両Cの後方(図上方)において、他車両Dが駐車車両Cに向かって走行している。
【0066】
ここで、他車両Dの走行予定経路が点線で示されており、他車両Dは駐車車両Cを回避して側方に一旦ずれるような回避経路を走行する。詳細には、対向車線L2を走行している他車両Dは、駐車車両Cの後方にてセンターラインを越えて走行車線L1に進入し、駐車車両Cの側方を通過した後に、再度、対向車線L2へと戻り走行を続ける。
【0067】
そこで、コントローラ180は、自車両Aの前方に先行車両B3があり停車制御中である場合に、対向車線L2において駐車車両Cを検出すると、駐車車両Cを避けるような他車両Dの走行経路を予測する。そして、コントローラ180は、駐車車両Cの自車両Aの走行車線L1側の側方に、他車両Dが走行可能な走行範囲Xを設定し、その走行範囲Xに自車両Aが滞留しないように走行支援を行う。例えば、この図においては、自車両Aが走行範囲Xの駐車車両Cとは反対側の側方に停車するように走行経路を変更する。このようにすることで、停車した自車両Aが、対向車線L2を走行する他車両Dの走行の妨げになることを抑制できる。
【0068】
このように、自車両Aが停車制御中において、自車両Aの隣接車線が対向車線L2であって、その対向車線L2に駐車車両Cを検出する場合であっても、本実施形態の走行支援方法を実行することにより、対向車線L2を走行する他車両Dの走行の妨げを抑制することができる。
【0069】
第2実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0070】
第2実施形態の走行支援方法によれば、対向車線である隣接車線L2を走行する他車両Dが障害物を回避できるように障害物の車線L1側の側方に走行範囲Xを設定し、自車両Aが走行範囲Xにおいて隣接車線L2を走行する他車両Dの走行の妨げとならないように走行支援情報が変更される。より詳細には、自車両Aが走行範囲Xにおいて所定時間以上存在せず、障害物の側方に走行範囲Xが空くことにより、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることが抑制される。その結果、駐車車両Cに向かって走行してくる他車両Dによる渋滞の発生を回避できる。
【0071】
(第3実施形態)
第1または第2実施形態においては、自車両Aの走行車線に隣接する隣接車線が直進車線である場合について説明したが、これに限らない。第3実施形態においては、自車両Aの走行車線の隣接車線に側道と接続されたT字交差点が存在する例ついて説明する。
【0072】
図5は、第3実施形態における走行支援制御が行われる場合における自車両Aの周囲の状況を示す図である。この図においては、図2に示された第1実施形態の自車両Aの周囲の状況と比較すると、車線L2には側道と交差するT字交差点が設けられている。また、T字交差点よりも前方(図上方)に駐車車両Cが存在する。また、車線L1、L2の右方には対向車線L3、L4が示されている。
【0073】
このようなT字交差点において、側道から左旋回して車線L2に進入するような車線変更を行う他車両Eが示されている。他車両Eは、駐車車両Cに向かって回り込むように走行するために、一旦センターラインを越えて車線L2へと進入し、その後、車線L1に再度戻るような蛇行経路を走行する。そこで、コントローラ180は、T字交差点を構成する側道、及び、その側道の近傍に駐車車両を検出すると、駐車車両Cの車線L1側の右側方において他車両Eの走行経路となりうる領域を走行範囲Xとして設定し、走行範囲Xに自車両Aが滞留しないように走行制御情報を変更する。なお、コントローラ180は、側道を走行する他車両Eを検出していない場合であっても、側道から走行してくる他車両Eを想定し、自車両Aが他車両Eの妨げとなることを防ぐために駐車車両Cの側方に走行範囲Xを設定する。
【0074】
ここで、この例における走行範囲Xの範囲幅及び範囲長は、図2に示された第1実施形態の範囲幅及び範囲長よりも長い。これは、他車両Dが側道から駐車車両Cを回避して隣接車線L2を走行する回避経路は、第1実施形態に示されるような駐車車両Cを追い越す場合の回避経路と比較すると、大回りになるため、幅方向に長くする必要がある。一方で、範囲長は、他車両Eが追い越しではなく左折を行うため、車線L2の前後方向の範囲長は短くなる。そのため、駐車車両CがT字交差点の近傍に存在する場合には、範囲長を短くするとともに範囲幅を長く設定することで、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0075】
図6は、他の例における走行支援制御が行われる場合における自車両Aの周囲の状況を示す図である。この図においては、図4に示された第2実施形態の自車両Aの周囲の状況と比較すると、対向車線L2には側道と交差するT字交差点が設けられている。また、T字交差点よりも前方(図下方)に駐車車両Cが存在する。
【0076】
このようなT字交差点において、側道から車線L2に左旋回して車線L2に進入するような車線変更を行う他車両Eが示されている。他車両Eは、駐車車両Cに向かって回り込むように走行するために、一旦センターラインを越えて車線L1へと進入し、その後、車線L2に再度戻るような経路を走行する。そこで、コントローラ180は、駐車車両Cの左側方において他車両Dの走行経路となりうる領域を走行範囲Xとして設定し、走行範囲Xに自車両Aが滞留しないように走行制御情報を変更する。このようにしても、自車両Aが駐車車両Cの側方で他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。なお、この例における走行範囲Xは、図5に示した例と同様に、図4に示された第2実施形態の走行範囲Xよりも、範囲幅が長く、また、範囲長が短いものとする。
【0077】
図5、6の例においては、T字交差点が設けられる例について説明したが、これに限らない。例えば、隣接車線L2と隣接して駐車場が設けられており、その駐車場の出口の近傍に駐車車両Cが存在するような場合においても、本実施形態の走行支援制御を行うことにより、自車両Aが駐車車両Cの側方で他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0078】
第3実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0079】
第3実施形態の走行支援方法によれば、他車両Dが進入しうる側道から障害物までの距離が短いほど、走行範囲Xの範囲長を短くするとともに、範囲幅を長くする。他車両Dが側道から駐車車両Cを回避して隣接車線L2を走行する回避経路は、駐車車両Cを追い越す場合の回避経路と比較すると、大回りになるため、幅方向に大きくする必要がある一方で、範囲長は短くなる。したがって、範囲長を短くしても、範囲幅を広くすることにより、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0080】
(第4実施形態)
第1及び第2実施形態においては、自車両Aの走行車線に隣接する隣接車線において駐車車両Cが検出される場合における走行支援方法ついて説明した。この走行支援方法においては、駐車車両Cに向かって後方から走行してくる他車両Dが検出されない場合であっても、走行範囲Xを設定したが、これに限らない。第4実施形態においては、隣接車線において障害物に向かって走行する他車両Dが実際に検出される場合における走行支援制御について説明する。
【0081】
図7は、第4実施形態の走行支援制御のフローチャートである。この図に示されたフローチャートは、図3に示された第1実施形態のフローチャートと比較すると、ステップS5において自車両Aが走行範囲Xに滞留停車すると判定されなかった(S5:No)後に、さらに、ステップS21、S22の処理が追加されている。
【0082】
ステップS21においては、コントローラ180は、隣接車線において実際に障害物に向かって走行する他車両Dが検出されるか否かを判定する。障害物の後方に障害物に向かって走行する他車両Dが検出される場合には(S21:Yes)、さらに他車両Dに応じた走行支援を行うために、次にステップS22の処理を行う。一方、障害物に向かって走行する他車両Dが検出されない場合には(S21:No)、次にステップS7の処理を行う。
【0083】
ステップS22において、コントローラ180は、自車両A及び他車両Dの走行経路を推測し、推測した走行経路に基づいて任意の時刻における自車両Aと他車両Dとの間の距離を推測する。そして、コントローラ180は、自車両Aと他車両Dとが走行範囲Xにおいて略同じタイミングで存在し、互いに所定の距離内に接近するか否かを判定する。自車両Aと他車両Dとが走行範囲Xにおいて所定の距離内に接近する場合には(S22:Yes)、互いに接近しないように走行支援情報を変更するために、次にステップS6の処理を行う。一方、自車両Aと他車両Dとが互いに接近しない場合には(S22:No)、次にステップS7の処理を行う。なお、このように、走行範囲Xにおいて自車両Aと他車両Dとが互いに接近することを「干渉する」と称してもよい。
【0084】
このような制御においては、障害物に向かって走行する他車両Dが検出されない場合であっても、走行範囲Xに滞留することが抑制される(S5:No)。一方、他車両Dが検出される場合には(S21:Yes)、さらに、走行範囲Xにおいて自車両Aと他車両Dとが接近することが抑制される(S22:Yes)ので、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0085】
なお、本実施形態においては、停車制御が行われること(S2:Yes)が前提となり、他車両Dが検出される場合には(S21:Yes)、さらに、走行範囲Xにおいて自車両Aと他車両Dとが互いに接近するか否かを判定した(S22)がこれに限らない。ステップS2に示される停車制御の有無の判定処理は省略してもよい。すなわち、停車制御中でなくても、走行範囲Xにおいて自車両Aと他車両Dとが互いに接近する場合には(S22:Yes)、両車両が接近しないように制御することにより、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることを抑制できる。
【0086】
また、ステップS6の処理において、コントローラ180(状況判定部185)は、自車両Aが走行範囲Xに所定時間以上存在しないように、走行支援情報を変更する。ここで、ステップS22において、走行範囲Xにおいて自車両Aと他車両Dとが互いに接近すると判定される場合には、車速のみを変更することで、走行範囲Xにおいて両車両が接近することを抑制できる。そのため、走行経路の変更が不要になるため、左右方向の加速度の発生を抑制することができる。なお、速度に替えて走行経路を変更してもよいし、速度に加えて走行経路を変更することによって、走行範囲Xにおいて両車両が接近することを抑制してもよい。
【0087】
第4実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0088】
第4実施形態の走行支援方法によれば、さらに、障害物の後方に障害物に向かって走行する他車両Dが存在する場合に、走行範囲Xにおいて自車両Aと他車両Dとが所定距離以下に接近するか否かを判定する(S21)。そして、両車両が所定距離以内に接近する場合には(S21:Yes)、走行範囲Xにおいて両車両が所定距離以内に接近しなくなるように、走行支援情報を変更する。このようにすることで、障害物に向かって走行する他車両Dの存在の有無に関わらず、自車両Aの走行範囲Xへの滞留を防ぐ(S5:Yes)ことに加えて、実際に障害物に向かって他車両Dが走行している場合に、自車両Aと他車両Dとの接近を抑制することができるので、自車両Aが他車両Dの妨げとなることをさらに抑制することができる。
【0089】
第4実施形態の走行支援方法によれば、自車両Aが走行範囲Xに所定時間以上存在しないように走行支援情報を変更する場合に、車速のみを変更することで、走行範囲Xにおいて両車両が接近することを抑制できるとともに、走行経路の変更が不要になるため、左右方向の加速度の発生を抑制することができる。また、速度に替えて走行経路を変更することによって、前後方向の加速度の発生を抑制することができる。また、速度及び走行経路の両者を変更することによって、自車両Aにとって制御パラーメータに制限なく自車両Aの運転性の向上を図ることができる。
【0090】
(第5実施形態)
第1乃至第4実施形態においては、自車両Aが走行範囲Xに滞留する場合には、走行支援情報を変更する例について説明した。第5実施形態においては、さらに、走行支援情報のうちの走行経路または速度情報を変更する例について具体的に説明する。
【0091】
図8は、第5実施形態の走行支援制御のフローチャートである。この図に示されたフローチャートは、図3に示された第1実施形態のフローチャートと比較すると、ステップS5において自車両Aが走行範囲Xに滞留停車すると判定された(S5:Yes)後に、さらに、ステップS31~S33の処理が追加されている。
【0092】
ステップS31においては、さらに、コントローラ180は、車線L1内において走行範囲Xの側方に自車両Aを停車できるか否かを判定する。そして、走行範囲Xの車線L1側の側方に自車両Aを停車できる場合には(S31:Yes)、次にステップS32の処理を行う。一方、走行範囲Xの側方に停車できない場合には(S31:No)、次にステップS33の処理を行う。
【0093】
ステップS32においては、コントローラ180は、車線L1内において走行範囲Xの側方に自車両Aを停車させるように、走行経路及び速度情報に変更する。
【0094】
ステップS33においては、コントローラ180は、走行経路を変更することなく、走行範囲Xの手前に自車両Aを停車させるように速度情報に変更する。
【0095】
このようにすることで、車線L1に占める走行範囲Xに応じて、走行経路及び速度情報の少なくとも一方を変更することができる。その結果、走行範囲Xの側方に自車両Aを停車させるような場合には、車線L1における渋滞を低減することができる。一方、走行範囲Xの手前に自車両Aを停車させる場合には、車線L1の幅が狭い場合であっても、自車両Aが他車両Dの回避経路の妨げになることが抑制される。このように、道路状況に応じて自車両Aの停車位置が変更されるので、制御の自由度が高まるとともに、渋滞の低減等を図ることができる。
【0096】
第5実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0097】
第5実施形態の走行支援方法によれば、自車両Aが走行範囲Xに滞留する場合であって(S5:Yes)、さらに、走行範囲Xの側方において自車両Aが停車可能か判定する(S31)。走行範囲Xの側方に自車両Aが停車可能な場合には(S31:Yes)、走行範囲Xの側方に自車両Aが停車するように経路及び速度を変更する(S32)。走行範囲Xの側方に自車両Aが停車可能な場合には(S31:Yes)、走行範囲Xの手前に自車両Aが停車するように経路及び速度を変更する(S33)。
【0098】
このような制御を行うことにより、自車両Aが走行範囲Xの手前に駐車する場合には、自車両Aは他車両Dの走行範囲Xの走行を妨げなくなる。一方、自車両Aが走行範囲Xの側方に駐車する場合には(S32)、自車両Aがより前方に位置しながら、他車両Dの走行範囲Xの走行を妨げないため、走行車線L1における渋滞の発生を抑制できる。このようにして、道路状態に応じて、自車両Aが他車両Dの走行の妨げとなることを抑制することができる。
【0099】
(第6実施形態)
第1~5実施形態においては、隣接車線に障害物が検出される場合において、自車両Aの走行支援情報を変更する例について説明した。第6実施形態においては、自車両Aの走行支援情報を変更しない例について説明する。
【0100】
図9は、第6実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両Aの周囲の状況を示す図である。この図においては、図4に示された第2実施形態の例と同様に、図下方から上方へ向かう車線L1と、図上方から下方へ向かう車線L2が設けられている。そして、本実施形態においては、さらに、車線L1と車線L2との間に中央分離帯Fが設けられているものとする。
【0101】
他車両Dは、駐車車両Cの回避経路を走行するが、中央分離帯Fが設けられているため、回避経路が自車両Aの走行車線L1に進入することはない。そのため、自車両Aが中央分離帯Fを介して駐車車両Cの側方に駐車したとしても、他車両Dの走行の妨げとはならない。
【0102】
このような第6実施形態の制御方法によれば、周囲車両情報取得部183によって中央分離帯Fが検出されない場合、言い換えると中央分離帯Fが検出されない場合にのみ走行支援情報を変更することで、走行支援制御の処理負荷を低減することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0104】
また、上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9