(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】シャープペンシル及び棒状体操出具
(51)【国際特許分類】
B43K 21/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B43K21/00 J
(21)【出願番号】P 2023511276
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022015068
(87)【国際公開番号】W WO2022210562
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021058431
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】上原 康孝
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-120287(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110239815(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105249767(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
A45D 40/20
B65D 83/02
A47G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒内に配置され、筆記芯を挟持するチャックを有する芯繰出機構と、
前記チャックを前方へ移動させる操作部と、
前記チャックの後方に配置され、前記チャックと連通し予備の筆記芯を収納する予備芯収納部と、を備え、
前記操作部が操作されることにより前記芯繰出機構が作動し、前記筆記芯が前記軸筒の前端開口部から突出するシャープペンシルにおいて、
前記予備芯収納部は、横断面において渦巻状の形状を有し且つ軸方向に沿って延びる芯収納室を有することを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
横断面における前記芯収納室の一端部に前記チャックと連通する連通孔を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記軸筒の外周部に前記予備の筆記芯を出し入れ可能な外周開口部を有し、横断面における前記芯収納室の他端部が前記外周開口部と連通することを特徴とする請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記軸筒の外周開口部に、該外周開口部を開閉するための蓋部材を配設したことを特徴とする請求項3に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記芯収納室は、前記芯収納室の前方端に位置する底部を有し、前記底部が横断面における前記芯収納室の一端部から他端部に向かって傾斜する傾斜部を備えたことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記芯収納室は、前記シャープペンシルの中心軸線と重なる一端部と、前記中心軸線から離間した他端部とを含み、
後方から、前記他端部を介することなく前記一端部へ前記筆記芯を供給可能な連通孔を有する、請求項1ないし5の何れか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記芯収納室は、前記シャープペンシルの中心軸線と重なる一端部と、前記中心軸線から離間した他端部とを含み、
後方から、前記他端部へ前記筆記芯を供給可能な開口を有する、請求項1ないし6の何れか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項8】
軸筒と、
前記軸筒内に配置され、棒状体を挟持するチャックを有する繰出機構と、
前記チャックを前方へ移動させる操作部と、
前記チャックの後方に配置され、前記チャックと連通し予備の棒状体を収納する収納部と、を備え、
前記操作部が操作されることにより前記繰出機構が作動し、前記棒状体が前記軸筒の前端開口部から突出する棒状体操出具において、
前記収納部は、横断面において渦巻状の形状を有し且つ軸方向に沿って延びる収納室を有することを特徴とする棒状体操出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックの後方に予備の筆記芯を収納する予備芯収納部を備えたシャープペンシル、及び、チャックの後方に予備の棒状体を収納する収納部を備えた棒状体操出具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記芯を挟持するチャックの後方に予備の筆記芯(以降予備芯と呼称する)を収納する予備芯収納部を備えたシャープペンシルは、筆記により筆記芯が消耗しても予備芯収納部から予備芯がチャックに供給されるため、予備芯収納部の予備芯が無くなるまで筆記を継続できることから便利でありシャープペンシルに広く一般的に採用されている。
【0003】
上記シャープペンシルは、予備芯収納部に収納される予備芯が多いほど、予備芯を補充するまでの期間が延びるため、予備芯の残数を気にすることなく筆記を継続することができる。このため、予備芯収納部をなるべく大きく形成することが好ましいが、単純に芯収納部を大きくしてしまうと、予備芯収納部内で予備芯同士がチャックに連通する通路に集まることで相互に干渉し、互いの摩擦力で動きが規制されることで予備芯がチャックへ供給されなくなる虞がある。このような課題は、シャープペンシルに限られず、予備の棒状体を収納する収納部を備えた棒状体操出具全般において生じ得る。
【0004】
前記課題を解決する手段として、JP2014-040083Aには、芯を収納する芯タンクの底面に芯が1本ずつ通過できる芯挿通孔が形成され、芯挿通孔に対して横方向からショックと振動を与えることで、芯タンク内から芯挿通孔へ芯が入り込み易くしたノック式シャープペンシルが開示されている。
このJP2014-040083Aの構造では、芯タンク底面下方の芯ガイド部に横方向に延びる円孔が貫通され、円孔には操作突部をなす芯通過本体が往復動可能に嵌合され、芯通過本体の中間部には芯1本は通過できるが2本は通過できない芯挿通孔が設けられ、芯挿通孔を通り抜けた1本の芯は芯ガイド部内に導かれ、チャック部を経て先端のガイドパイプへ至るように構成されている。これにより、芯タンク底面から芯挿通孔周辺に落下した芯は、操作突部の押し付けと開放を繰り返すことで、芯挿通孔は横方向からショックと振動を受けるため、芯タンク内に多くの芯が格納され芯挿通孔周辺に多くの芯が存在しても芯が芯挿通孔を通過し易くなる。
【0005】
しかしながら、JP2014-040083Aの構造では、操作突部による横方向の摺動構造を設けることで構造が複雑化するためコストが増加する虞がある。また、芯タンク内の芯が多くなるほど芯タンク内での芯同士の干渉が増加するため、より強い振動を与える必要があり、芯の本数が増え密度が増加することで芯が芯挿通孔を通過できなくなる虞がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、以上の背景をもとになされたものであり、その目的とするところは、予備芯収納部に多くの予備芯を収納可能にするとともに、チャックに予備芯がスムーズに供給可能となるシャープペンシル、及び、収納部に多くの予備棒状体を収納可能にするとともに、チャックに予備棒状体がスムーズに供給可能となる棒状体操出具を提供することである。
【0007】
本発明は、
軸筒と、
前記軸筒内に配置され、筆記芯を挟持するチャックを有する芯繰出機構と、
前記チャックを前方へ移動させる操作部と、
前記チャックの後方に配置され、前記チャックと連通し予備の筆記芯を収納する予備芯収納部と、を備え、
前記操作部が操作されることにより前記芯繰出機構が作動し、前記筆記芯が前記軸筒の前端開口部から突出するシャープペンシルにおいて、
前記予備芯収納部は、横断面において渦巻状の形状を有し且つ軸方向に沿って延びる芯収納室を有することを特徴とするシャープペンシルである。
【0008】
本発明によれば、チャックの後方に、該チャックと連通する予備芯収納部を備え、予備芯収納部が横断面において渦巻状に形成された芯収納室を有していることから、渦巻状の芯収納室に予備芯が整列して並ぶことができる。これにより、芯収納室内で予備芯同士の干渉を最小限に抑えつつチャックへ予備の筆記芯(予備芯)を供給することができる。また、芯収納室を渦巻状に配置することで予備芯収納部により多くの予備芯を収納可能となるため、予備芯を補充するまでの期間が延び手間を軽減できる。
【0009】
また、横断面における芯収納室の一端部にチャックと連通する連通孔を備えていてもよく、この場合、横断面における芯収納室の一端部の位置をチャックの位置と合わせることで芯収納室からチャックへスムーズに供給できるため好ましい。
【0010】
また、軸筒の外周部に予備芯を出し入れ可能な外周開口部を有し、横断面における芯収納室の他端部が外周開口部と連通するように構成してもよく、この場合、シャープペンシルを用いて筆記することにより筆記芯が摩耗し、最終的に芯収納室の予備芯を使い切った際、外周開口部から芯収納室に容易に予備芯の補充ができるため好ましい。
【0011】
また、軸筒の外周開口部に、該外周開口部を開閉するための蓋部材を配設してもよく、この場合、芯収納室に予備芯を補充するとき以外は蓋部材により外周開口部を閉口することができるため芯収納室に補充された予備芯が外部にこぼれることを防止できる。また、外周開口部を蓋部材により開閉する手段は、蓋部材を外周開口部に対して着脱自在に係着してもよく、芯を補充するときのみ蓋部材が部分的に変形して開口部が形成されてもよく、蓋部材全体が軸筒に対してヒンジ構造などで回転することで外周開口部が開閉してもよい。
【0012】
また、芯収納室は、前記芯収納室の前方端に位置する底部を有し、底部が横断面における芯収納室の一端部から他端部に向かって傾斜する傾斜部を備えていてもよく、この場合、例えば芯収納室の一端部を前方に向かって深く形成し、他端部が浅くなるよう形成することで、シャープペンシルを重力方向に沿ってペン先が地面側にくるように把持した際に芯収納室内の予備芯は他端部から一端部へ傾斜部に沿って移動するよう促すことができる。
【0013】
また、芯収納室は、シャープペンシルの中心軸線と重なる一端部と、中心軸線から離間した他端部とを含み、シャープペンシルは、後方から、他端部を介することなく一端部へ筆記芯を供給可能な連通孔を有してもよい。
【0014】
また、芯収納室は、シャープペンシルの中心軸線と重なる一端部と、中心軸線から離間した他端部とを含み、シャープペンシルは、後方から、他端部へ筆記芯を供給可能な開口を有してもよい。
【0015】
また、本発明は、
軸筒と、
前記軸筒内に配置され、棒状体を挟持するチャックを有する繰出機構と、
前記チャックを前方へ移動させる操作部と、
前記チャックの後方に配置され、前記チャックと連通し予備の棒状体を収納する収納部と、を備え、
前記操作部が操作されることにより前記繰出機構が作動し、前記棒状体が前記軸筒の前端開口部から突出する棒状体操出具において、
前記収納部は、横断面において渦巻状の形状を有し且つ軸方向に沿って延びる収納室を有することを特徴とする棒状体操出具である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予備芯収納部に多くの予備芯を収納可能にするとともに、チャックに予備芯がスムーズに供給可能となるシャープペンシルを提供することができた。また、本発明によれば、収納部に多くの予備棒状体を収納可能にするとともに、チャックに予備棒状体がスムーズに供給可能となる棒状体操出具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態における棒状体操出具(シャープペンシル)の一例の外観図である。
【
図5】
図2の状態からノック体を押圧して棒状体を繰り出す状態を説明するための説明図である。
【
図6】
図1の棒状体操出具において、予備棒状体を収納室に補充する状態を説明するための説明図である。
【
図7】収納室に予備棒状体を補充した状態における収納室を展開した展開図である。
【
図8】本発明の第2実施形態における棒状体操出具の一例の外観図である。
【
図9】
図8の棒状体操出具を、予備棒状体の収納室への補充が可能な状態で示す図である。
【
図10】
図9のC-C線に対応する縦断面図である。
【
図13】
図8の棒状体操出具の一部の分解斜視図である。
【
図14】
図8の棒状体操出具の前方連結部材を示す斜視図である。
【
図15】
図8の棒状体操出具の前軸を示す斜視図である。
【
図16】
図8の棒状体操出具の収納部材の本体部を示す斜視図である。
【
図17】
図8の棒状体操出具の外筒を示す斜視図である。
【
図18】
図8の棒状体操出具の後方連結部材を示す斜視図である。
【
図19】
図18の後方連結部材を異なる角度から見た斜視図である。
【
図20】
図8の棒状体操出具の収納室を展開した展開図である。
【
図21】本発明の第3実施形態における棒状体操出具の一例の外観図である。
【
図28】
図21の棒状体操出具を、後軸を取り外した状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張することがある。
【0019】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0020】
本明細書において、棒状体操出具10の中心軸線が延びる方向(長手方向)を軸方向、軸方向と直交する方向を径方向、中心軸線周りの円周に沿った方向を周方向とする。また、軸方向に沿って、軸筒の前端開口部がある側を前方と表現しその反対方向を後方と表現する。また、径方向に沿って、軸筒の軸心(中心軸線)に向かう方向を内側又は内方と表現し、その反対方向を外側又は外方と表現する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における棒状体操出具10の一例の外観図であり、
図2は、
図1のA-A端面を示す端面図であり、
図3は、
図2のB-B端面を示す端面図であり、
図4は、収納部40の収納室40aを展開した展開図であり、
図5は、
図2の状態からノック体50を押圧して棒状体80を繰り出す状態を説明するための説明図であり、
図6は、
図1の棒状体操出具10において、棒状体80を収納室40aに補充する状態を説明するための説明図であり、
図7は、収納室40aに予備棒状体81を補充した状態を説明するために収納室40aを展開した展開図である。
【0022】
第1実施形態~第3実施形態では、棒状体操出具10がシャープペンシルであり、棒状体80がシャープペンシル用の筆記芯であり、予備棒状体81が予備の筆記芯である例について説明する。これにともなって、第1実施形態~第3実施形態では、棒状体操出具10、棒状体80及び予備棒状体81を、それぞれシャープペンシル10、筆記芯80及び予備芯81とも呼ぶ。なお、これに限られず、棒状体操出具10は、任意の棒状体80を繰り出す器具であってもよい。棒状体80は、例えば、爪楊枝、ストロー、割り箸、綿棒、ストレートドリル等であってもよい。また、棒状体80がシャープペンシル用の筆記芯である場合、筆記芯の材質は、黒鉛に限られず、色鉛筆芯、クレヨン、チョーク等の他の筆記用の部材であってもよい。
【0023】
図1および
図2に示すように、シャープペンシル(棒状体操出具)10は、軸筒20と、軸筒20の内部に配設され筆記芯(棒状体)80を挟持するチャック31を備えた芯繰出機構(繰出機構)30と、芯繰出機構30の後方に配設され予備芯(予備棒状体)81を収納する予備芯収納部材(収納部、予備芯収納部)40と、予備芯収納部材40の後方かつ軸筒20の後端開口部から後方へ突出するノック体(操作部)50と、軸筒20の外周開口部22bに着脱自在に装着された蓋部材70と、により構成されている。
【0024】
軸筒20は、前軸21と、該前軸21の後方に配設され該前軸21に螺着した後軸22と、前軸21の前方に配設され該前軸21に螺着した先口23とで構成されている。
【0025】
前軸21は略筒状に形成され、前部外周部に先口23の後部内周部に形成した後部雌螺子部23aと螺着する前部雄螺子部21aと、後部外周部には後軸22の前部内周部に形成した前部雌螺子部22aと螺着する後部雄螺子部21bと、を有している。また、前軸21の外周部にはエラストマーで構成されたグリップ21cが2色成型により一体的に形成してある。さらに、後部内周部にはコイルスプリング60が当接する段状の内段21dを有している。
【0026】
後軸22は略筒状に形成され、外周部に内周部まで貫通する外周開口部22bを有している。外周開口部22bは、外方から視ると矩形状に形成されると共に、軸方向に沿って長く延びて形成される。外周開口部22bの軸方向に沿った長さは予備芯81の長さより長く形成してあり、予備芯81を後軸22の軸方向に沿って平行に配置した状態でも外周開口部22bから後軸22内部に挿入可能に構成される。また、
図3に示すように、外周開口部22bの内壁には後述する蓋部材70の係止部70aが係止される被係止部22cが形成してある。さらに、後軸22の内周部には軸方向に沿って延びる溝部22dが形成してあり、溝部22dには後述する予備芯収納部材40のレール部40fが摺接するよう配設されている。
【0027】
先口23は、先口本体231と、先口本体231の内部に前後方向への摺動が可能に配設されたスライダー232により構成されている。スライダー232はステンレスで形成された筒状の先端部材232aをスライダー本体232bに圧入装着して構成されている。これにより、先口23の前端に、軸筒20の内部に配した芯繰出機構30で繰り出された筆記芯80の前端部が突出する前端開口部23bが形成され、先口23の内周部には、筆記芯80を軽い力で保持する芯保持部23cが形成される。尚、スライダー本体232bは、ポリアセタール(POM)を用いて成型加工により形成してある。
【0028】
芯繰出機構(繰出機構)30は、チャック31と、該チャック31の後方に連結され且つ筆記芯80が通過する筒体32と、チャック31の頭部31aに外嵌された締具33と、締具33を後方で受け止める連結具34と、連結具34と筒体32との間に配設されたコイルスプリング35と、により構成される。
【0029】
チャック31は、筒体32とともに連結具34に対して前後動可能に構成される。そして、チャック31の頭部31aは軸方向に沿って二分割されており、分割されたそれぞれの頭部31aは前方へ向かって互いが次第に離間するように形成され、頭部31aがそれぞれ径方向内方に向かって撓むことで筆記芯80が挟持可能に構成される。
【0030】
連結具34は、前軸21の前端と前軸21に螺合された先口23の内段により挟持され軸筒20に固定される。また、連結具34の内段と筒体32の前端との間にコイルスプリング35が張架され、コイルスプリング35の弾発力により、チャック31と筒体32とが、連結具34及び軸筒20に対して後方へ弾発される。
【0031】
次に、予備芯収納部材40(収納部、予備芯収納部)について詳述する。予備芯収納部材40は軸筒20の内部に後軸22(軸筒20)に対して前後動自在に配設されている。予備芯収納部材40の内方には後端から前方へ向かって延びる芯収納室40aを有しており、芯収納室40aの前端部には底部40bが形成されている。そして、予備芯収納部材40の前部40jは、外径が中央部や後部と比べて小さく形成されており、前部40jは筒体32の内周部に前後に摺動可能に挿入されている。また、予備芯収納部材40の前段部40iは、筒体32の後端に対して当接可能に構成され、これにより、予備芯収納部材40が前進した際に筒体32を前方へ押圧可能に構成される。
【0032】
芯収納室40aは、
図3に示すように、横断面方向からみて、中央部から外周部に向かって渦巻を描くように形成されており、一端部40c(中央部)には筒体32及びチャック31に連通する連通孔40hを有している。連通孔40hは予備芯81が1本は通るが2本は通らない内径を有しており、これにより、連通孔40hを介して予備芯81が1本ずつチャック31に供給される。また、
図4に示すように芯収納室40aを平面状に展開すると、芯収納室40aの底部40bは、一端部40c(中央部)から他端部40d(外周部)に向かって傾斜して形成された傾斜部40eを有している。この傾斜部40eにより、シャープペンシル10を把持して筆記するために、筆記先端部を重力方向下方に向けると予備芯81は傾斜部40eに沿って一端部40c側に進むように構成される。尚、軸方向に直交する方向に対する傾斜部40eの角度は、傾斜が大きすぎると、一端部40c側にある予備芯81に負荷が掛かりすぎ、予備芯81が隣り合う予備芯と係合することで連通孔40hから排出され難くなる虞がある。また、傾きが小さすぎると予備芯81が一端部40c側に進み難くなることから、傾斜部40eの傾斜角度Xは、5°<X<45°で形成することが好ましく、15°<X<30°で形成することがより好ましい。本実施形態では、具体的に傾斜部40eの傾斜角度Xを19°に形成することで予備芯81が一端部40c側に徐々に進むようにしてある。そして、芯収納室40aは一端部40cから他端部40dに向かって予備芯81が並列には並ばない幅で形成してあり、これにより、芯収納室40a内においては予備芯81が他の予備芯と接触する本数が2本を超えないようにしてある。具体的には、本実施例では予備芯81(筆記芯80)の外径を0.58mm、芯収納室40aの幅を0.80mmに形成することで予備芯81が並列には並ばず、1列に並ぶようにしてある。
【0033】
芯収納室40aは、中心軸線と直交する断面において、中心軸線と重なる一端部(中央部)40cから、中心軸線から離間した他端部(外周部)40dへ向けて、渦巻を描くように延びている。本実施形態では、芯収納室40aは、中心軸線と直交する断面において、後方から見たときに、他端部40dから一端部40cへ向けて反時計回りに進むように延びている。この場合、予備芯81が外周開口部22bを介して芯収納室40a内に収納された後、使用者が、シャープペンシル10を後方から見て時計回りに回転させることにより、予備芯81が他端部40dから一端部40cへ向けて移動するようになる。後方から見て時計回りの回転は、一般的に螺子を締める際の回転方向であり、使用者にとって記憶しやすい利点がある。また、とりわけ右利きの使用者にとっては、後方から見て時計回りの回転は回転させやすい利点もある。なお、これに限られず、芯収納室40aは、中心軸線と直交する断面において、後方から見たときに、他端部40dから一端部40cへ向けて時計回りに進むように延びてもよい。
【0034】
また、予備芯収納部材40の外周面には、軸方向に沿って延び外方へ向かって突出するレール部40fが軸心を挟んで対称に2ヶ所形成してあり、レール部40fが後軸22の溝部22dに摺接するように構成することで、予備芯収納部材40が後軸22(軸筒20)に対して回動不能且つ前後動可能に構成される。さらに、予備芯収納部材40の外周部には芯収納室40aに連設された開口部40gを有しており、開口部40gと後軸22(軸筒20)の外周開口部22bとの位置が一致するよう構成することで、外周開口部22bと芯収納室40aとが連通し、外周開口部22bから芯収納室40aに予備芯81を補充できるようにしてある。
【0035】
また、予備芯収納部材40の前段部40iと前軸21の内段21dとの間には、コイルスプリング60が張架されており、これにより予備芯収納部材40はコイルスプリング60の弾発力で後方に弾発される。尚、
図2の状態におけるコイルスプリング60の弾発力は、芯収納室40aに予備芯81が限界まで入れた状態における荷重と同等または大きくなるよう構成してもよく、この場合、コイルスプリング60の弾発力により、予備芯収納部材40はノック体50(操作部)を前方へ押圧しない限り前進しないよう構成され、これにより、予備芯収納部40及び予備芯81の重量でチャック31が前方へ押圧されることがないことから、チャック31による筆記芯80の挟持力を維持することができる。
【0036】
蓋部材70は、後軸22の外周開口部22bを閉口するように装着してあり、軸方向に沿って延びレール状に形成された係止部70aを有している。係止部70aが、外周開口部22bの内周部に形成された被係止部22cと係止することで蓋部材70は後軸22に固定され、外周開口部22bが閉口される。また、本実施形態では蓋部材70の取り付け、取り外しが容易にできて繰り返し着脱しても係止力が低下しないよう、蓋部材70を弾性体で形成してある。具体的に蓋部材70を構成する弾性体の材料としては、シリコンゴム、ニトリルゴム、合成ゴム、ウレタンゴム、熱可塑性エラストマー等が好適に使用できる。また、これに限らず、蓋部材70は比較的硬い樹脂や金属で構成されていてもよい。さらに、図示はしないが蓋部材70の外側には軸筒20に対して外方へ突出すようにクリップ部を設けてもよく、この場合、クリップ部を指で把持することで蓋部材70を軸筒20に対して着脱しやすくなる効果を奏する。さらにまた、軸筒20の外周部にヒンジ部を設けて蓋部材を回転させることで外周開口部22bを開閉できるように構成してもよい。
【0037】
ノック体50は、後軸22に対して前後に摺動可能に挿入され、後部が後軸22の後端開口部から後方へ突出するように挿着されている。また、ノック体50の前端外周部には、外方へ突出する鍔状部50aが形成されており、鍔状部50aが後軸22の後部内段に当接することで、ノック体50が後軸22から脱落することを防止してある。そして、ノック体50の前端は予備芯収納部材40の後端に当接可能に構成してあり、これにより、ノック体50を前方へ押圧することで予備芯収納部材40が前方へ移動するように構成される。
【0038】
次に、
図5を用いてノック体50を前進させることで、筆記芯80が先口23の前端開口部23bから繰り出される状態を説明する。
図2の状態から、ノック体50を前方へ押圧すると、ノック体50の前端に当接している予備芯収納部材40が同時に前方へ押圧され、コイルスプリング60の弾発力に抗して予備芯収納部材40が前進する。そして、予備芯収納部材40が前進することで前段部40iと筒体32の後端が当接すると、筒体32と該筒体32に固定されているチャック31がコイルスプリング35の弾発力に抗して筆記芯80を挟持したまま軸筒20及び連結具34に対して前進し、先口23の前端開口部から筆記芯80が繰り出される。この際、チャック31の前進に伴いチャック31の頭部31aに外嵌されている締具33も前進するが、締具33の前端が先口23の内段に当接することで、締具33がチャック31の頭部31aから離脱し、頭部31aが拡開して筆記芯80の挟持状態が解除され、筆記芯80の前進が停止する。そして、ノック体50の前方への押圧を解除すると、チャック31はコイルスプリング35の弾発力で後退し、再び締具33が頭部31aに外嵌されて筆記芯80がチャック31により挟持される。また、予備芯収納部材40とノック体50はコイルスプリング60の弾発力でノック体50の鍔状部50aが後軸22の後端開口部の内段に当接するまで後退し、
図2の状態に戻る。
【0039】
次に、
図6を用いて、予備芯収納部材40の芯収納室40aに予備芯81を補充する状態を説明する。
図2の状態からシャープペンシル10を用いて筆記を行い芯収納室40aに収納されている予備芯81が無くなったり減ったりした際には、予備芯を補充するため蓋部材70を指で把持して引っ張ることで、
図6に示すように後軸22(軸筒20)の外周開口部22bから蓋部材70を取り外すことができる。この際、本実施形態では蓋部材70を弾性体で形成しているため、蓋部材70を引っ張ることで係止部70aと被係止部22cとの係止状態が端から徐々に解除され簡単に取り外すことができる。この
図6の状態では、外周開口部22bが開口され、外周開口部22bと芯収納室40aの他端部40dは連通しているため、外周開口部22bから予備芯81を芯収納室40aの他端部40dに補充することができる。芯収納室40aの他端部40dに入った予備芯81を一端部40c(中心部)側に移動させる手段としては、外周開口部22bに取り外した蓋部材70を再装着して閉口したのち、シャープペンシル10を周方向に回転させることや、シャープペンシル10を前端開口部23bが重力方向下方に向くように立てて把持し、少し上下に弱い振動を与えることで、
図7に示すように、予備芯81を傾斜部40eによって矢印方向の一端部40c側へ移動させ、連通孔40hからチャック31へ予備芯81を補充できる。尚、芯収納室40aは
図3に示すように横断面方向から視て渦巻状に形成されていることから、他端部40dから一端部40cに向かって曲面を有する壁面が多く形成され、その曲率半径は一端部に向けて徐々に小さくなるよう形成される。このため、芯収納室40aに入っている予備芯81は、シャープペンシル10を立てて把持しても芯収納室40aの曲面を有した壁面に支えられて倒れることなく軸方向に沿った向きの状態を維持しながら一端部40cへ向かって移動可能に構成される。
【0040】
本実施形態では、芯収納室40aが横断面方向から視た際に、一端部40c(中心部)から他端部40d(外周部)に向けて渦巻状に形成されている。このため、芯収納室40aは細長い帯状の形状となることから、予備芯81が芯収納室40aに整列して並ぶことで予備芯81同士の干渉を最小限に押さえつつ多数の予備芯81を芯収納室40a内に収納することが可能となる。具体的に、本実施形態では、チャック31に挟持された筆記芯80と芯収納室40aに収容された複数の予備芯81を合わせると60本を超える本数の芯を収納することができた。そして、芯収納室40aに収納された予備芯81は底部40bに傾斜部40eを有しているため一端部40c側へ集まるように構成され、連通孔40hから予備芯81をチャック31内に補充することができる。ここで、芯収納室40aが横断面方向から視て直線状に延びた形で形成されていた場合、一端部40c側の予備芯81に他端部40d側の予備芯81全ての重量が掛かり、その重量による圧力で一端部40cにある予備芯81が連通孔40hに入ることが阻害される虞が生じる。しかしながら、本実施形態では、芯収納室40aが多くの曲面を有する渦巻状であるため、他端部40d側の予備芯81の重さは曲面を有した芯収納室40aの壁部に当接することで分散され、一端部40cにある予備芯81に掛かる力を軽減する効果を奏する。特に一端部40c付近では芯収納室40aの壁面の曲率半径が小さくなるため、前記した効果が顕著となる。このため、他端部40d側の予備芯81の重量により一端部40cにある予備芯81に掛かる圧力は軽減され、予備芯81は自由に連通孔40hを介してチャック31に補充することができる。このため、予備芯収納部材40の芯収容室40aに多くの予備芯81を収納してもスムーズに予備芯81がチャック31に供給され、快適に使用できるものとなった。
【0041】
尚、本実施形態では、ノック体50が後軸22に対して前後動自在且つ着脱不能に装着されているが、ノック体50全体またはノック体50の一部を着脱可能に構成し、予備芯81を後端側からも後軸22(軸筒20)内に補充可能に構成してもよく(図示せず)、この場合、芯収納室40aに予備芯を補充する際に、芯収納室40aの一端部40cに後方側から直接予備芯を補充できる。
【0042】
(第2実施形態)
図8~
図20を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、第1実施形態と同様に構成され得る部分について、第1実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0043】
図8は、本実施形態における棒状体操出具(シャープペンシル)10の一例の外観図であり、
図9は、棒状体操出具10を、予備棒状体(予備芯)81の収納室40aへの補充が可能な状態で示す図である。
図10は、
図9のC-C線に対応する、棒状体操出具10の縦断面図である。
図11は、
図10のD-D線に対応する横断面図であり、
図12は、
図10のE-E線に対応する横断面図である。
図13は、棒状体操出具10の一部の分解斜視図である。
図14は、前方連結部材44を示す斜視図であり、
図15は、前軸21を示す斜視図であり、
図16は、収納部材40の本体部を示す斜視図であり、
図17は、外筒26を示す斜視図である。
図18は、後方連結部材46を示す斜視図であり、
図19は、後方連結部材46を異なる角度から見た斜視図である。
図20は、棒状体操出具10の収納室40aを展開した展開図である。
【0044】
本実施形態の軸筒20は、前軸21、後軸22、先口23、第1連結部材24、第2連結部材25、外筒26及びOリング27を含んでいる。
【0045】
本実施形態では、前軸21は、その内部に予備芯収納部材(収納部、予備芯収納部)40を収容する部材である。前軸21の壁部には、第1外周開口部21eが設けられている(
図15参照)。第1外周開口部21eは、前軸21の壁部を径方向に貫通する貫通孔である。第1外周開口部21eは、外方から視ると矩形状に形成されると共に、軸方向に沿って長く延びて形成される。第1外周開口部21eの軸方向に沿った長さは予備芯81の長さより長く形成してあり、予備芯81を前軸21の軸方向に沿って平行に配置した状態でも第1外周開口部21eから前軸21の内部に挿入可能に構成される。
【0046】
前軸21の後端部には、第2連結部材25の前端部に設けられた係合部25aが係合する被係合部21fが設けられている。前軸21の内面には、レール部21gが設けられている。レール部21gは、前軸21の本体部から内方に突出するとともに軸方向に沿って延びている。レール部21gは、予備芯収納部材40を、前軸21に対して前後動可能且つ回転不能に保持する。
【0047】
先口23は、第1連結部材24を介して前軸21に対して取り付けられている。本実施形態では、先口23の後端部の内面に設けられた雌螺子部が、第1連結部材24の前端部の外面に設けられた雄螺子部に螺合している。また、前軸21の前端部の内面に設けられた雌螺子部が、第1連結部材24の後端部の外面に設けられた雄螺子部に螺合している。これにより、先口23と前軸21とが連結されている。なお、
図10に示された例では、連結具34は、第1連結部材24の前端と先口23の内段により挟持され軸筒20に固定される。
【0048】
後軸22は、第2連結部材25を介して前軸21に対して取り付けられている。本実施形態では、後軸22の前端部の外面に設けられた雄螺子部が、第2連結部材25の後端部の内面に設けられた雌螺子部に螺合している。また、第2連結部材25の前端部に設けられた係合部25aが、前軸21の後端部に設けられた被係合部21fに係合している。これにより、前軸21と後軸22とが連結されている。なお、本実施形態では、係合部25aは、径方向の外方へ向けて突出した爪部であり、被係合部21fは、前軸21を径方向に貫通する貫通孔である。なお、
図13及び
図15では、係合部25a及び被係合部21fの図示を省略している。
【0049】
外筒26は、軸方向に延びる中心軸線を有した筒状の部材であり、前軸21に対して径方向の外側に配置されている。外筒26の中心軸線と前軸21の中心軸線とは一致している。外筒26は、軸筒20(前軸21)に対して中心軸線周りに回転可能である。
【0050】
外筒26の壁部には、第2外周開口部26aが設けられている(
図17参照)。第2外周開口部26aは、外筒26の壁部を径方向に貫通する貫通孔である。第2外周開口部26aは、外方から視ると矩形状に形成されると共に、軸方向に沿って長く延びて形成される。第2外周開口部26aの軸方向に沿った長さは予備芯81の長さより長く形成してある。外方から視た第2外周開口部26aの形状及び寸法は、前軸21の第1外周開口部21eの形状及び寸法と同一であってもよい。本実施形態では、外筒26を前軸21に対して中心軸線周りに回転させ、外方から視て第1外周開口部21eと第2外周開口部26aとが一致したときに、第1外周開口部21e及び第2外周開口部26aを介して予備芯81を前軸21の内部、とりわけ芯収容室40aの内部、に挿入することができる。外方から視て第1外周開口部21eと第2外周開口部26aとが一致していない状態では、予備芯81が芯収容室40aの内部から外部へ飛び出てしまうことを防止することができる。
【0051】
Oリング27は、前軸21と外筒26との間に配置されている。Oリング27は、ゴム等の弾性部材で形成されており、前軸21と外筒26との間に適切な摩擦力を生じさせる機能を有する。これにより、使用者が外筒26に対して周方向の力を加えていないときに、意図せず外筒26が前軸21に対して回転することを抑制することができる。また、Oリング27は、外筒26が軸方向に移動することを抑制する機能も有する。これにより、外筒26が軸方向においてがたつくことを抑制することができる。
【0052】
予備芯収納部材(収納部、予備芯収納部)40は、本体部42(
図16参照)と、前方連結部材44(
図14参照)と、後方連結部材46(
図18参照)とを含んでいる。本実施形態の芯収納室(収納室)40aは、本体部42、前方連結部材44及び後方連結部材46で囲まれた空間である。前方連結部材44は、芯収納室40aの前端面を画定し、後方連結部材46は、芯収納室40aの後端面を画定し、本体部42は、芯収納室40aの側面を画定する。
【0053】
本実施形態の芯収納室40aは、シャープペンシル10の前方部分に位置している。具体的には、芯収納室40aの軸方向における中心は、シャープペンシル10の軸方向における中心よりも前方に位置している。芯収納室40aがこのように配置されていることにより、シャープペンシル10の使用時に使用者が把持する部分における軸筒20の内部に、比較的大きな重量を有する予備芯収納部材40及び芯収納室40a内に収納された予備芯81が配置される。この場合、シャープペンシル10の重心が使用者が把持する部分に近づき、使用者にとって筆記がしやすい重量バランスを実現することができる。
【0054】
図11に示されているように、本実施形態の芯収納室40aは、中心軸線と直交する断面(横断面)において、他端部(外周部)40dの近傍を除いて、直線状に延びる部分を含まない。ここでの他端部40dの近傍とは、芯収納室40aにおける、第1外周開口部21eと対面する部分を指す。換言すると、芯収納室40aは、横断面において、他端部(外周部)40dの近傍を除いて、全て曲線で構成されている。とりわけ、芯収納室40aは、横断面において、他端部(外周部)40dの近傍を除いて、全て径方向の外側へ向けて凸となる曲線で構成されている。芯収納室40aが、横断面において、他端部(外周部)40dの近傍を除いた部分に直線状に延びる部分を含む場合、当該直線部分において予備芯81が軸方向に対して傾斜する芯倒れが生じ得る。この場合、芯倒れが生じた箇所において予備芯81が詰まり、予備芯81が一端部40cへ供給されなくなる。本実施形態では、芯収納室40aは、横断面において、他端部40dの近傍を除いて、直線状に延びる部分を含まないので、芯収納室40a内で芯倒れが生じることが抑制される。
【0055】
前方連結部材44は、本体部42の前端を封止するとともに、予備芯収納部材40における筒体32との連結部となる部材である。前方連結部材44は、前部44aと、鍔部44bと、連通孔44cと、後方突出部44dとを含んでいる。前部44aは、その外径が鍔部44bと比べて小さく形成されており、前部44aは筒体32の内周部に前後に摺動可能に挿入されている。鍔部44bは、前部44aの外径よりも大きい外径を有しており、本体部42の前端に当接している。連通孔44cは、シャープペンシル10の中心軸線に沿って前部44a及び鍔部44bを軸方向に貫通している。連通孔44cは予備芯81が1本は通るが2本は通らない内径を有しており、これにより、連通孔44cを介して予備芯81が芯収納室40aから1本ずつチャック31に供給される。後方突出部44dは、鍔部44bから後方に向けて突出している。後方突出部44dは、本体部42における芯収容室40aを画定する溝部内に挿入される。これにより、後方突出部44dの後端面は、芯収納室40aの前端面すなわち底部40bを画定する。
【0056】
後方突出部44dの後端面には、傾斜部40eが形成されている。
図14及び
図20に示されているように、本実施形態では、芯収納室40aの底部40bにおける連通孔44cの近傍の一部分にのみ傾斜部40eが形成されている。これにより、前端開口部23bが下方を向くようにしてシャープペンシル10が保持された際に、連通孔44cの近傍において、予備芯81が傾斜部40eにより連通孔44cへ向かって誘導される。なお、これに限られず、第1実施形態のように、底部40bの全体が傾斜部40eとなっていてもよい。
【0057】
後方連結部材46は、本体部42の後端を封止するとともに、予備芯収納部材40におけるノック体(操作部)50との連結部となる部材である。後方連結部材46は、本体部46aと、鍔部46bと、連通孔46cと、保持部46dとを含んでいる。本体部46aは、軸方向に沿って延びる棒状の部材である。鍔部46bは、本体部46aの外径よりも大きい外径を有しており、本体部42の後端に当接している。連通孔46cは、シャープペンシル10の中心軸線に沿って本体部46a及び鍔部46bを軸方向に貫通している。連通孔46cは、芯収容室40aの一端部40cに連通しており、この連通孔46cを介して、後方から芯収容室40aの一端部40cへ予備芯81を挿入することができる。連通孔46cは、予備芯81が1本は通るが2本は通らない内径を有してもよい。この場合、連通孔46cを介して予備芯81が後方から芯収納室40aへ挿入される。
【0058】
シャープペンシル10は、消しゴム等の消去部材52を有している。保持部46dは、消去部材52を保持する機能を有する。消去部材52は、連通孔46cの後端に当接している。保持部46dには、消去部材52を覆うようにしてキャップが取り付けられている。本実施形態では、このキャップがノック体(操作部)50となっている。
【0059】
予備芯81が第1外周開口部21e及び第2外周開口部26aを介して芯収容室40a内に収納された際には、使用者が、シャープペンシル10を中心軸線周りに回転させることにより、予備芯81が他端部40dから一端部40cへ向けて移動する。とりわけ、本実施形態では、使用者が、シャープペンシル10を後方から見て中心軸線周りに時計回りに回転させることにより、予備芯81が他端部40dから一端部40cへ向けて移動する。この場合、予備芯81が他端部40dから一端部40cへ移動するまでにある程度の手間及び時間を要することがある。その一方、予備芯81をシャープペンシル10の外部からすぐにチャック31へ供給したい場合もある。本実施形態では、保持部46dからキャップ及び消去部材52を取り外すことにより、連通孔46cの後端が露出する。この状態では、予備芯81を、連通孔46cを介して芯収納室40aの一端部40cへ挿入することができる。したがって、予備芯81を芯収納室40aの他端部40dを介することなく、一端部40cへ素早く且つ簡単に挿入することができる。
【0060】
シャープペンシル10では、筆記芯80による筆記の終了後等に、ノック体50を前方へ押圧しながら前端開口部23bを紙面等に押し付け、これにより前端開口部23bから前方へ突出した筆記芯80を後退させて、筆記芯80を収納することがある。摩耗や折損により筆記芯80の長さが短くなっている場合、筆記芯80の後方に予備芯81が位置し、筆記芯80と予備芯81とが軸方向に並ぶことがある。この場合、筆記芯80を後退させる際に、予備芯81も後退し得る。このとき、予備芯81の後端が中心軸線からずれて芯収納室40aの後端面(鍔部46bの前面)に当接することがある。この場合、筆記芯80及び予備芯81は、それ以上後退することができず、筆記芯80を収納することができなくなる。
【0061】
このような問題が生じることを抑制するために、本実施形態では、鍔部46bの前面に、傾斜面46eが設けられている(
図19及び
図20参照)。傾斜面46eは、後方に向かうにつれて連通孔46cに近づくように、軸方向及び径方向に対して傾斜して延びている。傾斜面46eの後端(内方端)は、連通孔46cに接続している。本実施形態では、筆記芯80とともに筆記芯80の後方に位置した予備芯81が後退したときに、予備芯81の後端が中心軸線からずれても、予備芯81の後端は傾斜面46eに誘導されて連通孔46cへ向かう。予備芯81の後端が連通孔46c内に位置すると、予備芯81は、連通孔46c内を後方へ移動することができる。したがって、筆記芯80及び予備芯81がそれ以上後退することができなくなることが抑制される。すなわち、このような場合であっても、筆記芯80を適切に収納することができる。
【0062】
予備芯収納部材40の外周面には、軸方向に直線状に延びる溝部40kが設けられている。溝部40k内には、前軸21のレール部21gが配置される。溝部40kとレール部21gとは、互いに前後動することは可能であるが、周方向の移動は規制されている。これにより、予備芯収納部材40は、前軸21に対して前後動可能且つ回転不能に配置されている。なお、溝部40kは、本体部42及び後方連結部材46の鍔部46bにわたって形成されている。
【0063】
次に、本実施形態の棒状体操出具(シャープペンシル)10への棒状体(予備芯)81の補充方法について説明する。
【0064】
図8に示された状態において、外筒26を前軸21に対して中心軸線周りに(周方向に)回転させ、外方から視て第1外周開口部21eと第2外周開口部26aとを一致させる。これにより、
図9に示される状態になる。
図9に示された状態において、第1外周開口部21e及び第2外周開口部26aを介して、芯収納室40a内に予備芯81を挿入する。とりわけ、芯収納室40aの他端部(外周部)40d内に予備芯81を挿入する。予備芯81は、その長手方向が軸方向と平行に延びる姿勢で他端部40d内に配置される。このとき、複数の予備芯81が収納室40a内に挿入されてもよい。その後、外筒26を前軸21に対して中心軸線周りに回転させ、外方から視て第2外周開口部26aを第1外周開口部21eに対してずらす。例えば、第2外周開口部26aを介して第1外周開口部21eが視認されないように、外筒26を前軸21に対して回転させる。
【0065】
シャープペンシル10を中心軸線周りに回転させると、他端部40d内に挿入された予備芯81が一端部40c(中央部)へ移動する。本実施形態では、シャープペンシル10を後方から見て時計回りに回転させることにより、予備芯81が他端部40dから一端部40cへ移動する。前端開口部23bが下方を向くようにしてシャープペンシル10を保持すると、一端部40cに位置する予備芯81の前端は、収納室40aの傾斜部40eに沿って前方へ向かい、前方連結部材44の連通孔44cを通って、チャック31へ移動する。
【0066】
本実施形態では、他端部40dを介することなく、予備芯81を一端部40cへ挿入することも可能である。まず、後方連結部材46の保持部46dからキャップ及び消去部材52を取り外す。これにより、後方連結部材46の連通孔46cの後端が露出する。この状態で、予備芯81を、連通孔46cを介して一端部40cへ挿入することができる。この場合、予備芯81を一端部40cへ素早く且つ簡単に挿入することができる。一端部40cへ挿入された予備芯81の前端は、収納室40aの傾斜部40eに沿って前方へ向かい、前方連結部材44の連通孔44cを通って、チャック31へ移動する。
【0067】
次に、本実施形態の棒状体操出具(シャープペンシル)10における、棒状体(予備芯)81の操出方法について説明する。
【0068】
使用者がノック体(操作部)50を前方へ押圧すると、予備芯収納部材40の後方連結部材46、本体部42及び前方連結部材44、が前方へ移動する。前方連結部材44の前部44aの前端がチャック31の後端に当接すると、チャック31が前方連結部材44に押圧されて前方へ移動する。なお、これに限られず、前方連結部材44の鍔部44bが筒体32の後端に当接して、筒体32を介してチャック31が前方へ押圧されてもよい。
【0069】
チャック31が締具33とともに前方へ移動すると、チャック31とともに予備芯81が前方へ移動する。チャック31がさらに前方へ移動すると、締具33が先口23の内段に当接してチャック31の前方部分が締具33に対して前方へ移動する。これにより、チャック31の前方部分が外側に開き、予備芯81の前端がチャック31の前方部分を通ってスライダー232へ移動する。
【0070】
使用者によるノック体50の押圧が解除されると、コイルスプリング35の弾発力により、チャック31、筒体32、予備芯収納部材40及びノック体50が、後方へ移動する。これにより、チャック31の前方部分が締具33の内側へ移動し、締具33に当接して予備芯81を把持する。
【0071】
これを繰り返すことにより、予備芯81が前方へ繰り出され、予備芯81の前端が先端部材232aを通って先端部材232aの前端から前方へ突出する。これにより、予備芯81は、筆記可能な筆記芯80となる。
【0072】
筆記芯80による筆記の終了後等に、ノック体50を前方へ押圧しながら前端開口部23bを紙面等に押し付け、これにより前端開口部23bから前方へ突出した筆記芯80を後退させて、筆記芯80を収納してもよい。摩耗や折損により筆記芯80の長さが短くなっている場合、筆記芯80の後方に予備芯81が位置し、筆記芯80と予備芯81とが軸方向に並ぶことがある。本実施形態では、筆記芯80とともに筆記芯80の後方に位置した予備芯81が後退したときに、予備芯81の後端が中心軸線からずれても、予備芯81の後端は傾斜面46eに誘導されて連通孔46cへ向かう。予備芯81の後端が連通孔46c内に位置すると、予備芯81は、連通孔46c内を後方へ移動することができる。
【0073】
本実施形態の棒状体操出具(シャープペンシル)10では、収納室(芯収納室)40aは、棒状体操出具(シャープペンシル)10の中心軸線と重なる一端部40cと、中心軸線から離間した他端部40dとを含み、後方から、他端部40dを介することなく一端部40cへ棒状体(筆記芯、予備芯)81を供給可能な連通孔46cを有する。
【0074】
このような棒状体操出具10によれば、棒状体81を、連通孔46cを介して収納室40aの一端部40cへ挿入することができる。したがって、棒状体81を収納室40aの他端部40dを介することなく、一端部40cへ素早く且つ簡単に挿入することができる。
【0075】
(第3実施形態)
図21~
図28を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に構成され得る部分について、第1実施形態及び第2実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0076】
図21は、本実施形態における棒状体操出具(シャープペンシル)10の一例の外観図である。
図22は、F-F線に対応する、棒状体操出具10の縦断面図である。
図23は、
図22のG-G線に対応する横断面図であり、
図24は、
図22のH-H線に対応する横断面図であり、
図25は、
図22のI-I線に対応する横断面図である。
図26は、棒状体操出具10の一部の分解斜視図である。
図27は、前軸21を示す斜視図である。
図28は、棒状体操出具10を、後軸22を取り外した状態で示す図である。
【0077】
本実施形態の軸筒20は、前軸21、後軸22、先口23及び第1連結部材24を含んでいる。
【0078】
前軸21は、軸方向に延びる中心軸線を有した略筒状の部材である。前軸21の後端部には、内方に突出する内鍔部21hが設けられている。この内鍔部21hにより、後方連結部材46の鍔部46bの後方への移動が規制されている。これにより、鍔部46bが内鍔部21hに当接すると、後方連結部材46は、前軸21に対してそれ以上後方に移動しない。
【0079】
内鍔部21hには、後方開口(開口)21iが設けられている。後方開口21iは、内鍔部21hを軸方向に貫通する貫通孔である。また、後方連結部材46の鍔部46bには、鍔部開口46fが設けられている。鍔部開口46fは、当該鍔部46bの外縁から径方向の内方に向かって切り欠かれた切欠きである。なお、これに限られず、後方開口21iは、内鍔部21hに設けられた切欠きであってもよく、鍔部開口46fは、鍔部46bを軸方向に貫通する貫通孔であってもよい。横断面において、後方開口21i及び鍔部開口46fは、少なくとも1本の予備芯81が通過可能な形状及び寸法を有している。後方開口21i及び鍔部開口46fの少なくとも一部は、後方から視て芯収容室40aの他端部(外周部)40dと重なっている。
【0080】
後軸22は、後方連結部材46に対して着脱可能に取り付けられている。例えば、後方連結部材46が後軸22の内側に圧入されることにより、後軸22が後方連結部材46に対して取り付けられる。なお、これに限られず、後軸22は、螺合、凹凸嵌合等の他の手段により取り付けられてもよい。
【0081】
なお、本実施形態においても、後方連結部材46の鍔部46bの前面に、第2実施形態と同様の傾斜面46eが設けられている(
図19及び
図20参照)。
【0082】
本実施形態では、後軸22を後方連結部材46から取り外すことにより、前軸21の後方開口21iが露出する(
図28参照)。この状態において、後方開口21iを介して後方から芯収容室40aの他端部40dへ予備芯81を挿入することができる。
【0083】
なお、
図22に示された例では、後方連結部材46の本体部46aの中心軸線は、シャープペンシル10の中心軸線からずれている。とりわけ、軸方向に沿って視たときに、本体部46aの中心軸線は、後方開口21iと反対側に、シャープペンシル10の中心軸線からずれている。これにともなって、ノック体50及び消去部材52の中心軸線も、シャープペンシル10の中心軸線からずれている。これにより、後方開口21iを介して予備芯81を芯収容室40aへ挿入する際に、本体部46aが干渉することを抑制することができる。したがって、後方開口21iを介して予備芯81を芯収容室40aへ容易に挿入することができる。
【0084】
次に、本実施形態の棒状体操出具(シャープペンシル)10への棒状体(予備芯)81の補充方法について説明する。
【0085】
図21に示された状態において、後軸22を後方連結部材46から取り外す。本実施形態では、後軸22を後方連結部材46に対して後方へ引っ張ることにより、後軸22を後方連結部材46から取り外す(
図28参照)。次に、後方開口21iを介して後方から芯収容室40aの他端部40dへ予備芯81を挿入する。その後、シャープペンシル10を中心軸線周りに回転させて、他端部40d内に挿入された予備芯81を一端部40cへ移動させる。その後の操作は第2実施形態で説明した操作と同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、本実施形態においても、後方連結部材46は、連通孔46cを有している。したがって、第2実施形態で説明した例と同様に、予備芯81を、連通孔46cを介して一端部40cへ挿入することができる。
【0086】
本実施形態の棒状体操出具(シャープペンシル)10では、収納室(芯収納室)40aは、棒状体操出具(シャープペンシル)10の中心軸線と重なる一端部40cと、中心軸線から離間した他端部40dとを含み、後方から、他端部40dへ棒状体(筆記芯、予備芯)81を供給可能な開口21iを有する。
【0087】
このような棒状体操出具10によれば、部品点数を削減しながらも、予備芯81を容易に芯収容室40a内へ補充することが可能になる。