(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】配線基板および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20231117BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231117BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 501S
H01L23/12 J
H05K1/02 F
(21)【出願番号】P 2019064555
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新見 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高野 伸司
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-046027(JP,A)
【文献】国際公開第2002/084733(WO,A1)
【文献】特開2012-200071(JP,A)
【文献】特開昭56-011128(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041936(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/12
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に形成され、直径が他の部分よりも大きなフランジを一端に有する軸部材と、
前記軸部材が挿入された第1の貫通孔を有する放熱板と、
前記軸部材が挿入された第2の貫通孔を有する基板と、を備え、
前記放熱板と前記基板との間の、少なくとも一部に隙間が形成され、
前記軸部材と前記基板との間の、少なくとも一部にクリアランスが形成されており、
前記クリアランスは0.03~0.5mmであり、
前記隙間は、前記第1の貫通孔の周囲から外側に向かって、放射状に広がるように形成されている、
配線基板。
【請求項2】
前記基板には、半導体素子又は電子部品が搭載されており、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とは、同軸上に並んでおり、
前記放熱板は、前記基板の一方の面又は他方の面に接し、前記半導体素子、前記電子部品又は前記基板からの熱を放出し、
前記軸部材は、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔に、貫通するように挿入されており、
前記フランジは、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔の内径よりも大きな外径を有し、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔の一方の外周縁に接し、
前記軸部材の他端には、前記軸部材の他端を軸方向に押圧して、かしめることによって形成され、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔の他方の外周縁に接する圧接部が、形成されており、
前記放熱板には、前記フランジまたは前記圧接部に接触する接触部が形成されている、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記放熱板は、前記基板と少なくとも一部が接する表面と、前記フランジまたは前記圧接部が配置される裏面とを有し、
前記放熱板の裏面には、前記フランジまたは前記圧接部が前記放熱板の裏面から突出しない深さである凹部が、前記第1の貫通孔の周囲に形成されている
請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記基板は、電子部品が実装されるとともに、前記フランジまたは前記圧接部が配置される表面と、前記放熱板と少なくとも一部が接する裏面とを有し、
前記フランジまたは前記圧接部の前記基板からの突出高さは、前記基板に実装される電子部品の前記基板からの突出高さよりも低い、
請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記基板の表面に、前記軸部材のフランジが配置され、前記放熱板の裏面に前記軸部材の前記圧接部が配置されている、
請求項3または請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記基板には、開口がさらに更に形成されており、
前記開口の周囲には、複数個の前記第2の貫通孔が配置されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記隙間は、前記開口と連通するように形成されている、請求項6に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第1の貫通孔は、前記第2の貫通孔よりも外径が小さい、
請求項1~7のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項9】
前記隙間は、前記第1の貫通孔の外周縁の全周にわたって形成されている、
請求項1~8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記隙間は、前記第1の貫通孔の外周縁の周囲の一部に形成されている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項11】
前記隙間は、前記放熱
板の外側に連通するように形成されている、
請求項1~10のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項12】
請求項
2に記載の配線基板の製造方法であって、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが同軸上に並び、且つ、互いに接するように、前記放熱板と前記基板とを配置する第1の工程と、
前記第2の貫通孔及び前記第1の貫通孔を貫通するように、前記軸部材を挿入し、前記放熱板と前記基板とを位置決め及び仮固定する第2の工程と、
挿入された前記軸部材の前記フランジとは反対側の端部を、押圧装置によって軸方向へ押圧することにより変形させて、前記基板と前記放熱板とをかしめる第3の工程と、
前記基板と前記放熱板とを前記軸部材で、かしめることにより、前記放熱板には、前記基板と密着する部分を変形させて、前記基板と接触する前記接触部を形成すると共に、前記放熱板と前記基板との間に、前記隙間を形成する第4の工程と、
を含む配線基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1または3~11のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法であって、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが同軸上に並び、且つ、互いに接するように、前記放熱板と前記基板とを配置する第1の工程と、
前記第2の貫通孔及び前記第1の貫通孔を貫通するように、前記軸部材を挿入し、前記放熱板と前記基板とを位置決め及び仮固定する第2の工程と、
挿入された前記軸部材の前記フランジとは反対側の端部を、押圧装置によって軸方向へ押圧することにより変形させて、前記基板と前記放熱板とをかしめる第3の工程と、
前記基板と前記放熱板とを前記軸部材で、かしめることにより、前記放熱板には、前記基板と密着する部分を変形させて、前記基板と接触する接触部を形成すると共に、前記放熱板と前記基板との間に、前記隙間を形成する第4の工程と、
を含む配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板の構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板としては、放熱板の凸部の側面が配線基板の貫通孔の内壁と対向するように放熱板を配線基板の第1主面に配置した後、放熱板の凸部の主面に形成された溝を押し広げることで、放熱板の凸部の側面の一部を配線基板の貫通孔の内壁と接触させて、放熱板を配線基板に固定するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、放熱板と配線基板との接触面積が広く、実装した半導体素子の発熱が大きい場合に、放熱板が過熱し易く、配線基板への熱伝導が大きくなってしまう。このため、配線基板上に搭載された部品が高温にさらされ、部品の信頼性が低下するという課題を有している。
本開示の一態様の目的は、高い放熱効果を維持しながら、配線基板へ実装された部品への熱伝導の小さい配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る配線基板は、棒状に形成され、直径が他の部分よりも大きなフランジを一端に有する軸部材と、前記軸部材が挿入された第1の貫通孔を有する放熱板と、前記軸部材が挿入された第2の貫通孔を有する基板と、を備え、前記放熱板と前記基板との間の、少なくとも一部に隙間が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、放熱板から基板への熱の伝導を抑制できる配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1の実施の形態における放熱板の平面図(a)及び(a)のA-A線断面図(b)
【
図2】本開示の第1の実施の形態における基板の平面図(a)及び(a)のB-B線断面図(b)
【
図3】本開示の第1の実施の形態における放熱板と基板とを、仮固定した平面図(a)及び(a)のC-C線断面図(b)
【
図4】本開示の第1の実施の形態における放熱板と基板とを、かしめた状態の断面図(a)及びかしめた部分の左の部分の拡大断面図(b)
【
図5】本開示の第1の実施の形態における基板および放熱板に、はんだペーストを供給する過程の断面図
【
図6】本開示の第1の実施の形態における基板および放熱板に、はんだペーストを供給した断面図
【
図7】本開示の第1の実施の形態における基板に部品を搭載した断面図
【
図8】本開示の第2の実施の形態における放熱板の平面図(a)及び(a)のD-D線断面図(b)
【
図9】本開示の第2の実施の形態における基板の平面図(a)及び(a)のE-E線断面図(b)
【
図10】本開示の第2の実施の形態における放熱板と基板とを、仮固定した平面図(a)及び(a)のF-F線断面図(b)
【
図11】本開示の第2の実施の形態における放熱板と基板とを、かしめた状態の断面図(a)及びかしめた部分の左の部分の拡大断面図(b)
【
図12】本開示の第2の実施の形態における基板および放熱板に、はんだペーストを供給する過程の断面図
【
図13】本開示の第2の実施の形態における基板および放熱板に、はんだペーストを供給した断面図
【
図14】本開示の第2の実施の形態における基板に、部品を搭載した断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定するものではない。
【0009】
(第1の実施の形態)
<放熱板1>
図1の(a)は、本開示の第1の実施の形態における放熱板1の平面図である。
図1(b)は、本開示の第1の実施の形態における放熱板1のA-A線断面図である。
【0010】
図1(a)および
図1(b)に示すように、放熱板1には、基板2(
図2を参照)と位置合わせ及び軸部材としての例えばリベット3(
図3を参照)を挿入するための第1の貫通孔1bが形成されている。第1の貫通孔1bは、放熱板1を貫通して形成され、平面視(基板2を上面からみた場合以下同じ)すると、放熱板1の4隅に、1カ所ずつで4カ所、断面のA-A線が渡る位置の左右に1つずつ2カ所、合計で6カ所形成されている。放熱板1は、基板2に接する表面1c側には、基板2に搭載する部品の高さに対応可能なように凹ませたキャビティ部1aが形成されている。さらに、放熱板1は、放熱板1側の表面1cに対向する放熱板1側の裏面1dに、凹部1eが形成されている。
【0011】
放熱板1は、前記半導体素子、電子部品又は基板2からの熱を放出する機能を有する。また、放熱板1は、基板2および搭載される部品が発生する熱を効率的に放出するために、熱伝導率が高い材料である必要がある。放熱板1は、樹脂材料または金属材料が好ましい。本実施の形態では例えば銅を用いた。また、搭載する部品を、信頼性の高い状態で、実装するために、電解めっき法により、Ni層を4μm成膜した上に、Au膜を0.05μm成膜した。放熱板1の成膜は、Ni膜およびAu膜のめっきに限らず、搭載する部品の表面処理の種類に応じて、例えばSnめっきやAgめっきであってもよい。また、第1の貫通孔1bの直径は、2.2mmで形成した。
【0012】
<基板2>
図2(a)は、本開示の第1の実施の形態における基板2の平面図である。
図2(b)は、本開示の第1の実施の形態における基板2のB-B線断面図である。
図2(a)および
図2(b)に示すように、基板2には、放熱板1との位置合わせをするため及び後述するリベット3を挿入するための第2の貫通孔2dが形成されている。また、第1の貫通孔1bと第2の貫通孔2dとは、位置合わせにより同軸上に並ん配置される。
【0013】
基板2は、半導体素子又は電子部品が搭載されるものである。基板2は、平面視すると、放熱板1の表面1cと対向する基板2側を向いた裏面1dに、平面視において中央に部品を搭載するための開口2a、チップ部品を搭載するための第1の部品ランド2b、開口2aの平面視において左右に半導体パッケージを搭載するための第2の部品ランド2cが形成されている。第1の部品ランド2b、および第2の部品ランド2cは、銅箔の上に電解めっき法により、Ni層を4μm成膜した上に、Au膜を0.05μm成膜する方法で作成した。また、第2の貫通孔2dの直径は、第1の貫通孔1bと同じ、2.2mmで形成した。
【0014】
基板2の第2の貫通孔2d及び放熱板1の第1の貫通孔1bの直径は、リベット3が挿入できるように、リベット3の円柱部分の直径よりも、大きく形成した。第2の貫通孔2dの直径は、リベット3の円柱部分の直径よりも、例えば5~30%大きく形成することが好ましい。また、第1の貫通孔1bの直径は、リベット3の円柱部分の直径よりも、例えば1~10%大きく形成するのが好ましい。リベット3に対する基板2の第2の貫通孔2dの直径を、リベット3に対する第1の貫通孔1bの直径よりも大きく形成したのは、リベット3と第2の貫通孔2dとの間に、間隙としてのクリアランス7aを形成することで、放熱板1からの熱がリベット3を介して、基板2に伝達されることを防止するためである。
【0015】
<リベット3>
リベット3は、円柱状をなしており、一方の端部(一端)に、円柱状の部分よりも直径が大きく、かつ、第2の貫通孔2dおよび第1の貫通孔1bの内径よりも大きな直径のフランジ3aを形成している。さらに、リベット3は、他方の端部に、第2の貫通孔2dおよび第1の貫通孔1bへ挿入する挿入先端を形成している。また、リベット3は、他方の端部が、かしめられて放熱板1に接触することから、放熱板1と線膨張係数が近いことが好ましい。したがって、リベット3は、放熱板1と同様に、樹脂材料または金属材料であって、かつ、放熱板1と同じ材料であることが好ましい。本実施の形態では、例えば銅を用いた。
【0016】
また、放熱板1では、部品を直接搭載するため、搭載する部品を、信頼性の高い状態で、実装できるように、表面処理を実施した。しかし、リベット3は、部品は搭載されず、第1の貫通孔1bに挿入するためのものであるから、めっき処理のような表面処理は省略してもよい。さらに、リベット3の円柱部分の直径は、2.0mmとして、第1の貫通孔1bの直径2.2mm、第2の貫通孔2dの直径2.2mmに対して、0.2mmの余裕を設けた。
【表1】
【0017】
表1は、放熱板1の第1の貫通孔1b、基板2の第2の貫通孔2dおよびリベット3の寸法を示す。なお、第1の実施の形態との差異を明確にするため、後述する第2の実施の形態についても、放熱板21の第1の貫通孔21b、基板32の第2の貫通孔32dおよびリベット3の寸法も併せて記載した。なお、各寸法の相違については、後の工程の説明で詳述する。
【0018】
<積層・位置合わせ・仮固定工程>
図3から
図7は、本開示の第1の実施の形態における配線基板の製造方法を示す図である。
図3(a)は、本開示の第1の実施の形態における放熱板1と基板2との位置を決め、仮固定した平面図である。
図3(b)は、本開示の第1の実施の形態における放熱板1と基板2とを仮固定した
図3(a)のC-C線断面図である。
図4(a)は、本開示の第1の実施の形態における放熱板1と基板2とを、かしめた状態の断面図である。
図4(b)は、かしめた部分であって
図4の左部分の拡大断面図である。
【0019】
図3(a)および
図3(b)に示すように、放熱板1の表面1cと基板2の表面2eの反対面とを対向させて積層した。
【0020】
そして、第1の貫通孔1bと第2の貫通孔2dとが、互いに連通するように、放熱板1と基板2との位置合わせをし、6つの第1の貫通孔1bと、これに対応する6つの第2の貫通孔2dとが互いに連通するように、放熱板1と基板2とを配置する。
【0021】
その後に、リベット3を、基板2の表面2e側から第2の貫通孔2dおよび,第1の貫通孔1bへ挿入することにより、放熱板1と基板2との位置を合わせ、仮に固定した。
【0022】
<かしめ工程>
図4(a)は、本開示の第1の実施の形態における放熱板1と基板2とを、かしめた状態の断面図である。
図4(b)は、かしめた部分であって、
図4(a)左部分の拡大断面図である。
【0023】
図4(a)に示すように、リベット3を第1の貫通孔1b及び第2の貫通孔2dに挿入し、仮固定した状態の放熱板1と基板2とを、例えばプレス機のステージSの上に搭載し、リベット3のフランジ3aを形成していない他方の端部を、例えばかしめパンチPによって、3tの荷重でステージ(軸方向)方向に押圧プレスする。リベット3は、かしめパンチPによって、基板2方向へ押圧されるが、フランジ3aが、ステージSの表面に当接しているので、リベット3自体は、移動しない。リベット3は、基板2方向へ移動できないため、押圧された他方の端部は、かしめパンチPの上面から軸方向への圧力により、円柱形状から変形する。具体的には、リベット3の他方の端部は、第1の貫通孔1bの周縁に接触するように変形し、第1の貫通孔1bの周縁を、基板2方向へ押圧する。一方、リベット3のフランジ3aは、移動できないため、フランジ3aと他方の端部(他端)の変形した部分(以下「圧接部3b」とする。)とで、放熱板1と基板2とを、かしめることができる。上述の圧接部3bが形成されることによって、放熱板1と基板2とを強固に固定することができる。
【0024】
また、
図4(b)に示すように、リベット3は、かしめパンチPで、上面から下面方向に押圧される。このため、放熱板1は、第1の貫通孔1bの周縁がリベット3の他方の端部の圧接部3bによって、下方向へ押圧される。このため、放熱板1の表面1cであって、第1の貫通孔1bの周縁と基板2の表面2eとが強く接触した位置に、接触部1fが形成される。
また、放熱板1は、接触部1fよりも第1の貫通孔1bの周縁から離れた位置に、かしめによって第1の貫通孔1bの周縁が下方向へ押圧されてつぶれる。このため、放熱板1は、基板2に接する面が基板2から離れる方向に反るように変形する。この変形によって、放熱板1には、基板2と接触している接触部1fよりも第1の貫通孔1bから離れた位置に、基板2とは接触しない隙間7が形成される。隙間7は、図には詳しく示さないが、基板2との間隔が次第に広くなり、接触部1fの周囲から外側に向かって、例えば放射状に広がるように形成されている。隙間7は、接触部1fの周囲の全てに渡って形成されている。また、隙間7は、接触部1fの周囲の全てにに渡って形成されていなくてもよい。隙間7は、過熱した半導体などからの熱がリベット3を介して放熱板1に伝わらないように、例えば放熱板1のキャビティ部1a及び基板2の開口2aに連通するように形成されている。また、隙間7は、放熱板1の温度の上昇を抑制するために、放熱板1の外側と連通している。なお、放熱板1の外側と連通する隙間7は、形成されなくともよい。
【0025】
上述のかしめ工程では、リベット3の他方の端部を、基板2の第2の貫通孔2dから挿入し、他方の端部を、放熱板1側から基板2方向に押圧することで、放熱板1と基板2とをかしめた。しかし、リベット3の他方の端部を、放熱板1の第1の貫通孔1bから挿入し、他方の端部を、基板2側から放熱板1方向に押圧することで、放熱板1と基板2とを、かしめてもよい。
【0026】
なお、
図4に示すように、放熱板1の裏面1dには、凹部1eが設けられている。凹部1eを設けることで、フランジ3aを形成していない、押圧変形された、圧接部3bは、放熱板1の凹部1eの中に格納される。これによって、放熱板1の裏面1dに突出した部分がなくなるため、放熱板1の裏面1dに、例えばヒートシンク(図示せず)を接触して配置させるなど、効果的な放熱の経路を容易に確保することができる。
【0027】
<部品実装工程>
図5は、本開示の第1の実施の形態における基板2の表面2eに配設された第1の部品ランド2b、第2の部品ランド2c、および放熱板1のキャビティ部1aに、はんだペースト9を供給する過程の断面図である。
【0028】
図5に示すように、メタルマスク8と、基板2の表面2eに配設された第1の部品ランド2b、第2の部品ランド2c、および放熱板1のキャビティ部1aを、それぞれ位置合わせをする。その後に、スキージ10を用いて、印刷によって、はんだペースト9を、例えば印刷などの方法により、基板2の表面2e及び放熱板1のキャビティ部1aに供給した。メタルマスク8は、放熱板1のキャビティ部1aの凹みに対応するために、同様なキャビティ構造のものを使用した。しかし、放熱板1のキャビティ部1aに、はんだペースト9ではなく、板状のはんだ材を用いる場合には、はんだペースト9は、基板2の表面2eに配設された、第1の部品ランド2b及び第2の部品ランド2cのみに供給すればよく、メタルマスク8はキャビティ構造でなくてもよい。
【0029】
図6は、本開示の第1の実施の形態における基板2の表面2eに配置された第1の部品ランド2b、第2の部品ランド2c、および放熱板1のキャビティ部1aに、はんだペースト9を供給した断面図である。
【0030】
図6に示すように、基板2の表面2eに配置された第1の部品ランド2b、第2の部品ランド2c、および放熱板1のキャビティ部1aには、部品を接続するためのはんだペースト9が供給されている。
【0031】
図7は、本開示の第1の実施の形態における基板2に、部品を搭載した断面図である。
【0032】
各々既に、はんだペースト9が供給されており第1の部品ランド2bおよび第2の部品ランド2cに、マウンタ(図示せず)を用いてチップ部品11が搭載されている。また、同様に、基板2および放熱板1に、マウンタを用いて半導体パッケージ12を搭載している。その後、基板2および放熱板1を、リフロー炉(図示せず)を用いて245度まで加熱することにより、放熱板1および基板2上に供給したはんだペースト9が溶融され、チップ部品11および半導体パッケージ12が基板2および放熱板1に固定される。
【0033】
なお、基板2から突出するリベット3のフランジ3aの高さを、基板2に実装されるチップ部品11や半導体パッケージ12などの突出高さよりも低くすることが好ましい。この構成にすることで、基板2から突出するリベット3のフランジ3aの高さが、放熱板1を付けた基板2及び放熱板1を付けた基板2を搭載したモジュールのサイズに影響を与えなくなる。
【0034】
また、第1の実施形態のように、基板2の表面1c側に、リベット3のフランジ3aを配置し、放熱板1の裏面1dにリベット3の圧接部3bを配置する構成にすることが好ましい。リベット3の圧接部3bは、上方からの押圧によって形成されることから、突出高さにバラツキが生じやすい。一方、フランジ3aは、突出高さが最初から均一であるから、フランジ3aを配置した基板2の表面2eが極端なでこぼことはならない。よって、圧接部3bを基板2の表面2eに配置した場合よりも、基板2の表面1cへのはんだペーストの印刷の工程及び部品実装工程へ与える影響が比較的少ない。
【0035】
<効果>
上述の工程を経て、リベット3のフランジ3aと他方の端部の圧接部3bとで、上下方向から押圧され、放熱板1と基板2とのかしめによって生じた接触部1fで接触すると共に、リベット3のフランジ3aと、他方の端部のかしめによって、上下方向から挟まれて押圧されるため、強固に固定できる。
【0036】
また、かしめによって、基板2には、リベット3と第2の貫通孔2dとの間に、例えば0.03~0.5mmのクリアランス7aが形成される。
【0037】
以上のように、放熱板1と配線基板2との間に隙間7が形成され、リベット3と基板2の第2の貫通孔2dとの間にクリアランス7aが形成されている。放熱板1は、接触部1fを介して基板2と接触しているので、基板2から熱が伝達され、外部に放熱することができる。また、放熱板1は、基板2と接触する範囲が、面積の狭い接触部1fであるので、動作時に、例えば半導体パッケージ12が発熱した場合においても、放熱板1から基板2への熱伝導を抑制できるため、効率的に放熱できる。
【0038】
また、リベット3と第2の貫通孔2dとの間に、クリアランス7aを形成したことで、熱が直接伝わらず、リベット3を介しての基板2への熱伝導を抑制できる。また、環境温度の変化により、基板2が膨張又は収縮した場合においても、放熱板1との材料の違いによる熱膨張差をクリアランス7aで吸収できるため、信頼性の高い接合が可能となる。
【0039】
なお。隙間7及びクリアランス7aは、いずれか一方が形成されていてもよいし、両方が形成されていてもよい。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と概ね共通であり、共通部分の詳細な説明は省略し、差異がある部分について主に説明する。なお、第2の実施の形態では、放熱板21の第1の貫通孔21b(表1および
図8参照)の直径は、第1の実施の形態における、第1の貫通孔1bの直径とは大きさが異なる。
【0041】
<放熱板21>
図8(a)は、本開示の第2の実施の形態における放熱板21の平面図である。
図8(b)は、本開示の第2の実施の形態における放熱板21のD-D線断面図である。放熱板21には、基板32(
図9参照)と位置合わせ及びリベット3を挿入するための第1の貫通孔21bが形成されている。また、放熱板21には、基板32に接する表面31c側に、基板32に搭載する部品の高さに対応可能なように凹ませたキャビティ部21aが形成されている。また、表1に示すように、第2の実施の形態において、第1の貫通孔21bの直径は、2.05mmである。第1の実施の形態では、第1の貫通孔1bの直径は、2.2mmである。第2の実施の形態における第1の貫通孔21bの直径は、第1の実施の形態における第1の貫通孔1bより、0.15mm細く形成されている。放熱板21の材料およびめっきの方法は、第1の実施の形態と同じため、記載を省略する。
【0042】
<基板32>
図9(a)は、本開示の第2の実施の形態における基板32の平面図である。
図9(b)は、本開示の第2の実施の形態における基板32のE-E線断面図である。
【0043】
基板32には、第1の実施の形態と同様に、第2の貫通孔32dが形成されている。基板32は、表面21c側に、第1の実施の形態と同様に、開口32a、チップ部品を搭載するための第1の部品ランド32b、半導体パッケージを搭載するための第2の部品ランド32cが形成されている。第1の部品ランド32b、および第2の部品ランド32cのめっき方法は、第1の実施の形態と同様であるから、記載を省略する。
【0044】
基板32の第2の貫通孔32dの直径は、2.2mmであって、放熱板21の第1の貫通孔21bの直径よりも大きく形成されている。第1の実施の形態では、第2の貫通孔2dと第1の貫通孔1bとは同じ直径に形成されているが、第2の実施の形態では、第2の貫通孔32dと第1の貫通孔21bとは、直径が異なる。
【0045】
<製造方法>
図10から
図14は、本開示の第2の実施の形態における配線基板の製造方法を示す工程図である。
【0046】
<積層・位置合わせ・仮固定工程>
図10(a)は、本開示の第2の実施の形態における放熱板21と基板32とを、仮固定した平面図である。
図10(b)は、
図10(a)のF-F線断面図である。
図10(a)および
図10(b)に示すように、放熱板21の表面21cと基板32の表面32eとを対向させて積層した。そして、第1の貫通孔21bと第2の貫通孔32dとが、互いに連通するように、放熱板21と基板32とを位置を合わせ、配置した。
【0047】
その後に、リベット3を、基板32の表面32e側から第2の貫通孔32dおよび第1の貫通孔21bへ挿入し、放熱板21と基板32との位置合を合わせ、仮に固定した。
【0048】
表1に示すように、リベット3の円柱部分の直径は、2.0mmであって、放熱板21の第1の貫通孔21bの直径2.05mmに対して、0.05mmの余裕を有する。第1の実施の形態よりも第2の実施の形態のほうが、リベット3と第1の貫通孔21bとの余裕が少なく形成されている。基板32の第2の貫通孔32dの直径は、2.2mmであって、リベット3の円柱部分の直径に対して、0.2mmの余裕を有する。第1の貫通孔21bの直径を、第2の貫通孔32dよりも小さく形成した。第1の実施の形態よりも、上述の余裕を少なくすることにより、第1の貫通孔21bとリベット3とで生じるがたつきをなくすことができる。このため、放熱板21と基板32との位置合わせの精度が第1の実施の形態と比べて、更に向上し、両者を高精度に接合することができる。
【0049】
<かしめ工程>
図11(a)は、本開示の第2の実施の形態における放熱板21と基板32とを、かしめた状態の断面図である。
図11(b)は、
図11(a)のかしめた部分であって、左部分の拡大断面図である。
図11(a)に示すように、リベット3を第1の貫通孔21b及び第2の貫通孔32dに挿入し、仮固定した放熱板21と基板32とを、例えばステージSの上に搭載し、リベット3のフランジ3bを形成していない他方の端部を、例えばかしめパンチPによって、3tの荷重でステージ方向(軸方向)に押圧プレスする。リベット3は、かしめパンチPによって、基板32方向へ押圧されるが、フランジ3bが、ステージSの表面に当接しているので、リベット3自体は、移動しない。リベット3は、基板32方向へ移動できないため、押圧された他方の端部は、かしめパンチPの上面からの圧力により、円柱形状から変形する。具体的には、リベット3の他方の端部は、第1の貫通孔21bの周縁に接触するように変形し、第1の貫通孔21bの周縁を、基板32方向へ押圧する。一方、リベット3のフランジ3bは、移動できないから、フランジ3bと他方の端部の変形した部分(以下「圧接部33c」とする。)とで、放熱板21と基板32とを、かしめることができる。上述の圧接部33cが形成されることによって、放熱板21と基板32とを強固に固定することができる。
【0050】
さらに、リベット3の円柱部は、上面からの圧力により圧縮されるため、かしめ前の状態よりも、円柱部の直径が太くなる。第2の実施の形態では、第1の実施の形態よりも、第1の貫通孔21bとリベット3との余裕を0.05mmと小さくしている。かしめによるリベット3の円柱部の直径が大きくなるため、かしめ後には、上述の余裕は、無くなるか或いは、きわめて小さくなる。したがって、リベット3と第1の貫通孔21bの内壁とは、ほぼ全面で接した状態となる。リベット3は、かしめによる上下方向の押圧に加え、第1の貫通孔21bの中で水平方向への移動を抑制されるため、放熱板21は、第1の実施の形態よりも、基板32に更に強固に固定される。
【0051】
一方、表1に示すように、第2の貫通孔32dの直径は、リベット3の直径に対して、0.2mmの余裕を設けているため、リベット3の円柱部の直径が、かしめによって、大きくなっても、リベット3の円柱部分は、第2の貫通孔32dの内壁に全面的に接することはない。このため、リベット3の材料と基板32の材料とが違っていても、材料の違いによる線膨張の差に基づく接合の不具合は、生じない。
【0052】
また、表1に示すように、リベット3に対する第2の貫通孔32dの直径を、リベット3に対する第1の貫通孔21bの直径よりも大きく形成したのは、上述した第1の実施の形態と同じ理由である。
【0053】
また、リベット3のかしめにより、接触部26及び間隙27が形成される点及びその作用については、上述の第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0054】
上述のかしめ工程では、リベット3の他方の端部を第2の貫通孔32dから挿入し、他方の端部を、放熱板21側から基板32方向に押圧することで、放熱板21と基板32とを、かしめた。しかし、リベット3の他方の端部を、第1の貫通孔21bから挿入し、他方の端部を、基板32側から放熱板21方向に押圧することにより、放熱板1と基板32とを、かしめてもよい。
【0055】
<部品実装工程>
図12は、本開示の第2の実施の形態における基板32の表面32eに配置された第1の部品ランド32b、第2の部品ランド32c、および放熱板21のキャビティ部21aにはんだペースト9を供給する過程の断面図である。
【0056】
図13は、本開示の第2の実施の形態における基板32の表面32eに配置された第1の部品ランド32b、第2の部品ランド32c、および放熱板21のキャビティ部21aにはんだペースト9を供給した断面図である。
【0057】
図14は、本開示の第2の実施の形態における基板32に、部品を搭載した断面図である。
【0058】
放熱板1及び基板32に対して、第1の部品ランド32b、第2の部品ランド32c、キャビティ部21aの配置、はんだペースト9の供給、第1の部品ランド32b、第2の部品ランド32c、キャビティ部21aの固定については、上述した第1の実施の形態と同じであるから、説明を省略する。
【0059】
<効果>
第2の実施の形態における上述の工程を経て、リベット3が、かしめられることにより、放熱板21と基板32とが強固に固定される点は、上述の第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0060】
また、かしめによって、基板32には、リベット3と第2の貫通孔32dとの間に、例えば0.03~0.5mmのクリアランス7aが形成される点及びその効果は、上述した第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0061】
なお。間隙27及びクリアランス7aは、いずれか一方が形成されてもよいし、両方とも形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示に係る配線基板は、パワーデバイスを放熱板に実装する装置全般において有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 放熱板
1a キャビティ部
1b 第1の貫通孔
1c 表面
1d 裏面
1e 凹部
1f 接触部
2 基板
2a 開口
2b 第1の部品ランド
2c 第2の部品ランド
2d 第2の貫通孔
2e 表面
3 リベット
3a フランジ
3b 圧接部
7 隙間
7a クリアランス
8 メタルマスク
9 はんだペースト
10 スキージ
11 チップ部品
12 半導体パッケージ
21 放熱板
21a キャビティ部
21b 第1の貫通孔
21c 表面
26 接触部
27 間隙
32 基板
32a 開口
32b 第1の部品ランド
32c 第2の部品ランド
32d 第2の貫通孔
32e 表面
3 リベット
3b フランジ
c 圧接部
S ステージ
P かしめパンチ