(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】電動自転車用制御装置及び電動自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/50 20100101AFI20231117BHJP
【FI】
B62M6/50
(21)【出願番号】P 2019222961
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山澤 貴史
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-095180(JP,A)
【文献】特開2010-158090(JP,A)
【文献】特開2001-239982(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1885715(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
車体への押力に前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部と、
前記モードの実行時に、前記車体の速度に関する情報を出力する第1センサとを備える、電動自転車に用いられる電動自転車用制御装置であって、
前記制御部は、前記モードの実行時に、前記車体の速度に関する情報に基づく前記車体の速度が閾値以上となれば、
前記車体の速度の変化に追従する第1追従量よりも小さい追従量であって、前記閾値以上である目標値に沿っ
た第2追従量で、前記補助駆動力を付加するように前記電動モータを制御する
電動自転車用制御装置。
【請求項2】
前記第1センサは、前記電動モータの単位時間当たりの回転数を検出し、回転数情報を出力するホールICセンサであり、
前記回転数情報は、前記車体の速度に関する情報に含まれる
請求項1に記載の電動自転車用制御装置。
【請求項3】
前記第1センサは、前記車体の速度を検出し、速度情報を出力する速度センサであり、
前記速度情報は、前記車体の速度に関する情報に含まれる
請求項1に記載の電動自転車用制御装置。
【請求項4】
さらに、前記モードの実行時に、前記車体の速度を検出して出力する第2センサを備え、
前記制御部は、前記モードの実行時に、前記第2センサが検出した前記車体の速度に基づいて、前記第1センサが検出した前記車体の速度を補正する
請求項1又は2に記載の電動自転車用制御装置。
【請求項5】
前記第2追従量は、前記目標値を基準として±20%の範囲である
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動自転車用制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記車体の前記速度が前記閾値未満において、前記車体の前記速度が前記閾値に近づくほど、前記車体の前記速度に追従する
前記第1追従量で前記補助駆動力を強めるように前記電動モータを制御する
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動自転車用制御装置。
【請求項7】
電動モータと、
車体への押力に前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部とを備え、
前記制御部は、前記モードの実行時に、前記車体の速度が目標速度に
上昇して近づく及び下降して近づくと前記電動モータの出力の変動量
を小さくする
電動自転車用制御装置。
【請求項8】
電動モータと、
車体への押力に前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記モードの実行時に、前記車体の速度が目標速度に向かい上昇するほど前記電動モータの出力の変動量を小さくし、
前記車体の速度が前記目標速度に向かい下降するほど、前記電動モータの出力の変動量を小さくする
電動自転車用制御装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電動自転車用制御装置を備える
電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動自転車用制御装置及び電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータと、ペダル踏力によらずに電動補助自転車に車速が生じている第1状態であると判定されて操作部から操作信号が入力された場合に、操作信号が入力された時点以降、第1車速を維持するように電動モータの駆動を制御するモータ制御部とを備える電動自転車が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本開示は、人が快適に電動自転車を押し歩く又は支え歩くことができる電動自転車用制御装置及び電動自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る電動自転車用制御装置は、電動モータと、車体への押力に前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部と、前記モードの実行時に、前記車体の速度に関する情報を出力する第1センサとを備える、電動自転車に用いられる電動自転車用制御装置であって、前記制御部は、前記モードの実行時に、前記車体の速度に関する情報に基づく前記車体の速度が閾値以上となれば、前記車体の速度の変化に追従する第1追従量よりも小さい追従量であって、前記閾値以上である目標値に沿った第2追従量で、前記補助駆動力を付加するように前記電動モータを制御する。
【0006】
また、本開示の一態様に係る電動自転車用制御装置は、電動モータと、車体への押力に前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部とを備え、前記制御部は、前記モードの実行時に、前記車体の速度が目標速度に上昇して近づく及び下降して近づくと前記電動モータの出力の変動量を小さくする。
【0007】
また、本開示の一態様に係る電動自転車用制御装置は、電動モータと、車体への押力に前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部とを備え、前記制御部は、前記モードの実行時に、前記車体の速度が目標速度に向かい上昇するほど前記電動モータの出力の変動量を小さくし、前記車体の速度が前記目標速度に向かい下降するほど、前記電動モータの出力の変動量を小さくする。
【0008】
また、本開示の一態様に係る電動自転車は、電動自転車用制御装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電動自転車用制御装置等によれば、人が快適に電動自転車を押し歩く又は支え歩くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る電動自転車の側面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る電動自転車の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る電動自転車のハンドル及び操作部の斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る電動自転車が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る電動自転車の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力電流と時間との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例における電動自転車の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力電流と時間との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1の変形例1に係る電動自転車の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力電流と時間との関係を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、実施の形態1の変形例1に係る電動自転車が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aで電動自転車の速度が目標速度に達している場合を示すフローチャートである。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態1の変形例2に係る電動自転車が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【
図9B】
図9Bは、
図9Aで電動自転車の速度が目標速度に達している場合を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る電動自転車が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺等は必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
以下、本実施の形態に係る電動自転車用制御装置及び電動自転車について説明する。
【0014】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1に係る電動自転車1の側面図である。
【0015】
図1に示すように、電動自転車1は、第1モードと、第2モードとを有する。第1モードは、例えばアシストモードであり、ペダル17への人(ユーザ)の踏力に基づく電動自転車1の前進を補助する。第2モードには、例えば押し歩きモード及び自走モードの少なくとも一方が含まれる。押し歩きモードでは、ユーザが電動自転車1を押して歩くときに、ユーザによる車体10を前へ押す力に基づいて、電動自転車1の前進が補助される。自走モードでは、人が電動自転車1を支えながら歩くときの電動自転車1の前進が補助される。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る電動自転車1の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、電動自転車1は、車体10と、操作部21と、手動スイッチ22と、クランク回転センサ31と、電動自転車用制御装置の構成に含まれるモータ回転センサ32と、踏力センサ33と、車速センサ34と、変速機計測部35と、モータ駆動ユニット40と、バッテリー50と、前照灯60と、変速機70とを備える。
【0018】
[車体10]
車体10は、フレーム11と、前輪12と、後輪13と、サドル15と、ハンドル14と、クランク16と、ペダル17と、図示しないスプロケットと、チェーン19とを備える。
【0019】
フレーム11は、ヘッドパイプ111と、メインフレーム112と、立パイプ113と、フォーク114と、チェーンステー115とを備える。ヘッドパイプ111は、前輪12を支持するフォーク114及びハンドル14を、ヘッドパイプ111の軸を中心に回転自在に支持する。ハンドル14を左右に回すことで、フォーク114に支持された前輪12の向きを左右に回転させることができる。
【0020】
メインフレーム112は、ヘッドパイプ111と立パイプ113とを連結する部分である。メインフレーム112の下端部には、クランク16及びモータ駆動ユニット40が取り付けられる。本実施の形態に係る電動自転車1は、クランク16とモータ駆動ユニット40とが一体化された、いわゆるセンターユニット方式の電動自転車1であるが、センターユニット方式に限定されない。
【0021】
立パイプ113は、サドル15を着脱可能に支持する。具体的には、立パイプ113には、サドル15を支持するシートポストが挿入されて固定される。本実施の形態では、立パイプ113に、バッテリー50が着脱可能に取り付けられる。
【0022】
フォーク114は、前輪12を回転自在に支持する。前輪12を支持するフォーク114には、前照灯60が取り付けられる。
【0023】
チェーンステー115は、後輪13を回転自在に支持する。
【0024】
サドル15は、人が適切な姿勢で乗車した場合に、人が座る部分である。
【0025】
ハンドル14には、一対のグリップ141、及び、一対のブレーキレバー142が左右に設けられる。
【0026】
一対のグリップ141は、適切な姿勢で乗車された場合に、手で握られる部分である。また、一対のグリップ141は、電動自転車1を押して又は支えて歩く際にも手で握られて、前方への押力を受ける。一対のグリップ141の少なくとも一方には、握る力又は押力を検知するグリップセンサが設けられてもよい。
【0027】
一対のブレーキレバー142は、前輪12及び後輪13の各々に取り付けられた、図示しないブレーキ装置の動作レバーである。一方のブレーキレバー142を操作することで、前輪12に取り付けられたブレーキ装置が駆動され、前輪12に対して機械的な制動力を与える。他方のブレーキレバー142を操作することで、後輪13に取り付けられたブレーキ装置が駆動され、後輪13に対して機械的な制動力を与える。
【0028】
ブレーキレバー142には、ブレーキセンサが設けられており、このブレーキセンサがブレーキレバー142に対する操作を検出するようになっている。
【0029】
クランク16は、クランク軸161と、一対のクランクアーム162とを有する。クランクアーム162は、メインフレーム112の両側に1つずつ設けられており、左右方向に延びるクランク軸161の両端に固定される。クランクアーム162の一方端がクランク軸161に固定され、他方端には、ペダル17が回転自在に固定される。ペダル17に踏力が加えられた場合、クランクアーム162がクランク軸161を中心に回転し、当該回転による人力駆動力がスプロケット及びチェーン19を介して後輪13に伝達される。第1モードで動作する場合には、踏力に基づく人力駆動力と、当該人力駆動力に付加された電動モータ41による第1補助駆動力とが後輪13に伝達される。
【0030】
[操作部21]
図3は、実施の形態1に係る電動自転車1のハンドル及び操作部21の斜視図である。
【0031】
図2及び
図3に示すように、操作部21は、一対のブレーキレバー142の一方(本実施の形態では左側のブレーキレバー142)の近傍に設けられる。操作部21は、前照灯60を点灯させるライトスイッチ(図示省略)等を備えた端末装置である。操作部21は、人による操作を受け付けるためボタン等を有する。ボタンは、タッチパネルディスプレイ、機械式のボタン等である。
【0032】
また、操作部21は、例えば
図1の後輪13に空転が起こっていることを表示する表示部44を備える。表示部44は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
【0033】
[手動スイッチ22]
手動スイッチ22は、第2モードを実行するための押し歩き操作又は自走させる操作を受け付ける機械式のスイッチである。手動スイッチ22は、例えばモーメンタリ型のスイッチである。具体的には、人によって手動スイッチ22が押下されている期間では、操作部21は、第2モードを実行するための第2モードオン信号を制御装置42(後述)に出力し続ける。一方、手動スイッチ22が押下されていない期間には、操作部21は、第2モードオン信号を制御装置42に出力しない。
【0034】
なお、手動スイッチ22を1回押下した場合に、その後、手動スイッチ22を押し続けなくても、第2モードが実行されてもよい。第2モードの実行中に、再び手動スイッチ22を押下した場合に、第2モードが停止されてもよい。この場合、手動スイッチ22を押し続けなくてよいので、人は、車体10を押すことに専念する。
【0035】
また、手動スイッチ22には、第2モードの押し歩きモードを実行するための押し歩きスイッチと、第2モードの自走モードを実行するための自走スイッチとの2つの異なるスイッチが含まれてもよい。この場合、制御部43は、押し歩きスイッチが押下されたとき、押し歩きモードを実行し、自走スイッチが押下されたとき、自走モードを実行してもよい。
【0036】
[クランク回転センサ31]
図1及び
図3に示すように、クランク回転センサ31は、第1モード及び第2モードの実行時に、単位時間当たりのクランク16の回転数を検出する。クランク回転センサ31は、歯車状の回転体と、回転体の歯を挟むように配置された光出射部と受光部とを有する光検出器とを有することで実現する。クランク回転センサ31は、検出したクランク16の回転数を示すクランク回転数情報を制御装置42に出力する。なお、クランク回転センサ31は、クランク16の回転数を検出することができればいかなる構成でもよい。また、クランク回転センサ31は、クランク軸161の近傍に配置される。
【0037】
[モータ回転センサ32]
モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転軸の近傍に配置される。モータ回転センサ32は、第1モード及び第2モードの実行時に、電動自転車1の速度に関する情報を出力する。モータ回転センサ32は、電動モータ41の単位時間当たりの回転数を検出し、モータ回転数情報を出力するホールICセンサである。モータ回転数情報は、電動モータ41の単位時間当たりの回転数に基づいて電動自転車1の速度を算出することができる情報であり、電動自転車1の速度に関する情報に含まれる。本実施の形態では、電動自転車1の速度とは、主に第2モード実行時における車体10の速度である。モータ回転センサ32は、第1センサの一例である。
【0038】
具体的には、モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転軸と一体的に回転する磁石と、ホールICとを有する。ホールICは、磁石の回転に応じて変化する磁界の変化を検出することで、単位時間当たりの磁石の回転数、すなわち、電動モータ41の回転数を検出する。なお、モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転数を検出することができればいかなる構成でもよい。モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報を制御装置42に出力する。
【0039】
[踏力センサ33]
踏力センサ33は、磁歪式のトルクセンサであり、ペダル17への人力駆動力に基づいてクランク軸161が回転することにより発生する人力駆動力を検出する。踏力センサ33は、コイルと、磁歪発生部とを有する。例えば、ペダル17に踏力が加えられて人力駆動力が発生した場合に、磁歪発生部に歪みが発生する。磁歪発生部には、透磁率が増加する部位と減少する部位とが発生する。このコイルのインダクタンス差を検出することで、人力駆動力を検出する。踏力センサ33は、検出した人力駆動力を示す踏力情報を制御装置42に出力する。なお、踏力センサ33の構成は特に限定されず、ペダル17への人力駆動力が検出できればいかなる構成でもよい。
【0040】
また、踏力センサ33は、クランク軸161の近傍に配置される。
【0041】
[車速センサ34]
車速センサ34は、第1モード及び第2モードの実行時に、電動自転車1の速度を検出する。車速センサ34は、検出した電動自転車1の速度を示す速度情報を制御装置42に出力する。例えば車速センサ34は、前輪12又は後輪13の回転から電動自転車1の速度を検出し、速度を示す速度情報を制御装置42に出力するホイルセンサ等の速度センサである。車速センサ34は、第2センサの一例である。
【0042】
なお、車速センサ34は、ホイルセンサ、マグネットセンサ等であってもよいが、対地速度により算出するサイクルコンピュータであってもよく、電動自転車1の速度を検知することができればいかなる構成でもよい。
【0043】
車速センサ34は、例えば、フォーク114の下端部に設けられ、速度を測定し易い位置に配置される。
【0044】
[変速機計測部35]
変速機計測部35は、後輪13の変速機70の段を計測し、変速機70の段を示す情報を制御装置42へ送信する。変速機70の段の計測は、例えば、変速機切替装置が出力する変速機70の段を示す情報を制御装置42に出力することで実現してもよい。
【0045】
[モータ駆動ユニット40]
モータ駆動ユニット40は、車体10に取り付けられ、電動自転車用制御装置の構成に含まれる電動モータ41と、制御装置42とを有する。モータ駆動ユニット40は、電動モータ41及び制御装置42を、樹脂製又は金属製の筐体に収納してユニット化される。筐体の内部には、クランク回転センサ31、モータ回転センサ32及び踏力センサ33等が設けられる。
【0046】
電動モータ41は、制御装置42による制御に基づいて、バッテリー50からの電力を受けて駆動する。電動モータ41の回転トルクは後輪13のスプロケットに伝達されて、後輪13が回転する。回転トルクは、第1補助駆動力及び第2補助駆動力を意味する。
【0047】
電動モータ41は、第1補助駆動力及び第2補助駆動力となるモータである。電動モータ41は、第1モードを実行中に、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、第1補助駆動力を付加する。また、電動モータ41は、第2モードを実行中に、電動自転車1に対する押し歩く力に、第2補助駆動力を付加する。また、電動モータ41は、第2モードを実行中に、電動自転車1が人に支えられながら自走する第2補助駆動力を付加する。
【0048】
図2に示すように、制御装置42には、電動モータ41、クランク回転センサ31、モータ回転センサ32、踏力センサ33、車速センサ34、変速機計測部35、手動スイッチ22、操作部21、バッテリー50及び前照灯60が電気的に接続される。制御装置42は、クランク回転センサ31、踏力センサ33、モータ回転センサ32、車速センサ34、変速機計測部35等のセンサによるセンシング情報に基づいて、電動モータ41の動作を制御する。また、制御装置42には、操作部21及び手動スイッチ22による操作信号、及び、各センサによる検知結果であるセンシング情報が入力される。センシング情報は、クランク回転数情報、モータ回転数情報、踏力情報、速度情報、及び、変速機70の段を示す情報を含む総称である。
【0049】
制御装置42は、電動自転車用制御装置の構成に含まれる制御部43を有する。制御部43は、電動自転車1の動作モードに応じて、電動モータ41を駆動する。具体的には、制御部43は、第1モードと第2モードとを有し、第1モードと第2モードとを切り替えてそれぞれのモードを実行する。例えば、制御部43は、第2モードが停止された後、踏力センサ33によってペダル17への踏力が検出されない場合、再度第2モードを開始する指示を受け付けたときに、第2モードを再開する。具体的には、制御部43は、第2モードが停止された後、手動スイッチ22が押下されたとき、第2モードを再開する。また、制御部43は、踏力センサ33によってペダル17への踏力が検出された場合、手動スイッチ22が押下されても第2モードを再開しない。
【0050】
第1モードは、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ41による第1補助駆動力を付加して走行するアシストモードである。第1モードは、手動スイッチ22が押下されて電源がオンされた後、人が電動自転車1に乗車している場合に実行される。具体的には、第1モードは、踏力センサ33で検知したペダル17への踏力が所定値より大きい場合に実行される。
【0051】
制御部43は、第1モードを実行する場合、ペダル17への踏力と電動自転車1の速度とに基づいて、電動モータ41が生成する第1補助駆動力の大きさを決定する。ペダル17への踏力は、踏力センサ33による検知結果から得られる。例えば、電動自転車1の速度は、前輪12の単位時間当たりの回転数と前輪12の大きさとに基づいて算出される、又は、後輪13の単位時間当たりの回転数と、後輪13の大きさとに基づいて算出される。
【0052】
なお、前輪12又は後輪13の単位時間当たりの回転数と電動自転車1の速度とを予め対応付けたテーブルが、制御装置42のメモリに記憶されていてもよい。制御部43は、当該テーブルを参照することで、前輪12又は後輪13の回転数から電動自転車1の速度を決定してもよい。
【0053】
第1モードにおける第1補助駆動力は、電動自転車1の走行速度に応じて異なるが、例えば、ペダル17への踏力の2倍以下の大きさである。例えば、制御部43は、電動自転車1の走行速度が時速10km未満の場合に、電動モータ41を駆動することで、ペダル17への踏力の2倍以下の第1補助駆動力を発生させる。制御部43は、速度が時速24km以上の場合は、電動モータ41に第1補助駆動力を発生させない。制御部43は、速度が時速10km以上24km未満の場合には、電動モータ41を駆動することで、速度に応じて定められた第1補助駆動力を発生させる。
【0054】
第2モードは、車体10を押力に電動モータ41による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は、支えられた車体10に第2補助駆動力を付加して自走させる(支え歩く)モード(押し歩きモード又は自走モード)である。第2モードは、モードの一例である。
【0055】
押し歩きモードは、電源がオン状態で、人が電動自転車1の車体10を押し歩く際に、電動モータ41による第2補助駆動力を車体10に付加するモードである。押し歩きモードは、人が電動自転車1に乗車しておらず、車体10を押しながら歩く場合に実行される。
【0056】
自走モードは、電動自転車1を人が支えた状態で、電動モータ41による第2補助駆動力を車体10に付加して自走させるモードである。自走モードは、押し歩きモードと同様に、人が電動自転車1に乗車しておらず、電動自転車1の車体10を支えながら歩く場合に実行される。自走モードにおいて、人は、車体10を前方に押す力を加えていない。
【0057】
制御部43は、車体10に対する前方への押す力の有無によって、押し歩きモード及び自走モードのいずれのモードを実行するか判別可能である。例えば、制御部43は、グリップ141等に設けられたグリップセンサ等によって車体10を前方への押す力の有無を検知し、検知結果に応じて押し歩きモードと自走モードとを切り替えて実行してもよい。あるいは、制御部43は、押し歩きモードか自走モードかを判別することなく、第2補助駆動力を付加する第2モードとして実行してもよい。また、制御部43は、人による手動スイッチ22の操作によって、押し歩きモードと自走モードとを切り替えて実行してもよい。
【0058】
本実施の形態では、押し歩きモード及び自走モードのそれぞれは、手動スイッチ22が押下されている期間に実行される。押し歩きモード及び自走モードのそれぞれは、ペダル17への踏力が所定値より大きい場合には実行されなくてもよい。つまり、第1モードと第2モードとは排他的に実行される。また、押し歩きモードと自走モードとも排他的に実行される。
【0059】
また、制御部43は、第2モードの実行時において、電動自転車1の速度に関する情報をモータ回転センサ32から取得する。電動自転車1の速度に関する情報は、電動自転車1の速度を算出可能な電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報等を含む。本実施の形態では、制御部43は、電動自転車1の速度に関する情報として、モータ回転数情報をモータ回転センサ32から取得する。
【0060】
また、制御部43は、第2モードの実行時において、モータ回転センサ32からモータ回転数情報を取得すると、モータ回転数情報から電動自転車1の速度を算出する。例えば、制御部43は、電動モータ41の単位時間当たりの回転数から、電動自転車1の速度を算出する。
【0061】
また、制御部43は、電動自転車1の速度が閾値以上であるかどうかを判定する。制御部43は、電動自転車1の速度が閾値未満であれば、電動自転車1の速度の大きさに応じて電動モータ41を制御する。ここで、閾値は、目標速度以下であり、あらかじめ決定された値である。閾値は、目標速度の数十%程度に設定される。
【0062】
具体的には、制御部43は、電動自転車1の速度が閾値未満において、電動自転車1の速度が閾値に近づくほど、電動自転車1の速度に追従する第1追従量で第2補助駆動力を強めるように電動モータ41を制御する。第1追従量は、電動自転車1の速度が閾値に近くなるほど追従量は小さくなり、電動自転車1の速度が低下して閾値から離れるほど、追従量は大きくなる。例えば人が電動自転車1の押し歩き又は支え歩きを開始した直後、又は、坂を上る場合では、電動自転車1の速度は、閾値よりも小さいため、電動自転車1の速度の増加量に追従するように、制御部43は、電動モータ41を制御して第2補助駆動力を車体10に付与する。ここで、追従量は、電動自転車1の速度の変化に沿って変化する電動モータ41の出力の変化の度合い(制御量)を示す。電動モータ41の出力は、電動モータ41の出力電流を制御することで変化する。また、追従量は、第1追従量及び第2追従量の総称である。制御部43が第1追従量で電動モータ41を制御する場合、車体10に付与する第2補助駆動力の変動量は大きくなる。
【0063】
また、制御部43は、電動自転車1の速度が閾値以上となれば、閾値以上である目標速度に沿った第1追従量よりも小さい第2追従量で、第2補助駆動力を付加するように電動モータ41を制御する。人が電動自転車1を押し歩く又は支え歩く速度は、一定ではなく、正弦波のように変化する。つまり電動自転車1の速度が一定周期で変化するため、制御部43は、電動自転車1の速度の変化に対する追従量を第2追従量にすることで、第2補助駆動力を付加するように電動モータ41を制御する。ここで、第2追従量は、第1追従量に比べて正弦波のような人の歩行速度の変化にほとんど追従せず、人の歩行平均速度又は目標速度等に沿って追従する。人が電動自転車1を押し歩く又は支え歩く場合に、制御部43は、大きい追従量にするわけではない。なぜならば、追従量が大きい場合、目標速度付近での追従量が過大となり、人が電動自転車1を押し歩く又は支え歩く場合、電動自転車1は、人の歩行速度の変化に引っ張られるため、制御部43が目標速度に応じた第2補助駆動力を車体10に付与するように、電動モータ21の出力電流を戻そうとすると考えられるからである。このため、制御部43は、第2追従量で電動モータ41を制御する場合、目標速度付近での第2追従量が過大とならないように、第1追従量よりもなだらかに又はわずかに、押し歩く又は支え歩く電動自転車1の速度の変化に追従する。例えば、第2追従量は、目標速度時に制御される電動モータ41の目標出力電流を基準として±20%の範囲である。言い換えれば、第2追従量は、電動モータ41の目標出力電流を基準として±20%の範囲である。つまり、制御部43は、第2追従量で電動モータ41を制御する場合、電動自転車1を押し歩く又は支え歩く速度が変化しても、速度の変化に対してゆるやかに電動モータ41の出力電流を制御する。目標速度及び目標出力電流は、目標値の一例である。
【0064】
また、制御部43は、第2モードを実行する場合、電動自転車1の走行速度が予め定められた上限値を超えないように、電動モータ41に第2補助駆動力を生成させる。第2モードにおける第2補助駆動力は、例えば、電動自転車1の速度が時速6km未満になる大きさである。本実施の形態では、第2モードを実行する場合、電動自転車1の速度の上限値が時速6kmとしたが、時速3~4kmでもよく、より好ましくは時速3.3~3.9kmであってもよく、特に限定されない。
【0065】
例えば、電動自転車1の速度が時速3~4kmの範囲であれば、制御部43は、第2追従量で電動モータ41を制御する。この場合、閾値は、時速3kmとなる。なお、これらの数値には限定されない。
【0066】
制御装置42は、バッテリー50から供給される電力を、電動モータ41及び前照灯60等に供給する。
【0067】
制御装置42は、例えば、マイコン(マイクロコントローラ)等で実現され、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサ等で構成される。なお、制御装置42は、専用の電子回路で実現されてもよい。
【0068】
本実施の形態では、制御装置42は、モータ駆動ユニット40の筐体の内部に収納されているが、これに限らない。制御装置42は、モータ駆動ユニット40とは別体で設けられていてもよい。
【0069】
[バッテリー50]
バッテリー50は、電動モータ41の駆動用の電力を貯める蓄電池である。バッテリー50は、例えば、二次電池であるが、キャパシタ等であってもよい。バッテリー50は、電動モータ41に電気的に接続されている。具体的には、バッテリー50は電動モータ41に対して電力を供給する。
【0070】
[前照灯60]
前照灯60は、バッテリー50から供給される電力によって、電動自転車1の進行方向に向けて光を発する照明装置である。前照灯60は、操作部21を介して、人による操作を受け付けることで点灯したり消灯したりする。前照灯60は、操作部21のライトスイッチによって、点灯と消灯とが切り替えられる。
【0071】
[変速機70]
変速機70は、互いにギア比の異なる複数の駆動力伝達経路を有する遊星ギア、多段ギア等の周知の変速機構で構成されている。変速機70は、駆動力伝達経路を切り換えることで、例えば、低速段(Lowギア)、中速段(Middleギア)、高速段(Topギア)等に変速可能である。
【0072】
<動作>
ここでは、予め手動スイッチ22がオンされる場合を想定した、電動自転車1の制御処理について説明する。
【0073】
図4に示すように、まず、モータ回転センサ32は、第2モードの実行時に、単位時間当たりの電動モータ41の回転数を検出し(S11)、検出した電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報を制御装置42に出力する。
【0074】
制御装置42の制御部43は、モータ回転数情報を取得すると、モータ回転数情報に示されるモータ回転数から電動自転車1の速度を算出する(S12)。
【0075】
また、車速センサ34は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度を検出し(S13)、検出した電動自転車1の速度を示す速度情報を制御装置42に出力する。
【0076】
制御装置42の制御部43は、車速センサ34から速度情報を取得すると、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度を補正する(S14)。
【0077】
なお、ステップS13及びS14の処理を行わなくてもよく、省略してもよい。
【0078】
制御部43は、第2モードの実行時において、算出した電動自転車1の速度が閾値以上であるかどうかを判定する(S15)。
【0079】
図4及び
図5に示すように、電動自転車1の速度が閾値未満である場合(S15でNo)、制御部43は、電動自転車1の速度が閾値に近づくほど、電動自転車1の速度に追従する第1追従量で第2補助駆動力を強めるように電動モータ41を制御する(S16)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
図5は、実施の形態1に係る電動自転車1の速度と時間との関係、及び、電動モータ41の出力電流と時間との関係を示す図である。
【0080】
制御部43は、電動自転車1の速度が閾値以上である場合(S15でYes)、閾値以上である目標速度に沿った第1追従量よりも小さい第2追従量で、第2補助駆動力を付加するように電動モータ41を制御する(S17)。具体的には、電動自転車1の速度が閾値以上となれば、追従量が第1追従量よりも小さくした第2追従量で電動モータ41を制御する。これにより、
図5に示すように、実線で示す人の歩行速度と、一点鎖線で示す電動自転車1の速度との間のギャップが後述する
図6に比べて小さくなる。つまり、電動自転車1は、人の歩行速度に合わせた速度で移動する。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0081】
<比較例>
図6は、比較例における電動自転車の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力電流と時間との関係を示す図である。
【0082】
図6に示すように、電動モータの出力電流を人の歩行速度に追従するように制御した場合、実線で示す人の歩行速度と、一点鎖線で示す電動自転車の速度との間にギャップが生じてしまう。このため、制御部は、電動自転車1を押し歩く場合、電動自転車の速度が人の歩行速度の変化に沿った電動モータの出力電流(破線で示す)を制御することが、十分にできていない。
【0083】
このため、比較例の電動自転車では、電動自転車1の速度と人の歩行速度とのズレにより、人は、電動自転車を押し歩く場合に違和感を覚えることがある。
【0084】
[作用効果]
次に、本実施の形態における電動自転車用制御装置および電動自転車1の作用効果について説明する。
【0085】
上述したように、本実施の形態に係る電動自転車用制御装置は、電動モータ41と、車体10への押力に、電動モータ41による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は、第2補助駆動力を付加して自走させる第2モードを実行する制御部43と、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度に関する情報を出力する第1センサとを備える、電動自転車1に用いられる電動自転車用制御装置であって、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度に関する情報に基づく電動自転車1の速度が閾値以上となれば、閾値以上である目標速度に沿った第1追従量よりも小さい第2追従量で、第2補助駆動力を付加するように電動モータ41を制御する。
【0086】
例えば、従来の電動自転車では、人が電動自転車を押し歩く時に、電動自転車を一定の速度で移動するように制御される。しかし、人の歩行速度は正弦波のように変化するため、電動自転車の速度と人の歩行速度とのズレにより、人は、電動自転車を押し歩く場合に違和感を覚えることがある。
【0087】
しかし、本実施の形態によれば、例えば電動自転車1の速度が閾値より小さい場合には第1追従量で第2補助駆動力を強めるため、人に加わる負担を抑制することができる。また、電動自転車1の速度が閾値以上となる場合には、第2追従量で第2補助駆動力を付加するため、人の歩行速度と電動自転車1の速度とのズレを抑制することができる。
【0088】
したがって、電動自転車1は、人が快適に電動自転車1を押し歩く又は支え歩くことができる。その結果、人は、電動自転車1を押し歩く又は支え歩くことに専念することができる。
【0089】
また、本実施の形態に係る電動自転車1は、電動自転車用制御装置を備える。
【0090】
この電動自転車1においても、上述と同様の作用効果を奏する。
【0091】
また、本実施の形態に係る電動自転車用制御装置において、第1センサは、電動モータ41の単位時間当たりの回転数を検出し、回転数情報を出力するホールICセンサである。そして、回転数情報は、電動自転車1の速度に関する情報に含まれる。
【0092】
これによれば、実質的に押し歩き又は支え歩きの開始時点からの電動モータ41の単位時間当たりの回転数を検出することができるため、電動自転車1の速度を精度よく算出することができる。このため、押し歩き又は支え歩きを開始した直後に、第2補助駆動力を電動自転車1に付与することができるため、人が電動自転車1を押し歩く又は支え歩く際の負担の増大を抑制することができる。
【0093】
また、本実施の形態に係る電動自転車用制御装置は、さらに、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度を検出して出力する第2センサを備える。そして、制御部43は、第2モードの実行時に、第2センサが検出した電動自転車の速度に基づいて、モータ回転センサ32が検出した電動自転車1の速度を補正する。
【0094】
これによれば、第2センサが検出した速度に基づいて、モータ回転センサ32で検出された電動自転車1の速度を補正することで、電動自転車1の速度をより精度よく算出することができる。
【0095】
また、本実施の形態に係る電動自転車用制御装置において、第2追従量は、目標値を基準として±20%の範囲である。
【0096】
これによれば、電動自転車1を押し歩く又は支え歩く際の速度が変動しても、制御部43は、第2追従量で第2補助駆動力を付加するように電動モータ41を制御することができる。
【0097】
また、本実施の形態に係る電動自転車用制御装置において、制御部43は、車体10の速度が閾値未満において、電動自転車1の速度が閾値に近づくほど、電動自転車1の速度に追従する第1追従量で第2補助駆動力を強めるように電動モータ41を制御する。
【0098】
これによれば、電動自転車1の速度が目標速度に近づけば、追従量を第1追従量から第2追従量のように小さくすることで、人の歩行速度と電動自転車1の速度とのズレを抑制することができる。このため、電動自転車1は、人がより快適に電動自転車1を押し歩く又は支え歩くことができる。
【0099】
(実施の形態1の変形例1)
本変形例では、電動自転車1の速度が目標速度に近づくほど電動モータ41の出力の変動量を徐々に小さくする点で、実施の形態1と相違する。本変形例における他の構成は、実施の形態1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0100】
図7は、実施の形態1の変形例1に係る電動自転車1の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力電流と時間との関係を示す図である。
【0101】
図7に示すように、電動モータ41は、所定時間当たりの出力電流の変化が、目標速度に近づくほど小さくなる。
図7で示した範囲A及び範囲Bは、共に同一の所定時間における電動モータ41の出力電流の変化を示している。所定時間は、例えば約0.1秒である。範囲Bにおける電動自転車1の車速は、範囲Aにおける電動自転車1の車速よりも目標速度に近い。また、範囲Bにおける電動モータ41の出力電流の変動量は、範囲Aにおける電動モータ41の出力電流の変動量よりも小さい。このように、電動自転車1の速度は、目標速度に近づくほど電動モータ41の出力電流の変動量を徐々に小さくする。
【0102】
ここでは、電動モータ41の出力電流を制御する処理について説明する。
図8Aは、実施の形態1の変形例1に係る電動自転車1が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【0103】
図8Aでは、電動自転車1は、ステップS11からS14までの処理を行う。
【0104】
制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に達しているかどうかを判定する(S21)。
【0105】
電動自転車1の速度が目標速度に達していない場合(S21でNo)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に近づいているかどうかを判定する(S22)。例えば、電動自転車1が停車又は実質的に停車している状態(例えば、時速1km以下の速度)から押し歩きを開始して、電動自転車1の速度が目標速度に近づく場合に、ステップS22の処理が行われる。
【0106】
電動自転車1の速度が目標速度に近づいている場合(S22でYes)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動モータ41の出力電流を高めつつも、変動量を徐々に小さくする(S23)。変動量を徐々に小さくするとは、段階的に小さくすること、及び、無段階的に小さくすることである。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0107】
電動自転車1の速度が目標速度から離れていく場合(S22でNo)、制御部43は、電動自転車1の速度が目標速度から遠ざかっているかどうかを判定する(S24)。電動自転車1の速度が目標速度から遠ざかっている場合(S24でYes)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動モータ41の出力電流を高めつつも、変動量を徐々に大きくする(S25)。そして、変動量を徐々に大きくするとは、段階的に大きくすること、及び、無段階的に大きくすることである。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0108】
電動自転車1の速度が目標速度から遠ざかっていない場合(S24でNo)、電動自転車11は、第2モードの実行時に、一定速度で走行している場合である。この場合、制御部43は、電動モータ41の出力電流を維持する(S26)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0109】
図8Bは、
図8Aで電動自転車の速度が目標速度に達している場合を示すフローチャートである。
【0110】
図8A及び
図8Bに示すように、電動自転車1の速度が目標速度に達している場合(S21でYes)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に近づいているかどうかを判定する(S122)。
【0111】
図8Bに示すように、電動自転車1の速度が目標速度に近づいている場合(S122でYes)、制御部43は、電動モータ41の出力電流を弱めながら、変動量を徐々に小さくする(S123)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0112】
電動自転車1の速度が目標速度に近づいていない場合(S122でNo)、制御部43は、電動自転車1の速度が目標速度から遠ざかっているかどうかを判定する(S124)。
【0113】
電動自転車1の速度が目標速度から遠ざかっている場合(S124でYes)、制御部43は、電動モータ41の出力電流を弱めながら、変動量を徐々に大きくする(S125)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0114】
電動自転車1の速度が目標速度から遠ざかっていない場合(S124でNo)、つまり、電動自転車1の速度が一定の場合、制御部43は、電動モータ41の出力電流を維持する(S126)そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0115】
なお、制御部43は、ステップS21で、電動自転車1の速度が目標速度に達している場合、単に電動モータ41の出力電流の変動量を最小値にしてもよい。最小値は、例えば、実質的に変動量が0、又は、変動量が0である。そして、制御部43は、処理をステップS11に戻してもよい。
【0116】
このような、本変形例に係る電動自転車1は、電動モータ41と、電動自転車1への押力に、電動モータ41による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は、第2補助駆動力を付加して自走させる第2モードを実行する制御部43とを備える。そして、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に近づくと電動モータ41の出力電流の変動量を徐々に小さくする。
【0117】
本変形例によれば、例えば電動自転車1の速度が目標速度に近づく場合、制御部43が電動モータ41の出力電流の変動量を徐々に小さくするため、人の歩行速度と電動自転車11の速度とのズレが抑制される。
【0118】
したがって、電動自転車1は、人が快適に電動自転車1を押し歩く又は支え歩くことができる。その結果、人は、電動自転車1を押し歩く又は支え歩くことに専念することができる。
【0119】
(実施の形態1の変形例2)
本変形例では、電動自転車1の速度が目標速度に向かい上昇するほど電動モータ41の出力電流の変動量を小さくし、電動自転車1の速度が目標速度に向かい下降するほど、電動モータ41の出力の変動量を小さくする点で、実施の形態1と相違する。本変形例における他の構成は、実施の形態1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0120】
ここでは、電動モータ41の出力電流を制御する処理について説明する。
図9Aと同一の処理については、適宜説明を省略する。
図9Aは、実施の形態1の変形例2に係る電動自転車1が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【0121】
図9Aでは、電動自転車1は、ステップS11からS14までの処理を行う。
【0122】
制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に達しているかどうかを判定する(S31)。
【0123】
電動自転車1の速度が目標速度に達していない場合(S31でNo)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に向かい上昇しているかどうかを判定する(S32)。電動自転車1の速度が目標速度に向かい上昇している場合(S32でYes)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動モータ41の出力電流を高めつつも、変動量を、電動自転車1を押し歩きはじめた時点よりも小さくする(S33)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0124】
電動自転車1の速度が目標速度に向かい上昇していない場合(S32でNo)、制御部43は、電動自転車1の速度が目標速度から下降しているかどうかを判定する(S34)。電動自転車1の速度が目標速度から下降している場合(S34でYes)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動モータ41の出力電流を高めつつも、変動量を大きくする(S35)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0125】
電動自転車1の速度が目標速度から遠ざかっていない場合(S34でNo)、電動自転車1は、第2モードの実行時に、一定速度で走行している場合である。この場合、制御部43は、電動モータ41の出力電流を維持する(S36)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0126】
図9Bは、
図9Aで電動自転車の速度が目標速度に達している場合を示すフローチャートである。
【0127】
図9A及び
図9Bに示すように、電動自転車1の速度が目標速度に達している場合(S31でYes)、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に向かい下降しているかどうかを判定する(S132)。
【0128】
図9Bに示すように、電動自転車1の速度が目標速度に向かい下降している場合(S132でYes)、制御部43は、電動モータ41の出力電流を弱めながら、変動量を小さくする(S133)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0129】
電動自転車1の速度が目標速度に向かい下降していない場合(S132でNo)、制御部43は、電動自転車1の速度が目標速度から上昇しているかどうかを判定する(S134)。
【0130】
電動自転車1の速度が目標速度から上昇している場合(S134でYes)、制御部43は、電動モータ41の出力電流を弱めながら、変動量を大きくする(S135)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0131】
電動自転車1の速度が目標速度から上昇していない場合(S134でNo)、つまり、電動自転車1の速度が一定の場合、制御部43は、電動モータ41の出力電流を維持する(S136)そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0132】
なお、制御部43は、ステップS31で、電動自転車1の速度が目標速度に達している場合、単に電動モータ41の出力電流の変動量を最小値にしてもよい。最小値は、例えば、実質的に変動量が0、又は、変動量が0である。そして、制御部43は、処理をステップS11に戻してもよい。
【0133】
このような、本変形例に係る電動自転車1は、電動モータ41と、電動自転車1への押力に、電動モータ41による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は、第2補助駆動力を付加して自走させる第2モードを実行する制御部43とを備える。そして、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度が目標速度に向かい上昇するほど電動モータ41の出力電流の変動量を小さくし、電動自転車1の速度が目標速度に向かい下降するほど、電動モータ41の出力電流の変動量を小さくする。
【0134】
本変形例においても、上述の変形例と同様の作用効果を奏する。
【0135】
(実施の形態2)
<構成>
本実施の形態の電動自転車用制御装置および電動自転車の構成を説明する。
【0136】
実施の形態2では、電動自転車は、車速センサ34を用いて電動自転車の速度を検知する点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態における他の構成は、特に明記しない場合、実施の形態1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0137】
本実施の形態では、制御部43は、第2モードの実行時において、車速センサ34から電動自転車の速度に関する情報を取得する。電動自転車の速度に関する情報は、電動自転車の速度を算出可能な電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報の他に、電動自転車の実際の速度を示す速度情報等を含む。
【0138】
<動作>
ここでは、予め手動スイッチ22がオンされる場合を想定した、電動自転車の制御処理について、
図10を用いて説明する。
【0139】
図10は、実施の形態2に係る電動自転車が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【0140】
実施の形態1の
図4と同様の処理については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0141】
車速センサ34は、第2モードの実行時に、電動自転車の速度を検出する。車速センサ34は、検出した電動自転車の速度を示す速度情報を制御装置42に出力する。
【0142】
制御装置42の制御部43は、車速センサ34から速度情報を取得すると、電動自転車の速度を検出する(S13)、検出した電動自転車の速度を示す速度情報を制御装置42に出力する。そして、ステップS15からS17までの処理を適宜行う。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0143】
[作用効果]
次に、本実施の形態における電動自転車用制御装置および電動自転車の作用効果について説明する。
【0144】
上述したように、本実施の形態に係る電動自転車用制御装置において、第1センサは、電動自転車の速度を検出し、速度情報を出力する車速センサ34である。そして、速度情報は、電動自転車の速度に関する情報に含まれる。
【0145】
これによれば、電動自転車の速度を精度よく検知することができる。
【0146】
また、本実施の形態において、実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0147】
(その他変形例等)
以上、本開示について、実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2等に限定されるものではない。
【0148】
例えば、上記の実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2では、押し歩きモード又は自走モードを開始する指示を受け付ける入力部の一例として、手動スイッチを備える例を示したが、これに限らない。例えば、手動スイッチの代わりに、ハンドルのグリップに設けられたグリップセンサを備えてもよい。グリップセンサが前方への押力を検出した場合に、制御部は、押し歩きモード又は自走モードを実行してもよい。グリップセンサが前方への押力を検出しない場合に、制御部は、押し歩きモード又は自走モードを停止してもよい。
【0149】
また、上記の実施の形態2では、制御部は、第2モードの実行時において、クランク回転センサが検出したクランクの回転数から算出した車体の速度に基づいて、車速センサが検出した車体の速度を補正してもよい。
【0150】
また、上記各実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2に係る電動自転車用制御装置による制御方法は、コンピュータを用いたプログラムによって実現され、このようなプログラムは、記憶装置に記憶されてもよい。
【0151】
また、上記各実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2に係る電動自転車用制御装置及び電動自転車に含まれる各処理部は、典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0152】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0153】
なお、上記各実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0154】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2は例示された数字に制限されない。
【0155】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0156】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0157】
その他、実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態1、2及び実施の形態1の変形例1、2における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0158】
1 電動自転車
10 車体
34 車速センサ(第2センサ)
41 電動モータ
43 制御部