(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】被削材観測装置とその研削制御方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/14 20060101AFI20231117BHJP
B24B 41/04 20060101ALI20231117BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20231117BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20231117BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20231117BHJP
B24D 7/10 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B24B49/14
B24B41/04
B24B49/04 Z
B24B55/02 A
B24B55/02 D
B24B49/12
B24D7/10
(21)【出願番号】P 2021131810
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519193965
【氏名又は名称】伊藤 憲秀
(72)【発明者】
【氏名】野村 衛
(72)【発明者】
【氏名】八尾 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】松原 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】喜多 佳之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸男
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3170029(JP,U)
【文献】登録実用新案第3231480(JP,U)
【文献】特開2016-172312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/14
B24B 41/04
B24B 49/04
B24B 55/02
B24B 49/12
B24B 49/18
B24D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
上記請求項1~8の被削材観測装置
において、各被削材に対して所定の研削値とすべく面精度、研削量、研削温度管理等の入力値、研削加工に必須の各種研削情報を予め入力して人工知能化(AI)したコンピュータを備え、研削時は被削材の面精度、研削量、研削温度の各データを計測して適正制御状態で研削運転させ、予め設定した所定の研削値に到達した時点で研削良品として搬出し、所定の研削値に到達しなければ研削不良品として排出することを特徴とする研削制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥石を主体とした切削工具を含めた加工具による被研削材の発熱状態の温度測定、被研削材の研削面精度・研削量や仕上げ状態を非接触でインプロセス計測する新規技術に関する被削材観測装置とその研削制御方法及び切削制御方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、研削加工や切削加工を湿式で行った場合は、研削・切削による加熱とクーラント液による冷却との相互作用が複雑に絡み合う状況になっている。この湿式研削・湿式切削における被削材の表面温度や加工具の消耗量や研削面・加工面の形状精度をインプロセスする計測技術の実施例や具体的な装置を特許情報や業界情報から多くを知る事が出来ない。
【0003】
研削砥石に限定して説明すれば、研削砥石による被削材(ワーク)の研削点や砥石の熱発生の温度測定技術には、その代表的な技術手段として、研削砥石内に熱電対を埋め込んで砥石温度の上昇から、概略的にワークの研削点の温度を擬似的に検出する検出方法に留まっている。
【0004】
上記現状に鑑みて、本願発明者は、砥石外周面やワークの研削点から発する赤外線の温度を非接触式の放射温度計で検出し、また、レーザー変位計により加工面・研削面の高低差で表面粗さを計測し且つ外径の真円度を計測し、更に、ハイスピード・マイクロカメラで、研削面撮像をこの濃淡、模様、光沢、ツールマークとして抽出することで正常値と比較し、粗さの推定、官能、見た目の測定を行う技術手段が試験的に試みた被研削材観測装置の研究開発を推進している。この概要構成は、下記の如くである。
【0005】
上記被削材観測装置は、放射温度計と、レーザー変位計と、ハイスピード・マイクロカメラとを個別の検出目的とした複合検出手段としたものである。即ち、複合検出手段による上記被削材観測装置において、砥石表面温度を検出する手段の1つは、回転駆動軸に取付けた環状砥石にこの中心部を直交方向に通る貫通孔を設け、上記環状砥石の反被削材側には、上記貫通孔を通過する被削材からの放射する赤外線を感知する放射温度計を配置させ、上記放射温度計は貫通孔を通過する被削材からの赤外線を研削面温度として検出する。しかして、上記環状砥石の表面からの赤外線を感知時には、砥石表面温度を検出可能とした。
【0006】
また、上記環状砥石の反被削材側に配置した放射温度計に替えて、上記貫通孔を通過するレーザー光線を発射するとともにこの反射するレーザー光線を受信するレーザー変位計を、回転駆動軸を支持する主軸ヘットと分離して固定配置させ、上記レーザー変位計は貫通孔に向けて発光させたレーザー光線が被削材表面から反射するレーザー光線の時間を計測検出する。これで、上記被削材の研削量の増加により反射するレーザー光線の時間差で生じる寸法距離の微増減を研削量として計測感知を可能とした。
【0007】
更に、上記環状砥石の反被削材側に配置した放射温度計に替えて、マイクロスコープを固定配置させ、上記マイクロスコープは上記被削材からの光線に含まれる映像信号により研削面形状を拡大計測する他、上記環状砥石の表面からの反射光線に含まれる映像信号により砥石表面形状を拡大計測することを可能とした(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記実用新案登録第3231480号公報は、本願発明者による先行実用新案であり、研削砥石又は切削工具からなる加工具による金属材となる被削材及び加工具の発熱状態の温度測定の他に、被削材の研削量・加工量や仕上げ面の面状態を非接触で観測すべくインプロセス計測する新技術の被削材観測装置を提供するものである。
【0010】
上記被削材観測装置は、何れかのセンサーとなる非接触式の放射温度計やレーザー変位計やハイスピード・マイクロカメラは、その文献の
図1~
図12に観るごとく、工具ホルダーの先端に突出する回転駆動軸に取付けた研削砥石において、その各種センサーは、被切削材に対して孔あき砥石を介在させた反対側に主軸頭に固定配置することを必須構成となり、この各種センサーの取付けスペースが加工領域を狭めてしまい、砥石工具の着脱を煩雑とし、使用勝手と広範囲に適用できる汎用性に劣る。この観点から、今回開発したのは、工具ホルダー内に各センサーを内蔵させた被削材観測装置である。この被削材観測装置は、特に下記の問題点と改良点を考慮して開発した。
【0011】
・金属の工具と異なり、特にビトリファイド砥石「長石の粉を焼成したもの(茶碗、お皿と同じ)」は、薄いと割れやすく高速回転するので極めて危険である。
・研削砥石は、センサーを砥石に内蔵すると、其のスペース分が肉薄となって強度が危険になる宿命がある。
・然し、内蔵が出来ない場合は、センサーが砥石の外部に取り付けとなるので工作機械、被削材との干渉また自動工具交換装置に収まりきらない問題で量産工法として現実的ではない。
・金属製の切削工具は砥石の様な割れやすい危険性は低いが、回転中心にセンサー内蔵のスペースが必要となると小径の設計が困難となる。
・各種センサーは100mm程度の長さがあり、砥石の回転中心にΦ100mmの空間が必要になる。従って、砥石内部やその側面外部に配置することは、好ましくない、
・既存の各センサーの長手方向を回転駆動軸の方向にすれば、内蔵スペースがΦ100mmからΦ30mm程度になるので危険なく工具ホルダーの筒体部内に内蔵可能になる事に着目した。
・センサーには温度を計測する放射温度計の他に加工表面の高低差を計測するレーザー変位計、同じく加工表面の模様(縞、まだら)を計測するハイスピード・マイクロカメラが有るが何れも回転軸方向に揃えればΦ60mm程度には収まるので、同時に3種類の計測できる。
・しかし、各種センサーで計測を行う被削材の加工面は、工具ホルダーの回転駆動軸と直交するので、光線方向が一致する同軸にしなければ計測が不可能である。
・そこで、プリズム又はグラスファイバーで光軸を90度曲げて加工面と直交していても計測できるようにした。
・回転工具「研削砥石、切削工具」は。ホルダーの先端回転部に取り付けられ、更に工作機械の回転主軸のテーパー穴に、そのテーパー部を挿入して取付けているので中心部分には一定の長さスペースの余裕がある。ここに円筒形の各種センサーを内蔵可能である。
・工具ホルダーの筒体部には、センサーの他に必要な電池、発信機類を細長い形状に設計すれば、長さに余裕のある回転主軸の軸芯方向にセンサーと一体化して内蔵することとした。
・センサー内蔵工具ホルダーとした標準工具ホルダーに纏めると、センサーと電池、発信機を備えたカートリッジ内蔵の工具ホルダーは工具取付軸の寸法を標準化し様々な工具(研削砥石や切削工具)との共用が可能となり高い経済性を発揮させることである。
・更に、追記すれば、工具ホルダーの回転軸中心には、センタスルーのクーラント孔穴が有り、冷却液または冷風は、工具内のセンサーヘッド(検出面)の除塵と加工点・研削点へ確実に供給され、冷却作用と清掃作用を行い、検出精度を高め・精度保証する機構となっている。
・その他、検出精度や耐久性、汎用性を高め、保証する事を盛り込んだ。
・更には、工具ホルダーのΦ60mm程度の円筒空間内には、温度を計測する放射温度計と加工表面の高低差を計測するレーザー変位計と同じく加工表面の模様(縞、まだら)を計測するハイスピード・マイクロカメラとを備えて同時計測データから、予め求める研削精度他を人工知能に備えた各種情報との照合制御により完全自動化の被削材観測が目指せる。
【請求項1】
【0012】
被削材観測装置は、研削盤の回転駆動軸のテーパー穴にプルスタットを介してテーパー嵌合部を着脱させる研削砥石や切削工具の工具ホルダーであって、上記工具ホルダーの先端面に円筒基部を嵌着させこの先端側中心に開口部を有する円筒体と、上記円筒体内には大径筒部を上記円筒体内に嵌入させるとともに先端小径筒部は上記開口部から工具ホルダーの先端方向に突出させ先端の側面には小孔が外径方向に開けたセンサー本体からなり、上記センサー本体の大径筒部内には略円筒状の放射温度計とこの電源部と前記放射温度計が計測した温度値を外部受信機器に無線送信する発信器とを備え、上記センサー本体の先端小径筒部の底部とこれに直交する小孔の交差部に、外径方向に通孔を開けた研削砥石をその通孔を上記小孔に連通させて着脱可能に嵌着させ、研削加工を施す被削材から放射される赤外線を先端小径筒部の外径方向の小孔位置で上記放射温度計方向へ屈曲させるプリズムが配置され、更に、上記回転駆動軸側からのセンタースルークーラントは、上記センサー本体と上記円筒体との適所に形成されたクーラント流路を介して砥石外周面及び前記砥石の通孔に繋がれて成り、上記放射温度計からの赤外線は砥石の通孔を介して測定する被削材から発射された赤外線を前記放射温度計にプリズムで偏向させて被削材表面の研削面温度として温度計測可能とし、該研削面温度値を測定発信器から外部機器に送信することを特徴とする。
【請求項2】
【0013】
上記請求項1の被削材観測装置において、上記放射温度計に替えて外観が略同型のレーザー変位計となし、上記レーザー変位計は被削材に向けて発光させたレーザー光線が被削材表面から反射するレーザー光線との往復時間を計測検出し、上記被削材の研削量の増加により反射するレーザー光線の時間差で生じる寸法距離の微増減を研削砥石の摩耗量として計測感知することを特徴とする。
【請求項3】
【0014】
上記請求項1の被削材観測装置において、上記放射温度計に替えて外観が略同型のハイスピード・マイクロカメラとなし、上記ハイスピード・マイクロカメラは上記被削材からの光線に含まれる映像信号により被削材の研削面形状を計測した映像信号として観測することを特徴とする。
【請求項4】
【0015】
上記請求項1の被削材観測装置において、上記センサー本体の大径筒部内には、略円筒状の放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラとを120°間隔方向に3分割して外径方向に向けて配置し、この電源と前記放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラとからの検出信を外部受信機器に無線送信する発信器とを備え、上記センサー本体の先端小径筒部の底部とこれに直交する120°間隔で研削砥石と円筒壁面に開けた小孔の交差部に被削材から発する観測信号を上記センサー本体の軸芯方向に90°屈曲させる3組のプリズムが配置され、上記先端小径筒部の小孔を閉塞する嵌合位置に研削砥石が嵌着されるとともに該研削砥石の3箇所の外径方向に開けた通孔が小孔と連通され、上記被削材表面から放射される赤外線や表面形状や変位量等の複数情報を観測可能としたことを特徴とする。
【請求項5】
【0016】
上記請求項4の被削材観測装置において、上記センサー本体の大径筒部内には、放射温度計とレーザー変位計、又は放射温度計とハイスピード・マイクロカメラ又は、レーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラとの1対を任意角度間隔に2分割配置したことを特徴とする。
【請求項6】
【0017】
上記請求項1~5の被削材観測装置において、研削砥石の他、環状工具であるサイドカッター,ショルダーカッター等の切削工具にも適用可能であることを特徴とする。
【請求項7】
【0018】
上記請求項1~6の被削材観測装置において、上記プリズムに替えて湾曲可能なグラスファイバーとしたことを特徴とする。
【請求項8】
【0019】
上記請求項1~7の被削材観測装置において、工具ホルダーに替えて研削盤の回転駆動軸の先端面の支持穴にセンサー本体を装着させ、上記センサー本体の先端小径筒部には、研削砥石又は切削工具をこのフランジ部で着脱交換する主軸内蔵体としたことを特徴とする。
【請求項9】
【0020】
上記請求項1~8の被削材観測装置による研削制御方法は、各被削材に対して所定の研削値とすべく面精度、研削量、研削温度管理等の入力値、研削加工に必須の各種研削情報を予め記憶・教示する人工知能化(AI)のコンピュータを備え、研削時は各被削材の面精度、研削量、研削温度の各計測データを得て、適正制御状態で研削運転させ、予め設定した所定の研削値に到達した時点で研削良品として搬出し、所定の研削値に到達しなければ研削不良品として排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1の被削材観測装置によると、工具ホルダー内に備えた放射温度計によりダイレクトに被削材の表面から発散する赤外線を受光するから、被削材の研削点温度がインプロセスに検出でき、外部機器に伝送できるから各研削砥石や各加工具による研削時/切削時に検出された各温度検出値に基づき、最適な研削条件や切削条件が各研削砥石や各加工具に対し確立制御される。これにより、最適な研削条件での研削作業・切削作業ができる。しかして、予め設定した最高条件の研削面・切削面が効率良く得られる。
【0022】
本発明の請求項2となる被削材観測装置は、上記請求項1の被削材観測装置において、上記放射温度計に替えて外観が略同型のレーザー変位計としたから、上記レーザー変位計は被削材に向けて発光させたレーザー光線が被削材表面から反射するレーザー光線の時間をダイレクトに検出でき、上記被削材の研削量の増加により砥石径が減少して反射するレーザー光線L2の時間差が生じるから、この時間差から寸法距離の微増減を研削砥石の摩耗量としてインプロセスに計測感知できる。しかして、最適な研削量と切削量に設定した作業が行なえ、最高条件の研削量の制御により研削面・切削面が効率良く得られる。
【0023】
本発明の請求項3となる研削時の被削材観測装置は、上記請求項1の被削材観測装置において、上記放射温度計に替えて外観が略同型のハイスピード・マイクロカメラとなし、上記ハイスピード・マイクロカメラは上記被削材からの光線に含まれる映像信号により被削材の研削面形状を計測した映像信号として計測するから、上記ハイスピード・マイクロカメラは上記被削材からの光線に含まれる映像信号により研削面形状を拡大計測する他、上記環状砥石の表面からの反射光線に含まれる映像信号により砥石表面形状をインプロセスに拡大計測できる。これにより、最終的に仕上げるべき研削面の面精度が完璧に把握して仕上げできる。
【0024】
本発明の請求項4となる被削材観測装置は、上記請求項1の被削材観測装置において、上記センサー本体の大径筒部内には、略円筒状の放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラとを120°間隔に3分割配置し、この電源と前記放射温度計とレーザー変位計とマイクロスコープとからの検出信を外部受信機器に無線送信する発信器とを備えたから、被削材の研削面に対して、3つの放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラから、砥石1回転毎に研削面温度検出と研削量検出と研削面形状検出が研削加工と同時にインプロセス計測でき、この複数の検出情報は外部受信機器により、研削制御条件がマルチプルに的確にでき、初期設定した研削面精度、研削面形状、研削面外径寸法等が完璧に把握して仕上げできる。
【0025】
本発明の請求項5となる被削材観測装置は、上記請求項4の被削材観測装置において、上記センサー本体の大径筒部内には、放射温度計とレーザー変位計、又は放射温度計とハイスピード・マイクロカメラ又は、レーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラとの1対を任意角度間隔に2分割配置したから、研削作業に対応した3つの放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラについて、任意な一対の組み合わせができ、必要に応じた2種類の研削状態の情報計測値が得られるから、初期設定した研削面精度、研削面形状、研削面外径寸法等が分割して把握して仕上げできる。
【0026】
本発明の請求項6となる被削材観測装置は、上記請求項1~5の被削材観測装置において、研削砥石の他、環状工具であるサイドカッター,ショルダーカッター等の切削工具にも広範囲にわたり適用可能できる。
【0027】
本発明の請求項7となる被削材観測装置は、上記プリズムに替えて湾曲可能なグラスファイバーとしたから、色々な外乱を受け難く、研削面の観測情報を的確に各検出機器に伝播できる。
【0028】
本発明の請求項8となる被削材観測装置は、上記請求項1~7の被削材観測装置において、工具ホルダーに替えて研削盤の回転駆動軸の先端面の支持穴にセンサー本体を装着させ、上記センサー本体の先端小径筒部には、研削砥石又は切削工具をこのフランジ部で着脱交換する主軸内蔵体としたから、工具ホルダーレスにて、研削作業と研削面の各種計測ができる。
【0029】
本発明の請求項9となる被削材観測装置による研削制御方法は、各被削材に対して所定の研削値とすべく面精度、研削量、研削温度管理等の入力値、研削加工に必須の各種研削情報を予め記憶・教示する人工知能化(AI)のコンピュータを備えたから、研削時
は各被削材の面精度、研削量、研削温度の各計測データを得て、このインプロセス情報により、適正制御状態で研削運転でき、予め設定した所定の研削値に到達した時点で研削良品として搬出でき、所定の研削値に到達しなければ研削不良品として排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態で、被削材観測装置の正面外観図と断面図である。
【
図2】本発明の実施形態で、被削材観測装置となる工具ホルダーの展開図である。
【
図3】本発明の実施形態で、各センサーと加工面との信号系の関係図である。
【
図4】本発明の実施形態で、各センサーの配置を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態で、各被削材観測装置の正面図と断面図である。
【
図6】本発明の実施形態で、各センサーの出力波形図である。
【
図7】本発明の実施形態で、被削材観測装置とこの検出系ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、
図1乃至
図7を参照して本発明の主に研削時の被削材観測装置を順次説明する。
【実施例】
【0032】
本発明の第1実施形態となる研削時の被削材観測装置100は、その全体構成を
図1と
図2で説明する。先ず、被削材観測装置100は、研削盤の回転駆動軸のテーパー穴に(ともに図示なし)、プルスタットPを介して工具ホルダーHのテーパー嵌合部Eを主軸ヘッドの回転駆動軸(ともに図示なし)に着脱させる研削砥石Gや切削工具Tの工具ホルダーである。上記工具ホルダーHには、センタースルークーラント経路Cが形成され、先端の砥石や工具にクーラント(液体又は気体)C1を供給している。そして、上記工具ホルダーHの先端面H1には、円筒縁1Aを嵌着させこの先端側中心に開口部1Bを有する円筒体(カバー)1と、上記円筒体内には大径筒部2Aを上記円筒体1内に嵌入させるとともに先端小径筒部2Bは上記開口部1Bから工具ホルダーHの先端方向に突出させ、この先端の側面には小孔h1が外径方向に開けたセンサー本体2からなる。上記センサー本体2の大径筒部2A内には略円筒状の放射温度計S1とレーザー変位計S2とハイスピード・マイクロカメラS3、これらの電源部E0と、前記放射温度計S1他が計測した温度値T他を外部受信機器(NC制御装置内に装備する、図示無)、無線送信する発信器Fとを備えている。上記センサー本体2の先端小径筒部2Bの底部とこれに直交する小孔h1の交差部に、外径方向に通孔h2を開けた研削砥石Gを、その通孔h2を上記小孔h1に連通させて着脱可能に嵌着させている。更に、研削加工を施す被削材Wの研削面W1から放射される赤外線L1を先端小径筒部2Bの外径方向の小孔位置h2で上記放射温度計方向へ屈曲させるプリズム4が配置され、更に、上記回転駆動軸側からのセンタースルークーラントCは、上記センサー本体2と上記円筒体1との適所に形成されたクーラント流路C1を介して砥石外周面及び前記砥石の通孔h2に繋がれて成り、上記放射温度計S1からのL1は砥石Gの通孔h2を介して測定する被削材Wから発射された赤外線を前記放射温度計S1にプリズム4で直角に偏向させて被削材表面W1の研削面温度Tとして温度計測可能となり、該研削面温度値を測定発信器Fから外部機器(図示なし)に送信する構成をなしている。
尚、上記砥石Gは、中心穴h3をセンサー本体の先端小径筒部2Bに挿入し、調整板JとナットNにより取り付けられ、この時に小孔h1と通孔h2は、
図1と
図3に見るように一致されている。
【0033】
しかして、
図3に図示の如く、工具ホルダーH内に備えた放射温度計S1によりダイレクトに被削材Wの表面W1から発散する赤外線L1を受光するから、被削材の研削点温度がインプロセスに検出される。この具体的な測定波形は、
図6の▲1▼のように、300℃であることが計測される。
これにより、計測した温度値Tは発信器Fにより外部受信機器(NC制御装置内に装備する、図示無し)に、無線送信して伝送されている。
しかして、研削砥石Gや加工具Tによる研削時/切削時に検出された各温度検出値Tに基づき、最適な研削条件や切削条件が各研削砥石や各加工具に対し確立制御される。かくして、最適な研削条件での研削作業・切削作業ができる。かくして、予め設定した最高条件の研削面・切削面が効率良く得られる。
【0034】
続いて、第2実施例は、上記放射温度計S1に替えて外観が略同型のレーザー変位計S2となしたものたである。その構成は、
図1と
図2と
図3において、レーザー変位計S2と成したものである。
これにより、
図3に示す如く、上記レーザー変位計S2は、被削材Wに向けて発光させたレーザー光線L2が被削材表面W1から反射するレーザー光線との往復時間を計測検出し、上記被削材Wの研削量の増加により反射するレーザー光線の時間差で生じる寸法距離の微増減を研削砥石Gの摩耗量として計測感知する。この具体的な測定波形は、
図6の▲2▼のように、振動波として計測される。
更には、上記被削材Wの研削量の増加により砥石径が減少して反射するレーザー光線L2の時間差が生じるから、この時間差から寸法距離の微増減を研削砥石の摩耗量としてインプロセスに計測感知できる。かくして、最適な研削量(又は切削量)に設定した研削作業が行なえ、最高条件の研削量の制御により研削面・切削面が効率良く得られる。
【0035】
続いて、第3実施例は
図3に見るように、上記被削材観測装置100において、上記放射温度計S1に替えて外観が略同型のハイスピード・マイクロカメラS3となし、上記ハイスピード・マイクロカメラS3は上記被削材Wからの光線L3に含まれる映像信号であって、被削材Wの研削面形状を映像信号Vとして観測する。
【0036】
しかして、
図3に示す如く、上記ハイスピード・マイクロカメラS3は、被削材Wの表面W1から反射するレーザー光線L3が描く研磨状態を画像として計測検出される。この具体的な映像は、
図6の▲3▼のように、外部機器のモニターに、研削前の画像(25μmRz)と、研削研磨後の画像(0.8μmRz)のように表示される。この画面評価により、研磨状況が評価される。
しかして、上記ハイスピード・マイクロカメラは、上記被削材からの光線に含まれる映像信号により研削面形状を拡大計測する他、上記環状砥石の表面からの反射光線に含まれる映像信号により砥石表面形状をインプロセスに拡大計測できる。これにより、最終的に仕上げるべき研削面の面精度が完璧に把握されて仕上げできる。
【0037】
続いて、上記被削材観測装置100において、第4実施例は
図2~
図4の断面図に見るように、上記センサー本体の大径筒部内には放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラとを120°間隔方向に3分割して外径方向に向けて配置し、この電源と前記放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラとからの検出信を外部受信機器に無線送信する発信器とを備える。更に、上記センサー本体の先端小径筒部の底部とこれに直交する120°間隔で研削砥石と円筒壁面に開けた小孔の交差部に被削材から発する観測信号を上記センサー本体の軸芯方向に90°屈曲させる3組のプリズム4が配置され、上記先端小径筒部の小孔を閉塞する嵌合位置に研削砥石が嵌着されるとともに該研削砥石の3箇所の外径方向に開けた通孔が小孔と連通され、上記被削材表面から放射される赤外線や表面形状や変位量等の複数情報を観測可能としたものである。
【0038】
しかして、第4実施例は、被削材Wの研削面W1に対して、3つの放射温度計S1とレーザー変位計S2とハイスピード・マイクロカメラS3からなり、砥石Gの1回転毎に研削面温度検出と研削量検出と研削面形状検出が研削加工と同時にインプロセス計測でき、この複数の検出情報は外部受信機器(図示なし)により、研削制御条件がマルチプルに的確にでき、初期設定した研削面精度、研削面形状、研削面外径寸法等が完璧に把握して仕上げできる。
【0039】
続いて、上記被削材観測装置100において、第5実施例は、センサー本体2の大径筒部2A内には、放射温度計S1とレーザー変位計S2、又は放射温度計S1とハイスピード・マイクロカメラS3、又はレーザー変位計S2とハイスピード・マイクロカメラS3との各1対だけを任意角度間隔に2分割配置することができる。
【0040】
上記第5実施例によると、研削作業に対応した3つの放射温度計とレーザー変位計とハイスピード・マイクロカメラについて、任意な一対の組み合わせができ、必要に応じた2種類の研削状態の情報計測値が得られるから、初期設定した研削面精度、研削面形状、研削面外径寸法等が適宜適切に、分割・把握して研削加工が高次元に仕上げできる。
【0041】
続いて、上記被削材観測装置100において、第6実施例は、上記実施例1~5の被削材観測装置において、研削砥石Gの他、環状工具であるサイドカッター,ショルダーカッター等の切削工具Tにも広範囲にわたり適用可能できること、もちろんである。
【0042】
続いて、上記被削材観測装置100において、第7実施例は、上記プリズム4に替えて湾曲可能なグラスファイバーGFに変更可能である。このグラスファイバーGFによると、ケーブルの途中で、色々な外乱を受け難く、研削面W1の観測情報を的確に各検出機器S1~S3に正確に伝播できる。
【0043】
続いて、上記被削材観測装置100において、第8実施例は、
図5(b)に示す如く、上記各被削材観測装置100において、主軸ヘッドSHの駆動軸に装着するホルダー内蔵タイプの工具ホルダーHに替えて、回転駆動軸H01の先端面の支持穴H02にセンサー本体2を装着させ、上記センサー本体の先端小径筒部2Bには、研削砥石G又は切削工具Tをこのフランジ穴部F1で着脱交換する主軸内蔵形式としても良い。尚、上記研削砥石Gに替えて、
図5(a)に示す、薄肉電着砥石も、実施可能である。
【0044】
上記第8実施例の被削材観測装置100によると、工具ホルダーレスにて、研削作業と研削面の各種計測ができる。
【0045】
続いて、上記被削材観測装置100において、
図7に示す第9実施例は、上記請求項1~8の各実施例による研削制御方法であって、被削材に対して所定の研削値とすべく面精度、研削量、研削温度管理等の入力値、研削加工に必須の各種研削情報を予め記憶・教示する人工知能化(AI)のコンピュータを備え、研削時は各被削材の面精度、研削量、研削温度の各計測データを得て、適正制御状態で研削運転させ、予め設定した所定の研削値に到達した時点で研削良品として搬出し、所定の研削値に到達しなければ研削不良品として排出する自動制御の研削制御方法である。
【0046】
上記第9実施例によると、各被削材に対して所定の研削値とすべく面精度、研削量、研削温度管理等の入力値、研削加工に必須の各種研削情報を予め記憶・教示する人工知能化(AI)のコンピュータを備えたから、研削時は各被削材の面精度、研削量、研削温度の各計測データを得て、このインプロセス情報により、適正制御状態で研削運転でき、予め設定した所定の研削値に到達した時点で研削良品として搬出でき、所定の研削値に到達しなければ研削不良品として排出できる作用効果が得られる、
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の研削時の被削材観測装置は、上記研削砥石Gに限定されず、工作機械におけるフライスカッターの他の各種工具T、例えば、旋盤におけるバイト等の温度検出やこれで切削加工される被削材の温度検出他にも適用実施が展開される。更に、その実施範囲は各分野への拡大展開が可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 被削材観測装置
1 カバー体
1B 開口部
2 センサー本体
2A 大径筒
2B 小径筒部
4 プリズム
C クーラント流路
E0 バッテリー
F 発信機
F1 フランジ穴部
H 工具ホルダー、
H01 回転駆動軸
H02 支持穴
GF グラスファイバー
G,T 研削砥石(切削工具)
L1,L2,L3 赤外線、レーザー光線、光線
S1 放射温度計
S2 レーザー変位計
S3 ハイスピード・マイクロカメラ
h1,h2,h3 孔
J 調整板
W 被削材
W1 研削面