(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】ノルエピネフリン輸送体を標的とする化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 279/08 20060101AFI20231117BHJP
C07C 277/08 20060101ALI20231117BHJP
C07B 59/00 20060101ALI20231117BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20231117BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C07C279/08 CSP
C07C277/08
C07B59/00
A61K31/155
A61K51/04
A61K51/04 200
(21)【出願番号】P 2021541087
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2020050406
(87)【国際公開番号】W WO2020148154
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-09-10
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523100043
【氏名又は名称】ペキン ラド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン シンユー
(72)【発明者】
【氏名】デッカー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆弘
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531434(JP,A)
【文献】特表2010-514786(JP,A)
【文献】特開2014-237679(JP,A)
【文献】特表2017-502971(JP,A)
【文献】特表2013-500958(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016811(WO,A1)
【文献】特開2015-205854(JP,A)
【文献】Nuclear Medicine and Biology,2015年,Vol.42(8),p.673-684
【文献】Journal of Nuclear Medicine,2015年,Vol.56(9),p.1429-1433
【文献】Tetrahedron Letters,2010年,Vol.51(49),p.6410-6414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】
(式中、R
1はF又はI残基である)による化合物。
【請求項2】
生きているヒト又は動物の身体に対して行われる診断法に使用される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ヒト又は動物の身体におけるノルエピネフリン輸送体(NET)の生成、分解、分布又は機能の障害を診断するための生きているヒト又は動物の身体に対して行われる診断法に使用される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記診断法が前記ヒト又は動物の身体の陽電子放射断層撮影(PET)を含み、該PETを行う前に該身体に前記化合物を投与する、請求項3に記載の使用のための請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記NETの生成、分解、分布又は機能の障害が心血管疾患、血圧調節異常、腎障害、神経内分泌腫瘍性疾患又はパーキンソン病と関連する、請求項3に記載の使用のための請求項3又は4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物を合成する方法であって、
a)以下の化合物14:
【化2】
のメチル基を該化合物から除去し、以下の化合物15:
【化3】
を得る工程(式中、R1はハロゲン残基である)と、
b)1-クロロ-3-ヨードプロパンを用いて化合物15のクロロアルキル化を行い、以下の化合物25:
【化4】
を得る工程と、
c)(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムハロゲン化物及びカリウムtert-ブトキシド又は水素化ナトリウムを用いて化合物25とのウィッティヒ反応を行い、以下の化合物26:
【化5】
(ただし、上記式において、工程f)が本工程の前に行われている場合は、Cl基はトシル化されている)を得る工程と、
d)酢酸水銀の添加により化合物26を2工程のワンポット反応において還元し、中間体を形成させ、続いてアルカリ金属水素化ホウ素を添加して、以下の化合物28:
【化6】
(ただし、上記式において、工程f)が本工程の前に行われている場合は、Cl基はトシル化されている)を得る工程と、
e)トリフェニルホスフィン、アゾジカルボキシレート及び以下の化合物24:
【化7】
の存在下で化合物28との光延反応を行い、以下の化合物29:
【化8】
(ただし、上記式において、工程f)が本工程の前に行われている場合は、Cl基はトシル化されている)を得る工程と、
f)工程b)~e)のいずれかによって得られる化合物のアルキル鎖の末端の塩素原子を、フィンケルシュタイン反応でヨウ素に置き換え、続いてp-トルエンスルホン酸銀を用いて暗所でトシル化を行い、本工程までに工程a)~e)のいずれかを行っていない場合に、本工程までに行わなかった工程a)~e)の全てを行い、以下の化合物30:
【化9】
を得る工程と、
g)
18Fのアルカリ金属塩を用いる求核置換によって化合物30を放射性標識し、続いて酸性条件下にて少なくとも70℃の温度で脱保護を行い、以下の化合物:
【化10】
を得る工程と、
を含み、前記ハロゲン残基がF又はI残基である、方法。
【請求項7】
工程c)の前記(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムハロゲン化物が(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程e)の前記アゾジカルボキシレートが、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)又はジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
工程d)の前記アルカリ金属水素化ホウ素が、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムである、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程g)に使用される前記
18Fのアルカリ金属塩がK
18Fである、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程g)の酸性条件下での脱保護を最高でも100℃の温度で行う、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
化合物24の合成が、
h)カルバミン酸ベンジル、N,N’-ジメチル尿素及び水を少なくとも80℃の温度で反応させ、以下の化合物23:
【化11】
を得る工程と、
i)パラジウム活性炭によって触媒される化合物23と水素との反応により、化合物22:
【化12】
を得る工程と、
j)化合物22と以下の化合物13:
【化13】
とをN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で反応させ、化合物24を得る工程(式中、Bocはtert-ブトキシカルボニル保護基である)と、
を含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程j)の化合物13を、1,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-2-メチル-2-チオプソイド尿素と5-クロロベンゾトリアゾールとを塩化水銀(II)(HgCl
2)の存在下で反応させることによって合成する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、診断法に使用される化合物、ノルエピネフリン輸送体(NET)の生成、分解、分布又は機能の障害を診断する診断法に使用される化合物、及び化合物を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルエピネフリン(NE)は神経伝達物質である。NEの機能には、脳及び身体の全般的な可動化(general mobilization)、並びに心拍数及び血圧の上昇が含まれる。NETは、シナプス間隙に放出されたNEのシナプス前ニューロンへの再取込みに関与する。それにより、NETはシナプス間隙におけるNEの濃度を調節する。ヒト又は動物の身体におけるNETの検出のために、NETに結合し、陽電子放射断層撮影(PET)において検出することができる幾つかのトレーサーが開発されている。
【0003】
特許文献1は、18Fを含む造影剤の合成及び使用のための組成物、方法及びシステムを開示している。この造影剤は、心臓、心血管系、心臓血管、脳及び他の器官を含む被験体内の対象の領域の画像化に使用することができる。或る特定の実施形態では、開示の方法は、NETを検出する方法を含む。
【0004】
特許文献2から、心臓神経支配の画像化のための核医学用途(PET画像化)において造影剤として使用される化合物及びこれらの化合物を放射標識形態で得るための合成方法が知られている。
【0005】
非特許文献1は、4-[18F]フルオロプロポキシ-3-ヨードベンジルグアニジンの合成及び評価を開示している。
【0006】
非特許文献2は、心臓の交感神経支配の非侵襲的評定のためのPETトレーサーとして18F-N-[3-ブロモ-4-(3-フルオロ-プロポキシ)-ベンジル]-グアニジンを開示している。
【0007】
非特許文献3から、心臓交感神経支配の放射性トレーサーが知られている。この放射性トレーサーは、以下の式を有する4-[
18F]フルオロ-m-ヒドロキシフェネチルグアニジン([
18F]4F-MHPG、[
18F]1)及びその構造異性体3-[
18F]フルオロ-p-ヒドロキシフェネチルグアニジン([
18F]3F-PHPG、[
18F]2)である。
【化1】
【0008】
非特許文献3によると、フッ素-18は、中心生産施設から独立したPET画像化センターへの18F標識放射性医薬品の生産及び流通が実現可能であるように、十分に長い半減期を有する。非特許文献3では、[18F]1及び[18F]2について、急速な小胞への取込み及び貯蔵小胞からのトレーサーのごく僅かな拡散と一致して、非ヒト霊長類心筋における非常に長いニューロン保持時間がPET研究により示されたことが更に述べられている。さらに、[18F]1及び[18F]2の側鎖のグアニジン基は、ニューロン酵素に対する安定性をもたらす。
【0009】
非特許文献4は、PETトレーサーとして18F-N-[3-ブロモ-4-(3-フルオロ-プロポキシ)-ベンジル]-グアニジン(18F-LMI1195)を開示している。このトレーサーは、心臓の交感神経支配の評定のために設計されている。18F-LMI1195について、簡便であり、商業的調製及び用途に適した容易かつ高収率の標識手順が存在することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2013/036869号
【文献】国際公開第2008/083056号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Vaidyanathan G. et al., Nucl Med Biol. 2015 August, 42(8), pages 673 to 684
【文献】Werner, R. A., J Nucl Med. 2015 September, 56(9), pages 1429 to 1433
【文献】Jung, Yong-Woon et al., ACS Chem. Neurosci. 2017, 8, pages 1530 to 1542
【文献】Chen, X. et al., EJNMMI Research (2018) 8:12, pages 1 to 8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、NETに結合する代替トレーサー、診断法に使用されるトレーサー及びトレーサーを合成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1、2、3及び6の特徴によって解決される。実施の形態は、請求項4、5及び7~13の主題である。
【0014】
本発明によれば、以下の式:
【化2】
(式中、R1はF又はI残基、特にF残基である)による化合物が提供される。
【0015】
本発明は、生きているヒト又は動物の身体に対して、すなわちin vivoで行われる診断法に使用される本発明による化合物に更に関する。この診断法は、ヒト又は動物の身体におけるNETの生成、分解、分布又は機能の障害を診断するための診断法であり得る。本発明者らは、本発明による化合物がin vivoで特定の遅い取込み及び肝臓による迅速な排出を示すことを見出した。
【0016】
診断法は、ヒト又は動物の身体の陽電子放射断層撮影(PET)を含み得て、該PETを行う前に該身体に前記化合物を投与する。NETの生成、分解、分布又は機能の障害は、心血管疾患、血圧調節異常、腎障害、神経内分泌腫瘍性疾患又はパーキンソン病と関連し得る。
【0017】
本発明は、本発明による化合物を合成する方法であって、
a)以下の化合物14:
【化3】
のメチル基を該化合物から除去し、以下の化合物15:
【化4】
を得る工程(式中、R1はハロゲン残基である)と、
b)1-クロロ-3-ヨードプロパンを用いて化合物15のクロロアルキル化を行い、以下の化合物25:
【化5】
を得る工程と、
c)(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムハロゲン化物及びカリウムtert-ブトキシド又は水素化ナトリウムを用いて化合物25とのウィッティヒ反応を行い、以下の化合物26:
【化6】
を得る工程と、
d)酢酸水銀の添加により化合物26を2工程のワンポット反応において還元し、中間体を形成させ、続いてアルカリ金属水素化ホウ素、特に水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素カリウムを添加して、以下の化合物28:
【化7】
を得る工程と、
e)トリフェニルホスフィン、アゾジカルボキシレート及び以下の化合物24:
【化8】
の存在下で化合物28との光延反応を行い、以下の化合物29:
【化9】
を得る工程と、
f)工程b)~e)のいずれかによって得られる化合物のアルキル鎖の末端の塩素原子を、フィンケルシュタイン反応でヨウ素に置き換え、続いてp-トルエンスルホン酸銀を用いて暗所でトシル化を行い、本工程までに工程a)~e)のいずれかを行っていない場合に、本工程までに行わなかった工程a)~e)の全てを行い、以下の化合物30:
【化10】
を得る工程と、
g)
18F、特にK
18Fのアルカリ金属塩を用いる求核置換によって化合物30を放射性標識し、続いて酸性条件下にて少なくとも70℃の温度で脱保護を行い、以下の化合物:
【化11】
を得る工程と、
を含むか、又はそれらからなり、ハロゲン残基がF又はI残基、特にF残基である、方法に更に関する。
【0018】
ハロゲン残基がF残基である場合、得られる化合物は、本願において18F-AF78と指定される化合物であり、ハロゲン残基がI残基である場合、得られる化合物は、本願において18F-37と指定される化合物である。これらの化合物の両方について、効率が本発明の実施の形態に示される。
【0019】
化合物14のアルデヒド基及びこのアルデヒド基から直接又は間接的に得られる基を修飾する工程は、化合物14のメトキシ基及びこのメトキシ基から直接又は間接的に得られる基を修飾する工程の全て又は一部の前又は後に部分的又は完全に行うことができる。これは、上記工程a)~f)を所与の順序だけでなく、工程を行うことで化合物30が得られる限りにおいて任意の他の順序でも行うことができることを意味する。異なる順序での実行を
図1及び
図2及び
図4~
図6による反応スキームに示す。工程a)~f)が所与の順序で行われる場合、工程b)~f)は全て、いずれの場合にも、先行工程において番号で識別される先行工程の生成物を用いて行われる。
【0020】
一実施の形態では、e)によって得られる化合物のアルキル鎖の末端の塩素原子は、工程f)においてフィンケルシュタイン反応でヨウ素に置き換えられる。
【0021】
図1に示される本発明による方法の利点は、通常は4工程かかる、フェネチル部分を達成するためにベンズアルデヒド残基をもう1つのメチレン基で伸長する反応が2工程しかかからないことである。これらの2工程は、ベンズアルデヒド25からエノールエーテル26へのウィッティヒ反応、及び推定中間体フェニルアセトアルデヒド27を介したフェニルエタノール28へのワンポット反応である。中間体27は、当初は酸性条件で26から調製される予定であった。しかし、塩酸又はギ酸等の複数の脱メチル化条件を適用した後に、所望の化合物を得ることができなかった。化合物26は、酸の添加後に低温及び無水条件であっても非常に急速に分解し、出発物質である化合物25を再び形成した。最終的に、水銀塩として適用される酢酸水銀(II)を用いたワンポット反応が、おそらくは推定フェニルアセトアルデヒド中間体27を安定させるため、これは単離されず、塩基性溶液中のNaBH
4の添加によって直接還元される。結果として、合成スキームが顕著に短縮され、アルコール28が首尾よく形成される。酢酸水銀の添加の直後にアルカリ金属水素化ホウ素を添加した場合にも化合物28が形成されるが、この場合の化合物28の収率は低い。本発明者らは、酢酸水銀の添加と還元剤であるアルカリ金属水素化ホウ素の添加との間に中間体27が形成する時間が十分にある場合に収率が改善されることを見出した。酢酸水銀の添加と還元剤の添加の間の時間が過度に長い場合、ベンズアルデヒド25に戻る加水分解が起こる恐れがある。
【0022】
酢酸水銀及び還元剤の添加の間の時間は、5分間~25分間、特に6分間~20分間、特に7分間~15分間、特に8分間~15分間、特に9分間~12分間の範囲であり得る。特に、酢酸水銀及び還元剤の添加の間の時間は、10分間又は約10分間である。
【0023】
さらに、ベンズアルデヒド残基をもう1つのメチレン基で伸長する反応は、0℃~5℃、特に0℃~4℃、特に0℃~2℃、特に0℃~1℃の範囲の温度、特に0℃の温度で行う必要がある。
【0024】
化合物24は、完全に保護されたグアニジン部分を化合物28に導入して、化合物29を得るために光延反応に使用される。アルキル鎖の末端の塩素原子は、フィンケルシュタイン反応でヨウ素に置き換えられ、このヨウ素が続いて放射性標識法のために、トシル酸銀と暗所で反応させることによってトシレート残基に置き換えられる。反応スキーム全体を
図1に示す。
【0025】
放射性フッ素化は、
図2に示される求核法によって行われる。トシレート部分は、非常に良好な脱離基であり、これが[
18F]フッ素に置き換えられる。オートラジオグラフィーを用いたTLCにより、脱保護前のフッ素化中間体の形成が示された。両方のBoc基の除去後に形成された中間体は、依然としてグアニジン上にトリアジナノン構造を含有していた。この構造は、予想よりも安定していることが分かった。したがって、この部分の分解に6N HClを使用した。標識の総合成時間は、およそ120分間である。平均全放射化学的収率は、7.9±3.1%(5回の標識の記録から算出された出発放射活性に基づいて減衰補正した)であり、97%を超える放射化学的純度であった。
【0026】
工程c)の(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムハロゲン化物は、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリドであり得る。
【0027】
一実施の形態では、工程e)のアゾジカルボキシレートは、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)又はジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)である。
【0028】
工程g)の酸性条件下での脱保護を最高でも100℃の温度で行うことができる。
【0029】
化合物24の合成を、
h)カルバミン酸ベンジル、N,N’-ジメチル尿素及び水を少なくとも80℃の温度で反応させ、以下の化合物23:
【化12】
を得る工程と、
i)パラジウム活性炭によって触媒される化合物23と水素との反応により、化合物22:
【化13】
を得る工程と、
j)化合物22と以下の化合物13:
【化14】
とをN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で反応させ、化合物24を得る工程(式中、Bocはtert-ブトキシカルボニル保護基である)と、
を含む方法において合成することができる。
【0030】
一実施の形態では、工程j)の化合物13を、1,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-2-メチル-2-チオプソイド尿素と5-クロロベンゾトリアゾールとを塩化水銀(II)(HgCl2)の存在下で反応させることによって合成する。
【0031】
化合物24の合成の反応スキーム全体を
図3に示す。化合物24の合成のために、トリアジナン中間体22を初めに調製する。ベンジルアミンを出発物質として使用する場合、得られる化合物21:
【化15】
(式中、Bnはベンジルである)から化合物22への水素化工程は、非常に高い圧力を必要とし、これは実験室条件で達成することが困難であり、またスケールアップ調製には実現不可能である。本発明の改善された方法では、ベンジルアミンの代わりにカルバミン酸ベンジルをトリアジナン中間体23の調製に使用し、これは保護基の除去においてはるかに温和な条件を受ける。完全に保護されたグアニジン化合物24が化合物22から形成されるが、プソイド尿素:
【化16】
との反応は、トリアジナン中間体の分解のために奏功しなかった。しかしながら、本発明者らは、化合物13をプソイド尿素の代わりに使用した場合に化合物24を得ることができることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】トレーサー2(=
18F-AF78)の前駆体としての化合物30の合成のための反応スキームを示す図である。
【
図2】
18F-AF78の合成のための反応スキームを示す図である。
【
図3】化合物24の合成のための反応スキームを示す図である。
【
図4】化合物117の合成のための反応スキームを示す図である。
【
図5】トレーサー
18F-37の前駆体としての化合物123の合成のための反応スキームを示す図である。
【
図6】化合物
18F-37の合成のための反応スキームを示す図である。
【
図7】漸増濃度の非放射性化合物の存在下でのSK-N-SH細胞における
131I-MIBGの取込みの用量応答曲線を示す図である。
【
図8】NET阻害剤デシプラミン(DMI)を用いた場合及び用いない場合のSK-N-SH細胞における
18F-AF78の取込みを示す図である。
【
図9】漸増濃度の非放射性参照の存在下でのSK-N-SH細胞における
18F-AF78の取込みの用量応答曲線を示す図である。
【
図10】事前のNET遮断を行った場合及び行わない場合の
18F-AF78の投与後のラットの左室短軸切片のオートラジオグラフィーを示す図である。
【
図11】事前のNET遮断を行った場合及び行わない場合の
18F-AF78の投与後の組織分布研究の結果を示す図である。
【
図12】事前のNET遮断を行った場合及び行わない場合の健常なラットにおける
18F-AF78の心臓取込みの静止PET像を示す図である。
【
図13】事前のNET遮断を行った場合及び行わない場合の健常なラットにおける
18F-37の心臓取込みの静止PET像を示す図である。
【
図14】事前のNET遮断を行った場合及び行わない場合の対照サルにおける動態PET像から作成した
18F-AF78の時間-活性曲線を示す図である。
【
図15】ラットにおける動態PET像から作成した
18F-37の時間-活性曲線(左パネル)、並びにトレーサー注射の10分後の心臓対血液(H/B)比、心臓対肝臓(H/L)比及び心臓対筋肉(H/M)比を示すラット(n=4)における生体内分布研究の結果(右パネル)を示す図である。
【
図16】健常なラット、ウサギ、ブタ及びサルにおける
18F-AF78の心臓取込みの静止PET像を示す図である。
【
図17】サルにおける
18F-AF78を用いた生体内分布研究の結果を示す図である。
【
図18】サルの心臓において
18F-AF78を用いて行った動態研究の結果を示す図である。上パネルは、NET遮断剤デシプラミン(DMI)の前処理を行った場合(DMI遮断)及び行わない場合(CONT)の心臓トレーサー取込みを示す。中央パネルは、対照(CONT)と比較したDMI追跡(トレーサー投与後のDMI注射)によるトレーサー取込みを示す。下パネルは、対照(CONT)と比較したチラミン追跡(トレーサー投与後に注射したTYR追跡、チラミン、カテコールアミン放出剤)によるトレーサー取込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による化合物の合成
図1による合成の条件は、以下の通りであった:
(a)1-クロロ-3-ヨードプロパン、K
2CO
3、アセトン、60℃、14時間、87%;(b)(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、カリウムtert-ブトキシド(KOtBu)、THF、0℃→室温、24時間、50%;(c)Hg(OAc)
2、THF、H
2O、0℃、15分;(d)NaBH
4、K
2CO
3、H
2O、0℃、30分、68%;(e)化合物24、トリフェニルホスフィン(PPh
3)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、THF、0℃→室温、16時間、84%;(f)NaI、アセトン、70℃、14時間、99%;(g)p-トルエンスルホン酸銀、CH
3CN、0℃→室温、暗所、72時間、98%。
【0034】
図3による合成の条件は、以下の通りであった:
(a)H
2O、100℃、14時間、77%;(b)CH
3OH、H
2O、100℃、14時間、35%;(c)H
2、Pd/C、室温、14時間、88%;(d)化合物13、DIPEA、CH
3CN、50℃、14時間、58%;(e)化合物23、HgCl
2、DMF、N
2、50℃、14時間。
【0035】
図1~
図3の化合物の合成の詳細:
溶媒を公開された方法に従って乾燥させ、使用前に新たに蒸留した。他の全ての試薬は、市販の化合物であり、特段の記載がない限り更に精製することなく使用した。全ての反応を窒素雰囲気下で行った。
1H及び
13C NMRスペクトルデータは、BrukerのAvance II 400 MHzによって得た。
1H及び
13C NMR化学シフト(δ)は、内部標準TMSに対するパーツパーミリオン(ppm)単位で報告し、結合定数(J)はHz単位である。
【0036】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、254nm蛍光指示薬を用いてシリカゲル60で行った。UV光又はヨウ素蒸気を検出に使用した。純度は、LC20AB液体クロマトグラフ、SPD-20A UV/Vis検出器及びDGU-20A3R脱気ユニットを備える、株式会社島津製作所(Shimadzu Products)によるLCMSシステムで行われるLCMSによって評価した。固定相は、Synergi 4μm fusion-RP(150×4.6mm)カラム(Phenomenex、ドイツ、アシャッフェンブルク)であった。質量スペクトルは、株式会社島津製作所のLCMS-2020(95%以上の確認純度)によって得た。カラムクロマトグラフィーについては、Merckによるシリカゲル60、230~400メッシュを使用した。分取薄層クロマトグラフィーについては、Merckによるシリカゲル60 PF254を使用した。
【0037】
tert-ブチル(E)-(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(5-クロロ-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)メチル)カルバメート(13)
1,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-2-メチル-2-チオプソイド尿素及び5-クロロベンゾトリアゾールをジメチルホルムアミド及びトリエチルアミン(0.35g、3.45mol)に溶解した。塩化水銀(II)(HgCl2)を添加し、反応混合物を50℃で24時間撹拌した。混合物を炭酸水素ナトリウム及び水で洗浄し、酢酸エチル(8×50ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。粗生成物をジクロロメタンに溶解し、カラム(5:1→1:1の石油エーテル:酢酸エチル)によって精製し、標的化合物13を白色の固体(0.74g、18.7mmol、収率57%)として得て、これを更に精製することなく次の工程に使用した。ESI-MS (m/z): 396.05 [M+H]+.
【0038】
3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(15)
3-フルオロ-4-メトキシベンズアルデヒド14(5.00g、32.5mmol)を48%HBr(30mL)と混合し、140℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で3時間撹拌した。混合物を水(150mL)で希釈し、ジクロロメタン(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、化合物15を褐色の固体(4.36g、30.2mmol、収率97%)として得た。NMRは文献に従う(Jiang 2014)。ESI-MS (m/z): 141.00 [M+H]+.
【0039】
5-ベンジル-1,3-ジメチル-1,3,5-トリアジナン-2-オン(21)
ベンジルアミン(9.81g、91.7mmol)をホルムアルデヒド(14.7g、183mmol、40%水溶液)に溶解し、アルゴン雰囲気下で100℃に加熱した。N,N’-ジメチル尿素(8.07g、91.7mmol)を添加し、混合物を14時間撹拌した。混合物を水で洗浄し、ジクロロメタン(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:1の石油エーテル:酢酸エチル)によって精製して、表題化合物21を黄色の結晶(15.5g、70.9mmol、収率77%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 2.85 (s, 6 H), 3.90 (s, 2 H), 4.16 (s, 4 H), 7.28 (m, 5 H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 32.47, 55.36, 67.72, 127.70, 128.60, 129.11, 137.49, 156.04 ppm. ESI-MS (m/z): 220.10 [M+H]+.
【0040】
ベンジル3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシレート(23)
カルバミン酸ベンジル(1.00g、6.62mmol)をホルムアルデヒド(1.18g、14.6mmol、40%水溶液)及びメタノールに溶解した。混合物をアルゴン雰囲気下で100℃に加熱し、N,N’-ジメチル尿素(0.58g、6.62mmol)を添加し、混合物を14時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、粗生成物を水で洗浄し、ジクロロメタン(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:1の石油エーテル:酢酸エチル、次いで25:1のジクロロメタン:メタノール)によって精製して、表題化合物23を無色の液体(0.60g、2.29mmol、収率35%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 2.79 (s, 6H), 4.62 (s, 4H), 5.09 (s, 2H), 7.26-7.27 (5H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 32.66, 60.34, 68.15, 128.04, 128.40, 128.58, 135.56, 154.39, 156.07 ppm. ESI-MS (m/z): 264.00 [M+H]+.
【0041】
1,3-ジメチル-1,3,5-トリアジナン-2-オン(22)
化合物23(603mg、2.29mmol)をメタノールに溶解し、パラジウム活性炭(30mg)を添加し、反応混合物を水素雰囲気下にて室温で14時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮して、表題化合物22を白色の固体(259mg、2.01mmol、収率88%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 2.77 (s, 1H), 2.85 (s, 5H), 4.16 (s, 4H) ppm.
【0042】
tert-ブチル(Z)-(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)カルバメート(24)
アセトニトリル中の化合物22(137mg、1.06mmol)及び化合物13(420mg、1.06mmol)の溶液に、DIPEA(274mg、2.13mmol)を添加し、混合物を50℃で14時間撹拌した。溶媒を真空で除去した。残渣を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(2×30ml)及びジクロロメタン(2×30ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(6:1、次いで2:1の石油エーテル:酢酸エチル、1:1:0.05の石油エーテル:酢酸エチル:トリエチルアミン)によって精製して、標的化合物24を白色の結晶(226mg、0.61mmol、収率58%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 1.47-1.48 (m, 18H), 2.01-2.02 (m, 1H), 2.90-2.91 (m, 6H), 4.69 (s, 6H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 28.16, 33.18, 60.47, 62.31, 81.82, 154.01, 157.30 ppm. ESI-MS (m/z): 372.20 [M+H]+.
【0043】
4-(3-クロロプロポキシ)-3-フルオロベンズアルデヒド(25)
アセトン中の化合物15(2.50g、17.9mmol)及び炭酸カリウム(2.71g、19.6mmol)の溶液に、1-クロロ-3-ヨードプロパン(3.64g、17.9mmol)を添加し、反応混合物を60℃で14時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(5:1の石油エーテル:酢酸エチル)によって精製した。溶媒を真空で除去し、化合物25を淡黄色の液体(3.36g、15.6mmol、収率87%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 2.23-2.32 (m, 2 H), 3.74-3.78 (m, 2 H), 4.22-4.28 (m, 2 H), 7.58-7.80 (m, 3 H), 9,85 (s, 1 H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 31.98, 41.14, 65.69, 113.62, 113.81, 115.94, 116.15, 123.30, 123.37, 130.20, 130.30, 147.54, 148.66, 150.66-153.12 (J(C-F) = 254.4 Hz), 189.96 ppm. ESI-MS (m/z): 217.10 [M+H]+.
【0044】
(E)-1-(3-クロロプロポキシ)-2-フルオロ-4-(2-メトキシビニル)ベンゼン(26)
(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド(538mg、1.57mmol)を乾燥テトラヒドロフランに溶解し、0℃に冷却した。カリウムtert-ブトキシド(228mg、2.04mmol)を少量ずつ添加し、混合物を1時間撹拌した。乾燥テトラヒドロフラン中の化合物25(200mg、1.00mmol)を冷却下で滴加し、反応物を室温まで一晩温めた。混合物を水でクエンチした後、溶媒を真空で除去し、残渣を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(15:1の石油エーテル:酢酸エチル)によって精製して、標的化合物26を無色の油(192mg、0.78mmol、収率50%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 2.25 (m, 2 H), 3.37 (s, 2 H), 3.76-3.77 (m, 3 H), 4.16 (m, 2H), 5.13-5.14 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 5.70-5.73 (d, J = 13.0 Hz, 0.5 H), 6.08-6.10 (d, J = 7.0 Hz, 0.5 H), 6.87-6.89 (m, 3 H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 32.47, 41.52, 41.55, 56.70, 60.78, 66.15, 66.29, 112.69, 112.88, 115.08, 115.10, 115.84, 115.86, 116.02, 116.21, 121.13, 121.17, 147.57, 148.78, 151.91-154.35 (J(C-F) = 245.1 Hz), 153.80 ppm.
【0045】
2-(4-(3-クロロプロポキシ)-3-フルオロフェニル)エタン-1-オール(28)
化合物26(90mg、0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶解し、水中の酢酸水銀(II)(129mg、0.41mmol)の溶液を氷/水浴において冷却下で添加した。反応混合物を15分間撹拌し、飽和炭酸カリウム溶液中の水素化ホウ素ナトリウム(56mg、1.48mmol)を滴加した。反応混合物を30分間撹拌し、水で希釈し、酢酸エチル(4×10ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(4:1の石油エーテル:酢酸エチル)によって精製して、標的化合物28を無色の油(58.5mg、0.25mmol、収率68%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 2.22-2.28 (m, 2 H), 2.77-2.80 (t, J = 6.5 Hz, 2 H), 3.75-3.83 (m, 4 H), 4.15-4.18 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 6.91-6.98 (m, 3 H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 31.27, 38.82, 41.32, 41.43, 62.64, 65.98, 113.39, 113.46, 116.63, 116.84, 125.48, 125.56, 133.36, 133.39, 144.45, 144.85, 153.22-156.17 (J(C-F) = 251.5 Hz) ppm.
【0046】
tert-ブチル(E)-(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(4-(3-クロロプロポキシ)-3-フルオロフェネチル)カルバメート(29)
化合物28(72mg、0.31mmol)、化合物24(172mg、0.46mmol)及びトリフェニルホスフィン(122mg、0.46mmol)を乾燥テトラヒドロフランに溶解した。乾燥テトラヒドロフラン中のDIAD(94mg、0.46mmol)の溶液を0℃で滴加し、反応混合物を室温までゆっくりと温め、16時間撹拌した。混合物を水(40mL)で希釈し、ジエチルエーテル(4×10ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(2.5:1.5:0.5の石油エーテル:アセトン:酢酸エチル)によって精製して、標的化合物29を無色の液体(152mg、0.26mmol、収率84%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 1.47 (s, 18 H), 2.22-2.25 (m, 2 H), 2.84 (m, 6 H), 3.57 (bs, 4 H), 3.74-3.77 (m, 2 H), 4.13-4.16 (m, 2 H), 4.52 (bs, 4 H), 6.89-6.95 (m, 3 H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 28.14, 28.25, 41.43, 48.87, 60.49, 61.02, 66.02, 80.84, 83.00, 115.48, 116.55, 116.73, 124.40, 124.43, 131.50, 131.56, 145.60, 145.71, 150.98, 151.52-153.97 (J(C-F) = 246.8 Hz), 152.31, 156.98, 158.39 ppm. ESI-MS (m/z): 586.25, 588.25 [M+H]+.
【0047】
tert-ブチル(E)-(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-フルオロ-4-(3-ヨードプロポキシ)フェネチル)カルバメート(30a)
化合物29(72mg、0.12mmol)及びヨウ化ナトリウム(37mg、0.25mmol)をアセトンに溶解し、反応混合物を70℃で14時間撹拌した。混合物を水(40mL)で希釈し、ジエチルエーテル(4×10ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、標的化合物30aを黄色の液体(83mg、0.12mmol、収率99%)として得て、更に精製することなく直接次の工程に使用した。ESI-MS (m/z): 678.20 [M+H]+, 700.20 [M+Na]+.
【0048】
(E)-3-(4-(2-(N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)エチル)-2-フルオロフェノキシ)プロピル4-メチルベンゼンスルホネート(30)
化合物30a(72mg、0.11mmol)をアセトニトリル及びp-トルエンスルホン酸銀(148mg、0.53mmol)に暗所にて0℃で溶解した。反応混合物を室温で72時間撹拌した。粗生成物を水(40mL)で希釈し、酢酸エチル(4×10ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去し、標的化合物30を黄色の液体(75mg、0.10mmol、収率98%)として得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ = 1.48 (s, 18 H), 2.11-2.14 (m, 2 H), 2.14 (s, 3H), 2.85 (s, 6H), 3.85 (bs, 4H), 3.89-4.01 (m, 2H), 4.22-4.25 (m, 2H), 4.55 (bs, 4H), 6.77-6.93 (m, 3H), 7.26-7.28 (m, 2H), 7.75-7.77 (d, J = 8.3 Hz) ppm. 13C NMR (CDCl3, 101 MHz) δ = 28.15, 28.26, 29.05, 29.80, 33.22, 33.66, 60.50, 61.20, 64.87, 66.98, 80.93, 83.06, 115.32, 116.49, 116.67, 124.42, 127.98, 129.95, 131.55, 132.92, 144.92, 145.36, 145.47, 151.37, 152.28, 153.82, 156.95 ppm. ESI-MS (m/z): 722.35 [M+H]+, 744.30 [M+Na]+.
【0049】
放射化学
Sep-Pak QMAカートリッジに捕捉させた18F-フッ化物を初めに蒸留水(3mL)で洗浄し、18O-水を除去した。次いで、18F-フッ化物をK2CO3溶液(0.3mL、23μmol/mL)でカートリッジからKryptofix222(22.5mg、59.7μmol)の入ったバイアルに溶出させた。アセトニトリル(0.5mL×4)をバイアルに添加し、溶液をアルゴン下にて120℃で共沸乾燥させた。標識は、乾燥アセトニトリル(0.3mL)中の前駆体(4.8mg)の溶液を添加し、続いて加熱し、110℃で10分間撹拌することによって行う。塩酸(6N、0.3mL)を反応混合物に添加し、反応を100℃で20分間継続した。混合物を冷却し、1mLの水及びアセトニトリル(1:1)の混合溶液で希釈し、精製のために半分取HPLCに適用した。HPLC条件:カラム:9.4×250mm 5ミクロンZORBAX Eclipse XDB-C18(製品番号:990967-202)。移動相:A相:0.1%ギ酸を含むMillipore水;B相:0.1%ギ酸を含むメタノール。条件:0分~20分、30%→60%のB、20分~22分、60%→100%のB、22分~50分、100%のB;流量3mL/分。オートラジオグラフィーの条件:順相シリカゲル60を用いたTLC。溶媒系:3mLのメタノール+20μLのギ酸、Rf:0.6。131I-MIBGは、GE Healthcare(ドイツ、フライブルク・イム・ブライスガウ)から購入し、較正時間後2時間以内に使用した。131I-MIBGを、研究目的及び経済的理由で好都合である、その比較的長い半減期のために123I-MIBGの代わりに選んだ。
【0050】
図4~
図6の化合物の合成の詳細:
(E/Z)-2-ヨード-1-メトキシ-4-(2-メトキシビニル)ベンゼンC
10H
11O
2I(107)
【化17】
(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド(3.94g、11.50mmol、1.50当量)を不活性ガス雰囲気下で乾燥テトラヒドロフラン(60mL)に溶解し、カリウムtert-ブトキシド(1.47g、13.13mmol、1.71当量)を0℃で添加した。反応混合物を0℃で2分間撹拌した後、市販の3-ヨード-4-メトキシベンズアルデヒド106(2.01g、7.66mmol、1.00当量)を添加した。溶液を室温で18時間撹拌し、蒸発乾固した。残渣を酢酸エチル(50mL)と水(50mL)との間で分配し、続いて層を分離した。水層を酢酸エチル(2×50mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(1×100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗物質をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=12:1、R
f=0.37)によって精製して、所望の生成物107を淡黄色の油(1.79g、収率81%)として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 8.02 (1H, d, J = 2.13 Hz, H
h'), 7.66 (1H, d, J = 2.18 Hz, H
h), 7.50 (1H, dd, J = 2.13 Hz, 8.54 Hz, H
d'), 7.15 (1H, dd, J = 2.25 Hz, 8.46 Hz, H
d), 6.92 (1H, d, J = 12.92 Hz, H
a), 6.78 - 6.71 (2H, m, H
e/e'), 6.07 (1H, d, J = 6.94 Hz, H
a'), 5.70 (1H, d, J = 13.00 Hz, H
b), 5.09 (1H, d, J = 6.98 Hz, H
b'), 3.86/3.85 (6H, s, H
i/i'), 3.77 (3H, s, H
j'), 3.66 (3H, s, H
j) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 156.4 (C
f), 156.1 (C
f'), 148.5 (C
a), 147.3 (C
a'), 139.1 (C
h'), 136.1 (C
h), 131.3 (C
c), 131.0 (C
c'), 129.4 (C
d'), 126.3 (C
d), 111.2/110.7 (C
e/e'), 103.9 (C
b'), 103.4 (C
b), 86.5 (C
g), 86.0 (C
g'), 60.8 (C
j'), 56.7/56.6/56.5 (C
j/i/i') ppm. ESI-MS (m/z): 290.80 [M+H]
+.
【0051】
2-(3-ヨード-4-メトキシフェニル)エタン-1-オールC
9H
11O
2I(108)
【化18】
(E/Z)-2-ヨード-1-メトキシ-4-(2-メトキシビニル)ベンゼン107(1.79g、6.17mmol、1.00当量)をテトラヒドロフラン(46mL)及び水(74mL)に懸濁した後、酢酸水銀(2.18g、6.84mmol、1.10当量)を0℃で添加した。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、続いて50%炭酸カリウム水溶液(30mL)及び水素化ホウ素ナトリウム(942mg、24.90mmol、4.00当量)を添加した。反応混合物を0℃で2.5時間撹拌した後、沈殿物を濾別し、濾液を酢酸エチル(3×80mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=1:1、R
f=0.45)によって精製して、アルコール108を黄色の油(1.36g、収率79%)として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.65 (1H, d, J = 2.13 Hz, H
h), 7.16 (1H, dd, J = 2.14 Hz, 8.35 Hz, H
d), 6.76 (1H, d, J = 8.35 Hz, H
e), 3.85 (3H, s, H
i), 3.81 (2H, t, J = 6.55 Hz, H
a), 2.76 (2H, t, J = 6.53 Hz, H
b), 1.69 (1H, s, H
j) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 157.0 (C
f), 139.9 (C
h), 132.9 (C
c), 130.2 (C
d), 111.1 (C
e), 86.2 (C
g), 63.7 (C
a), 56.5 (C
i), 37.8 (C
b) ppm. ESI-MS (m/z): 278.80 [M+H]
+.
【0052】
3-ヨード-4-メトキシフェネチルアセテートC
11H
13O
3I(113)
【化19】
2-(3-ヨード-4-メトキシフェニル)エタン-1-オール108(1.04g、3.74mmol、1.00当量)をアセトン(20mL)に溶解し、塩化アセチル(800μL、11.21mmol、3.00当量)を0℃で添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチル(20mL)に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1×20mL)及びブライン(1×20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=3:1、R
f=0.54)によって精製して、アセテート113を黄色の油(1.07g、収率90%)として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.63 (1H, d, J = 2.15 Hz, H
h), 7.15 (1H, dd, J = 2.16 Hz, 8.39 Hz, H
d), 6.75 (1H, d, J = 8.38 Hz, H
e), 4.22 (2H, t, J = 7.01 Hz, H
a), 3.85 (3H, s, H
i), 2.83 (2H, t, J = 7.01 Hz, H
b), 2.03 (3H, s, H
k) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 171.1 (C
j), 157.1 (C
f), 139.9 (C
h), 132.2 (C
c), 130.0 (C
d), 111.0 (C
e), 86.1 (C
g), 64.9 (C
a), 56.5 (C
i), 33.8 (C
b), 21.1 (C
k) ppm. ESI-MS (m/z): 342.85 [M+Na]
+.
【0053】
4-ヒドロキシ-3-ヨードフェネチルアセテートC
10H
11O
3I(114)
【化20】
3-ヨード-4-メトキシフェネチルアセテート113(588mg、1.87mmol、1.00当量)を不活性ガス雰囲気下で乾燥ジクロロメタン(12mL)に溶解し、乾燥ジクロロ-メタン(12mL)中の三臭化ホウ素(445μL、4.69mmol、2.50当量)の溶液を-20℃で添加した。反応混合物を2時間撹拌し、酢酸エチル(60mL)と50%重炭酸ナトリウム水溶液(60mL)との間で分配した。層を分離し、水層を酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×180mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=3:1、R
f=0.36)によって精製して、フェノール114を黄色の油(602mg、収率92%)として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.51 (1H, d, J = 2.08 Hz, H
h), 7.08 (1H, dd, J = 2.05 Hz, 8.28 Hz, H
d), 6.91 (1H, d, J = 8.29 Hz, H
e), 5.47 (1H, bs, H
i), 4.22 (2H, t, J = 7.02 Hz, H
a), 2.83 (2H, t, J = 6.99 Hz, H
b), 2.04 (3H, s, H
k) ppm.
13C-NMR (CDCl
3,
101 MHz) δ = 171.2 (C
j), 153.8 (C
f), 138.5 (C
h), 132.0 (C
c), 130.8 (C
d), 115.1 (C
e), 85.6 (C
g), 65.0 (C
a), 33.8 (C
b), 21.1 (C
k) ppm. ESI-MS (m/z): 328.85 [M+Na]
+.
【0054】
4-(3-クロロプロポキシ)-3-ヨードフェネチルアセテートC
13H
16O
3ICl
【化21】
4-ヒドロキシ-3-ヨードフェネチルアセテート114(330mg、1.08mmol、1.00当量)をアセトン(17mL)に溶解し、続いて3-クロロ-1-ヨードプロパン(177μL、1.65mmol、1.53当量)及び炭酸セシウム(702mg、2.15mmol、2.00当量)を添加した。反応混合物を70℃で18時間撹拌した後、水(85mL)を添加した。酢酸エチル(3×85mL)で抽出した後、合わせた有機層をブライン(1×215mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=5:1、R
f=0.42)によって精製して、表題化合物を黄色の油(372mg、収率90%)として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.63 (1H, d, J = 2.16 Hz, H
h), 7.13 (1H, dd, J = 2.15 Hz, 8.33 Hz, H
d), 6.76 (1H, d, J = 8.35 Hz, H
e), 4.22 (2H, t, J = 6.99 Hz, H
a), 4.14 (2H, t, J = 5.68 Hz, H
k), 3.84 (2H, t, J = 6.33 Hz, H
m), 2.83 (2H, t, J = 6.99 Hz, H
b), 2.23 (2H, quint, J = 6.00 Hz, H
l), 2.03 (3H, s, H
j) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 171.1 (C
i), 156.1 (C
f), 139.8 (C
h), 132.5 (C
c), 130.0 (C
d), 112.2 (C
e), 86.8 (C
g), 65.6 (C
k), 64.9 (C
a), 41.8 (C
m), 33.8 (C
b), 32.3 (C
l), 21.1 (C
j) ppm. ESI-MS (m/z): 404.80 [M+Na]
+.
【0055】
2-(4-(3-クロロプロポキシ)-3-ヨードフェニル)エタン-1-オールC
11H
14O
2ICl(117)
【化22】
4-(3-クロロプロポキシ)-3-ヨードフェネチルアセテート(189mg、0.49mmol、1.00当量)をメタノール(9mL)に溶解した後、炭酸カリウム(650mg、4.70mmol、9.60当量)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、水(60mL)とジクロロメタン(60mL)との間で分配し、続いて層を分離した。水層をジクロロメタン(2×60mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(1×180mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、アルコール117を黄色の油(175mg、定量的)として得て、これを直接次の工程に使用した。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.65 (1H, d, J = 2.15 Hz, H
h), 7.16 (1H, dd, J = 2.12 Hz, 8.32 Hz, H
d), 6.77 (1H, d, J = 8.36 Hz, H
e), 4.14 (2H, t, J = 5.72 Hz, H
i), 3.87 - 3.78 (4H, m, H
a,k), 2.77 (2H, t, J = 6.48 Hz, H
b), 2.27 (2H, quint, J = 6.00 Hz, H
j) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 156.1 (C
f), 139.9 (C
h), 133.3 (C
c), 130.2 (C
d), 112.3 (C
e), 87.0 (C
g), 65.7 (C
i), 63.7 (C
a), 41.8 (C
k), 37.9 (C
b), 32.3 (C
j) ppm. ESI-MS (m/z): 362.80 [M+Na]
+.
【0056】
tert-ブチル(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(4-(3-クロロプロポキシ)-3-ヨードフェネチル)カルバメートC
27H
41N
5O
6ICl(121)
【化23】
2-(4-(3-クロロプロポキシ)-3-ヨードフェニル)エタン-1-オール117(160mg、0.47mmol、1.00当量)、トリフェニルホスフィン(185mg、0.71mmol、1.51当量)及び24(175mg、0.47mmol、1.00当量)を乾燥テトラヒドロフラン(23mL)に不活性ガス雰囲気下で溶解した。DIAD(140μL、0.71mmol、1.51当量)を0℃で添加し、反応混合物を室温で18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を水(20mL)と酢酸エチル(20mL)との間で分配し、続いて層を分離した。水層を酢酸エチル(2×20mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(1×60mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/アセトン/酢酸エチル=5:3:1、R
f=0.38)によって精製して、表題化合物121を淡緑色の油(272mg、収率83%)として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.61 (1H, d, J = 1.81 Hz, H
h), 7.12 (1H, dd, J = 1.71 Hz, 8.25 Hz, H
d), 6.74 (1H, d, J = 8.31 Hz, H
e), 4.50 (4H, bs, H
p), 4.16 - 4.07 (3H, m, H
i), 3.82 (2H, t, J = 6.25 Hz, H
k), 3.57 (2H, bs, H
a), 2.88 - 2.80 (8H, m, H
b,q), 2.26 (2H, quint, J = 5.96 Hz, H
j), 1.48 (9H, s, H
o), 1.47 (9H, s, H
o) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 156.3 (C
f,r), 152.4/151.3 (C
l,m), 139.6 (C
h), 132.5 (C
c), 129.9 (C
d), 112.3 (C
e), 87.0 (C
g), 83.1/80.9 (C
n), 65.7 (C
i), 61.2 (C
p), 49.0 (C
a), 41.7 (C
k), 33.2 (C
q), 33.1 (C
b), 32.2 (C
j), 28.3/28.2 (C
o) ppm. ESI-MS (m/z): 694.20 [M+H]
+, 716.05 [M+Na]
+.
【0057】
tert-ブチル(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-ヨード-4-(3-ヨードプロポキシ)フェネチル)カルバメートC
27H
41N
5O
6I
2(122)
【化24】
121(236mg、0.34mmol、1.00当量)をアセトン(30mL)に溶解し、ヨウ化ナトリウム(510mg、3.40mmol、10.00当量)を添加した。反応混合物を70℃で18時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。LC-MSによって出発物質の不完全な変換が示されたため、付加的な量のヨウ化ナトリウム(816mg、5.44mmol、16.00当量)を添加した。反応混合物を70℃で更に1日撹拌した。更なる量のヨウ化ナトリウム(816mg、5.44mmol、16.00当量)を添加してから、反応混合物を70℃で更に18時間撹拌した後、水(15mL)とジエチルエーテル(15mL)との間で分配し、続いて層を分離した。水層をジエチルエーテル(2×15mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(1×45mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、ヨウ化物122を黄色の油(221mg、収率83%)として得て、これを直接次の工程に使用した。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.62 (1H, d, J = 2.16 Hz, H
h), 7.13 (1H, dd, J = 2.22 Hz, 8.31 Hz, H
d), 6.75 (1H, d, J = 8.33 Hz, H
e), 4.51 (4H, bs, H
p), 4.05 (3H, t, J = 5.69 Hz, H
i), 3.58 (2H, bs, H
a), 3.46 (3H, t, J = 6.60 Hz, H
k), 2.90 - 2.75 (8H, m, H
b,q), 2.32 - 2.24 (2H, m, H
j), 1.48 (9H, s, H
o), 1.47 (10H, s, H
o) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 157.0 (C
r), 156.2 (C
f), 152.3/151.1 (C
l,m), 139.6 (C
h), 132.6 (C
c), 129.8 (C
d), 112.4 (C
e), 87.0 (C
g), 83.1/81.0 (C
n), 68.7 (C
i), 61.2 (C
p), 49.0 (C
a), 33.3 (C
q), 33.1 (C
b), 32.9 (C
j), 28.3/28.2 (C
o), 3.1 (C
k) ppm. ESI-MS (m/z): 786.00 [M+H]
+, 807.90 [M+Na]
+.
【0058】
3-(4-(2-(N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)エチル)-2-ヨードフェノキシ)プロピル4-メチルベンゼンスルホネートC
34H
48N
5O
9SI(123)
【化25】
122(191mg、0.24mmol、1.00当量)をアセトニトリル(10mL)に溶解し、p-トルエンスルホン酸銀(340mg、1.22mmol、5.00当量)を添加した。反応混合物を暗所にて室温で72時間撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を水(15mL)と酢酸エチル(15mL)との間で分配し、続いて層を分離した。水層を酢酸エチル(2×15mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(1×40mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/アセトン/酢酸エチル=6:3:1、R
f=0.33)によって精製して、標的化合物123を無色の発泡体(113mg、収率56%)として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ = 7.75 (2H, d, J = 8.33 Hz, H
t), 7.58 (1H, d, J = 2.06 Hz, H
h), 7.23 (2H, d, J = 8.32 Hz, H
u), 7.10 (1H, dd, J = 2.04 Hz, 8.33 Hz, H
d), 6.62 (1H, d, J = 8.22 Hz, H
e), 4.52 (3H, bs, H
p), 4.31 (2H, t, J = 6.02 Hz, H
k), 3.96 (2H, t, J = 5.78 Hz, H
i), 3.56 (2H, bs, H
a), 2.88 - 2.79 (8H, m, H
b,q), 2.36 (3H, s, H
w), 2.19 - 2.10 (2H, m, H
j), 1.48 (9H, s, H
o), 1.47 (9H, s, H
o) ppm.
13C-NMR (CDCl
3, 101 MHz) δ = 157.0 (C
r), 156.0 (C
f), 152.3/151.0 (C
l,m), 144.9 (C
v), 139.6 (C
h), 132.9 (C
s), 132.5 (C
c), 130.0 (C
u), 129.7 (C
d), 127.9 (C
t), 112.1 (C
e), 86.8 (C
g), 83.0/81.0 (C
n), 67.2 (C
k), 64.4 (C
i), 61.2 (C
p), 49.1 (C
a), 33.3 (C
q), 33.2 (C
b), 29.0 (C
j), 28.3/28.2 (C
o), 21.8 (C
w) ppm. ESI-MS (m/z): 830.10 [M+H]
+, 852.05 [M+Na]
+.
【0059】
放射化学
放射性フッ素化を、K
18Fを用いて行い、前駆体123のトシレート基を
18Fに置き換えた。6N HClの添加により、boc基及びトリアジナノン部分の切断が達成された(
図6)。所望の放射性標識化合物
18F-37が22%の全放射化学的収率(減衰補正した)及び99%を超える放射化学的純度で得られた。
【0060】
競合的結合/細胞取込み研究
NETを発現するSK-N-SH細胞を、供給業者(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)からの指示に従って培養した。細胞を12ウェルプレートに移し、1mLのEMEM中でインキュベートすると、試験日に2×105細胞/ウェルの密度に達した。培地を除去し、細胞を1mLのEMEMで洗浄した。EMEM(700μL)中の18F-AF78(3.7kBq)の溶液を、阻害剤(各々100nM、1μM、10μM及び100μMのそれぞれの最終濃度のNE、MHPG、コールド(cold)AF78;デシプラミン10μM)を含む又は含まない各ウェルに添加した。プレートを37℃で60分間インキュベートした。非結合トレーサーを除去するために細胞を氷冷PBSバッファー(1mL×2)で洗浄した。NaOH溶液(0.1N、500μL)を各ウェルに添加し、続いて細胞ペレットを回収し、18F及び131Iについて差次的エネルギーウィンドウ(±20%)を用いるγ-カウンター(FH412、Frieseke & Hoepfner、ドイツ、エルランゲン)において測定した。
【0061】
本発明による化合物及び以下の化合物1:
【化26】
のコールド、すなわち非放射性の参照化合物AF78を合成した。化合物を、NETを発現するSK-N-SH細胞において試験し、
131I-MIBGに対するそれらの競合的結合親和性を評価した。
図7に、漸増濃度の以下の非放射性化合物:NE(●)、MHPG(黒塗り四角)、コールド参照1(=化合物1)(◆)、コールド参照2(=化合物AF78)(▲)の存在下でのSK-N-SH細胞における
131I-MIBG取込みの用量応答曲線を示す。結果を対照MIBG取込みに対するパーセントとして表す。NE、MHPG及びコールド参照2 AF78のIC50は、それぞれ1.38±0.25μM、6.80±0.73μM及び2.57±1.37μMである(AF78対MHPGのIC50 p値<0.01)。
【0062】
NE及びコールドMIBGを参照として使用した。結果として、コールド参照2(AF78)は、131I-MIBGの細胞取込みを濃度依存的に阻害することができた。対照的に、コールド参照1は、試験した最高濃度であっても131I-MIBGの取込みを遮断することができなかった。阻害は100μMで僅か40%であった。この結果は構造-活性関係を示唆する。ベンゼン環の3位での長いアルキル鎖の導入は、許容されないようであるが、4位での導入は十分に許容されるようである。
【0063】
放射性標識が成功した後に、
18F-AF78もSK-N-SH細胞において試験し、細胞取込みを確認した。抗鬱剤デシプラミン(DMI)をNETの阻害剤として使用した。結果を
図8に示す。DMIの添加は、NETによって特異的に輸送されるトレーサーの細胞取込みを遮断する。結果から、参照としての
131I-MIBGの87%と比較して、
18F-AF78の取込みの94%がDMIの添加によって阻害されたことが示される。
【0064】
トレーサーの結合親和性を更に確認するために、
18F標識AF78を競合的阻害アッセイにおいて使用し、これに異なる濃度のNE、MHPG及びコールド参照2(AF78)を添加した。
図9に、漸増濃度の以下の非放射性化合物:NE(●)、MHPG(黒塗り四角)及びコールドAF78(▲)の存在下でのSK-N-SH細胞における
18F-AF78取込みの用量応答曲線を示す。結果を対照AF78の取込みに対するパーセンテージとして表す。NE、MHPG及びコールドAF78は、
18F-AF78の取込みをそれぞれ0.60±0.27μM、0.85±0.63μM及び2.68±0.83μMのIC50値で阻害することができた(MHPG対AF78のIC50、p値<0.05)。これらの結果は、参照として
131I-MIBGを用いて達成された結果に一致する。したがって、構造修飾が、元の参照及び臨床的に使用されるトレーサー
131I-MIBGと比較して、NETによって特異的に取り込まれる特性を保持することが更に確認された。
【0065】
ex vivoオートラジオグラフィー及び組織計数研究
小動物の非侵襲的PET画像化のための標準的なプロトコル及びデータ分析法が、本発明者らの研究グループで確立されている(Rischpler C. et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2013; 40(7): 1077-83)。各々体重200g~250gの健常な雄性Wistarラット(日本エスエルシー株式会社、日本)を使用した。ラットを2%イソフルランで麻酔する。10MBq~20MBqのトレーサーを尾静脈注射によって投与した。トレーサー投与の10分後に、動物を即座に安楽死させた。オートラジオグラフィー(Typhoon FLA 7000)によるex vivo分析及びγ-カウンター(1480 WIZARD(商標) 3’’)による組織計数のために心臓、肝臓及び血液を得た。組織計数の体重及び減衰補正後に、心臓対血液(H/B)及び心臓対肝臓(H/L)の計数比をそれぞれ算出した。オートラジオグラフィーについては、ラットに初めに、麻酔後に50mg/kgの(対照)NET遮断剤フェノキシベンザミンを用いて又は用いずに尾静脈注射した。10分後にトレーサー(10MBq~20MBq)を投与した。心臓を10分後に摘出し、凍結し、クライオスタット(Cryotome FSE、Thermo Fisher Scientific)を用いて20μmの短軸切片に切断した。トレーサーの分布を得るために、オートラジオグラフィープレート(Fuji SR型イメージプレート、富士フイルム株式会社、日本、東京)を即座に短軸切片に18時間曝露し、その後、デジタルオートラジオグラフィーシステム(Typhoon FLA 7000)を用いて画像化した。
【0066】
ラット及びサルにおける心臓画像化研究
ラットに由来する左室短軸(LVSA)切片のオートラジオグラフィー研究では、
18F-AF78は、健常な心筋の左室壁全体にわたって均一なトレーサー取込みを示した。結果を
図10に示す。
18F-AF78は、心筋全体にわたって均等な分布を示し(対照)、これをトレーサー注射10分前のフェノキシベンザミン(PhB、50mg/kg i.v.注射)での前処理によって阻害することができた。右室壁は、その薄さ及び切断位置のために描写されない場合がある。
【0067】
ex vivo組織計数研究から、それぞれ12.54及び6.14となる心臓対血液(H/B)比及び心臓対肝臓(H/L)比で実証されるように、トレーサーが心臓において十分な取込みを有することが示された。この取込みは、PhB(50mg/kg)によって特異的に遮断することができ、H/B比のおよそ6倍の低下及びH/L比の5倍の低下をもたらし、それぞれ2.41及び1.30となった。組織分布研究の結果を
図11に示す。縦棒は2匹のラットの平均値である。データは注射の10分後に決定した。y軸は心臓/組織分布比を表す。心臓対血液(H/B)比及び心臓対肝臓(H/L)比の両方が、トレーサー注射の10分前のPhB(50mg/kg、NET遮断)による前処理後に顕著に減少した。比較すると、Raffel, D. et al., J. Nucl. Med. 2017, 58(Suppl 1): 96によれば、MHPG及びPHPGは、50分~60分の時間枠の画像化で以下のような組織濃度比を示す:MHPGではH/B 3.6及びH/L 2.3;PHPGではそれぞれ5.4及び1.1。したがって、
18F-AF78の低い肝臓取込みは、心臓の低い壁活性を評価する可能性を促進する。この高度に特異的な心臓取込みは、
18F-AF78が心臓のほぼ理想的なPET画像化であることを示す。
【0068】
動物における心臓PET画像化
ラットを、2%イソフルランにより実験全体を通して麻酔したままにした。全てのスキャンは、専用の小動物PETシステム(microPET FOCUS 120、SIEMENS、ドイツ)を用いて得た。PET画像化プロトコルは、18F-AF78の全身及び心筋トレーサー分布を評定するように設計した。10MBq~20MBqの18F-AF78の尾静脈注射の直前に動態PETスキャンを開始した。トレーサーの心臓取込み機構を評価するために、ラットをフェノキシベンザミン(静脈内で50mg/kg、シグマアルドリッチジャパン合同会社、日本、東京)で前処理した。前処理の10分後に、10MBq~20MBqの18F-AF78を尾静脈投与した。10分間の動態PET期間をトレーサー注射の直前に開始した。PET像をリストモードフォーマットで取得した。データを三次元ソノグラムに分類し、その後フーリエアルゴリズムによって再結合し、二次元順序付けサブセット期待値最大化(OSEM)アルゴリズムを用いて動態画像を再構築した。全ての画像を18F減衰、ランダム及び不感時間に対して補正し、減衰補正は行わなかった(Higuchi JNM 2013)。得られるPET像を、公開ツールであるAMIDE画像化ソフトウェア(Medical Imaging Data Examiner、バージョン1.01)を用いて分析した。
【0069】
トレーサー注射の10分前のNET遮断剤PhB(50mg/kg iv注射)による前処理を行った場合(NET遮断)又は行わない場合(前処理なし)のin vivo PETによる健常なラット心筋における
18F-AF78及び
18F-37の全身分布を
図12及び
図13に示す。静止PET像は、左室壁全体にわたって均一かつ明らかなトレーサー取込みを示す。NET遮断剤PhBによる前処理(尾静脈を介して静脈内に50mg/kg)は、心筋トレーサー取込みを顕著に減少させた(
図12及び
図13、NET遮断)。
【0070】
対照のために、カニクイザル(雄性、5.3kg)を画像化研究中に3.3%セボフルランを用いて麻酔したままにした。トレーサー(44MBq)の静脈注射を行う直前に、120分間の動態PET期間を開始した。加えて、心臓ニューロンuptake-1の阻害を調査するために、DMI(1mg/kg、iv.)を、トレーサー(18.2MBq)注射の10分前にカニクイザル(雌性、5.6kg)に注射し、PET評定を開始した。PETは、PCA-2000Aポジトロンスキャナー(東芝メディカルシステムズ株式会社、日本、大田原市)を用いて行った。サイノグラムを以下のパターン:10秒×12、30秒×6、300秒×23で収集した。組織取込みを任意単位(A.U.)として決定し、それにより異なる器官の時間-活性曲線を作成した。
【0071】
ラットにおいて観察されたものと一致する組織生体内分布を、合計120分間のスキャンにおいて明らかな長時間の安定した心臓取込みで観察することができ、隣接した肝臓及び肺における取込みは低かった。対照及び交感神経ブロックサルにおいて
18F-AF78動態画像から得られる代表的な時間活性曲線をスキャンデータから作成した。分単位の時間に対する任意単位A.U.で表された時間活性曲線を
図14に示す。
18F-AF78の心臓取込みは、最初のウォッシュアウト後に高いトレーサー活性を示し、120分間のスキャン時間全体を通して活性を維持した。トレーサー注射の10分前のuptake-1阻害剤DMI(1mg/kg、iv)による前処理は、心臓取込みレベルを著しく低下させ、このレベルは殆ど間を置かずに血液中と同じレベルまで低下した。対照では、肝臓における活性は、トレーサー注射後しばらくしてからピークに達した、その後60分でゆっくりと血中レベルまで減少した。結果は、好ましい心臓/血液比及び心臓/肝臓比で安定した長時間の心臓特異的取込みを示す。肝臓におけるトレーサー取込みは、DMIによる前処理の影響を受けなかった。
【0072】
更なる生体内分布研究をトレーサー
18F-37の注射の10分後にラット(n=4)において行い、好ましい心臓対血液(H/B、およそ6:1)比及び心臓対肝臓(H/L、およそ2:1)比が示された(
図15、右パネル)。心臓対筋肉(H/M)比は非常に高く、およそ12:1の値であった。時間活性曲線は、安定した長時間の心臓取込み(任意単位A.U.で表される)を示した。これを
図15(左パネル)に示す。16MBqのトレーサー活性を注射した。
【0073】
健常なラット、ウサギ、ブタ及びサルにおける
18F-AF78の心臓取込みの静止PET像(
図16)から、
18F-AF78がこれらの種の全てにおいて奏功することが示され、これがヒトを含む全ての哺乳動物において奏功すると推定することができる。
【0074】
サルにおける
18F-AF78を用いた更なる生体内分布研究を行った。SUV(標準化取込み値)として算出した結果を
図17に示す。結果は、急速な血液プールウォッシュアウト及び比較的急速な肝臓取込みウォッシュアウトと同時に安定した心臓取込みを示す。肝臓取込みは減少し、トレーサー投与の35分後には心臓取込みよりも低くなる。
【0075】
動態研究をサルの心臓において
18F-AF78を用いて行った。結果から、交感神経末端におけるNET及び安定した小胞貯蔵機構による
18F-AF78の特異的取込みが確認された。トレーサー投与の10分前に注射した場合に、NET遮断剤デシプラミン(DMI)はトレーサー取込みを特異的に遮断し、対照と比較して有意差(p<0.0001)が見られた(
図18、上パネル)。対照的に、DMI追跡(トレーサー投与の10分後に注射した)を行った場合、対照群と比較して差は見られなかった(
図18、中央パネル)。さらに、連続チラミン(TYR)追跡をトレーサー投与後に適用した。チラミンは、カテコールアミン放出を引き起こすことでトレーサーのウォッシュアウトを増強する作用物質として知られている。
18F-AF78の心臓取込みは、大幅に減少した。減少は、対照群と比較して統計的に有意であった(p<0.005)(
図18、下パネル)。
【0076】
統計分析
全ての結果を平均±SDとして示す。対応のある両側スチューデントt検定を用いて、2つの関連群間の差を比較し、独立群間の差については対応のない両側スチューデントt検定を用いた。複数群比較は、分散分析(ANOVA)を用いて行った。0.05未満のp値を統計的に有意とみなした。統計分析は、StatMate III(株式会社アトムス)を用いて行った。
【0077】
本明細書で使用される略語の意味は、以下の通りである:
DIAD、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート;DIPEA、N,N-ジイソプロピルエチルアミン;DMF、N,N-ジメチルホルムアミド;DMI、デシプラミン;11C-HED、11C-(-)-m-ヒドロキシエフェドリン;iv、静脈内;18F-MHPG、18F-4-フルオロ-3-ヒドロキシフェネチルグアニジン;123/131I-MIBG、123/131I-メタ-ヨードベンジルグアニジン;NE、ノルエピネフリン;NET、ノルエピネフリン輸送体;PET、陽電子放射断層撮影;PhB、フェノキシベンザミン;18F-PHPG、18F-3-フルオロ-4-ヒドロキシフェネチルグアニジン;SPECT、単光子放射型コンピュータ断層撮影法;THF、テトラヒドロフラン