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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/24 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
A01D34/24 101
A01D34/24 105
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020213516
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099637
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-228591(JP,A)
【文献】特開2008-082882(JP,A)
【文献】特開平05-123026(JP,A)
【文献】特開平11-089373(JP,A)
【文献】特開2020-137424(JP,A)
【文献】特開平10-164924(JP,A)
【文献】特開2002-191225(JP,A)
【文献】特開2009-123061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)を搭載する機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の後方右側に操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記機体フレーム(1)の上方に設けられた左右方向に延在する支軸(32)に、前記刈取装置(3)の刈取フレーム(25)を形成する前後方向に延在するフレーム(26)の基部を回転自在に固定し、
前記機体フレーム(1)とフレーム(26)の前後方向の中間部に、前記フレーム(26)を上下方向に揺動させる昇降シリンダ(28)を架設し、
前記エンジン(E)と走行装置(2)の伝動経路の間に、前記エンジン(E)の出力回転を増減速する油圧式無段変速機(56)を設け、
前記操縦部(5)に油圧式無段変速機(56)を操作する変速レバー(51)を設け、
該変速レバー(51)の操作量を測定する第1センサ(51A)を設け、
前記フレーム(26)の基部に、前記フレーム(26)の揺動角度を測定する第2センサ(35)を設け、
前記刈取装置(3)の分草体(20)の下側に、圃場面からの該分草体(20)の高さを測定する第3センサ(36)を設け、
前記第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、且つ、前記第2センサ(35)が所定よりも大きい揺動角度を測定した場合には、前記昇降シリンダ(28)に作動オイルを供給するバルブ(28A)を駆動して昇降シリンダ(28)を第1下降速度(V1)で下降させ、
前記第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、且つ、前記第2センサ(35)が所定以内の揺動角度を測定した場合には、前記バルブ(28A)を駆動して昇降シリンダ(28)を第1下降速度(V1)よりも低速の第2下降速度(V2)で下降させ、
前記第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、前記第2センサ(35)が所定以内の揺動角度を測定し、且つ、前記第3センサ(36)が所定以内の高さを測定した場合には、前記バルブ(28A)の駆動を停止させることを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームの下側に走行装置を設け、機体フレームの前側に刈取装置を備設けたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいて、刈取装置の分草体の下側に、圃場面の凹凸高さを検出する高さ検出装置を設け、高さ検出装置の測定値に応じて刈取装置を昇降させる技術が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-172507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、刈取装置の駆動中に走行装置の走行速度が急加速された場合に、その反動によって刈取装置が上昇して穀稈の株元の切断位置が異なり、刈取穀稈の長さが異なるために、刈取穀稈の搬送効率、脱穀効率が低下する恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、刈取装置の駆動中に、走行装置の走行速度が急加速された場合には、刈取装置を下降させて穀稈の株元を所定の位置で切断して刈取穀稈の長さを所定の範囲に揃えて刈取穀稈の搬送効率、脱穀効率が高いコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、 エンジン(E)を搭載する機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の後方右側に操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記機体フレーム(1)の上方に設けられた左右方向に延在する支軸(32)に、前記刈取装置(3)の刈取フレーム(25)を形成する前後方向に延在するフレーム(26)の基部を回転自在に固定し、前記機体フレーム(1)とフレーム(26)の前後方向の中間部に、前記フレーム(26)を上下方向に揺動させる昇降シリンダ(28)を架設し、前記エンジン(E)と走行装置(2)の伝動経路の間に、前記エンジン(E)の出力回転を増減速する油圧式無段変速機(56)を設け、前記操縦部(5)に油圧式無段変速機(56)を操作する変速レバー(51)を設け、該変速レバー(51)の操作量を測定する第1センサ(51A)を設け、前記フレーム(26)の基部に、前記フレーム(26)の揺動角度を測定する第2センサ(35)を設け、前記刈取装置(3)の分草体(20)の下側に、圃場面からの該分草体(20)の高さを測定する第3センサ(36)を設け、前記第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、且つ、前記第2センサ(35)が所定よりも大きい揺動角度を測定した場合には、前記昇降シリンダ(28)に作動オイルを供給するバルブ(28A)を駆動して昇降シリンダ(28)を第1下降速度(V1)で下降させ、前記第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、且つ、前記第2センサ(35)が所定以内の揺動角度を測定した場合には、前記バルブ(28A)を駆動して昇降シリンダ(28)を第1下降速度(V1)よりも低速の第2下降速度(V2)で下降させ、前記第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、前記第2センサ(35)が所定以内の揺動角度を測定し、且つ、前記第3センサ(36)が所定以内の高さを測定した場合には、前記バルブ(28A)の駆動を停止させることを特徴とするコンバインである。
【0007】
【0008】
【0009】
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、機体フレーム(1)の上方に設けられた左右方向に延在する支軸(32)に、刈取装置(3)の刈取フレーム(25)を形成する前後方向に延在するフレーム(26)の基部を回転自在に固定し、機体フレーム(1)とフレーム(26)の前後方向の中間部に、フレーム(26)を上下方向に揺動させる昇降シリンダ(28)を架設し、エンジン(E)と走行装置(2)の伝動経路の間に、エンジン(E)の出力回転を増減速する油圧式無段変速機(56)を設け、操縦部(5)に油圧式無段変速機(56)を操作する変速レバー(51)を設け、変速レバー(51)の操作量を測定する第1センサ(51A)を設け、フレーム(26)の基部に、フレーム(26)の揺動角度を測定する第2センサ(35)を設け、刈取装置(3)の分草体(20)の下側に、圃場面からの分草体(20)の高さを測定する第3センサ(36)を設け、第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、且つ、第2センサ(35)が所定よりも大きい揺動角度を測定した場合には、昇降シリンダ(28)に作動オイルを供給するバルブ(28A)を駆動して昇降シリンダ(28)を第1下降速度(V1)で下降させ、第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、且つ、第2センサ(35)が所定以内の揺動角度を測定した場合には、バルブ(28A)を駆動して昇降シリンダ(28)を第1下降速度(V1)よりも低速の第2下降速度(V2)で下降させ、第1センサ(51A)が所定よりも大きい操作量を測定し、第2センサ(35)が所定以内の揺動角度を測定し、且つ、第3センサ(36)が所定以内の高さを測定した場合には、バルブ(28A)の駆動を停止させるので、走行装置(2)の走行速度の急加速の反動によって上昇した刈取装置(3)を下降させて、穀稈の株元の所定の位置を切断して刈取穀稈の長さを所定の範囲に揃えて搬送効率、脱穀効率を高めることができる。
また、走行装置(2)に設けられた加速度センサよりも迅速に走行装置(2)に発生する加速度を測定して、走行装置(2)の急加速の反動によって上昇した刈取装置(3)を速やかに下降させることができる。
さらに、刈取装置(3)の分草体(20)等が圃場に食い込むのを防止することができる。
【0011】
【0012】
【0013】
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】ピッチングシリンダとローリングシリンダを説明する右側面図である。
図4】ピッチングシリンダとローリングシリンダを説明する平面図である。
図5】走行装置が急加速した反動で刈取装置が所定よりも高い位置に上昇した場合の高さ検出装置を説明する左側面図である。
図6】走行装置が急加速した反動で刈取装置が所定内の高さに上昇した場合の高さ検出装置を説明する左側面図である。
図7】刈取装置が下降し、高さ検出装置の接地体の本体部が圃場面に接触した状態を説明する左側面図である。
図8】操縦部をフロントパネルとサイドパネルを説明する平面図である。
図9】エンジンの出力回転の伝動図である。
図10】コントローラの接続図である。
図11】刈取装置の昇降方法の説明図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置3が設けられ、刈取装置3の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0016】
操縦部5の下側にはエンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する上下方向に延在する揚穀部と前後方向に延在する横排出部からなる排出オーガ8が設けられている。
【0017】
図3,4に示すように、機体フレーム1には、機体フレーム1の前後方向の水平姿勢を調整するピッチングシリンダ10と、機体フレーム1の左右方向の水平姿勢を調整するローリングシリンダ15が設けられている。
【0018】
ピッチングシリンダ10は、脱穀装置4で脱穀選別処理された穀粒をグレンタンク7の搬送する揚穀装置11の前方に起立させた姿勢で設けられている。
【0019】
ピッチングシリンダ10の基部は、機体フレーム1に設けられた上下方向に延在する支持部材12に回転自在に支持され、ピッチングシリンダ10のロッドの先端部は、走行装置2に設けられたアーム13の上部に回転自在に支持されている。
【0020】
これにより、側面視において、機体フレーム1の前部が後部よりも下降して所定以上に前下がり姿勢になった場合には、ピッチングシリンダ10のロッドを伸ばして機体フレーム1の前部を上昇させて水平姿勢にし、機体フレーム1の前部が後部よりも上昇して所定以上に前上がり姿勢になった場合には、ピッチングシリンダ10のロッドを縮めて機体フレーム1の前部を下降させて水平姿勢にすることができる。
【0021】
ローリングシリンダ15は、ローリングシリンダ15Aとローリングシリンダ15Bから形成され、機体フレーム1に左右方向に所定の間隔を隔てて倒伏させた姿勢で設けられている。
【0022】
ローリングシリンダ15Aの基部は、機体フレーム1に設けられた前後方向に延在する支持部材16Aに回転自在に支持され、ローリングシリンダ15Aのロッドの先端部は、走行装置2に設けられたアーム17Aの上部に回転自在に支持されている。
【0023】
ローリングシリンダ15Bの基部は、機体フレーム1に設けられた前後方向に延在する支持部材16Bに回転自在に支持され、ローリングシリンダ15Bのロッドの先端部は、走行装置2に設けられたアーム17Bの上部に回転自在に支持されている。
【0024】
これにより、背面視において、機体フレーム1の左部が右部よりも下降して所定以上に左下がり姿勢になった場合には、ローリングシリンダ15Aのロッドを伸ばして機体フレーム1の左部を上昇させ、ローリングシリンダ15Bのロッドを縮めて機体フレーム1の右部を下降させて水平姿勢にし、機体フレーム1の左部が右部よりも上昇して所定以上に左上がり姿勢になった場合には、ローリングシリンダ15Aのロッドを縮めて機体フレーム1の左部を下降させ、ローリングシリンダ15Bのロッドを伸ばして機体フレーム1の右部を上昇させて水平姿勢にすることができる。
【0025】
機体フレーム1における揚穀装置11の右側には、ピッチングシリンダ10に作動オイルを供給するバルブ18Aと、ローリングシリンダ15Aに作動オイルを供給するバルブ18Bと、ローリングシリンダ15Bに作動オイルを供給するバルブ19Cが並列して設けられている。また、ピッチングシリンダ10とバルブ18A等は可撓性の配管でそれぞれ接続されている。
【0026】
機体フレーム1におけるピッチングシリンダ10よりも右側には、エンジンEの排気ガス中の不純物を除去する除去装置を覆う遮熱カバー19Aが設けられ、また、揚穀装置11の前方には、除去装置の排気口に接続されたテールパイル19Bが設けられている。
【0027】
図1,2に示すように、刈取装置3は、植立された穀稈を分草する分草体20と、倒伏した穀稈を引起こす引起装置21と、穀稈の株元を切断する切断装置22と、刈取った穀稈を脱穀装置4に搬送する搬送装置23から形成されている。
【0028】
刈取装置3の刈取フレーム25は、前後方向に延在するフレーム26と、フレーム26の前部に設けられた左右方向に延在するフレーム27から形成されている。
【0029】
フレーム26の基部は、機体フレーム1の上方に設けられた左右方向に延在する支軸32に回転自在に支持され、フレーム26の基部には、支軸32を中心としたフレーム26の回転角度を測定するポテンションメータ等の角度センサ(請求項における「第2センサ」)35が設けられている。
【0030】
フレーム26の中間部の下面には、支軸32を中心としてフレーム26を上下方向に移動させる昇降シリンダ28が設けられている。これにより、穀稈の種類等に応じてフレーム26を上下方向に移動させて刈取装置3の高さを調整することができる。昇降シリンダ28の作動オイルはバルブ28Aを介して行われ、昇降シリンダ28とバルブ28Aは可撓性の配管で接続されている。
【0031】
分草体20の後部は、フレーム27の前部から左右方向に所定の間隔を隔てて設けられた前方に延出する分草体フレーム29の前端部に設けられた左右方向に延在する支軸29Aに回転自在に固定されている。
【0032】
分草体20の下側には、圃場の上面から分草体20の下部までの距離を測定する高さ検出装置30が設けられている。これにより、刈取作業時等に、分草体20が圃場の土壌に突っ込むのを防止し、切断装置22で穀稈の株元の所定の範囲を切断することができる。
【0033】
図5~7に示すように、高さ検出装置30は、分草体20の下部に設けられた左右方向に延在する支軸20Aに回転自在に固定された接地体31と、分草体フレーム29における支軸29Aの後方下側に設けられた接触センサ等の高さセンサ(請求項における「第3センサ」)36から形成されている。
【0034】
接地体31は、支軸20Aから下方に向かって延在した後、湾曲して後方下側に向かって延在する丸鋼等の接地部31Aと、接地部31Aの後部に設けられたプレート等の補強部31Bから形成されている。これにより、圃場の土壌等から加わる外力によって接地部31Aが変形するのを防止することができる。なお、補強部31Bの後部には、高さセンサ36と接触する矩形状の接触プレート33が設けられている。
【0035】
図5に示すように、走行装置2が急加速した場合には、急加速の反動によりフレーム26の基部が支軸32を中心として回転して刈取装置3は上昇する。フレーム26の基部が所定の回転角度よりも回転した場合には、角度センサ35からコントローラ60に入力される入力信号はOFFとなる。また、フレーム26の基部が所定の回転角度よりも回転した場合には、高さ検出装置30の接地体31は圃場面から離間して、接地体31の接触プレート33と高さセンサ36も非接触となり高さセンサ36からコントローラ60に入力される入力信号はOFFとなる。
【0036】
図6に示すように、刈取作業時に刈取装置3が所定以上に上昇した場合には、昇降シリンダ28に作動オイルを供給するバルブ28Aを駆動して昇降シリンダ28のロッドを縮め刈取装置3を下降させて接地体31の下部を圃場面に接触させる。接地体31の下部が圃場面に接触した場合には、角度センサ35からコントローラ60に入力される入力信号はONとなる。また、接地体31の下部が圃場面に接触した場合には、接地体31の接触プレート33と高さセンサ36は非接触となり高さセンサ36からコントローラ60に入力される入力信号はOFFとなる。
【0037】
図7に示すように、刈取作業時に刈取装置3が所定以上に上昇した場合には、昇降シリンダ28に作動オイルを供給するバルブ28Aを駆動してさらに昇降シリンダ28のロッドを縮めて刈取装置3を下降させて接地体31の接地部31Aの湾曲部を圃場面に接触させる。接地体31の接地部31Aの湾曲部が圃場面に接触した場合には、接地体31の接触プレート33と高さセンサ36が接触して高さセンサ36からコントローラ60に入力される入力信号はONとなる。なお、角度センサ35からコントローラ60に入力される入力信号もONとなっている。
【0038】
これにより、刈取作業中に、主変速レバー51が操作されて走行装置2が急加速して、刈取装置3が所定以上に上昇した場合には、昇降シリンダ28を介して刈取装置3を下降させて、穀稈の株元の所定位置を切断装置22で切断し、刈取された穀稈の長さをそろえて搬送装置23の搬送効率、脱穀装置4の脱穀効率を高めることができる。
【0039】
図8に示すように、操縦部5の操縦席5Aの前側には、フロントパネル40が設けられ、左側にはサイドパネル50が設けられている。
【0040】
フロントパネル40の中央部には、走行装置2の走行速度等を表示するモニタ41が設けられ、モニタ41の右側には、走行装置2を旋回や刈取装置3を昇降作する操作レバー42が設けられている。また、操作レバー42の下部には、操作レバー42の傾斜姿勢を測定するポテンションメータ等の角度センサ42Aが設けられている。
【0041】
サイドパネル50の前部には、走行装置用の油圧式無段変速機56を操作する主変速レバー(請求項における「変速レバー」)51が設けられている。また、主変速レバー51の下部には、主変速レバー51の傾斜姿勢を測定するポテンションメータ等の角度センサ(請求項における「第センサ」)51Aが設けられている。
【0042】
主変速レバー51を中立姿勢にすると走行装置2は停止し、主変速レバー51を中立姿勢から前方に傾斜させた前進姿勢にすると走行装置2は前進し、主変速レバー51を中立姿勢から後方に傾斜させた後進姿勢にすると走行装置2は後進する。これにより、主変速レバー51を操作して走行装置2の状態を容易に変更することができる。
【0043】
前進姿勢において主変速レバー51をより前方に傾斜させると、走行装置2の前進速度は増速し、中立姿勢方向、すなわち後方に傾斜させると走行装置2の前進速度は減速する。また、後進姿勢において主変速レバー51を後方に傾斜させると走行装置2の後進速度は増速し、中立姿勢方向、すなわち前方に傾斜させると走行装置2の後進速度は減速する。これにより、主変速レバー51を操作して走行装置2の速度を容易に増減速することができる。
【0044】
主変速レバー51の後方右側には、走行装置用のトランスミッション57を操作する副変速レバー52が設けられている。これにより、副変速レバー52を操作してトランスミッション57内のギヤチェンジを行って走行装置2の速度を容易に増減速することができる。
【0045】
副変速レバー52を前方に傾斜させると走行装置2の速度は一段増速し、副変速レバー52を後方に傾斜させると走行装置2の速度は一段減速する。これにより、圃場の穀稈の倒伏状態に応じて走行装置2の速度を容易に増減速でき、また、多くの穀稈が倒伏している場合には、刈取装置3の刈取速度を維持して走行装置2の走行速度を減速して倒伏した穀稈の刈取りロスを抑制することができる。
【0046】
主変速レバー51の後方左側には、脱穀クラッチ55と刈取クラッチ58の接続と接続解除を行う刈脱レバー53が設けられている。
【0047】
刈脱レバー53を前方に傾斜させると脱穀クラッチ55と刈取クラッチ58が接続されて刈取装置3と脱穀装置4が駆動し、刈脱レバー53を中立姿勢にすると刈取クラッチ58の接続が解除されて刈取装置3は停止し、さらに刈脱レバー53を後方に傾斜させると脱穀クラッチ55の接続が解除されて脱穀装置4も停止する。これにより、脱穀装置4に多量の穀稈が搬入されてエンジンEに大きな負荷がかかっている場合には、例えば、刈脱レバー53を中立姿勢にして刈取装置3の駆動を停止してエンジンEに加わっている負荷を低減することができる。また、刈脱レバー53の下部には、刈脱レバー53の傾斜姿勢を測定するポテンションメータ等の角度センサ53Aが設けられている。
【0048】
図9に示すように、エンジンEの出力回転は、第1経路Aに設けられた脱穀クラッチ55を介して脱穀装置4に伝動され、脱穀装置4の扱胴、揺動選別棚等を駆動する。なお、脱穀クラッチ55の接続と接続解除の切換えは刈脱レバー53を操作して行う。
【0049】
これにより、脱穀装置4の扱胴の回転速度を走行装置2の走行速度や刈取装置3の引起速度とは独立して設定することができ、穀粒に含有された水分量に応じて扱胴の回転速度を調整して脱穀選別処理を効率良く行うことができる。
【0050】
エンジンEの出力回転は、第2経路B上に設けられた油圧式無段変速機56に伝動される。油圧式無段変速機56の入力軸に伝動されたエンジンEの出力回転は、油圧式無段変速機56内で増減速と回転方向の変更が行われた後に第1出力軸と第2出力軸から出力される。なお、油圧式無段変速機56内での増減速と回転方向の変更は主変速レバー51を操作して行う。
【0051】
油圧式無段変速機56の第1出力軸の出力回転は、トランスミッション57に伝動される。トランスミッション57の入力軸に伝動された第1出力軸の出力回転は、トランスミッション57内のギヤチェンジで増減速され出力軸から出力される。
【0052】
トランスミッション57の出力軸の出力回転は、走行装置2に伝動され、走行装置2のクローラを回動する。
【0053】
油圧式無段変速機56の第2出力軸の出力回転は、刈取クラッチ58を介して刈取装置3に伝動され、刈取装置3の引起装置21、切断装置22、搬送装置23等を駆動する。なお、刈取クラッチ58の接続と接続解除の切換えは刈脱レバー53を操作して行う。
【0054】
これにより、圃場の穀稈の倒伏状態に応じて、主変速レバー51を操作して油圧式無段変速機56を介して走行装置2の走行速度と刈取装置3の引起装置21の引起速度等を増減速させて刈取処理を効率良く行うことができる。
【0055】
図10に示すように、コンバインのコントローラ60は、CPU等からなる処理部61と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部62と、経過時間を測定するタイマ部63から形成されている。
【0056】
処理部61は、主変速レバー51の傾斜姿勢を測定する角度センサ51Aから入力された入力信号に基づいて昇降シリンダ28に作動オイルを供給するバルブ28Aを駆動したり、機体フレーム1の前後方向の傾斜角度を測定する傾斜センサ71から入力された入力信号に基づいてピッチングシリンダ10に作動オイルを供給するバルブ18A等を駆動する。
【0057】
記憶部62には、モニタ41から入力された刈取装置3の高速の下降速度(請求項における「第1下降速度」)V1、低速の下降速度(請求項における「第2下降速度」)V2等が保存されている。
【0058】
コントローラ60の入力側には、刈取装置3のフレーム26の基部の回転角度を測定する角度センサ35と、刈取装置3の圃場面からの高さを測定する高さセンサ36と、刈取装置3の高速の下降速度V1等を入力するモニタ41と、操作レバー42の傾斜姿勢を測定する角度センサ42Aと、主変速レバー51の傾斜姿勢を測定する角度センサ51A、刈脱レバー53の傾斜姿勢を測定する角度センサ53Aと、機体フレーム1の前後方向の傾斜角度を測定する傾斜センサ70と、機体フレーム1の左右方向の傾斜角度を測定する傾斜センサ71と、走行装置2の走行速度を測定する速度センサ72と、走行装置2の走行速度の加速度を測定する加速度センサ73等が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0059】
コントローラ60の出力側には、ピッチングシリンダ10に作動オイルを供給するバルブ18Aと、ローリングシリンダ15Aに作動オイルを供給するバルブ18Bと、ローリングシリンダ15Bに作動オイルを供給するバルブ18Cと、昇降シリンダ28に作動オイルを供給するバルブ28Aと、エンジンEに装着された燃料を噴射するスロットルバルブの開度等を調整するエンジンコントローラ75が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0060】
図11に示すように、ステップS1において、コントローラ60の処理部61は刈脱レバー53の傾斜姿勢を測定する角度センサ53Aからの入力信号を判断し、刈脱レバー53が前方、中立姿勢に位置して刈取クラッチ58が接続されて刈取装置3が駆動している場合にはステップS2に進み、刈脱レバー53が後方姿勢に位置して刈取クラッチ58が接続が解除されて刈取装置3が停止している場合にはステップS1を繰り返す。
【0061】
ステップS2において、処理部61は走行装置2の走行速度の加速度を測定する加速度センサ73からの入力信号を判断し、加速度センサ73の入力信号の加速度値が予め設定された設定加速度値よりも大きい場合にはステップS3に進み、加速度センサ73の入力信号の加速度値が設定加速度値以下の場合にはステップS1に戻る。なお、モニタ41を使用して予め入力された設定加速度値は記憶部62に保存されている。
【0062】
本実施形態では、加速度センサ73からの入力信号を判断しているが、加速度センサ73からの入力信号に替えて、エンジンEの出力回転を増減速する主変速レバー51の傾斜姿勢を測定する角度センサ51Aからの入力信号、油圧式無段変速機56の出力回転を増減速する副変速レバー52の傾斜姿勢を測定する角度センサからの入力信号を使用することもできる。また、主変速レバー51の傾斜姿勢を測定する角度センサ51Aからの入力信号を使用した場合には、走行装置2の走行速度の加速度をより迅速に把握できるので好ましい。
【0063】
ステップS3において、処理部61は刈取装置3のフレーム26の基部に設けられた角度センサ35からの入力信号を判断し、走行装置2の走行速度の急加速によって刈取装置3が所定の高さよりも上昇、すなわち、フレーム26の基部が支軸32を中心として所定の回転角度よりも回転して角度センサ35の入力信号がOFFの場合にはステップS4に進み、角度センサ35の入力信号がONの場合にはステップS9に進む。
【0064】
ステップS4において、処理部61は昇降シリンダ28に作動オイルを供給するバルブ28Aを駆動して昇降シリンダ28を予め設定された高速の下降速度V1で下降させてステップS5に進む。これにより、走行装置2の走行速度の急加速の反動によって上昇した刈取装置3を下降させて、切断装置22で穀稈の株元の所定の位置を切断して刈取穀稈の長さを所定の範囲に維持することができる。なお、モニタ41を使用して予め入力された高速の下降速度V1は記憶部62に保存されている。
【0065】
ステップS5において、処理部61は刈取装置3に設けられた刈取装置3のフレーム26の基部に設けられた角度センサ35からの入力信号を判断し、昇降シリンダ28によって刈取装置3が下降して接地体31の下部が圃場面に接触して角度センサ35の入力信号がONの場合にはステップS6に進み、角度センサ35の入力信号がOFFの場合にはステップS4に戻る。
【0066】
ステップS6において、処理部61は昇降シリンダ28に作動オイルを供給するバルブ28Aを駆動して昇降シリンダ28を予め設定された低速の下降速度V2で下降させてステップS7に進む。これにより、刈取装置3が圃場面に勢いよく衝突するのを防止して、刈取装置3の分草体20や切断装置22の破損を抑制することができる。
【0067】
ステップS7において、処理部61は刈取装置3に設けられた高さ検出装置30の高さセンサ36からの入力信号を判断し、高さセンサ36と接触プレート33が接触して高さセンサ36の入力信号がONの場合にはステップS8に進み、高さセンサ36と接触プレート33が離間して高さセンサ36の入力信号がOFFの場合にはステップS6に戻る。
【0068】
本実施形態では、高さ検出装置30の高さセンサ36からの入力信号を判断、すなわち、刈取装置3が通常の刈取作業位置に戻ったか否かを判断しているが、高さ検出装置30の高さセンサ36からの入力信号に替えて、コントローラ60のタイマ部63で測定されているバルブ28Aの駆動時間を使用することもできる。
【0069】
ステップS8において、処理部61は昇降シリンダ28に作動オイルを供給するバルブ28Aの駆動を停止させてステップS1に戻る。これにより、刈取装置3の分草体20等が圃場に食い込むのを防止して、切断装置22で穀稈の株元の所定の位置を切断して刈取穀稈の長さを所定の範囲に維持することができる。
【0070】
ステップS9において、処理部61は機体フレーム1に設けられた傾斜センサ70からの入力信号を判断し、走行装置2の走行速度の急加速によって機体フレーム1の前部が後部よりも上昇して前上がり姿勢等になって傾斜センサ70の入力信号がONの場合にはステップS10に進み、機体フレーム1が水平姿勢になって傾斜センサ70の入力信号がOFFの場合にはステップS1に戻る。
【0071】
ステップS10において、処理部61は機体フレーム1の前後方向の傾斜を調整するピッチングシリンダ10に作動オイルを供給するバルブ18Aを駆動して機体フレーム1の前部を下降させる。これにより、走行装置2の走行速度の急加速の反動によって前上がり姿勢になった機体フレーム1を水平姿勢に戻すことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
20 分草体
25 刈取フレーム
26 フレーム
28 昇降シリンダ
32 支軸
35 角度センサ(第2センサ)
36 高さセンサ(第3センサ)
51 主変速レバー(変速レバー)
51A 角度センサ(第センサ)
56 油圧式無段変速機
73 加速度セン
E エンジン
V1 下降速度(第1下降速度)
V2 下降速度(第2下降速度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11