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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
H04B1/10 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020006822
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021114712
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】榊原 達人
(72)【発明者】
【氏名】島田 肇
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158208(JP,A)
【文献】特開2014-086973(JP,A)
【文献】特開2009-152950(JP,A)
【文献】特開平11-068594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0023404(US,A1)
【文献】特開2016-208344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10-1/14
H04B 15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレーブの通信装置とEthernet(登録商標)の通信方式を使用して通信するマスタの通信装置であって、
前記スレーブの通信装置と通信する通信部と、
放送の受信装置において選局された第1周波数の情報を受けつける受付部とを備え、
前記通信部は、前記受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数と、前記スレーブの通信装置との通信において使用される通信速度の第2周波数との差異がしきい値よりも小さい場合に、第2周波数とは異なる第3周波数に通信速度を変更し、
前記通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更した場合、第3周波数への変更を示す変更情報を前記スレーブの通信装置に送信することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信部におけるしきい値は、放送における隣接チャンネルの間隔よりも小さく、
前記通信部において使用される第2周波数と第3周波数との差異は、放送における隣接チャンネルの間隔以上であることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
放送における隣接チャンネルの間隔は、100kHzであり、
前記通信部におけるしきい値は、50kHzであり、
前記通信部において使用される第3周波数は第2周波数よりも100kHz低いことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
放送における隣接チャンネルの間隔は、200kHzであり、
前記通信部におけるしきい値は、100kHzであり、
前記通信部において使用される第3周波数は第2周波数よりも200kHz低いことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更すべき条件を記憶し、
前記通信部は、前記受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数が、記憶した条件に含まれる場合、第3周波数に通信速度を変更することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信部は、前記受付部が、放送の受信装置において選局された第4周波数の情報であって、かつ第1周波数とは異なる第4周波数の情報を受けつけた場合、第2周波数に通信速度を戻してから、第4周波数と第2周波数に対して比較を実行することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
マスタの通信装置と、
マスタの通信装置とEthernet(登録商標)の通信方式を使用して通信するスレーブの通信装置とを備え、
前記マスタの通信装置は、
前記スレーブの通信装置と通信する通信部と、
放送の受信装置において選局された第1周波数の情報を受けつける受付部とを備え、
前記通信部は、前記受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数と、前記スレーブの通信装置との通信において使用される通信速度の第2周波数との差異がしきい値よりも小さい場合に、第2周波数とは異なる第3周波数に通信速度を変更し、
前記通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更した場合、第3周波数への変更を示す変更情報を前記スレーブの通信装置に送信し、
前記スレーブの通信装置は、前記マスタの通信装置から変更情報を受信している場合、通信速度の第3周波数を使用することを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信技術に関し、特に放送の受信がなされる状況において通信する通信装置、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された機器にステッピングモータが使用されている場合、ステッピングモータから発せられるスイッチングノイズが、同じ車両に搭載されているラジオの受信装置に干渉を及ぼすと、受信品質が悪化する。これを防ぐために、受信装置において選局されるチャンネルの情報をもとに、ステッピングモータの制御基本周波数の拡散を実行すべき、あるいは実行すべきではないかが決定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-94650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載された複数の機器は車載ネットワークにより通信可能に接続される。車載ネットワークにおける通信速度の周波数が、受信装置において受信中のチャンネルに重複する場合、通信速度の周波数が受信装置に対して干渉となるので受信品質が悪化する。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、放送の受信に及ぼす影響を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の通信装置は、スレーブの通信装置とEthernet(登録商標)の通信方式を使用して通信するマスタの通信装置であって、スレーブの通信装置と通信する通信部と、放送の受信装置において選局された第1周波数の情報を受けつける受付部とを備える。通信部は、受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数と、スレーブの通信装置との通信において使用される通信速度の第2周波数との差異がしきい値よりも小さい場合に、第2周波数とは異なる第3周波数に通信速度を変更し、通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更した場合、第3周波数への変更を示す変更情報をスレーブの通信装置に送信する。
【0007】
本開示の別の態様は、通信システムである。この通信システムは、マスタの通信装置と、マスタの通信装置とEthernet(登録商標)の通信方式を使用して通信するスレーブの通信装置とを備える。マスタの通信装置は、スレーブの通信装置と通信する通信部と、放送の受信装置において選局された第1周波数の情報を受けつける受付部とを備える。通信部は、受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数と、スレーブの通信装置との通信において使用される通信速度の第2周波数との差異がしきい値よりも小さい場合に、第2周波数とは異なる第3周波数に通信速度を変更し、通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更した場合、第3周波数への変更を示す変更情報をスレーブの通信装置に送信し、スレーブの通信装置は、マスタの通信装置から変更情報を受信している場合、通信速度の第3周波数を使用する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る車両の構成を示す図である。
図2図1の通信システムの構成を示す図である。
図3図2の通信システムの構成を示す図である。
図4図4(a)-(e)は、図2の通信システムによる処理の概要を示す図である。
図5図2の通信システムにおいて使用されるヘッダのフォーマットを示す図である。
図6図2のマスタ通信装置による処理手順を示すフローチャートである。
図7図2のマスタ通信装置による別の処理手順を示すフローチャートである。
図8図2のマスタ通信装置によるさらに別の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示を具体的に説明する前に、概要を述べる。本開示の実施例は、ラジオ等の放送を受信する受信装置を搭載した車両において、機器間を通信する通信システムに関する。受信装置は、ラジオ等の放送として、所定のチャンネルを受信する。また、通信システムにおける機器間の通信にはケーブルが使用されるが、ケーブルから発せられるノイズの周波数が前述のチャンネルに含まれる場合、ノイズが受信装置に影響を及ぼす。これにより、ラジオ受信の際に目的音と同時にノイズが聞こえてしまうことがありうる。これまで、車両における通信システムとしてCAN(Controller Area Network)が使用されることが多い。受信装置に影響を及ぼすようなノイズを発生させている場合、通信速度の周波数を変更することが有効であるが、CANでは数MHz単位でしか周波数を変更することができず、数MHz周波数を下げることによって通信容量も低下してしまう。
【0012】
本実施例における通信システムでは、CANの代わりにEthernet(登録商標)を使用する。Ethernet(登録商標)の通信方式では、PHY(Physical)レイヤと呼ばれる通信インターフェース間のみで通信がなされ、PHYにてEthernet(登録商標) BUSの通信速度の周波数の微調整が可能である。例えば、周波数の微調整として、ラジオ等の放送の隣接チャンネル分の周波数シフトがなされる。そのため、ノイズ対策用の通信速度の周波数の微調整が可能となる。しかしながら、Ethernet(登録商標)では、通信途中に通信速度の周波数が変わりうる。そのため、受信装置への影響を低減する周波数を設定しても、他の機器によって、受信装置に影響を及ぼす周波数に戻されることもある。これに対応するために、周波数を変更した場合、周波数変更を知らせるための情報を通信フレームに付加する。
【0013】
図1は、車両1の構成を示す。車両1には、第1機器10、第2機器20、ケーブル30が搭載される。第1機器10は、例えば、ラジオ受信機能を備える表示装置であり、車両1の前側に搭載される。第2機器20は、例えば、リアカメラのような撮像装置であり、車両1の後側に搭載される。第1機器10と第2機器20は、ケーブル30によって接続され、互いに通信可能である。例えば、第2機器20は映像を撮像し、ケーブル30を介して第1機器10に映像を送信する。第1機器10は、ケーブル30を介して第2機器20からの映像を受信し、映像をモニタに表示する。第1機器10は、ラジオ受信機能を備える表示装置に限定されず、第2機器20は撮像装置に限定されない。また、車両1に搭載される機器であって、かつケーブル30に接続されて通信可能な機器の数は「2」より大きくてもよい。
【0014】
図2は、通信システム1000の構成を示す。通信システム1000は、ケーブル30、マスタ通信装置100、スレーブ通信装置200を含む。マスタ通信装置100は第1機器10に含まれ、スレーブ通信装置200は第2機器20に含まれる。第1機器10には受信装置130も含まれる。マスタ通信装置100は、制御部110、通信部112、発振部114、受付部116を含み、通信部112は記憶部120を含む。スレーブ通信装置200は、制御部210、通信部212、発振部214を含む。
【0015】
受信装置130は、ラジオ等の放送を受信する。当該放送では、100kHz間隔で複数のチャンネルが配置されており、受信装置130は、いずれかのチャンネルを選局して受信する。これは、放送における隣接チャンネルの間隔が100kHzであることに相当する。シークストップが実行された場合、あるいはプリセットで選局のときにシーク感度以上のレベルの信号を受信した場合、マスタ通信装置100において通信速度の周波数の決定処理を実行させるために、受信装置130は、選局されたチャンネルの情報(以下、「選局情報」という)をマスタ通信装置100に出力する。選局されたチャンネルの搬送周波数を第1周波数とする場合、選局情報には第1周波数の情報が含まれる。
【0016】
マスタ通信装置100はケーブル30を介してスレーブ通信装置200と通信する。図3は、通信システム1000の構成を示す。これは、図2のうち、ケーブル30、制御部110、通信部112、制御部210、通信部212を示す。制御部110と制御部210は、MAC(Medium Access Control)レイヤ以上の処理を実行し、通信部112と通信部212は、PHYレイヤの処理を実行する。制御部110は、100Mbpsで信号を通信部112に送信(Tx)し、通信部112は、ツイストペアで形成されるケーブル30を介して100Mbpsで信号を通信部212に送信する。通信部212は通信部112からの信号を受信し、制御部210は、100Mbpsで信号を通信部212から受信(Rx)する。一方、制御部210は、100Mbpsで信号を通信部212に送信(Tx)し、通信部212は、ケーブル30を介して100Mbpsで信号を通信部112に送信する。通信部112は通信部212からの信号を受信し、制御部110は、100Mbpsで信号を通信部112から受信(Rx)する。ここで、ケーブル30において全二重通信がなされる。
【0017】
図4(a)-(e)は、通信システム1000による処理の概要を示す。図4(a)は、受信装置130において受信している信号、つまり選局したチャンネルの信号のスペクトルを示す。一例として当該チャンネルに対する第1周波数は「100MHz」である。図4(b)は、マスタ通信装置100とスレーブ通信装置200との間でケーブル30を介した通信において使用される通信速度の周波数(以下、「第2周波数」)を示す。一例として、第2周波数は「100.01MHz」である。
【0018】
図4(c)は、図4(a)と図4(c)とを合わせた図である。ここで、選局したチャンネルの信号の帯域幅は100kHzであるので、選局したチャンネルの信号のスペクトルは、100MHzを中心にして99.95MHzから100.05MHzを占める。そのため、100.01MHzの第2周波数は、選局したチャンネルの信号のスペクトル内に存在するので、第2周波数の信号による干渉の影響を受信装置130が受ける。このような場合、受信装置130において再生される音声にノイズが含まれる。第2周波数の信号による干渉の影響を低減するための通信速度の周波数の決定処理を説明するために、図4(a)-(e)は後述し、図2に戻る。
【0019】
マスタ通信装置100の受付部116は、選局情報を受信装置130から受けつける。受付部116は、選局情報を制御部110に出力する。制御部110は、受付部116から受けつけた選局情報を通信部112に出力する。通信部112の記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)であり、選局情報に含まれた第1周波数の情報を記憶する。また、記憶部120は、通信部112の通信速度の第2周波数の情報も記憶する。
【0020】
通信部112は、記憶部120に記憶された第1周波数と第2周波数とを比較する。第1周波数と第2周波数との差異がしきい値以上である場合、通信部112は、第2周波数の維持を決定する。ここで、しきい値は、放送における隣接チャンネルの間隔よりも小さく、例えば50kHzである。第1周波数と第2周波数との差異がしきい値よりも小さい場合、通信部112は、第2周波数とは異なる第3周波数に通信速度を変更する。第2周波数と第3周波数との差異は、放送における隣接チャンネルの間隔以上であり、例えば、第3周波数は第2周波数よりも100kHz低くされる。これは、隣接チャンネル分の周波数シフトを実行することに相当する。
【0021】
発振部114は、例えば、外部水晶発振器、外部クロック発振器であり、所望の周波数を有する発振信号を分周によって生成して、通信部112に出力する。その際、発振部114は、通信部112において使用される通信速度の周波数、例えば、第2周波数、第3周波数になるように分周の割合を調整する。
【0022】
通信部112は、決定した通信速度の周波数、つまり発振部114から受けつけた発振信号を使用してスレーブ通信装置200との通信を実行する。ここで、スレーブ通信装置200においても、発振部214が、所望の周波数を有する発振信号を分周によって生成して通信部212に出力して、通信部212が発振部214から受けつけた発振信号を使用してマスタ通信装置100との通信を実行する。そのため、通信部112が第3周波数を使用しても、通信部212が第2周波数を使用してしまうこともありえる。通信部212による第2周波数の使用によって、受信装置130に影響が及ぼされる。このような状況の発生を防止するために、通信部112は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更した場合、第3周波数への変更を示す変更情報(以下、「周波数変更フラグ」という)を信号、例えば通信フレームに含めてスレーブ通信装置200に送信する。例えば、第3周波数に変更される場合、周波数変更フラグが「1」とされ、第3周波数に変更されない場合、周波数変更フラグが「0」とされる。さらに、通信部112が第3周波数を使用し続ける間にわたって周波数変更フラグは「1」にされる。
【0023】
図5は、通信システム1000において使用されるヘッダのフォーマットを示す。通信フレームの前側部分にヘッダは配置される。ヘッダには、addr(アドレス)等の複数種類の情報が格納される。複数種類の情報のうちの1つが周波数変更フラグである。図2に戻る。スレーブ通信装置200の通信部212は、ケーブル30を介してマスタ通信装置100から信号を受信する。通信部212は、信号のヘッダから周波数変更フラグを抽出し、周波数変更フラグの内容を確認する。周波数変更フラグが「0」である場合、通信部212は第2周波数を固定して使用する。また、通信部212は第2周波数と第3周波数とのいずれかを自由に切りかえて使用してもよい。一方、周波数変更フラグが「1」である場合、通信部212は通信速度の第3周波数の使用を決定する。特に、通信速度の第3周波数は、通信部212における受信および送信の際に使用される。発振部214は、通信部212において決定した周波数に応じた分周を実行する。マスタ通信装置100は、受信装置130における選局の直後に通信速度の周波数の決定処理を開始し、通信速度の周波数の決定処理は選局後のミュート時間内に完了させる。
【0024】
通信速度の周波数の決定処理によって、図4(c)のような状況が発生しうる場合に、図4(b)の代わりに、図4(d)のような通信速度の第3周波数が使用される。ここで、第3周波数は「99.91MHz」である。図4(e)は、図4(a)と図4(d)とを合わせた図である。図示のごとく、99.91MHzの第3周波数は、選局したチャンネルの信号のスペクトル内に存在しないので、第3周波数の信号による干渉の影響は受信装置130において低減される。図2に戻る。
【0025】
通信速度の周波数の決定処理には、次の処理が追加されてもよい。記憶部120は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更すべき条件を記憶する。変更すべき条件として、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更すべき受信装置130で選局されるチャンネルの周波数の一覧が示される。通信部112は、受付部116において受けつけた選局情報に含まれる第1周波数が、記憶部120に記憶した条件に含まれる場合、第3周波数に通信速度を変更することを決定する。
【0026】
これまでの処理に続いて、受信装置130において、既に選局されていたチャンネルとは異なったチャンネル(以下、「新チャンネル」という)が選局される。新チャンネルの搬送周波数は、第1周波数とは異なる第4周波数である。受信装置130は、選局情報をマスタ通信装置100に出力する。選局情報には第4周波数の情報が含まれる。
【0027】
マスタ通信装置100の受付部116は、受信装置130から受けつけ選局情報を制御部110に出力し、制御部110は、受付部116から受けつけた選局情報を通信部112に出力する。通信部112の記憶部120は、選局情報に含まれた第4周波数の情報を記憶する。通信部112は、第4周波数の情報が含まれた選局情報を受けつけた場合、通信速度を第3周波数に切りかえている場合、第2周波数に通信速度を戻して、記憶部120に通信速度の第2周波数の情報を記憶させる。一方、通信部112は、第4周波数の情報が含まれた選局情報を受けつけた場合、通信速度が第2周波数である場合、第2周波数を維持する。これに続いて通信部112においてなされる第4周波数と第2周波数に対する比較処理はこれまでと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0028】
さらに、車両1のアクセサリ電源(ACC)がオフにされる場合、通信部112は、通信速度の周波数と周波数変更フラグの情報を記憶部120に記憶させる。また、車両1のACCがオンにされる場合、通信部112は、通信速度の周波数と周波数変更フラグの情報を記憶部120から読み出して、それらを使用する。
【0029】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他のLSI(Large Scale Integration)で実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0030】
以上の構成による通信システム1000の動作を説明する。図6は、マスタ通信装置100による処理手順を示すフローチャートである。受信装置130で選局がなされる(S10)。通信部112が選局情報を受けつける(S12)。選局情報に含まれた周波数が、条件に含まれた周波数でない場合(S14のN)、通信部112は、選局周波数とEthernet(登録商標) Busの通信速度の周波数とを比較する(S16)。差異が50kHz以上であれば(S18のY)、通信部112は、Ethernet(登録商標) Busの通信速度の周波数を現在の周波数のままに決定する(S22)。
【0031】
選局情報に含まれた周波数が、条件に含まれた周波数である場合(S14のY)、あるいは差異が50kHz以上でない場合(S18のN)、通信部112は100kHz分だけ通信速度の周波数を下げる(S20)。通信部112は、Ethernet(登録商標) Busの通信速度の周波数を、100kHz分だけ下げた周波数に決定する(S22)。発振部114は、分周を実行し、該当周波数となるように設定する(S24)。通信部112は、通信フレームの周波数変更フラグを設定する(S26)。通信部112は、スレーブ通信装置200に周波数変更フラグを送信する(S28)。
【0032】
図7は、マスタ通信装置100による別の処理手順を示すフローチャートである。通信部112は、通信速度の周波数の決定処理を実行する(S50)。受信装置130において別のチャンネルが選局される(S52)。通信部112は、設定を初期の状態に戻す(S54)。通信部112は、通信速度の周波数の決定処理を実行する(S56)。
【0033】
図8は、マスタ通信装置100によるさらに別の処理手順を示すフローチャートである。通信部112は、通信速度の周波数の決定処理を実行する(S100)。ACCがオフにされる(S102)。通信部112は、記憶部120に通信速度の周波数の情報と周波数変更フラグ情報を格納する(S104)。ACCがオンにされる(S106)。通信部112は、記憶部120を参照し、通信速度の周波数の情報と周波数変更フラグ情報を現在の設定に反映させる(S108)。
【0034】
本実施例によれば、選局された周波数と通信速度の周波数とが近ければ通信速度の周波数を変更するので、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。また、通信部において通信速度の周波数の変更を決定するので、第1機器全体ではなく、通信部のみでのノイズへの対策が可能となる。また、通信速度の周波数を変更した場合に変更情報を送信するので、スレーブ通信装置における通信速度の周波数の変更を禁止できる。また、スレーブ通信装置における通信速度の周波数の変更が禁止されるので、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。また、スレーブ通信装置において通信速度の周波数が変えられてしまうことによるノイズの発生を抑制できる。
【0035】
また、選局された周波数と通信速度の周波数とが隣接チャンネルの間隔よりも小さければ、通信速度の周波数を隣接チャンネルの間隔以上変更するので、選局された周波数に対する通信速度の周波数による影響を抑制できる。また、通信速度の微調整がなされるので、通信容量の制約を回避できる。また、隣接チャンネルの間隔が100kHzである場合に、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。また、条件をもとに通信速度の周波数を変更するので、変更処理の期間を短縮できる。また、新たに選局された周波数の情報を受けつけた場合、新たに選局された周波数と、通信速度の周波数とを比較するので、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。
【0036】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の通信装置は、スレーブの通信装置と通信するマスタの通信装置であって、スレーブの通信装置と通信する通信部と、放送の受信装置において選局された第1周波数の情報を受けつける受付部とを備える。通信部は、受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数と、スレーブの通信装置との通信において使用される通信速度の第2周波数との差異がしきい値よりも小さい場合に、第2周波数とは異なる第3周波数に通信速度を変更し、通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更した場合、第3周波数への変更を示す変更情報をスレーブの通信装置に送信する。
【0037】
この態様によると、選局された周波数と通信速度の周波数とが近ければ通信速度の周波数を変更して、変更情報を送信するので、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。
【0038】
通信部におけるしきい値は、放送における隣接チャンネルの間隔よりも小さく、通信部において使用される第2周波数と第3周波数との差異は、放送における隣接チャンネルの間隔以上であってもよい。この場合、選局された周波数と通信速度の周波数とが隣接チャンネルの間隔よりも小さければ、通信速度の周波数を隣接チャンネルの間隔以上変更するので、選局された周波数に対する通信速度の周波数による影響を抑制できる。
【0039】
放送における隣接チャンネルの間隔は、100kHzであり、通信部におけるしきい値は、50kHzであり、通信部において使用される第3周波数は第2周波数よりも100kHz低い。この場合、隣接チャンネルの間隔が100kHzである場合に、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。
【0040】
放送における隣接チャンネルの間隔は、200kHzであり、通信部におけるしきい値は、100kHzであり、通信部において使用される第3周波数は第2周波数よりも200kHz低い。この場合、隣接チャンネルの間隔が200kHzである場合に、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。
【0041】
通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更すべき条件を記憶し、通信部は、受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数が、記憶した条件に含まれる場合、第3周波数に通信速度を変更してもよい。この場合、条件をもとに通信速度の周波数を変更するので、変更処理の期間を短縮できる。
【0042】
通信部は、受付部が、放送の受信装置において選局された第4周波数の情報であって、かつ第1周波数とは異なる第4周波数の情報を受けつけた場合、第2周波数に通信速度を戻してから、第4周波数と第2周波数に対して比較を実行してもよい。この場合、新たに選局された周波数の情報を受けつけた場合、新たに選局された周波数と、通信速度の周波数とを比較するので、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。
【0043】
本開示の別の態様は、通信システムである。この通信システムは、マスタの通信装置と、マスタの通信装置と通信するスレーブの通信装置とを備える。マスタの通信装置は、スレーブの通信装置と通信する通信部と、放送の受信装置において選局された第1周波数の情報を受けつける受付部とを備える。通信部は、受付部において受けつけた情報に含まれる第1周波数と、スレーブの通信装置との通信において使用される通信速度の第2周波数との差異がしきい値よりも小さい場合に、第2周波数とは異なる第3周波数に通信速度を変更し、通信部は、通信速度を第2周波数から第3周波数に変更した場合、第3周波数への変更を示す変更情報をスレーブの通信装置に送信し、スレーブの通信装置は、マスタの通信装置から変更情報を受信している場合、通信速度の第3周波数を使用する。
【0044】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0045】
本実施例において隣接チャンネルの間隔は100kHzとされている。しかしながらこれに限らず例えば、隣接チャンネルの間隔が200kHzとされてもよい。その際、しきい値は100kHzとされ、第3周波数は第2周波数よりも200kHz低くされる。本変形例によれば、隣接チャンネルの間隔が200kHzである場合に、放送の受信に及ぼす影響を抑制できる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両、 10 第1機器、 20 第2機器、 30 ケーブル、 100 マスタ通信装置、 110 制御部、 112 通信部、 114 発振部、 116 受付部、 120 記憶部、 130 受信装置、 200 スレーブ通信装置、 210 制御部、 212 通信部、 214 発振部、 1000 通信システム。
図1
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図8