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特許7386436シェルアンドチューブ式吸収器及び冷凍機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】シェルアンドチューブ式吸収器及び冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 37/00 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
F25B37/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019144167
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2020159679
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2019057375
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】河野 文紀
(72)【発明者】
【氏名】下田平 修和
(72)【発明者】
【氏名】田村 朋一郎
(72)【発明者】
【氏名】府内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】榎本 英一
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-165530(JP,A)
【文献】特開平05-071827(JP,A)
【文献】特開2004-245443(JP,A)
【文献】特開2005-003296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収液を貯留するシェルと、
前記シェルの内部において重力方向に複数段をなすとともに重力方向に垂直な方向に複数列をなし、互いに平行に配置された、熱媒体が流れる複数の伝熱管を有する伝熱管群と、
前記シェルに前記吸収液を供給する第一供給路と、
前記シェルに冷媒蒸気を供給する第二供給路と、
前記第一供給路によって供給された前記吸収液を前記伝熱管群に向かって滴下する滴下器と、
仕切り部品と、を備え、
前記伝熱管群は、隣り合う左列及び右列を含み、前記伝熱管の長手方向に沿って前記左列及び前記右列を見たときに、前記右列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記左列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置する、又は、前記左列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記右列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置し、
前記左列の任意の上段の前記伝熱管の中心軸と前記左列の前記上段の一段下の段である下段の前記伝熱管の中心軸との距離(L1)は、前記左列の前記上段の前記伝熱管に隣接している前記右列の前記伝熱管の中心軸と前記左列の前記下段の前記伝熱管に隣接している前記右列の前記伝熱管の中心軸との距離(L2)と等しく、
前記伝熱管群は、前記熱媒体が特定方向に流れる第一伝熱管群と、重力方向において第一伝熱管群の上方に配置され、前記特定方向と反対方向に前記熱媒体が流れる第二伝熱管群とを有し、
前記仕切り部品は、前記第一伝熱管群の各列における最上段の前記伝熱管と、前記第二伝熱管群の各列における最下段の前記伝熱管との間に前記冷媒蒸気が流入することを阻害し、
前記伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向に沿って前記仕切り部品を見たとき、前記仕切り部品の少なくとも一部は、重力方向において、前記伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向における前記最上段の前記仕切り部品に近い端部に位置する前記伝熱管と、前記端部と同じ側の前記最下段の端部に位置する前記伝熱管との間に位置する、
シェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項2】
前記左列において隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸同士の距離は、第一長さ(L3)と、前記第一長さ(L3)より長い第二長さ(L1)とを含む、請求項1に記載のシェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項3】
前記熱媒体は、前記第一伝熱管群を通過した後に前記第二伝熱管群に導かれる、又は、前記第二伝熱管群を通過した後に前記第一伝熱管群に導かれる、請求項1又は2に記載のシェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項4】
前記左列の最上段の前記伝熱管の中心軸と前記左列の最下段の前記伝熱管の中心軸との距離は、前記右列の最上段の前記伝熱管の中心軸と前記右列の最下段の前記伝熱管の中心軸との距離と等しい、請求項1からのいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項5】
前記滴下器は、前記左列の前記伝熱管に前記吸収液を滴下する第一滴下口と、前記右列の前記伝熱管に前記吸収液を滴下する第二滴下口とを有し、
前記伝熱管の長手方向に沿って前記滴下器を見たとき、前記第二滴下口は、重力方向において前記第一滴下口を含む水平な平面から外れた位置に配置されている、
請求項1からのいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項6】
吸収液を貯留するシェルと、
前記シェルの内部において重力方向に複数段をなすとともに重力方向に垂直な方向に複数列をなし、互いに平行に配置された、熱媒体が流れる複数の伝熱管を有し、かつ、第一伝熱管群と、重力方向において前記第一伝熱管群の上方に配置された第二伝熱管群とを有する、伝熱管群と、
前記シェルに前記吸収液を供給する第一供給路と、
前記シェルに冷媒蒸気を供給する第二供給路と、
前記第一供給路によって供給された前記吸収液を前記伝熱管群に向かって滴下する滴下器と、
前記第一伝熱管群の各列における最上段の前記伝熱管と、前記第二伝熱管群の各列における最下段の前記伝熱管との間に前記冷媒蒸気が流入することを阻害する、仕切り部品と、を備え、
前記伝熱管群は、隣り合う左列及び右列を含み、前記伝熱管の長手方向に沿って前記左列及び前記右列を見たときに、前記右列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記左列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置する、又は、前記左列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記右列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置し、
前記伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向に沿って前記仕切り部品を見たとき、前記仕切り部品の少なくとも一部は、重力方向において、前記第一伝熱管群において前記仕切り部品に最も近い前記最上段の前記伝熱管である下側伝熱管と、前記第二伝熱管群において前記仕切り部品に最も近い前記最下段の前記伝熱管である上側伝熱管との間に位置し、
前記下側伝熱管の中心軸と前記上側伝熱管の中心軸との距離は、前記下側伝熱管を含む前記第一伝熱管群の列と隣り合う列における前記最上段の前記伝熱管と、前記上側伝熱管を含む前記第二伝熱管群の列と隣り合う列における前記最下段の前記伝熱管との距離より長い、
シェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項7】
前記熱媒体は、前記第一伝熱管群において特定方向に流れ、かつ、前記第二伝熱管群において前記特定方向と反対方向に流れる、請求項に記載のシェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項8】
前記仕切り部品は、重力方向において、前記上側伝熱管の下方に位置し、
重力方向において、前記上側伝熱管の中心軸と前記仕切り部品の上端との距離は、前記下側伝熱管の中心軸と前記仕切り部品の下端との距離より長い、請求項又はに記載のシェルアンドチューブ式吸収器。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載のシェルアンドチューブ式吸収器を備えた、冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シェルアンドチューブ式吸収器及び冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収器を備えた吸収式冷凍機が知られている。
【0003】
特許文献1には、図9に示す通り、伝熱管301と、蒸気流路302と、流入部303と、吸収液散布装置304と、抽気口307と、吸収液排出口308とを備えた吸収器300が記載されている。吸収液散布装置304から伝熱管301に向かって吸収液305が散布される。吸収器300によれば、伝熱管301が密に配置された管群領域と壁面との間の蒸気流路302により、蒸気の流動抵抗を低減でき、抽気口307から不凝縮性ガスを高効率に排出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-307735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、伝熱管の高密度な配置と、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすこととを両立する観点から、再検討の余地を有している。
【0006】
そこで、本開示は、伝熱管の高密度な配置と、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすこととを両立する観点から有利な吸収器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
吸収液を貯留するシェルと、
前記シェルの内部において重力方向に複数段をなすとともに重力方向に垂直な方向に複数列をなし、互いに平行に配置された、熱媒体が流れる複数の伝熱管を有する伝熱管群と、
前記シェルに前記吸収液を供給する第一供給路と、
前記シェルに冷媒蒸気を供給する第二供給路と、
前記第一供給路によって供給された前記吸収液を前記伝熱管群に向かって滴下する滴下器と、を備え、
前記伝熱管群は、隣り合う左列及び右列を含み、前記伝熱管の長手方向に沿って前記左列及び前記右列を見たときに、前記右列において前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記左列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置する、又は、前記左列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記右列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置し、
前記左列の任意の上段の前記伝熱管の中心軸と前記左列の前記上段の一段下の下段の前記伝熱管の中心軸との距離は、前記左列の前記上段の前記伝熱管に隣接している前記右列の前記伝熱管の中心軸と前記左列の前記下段の前記伝熱管に隣接している前記右列の前記伝熱管の中心軸との距離と等しい、
シェルアンドチューブ式吸収器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示のシェルアンドチューブ式吸収器は、伝熱管の高密度な配置と、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすこととを両立する観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態の一例に係るシェルアンドチューブ式吸収器の断面図である。
図2図2は、図1に示すシェルアンドチューブ式吸収器の滴下器を示す断面図である。
図3図3は、参考例に係るシェルアンドチューブ式吸収器の断面図である。
図4図4は、本実施形態の冷凍機の一例を示す構成図である。
図5図5は、本開示の実施形態の別の一例に係るシェルアンドチューブ式吸収器の断面図である。
図6図6は、本開示の実施形態のさらに別の一例に係るシェルアンドチューブ式吸収器の断面図である。
図7図7は、図6に示すシェルアンドチューブ式吸収器の滴下器を示す断面図である。
図8図8は、本開示の実施形態のさらに別の一例に係るシェルアンドチューブ式吸収器の断面図である。
図9図9は、従来の吸収器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
シェルアンドチューブ式吸収器において、典型的に、吸収液への冷媒蒸気の吸収により発生した吸収熱が伝熱管を流れる熱媒体に放熱される。吸収液を所望の状態に保ちつつ滴下する観点から、重力方向に複数段をなす伝熱管を吸収液によって適切に濡らすことが有利である。シェルアンドチューブ式吸収器のシェルの内部において、重力方向に複数段をなすとともに重力方向に垂直な方向に複数列をなすように複数の伝熱管を互いに平行に配置して、伝熱管群を形成することが考えられる。この場合、隣り合う2つの伝熱管の列において、2つの伝熱管の列の一方の重力方向に隣り合う2つの伝熱管の間に、2つの伝熱管の列の他方の伝熱管を配置することが考えられる。本明細書において、このような伝熱管の配置を千鳥配置と呼ぶ。千鳥配置によれば、この伝熱管の配置における伝熱管同士の距離及び伝熱管群の高さを、複数の伝熱管の格子状の配置における伝熱管同士の距離及び伝熱管群の高さと同等に保つことができる。加えて、伝熱管群の重力方向に垂直な方向の幅が小さくなり、伝熱管の高密度な配置を実現しやすい。
【0011】
一方、本発明者らは、シェルアンドチューブ式吸収器において、複数の伝熱管を千鳥配置しようとすると、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことが難しくなる場合があることを新たに見出した。例えば、隣り合う2つの伝熱管の列の一方の重力方向に隣り合う2つの伝熱管同士の距離が、隣り合う2つの伝熱管の列の他方においてその2つの伝熱管のそれぞれと隣り合う伝熱管同士の距離が狭くなることがある。重力方向に隣り合う2つの伝熱管同士の距離が小さいと、その伝熱管同士の間を通過する冷媒蒸気の流速が高くなる。これにより、隣の列において伝熱管同士の距離が広い空間を落下している吸収液が高流速の冷媒蒸気の流れによりドラッグされる。その結果、下段の伝熱管に吸収液が接触しにくくなり、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことが難しくなる。
【0012】
そこで、本発明者らは、複数の伝熱管を千鳥配置にしても、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことが可能な伝熱管の配置について鋭意検討を重ね、本開示のシェルアンドチューブ式吸収器を案出した。
【0013】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器は、
吸収液を貯留するシェルと、
前記シェルの内部において重力方向に複数段をなすとともに重力方向に垂直な方向に複数列をなし、互いに平行に配置された、熱媒体が流れる複数の伝熱管を有する伝熱管群と、
前記シェルに前記吸収液を供給する第一供給路と、
前記シェルに冷媒蒸気を供給する第二供給路と、
前記第一供給路によって供給された前記吸収液を前記伝熱管群に向かって滴下する滴下器と、を備え、
前記伝熱管群は、隣り合う左列及び右列を含み、前記伝熱管の長手方向に沿って前記左列及び前記右列を見たときに、前記右列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記左列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置する、又は、前記左列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記右列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置し、
前記左列の任意の上段の前記伝熱管の中心軸と前記左列の前記上段の一段下の下段の前記伝熱管の中心軸との距離は、前記左列の前記上段の前記伝熱管に隣接している前記右列の前記伝熱管の中心軸と前記左列の前記下段の前記伝熱管に隣接している前記右列の前記伝熱管の中心軸との距離と等しい。
【0014】
第1態様によれば、隣り合う左列及び右列において伝熱管が上記のように配置されていることにより、伝熱管群において伝熱管を高密度に配置できる。加えて、左列の上段の伝熱管の中心軸と左列の下段の伝熱管の中心軸との距離が、これらの伝熱管に隣接している右列の伝熱管の中心軸同士の距離と等しいので、冷媒蒸気の流速が低く保たれやすい。また、吸収液が落下する距離が短くなりやすく、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。その結果、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことができる。
【0015】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器では、前記左列において隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸同士の距離は、第一長さと、前記第一長さより長い第二長さとを含んでいてもよい。第2態様によれば、左列において隣り合う2つの伝熱管の中心軸同士の距離が、何らかの理由により異なる場合でも、その距離が長くなる部分において冷媒蒸気の流速が低く保たれやすい。このため、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことができる。
【0016】
本開示の第3態様において、例えば、第1態様又は第2態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器では、前記伝熱管群は、前記熱媒体が特定方向に流れる第一伝熱管群と、重力方向において第一伝熱管群の上方に配置され、前記特定方向と反対方向に前記熱媒体が流れる第二伝熱管群とを有していてもよい。第一伝熱管群と第二伝熱管群との間の距離を、第一伝熱管群における伝熱管同士の距離及び第二伝熱管群における伝熱管同士の距離に合わせることが難しい場合がある。第3態様によれば、この場合でも、第一伝熱管群と第二伝熱管群との間の空間において、冷媒蒸気の流速が低く保たれやすい。このため、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことができる。
【0017】
本開示の第4態様において、例えば、第3態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器では、前記熱媒体は、前記第一伝熱管群を通過した後に前記第二伝熱管群に導かれてもよく、又は、前記第二伝熱管群を通過した後に前記第一伝熱管群に導かれてもよい。第4態様によれば、シェルの内部における熱媒体の流路が長くなり、吸収液への冷媒蒸気の吸収により発生した吸収熱を効果的に熱媒体に放熱できる。
【0018】
本開示の第5態様において、例えば、第3態様又は第4態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器は、前記第一伝熱管群の各列における最上段の前記伝熱管と、前記第二伝熱管群の各列における最下段の前記伝熱管との間に前記冷媒蒸気が流入することを阻害する、仕切り部品をさらに備えていてもよく、前記伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向に沿って前記仕切り部品を見たとき、前記仕切り部品の少なくとも一部は、重力方向において、前記伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向における前記最上段の前記仕切り部品に近い端部に位置する前記伝熱管と、前記端部と同じ側の前記最下段の端部に位置する前記伝熱管との間に位置していてもよい。第5態様によれば、第一伝熱管群の各列における最上段の伝熱管と、第二伝熱管群の各列における最下段の伝熱管との間に冷媒蒸気が流入することが阻害され、この部分における冷媒蒸気の流量及び流速が減少する。このため、第二伝熱管群の各列における最下段から第一伝熱管群の各列における最上段の伝熱管に向かって落下する吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。その結果、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことができる。
【0019】
本開示の第6態様において、例えば、第1態様から第5態様のいずれか1つの態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器では、前記左列の最上段の前記伝熱管の中心軸と前記左列の最下段の前記伝熱管の中心軸との距離は、前記右列の最上段の前記伝熱管の中心軸と前記右列の最下段の前記伝熱管の中心軸との距離と等しくてもよい。第6態様によれば、左列における伝熱管の数と右列における伝熱管の数とを一致させやすい。
【0020】
本開示の第7態様において、例えば、第1態様から第6態様のいずれか1つの態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器では、前記滴下器は、前記左列の前記伝熱管に前記吸収液を滴下する第一滴下口と、前記右列の前記伝熱管に前記吸収液を滴下する第二滴下口とを有していてもよく、前記伝熱管の長手方向に沿って前記滴下器を見たとき、前記第二滴下口は、重力方向において前記第一滴下口を含む水平な平面から外れた位置に配置されていてもよい。第7態様によれば、右列の最上段に位置する伝熱管と第二滴下口との距離を、左列の最上段に位置する伝熱管と第一滴下口との距離と合わせやすい。これにより、左列の最上段の伝熱管及び右列の最上段の伝熱管と、滴下器との間を通過する冷媒蒸気の流速を低く保ちやすい。加えて、右列の最上段に位置する伝熱管と第二滴下口との距離及び左列の最上段に位置する伝熱管と第一滴下口との距離が適切に調整されやすく、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。その結果、吸収液によって伝熱管を適切に濡らすことができる。
【0021】
本開示の第8態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器は、
吸収液を貯留するシェルと、
前記シェルの内部において重力方向に複数段をなすとともに重力方向に垂直な方向に複数列をなし、互いに平行に配置された、熱媒体が流れる複数の伝熱管を有し、かつ、第一伝熱管群と、重力方向において前記第一伝熱管群の上方に配置された第二伝熱管群とを有する、伝熱管群と、
前記シェルに前記吸収液を供給する第一供給路と、
前記シェルに冷媒蒸気を供給する第二供給路と、
前記第一供給路によって供給された前記吸収液を前記伝熱管群に向かって滴下する滴下器と、
前記第一伝熱管群の各列における最上段の前記伝熱管と、前記第二伝熱管群の各列における最下段の前記伝熱管との間に前記冷媒蒸気が流入することを阻害する、仕切り部品と、を備え、
前記伝熱管群は、隣り合う左列及び右列を含み、前記伝熱管の長手方向に沿って前記左列及び前記右列を見たときに、前記右列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記左列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置する、又は、前記左列における前記伝熱管の中心軸を含む水平な平面が前記右列において重力方向に隣り合う2つの前記伝熱管の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置し、
前記伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向に沿って前記仕切り部品を見たとき、前記仕切り部品の少なくとも一部は、重力方向において、前記第一伝熱管群において前記仕切り部品に最も近い前記最上段の前記伝熱管である下側伝熱管と、前記第二伝熱管群において前記仕切り部品に最も近い前記最下段の前記伝熱管である上側伝熱管との間に位置し、
前記下側伝熱管の中心軸と前記上側伝熱管の中心軸との距離は、前記下側伝熱管を含む前記第一伝熱管群の列と隣り合う列における前記最上段の前記伝熱管と、前記上側伝熱管を含む前記第二伝熱管群の列と隣り合う列における前記最下段の前記伝熱管との距離より長い。
【0022】
第8態様によれば、上側伝熱管と下側伝熱管との間に流入する冷媒蒸気の量及び冷媒蒸気の流速が所望の範囲に保たれやすく、冷媒蒸気が流入する方向と吸収液が滴下する方向とのなす角が小さくなりやすい。これにより、上側伝熱管から滴下される吸収液は、伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向にドラッグされにくい。このため、第一伝熱管群及び第二伝熱管群に流れ込む冷媒蒸気の量が所望の範囲に保たれ、第二伝熱管群の最下段の伝熱管から滴下された吸収液が第一伝熱管群の最上段の伝熱管に付着しやすい。その結果、例えば、一時的に吸収液における冷媒蒸気の吸収量が増加する、吸収液希釈運転等の運転においても、第一伝熱管群の伝熱管を吸収液で濡らすことができる、吸収器の熱通過率が向上しやすい。
【0023】
本開示の第9態様において、例えば、第8態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器では、前記熱媒体は、前記第一伝熱管群において特定方向に流れ、かつ、前記第二伝熱管群において前記特定方向と反対方向に流れてもよい。第9態様によれば、吸収液への冷媒蒸気の吸収により発生した吸収熱を効果的に熱媒体に放熱できる。
【0024】
本開示の第10態様において、例えば、第8態様又は第9態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器では、前記仕切り部品は、重力方向において、前記上側伝熱管の下方に位置してもよく、重力方向において、前記上側伝熱管の中心軸と前記仕切り部品の上端との距離は、前記前記下側伝熱管の中心軸と前記仕切り部品の下端との距離より長くてもよい。第10態様によれば、冷媒蒸気が流入する方向と吸収液が滴下する方向とのなす角がより確実に小さくなりやすく、上側伝熱管から滴下される吸収液が伝熱管の長手方向及び重力方向に垂直な方向にドラッグされにくい。
【0025】
本開示の第8態様に係る冷凍機は、第1態様から第7態様のいずれか1つの態様に係るシェルアンドチューブ式吸収器を備える。第8態様によれば、高い成績係数(COP)を発揮できる小型な冷凍機を提供できる。
【0026】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0027】
図1は、本開示の実施形態の一例に係るシェルアンドチューブ式吸収器1aの断面図である。本明細書において、「シェルアンドチューブ式吸収器」を単に「吸収器」と記載することがある。なお、添付の図面においてZ軸負方向が重力方向であり、XY平面が水平である。X軸及びY軸は互いに直交している。
【0028】
図1に示すように、吸収器1aは、シェル2と、伝熱管群3gと、第一供給路4と、第二供給路7と、滴下器8とを備えている。シェル2は、吸収液を貯留する。伝熱管群3gは、熱媒体が流れる複数の伝熱管3を有する。伝熱管群3gにおいて、複数の伝熱管3は、シェル2の内部において重力方向に複数段をなすとともに重力方向に垂直な方向に複数列をなし、互いに平行に配置されている。第一供給路4は、シェル2に吸収液を供給する経路である。第二供給路7は、シェル2に冷媒蒸気を供給する経路である。滴下器8は、第一供給路4によって供給された吸収液を伝熱管群3gに向かって滴下する。図2は、滴下器8を示す断面図である。
【0029】
吸収器1aにおいて、典型的には、吸収液への冷媒蒸気の吸収により発生した吸収熱が伝熱管3を流れる熱媒体に放熱される。重力方向に複数段をなす伝熱管3を吸収液によって適切に濡らすことによって、吸収液を所望の状態、例えば、過冷却状態に保ちつつ滴下できる。
【0030】
伝熱管群3gは、隣り合う左列3h及び右列3mを含む。伝熱管3の長手方向(Y軸方向)に沿って左列3h及び右列3mを見たときに、伝熱管3の中心軸が配置I又は配置IIを示す。配置Iにおいて、右列3mにおいて伝熱管3の中心軸を含む水平な平面が左列3hにおいて重力方向に隣り合う2つの伝熱管3の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置する。配置IIにおいて、伝熱管3の長手方向に沿って左列3h及び右列3mを見たときに、左列3hにおいて伝熱管3の中心軸を含む水平な平面が右列3mにおいて重力方向に隣り合う2つの伝熱管3の中心軸を含む一対の水平な平面の間に位置する。これにより、伝熱管群3gにおいて伝熱管3を高密度に配置することができる。なお、左列3h及び右列3mにおいて、伝熱管3の中心軸が配置I又は配置IIを示さない領域が存在していてもよい。例えば、右列3mの最下段を含む領域では、伝熱管3の中心軸は配置Iを示さない。
【0031】
例えば、伝熱管群3gの隣り合う2つの列において、第二供給路7に対して近位の列が左列3hに該当し、第二供給路7に対して遠位の列が右列3mに該当する。
【0032】
左列3hの任意の上段の伝熱管3の中心軸と左列3hの上段の一段下の下段の伝熱管3の中心軸との距離L1は、距離L2と等しい。距離L2は、左列3hの上段の伝熱管3に隣接している右列3mの伝熱管3の中心軸と左列3hの下段の伝熱管3に隣接している右列3mの伝熱管3の中心軸との距離である。なお、距離L1が距離L2と等しいとは、これらが実質的に等しいことを意味する。吸収器1aの製造上の理由により距離L1と距離L2とが完全に一致していなくても、例えば、距離L1が距離L2の90~110%の範囲であれば、距離L1が距離L2と等しいとみなせる。
【0033】
図3は、参考例に係るシェルアンドチューブ式吸収器1rの断面図である。吸収器1rは、特に説明する部分を除き吸収器1aと同様に構成されている。吸収器1aの構成要素と同一又は対応する吸収器1rの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0034】
吸収器1rの伝熱管群3gにおける複数の伝熱管3の配置は、千鳥配置である。吸収器1rの伝熱管群3gの隣り合う左列3h及び右列3mにおいて、特定の領域で、距離L1が距離L2より小さくなっている。これにより、特定の領域における左列3hの伝熱管3同士の間を通過する冷媒蒸気の流速が高くなる。このため、右列3mにおいて伝熱管3同士の距離が広い空間を落下している吸収液が高流速の冷媒蒸気の流れによりドラッグされる。その結果、下段の伝熱管3に吸収液が接触しにくくなり、吸収液によって伝熱管3を適切に濡らすことが難しくなる。
【0035】
一方、吸収器1aによれば、距離L1が距離L2と等しいので、左列3hにおいて伝熱管3同士を通過する冷媒蒸気の流速が低く保たれやすい。また、右列3mにおいて吸収液が落下する距離が短くなりやすく、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。このため、吸収液によって伝熱管3を適切に濡らすことができる。その結果、吸収器1aにおいて熱通過率が高くなりやすく、吸収器1aは、小型化又は高いCOPを発揮できる冷凍機の提供の観点から有利である。例えば、吸収器1aの熱通過率を格子配列の伝熱管群を有する従来の吸収器の熱通過率の約1.3倍に調整することも可能である。
【0036】
図1に示す通り、吸収器1aにおいて、左列3hにおいて隣り合う2つの伝熱管3の中心軸同士の距離は、第一長さL3と、第一長さL3より長い第二長さL1とを含む。吸収器1aにおいて、例えば、伝熱管3に接続される部材の配置等の理由により、左列3hにおいて隣り合う2つの伝熱管3の中心軸同士の距離が異なることがある。吸収器1aによれば、伝熱管3の中心軸同士の距離が第二の長さL1を示す領域で冷媒蒸気の流速が低く保たれやすい。このため、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくく、吸収液によって伝熱管3を適切に濡らすことができる。
【0037】
図1に示す通り、吸収器1aの伝熱管群3gの全体において、複数の伝熱管3の配置が千鳥配置である。一方、吸収器1aの伝熱管群3gの一部において、複数の伝熱管3が格子状に配置されていてもよい。
【0038】
伝熱管群3gにおいて、左列3hは、例えば、伝熱管群3gにおいて第二供給路7に最も近い。
【0039】
伝熱管群3gにおいて、左列3hにおける伝熱管3の数及び右列3mにおける伝熱管3の数のそれぞれは、例えば、奇数である。
【0040】
吸収器1aの伝熱管群3gは、例えば、第一伝熱管群3aと、第二伝熱管群3bとを有している。第一伝熱管群3aにおいて、熱媒体が特定方向に流れる。特定方向は、例えば、Y軸正方向である。第二伝熱管群3bは、重力方向において第一伝熱管群3aの上方に配置されている。第二伝熱管群3bにおいて、熱媒体が特定方向と反対方向に流れる。反対方向は、例えば、Y軸負方向である。この場合、第一伝熱管群3aと第二伝熱管群3bとの間の距離を、第一伝熱管群3aにおける伝熱管3同士の距離及び第二伝熱管群3bにおける伝熱管3同士の距離に合わせることが難しい場合がある。しかし、左列3h及び右列3mにおいて、複数の伝熱管3が上記のように配置されているので、第一伝熱管群3aと第二伝熱管群3bとの間の空間において、冷媒蒸気の流速が低く保たれやすい。このため、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくく、吸収液によって伝熱管3を適切に濡らすことができる。第二伝熱管群3bにおいて、熱媒体は特定方向に流れてもよい。
【0041】
吸収器1aにおいて、例えば、熱媒体は、第一伝熱管群3aを通過した後に第二伝熱管群3bに導かれる、又は、第二伝熱管群3bを通過した後に第一伝熱管群3aに導かれる。この場合、シェル2の内部における熱媒体の流路が長くなり、吸収液への冷媒蒸気の吸収により発生した吸収熱を効果的に熱媒体に放熱できる。
【0042】
吸収器1aにおいて、熱媒体が、第二伝熱管群3bを通過した後に第一伝熱管群3aに導かれる場合、吸収液への冷媒蒸気の吸収により発生する吸収熱の放熱に関する温度効率が高くなりやすい。なぜなら、この場合、熱媒体と吸収液との間の伝熱が、対向流による伝熱に類似したものとなるからである。
【0043】
吸収器1aにおいて、例えば、左列3hの最上段の伝熱管3の中心軸と左列3hの最下段の伝熱管3の中心軸との距離は、右列3mの最上段の伝熱管3の中心軸と右列3mの最下段の伝熱管3の中心軸との距離と等しい。この場合、左列3hにおける伝熱管3の数と右列3mにおける伝熱管3の数とを一致させやすい。
【0044】
図1に示す通り、吸収器1aは、例えば、排出路5と、ポンプ6と、エリミネータ9とをさらに備えている。吸収液は、冷媒蒸気を吸収できる限り、特定の液に限定されない。吸収液の主成分は、例えば、臭化リチウム水溶液である。本明細書において、主成分とは、質量基準で最も多く含まれている成分を意味する。この場合、吸収液には、微量のオクチルアルコールが添加されていてもよい。
【0045】
シェル2は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する。シェル2は、典型的には、吸収液を貯留するとともに、シェル2の内部の吸収液及び冷媒蒸気を外気(例えば、大気圧の空気)から隔離する。
【0046】
伝熱管3の内面及び伝熱管3の外面の少なくとも一方には、溝が形成されていてもよい。伝熱管3を流れる熱媒体は、特定の流体に限定されない。伝熱管3を流れる熱媒体は、例えば、水である。
【0047】
第一供給路4は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する配管によって構成されている。第一供給路4によって、例えば、再生器等の吸収器1aの外部で濃縮された吸収液がシェル2の内部に供給される。第一供給路4における吸収液の臭化リチウムの濃度は、約63重量%であり、第一供給路4における吸収液の温度は、例えば約50℃である。第一供給路4には、絞り弁が配置されていてもよい。この場合、第一供給路4における吸収液のフラッシュ蒸発を防止しやすい。
【0048】
排出路5は、シェル2の内部で冷媒蒸気を吸収することにより希釈された吸収液を排出し、再生器等の吸収器1aの外部に導くための経路である。排出路5は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する配管によって構成されている。排出路5における吸収液の臭化リチウムの濃度は、約57重量%であり、排出路5における吸収液の温度は、例えば約36℃である。
【0049】
ポンプ6は、例えば、排出路5に配置されている。ポンプ6の作動により、シェル2の内部から再生器等の吸収器1aの外部に吸収液が送られる。ポンプ6は、例えば、速度型のポンプである。この場合、ポンプ6によって吸収液に運動量が与えられ、その後吸収液の流速が低下することにより、吸収液の圧力が上昇する。速度型のポンプとして、遠心ポンプ、斜流ポンプ、及び軸流ポンプを例示できる。ポンプ6は、回転数を変化させるための機構を備えていてもよい。その機構は、例えば、インバータによって駆動されるモータである。
【0050】
第二供給路7は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する配管によって構成されている。例えば、蒸発器から供給された冷媒蒸気が第二供給路7に導かれ、シェル2に冷媒蒸気が供給される。
【0051】
図2に示す通り、滴下器8は、第一滴下口14aと、第二滴下口14bとを有する。第一滴下口14aは、例えば、左列3hの伝熱管3に向かって吸収液を滴下する。第二滴下口14bは、例えば、右列3mの伝熱管3に向かって吸収液を滴下する。
【0052】
滴下器8は、例えば、上トレイ12、側板13、及び滴下部14を備えている。上トレイ12は、例えば、ステンレス製の薄板によって構成されている。上トレイ12の底面には貫通穴が形成されている。側板13は、例えば、テンレス製の薄板によって構成されている。滴下部14は、例えば、上トレイ12の底部の外面の一部に接合されている。また、滴下部14の側部の外面には、一対の側板13が接合されている。滴下部14には、第一滴下口14a及び第二滴下口14bが形成されている。
【0053】
第一供給路4によってシェル2に供給された吸収液は、上トレイ12に導かれる。吸収液は、上トレイ12の底面の貫通穴を通過して上トレイ12の外部に排出される。側板13は、上トレイ12から排出された吸収液を貯留するための堰としての役割を果たす。側板13によって貯留された吸収液は、第一滴下口14a及び第二滴下口14bから主に重力の作用により滴下される。
【0054】
エリミネータ9は、例えば、ステンレス製の薄板によって構成されている。エリミネータ9は、例えば、第二供給路7において山なりに曲がった流路を形成している。吸収器1aに供給される冷媒蒸気に液滴が含まれている場合、山なりに曲がった流路に沿って冷媒蒸気の流れ方向が変わること伴う遠心力により、冷媒蒸気の流れから液滴が分離される。
【0055】
吸収器1aの動作の一例を説明する。夜間等の所定期間、吸収器1aが放置された場合、吸収器1aの内部は、吸収器1aが置かれた環境の温度及び圧力にほぼ保たれている。例えば、吸収器1aが置かれた環境の温度が25℃のとき、吸収器1aの内部の温度は約25℃に保たれている。伝熱管群3gの複数の伝熱管3の内部には、例えば、大気に熱を放出した熱媒体が流れている。熱媒体が伝熱管3に流入するときの温度は、例えば32℃である。
【0056】
最初に、ポンプ6が起動される。これにより、シェル2の内部に貯留された吸収液がシェル2から抜き取られ、排出路5を通って、例えば再生器等の吸収器1aの外部に送られる。例えば、再生器に送られた吸収液は、濃縮され、第一供給路4を通って、シェル2の内部に供給される。例えば、シェル2に供給される吸収液における臭化リチウムの濃度は約63質量%であり、シェル2に供給される吸収液の温度は約50℃である。また、蒸発器等の吸収器1aの外部で生成された冷媒蒸気が第二供給路7を通って、エリミネータ9において冷媒蒸気の流から液滴が分離される。その後、冷媒蒸気がシェル2に供給される。供給される冷媒蒸気の温度は例えば6℃である。
【0057】
第一供給路4によって供給された吸収液は、滴下器8に貯留され、伝熱管群3gに向かって滴下される。伝熱管群3gへ滴下された吸収液は、伝熱管群3gの伝熱管3の外面で広がり、冷媒蒸気を吸収する。冷媒蒸気を吸収した吸収液は、希釈され、希釈と同時に吸収熱により冷媒蒸気の温度が上昇する。しかし、吸収液は、伝熱管3gの内部を流れる熱媒体によって冷却されることで、過冷却状態となり、再び、冷媒蒸気を吸収する。このように、吸収液は、冷媒蒸気の吸収、温度上昇、及び冷却を繰り返しながら、重力方向に伝熱管群3gの伝熱管3の外面に接触しつつ流下していく過程で希釈される。希釈された吸収液がシェル2の下部に貯留される。その後、シェル2の内部に貯留された吸収液が排出路5を再び通って再生器等の吸収器1aの外部に送られる。定常状態において、排出路5における吸収液の臭化リチウムの濃度は、約57重量%であり、排出路5における吸収液の温度は、例えば約36℃である。また、伝熱管3に流入する熱媒体の温度は、例えば約32℃であり、伝熱管3から流出する熱媒体の温度は、例えば約36℃である。伝熱管3から流出した熱媒体は、例えば、最終的にクーリングタワー等によって約32℃に冷却され、伝熱管3に再び導かれる。
【0058】
図4は、吸収器1aを備えた冷凍機100を示す構成図である。冷凍機100は、例えば、蒸発器50、吸収器1a、再生器60、及び凝縮器70を備えている。冷凍機100は、吸収器1aを備えているので、小型で、高いCOPを発揮しやすい。
【0059】
冷凍機100は、例えば、一重効用サイクルの吸収式冷凍機である。冷凍機100は、二重効用サイクル又は三重効用サイクルの吸収式冷凍機に変更されてもよい。再生器60の熱源としてガスバーナーを使用したとき、冷凍機100は、ガス式チラーでありうる。
【0060】
吸収器1aは、様々な観点から変更可能である。例えば、吸収器1aは、図5に示す吸収器1b又は図6及び7に示す吸収器1cのように変更されてもよい。吸収器1b及び吸収器1cは、特に説明する部分を除き、吸収器1aと同様に構成されている。吸収器1aの構成要素と同一又は対応する吸収器1b及び吸収器1cの構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。吸収器1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、吸収器1b及び吸収器1cにも当てはまる。
【0061】
図5に示す通り、吸収器1bは、仕切り部品10をさらに備えている。仕切り部品10は、第一伝熱管群3aの各列における最上段の伝熱管3と、第二伝熱管群3bの各列における最下段の伝熱管との間に冷媒蒸気が流入することを阻害する。伝熱管3の長手方向(Y軸方向)及び重力方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸方向)に沿って仕切り部品10を見る。このとき、仕切り部品10の少なくとも一部は、重力方向において、伝熱管αと伝熱管βとの間に位置する。伝熱管αは、X軸方向における第一伝熱管群3aの最上段の仕切り部品10に近い端部に位置する伝熱管3である。伝熱管βは、その端部と同じ側の、第二伝熱管群3bの最下段の端部に位置する伝熱管3である。
【0062】
伝熱管群の段方向のピッチを強度上問題にならない程度に小さくすることで伝熱管の配置の高密度化を図ることができる。例えば、第一伝熱管群3a及び第二伝熱管群3bにおける熱媒体の流路のヘッダが配置される。この場合、第一伝熱管群3aの各列における最上段の伝熱管3と第二伝熱管群3bの最下段の伝熱管3との間の距離が、その他の伝熱管3の重力方向の距離より広くなりやすい。このため、第一伝熱管群3aの各列における最上段の伝熱管3と第二伝熱管群3bの最下段の伝熱管3との間の冷媒蒸気の流動損失が相対的に小さい。例えば、その流動損失は、第一伝熱管群3a及び第二伝熱管群3bの伝熱管3の外の冷媒蒸気の流動損失に比べて小さく、伝熱管αと伝熱管βとの間に流れ込む冷媒蒸気の量が相対的に多くなりやすい。
【0063】
一方、吸収器1bによれば、仕切り部品10によって、伝熱管αと伝熱管βとの間における冷媒蒸気の流量及び流速が減少する。このため、第二伝熱管群3bの各列における最下段から第一伝熱管群3aの各列における最上段の伝熱管3に向かって落下する吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。その結果、第二伝熱管群3bの最上段の伝熱管3を吸収液によって適切に濡らすことができ、吸収器1bにおける熱通過率が高い。吸収器1bは、例えば、吸収すべき冷媒蒸気の流量が多く、大きな能力が求められる高負荷条件に適応しやすい。例えば、吸収器1bの熱通過率を格子配列の伝熱管群を有する従来の吸収器の熱通過率の約1.4倍に調整することも可能である。
【0064】
図6に示す通り、吸収器1cは、滴下器8aを備えている。滴下器8aは、特に説明する部分を除き、吸収器1aの滴下器8と同様に構成されている。
【0065】
図7に示す通り、伝熱管3の長手方向に沿って滴下器8aを見たとき、第二滴下口14bは、重力方向において第一滴下口14aを含む水平な平面から外れた位置に配置されている。これにより、右列3mの最上段に位置する伝熱管3と第二滴下口14bとの距離を、左列3hの最上段に位置する伝熱管3と第一滴下口14aとの距離と合わせやすい。これにより、左列3hの最上段の伝熱管3及び右列3mの最上段の伝熱管3と、滴下器8aとの間を通過する冷媒蒸気の流速を低く保ちやすい。このため、吸収液が冷媒蒸気の流れによりドラッグされにくい。その結果、吸収液によって伝熱管3を適切に濡らすことができ、吸収器1cにおける熱通過率が高い。吸収器1cは、例えば、吸収すべき冷媒蒸気の流量が多い、再生運転条件に適応しやすい。例えば、吸収器1cの熱通過率を格子配列の伝熱管群を有する従来の吸収器の熱通過率の約1.5倍に調整することも可能である。
【0066】
右列3mの最上段に位置する伝熱管3と第二滴下口14bとの距離は、左列3hの最上段に位置する伝熱管3と第一滴下口14aとの距離と等しくてもよい。
【0067】
図8は、本開示の実施形態の別の一例に係るシェルアンドチューブ式吸収器1dの断面図である。吸収器1dは、特に説明する部分を除き、吸収器1bと同様に構成されている。吸収器1bの構成要素と同一又は対応する吸収器1dの構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。吸収器1a~1cに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、吸収器1dにも当てはまる。
【0068】
図8に示す通り、吸収器1dにおいて、伝熱管3の長手方向及び重力方向に垂直な方向に沿って仕切り部品10を見たとき、仕切り部品10の少なくとも一部は、重力方向において、下側伝熱管3sと上側伝熱管3uとの間に位置する。下側伝熱管3sは、第一伝熱管群3aにおいて仕切り部品10に最も近い最上段の伝熱管3である。上側伝熱管3uは、第二伝熱管群3bにおいて仕切り部品10に最も近い最下段の伝熱管3である。吸収器1dにおいて、下側伝熱管3sの中心軸と上側伝熱管3uの中心軸との距離L6は、距離L7より長い。距離L7は、下側伝熱管3sを含む第一伝熱管群3aの列と隣り合う列における最上段の伝熱管3と、上側伝熱管3uを含む第二伝熱管群3bの列と隣り合う列における最下段の伝熱管3との距離である。
【0069】
仕切り部品10によって、下側伝熱管3sと上側伝熱管3uとの間に流れ込む冷媒蒸気の流量及び流速が減少しやすい。一方、距離L6が距離L7より長いので、上側伝熱管3uと下側伝熱管3sとの間に流入する冷媒蒸気の量及び冷媒蒸気の流速が所望の範囲に保たれやすく、冷媒蒸気が流入する方向と吸収液が滴下する方向とのなす角が小さくなりやすい。このため、上側伝熱管3uから滴下される吸収液は、伝熱管3の長手方向及び重力方向に垂直な方向にドラッグされにくい。これにより、第一伝熱管群3a及び第二伝熱管群3bに流れ込む冷媒蒸気の量が所望の範囲に保たれ、第二伝熱管群3bの最下段の伝熱管3から滴下された吸収液が第一伝熱管群3aの最上段の伝熱管に付着しやすい。その結果、例えば、一時的に吸収液における冷媒蒸気の吸収量が増加する、吸収液希釈運転等の運転においても、第一伝熱管群3aの伝熱管3を吸収液で適切に濡らすことができ、吸収器1dの熱通過率が向上しやすい。例えば、吸収器1dの熱通過率を格子配列の伝熱管群を有する従来の吸収器の熱通過率の約1.6倍に調整することも可能である。
【0070】
吸収器1dにおいて、例えば、熱媒体は、第一伝熱管群3aにおいて特定方向に流れ、かつ、第二伝熱管群3bにおいて特定方向と反対方向に流れる。このような構成によれば、吸収液への冷媒蒸気の吸収により発生した吸収熱を効果的に熱媒体に放熱できる。吸収器1dにおいて、例えば、熱媒体は、第一伝熱管群3a及び第二伝熱管群3bにおいて特定方向に流れてもよい。
【0071】
図8に示す通り、吸収器1dにおいて、例えば、仕切り部品10は、重力方向において、上側伝熱管3uの下方に位置する。換言すると、仕切り部品10の上端は、上側伝熱管3uの下端の下方に位置する。加えて、上側伝熱管3uの中心軸と仕切り部品10の上端との距離L8は、距離L9より長い。距離L9は、下側伝熱管3sの中心軸と仕切り部品10の下端との距離である。エリミネータ9は、例えば、第二供給路7において山なりに曲がった流路を有し、山なりに曲がった流路に沿って冷媒蒸気がエリミネータ9を通過する。このため、冷媒蒸気の流れは、斜め下方を向いた状態で仕切り部品10の周囲に到達しやすい。距離L8が距離L9より長いことは、冷媒蒸気の流れが斜め下方を向いた状態を保ったまま下側伝熱管3sと上側伝熱管3uとの間に流れ込ませるうえで有利である。その結果、下側伝熱管3sと上側伝熱管3uとの間に置いて、冷媒蒸気が流入する方向と吸収液が滴下する方向とのなす角が小さくなりやすい。
【0072】
吸収器1dは、様々な観点から変更可能である。例えば、重力方向において、上側伝熱管3uと仕切り部品10とは重なっていてもよい。この場合、仕切り部品10は、開口を有していてもよい。この開口の少なくとも一部は、例えば、重力方向において上側伝熱管3uより下方に位置し、かつ、この開口は、上側伝熱管3uの下端の近くに位置する。この場合、冷媒蒸気の流れは、その開口を通過して斜め下方を向いた状態で下側伝熱管3sと上側伝熱管3uとの間に流れ込みやすい。その結果、下側伝熱管3sと上側伝熱管3uとの間に置いて、冷媒蒸気が流入する方向と吸収液が滴下する方向とのなす角が小さくなりやすい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示のシェルアンドチューブ式吸収器は、吸収式冷凍機に備えられ、ビルのセントラル空調システム及びプロセス冷却用のチラー等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1a、1b、1c、1d シェルアンドチューブ式吸収器
2 シェル
3 伝熱管
3a 第一伝熱管群
3b 第二伝熱管群
3g 伝熱管群
3h 左列
3m 右列
3s 下側伝熱管
3u 上側伝熱管
4 第一供給路
7 第二供給路
8 滴下器
10 仕切り部品
14a 第一滴下口
14b 第二滴下口
100 冷凍機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9