(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20231117BHJP
F24F 8/24 20210101ALI20231117BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F8/24
(21)【出願番号】P 2021082043
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 真弓
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴司
(72)【発明者】
【氏名】小原 弘士
(72)【発明者】
【氏名】木下 剛
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211709(JP,A)
【文献】特開2009-133499(JP,A)
【文献】特開2019-128075(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158850(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/84
F24F 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間を空調する空調システムであって、
1つの室外機に接続され、加熱または冷却を行う空気調和装置と、
前記空気調和装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
目標温度と、ユーザ設定温度と、前記空間の測定温度と、に基づいて前記空気調和装置による冷却を制御する調温制御部と、
目標湿度と、前記空間の測定湿度と、に基づいて前記空気調和装置による除湿を制御する調湿制御部と、を備え、
前記空気調和装置が冷房運転を行う際、
前記調温制御部は、前記空気調和装置による冷却の制御を行い、
前記調湿制御部は、前記測定湿度が前記目標湿度以下になるまで除湿を行い、
前記調温制御部は、前記測定湿度が前記目標湿度より高い場合には前記測定湿度が前記目標湿度以下の場合に比較して前記空気調和装置による冷却時間を長くし、
前記調温制御部は、前記空気調和装置の単位時間当たりの吸熱量の減少により前記冷却時間を長くし、
前記測定湿度が前記目標湿度以下の場合、前記目標温度としてユーザ設定温度を設定して冷房運転を行い、
前記測定湿度が前記目標湿度より高い場合、前記目標温度として前記ユーザ設定温度を設定して冷房運転を行い、前記測定温度が前記目標温度に近づくと、前記測定温度よりも高くて前記空気調和装置による冷却が停止しない温度である第一疑似設定温度を前記目標温度に設定することで、前記空気調和装置の冷却のサーモオフを行わずに前記空気調和装置の単位時間当たりの吸熱量を減少させて冷房運転を行う、空調システム。
【請求項2】
前記調温制御部は、
前記空気調和装置の単位時間当たりの吸熱量を減少させて冷房運転を行う際に、空気を冷却する能力である要求レベルを下げ、
前記要求レベルを下げた後の前記要求レベルは、
前記空気調和装置にて前記冷却のサーモオフが発生しない前記要求レベルである請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記調温制御部は、
前記測定温度の低下に応じて前記第一疑似設定温度を低下させ、
前記第一疑似設定温度の下限値を前記ユーザ設定温度とする請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記調温制御部は、
前記測定湿度が前記目標湿度より高い場合、前記測定温度が前記ユーザ設定温度よりも低い温度に到達した後、前記ユーザ設定温度よりも低く前記測定温度よりも高い第二疑似設定温度を前記目標温度に設定して冷房運転を行い、
前記測定湿度が前記目標湿度以下の場合、前記ユーザ設定温度を前記目標温度に設定して冷房運転を行う請求項1から3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
前記調温制御部は、前記測定温度の低下に応じて前記第二疑似設定温度を低下させる請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記第二疑似設定温度は、前記空気調和装置による冷却が停止しない温度である請求項4または5に記載の空調システム。
【請求項7】
前記調温制御部は、
前記測定温度が、前記目標温度よりも所定の温度低くなると、前記空気調和装置による冷却を停止し、
前記測定湿度が前記目標湿度以下の場合、前記測定温度が、前記目標温度である前記ユーザ設定温度よりも前記所定の温度低い第一冷却停止温度になると、冷却を停止し、
前記測定湿度が前記目標湿度より高い場合、前記測定温度が前記第一冷却停止温度よりも低い第二冷却停止温度になると、前記目標温度に前記ユーザ設定温度を設定し冷却を停止することで、前記測定湿度が前記目標湿度より高い場合には前記測定湿度が前記目標湿度以下の場合に比較して冷却を停止するまでの時間を長くする、請求項4から6のいずれかに記載の空調システム。
【請求項8】
前記調温制御部は、前記空気調和装置による冷却を停止している状態で、前記測定温度が前記ユーザ設定温度よりも高い温度である冷却再開温度になると、前記空気調和装置による冷却を再開する請求項7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記調温制御部は、前記目標温度と前記目標湿度の達成のために冷却を再開する処理と冷却を停止する処理を繰り返す請求項8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記空気調和装置は、冷却により除湿機能を提供する請求項1から9のいずれかに記載の空調システム。
【請求項11】
加湿により次亜塩素酸を供給する加湿浄化部をさらに備える請求項1から10のいずれかに記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調制御と調湿制御を実行する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間除菌脱臭装置は、対象とする領域を殺菌するために、薬剤などの微細水粒子、例えば次亜塩素酸水を散布する。例えば、空間除菌脱臭装置の液体微細化室は、貯水部に貯留された次亜塩素酸水溶液から水滴を放出する。水滴は、送風部による通風によって、空気風路を通って吹出口から対象領域に放出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
室内の湿度を低下させたい場合、空気調和装置により温度を低下させる。しかしながら、温度がユーザ設定温度に近づき、空気調和装置による空気の冷却がなされなくなると、湿度が低下しにくくなる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、制御対象となる領域において湿度を目標湿度により近づける技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の空調システムは、所定の空間を空調する空調システムであって、1つの室外機に接続され、加熱または冷却を行う空気調和装置と
、空気調和装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、目標温度と、ユーザ設定温度と、空間の測定温度と、に基づいて空気調和装置による冷却を制御する調温制御部と、目標湿度と、空間の測定湿度と、に基づいて空気調和装置による除湿を制御する調湿制御部と、を備える。空気調和装置が冷房運転を行う際、調温制御部は、空気調和装置による冷却の制御を行い、調湿制御部は、測定湿度が目標湿度以下になるまで除湿を行い、調温制御部は、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して空気調和装置による冷却時間を長くする。調温制御部は、空気調和装置の単位時間当たりの吸熱量の減少により冷却時間を長くし、測定湿度が目標湿度以下の場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して冷房運転を行い、測定湿度が目標湿度より高い場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して冷房運転を行い、測定温度が目標温度に近づくと、測定温度よりも高くて空気調和装置による冷却が停止しない温度である第一疑似設定温度を目標温度に設定することで、空気調和装置の冷却のサーモオフを行わずに空気調和装置の単位時間当たりの吸熱量を減少させて冷房運転を行う。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、制御対象となる領域において湿度を目標湿度により近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の空調システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1の空気調和装置の初期要求レベルと温度差の関係の一例を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1の空気調和装置の冷房運転時の要求レベル増減値と温度差の関係の一例を示し、
図3(b)は、
図1の空気調和装置の暖房運転時の要求レベル増減値と温度差の関係の一例を示す図である。
【
図4】
図1の空気調和装置と調湿装置の暖房運転時の制御例を説明する図である。
【
図5】
図1の空気調和装置と調湿装置の暖房運転時の別の制御例を説明する図である。
【
図6】
図1の空気調和装置と調湿装置の冷房運転時の制御例を説明する図である。
【
図7】
図1の空気調和装置と調湿装置の冷房運転時の別の制御例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の概要を説明する。本実施例は、室内の温度及び湿度を調節する空調システムに関する。空調システムは、空気調和装置を有する。空調システムでは、室内の湿度を低下させたい場合、空気調和装置により温度を低下させる。しかしながら、測定温度がユーザ設定温度に近づくと空気調和装置による空気の冷却がなされなくなるので、湿度が低下しにくくなる。
【0011】
本実施例では、空気調和装置が冷房運転を行う際、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して空気調和装置による空気の冷却時間を長くする。
【0012】
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0013】
図1は、実施例の空調システム100の構成を示す。空調システム100は、屋内空間(「所定の空間」または「室内」ともいう)の空気を循環させる際に、屋内空間からの空気に対して必要に応じて冷却処理(除湿処理)または加熱処理を行うとともに、内部を流通する空気に対して微細化された水を含ませる装置である。本実施例では、微細化された水とともに空気浄化を行う成分(以下、「空気浄化成分」という)を空気に含ませる例を説明するが、空気浄化成分を含ませなくてもよい。空気浄化成分の一例として、次亜塩素酸を用いることができる。空調システム100は、内部を流通した空気浄化成分を含む空気を屋内空間に供給することで、屋内空間の殺菌と脱臭を行う。
【0014】
空調システム100は、調湿装置10、空気調和装置50、空気調和装置56、室外機60、ダクト64、操作装置70、操作装置76、制御装置80、及び制御装置86を備える。ここでは、調湿装置10、空気調和装置50、空気調和装置56、操作装置70、操作装置76、制御装置80、及び制御装置86のそれぞれの数を1台としているが、これに限らない。これらの数は、それぞれ1台以上であってよく、屋内空間の体積などに応じて実験あるいはシミュレーションにより適宜決定できる。空気調和装置50及び調湿装置10の数は、同数である。空気調和装置50の数と空気調和装置56の数との比は、必要な加湿量などに応じて実験あるいはシミュレーションにより適宜決定できる。
【0015】
空気調和装置50及び空気調和装置56は、共通の室外機60に接続される。室外機60は、屋外空間に設置される室外ユニットである。室外機60には、一般的な構成のものを用いるので、詳細な説明は省略する。
【0016】
空気調和装置56は、例えば、屋内空間の天井等に埋め込まれた4方向カセットエアコンである。空気調和装置56は、調湿装置10に接続されておらず、屋内空間から吸い込んだ空気に対して空調制御を実行し、温度調節した空気を屋内空間に送出する。空気調和装置56は、湿度の調節よりも温度の調節を優先する。空気調和装置56は、「空調専用装置」とも呼べる。
【0017】
空気調和装置56には制御装置86が接続され、制御装置86には操作装置76が接続される。操作装置76は、ユーザが操作可能なユーザインターフェースを備え、ユーザから第1ユーザ設定温度を受けつける。操作装置76は、図示しない温度センサを備え、温度センサは、屋内空間の空気の温度を測定する。操作装置76は、第1ユーザ設定温度及び第1測定温度を制御装置86に送信する。
【0018】
制御装置86は、例えば、空気調和装置56と同一の筐体内に配置される。制御装置86は、操作装置76から送信された第1ユーザ設定温度と第1測定温度とに基づいて、空気調和装置56による空気の加熱または冷却を制御する。
【0019】
空気調和装置56は、制御装置86の制御により、第1ユーザ設定温度に第1測定温度が近づくように空調制御を実行する。
【0020】
空気調和装置50は、例えば、屋内空間の天井等に埋め込まれた4方向カセットエアコンである。空気調和装置50は、ダクト64により調湿装置10に接続されており、屋内空間から吸い込んだ空気に対して空調制御を実行し、温度調節した空気の一部を屋内空間に送出し、温度調節した空気の残りをダクト64を通過させて調湿装置10に送出する。空気調和装置50は、温度の調節よりも湿度の調節を優先する。空気調和装置50は、「調湿兼用装置」とも呼べる。空気調和装置50は、温度調節した空気の一部を屋内空間に送出せず、温度調節した空気の全部を調湿装置10に送出してもよい。
【0021】
調湿装置10と空気調和装置50には制御装置80が接続され、制御装置80には操作装置70が接続される。操作装置70は、ユーザが操作可能なユーザインターフェースを備え、ユーザから第2ユーザ設定温度及びユーザ設定湿度を受けつける。操作装置70は、図示しない温湿度センサを備え、温湿度センサは、屋内空間の空気の温度及び湿度を測定する。操作装置70は、第2ユーザ設定温度、ユーザ設定湿度、第2測定温度、及び測定湿度を制御装置80に送信する。
【0022】
制御装置80は、例えば、調湿装置10と同一の筐体内に配置される。制御装置80は、調温制御部82及び調湿制御部84を有する。調温制御部82は、目標温度と、第2ユーザ設定温度と、第2測定温度とに基づいて、空気調和装置50による空気の加熱または冷却を制御する。後述するように、目標温度として、第2ユーザ設定温度が設定されたり、第2測定温度に応じた値が設定されたりする。
【0023】
調湿制御部84は、ユーザ設定湿度である目標湿度と、測定湿度とに基づいて、暖房運転時及び冷房運転時に調湿装置10による加湿を制御し、冷房運転時に空気調和装置50による除湿も制御する。
【0024】
操作装置70と操作装置76の機能を1台の操作装置70に持たせてもよい。この場合、第1ユーザ設定温度と第2ユーザ設定温度は同一であってよく、第1測定温度と第2測定温度は同一の温湿度センサで測定された同一値であってよい。
【0025】
空気調和装置50は、制御装置80の制御により、目標温度に第2測定温度が近づくように空調制御を実行する。制御装置80は、暖房運転時に第2測定温度が目標温度よりも低い場合に、第2測定温度と目標温度との差異が大きくなるほど、要求レベルを増加させ、空気調和装置50による加熱の程度を増加させる。暖房運転時には、要求レベルは、空気を加熱する能力を表し、要求レベルが高いほど、空気調和装置50の単位時間当たりの供給熱量が多くなり、加熱能力が高くなる。
【0026】
制御装置80は、冷房運転時に第2測定温度が目標温度よりも高い場合に、第2測定温度と目標温度との差異が大きくなるほど、要求レベルを増加させ、空気調和装置50による冷却の程度を増加させる。冷房運転時には、要求レベルは、空気を冷却する能力を表し、要求レベルが高いほど、空気調和装置50の単位時間当たりの吸熱量が多くなり、冷却能力が高くなる。
【0027】
図2は、
図1の空気調和装置50の初期要求レベルと温度差の関係の一例を示す。初期要求レベルは、空気調和装置50がサーモオフからサーモオンになったときに制御装置80が設定する要求レベルである。
【0028】
冷房運転時には、「温度差ΔTs=第2測定温度-目標温度」である。
暖房運転時には、「温度差ΔTs=目標温度-第2測定温度」である。
【0029】
図3(a)は、
図1の空気調和装置50の冷房運転時の要求レベル増減値と温度差の関係の一例を示し、
図3(b)は、
図1の空気調和装置50の暖房運転時の要求レベル増減値と温度差の関係の一例を示す。
【0030】
制御装置80は、サーモオンの間、例えば1分などの所定の時間が経過する毎に、
図3(a)または
図3(b)の関係に従って温度差に基づいて要求レベル増減値を算出し、算出した要求レベル増減値を直前の要求レベルに加算し、得られた要求レベルを現在の要求レベルとする。例えば、要求レベルの最小値は「1」であり、最大値は「30」である。
【0031】
図2、
図3(a)、
図3(b)の数値は、実験やシミュレーションにより適宜定めることができる。
【0032】
調湿装置10は、制御装置80の制御により、測定湿度が目標湿度に近づくように、空気調和装置50で空調制御された空気に対して空気浄化成分として次亜塩素酸を含む水を噴霧して調湿制御を実行する。調湿装置10は、空気浄化装置とも呼べる。
【0033】
調湿装置10は、送風部12及び加湿浄化部14を備える。送風部12は、調湿兼用装置により加熱または冷却された空気を調湿装置10の内部に送風する。
【0034】
加湿浄化部14は、加湿により次亜塩素酸を供給する。加湿浄化部14は、次亜塩素酸水を遠心破砕により微細化して空気中に放出する。加湿浄化部14は、図示しない加湿モータを用いて図示しない遠心破砕ユニットを回転させ、貯水されている次亜塩素酸水を遠心力で吸い上げて周囲(遠心方向)に飛散・衝突・破砕させ、通過する空気に水分を含ませる遠心破砕式の構成をとる。
【0035】
以下、暖房運転、冷房運転の順に、空調システム100の動作を説明する。受け付けられた第1ユーザ設定温度と第2ユーザ設定温度とが等しいと想定し、これらをユーザ設定温度と呼ぶ。また、第1測定温度と第2測定温度とが等しいと想定し、これらを測定温度と呼ぶ。
【0036】
(暖房運転)
制御装置80,86は、暖房運転の際、調湿装置10による加湿量を増やすために、空気調和装置50の加熱を行う温度範囲を空気調和装置56の加熱を行う温度範囲よりも広くする。
【0037】
制御装置80は、空気調和装置50の加熱制御として、測定湿度が目標湿度以上であるか否かに基づいて加熱の停止の温度を変更する。具体的には、制御装置80は、空気調和装置50の加熱制御として、測定湿度が目標湿度以上の場合、測定温度が、ユーザ設定温度よりも所定の温度だけ高い第一加熱停止温度になると、空気調和装置50による加熱を停止する。制御装置80は、空気調和装置50の加熱制御として、測定湿度が目標湿度未満の場合、測定温度が、第一加熱停止温度よりも所定の温度だけ高い第二加熱停止温度になると、空気調和装置50による加熱を停止する。所定の温度は、実験やシミュレーションにより適宜定めることができ、例えば1℃である。
【0038】
制御装置86は、空気調和装置56の加熱制御として、測定湿度に関わらず加熱の停止の温度を変更しない。具体的には、制御装置86は、空気調和装置56の加熱制御として、測定湿度が目標湿度以上であるか否かに関わらず、測定温度が第一加熱停止温度になると、空気調和装置56による加熱を停止する。なお、加熱の停止の温度は、ユーザ設定温度をもとに定められるため、ユーザによりユーザ設定温度が変更された場合、ユーザ設定温度に応じて加熱の停止の温度も変更される。
【0039】
従って、空気調和装置50は、第二加熱停止温度まで加熱可能であり、空気調和装置56は、第一加熱停止温度まで加熱可能であり、既述のように、空気調和装置50の加熱を行う温度範囲は、空気調和装置56の加熱を行う温度範囲よりも広い。
【0040】
空調システム100が暖房運転を開始すると、空気調和装置56及び空気調和装置50が空気を加熱し、調湿装置10が空気浄化成分を含む水を噴霧して加湿する。空気調和装置56で加熱された空気は、調湿装置10で加湿されずに屋内空間に送出されるので、加湿に伴う屋内空間の温度低下を低減でき、屋内空間の温度の上昇を補助できる。
【0041】
その後、測定温度が第一加熱停止温度に達すると、空気調和装置56は加熱を停止し、このとき測定湿度が目標湿度に達していれば、空気調和装置50も加熱を停止する。
【0042】
一方、測定温度が第一加熱停止温度に達したことで空気調和装置56が加熱を停止しても、このとき測定湿度が目標湿度に達していなければ、空気調和装置50は、測定温度が第二加熱停止温度に達するまで加熱を継続する。第一加熱停止温度より高い第二加熱停止温度まで加熱を続けるため、湿度をさらに上昇させることができ、目標湿度に近づけることができる。
【0043】
空気調和装置50の暖房運転について、
図4,5を参照して説明する。
図4は、
図1の空気調和装置50と調湿装置10の暖房運転時の制御例を説明する図である。この例では、ユーザ設定温度が25℃であり、ユーザ設定湿度である目標湿度が50%である。経過時間0分では、測定温度はユーザ設定温度より低い20℃であり、測定湿度は目標湿度より低い30%である。その後、加熱と加湿により、経過時間20分で測定温度がユーザ設定温度を超え、測定湿度が目標湿度に達する。
【0044】
空気調和装置50が暖房運転を行う際、調湿制御部84は、測定湿度が目標湿度以上になるまで調湿装置10により加湿を行い、調温制御部82は、測定湿度が目標湿度未満の場合には測定湿度が目標湿度以上の場合に比較して空気調和装置50による加熱時間を長くする。
【0045】
調温制御部82は、空気調和装置50の単位時間当たりの供給熱量の減少により加熱時間を長くする。具体的には、調温制御部82は、要求レベルを下げることで、空気調和装置50の単位時間当たりの供給熱量を減少させる。
【0046】
調温制御部82は、測定湿度が目標湿度未満の場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して暖房運転を行い、測定温度が目標温度に近づくと、測定温度よりも一定温度だけ低い第一疑似設定温度を目標温度に設定することで空気調和装置50の単位時間当たりの供給熱量を減少させて暖房運転を行う。第一疑似設定温度を目標温度に設定する制御は調湿制御と呼べる。一定温度は、例えば、0.5℃である。具体的には、調温制御部82は、測定温度が、ユーザ設定温度である目標温度より2℃低い調湿制御開始温度以上になると、第一疑似設定温度を目標温度に設定する。調温制御部82は、測定温度の上昇に応じて第一疑似設定温度を上昇させ、第一疑似設定温度の上限値をユーザ設定温度とする。
【0047】
第一疑似設定温度は、空気調和装置50による加熱が停止しない温度である。加熱の停止とは、空気調和装置50のサーモオフを意味する。サーモオフでは、要求レベルはゼロである。サーモオフ後の余熱での加熱も加熱が停止しているとみなす。空気調和装置50は測定温度が目標温度よりも所定の温度以上(本例では1℃)高くなると加熱を停止するので、調温制御部82は加熱を停止しないように第一疑似設定温度の制御を行う。
【0048】
図4の経過時間0分から3分まで、目標温度は25℃であり、要求レベルは最大の「30」に設定されて空気が加熱され、測定温度が増加する。経過時間0分以降、加熱された空気に対して加湿もなされる。経過時間4分で測定温度が目標温度より2℃低い23℃に達することで、測定温度より0.5℃低い22.5℃の第一疑似設定温度が目標温度に設定される。これにより、
図3(b)の関係をもとに、要求レベルは「30」-「2」=「28」に設定され、加熱能力が低くなる。経過時間5分から19分までも同様に制御され、要求レベルは徐々に低下して「1」になる。経過時間4分から19分までの間、経過時間3分までと比較して測定温度の上昇速度が遅くなり、加熱を停止することなく加湿を継続できる。そのため、湿度を増加させることができ、経過時間20分で測定湿度が目標湿度の50%に達する。
【0049】
また、経過時間16分で測定温度がユーザ設定温度に達している。調温制御部82は、測定湿度が目標湿度未満の場合には測定湿度が目標湿度以上の場合に比較して空気調和装置50によるユーザ設定温度の達成までの加熱時間を長くするとも言える。
【0050】
空気調和装置50は、測定湿度が目標湿度以上の場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して暖房運転を行う。経過時間20分で測定湿度が50%に達したため、これ以降、経過時間29分までは、目標温度として25℃が設定される。
【0051】
調温制御部82は、測定温度が、目標温度よりも所定の温度高くなると、空気調和装置50による加熱を停止する。調温制御部82は、測定湿度が目標湿度以上の場合、測定温度が、目標温度であるユーザ設定温度よりも所定の温度高い第一加熱停止温度になると、加熱を停止する。経過時間22分では、測定湿度が50%であり、測定温度が第一加熱停止温度の26℃になったため、加熱が停止され、サーモオフになる。
【0052】
調温制御部82は、空気調和装置50による加熱を停止している状態で、測定温度がユーザ設定温度よりも所定の温度低い温度である加熱再開温度になると、空気調和装置50による加熱を再開する。加熱を再開するとは、サーモオンを意味する。
【0053】
経過時間23分以降、加熱が停止されているため、測定温度は徐々に低下し、経過時間26分で測定温度が加熱再開温度の24℃になったため、加熱が再開される。これにより、温度を維持できる。
【0054】
経過時間30分で測定湿度が45%に下がり、測定温度が調湿制御開始温度の23℃以上であるため、調温制御部82は、第一疑似設定温度を目標温度に設定して、調湿制御を再開する。これにより、湿度を増加させやすくなる。
【0055】
調温制御部82は、目標温度と目標湿度の達成のために、上述した加熱を再開する処理と加熱を停止する処理を繰り返す。これにより、温度と湿度を安定させることができる。
【0056】
図5は、
図1の空気調和装置50と調湿装置10の暖房運転時の別の制御例を説明する図である。ユーザ設定温度と目標湿度、及び、経過時間0分の測定温度と測定湿度は、
図4と同一である。
図5は、加熱と加湿により、測定温度はユーザ設定温度以上に上昇するが、測定湿度が目標湿度に達しない例を示す。
【0057】
経過時間0分から20分までの測定温度と目標温度は、
図4の例と同一であるが、測定湿度は目標湿度未満である。
【0058】
調温制御部82は、測定湿度が目標湿度未満の場合、測定温度がユーザ設定温度よりも高い温度に到達した後、ユーザ設定温度よりも高く測定温度よりも低い第二疑似設定温度を目標温度に設定して暖房運転を行う。調温制御部82は、測定温度の上昇に応じて第二疑似設定温度を上昇させる。第二疑似設定温度は、空気調和装置50による加熱が停止しない温度である。
【0059】
経過時間21分では、25.5℃の第二疑似設定温度が目標温度に設定される。これにより、要求レベルは「1」を維持する。
【0060】
経過時間22分でも同様に制御され、要求レベルは「1」を維持する。よって、経過時間21分から22分までの間、最小の加熱能力で継続して加熱し、加熱を停止することなく加湿を継続できる。そのため、湿度を増加させることができる。
【0061】
調温制御部82は、測定湿度が目標湿度未満の場合、測定温度が第一加熱停止温度よりも高い第二加熱停止温度になると、目標温度にユーザ設定温度を設定し加熱を停止することで、測定湿度が目標湿度未満の場合には測定湿度が目標湿度以上の場合に比較して加熱を停止するまでの時間を長くする。経過時間23分では、測定湿度が35%であり、測定温度が第二加熱停止温度の27℃になったため、目標温度にユーザ設定温度である25℃が設定され、測定温度が目標温度よりも所定の温度以上高くなることで加熱が停止され、サーモオフになる。これにより、温度がユーザ設定温度より高くなりすぎることを抑制できる。
【0062】
(冷房運転)
制御装置80,86は、冷房運転の際、空気調和装置50による除湿量を増やすために、空気調和装置50の冷却を行う温度範囲を空気調和装置56の冷却を行う温度範囲よりも広くする。
【0063】
制御装置80は、空気調和装置50の冷却制御として、測定湿度が目標湿度以上であるか否かに基づいて冷却の停止の温度を変更する。具体的には、制御装置80は、空気調和装置50の冷却制御として、測定湿度が目標湿度以下の場合、測定温度が、ユーザ設定温度よりも所定の温度だけ低い第一冷却停止温度になると、空気調和装置50による冷却を停止する。制御装置80は、空気調和装置50の冷却制御として、測定湿度が目標湿度より高い場合、測定温度が、第一冷却停止温度よりも所定の温度だけ低い第二冷却停止温度になると、空気調和装置50による冷却を停止する。
【0064】
制御装置86は、空気調和装置56の冷却制御として、測定湿度に関わらず冷却の停止の温度を変更しない。具体的には、制御装置86は、空気調和装置56の冷却制御として、測定湿度が目標湿度以下であるか否かに関わらず、測定温度が第一冷却停止温度になると、空気調和装置56による冷却を停止する。なお、冷却の停止の温度は、ユーザ設定温度をもとに定められるため、ユーザによりユーザ設定温度が変更された場合、ユーザ設定温度に応じて冷却の停止の温度も変更される。
【0065】
従って、空気調和装置50は、第二冷却停止温度まで冷却可能であり、空気調和装置56は、第一冷却停止温度まで加熱可能であり、既述のように、空気調和装置50の冷却を行う温度範囲は、空気調和装置56の冷却を行う温度範囲よりも広い。
【0066】
空調システム100が冷房運転を開始すると、空気調和装置56及び空気調和装置50が空気を冷却し、調湿装置10が暖房運転よりも少ない噴霧量で加湿する。空気調和装置56で冷却された空気は、屋内空間に直接送出されるので、屋内空間の温度の低下を補助できる。
【0067】
その後、測定温度が第一冷却停止温度に達すると、空気調和装置56は冷却を停止し、このとき測定湿度が目標湿度に達していれば、空気調和装置50も冷却を停止する。
【0068】
一方、測定温度が第一冷却停止温度に達したことで空気調和装置56が冷却を停止しても、このとき測定湿度が目標湿度に達していなければ、空気調和装置50は、測定温度が第二冷却停止温度に達するまで冷却を継続する。第一冷却停止温度より低い第二冷却停止温度まで冷却を続けるため、湿度をさらに低下させることができ、目標湿度に近づけることができる。
【0069】
空気調和装置50の冷房運転について、
図6,7を参照して説明する。
図6は、
図1の空気調和装置50と調湿装置10の冷房運転時の制御例を説明する図である。この例では、ユーザ設定温度が25℃であり、ユーザ設定湿度である目標湿度が50%である。経過時間0分では、測定温度はユーザ設定温度より高い29℃であり、測定湿度は目標湿度より高い70%である。その後、冷却と除湿により、経過時間30分で測定温度がユーザ設定温度になり、測定湿度が目標湿度に達する。
【0070】
空気調和装置50が冷房運転を行う際、調湿制御部84は、測定湿度が目標湿度以下になるまで空気調和装置50により除湿を行い、調温制御部82は、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して空気調和装置50による冷却時間を長くする。
【0071】
調温制御部82は、空気調和装置50の単位時間当たりの吸熱量の減少により冷却時間を長くする。具体的には、調温制御部82は、要求レベルを下げることで、空気調和装置50の単位時間当たりの吸熱量を減少させる。
【0072】
調温制御部82は、測定湿度が目標湿度より高い場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して冷房運転を行い、測定温度が目標温度に近づくと、測定温度よりも一定温度だけ高い第一疑似設定温度を目標温度に設定することで空気調和装置50の単位時間当たりの吸熱量を減少させて冷房運転を行う。具体的には、調温制御部82は、測定温度が、ユーザ設定温度である目標温度より2℃高い調湿制御開始温度以下になると、第一疑似設定温度を目標温度に設定する。調温制御部82は、測定温度の低下に応じて第一疑似設定温度を低下させ、第一疑似設定温度の下限値をユーザ設定温度とする。
【0073】
第一疑似設定温度は、空気調和装置50による冷却が停止しない温度である。冷却の停止とは、空気調和装置50のサーモオフを意味する。サーモオフでは、要求レベルはゼロである。サーモオフ後の余熱での冷却も冷却が停止しているとみなす。空気調和装置50は測定温度が目標温度よりも所定の温度以上(本例では1℃)低くなると冷却を停止するので、調温制御部82は冷却を停止しないように第一疑似設定温度の制御を行う。
【0074】
図6の経過時間0分から3分まで、目標温度は25℃であり、要求レベルは最大の「30」に設定されて空気が冷却され、測定温度が低下する。経過時間4分で測定温度が目標温度より2℃高い27℃に達することで、測定温度より0.5℃高い27.5℃の第一疑似設定温度が目標温度に設定される。これにより、
図3(a)の関係をもとに、要求レベルは「30」-「1」=「29」に設定され、冷却能力が低くなる。経過時間5分から29分までも同様に制御され、要求レベルは徐々に低下する。経過時間4分から29分までの間、経過時間3分までと比較して測定温度の低下速度が遅くなり、冷却を停止することなく除湿を継続できる。そのため、湿度を低下させることができ、経過時間30分で測定湿度が目標湿度の50%に達する。
【0075】
また、経過時間29分で測定温度がユーザ設定温度に達している。調温制御部82は、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して空気調和装置50によるユーザ設定温度の達成までの冷却時間を長くするとも言える。
【0076】
調温制御部82は、測定湿度が目標湿度以下の場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して冷房運転を行う。経過時間30分で測定湿度が50%に達したため、これ以降、経過時間44分までは、目標温度として25℃が設定される。
【0077】
空気調和装置50は、測定温度が、目標温度よりも所定の温度低くなると、空気調和装置50による冷却を停止する。調温制御部82は、測定湿度が目標湿度以下の場合、測定温度が、目標温度であるユーザ設定温度よりも所定の温度低い第一冷却停止温度になると、冷却を停止する。経過時間36分では、測定湿度が50%であり、測定温度が第一加熱停止温度の24℃になったため、冷却が停止され、サーモオフになる。
【0078】
調温制御部82は、空気調和装置50による冷却を停止している状態で、測定温度がユーザ設定温度よりも所定の温度高い温度である冷却再開温度になると、空気調和装置50による冷却を再開する。冷却を再開するとは、サーモオンを意味する。
【0079】
経過時間36分以降、冷却が停止されているため、測定温度は徐々に上昇し、経過時間40分で測定温度が冷却再開温度の26℃になったため、冷却が再開される。これにより、温度を維持できる。
【0080】
経過時間45分で測定湿度が55%に増加し、測定温度が調湿制御開始温度の27℃以下であるため、調温制御部82は、第一疑似設定温度を目標温度に設定して、調湿制御を再開する。これにより、湿度を低下させやすくなる。
【0081】
調温制御部82は、目標温度と目標湿度の達成のために、上述した冷却を再開する処理と冷却を停止する処理を繰り返す。これにより、温度と湿度を安定させることができる。
【0082】
図7は、
図1の空気調和装置50と調湿装置10の冷房運転時の別の制御例を説明する図である。ユーザ設定温度と目標湿度、及び、経過時間0分の測定温度と測定湿度は、
図6と同一である。
図7は、冷却と除湿により、測定温度はユーザ設定温度以下に低下するが、測定湿度が目標湿度に達しない例を示す。
【0083】
経過時間0分から30分までの測定温度と目標温度は、
図6の例と同一であるが、測定湿度は目標湿度未満である。
【0084】
調温制御部82は、測定湿度が目標湿度より高い場合、測定温度がユーザ設定温度よりも低い温度に到達した後、ユーザ設定温度よりも低く測定温度よりも高い第二疑似設定温度を目標温度に設定して冷房運転を行う。調温制御部82は、測定温度の低下に応じて第二疑似設定温度を低下させる。第二疑似設定温度は、空気調和装置50による冷却が停止しない温度である。
【0085】
経過時間34分では、24.5℃の第二疑似設定温度が目標温度に設定される。これにより、要求レベルは「1」を維持する。
【0086】
経過時間35分でも同様に制御され、要求レベルは「1」を維持する。よって、経過時間34分から35分までの間、最小の冷却能力で継続して冷却し、冷却を停止することなく除湿を継続できる。そのため、湿度を低下させることができる。
【0087】
調温制御部82は、測定湿度が目標湿度より高い場合、測定温度が第一冷却停止温度よりも低い第二冷却停止温度になると、目標温度にユーザ設定温度を設定し冷却を停止することで、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して冷却を停止するまでの時間を長くする。経過時間36分では、測定湿度が55%であり、測定温度が第二加熱停止温度の23℃になったため、目標温度にユーザ設定温度である25℃が設定され、測定温度が目標温度よりも所定の温度以上低くなることで冷却が停止され、サーモオフになる。これにより、温度がユーザ設定温度より低くなりすぎることを抑制できる。
【0088】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0089】
本実施例によれば、制御装置80,86は、冷房運転の際、空気調和装置50の冷却を行う温度範囲を空気調和装置56の冷却を行う温度範囲よりも広くするので、空気調和装置50による冷却を空気調和装置56による冷却よりも長く維持できる。冷却が維持されるので、湿度を低下させることができる。
【0090】
また、制御装置80,86は、暖房運転の際、空気調和装置50の加熱を行う温度範囲を空気調和装置56の加熱を行う温度範囲よりも広くするので、空気調和装置50による加熱を空気調和装置56による加熱よりも長く維持できる。加熱が維持されるので、浄化された水による湿度を上昇させることができる。
【0091】
また、空気調和装置50が冷房運転を行う際、調温制御部82は、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して空気調和装置50による冷却時間を長くするので、湿度を低下させることができる。
【0092】
さらに、空気調和装置50が暖房運転を行う際、調温制御部82は、測定湿度が目標湿度未満の場合には測定湿度が目標湿度以上の場合に比較して空気調和装置50による加熱時間を長くするので、浄化された水による湿度を上昇させることができる。
【0093】
以上から、湿度を目標湿度により近づけることができる。よって、温度制御と調湿制御を両立できる。
【0094】
また、調湿装置10に接続されておらず、湿度の調節よりも温度の調節を優先する空気調和装置56により、屋内空間の温度の調節を補助できる。
【0095】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0096】
例えば、空調システム100は、空調専用装置である空気調和装置56、制御装置86、及び操作装置76を備えなくてもよい。また、空気調和装置50,56は、冷房機能を有さず、暖房機能のみを有してもよい。また、空気調和装置50,56は、暖房機能を有さず、冷房機能のみを有してもよい。空気調和装置50,56が冷房機能のみを有する場合、空調システム100は、調湿装置10を備えなくてもよい。これらの変形例によれば、空調システム100の構成の自由度を向上できる。
【0097】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の空調システム(100)は、所定の空間を空調する空調システム(100)であって、空気調和装置(50)と、空気調和装置(50)を制御する制御装置(80)と、を備える。制御装置(80)は、目標温度と、ユーザ設定温度と、空間の測定温度と、に基づいて空気調和装置(50)による冷却を制御する調温制御部(82)と、目標湿度と、空間の測定湿度と、に基づいて空気調和装置(50)による除湿を制御する調湿制御部(84)と、を備える。空気調和装置(50)が冷房運転を行う際、調湿制御部(84)は、測定湿度が目標湿度以下になるまで除湿を行い、調温制御部(82)は、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して空気調和装置(50)による冷却時間を長くする。
【0098】
調温制御部(82)は、空気調和装置(50)の単位時間当たりの吸熱量の減少により冷却時間を長くしてもよい。
【0099】
調温制御部(82)は、測定湿度が目標湿度以下の場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して冷房運転を行い、測定湿度が目標湿度より高い場合、目標温度としてユーザ設定温度を設定して冷房運転を行い、測定温度が目標温度に近づくと、測定温度よりも高い第一疑似設定温度を目標温度に設定することで空気調和装置(50)の単位時間当たりの吸熱量を減少させて冷房運転を行ってもよい。
【0100】
調温制御部(82)は、測定温度の低下に応じて第一疑似設定温度を低下させ、第一疑似設定温度の下限値をユーザ設定温度としてもよい。
【0101】
第一疑似設定温度は、空気調和装置(50)による冷却が停止しない温度であってもよい。
【0102】
調温制御部(82)は、測定湿度が目標湿度より高い場合、ユーザ設定温度よりも低い第二疑似設定温度を目標温度に設定して冷房運転を行い、測定湿度が目標湿度以下の場合、ユーザ設定温度を目標温度に設定して冷房運転を行ってもよい。
【0103】
調温制御部(82)は、測定湿度が目標湿度より高い場合、測定温度がユーザ設定温度よりも低い温度に到達した後、ユーザ設定温度よりも低く測定温度よりも高い第二疑似設定温度を目標温度に設定して冷房運転を行い、測定湿度が目標湿度以下の場合、ユーザ設定温度を目標温度に設定して冷房運転を行ってもよい。
【0104】
調温制御部(82)は、測定温度の低下に応じて第二疑似設定温度を低下させてもよい。
【0105】
第二疑似設定温度は、空気調和装置(50)による冷却が停止しない温度であってもよい。
【0106】
調温制御部(82)は、測定温度が、目標温度よりも所定の温度低くなると、空気調和装置(50)による冷却を停止し、測定湿度が目標湿度以下の場合、測定温度が、目標温度であるユーザ設定温度よりも所定の温度低い第一冷却停止温度になると、冷却を停止し、測定湿度が目標湿度より高い場合、測定温度が第一冷却停止温度よりも低い第二冷却停止温度になると、目標温度にユーザ設定温度を設定し冷却を停止することで、測定湿度が目標湿度より高い場合には測定湿度が目標湿度以下の場合に比較して冷却を停止するまでの時間を長くしてもよい。
【0107】
調温制御部(82)は、空気調和装置(50)による冷却を停止している状態で、測定温度がユーザ設定温度よりも高い温度である冷却再開温度になると、空気調和装置(50)による冷却を再開してもよい。
【0108】
調温制御部(82)は、目標温度と目標湿度の達成のために冷却を再開する処理と冷却を停止する処理を繰り返してもよい。
【0109】
空気調和装置(50)は、冷却により除湿機能を提供してもよい。
【0110】
加湿により次亜塩素酸を供給する加湿浄化部(14)をさらに備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示に係る空調システムは、対象空間の空気に対して空調制御と調湿制御を実行するシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0112】
10 調湿装置、 12 送風部、 14 加湿浄化部、 50 空気調和装置、 56 空気調和装置、 60 室外機、 64 ダクト、 70 操作装置、 76 操作装置、 80 制御装置、 82 調温制御部、 84 調湿制御部、 86 制御装置、 100 空調システム。