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特許7386431スイッチング装置、スイッチング電源装置、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】スイッチング装置、スイッチング電源装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
H02M7/06 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020060588
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021164166
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 雄士
(72)【発明者】
【氏名】柴野 勇士
(72)【発明者】
【氏名】冨永 麗司
(72)【発明者】
【氏名】針本 修次
(72)【発明者】
【氏名】冨江 諭
(72)【発明者】
【氏名】宮本 孝雄
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169350(JP,A)
【文献】特開2014-010307(JP,A)
【文献】特開平08-171843(JP,A)
【文献】特開平10-312725(JP,A)
【文献】特開2010-074922(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00,7/00
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源である複数相交流電源の各相に対応する複数の電力変換回路を有するスイッチング装置であって、
前記複数の電力変換回路のうち、前記外部電源の特定の相に対応する特定の電力変換回路以外の他の電力変換回路の接続先を、当該他の電力変換回路に対応する相又は前記特定の相に切り替え可能な切替リレーを有する切替回路と、
交流電圧に基づき推定された前記交流電圧がゼロクロスする時刻に前記切替リレーの動作を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、前記交流電圧に基づき、前記交流電圧がゼロクロスしてから前記制御部が前記交流電圧のゼロクロス点を検出するまでに要する検出遅延時間を算出し、当該検出遅延時間を用いて、前記制御部が前記交流電圧のゼロクロス点を検出したゼロクロス点検出時刻を補正し、補正後のゼロクロス点検出時刻に前記切替リレーの動作を制御するスイッチング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出遅延時間に加えて、前記切替リレーの動作遅延時間を用いて、前記ゼロクロス点検出時刻を補正する請求項に記載のスイッチング装置。
【請求項3】
ノイズを除去するコンデンサ及びコイルを有するノイズフィルタをさらに備え、
前記コイルは、前記切替回路の前記電力変換回路側に設けられる請求項1又は2に記載のスイッチング装置。
【請求項4】
前記ノイズフィルタは、複数の前記コンデンサ及び前記コイルを備え、
複数の前記コイルの全てが前記切替回路の前記電力変換回路側に設けられる請求項に記載のスイッチング装置。
【請求項5】
前記コイルは、コモンモードチョークコイル又はノーマルモードチョークコイルである請求項又はに記載のスイッチング装置。
【請求項6】
請求項1からの何れか一項に記載のスイッチング装置と、
複数の前記電力変換回路と、
を備えるスイッチング電源装置。
【請求項7】
請求項に記載のスイッチング電源装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング装置、スイッチング電源装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流電圧を直流電圧に変換する複数の電力変換回路を備えたスイッチング電源装置が開示されている。当該スイッチング電源装置は、複数の電力変換回路のそれぞれに対応する交流電源の相と、複数の電力変換回路に共通の相とを切り替える切替回路を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-169350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の従来技術では、切替回路の切り替えタイミングについて考慮されていないため、切替回路の切り替えタイミングによっては、切替回路が備える切替リレーの接点に突入電流が流れ、切替回路の信頼性が低下する虞がある。従って、従来技術では、切替回路に流れる突入電流の発生を抑制する上での改善の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、突入電流防止回路を用いることなく切替回路に流れる突入電流の発生を抑制するスイッチング装置、スイッチング電源装置、及び車両の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係るスイッチング装置は、外部電源である複数相交流電源の各相に対応する複数の電力変換回路を有するスイッチング装置であって、前記複数の電力変換回路のうち、前記外部電源の特定の相に対応する特定の電力変換回路以外の他の電力変換回路の接続先を、当該他の電力変換回路に対応する相又は前記特定の相に切り替え可能な切替リレーを有する切替回路と、交流電圧に基づき推定された前記交流電圧がゼロクロスする時刻に前記切替リレーの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記交流電圧に基づき、前記交流電圧がゼロクロスしてから前記制御部が前記交流電圧のゼロクロス点を検出するまでに要する検出遅延時間を算出し、当該検出遅延時間を用いて、前記制御部が前記交流電圧のゼロクロス点を検出したゼロクロス点検出時刻を補正し、補正後のゼロクロス点検出時刻に前記切替リレーの動作を制御する。
【0007】
本開示の一実施例に係るスイッチング電源装置は、上記のスイッチング装置と、複数の前記電力変換回路と、を備える。
【0008】
本開示の一実施例に係る車両は、上記のスイッチング電源装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、突入電流防止回路を用いることなく切替回路に流れる突入電流の発生を抑制するスイッチング装置、スイッチング電源装置、及び車両を構築できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る車両の構成を示す図
図2】本開示の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成例を示す図
図3】スイッチング電源装置の動作を説明するための図
図4】本実施の形態に係るスイッチング装置による切替リレーの制御方法を説明するためのフローチャート
図5】切替リレーの動作タイミングを説明するためのタイミングチャート
図6】ゼロクロス点付近で切替リレーが切り替えられた場合の効果を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
(実施の形態)
図1は本開示の実施の形態に係る車両の構成を示す図である。車両300は、例えば、乗用車、貨物車、乗合車、自動二輪車などである。車両300は、スイッチング電源装置100、車載電池110、電装品150、DCDC(Direct Current to Direct Current)コンバータ130、インバータ120及びモータ140を備える。
【0014】
スイッチング電源装置100は、交流電源200から供給される交流を直流に変換して、車載電池110へ供給する電力変換装置である。スイッチング電源装置100の構成の詳細は後述する。なお、スイッチング電源装置100は、車両300以外にも例えば航空機、遊戯設備、無停電電力変換回路などに設けてもよい。
【0015】
交流電源200は、例えば急速充電設備に搭載される電源、商用電源などである。交流電源200は、単相交流電源、二相交流電源、三相交流電源などである。車載電池110は、車両300に搭載される走行用モータ(主電動機)、電装品150などを駆動するための電力を蓄電する手段であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などである。電装品150は、例えば、ナビゲーション、オーディオ装置、エアコン、パワーウィンドウ、デフォッガ、ECU(Electronic Control Unit)、GPS(Global Positioning System)モジュール、車載カメラなどである。インバータ120は、直流電圧を交流電圧に変換して主電動機へ供給する電力変換装置である。
【0016】
次に図2を参照してスイッチング電源装置100の構成例について説明する。図2は本開示の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成例を示す図である。スイッチング電源装置100は、スイッチング装置10と、複数の電力変換回路4-1,4-2,4-3と、制御部11とを備える。以下では、複数の電力変換回路4-1,4-2,4-3を区別しない場合、「電力変換回路4」と称する。
【0017】
スイッチング装置10は、複数のノイズフィルタ5-1,5-2,5-3と切替回路2とを備える。以下では、複数のノイズフィルタ5-1,5-2,5-3を区別しない場合、「ノイズフィルタ5」と称する。ノイズフィルタ5は、複数の電力変換回路4-1,4-2,4-3のそれぞれに対応する相に設けられている。ノイズフィルタ5は、交流電源200から電力変換回路4へのノイズの進入と電力変換回路4から交流電源200へのノイズの流出とを抑制するためノイズ除去手段である。
【0018】
電源ラインL1に設けられるノイズフィルタ5-1は、コンデンサ1-1及びコイル3-1を備える。電源ラインL1は、交流電源200が単相交流電源の場合には単相電流が流れ、交流電源200が三相交流電源の場合には例えばU相(第1相)電流が流れる電線である。電源ラインL2に設けられるノイズフィルタ5-2は、コンデンサ1-2及びコイル3-2を備える。電源ラインL2は、交流電源200が単相交流電源の場合には単相電流が流れ、交流電源200が三相交流電源の場合には例えばV相(第2相)電流が流れる電線である。電源ラインL3に設けられるノイズフィルタ5-3は、コンデンサ1-3及びコイル3-3を備える。電源ラインL3は、交流電源200が三相交流電源の場合、例えばW相(第3相)電流が流れる電線である。中性性である電源ラインNは交流電源200から各電力変換回路4へと延伸する。
【0019】
以下では、コンデンサ1-1,1-2,1-3を区別しない場合、「コンデンサ1」と称し、コイル3-1,3-2,3-3を区別しない場合、「コイル3」と称する。コンデンサ1は、Xコンデンサ、Yコンデンサなどである。コイル3は、コモンモードチョークコイル、ノーマルモードチョークコイルなどである。コイル3は、例えば、切替回路2の電力変換回路4側に設けられる。
【0020】
なお、コイル3の設置場所は、図示例に限定されず、切替回路2の交流電源200側に設けてもよい。ただし、切替回路2の交流電源200側にコイル3を設けた場合、切替回路2の切替リレー2aが交流電源200の電源ラインL1と電力変換回路4-2を接続するモードのときに、当該コイル3-1に流れる電流は、切替回路2の電力変換回路4側に設けた場合のコイル3-1に流れる電流の2倍の定格電流が必要になる。このため、切替回路2の交流電源200側にコイル3を設けた場合、コイル3の定格が大きくなると共に、コイル3の鉄損及び銅損に起因して発生する熱が増加する。またコイル3の鉄損により電力損失が増加する。従って、コイル3は、切替回路2の電力変換回路4側に設けることが好ましい。
【0021】
切替回路2は、複数の電力変換回路4に交流電流を供給する交流電源200の相を、複数の電力変換回路4のそれぞれに対応する相と、複数の電力変換回路4に共通の相との間で切り替える切替手段である。
【0022】
切替回路2は、例えば、切替リレー2a、コイル2b、及び駆動回路2cを備える。駆動回路2cは、制御部11から入力される制御信号を、切替リレー2aを駆動可能な値に増幅し、コイル2bに印加する。
【0023】
制御信号は、切替リレー2aの接続状態を指示する信号であり、例えばハイレベル又はローレベルの2値をとる矩形波信号である。駆動回路2cで増幅された信号がコイル2bに印加されることにより、切替リレー2aは、電源ラインL1に接続される状態と電源ラインL2に接続される状態とを切り替える。なお、切替回路2は、機械式の切替手段に限定されず、半導体スイッチング素子で構成してもよい。
【0024】
電力変換回路4は、例えば、交流電圧を直流電圧に変換するACDC(Alternating Current to Direct Current)コンバータと、当該直流電圧を所定の値の電圧に変換するDCDCコンバータとを備える。なお、電力変換回路4は、ACDCコンバータとDCDCコンバータの双方を備えたものに限定されず、ACDCコンバータのみを備えるものでもよい。
【0025】
制御部11は、交流電圧のゼロクロスタイミングであるゼロクロス点(ZCP)を検出するゼロクロス点検出部12と、切替リレー2aを駆動するための制御信号を生成する制御信号生成部13とを備える。
【0026】
次に図2及び図3を参照して、スイッチング電源装置100の動作を説明する。図3はスイッチング電源装置の動作を説明するための図である。交流電源200が単相交流電源の場合、図3に示すように、切替リレー2aが電源ラインL1に接することにより、電源ラインL1に流れる単相交流電流は、切替回路2でコイル3-1及びコイル3-2に分配され、電力変換回路4-1及び電力変換回路4-2に供給される。これにより、交流電源200が単相交流電源の場合でも、定格容量が小さい電力変換回路4を複数台利用できるため、スイッチング電源装置100全体の定格容量を大きくできる。
【0027】
また、交流電源200が三相交流電源の場合、図2に示すように、切替リレー2aが電源ラインL2に接することにより、電源ラインL1に流れる第1相交流電流、及び電源ラインL2に流れる第2相交流電流が、それぞれ電力変換回路4-1、及び電力変換回路4-2に供給される。これにより、複数の電力変換回路4を利用してスイッチング電源装置100全体の定格容量をより大きくすることができる。
【0028】
ここで、交流電源のピーク値付近の電圧がスイッチング電源装置100に印加されたタイミングで、例えば切替リレー2aが電源ラインL1又は電源ラインL2に接触すると、切替リレーの接点に突入電流(過電流)が流れて、当該接点が摩耗又は破壊する虞がある。
【0029】
このような過電流を防止する方法として、突入電流防止回路を設けた場合、突入電流防止回路により、スイッチング装置10の小型化の妨げになるだけでなく、スイッチング装置10の製造コストが上昇する。さらに、スイッチング装置10を構成する部品の数が増加することにより、構造が複雑化して信頼性の低下を招く虞があるため、好ましくない。
【0030】
本実施の形態に係るスイッチング装置10は、交流電圧のゼロクロスタイミングの付近で切替リレー2aの電源ラインL1又は電源ラインL2に接触させる制御を行うことにより、突入電流防止回路を追加することなく、切替リレー2aの摩耗などを防止するように構成されている。以下では、図4などを参照して、交流電圧のゼロクロスタイミング付近で切替リレー2aを電源ラインL1又は電源ラインL2に接触させる動作について説明する。
【0031】
図4は本実施の形態に係るスイッチング装置による切替リレーの制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0032】
制御信号生成部13は、不図示の電圧検出手段で検出された交流電圧の値を示す電圧情報を入力し、電圧情報に基づき交流電圧の実効値及び周波数を測定する(ステップS1)。
【0033】
次に、制御信号生成部13は、交流電圧の実効値などを用いて、(1)式により、位相角度θ[°]を算出する(ステップS2)。位相角度は交流電圧とゼロクロス点検出部12で検出される交流電圧との位相差である。(1)式のVthは(2)式により算出できる。(1)式のV_ATTpeakは(3)式により算出できる。VthはZCPを検出する交流電圧と比較するアナログ基準電圧(閾値)である。交流電圧は仕様によって異なるため、交流電圧の数十分の一程度のアナログ基準電圧(閾値)を設けている。V_ATTpeakは交流電圧のピーク値をアナログ変換した値である。Vrmsは交流電圧の実効値である。Vohはコンパレータの電源電圧である。定数aは実効値を比較値に変換するための補正係数である。定数bは電源電圧を比較値に変換するための補正係数である。定数cは交流電圧をV_ATTpeakに変換するための補正係数である。
【0034】
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
【数3】
【0037】
制御信号生成部13は、位相角度を用いて、(4)式により、検出遅延時間(ZCP_Delay)を算出する(ステップS3)。fは交流電源の周波数である。検出遅延時間は、交流電圧がゼロクロスしてから、ゼロクロス点検出部12がゼロクロス点を検出するまでに要する時間である。検出遅延時間が発生する理由は、ゼロクロス点検出部12では、交流電圧のゼロクロス点を検出する過程で交流電圧の平均値などを得るためのフィルタ処理が行われることにより、交流電圧がゼロクロスした時点からゼロクロス点検出部12でゼロクロス点が検出される時点までにはタイムラグが生じるためである。
【0038】
【数4】
【0039】
制御信号生成部13は、(5)式により、切替リレー2aを動作させる制御信号の出力タイミング(SWrelayEN)を算出し、算出した出力タイミングに、例えば制御信号の出力をハイレベルからローレベルに切り替える(ステップS4)。
【0040】
【数5】
【0041】
(5)式の「ZCPdetect」は、ゼロクロス点検出部12でゼロクロス点が検出された時刻であるゼロクロス点検出時刻を表す。
【0042】
(5)式の「SW_R_delay」は、切替リレー2aの動作遅延時間である。動作遅延時間は、例えば、切替回路2の駆動回路2cに制御信号が入力された時点から、切替リレー2aが電源ラインL1又は電源ラインL2に接触する時点までに要する時間である。動作遅延時間は、切替回路2の仕様、切替回路2の製造公差などにより変化する。制御信号生成部13は、例えば、複数の切替回路2のそれぞれの仕様と動作遅延時間とを対応付けたテーブル情報、複数の切替回路2のそれぞれの製造公差の平均値と動作遅延時間とを対応付けたテーブル情報などを参照することにより、切替リレー2aの仕様などに対応した動作遅延時間を読み出して、(5)式に設定する。これらのテーブル情報は、スイッチング装置10のメモリ装置に予め記録されたものでもよいし、スイッチング装置10の外部機器(センタサーバなど)から配信されるものでもよい。
【0043】
なお、制御信号生成部13は、ゼロクロス点検出時刻から検出遅延時間のみを減じることで、制御信号の出力タイミンを算出してもよい。このように算出された制御信号の出力タイミングを用いた場合でも、ゼロクロス点付近で切替リレー2aに電源ラインL1又は電源ラインL2を接触させることができるため、突入電流による影響を低減できる。
【0044】
ただし、ゼロクロス点検出時刻から、検出遅延時間と動作遅延時間の双方を減じることにより、切替回路2の切り替えタイミングが補償され、より一層ゼロクロス点に近いタイミングで、切替リレー2aを電源ラインL1又は電源ラインL2に接触させることができる。これにより突入電流による影響をより一層低減できる。従って、制御信号生成部13は、ゼロクロス点検出時刻から検出遅延時間と動作遅延時間の双方を減じるように構成することが好ましい。
【0045】
次に図5を参照して切替リレー2aの動作タイミングについて詳細に説明する。図5は切替リレーの動作タイミングを説明するためのタイミングチャートである。図5には、電源ラインL1の交流電圧と、ゼロクロス点検出部12による電源ラインL1のゼロクロス点検出タイミングと、制御信号の状態と、キックスタート指令の状態と、切替リレー2aの動作状態と、制御部11の動作状態とが示される。
横軸は時間である。
【0046】
例えばスイッチング電源装置100の電源が投入された時刻t1の後、制御信号生成部13は、交流電圧の電圧値及び周波数を測定しながら相切替指令を待機する。相切替指令は、例えば車載機にインストールされる相切替アプリケーションから入力される指令である。
【0047】
制御信号生成部13は、時刻t2に相切替指令を入力したとき、交流電源の実効値が安定するまで所定時間待機する。この待機時間は例えば1[s]である。
【0048】
制御信号生成部13は、待機時間経過後の時刻t3に、前述した検出遅延時間の演算を開始する。なお、検出遅延時間の演算回数については、交流電源200の使用や、制御部11を構成するプロセッサの仕様などに応じて、適宜設定されるものとする。
【0049】
時刻t3から一定時間経過後の時刻t4において、制御部11は、キックスタート指令をActiveな状態(例えばローレベル)に設定する。キックスタート指令は、制御信号生成部13による制御信号の出力を有効にするか否かを決定する信号である。なお、キックスタート指令は、少なくとも、時刻t5から前述した検出遅延時間が経過するまでは、Activeな状態に維持される。キックスタートは、切替リレー2aを切り替える際、コイル間に定常より高い電圧を印可させて切り替えのエネルギーに耐えられるようにする機能である。
【0050】
検出遅延時間の演算を完了した制御信号生成部13は、(5)式により算出される出力タイミングである時刻t5に、制御信号の出力をハイレベルからローレベルに切り替える。これにより、時刻t5から一定時間経過した時刻t6に、切替リレー2aが電源ラインL1又は電源ラインL2に接触する。図5に示すように、時刻t6は交流電圧のゼロクロス点付近の時刻であるため、切替リレー2aは交流電圧のゼロクロス点付近で切り替えられていることが分かる。
【0051】
図6はゼロクロス点付近で切替リレーが切り替えられた場合の効果を説明するための図である。図6には、電源ラインL1に印加される交流電圧の波形(L1電圧)と、電源ラインL2に印加される交流電圧の波形(L2電圧)と、電源ラインL2に流れる突入電流(L2電流)とが示される。L2電流は、切替リレー2aの切り替えに伴い流れる過電流である。
【0052】
図6の上側の図には、ゼロクロス点から例えば数msec経過した時点で切替リレー2aが切り替えられたときに流れる突入電流の波形が示される。図6の下側の図には、ゼロクロス点付近で切替リレー2aが切り替えられたときに流れる突入電流の波形が示される。
【0053】
本実施の形態の制御部11は、交流電圧に基づき、交流電圧がゼロクロスしてから制御部11が交流電圧のゼロクロス点を検出するまでに要する検出遅延時間を算出する。そして、制御部11は、当該検出遅延時間を用いて、制御部11が交流電圧のゼロクロス点を検出したゼロクロス点検出時刻を補正し、補正後のゼロクロス点検出時刻に切替リレー2aの動作を制御する。これにより、ゼロクロス点付近で切替リレー2aを切り替えることができ、突入電流防止回路を用いることなく、突入電流の派生を抑制できる。
【0054】
なお、本実施の形態では、コンデンサ1及びコイル3を、1つの電源ラインに対してそれぞれ1つ設ける構成例について説明したが、コンデンサ1及びコイル3は、1つの電源ラインに対して複数設けてもよい。例えば、切替回路2の交流電源200側に、コンデンサ1及びコイル3の組を1又は複数を設け、かつ、切替回路2の電力変換回路4側に、コイル3及びコンデンサ1の組を1又は複数設けてもよい。これにより、ノイズの進入及びノイズの流出をより一層抑制できる。
【0055】
また、1つの電源ラインに対してコンデンサ1及びコイル3の組を複数設ける場合、複数のコイル3の全てを切替回路2の電力変換回路4側に設けることが好ましい。このように構成することで、切替回路2の交流電源200側にコイル3を設けた場合に比べて、コイル3による電力損失を抑制できる。このように構成されるスイッチング装置10をスイッチング電源装置100に設けることにより、電力変換効率を高めながらノイズに対してロバストなスイッチング電源装置100を実現できる。
【0056】
以上に説明したように本実施の形態に係るスイッチング装置10は、外部電源である複数相交流電源の各相に対応する複数の電力変換回路を有するスイッチング装置であって、複数の電力変換回路のうち、外部電源の特定の相に対応する特定の電力変換回路以外の他の電力変換回路の接続先を、当該他の電力変換回路に対応する相又は特定の相に切り替え可能な切替リレーを有する切替回路と、交流電圧に基づき推定された交流電圧がゼロクロスする時刻に前記切替リレーの動作を制御する制御部と、を備える。
【0057】
この構成により、交流電圧がゼロクロスした時点からゼロクロス点が検出されるまでに検出遅延時間がある場合でも、ゼロクロス点が検出された時刻が補正されることで、ゼロクロス点付近で切替リレーを切り替えることができる。このため、例えば、交流電源のピーク値付近の電圧がスイッチング電源装置に印加されたタイミングで切替回路が動作することを防止できる。従って、突入電流防止回路を用いることなく、突入電流が流れることによる切替リレーの接点の摩耗を防止できる。
【0058】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0059】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の一実施例は、駐車支援装置、駐車支援システムに好適である。
【符号の説明】
【0061】
1-1 コンデンサ
1-2 コンデンサ
1-3 コンデンサ
2 切替回路
2a 切替リレー
3-1 コイル
3-2 コイル
3-3 コイル
4-1 電力変換回路
4-2 電力変換回路
4-3 電力変換回路
5 ノイズフィルタ
10 スイッチング装置
11 制御部
12 ゼロクロス点検出部
100 スイッチング電源装置
300 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6