(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231117BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01S5/024
(21)【出願番号】P 2022503246
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021004885
(87)【国際公開番号】W WO2021172012
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020031833
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】菱田 光起
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138824(JP,A)
【文献】特開2011-216822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0133928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0234451(US,A1)
【文献】特開平10-303242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0026605(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0301606(US,A1)
【文献】特開2014-209614(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103536(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/044698(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/34
H01L 23/48
H01S 5/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の電極を含む半導体レーザ素子と、
前記第1の電極上に配置された導電部と、
前記導電部を介して前記第1の電極と電気的に接続された電極ブロックと、を含む半導体レーザ装置であって、
前記導電部は、前記第1の電極と接触するように配置された複数の金属部材と、前記複数の金属部材の間を埋めるように配置された導電層とを含み、
前記金属部材は金属ワイヤ部を含み、
前記金属ワイヤ部の一部が前記導電層から突出しており、
前記金属ワイヤ部の前記一部は、前記電極ブロックに向かって凸の円弧状の形状を有する湾曲部を含む、半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記金属ワイヤ部は、前記電極ブロックに向かって凸のアーチ状の形状を有する、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記導電層は金属粒子を含む、請求項1または2に記載の半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザ素子を含む半導体装置において、半導体素子に流れる電流が大きくなっており、それに伴って半導体素子の発熱量が大きくなっている。例えば、レーザ加工に用いる高出力の半導体レーザ装置は、発熱量が大きい。半導体レーザ素子の性能は高温において低下し、レーザ出力の低下などをもたらす。そのため、高出力の半導体装置は、半導体レーザ素子を冷却するための構造を有する。そのような構造を有する半導体装置が、従来から提案されている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-086883号
【文献】国際公開第2016/103536号
【文献】国際公開第2019/009172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、半導体レーザ装置に関して、簡単な構造で放熱性を高めることができる技術が求められている。このような状況において、本開示は、高い放熱性を有する半導体レーザ装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一局面は、半導体レーザ装置に関する。当該半導体レーザ装置は、第1および第2の電極を含む半導体レーザ素子と、前記第1の電極上に配置された導電部と、前記導電部を介して前記第1の電極と電気的に接続された電極ブロックと、を含む半導体レーザ装置であって、前記導電部は、前記第1の電極と接触するように配置された複数の金属部材と、前記複数の金属部材の間を埋めるように配置された導電層とを含み、前記金属部材は金属ワイヤ部を含み、前記金属ワイヤ部の一部が前記導電層から突出しており、前記金属ワイヤ部の前記一部は、前記電極ブロックに向かって凸の円弧状の形状を有する湾曲部を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、高い放熱性を有する半導体レーザ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の半導体レーザ装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、導電部を第1の電極ブロック側から見たときの上面図を模式的に示す。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aの線IIB-IIBにおける半導体レーザ素子および導電部の断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の半導体レーザ装置の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0009】
(半導体レーザ装置)
本開示の半導体レーザ装置は、第1および第2の電極を含む半導体レーザ素子と、第1の電極上に配置された導電部と、導電部を介して第1の電極と電気的に接続された電極ブロックと、を含む。以下では、それらについて説明する。
【0010】
(半導体レーザ素子)
半導体レーザ素子に特に限定はなく、公知の半導体レーザ素子を用いてもよい。半導体レーザ素子は、全体として、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有する板状の形状を有してもよい。例えば、半導体レーザ素子は、平面形状が矩形状である板状の形状を有してもよい。第1の面に第1の電極が形成され、第2の面に第2の電極が形成されてもよい。
【0011】
半導体レーザ素子は、第1の面と第2の面とをつなぐ側面に出射端面を有してもよい。半導体レーザ素子は、複数の出射端面(レーザ光の出射端面)を有してもよい。複数の出射端面は、半導体レーザ素子の側面に、当該側面の長手方向に沿って一列に並ぶように配置されてもよい。そのような半導体レーザ素子は従来から提案されており、それらの公知の半導体レーザ素子を用いてもよい。例えば、DDL(Direct Diode Laser)と呼ばれる半導体レーザに関して用いられている半導体レーザ素子を用いてもよい。そのような半導体レーザ素子において、第1および第2の電極はそれぞれ、2次元状に広がった形状を有してもよい。例えば、第1および第2の電極はそれぞれ、矩形状の平面形状を有してもよい。一例の半導体レーザ素子は、ストライプ状に並ぶ複数の共振器を含む。
【0012】
(電極ブロック)
電極ブロックは、導電性を有するブロックである。電極ブロックには、例えば、金属からなるブロックを用いることができる。電極ブロックの一例は、銅ブロック(銅からなるブロック)である。銅ブロックの表面には、銅以外の金属がメッキされていてもよく、例えば、ニッケルと金とがこの順にメッキされていてもよい。電極ブロックは、第1の電極に電流を流すための電極配線の一部、および、半導体レーザ素子で発生する熱を放熱するための部材の一部として機能しうる。
【0013】
なお、半導体レーザ装置は通常、2つの電極ブロック(第1および第2の電極ブロック)を含む。第1の電極ブロックは、導電部を介して半導体レーザ素子の第1の電極と電気的に接続される。第2の電極ブロックは、半導体レーザ素子の第2の電極と電気的に接続される。
【0014】
(導電部)
導電部は、第1の電極と接触するように配置された複数の金属部材と、複数の金属部材の間を埋めるように配置された導電層とを含む。導電層は、第1の電極と接触するように形成される。
【0015】
金属部材は金属ワイヤ部を含む。金属ワイヤ部の一部は、導電層から突出している。以下では、導電層から突出している当該一部を、「突出部(P)」と称する場合がある。金属部材の材料の例には、金、銅、アルミニウムなどが含まれる。金属部材の材料の好ましい一例は金である。なお、金属部材の材料には、微量の添加剤が添加されていてもよい。金属部材の材料には、ワイヤボンディングに用いられる公知の材料を用いてもよい。
【0016】
金属ワイヤ部の上記一部(突出部(P))は、電極ブロックに向かって凸の円弧状の形状を有する湾曲部を含む。この構成によれば、湾曲部が電極ブロックを特に柔軟に受け止めることができる。
【0017】
金属部材は、後述するように、ワイヤボンディングに用いられるワイヤボンダを用いて形成してもよい。それによって、金属ワイヤ部を含む金属部材を簡単に形成できる。また、ワイヤボンダを用いることによって、後述する形状を有する金属ワイヤ部を簡単に形成できる。
【0018】
金属ワイヤ部の突出部(P)は、電極ブロックを柔軟に受け止める。また、金属ワイヤ部の高さはフレキシブルに調整することが可能である。そのため、極力多くの金属ワイヤ部の突出部(P)を、電極ブロック(または電極ブロック上に形成された接続層)に接触させることができる。その結果、金属部材と電極ブロックとの間の接触抵抗を低減でき、半導体レーザ素子と電極ブロックとの良好な電気的接続を実現できる。さらに、突出部(P)が電極ブロックを柔軟に受け止めることによって、半導体レーザ素子と電極ブロックとの間に働く応力を緩和できる。その結果、半導体レーザ素子に物理的なダメージを与えることを抑制できる。
【0019】
さらに、本開示の半導体レーザ装置では、第1の電極と電極ブロックとの間に導電層が配置されている。この導電層と金属部材とによって、半導体レーザ素子で発生した熱を電極ブロックに効率的に伝えることができる。すなわち、本開示の半導体レーザ装置では、半導体レーザ素子で発生した熱をバンプのみによって電極ブロックに伝える場合と比較して、高い放熱性を実現できる。また、バンプのみによって第1の電極と電極ブロックとを電気的に接続する場合と比較して、導電層を用いることによって、第1の電極と電極ブロックとの間の電気抵抗を低減することが可能である。
【0020】
以上のように、本開示によれば、高い放熱性を有し、半導体レーザ素子への物理的なダメージが少ない半導体レーザ装置が得られる。さらに、本開示によれば、第1の電極と電極ブロックとの間の電気抵抗を低減することが可能である。
【0021】
複数の金属部材は、概ね等間隔で配置されることが好ましい。複数の金属部材は、マトリクス状に配置されてもてもよい。等間隔に配置された複数の金属部材を含む金属部材の列を、ストライプ状に等間隔に並べてもよい。
【0022】
金属部材の面密度は、50~1000個/cm2の範囲(例えば100~300個/cm2の範囲)にあってもよい。この範囲とすることによって、電気的および物理的な接続が特に良好になる。
【0023】
金属部材の平均(算術平均)の高さH(すなわち、第1の電極の表面から金属ワイヤ部の最も高い部分までの距離)は、70μm~300μmの範囲(例えば150μm~200μm)の範囲にあってもよい。この範囲とすることによって、電気的および物理的な接続が特に良好になる。
【0024】
導電層の平均の厚さDは、60μm~250μmの範囲(例えば100μm~150μm)の範囲にあってもよい。金属部材の平均の高さH(μm)は、導電層の平均の厚さD(μm)の1.1~2.0倍の範囲(例えば1.2~1.5倍の範囲)にあってもよい。この範囲とすることによって、導電層から突出している金属ワイヤ部が、電極ブロックを特に柔軟に受け止めることが可能である。なお、導電層の平均の厚さDは、例えば、平均の厚さD=(導電層が形成されている部分の体積)/(導電層が形成されている部分の面積)で求めることができる。ここで、導電層が形成されている部分の体積および面積には、その部分に存在している金属部材の体積および面積も含まれる。
【0025】
金属ワイヤ部は、電極ブロックに向かって凸のアーチ状の形状を有してもよい。一例の金属部材は、第1の電極と接触する第1および第2の基部を含んでもよい。金属ワイヤ部の2つの端部はそれぞれ、第1および第2の基部につながっていてもよい。金属ワイヤ部は、両端がそれぞれ第1の基部と第2の基部とにつながっているアーチ状のワイヤであってもよい。第1および第2の基部はそれぞれ、半球状または円柱状の形状を有してもよい。
【0026】
導電層は、金属粒子を含んでもよい。金属粒子を用いることによって、導電層の熱伝導性および電気伝導性を高めることができる。そのような導電層は、金属ペースト(金属粒子を含むペースト)で形成されてもよく、例えば、金ペースト(金粒子を含むペースト)や銀ペースト(銀粒子を含むペースト)で形成されてもよい。金属ペーストとして、半導体装置の製造に用いられる公知の金属ペーストを用いてもよい。
【0027】
本開示の半導体レーザ装置の製造方法について、特に限定はない。製造方法の一例については、実施形態1において説明する。
【0028】
以下では、本開示の半導体レーザ装置の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の半導体レーザ装置の構成要素には、上述した構成要素を適用できる。以下で説明する一例の半導体レーザ装置の構成要素は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の半導体レーザ装置の構成要素のうち、本開示の半導体レーザ装置に必須ではない構成要素は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0029】
(実施形態1)
実施形態1の半導体レーザ装置100の断面図を、
図1に模式的に示す。半導体レーザ装置100は、半導体レーザ素子110、第1の電極ブロック(上部電極ブロック)121、第2の電極ブロック122、サブマウント123、絶縁層124、および導電部130を含む。
【0030】
半導体レーザ素子110は、複数の出射端面を有してもよい。当該複数の出射端面は、半導体レーザ素子110の側壁の長手方向に沿って一列に並んでいてもよい。
【0031】
半導体レーザ素子110は、導電部130と対向する部分に設けられた第1の電極111(
図2B参照)と、サブマウント123と対向する部分に設けられた第2の電極(図示せず)とを含む。第1の電極111は、導電部130を介して第1の電極ブロック121に電気的に接続されている。第2の電極は、サブマウント123を介して第2の電極ブロック122に電気的に接続されている。第1および第2の電極ブロック121および122は、半導体レーザ素子110に電流を注入するための電源(図示せず)に接続される。この電源によって、半導体レーザ素子110の活性層に電流が注入される。
【0032】
サブマウント123は、導電性および熱伝導性が高い材料で形成される。サブマウント123の熱膨張係数は、半導体レーザ素子110の熱膨張係数と近いことが好ましい。サブマウントに特に限定はなく、半導体レーザ装置に用いられている公知のサブマウントを適用してもよい。サブマウント123は、銅タングステン合金や銅モリブデン合金で形成されてもよい。
【0033】
第2の電極ブロック122とサブマウント123との間には、それらを接続するための導電性を有する接続層が配置されていてもよい。接続層は、例えば、ハンダ層やメッキ層や金属箔層などであってもよい(以下で説明する接続層についても同様である)。同様に、サブマウント123と半導体レーザ素子110との間にはそれらを接続するための接続層が配置されていてもよく、導電部130と第1の電極ブロック121との間にはそれらを接続するための接続層が配置されていてもよい。
【0034】
絶縁層124は、第1の電極ブロック121と第2の電極ブロック122とを絶縁している。絶縁層124は、絶縁性を有する材料で形成される。絶縁層124は、無機絶縁材料(例えば、窒化アルミニウムなどのセラミクス)、および/または、有機絶縁材料(例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂)で形成してもよい。一例の絶縁層124は、ポリイミドや窒化アルミニウムなどを含んでもよい。
【0035】
導電部130を第1の電極ブロック121側から見たときの上面図を、
図2Aに模式的に示す。また、
図2Aの線IIB-IIBにおける半導体レーザ素子110および導電部130の断面図を、
図2Bに模式的に示す。
【0036】
導電部130は、複数の金属部材131と、複数の金属部材131の間を埋めるように配置された導電層132とを含む。複数の金属部材131および導電層132はそれぞれ、半導体レーザ素子110の第1の電極111と接触するように配置されている。
図1に示す一例では、複数の金属部材131はマトリクス状に配置されている。別の観点では、複数の金属部材131は、格子点の位置に配置されている。
【0037】
金属部材131は、第1の電極111と接触しているバンプ状の第1の基部131aと、第1の基部131aから延びる金属ワイヤ部131bとを含む。実施形態1で示す一例では、金属ワイヤ部131bの両端はそれぞれ、バンプ状の第1の基部131aおよびバンプ状の第2の基部131cにつながっている。1つの観点では、金属ワイヤ部131bは、アーチ状の形状を有する。また、基部131cは、電極111と接していないこともあるが、その場合でも、金属ワイヤ部131bは上記と同様にアーチ状の形状を有している。
【0038】
金属ワイヤ部131bの一部である突出部131bp(突出部(P))は、導電層132から突出している。突出部131bpは、第1の電極ブロック121に向かって凸の円弧状の形状を有する湾曲部を含む。少なくとも湾曲部の上部は、第1の電極ブロック121(または第1の電極ブロック上に形成された接続層)と物理的に接触している。すなわち、少なくとも湾曲部の上部を介して、第1の電極111と第1の電極ブロック121とが電気的に接続されている。
【0039】
導電層132は、第1の電極111の表面のうち、金属部材131が覆っていない部分を覆うように配置されている。導電層132は、金属微粒子を含む。なお、導電層132を構成する材料の一部が、金属ワイヤ部131bの突出部131bpに付着している場合があるが、突出部131bpに付着している材料は、層を構成しないため、導電層132には含まれない。
【0040】
実施形態1の半導体レーザ装置100では、弾性を有する金属ワイヤ部131b(具体的には、湾曲部を含む突出部131bp)によって、第1の電極ブロック121(または接続層)を受け止めて電気的な接続を形成する。そのため、複数の金属部材131の形状や高さにばらつきがあっても、均一且つ安定に電気的な接続を形成できる。また、半導体レーザ素子110と第1の電極ブロック121との間に加わる応力を、金属ワイヤ部131bによって緩和することが可能である。また、半導体レーザ装置100では、導電層132によって、導電部130の導電性および熱伝導性が向上する。そのため、半導体レーザ装置100は高い放熱性を有し、半導体レーザ素子110への物理的なダメージが少ない。さらに、半導体レーザ装置100では、半導体レーザ素子110と第1の電極ブロック121との間の電気抵抗による損失が小さい。
【0041】
半導体レーザ装置100の製造方法の一例について、以下に説明する。導電部130以外の部分の形成方法には、公知の方法を適用できるため、詳細な説明は省略する。以下では、金属部材131が金からなる一例について説明する。
【0042】
導電部130の形成では、まず、ワイヤボンダを用いて、金属部材131を第1の電極111上に形成する。具体的には、ワイヤボンダを用いたボールボンディングの手法によって、金線の先端に形成されたボール状の部分を第1の電極111上に接続して第1の基部131aを形成する。次に、金線(金属ワイヤ部131b)をある程度の長さまで延ばす。その後、
図2Bに示すアーチ状の金属ワイヤ部131bが形成されるように、ワイヤボンダを操作して金線をアーチ状にし、金線を電極111上に押し付ける時に高電流を流して金線を切断する。このようにして、アーチ状の金属ワイヤ部131bを含む金属部材131が形成される。
【0043】
次に、導電層132を形成する。まず、金属ペースト(例えば銀ペースト)を、第1の電極111上に層状に塗布する。すなわち、複数の金属部材131の間を埋めるように、金属ペーストを塗布する。このとき、金属部材131の一部が露出するように金属ペーストを塗布してもよいし、金属部材131の全体が完全に覆われるように金属ペーストを塗布してもよい。いずれにせよ、導電層132の形成が終了したときに、金属部材131の一部(突出部131bp)が、導電層132から露出していればよい。
【0044】
金属ペーストを塗布した後、必要に応じて、金属ペーストの表面を平らにならしてもよい。例えば、不織布等で金属ペーストの表面を平らにならしてもよい。金属部材131の全体が完全に覆われるように金属ペーストを塗布した後、金属ペーストの表面を平らにならす際に、金属部材131の一部を金属ペーストの層から露出させてもよい。
【0045】
次に、金属ペーストを加熱(焼成)して、導電層132を形成する。加熱の条件は、金属ペーストに応じて選択できる。なお、加熱は、複数回に分けて行ってもよい。例えば、金属ペーストを塗布した後に比較的低温で加熱(仮焼成)を行い、半導体レーザ装置100を組み立てた後に高温で加熱を行ってもよい。
【0046】
導電部130の形成工程をどの段階で行うかについては限定はなく、導電部130を形成可能な任意の段階で行うことができる。例えば、導電部130は、半導体レーザ素子110がマウントされたサブマウント123を第2の電極ブロック122に接合する前に形成してもよいし、接合した後に形成してもよい。
【0047】
導電部130を形成した後は、公知の方法によって半導体レーザ装置100を組み立てることができる。例えば、まず、第2の電極ブロック122上に、絶縁層124を形成する。また、第2の電極ブロック122に、半導体レーザ素子110がマウントされたサブマウント123を接合する。半導体レーザ素子110の第1の電極111上には、導電部130が形成されている。次に、絶縁層124および導電部130上に、第1の電極ブロック121を載置する。上述したように、導電部130と第1の電極ブロック121との間には接続層が配置されていてもよい。その場合、接続層は、第1の電極ブロック121上に形成される。
【0048】
以上のようにして、半導体レーザ装置100を製造できる。なお、上述した製造方法は一例であり、本開示の半導体レーザ装置は、任意の方法で製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示は、半導体レーザ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
100:半導体レーザ装置
110:半導体レーザ素子
111:第1の電極
130:導電部
131:金属部材
131a:第1の基部
131b:金属ワイヤ部
131bp:突出部(金属ワイヤ部の一部、湾曲部)
131c:第2の基部
132:導電層