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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】荷重センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
G01L1/14 J
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021542576
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025549
(87)【国際公開番号】W WO2021039094
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019155076
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】相原 唯
(72)【発明者】
【氏名】浦上 進
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-108021(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174164(WO,A1)
【文献】特開2016-024738(JP,A)
【文献】米国特許第04986136(US,A)
【文献】特開平01-092632(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101901089(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/14
G01L 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
前記電極の下面に形成された誘電体と、
前記誘電体の下面に対向して配置され、導電性を有する弾性体と、を備え、
前記弾性体の上面には、複数の突起部が形成され、
前記弾性体は、少なくとも一部に、上下方向に撓んだ撓み形状を有し、
前記電極の上面にかかる荷重の増加に応じて、前記弾性体の撓みが小さくなって、前記誘電体に接触する前記突起部の数が増加する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記撓み形状は、中央部が端部に比べて前記誘電体に近くなるように撓んでいる、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記撓み形状は、端部が中央部に比べて前記誘電体に近くなるように撓んでいる、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の荷重センサにおいて、
前記撓み形状は、球面状に撓んでいる、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記撓み形状は、円柱面状に撓んでいる、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記弾性体は、前記撓み形状を複数有する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記弾性体は、全体が上下方向に撓んでいる、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記誘電体の下面は、上下方向に湾曲している、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記複数の突起部は、前記弾性体の上面に格子状に並んで形成されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記複数の突起部は、前記弾性体の上面に蜂の巣構造状に並んで形成されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項11】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記複数の突起部は、前記弾性体の上面に放射状に並んで形成されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記突起部は、前記誘電体に近づくにつれて断面積が小さくなっている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項13】
請求項12に記載の荷重センサにおいて、
前記突起部は、球面形状を有する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項14】
請求項12に記載の荷重センサにおいて、
前記突起部は、錐体形状を有する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項15】
請求項12に記載の荷重センサにおいて、
前記突起部は、錐台形状を有する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項16】
請求項12に記載の荷重センサにおいて、
前記突起部は、突条形状を有する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
互いに所定の間隔をあけて並んで配置される複数の前記弾性体を備える、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項18】
請求項1ないし17の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記弾性体の下面に、前記弾性体の撓みを規定する金属製の薄板が設けられている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項19】
請求項1ないし18の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記撓み形状の中央部に、開口が設けられている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項20】
電極と、
前記電極の下面に形成された誘電体と、
前記誘電体の下面に対向して配置され、導電性を有する弾性体と、を備え、
前記弾性体の上面には、複数の突起部が形成され、
前記弾性体および前記電極の少なくとも何れか一方は、少なくとも一部に、上下方向に撓んだ撓み形状を有し、
前記電極の上面にかかる荷重の増加に応じて、前記弾性体および前記電極の少なくとも何れか一方の撓みが小さくなって、前記誘電体に接触する前記突起部の数が増加する、
ことを特徴とする荷重センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化に基づいて外部から付与される荷重を検出する荷重センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HMI(Human Machine Interface)として、キーボードやゲームコントローラーなど様々な機器に静電容量式の荷重センサが用いられている。たとえば、以下の特許文献1には、主基板と、電極と、絶縁層と、変位生成体と、弾性導電層とを備えた力検出装置が記載されている。この装置において、電極は、主基板の上面に形成されており、絶縁層に覆われている。変位生成体は、固定部と、可撓部と、作用部とを備え、作用部は、主基板に固定された固定部に対して可撓部を介して接続されている。弾性導電層は、作用部の底面に形成され、下面に多数の凹凸構造からなる粗面が形成されている。作用部が主基板に対して押し込まれることにより、絶縁層の上面と弾性導電層の粗面との接触状態が変化し、電極と弾性導電層とに基づく静電容量が変化する。静電容量の大きさを電気的に検出することにより、作用した力(荷重)が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4429478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量式の荷重センサでは、荷重に応じて静電容量がリニアに変化することが好ましい。すなわち、荷重に応じて静電容量がリニアに変化すると、静電容量の大きさから荷重を算出するための処理が極めて簡素になる。このため、静電容量式の荷重センサでは、荷重に応じて静電容量がリニアに変化する範囲をなるべく広く確保できることが好ましい。しかしながら、上記特許文献1の構成では、電極と弾性導電層とに基づく静電容量が荷重に応じてリニアに変化する範囲が狭い。このため、この構成では、広いダイナミックレンジに対して簡素な処理により荷重を検出することが困難であった。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、ダイナミックレンジを広く確保しつつ簡素な処理により荷重を検出することが可能な荷重センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る荷重センサは、電極と、前記電極の下面に形成された誘電体と、前記誘電体の下面に対向して配置され、導電性を有する弾性体と、を備える。前記弾性体の上面には、複数の突起部が形成され、前記弾性体は、少なくとも一部に、上下方向に撓んだ撓み形状を有する。前記電極の上面にかかる荷重の増加に応じて、前記弾性体の撓みが小さくなって、前記誘電体に接触する前記突起部の数が増加する。
【0007】
本態様に係る荷重センサによれば、弾性体の少なくとも一部が、上下方向に撓んでいるため、電極の上面が押されると、誘電体の下面が弾性体を押し、電極にかかる荷重に応じて弾性体に形成された撓みが小さくなっていく。このとき、弾性体に形成された複数の突起部は、撓みの頂部付近の突起部から撓みの裾野付近の突起部へと順に誘電体に接触していく。これにより、誘電体に接触する突起部の数が、荷重の増加に伴い増加する。また、荷重の増加に応じて突起部が縮み、突起部と誘電体との間の接触面積が増加する。さらに、弾性体の撓みが無くなった後は、荷重により突起部が縮むことに応じて、誘電体と弾性体との間の距離が減少する。このように、誘電体に接触する突起部の数と、突起部と誘電体との間の接触面積と、誘電体と弾性体との間の距離とを変化させることによって、電極、誘電体および弾性体により形成されるコンデンサの静電容量を、広い荷重の範囲においてリニアに変化させることができる。これにより、広いダイナミックレンジにおいて簡素な処理により、荷重を検出できる。このように、本態様に係る荷重センサによれば、ダイナミックレンジを広く確保しつつ簡素な処理により荷重を検出することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る荷重センサは、電極と、前記電極の下面に形成された誘電体と、前記誘電体の下面に対向して配置され、導電性を有する弾性体と、を備える。前記弾性体の上面には、複数の突起部が形成され、前記弾性体および前記電極の少なくとも何れか一方は、少なくとも一部に、上下方向に撓んだ撓み形状を有する。前記電極の上面にかかる荷重の増加に応じて、前記弾性体および前記電極の少なくとも何れか一方の撓みが小さくなって、前記誘電体に接触する前記突起部の数が増加する。
【0009】
本態様に係る荷重センサによれば、第1の態様と同様の効果が奏される。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、本発明によれば、ダイナミックレンジを広く確保しつつ簡素な処理により荷重を検出することが可能な荷重センサを提供できる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る、荷重センサの構成を模式的に示す分解斜視図である。
図2図2(a)は、実施形態に係る、金属板と一体的に成型された導電弾性体が撓んでいる状態を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、実施形態に係る、組み立てが完了した荷重センサの構成を模式的に示す斜視図である。
図3図3(a)、(b)は、実施形態に係る、X軸負方向に見た場合の荷重センサの内部を模式的に示す側面図である。
図4図4(a)、(b)は、実施形態に係る、X軸負方向に見た場合の荷重センサの内部を模式的に示す側面図である。
図5図5(a)、(b)は、実施形態に係る、Z軸負方向に見た場合の導電弾性体と誘電体との接触面積を模式的に示す上面図である。
図6図6(a)、(b)は、実施形態に係る、Z軸負方向に見た場合の導電弾性体と誘電体との接触面積を模式的に示す上面図である。
図7図7(a)は、実施形態および比較例に係る、Y軸方向に並ぶ全ての突起部が誘電体によって押さえられている状態を模式的に示す側面図である。図7(b)は、比較例に係る、2種類のコンデンサ部の静電容量の変化を模式的に示すグラフ、および、2種類のコンデンサ部の静電容量を加算したトータルの静電容量の変化を模式的に示すグラフである。図7(c)は、実施形態に係る、2種類のコンデンサ部の静電容量を加算したトータルの静電容量の変化を模式的に示すグラフである。
図8図8(a)、(b)は、実施形態の検証実験に係る、荷重センサの各部のサイズを説明するための模式図である。
図9図9(a)は、実施形態の検証実験に係る、荷重と静電容量との関係を示すグラフである。図9(b)は、実施形態の検証実験に係る、反り率とダイナミックレンジとの関係を示すグラフである。
図10図10(a)は、変更例に係る、円柱面状の撓み形状を有する導電弾性体を模式的に示す斜視図である。図10(b)は、変更例に係る、複数の撓み形状を有する導電弾性体を模式的に示す斜視図である。図10(c)は、変更例に係る、部分的に撓み形状を有する導電弾性体を模式的に示す斜視図である。
図11図11(a)は、変更例に係る、電極の下面および誘電体の下面がZ軸負方向に湾曲している状態を模式的に示す側面図である。図11(b)は、変更例に係る、導電弾性体および金属板がZ軸負方向に撓んでいる状態を模式的に示す側面図である。
図12図12(a)は、変更例に係る、複数の突起部が蜂の巣構造状に並んで配置された導電弾性体の構成を模式的に示す上面図である。図12(b)は、変更例に係る、複数の突起部が放射状に並んで配置された導電弾性体の構成を模式的に示す上面図である。
図13図13(a)は、変更例に係る、円錐形状を有する突起部の構成を模式的に示す側面図である。図13(b)は、変更例に係る、四角錐台形状を有する突起部の構成を模式的に示す側面図である。
図14図14(a)~(c)は、変更例に係る、突条形状を有する突起部の構成を模式的に示す斜視図である。
図15図15は、変更例に係る、2つの導電弾性体が配置された荷重センサの構成を模式的に示す分解斜視図である。
図16図16(a)は、変更例に係る、金属板および導電弾性体がX-Y平面に平行であり、誘電体および電極が撓み形状を有する状態を模式的に示す側面図である。図16(b)は、変更例に係る、金属板および導電弾性体と、誘電体および電極とが撓み形状を有する状態を模式的に示す側面図である。
図17図17(a)は、変更例に係る、Z軸負方向に見た場合の導電弾性体および開口を模式的に示す上面図である。図17(b)は、変更例に係る、金属板および導電弾性体に形成された開口を模式的に示す側面図である。
図18図18(a)は、変更例に係る、金属板および導電弾性体と、誘電体および電極とが、互いに接近方向に撓んだ撓み形状を有する場合に、金属板および導電弾性体に形成された開口を模式的に示す側面図である。図18(b)は、変更例に係る、金属板および導電弾性体と、誘電体および電極とが、互いに接近方向に撓んだ撓み形状を有する場合に、金属板および導電弾性体と、誘電体および電極とに形成された開口を模式的に示す側面図である。
【0013】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、付与された荷重に応じた入力を行うための入力部に適用可能である。具体的に、本発明は、PCキーボード等の電子機器の入力部、ゲームコントローラーの入力部、ロボットハンドが物体を検知するための表層部、音量、風量、光量および温度などを入力するための入力部、スマートウォッチ等のウェアラブル機器の入力部、ワイヤレスイヤホン等のヒアラブル機器の入力部、タッチパネルの入力部、電子ペンにおいてインク量等を調節するための入力部、ペンライトにおいて光量や色などを調節するための入力部、光る衣服において光量などを調節するための入力部、ならびに、楽器において音量などを調節するための入力部、などに適用可能である。
【0015】
以下の実施形態は、上記のような装置において典型的に設けられる荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
【0017】
図1は、荷重センサ1の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【0018】
荷重センサ1は、基板10と、金属板20と、導電弾性体30と、誘電体40と、電極50と、カバー60と、を備える。
【0019】
基板10は、所定の厚みを有する直方体形状の板であり、金属板20、導電弾性体30、誘電体40、電極50、およびカバー60を重ねて設置するための支持部材である。基板10は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミドなどから選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基板10の上面は、X-Y平面に平行である。
【0020】
金属板20は、表面が平らな金属製の薄板であり、たとえばSUS(ステンレス鋼)により構成される。
【0021】
導電弾性体30は、導電性を有する弾性部材であり、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。導電弾性体30に樹脂材料が用いられる場合、樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等である。
【0022】
導電弾性体30にゴム材料が用いられる場合、ゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴムから選択される少なくとも1種のゴム材料である。導電弾性体30に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In(酸化インジウム(III))およびSnO(酸化スズ(IV))から選択される少なくとも1種の材料である。
【0023】
導電弾性体30の上面32(Z軸正側の面)には、Z軸正方向に突出した複数の突起部31が格子状に並んで形成されている。突起部31は、Z軸正方向に進むにつれて断面積が小さくなっており、球面形状を有する。図1に示す例では、上面32において、X軸方向に10列、Y軸方向に20列の突起部31が並んでおり、合計200個の突起部31が形成されている。また、導電弾性体30には、荷重センサ1の外部の装置と導電弾性体30とを電気的に接続するための導線34が設置されている。
【0024】
ここで、金属板20と導電弾性体30は、たとえば、インジェクション成形(インサート成形)により一体的に成型される。具体的には、金型内に金属板20をあらかじめ挿入しておき、そこへ導電弾性体30の材料を注入して金属と樹脂を一体化する成形方法により、一体構造が製造される。この場合、成型後の冷却過程において、金属板20と導電弾性体30の膨張率の差により、中央部が端部に比べて撓んでいる形状となる。このように金属板20と導電弾性体30とが一体的に成型されることにより、金属板20と導電弾性体30は、X-Y平面内の中心がZ軸正方向(誘電体40の下面41に垂直な方向)に突出するように撓む。すなわち、金属板20と導電弾性体30とが一体的に成型された構造体は、X-Y平面に対して垂直な方向に球面状に撓んでおり、球面状に撓んだ頂点部分(X-Y平面内の中心付近)が、Z軸正方向に突出している。
【0025】
図2(a)は、金属板20と一体的に成型された導電弾性体30が撓んでいる状態を模式的に示す斜視図である。図2(a)では、便宜上、突起部31の図示は省略されており、導電弾性体30撓み度合いが大きく図示されている。図2(a)に示すように、導電弾性体30は、X-Y平面内における中央部P1が端部に比べてZ軸正方向に突出した状態となるよう撓んでいる。図2(a)に示す導電弾性体30は、全体が上下方向に撓んでおり、導電弾性体30が有する撓み形状は1つである。
【0026】
図1に戻り、誘電体40は、電気絶縁性を有し、たとえば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフテレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、Al、およびTaなどにより構成される。電極50は、導電性を有する金属であり、たとえば、InやZnOおよび/またはSnO等から成る電極材料により構成される。誘電体40は、たとえば蒸着により、電極50の下面51に形成される。電極50の下面51はX-Y平面に平行であり、誘電体40は、下面41がX-Y平面に平行となるよう、電極50の下面51に形成される。
【0027】
カバー60は、可撓性を有する材料により構成され、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミドなどから選択される少なくとも1種の樹脂材料である。
【0028】
荷重センサ1の組み立て時には、金属板20と導電弾性体30からなる構造体が、撓みが維持された状態で、基板10の上面に設置される。そして、導電弾性体30が誘電体40の下面41に対向するよう、誘電体40および電極50からなる構造体が、金属板20および導電弾性体30からなる構造体の上面に載置される。そして、カバー60が電極50の上に被せられ、カバー60の周囲が基板10の上面に設置される。こうして、図2(b)に示すように荷重センサ1が完成する。
【0029】
図2(b)は、組み立てが完了した荷重センサ1の構成を模式的に示す斜視図である。
【0030】
荷重センサ1の内部の導電弾性体30、誘電体40、および電極50は、コンデンサとしての機能を有する。カバー60の上面に対して荷重が加えられると、誘電体40の下面41(図1参照)が導電弾性体30を下方向(Z軸負方向)に押し、導電弾性体30が変形する。これにより、導電弾性体30、誘電体40、および電極50からなるコンデンサの静電容量が変化する。かかる静電容量の変化は、導線34に接続された外部装置により検出される。外部装置は、静電容量の変化に基づいて、荷重センサ1に対して付与された荷重を検出する。
【0031】
図3(a)~図4(b)は、X軸負方向に見た場合の荷重センサ1の内部を模式的に示す側面図である。図3(a)~図4(b)は、便宜上、Y軸方向に3つの突起部31が並んでいるものとして図示されており、Z軸方向のスケールが大きく図示されている。
【0032】
図3(a)に示すように、本実施形態では、カバー60に対して荷重が加えられていない場合(以下、「初期状態」と称する)、中央の突起部31の上端と誘電体40の下面41との距離は0であり、誘電体40から導電弾性体30へは力が加えられていない。
【0033】
図3(b)に示すように、図3(a)の初期状態からカバー60の上面に荷重が加えられると、図3(a)の状態から誘電体40の下面41が下方向に移動する。これにより、中央の突起部31は、誘電体40の下面41によって下方向に押される。このとき、荷重が小さいと、図3(b)に示すように、中央の突起部31が誘電体40によって弾性変形するものの、端部の突起部31は、誘電体40の下面41に接しない。
【0034】
図4(a)に示すように、図3(b)の状態からカバー60の上面にさらに荷重が加えられると、図3(b)の状態からさらに誘電体40の下面41が下方向に移動する。これにより、導電弾性体30の撓みが解消され、導電弾性体30がX-Y平面に平行な状態となる。このとき、全ての突起部31は、誘電体40の下面41に接触しており、全ての突起部31には、誘電体40からほぼ等しく力が加えられている。このとき、各突起部31の上端は、僅かに弾性変形することになる。
【0035】
図4(b)に示すように、図4(a)の状態からカバー60の上面にさらに荷重が加えられると、図4(a)の状態からさらに誘電体40の下面41が下方向に移動する。これにより、全ての突起部31の上端は、さらに弾性変形して下方向に縮められる。
【0036】
図5(a)~図6(b)は、荷重の増加とともに、導電弾性体30の突起部31が弾性変形し、導電弾性体30と誘電体40との接触面積が広くなる状態を模式的に示す上面図である。図5(a)~図6(b)では、便宜上、Z軸負方向に見た場合の導電弾性体30のみが示されており、導電弾性体30と誘電体40との接触領域には、ハッチングが施されている。
【0037】
図5(a)に示すように、初期状態においては、導電弾性体30と誘電体40とは接触していない。図5(a)の状態から荷重が加えられると、図5(b)に示すように、誘電体40が突起部31に押し付けられ、導電弾性体30の中央部P1(初期状態における導電弾性体30の球面形状の上端位置)を中心に、突起部31と誘電体40との接触領域が広がる。図5(b)の状態からさらに荷重が加えられると、図6(a)に示すように、誘電体40が全ての突起部31に押し付けられ、全ての突起部31が誘電体40と接触する。図6(a)の状態からさらに荷重が加えられると、図6(b)に示すように、誘電体40が突起部31にさらに押し付けられ、突起部31と誘電体40との接触面積がさらに広がる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、加えられた荷重に応じて、誘電体40に接触する突起部31の数が増加し、さらに、導電弾性体30と誘電体40との接触面積が広がる。また、図4(a)、(b)に示したように、全ての突起部31が誘電体40に接触した後は、荷重に応じて、突起部31が縮んで、誘電体40と導電弾性体30の上面32との距離が短くなる。これらの要素により、本実施形態では、加えられた荷重に応じて、導電弾性体30、誘電体40、および電極50が形成するコンデンサの静電容量が徐々に変化することになる。
【0039】
次に、本実施形態の静電容量が荷重に応じてリニアに変化することについて説明する。
【0040】
図7(a)は、カバー60の上面に対して荷重が加えられ、Y軸方向に並ぶ全ての突起部31が誘電体40によって押さえられている状態を模式的に示す側面図である。
【0041】
突起部31が誘電体40の下面41に接触することにより、突起部31と下面41とが接触しない領域に基づくコンデンサ部Aと、突起部31と下面41とが接触する領域に基づくコンデンサ部Bとが形成される。コンデンサ部Aは、誘電体40の下面41に接触していない導電弾性体30の部分と、下面41に接触していない導電弾性体30の部分と対向する位置に存在する電極50の部分と、これらの間に位置付けられた誘電体40および空気層の部分と、から構成されている。一方、コンデンサ部Bは、誘電体40の下面41に接触している導電弾性体30の部分と、下面41に接触している導電弾性体30の部分と対向する位置に存在する電極50の部分と、これらの間に位置付けられた誘電体40の部分と、から構成されている。
【0042】
本実施形態のように導電弾性体30に突起部31が設けられていると、荷重が加えられたときに、突起部31と誘電体40との接触面積が変化し、さらに、空気層のギャップが変化する。これにより、コンデンサ部Aの静電容量とコンデンサ部Bの静電容量とが変化する。
【0043】
ここで、比較例における静電容量の変化について説明する。
【0044】
比較例では、本実施形態とは異なり、初期状態において金属板20と導電弾性体30とがX-Y平面に平行な状態となっている。このため、比較例では、初期状態からカバー60に対して荷重が加えられると、全ての突起部31が誘電体40の下面41によって同時に押されることになる。
【0045】
図7(b)の左上のグラフは、比較例における全てのコンデンサ部Aに基づく静電容量の変化を模式的に示すグラフである。コンデンサ部Aの場合、ある程度荷重が増えるまでの間、静電容量はほぼ増加せず、ある程度荷重が増えると、コンデンサ部Aの範囲および空気層のギャップの減少により、急激に静電容量が増加する。
【0046】
一方、図7(b)の右上のグラフは、比較例における全てのコンデンサ部Bに基づく静電容量の変化を模式的に示すグラフである。コンデンサ部Bの場合、初期状態からある程度荷重が増えるまでの間、コンデンサ部Bの範囲の増加により、急激に静電容量が増加し、ある程度荷重が増えると、静電容量の増加は小さくなる。
【0047】
なお、誘電体40の下面41と導電弾性体30の上面32との間には空気層が形成されているため、コンデンサ部Aに基づく静電容量は、コンデンサ部Bに基づく静電容量に比べて数段小さいものとなる。したがって、比較例の構成では、荷重の変化に応じた静電容量の変化は、コンデンサ部Bにおける静電容量の変化が支配的になる。
【0048】
図7(b)の下側のグラフは、コンデンサ部Aの静電容量とコンデンサ部Bの静電容量とを加算したトータルの静電容量の変化を模式的に示すグラフである。このように、比較例では、導電弾性体30、誘電体40、および電極50により形成されるコンデンサの静電容量(トータルの静電容量)は、コンデンサ部Bにおける静電容量の影響を受けて、荷重に応じてリニアに変化しにくい。比較例では、荷重が小さい僅かな範囲、すなわち、コンデンサ部Bにおいて静電容量が荷重に応じて急激に増加する荷重範囲において、静電容量が略リニアに変化するものの、これに続く荷重範囲では静電容量の変化が急激に鈍化し、静電容量がリニアに変化しなくなってしまう。このように、比較例では、静電容量をリニアに変化させ得る荷重の範囲がかなり狭くなってしまう。
【0049】
これに対し、本実施形態の場合は、図3(a)~図4(b)および図5(a)~図6(b)を参照して説明したように、初期状態から荷重が加えられると、中央の突起部31から順に誘電体40に接触していく。このため、コンデンサ部Bに基づく静電容量の変化が、荷重が小さい範囲において、比較例に比べて緩やかになる。これにより、図7(c)に示すように、導電弾性体30、誘電体40、および電極50により形成されるコンデンサの静電容量(トータルの静電容量)は、荷重に応じてリニアに変化するようになる。その結果、本実施形態では、静電容量をリニアに変化させ得る荷重の範囲を広くすることができる。
【0050】
<検証実験>
発明者らは、上記構成の荷重センサ1について、実際に、静電容量の変化を検証実験により確認した。
【0051】
本検証実験では、荷重センサ1の導電弾性体30を、ゴム材料とその中に分散した導電性フィラーとにより構成した。ゴム材料をシリコーンゴムとし、導電性フィラーをC(カーボン)とした。導電弾性体30の弾性率を1.0×10(Pa)程度とした。誘電体40をポリイミドにより構成し、誘電体40の誘電率を3とした。
【0052】
図8(a)、(b)を参照して、検証実験で用いた荷重センサ1の各部のサイズについて説明する。図8(a)は、便宜上、金属板20と導電弾性体30の撓みがないものとして図示されている。
【0053】
図8(a)に示すように、金属板20の厚みをt1、導電弾性体30の厚み(上面32から下面33までの幅)をt2、誘電体40の厚みをt3、電極50の厚みをt4、突起部31の高さ(上面32から突起部31の上端までの幅)をh、突起部31の下端の直径をφ、突起部31のピッチ(X軸方向およびY軸方向に隣り合う突起部31の中心間の距離)をpとする。検証実験では、厚みt1を100μm、厚みt2を100μm、厚みt3を22.5μm、厚みt4を50μm、高さhを60μm、直径φを91.9μm、ピッチpを300μmとした。
【0054】
図8(b)に示すように、検証実験では、荷重センサ1を上下逆向きに配置することにより、初期状態における導電弾性体30の中央部P1を、下方向(Z軸負方向)に撓んだ状態とした。このとき、導電弾性体30の撓み幅(導電弾性体30の端部と中央のZ軸方向における高さの差)をw1、撓んだ状態の導電弾性体30のY軸方向の幅をw2とし、導電弾性体30の反り率(%)を、w1/w2とした。検証実験では、反り率が0%の荷重センサ1(比較例)と、反り率が0.5%および1.3%の荷重センサ1(実施形態)を用意し、それぞれ、Z軸正方向に電極50に対して荷重を加えて、静電容量およびダイナミックレンジを算出した。
【0055】
図9(a)は、本検証実験における荷重(N)と静電容量(pF)との関係を示すグラフである。静電容量は、導電弾性体30の導線34に接続した装置によって検出した。図9(a)のグラフには、荷重に応じて静電容量がリニアに変化する範囲のみが示されている。
【0056】
図9(a)に示すように、反り率が0%の荷重センサ1(比較例)においては、荷重と静電容量との関係がリニアである範囲は、荷重が付与され始めてから僅かな範囲に留まった。これに対し、反り率が1.3%の荷重センサ1(実施形態)では、荷重が付与され始めてからかなり広い範囲において、荷重と静電容量との関係がリニアに維持できた。そして、反り率が0.5%の荷重センサ1(実施形態)では、反り率が1.3%の荷重センサ1に比べて、荷重と静電容量との関係がリニアである範囲をさらに広げることができた。この検証実験から、実施形態のように導電弾性体30を初期状態で撓ませることにより、比較例のように導電弾性体30が初期状態で全く撓んでいない場合に比べて、広いダイナミックレンジで高いリニアリティを実現できることが分かった。
【0057】
なお、上記の検証実験に基づけば、厚みt1を0.01mm~0.2mm、厚みt2を0.05mm~1mm、厚みt3を0.001mm~0.1mm、厚みt4を0.01mm~0.1mm、高さhを0.01mm~0.1mm、直径φを0.05mm~0.5mm、ピッチpを0.05mm~1mm、誘電体40の誘電率を0.1~100に設定することにより、上記検証実験と同様のダイナミックレンジおよびリニアリティが想定される。
【0058】
図9(b)は、本検証実験における反り率(%)と、荷重と静電容量との関係をリニアに維持できる荷重の範囲(リニアリティを維持できるダイナミックレンジ)との関係を示すグラフである。
【0059】
図9(b)に示すように、反り率が0.5%および1.3%の荷重センサ1(実施形態)のダイナミックレンジは、反り率が0%の荷重センサ1(比較例)のダイナミックレンジに対して4~5倍程度大きくなった。このことから、実施形態のように導電弾性体30を初期状態で撓ませることにより、比較例のように導電弾性体30が初期状態で全く撓んでいない場合に比べて、ダイナミックレンジ(静電容量をリニアに変化させることのできる荷重の範囲)を広く設定できることが分かった。
【0060】
また、図9(b)の結果から、反り率(%)が高いほどダイナミックレンジを広げ得るというのではなく、導電弾性体30の材質や突起部31の形状(幅や高さ等)に応じて、最適な反り率が想定され得ることが確認できた。したがって、静電容量をリニアに変化させ得るダイナミックレンジをより広げるためには、導電弾性体30の材質や突起部31の形状(幅や高さ等)に応じて、最適な反り率を検討して設定することが好ましいと言える。
【0061】
<実施形態の効果>
以上、実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0062】
上下方向(誘電体40の下面41に垂直な方向)に導電弾性体30が撓んでいるため、電極50の上面が押されると、誘電体40の下面41が導電弾性体30を押し、電極50にかかる荷重に応じて導電弾性体30の撓みが小さくなっていく。このとき、導電弾性体30に形成された複数の突起部31は、撓みの頂部付近の突起部31から撓みの裾野付近の突起部31へと順に誘電体40に接触していく。これにより、誘電体40に接触する突起部31の数が、荷重の増加に伴い増加する。また、荷重の増加に応じて突起部31が縮み、突起部31と誘電体40との間の接触面積が増加する。さらに、導電弾性体30の撓みが無くなった後は、荷重により突起部31が縮むことに応じて、誘電体40と導電弾性体30との間の距離が減少する。
【0063】
このように、誘電体40に接触する突起部31の数と、突起部31と誘電体40との間の接触面積と、誘電体40と導電弾性体30との間の距離とを変化させることによって、電極50、誘電体40および導電弾性体30により形成されるコンデンサの静電容量を、広い荷重の範囲においてリニアに変化させることができる。これにより、広いダイナミックレンジにおいて簡素な処理により、荷重を検出できる。よって、ダイナミックレンジを広く確保しつつ簡素な処理により荷重を検出することができる。
【0064】
図2(a)に示したように、導電弾性体30の撓み形状は、中央部P1が端部に比べて誘電体40に近くなるように(Z軸正方向に)撓んでいる。これにより、図5(a)、(b)に示したように、電極50の上面が押されたときに、中央から周囲へと誘電体40に接触する突起部31の範囲が一様に広がって行く。よって、誘電体40に接触する突起部31の範囲を安定的に増減させることができ、荷重に応じて静電容量をリニアに変化させやすくなる。
【0065】
図5(a)に示したように、導電弾性体30の上面32には、複数の突起部31が格子状に並んで形成されている。これにより、図5(b)に示したように、電極50の上面が押されたときに、誘電体40に接触する突起部31の範囲が一様に広がって行く。よって、誘電体40に接触する突起部31の範囲を安定的に増減させることができ、荷重に応じて静電容量をリニアに変化させやすくなる。
【0066】
導電弾性体30の下面33には、導電弾性体30の撓みを規定する金属製の薄板として、金属板20が設けられている。これにより、撓んだ導電弾性体30の初期の姿勢を一定に維持させやすくなる。すなわち、図3(a)に示したように、初期状態において、導電弾性体30を撓んだ状態に維持させやすくなる。よって、より安定的に、荷重に応じて静電容量をリニアに変化させることができる。
【0067】
<変更例>
荷重センサ1の構成は、上記実施形態に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、図2(a)に示したように、導電弾性体30は、X-Y平面内の中央部P1がZ軸正方向に最も突出した状態となるよう球面状に撓んでいたが、導電弾性体30の撓み形状は、これに限らない。
【0069】
図10(a)は、導電弾性体30がX-Y平面においてY軸方向にのみ撓んでいる場合、すなわち導電弾性体30の撓み形状が円柱面状(アーチ状)である場合の変更例を模式的に示す斜視図である。この場合、導電弾性体30は、中央部P1を通りX軸方向に延びた直線L1から順に、誘電体40の下面41に接触することになる。なお、導電弾性体30は、X-Y平面においてX軸方向にのみ撓んでいてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、導電弾性体30は、球面状に撓んだ撓み形状を1つだけ有していたが、導電弾性体30が有する撓み形状の数は、これに限らない。
【0071】
図10(b)は、導電弾性体30が上下方向に撓んだ複数の撓み形状を有する場合の変更例を模式的に示す斜視図である。図10(b)では、図10(a)に示したような円柱面状の撓み形状がY軸方向に3つ設けられている。この場合、導電弾性体30は、各アーチの頂点に位置する直線L2から順に、誘電体40の下面41に接触することになる。なお、導電弾性体30は、2または4以上の撓み形状を有してもよく、球面状に撓んだ撓み形状を複数有してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、導電弾性体30には、全体に撓み形状が設けられたが、これに限らず、一部にのみ撓み形状が設けられてもよい。
【0073】
図10(c)は、導電弾性体30が部分的に上下方向に撓んでいる場合の変更例を模式的に示す斜視図である。図10(c)では、導電弾性体30の上面32においてZ軸正方向に突出した撓み形状が3つ設けられている。この場合、導電弾性体30は、各撓み形状の頂点P2から順に、誘電体40の下面41に接触することになる。なお、導電弾性体30は、部分的に2または4以上の撓み形状を有してもよい。
【0074】
図10(a)~(c)のいずれの場合も、導電弾性体30と誘電体40との接触範囲は、初期状態から徐々に広がることになるため、静電容量の変化が急峻になることが抑制される。よって、荷重に応じて静電容量をリニアに変化させやすくなる。
【0075】
また、上記実施形態では、誘電体40は、下面41がX-Y平面に平行となるよう電極50の下面51に形成されたが、これに限らず、誘電体40は、図11(a)に示すように、下面41の中央部がZ軸負方向に突出するように電極50の下面51に形成されてもよい。誘電体40が電極50の下面51に対して蒸着などにより形成される場合、図11(a)に示すように、電極50の下面51を球面状に隆起させることにより、誘電体40の下面41を球面状に変形させてもよい。あるいは、X-Y平面に平行な電極50の下面51に対して、下面41が球面状に隆起するように誘電体40が設けられてもよい。また、下面41は、図11(a)のようにZ軸正方向に突出することに限らず、Z軸負方向に凹んでいてもよい。ただし、この場合の下面41の曲率は、導電弾性体30の曲率よりも小さくなるよう、誘電体40が電極50の下面51に形成される。
【0076】
このように、誘電体40の下面41を上下方向に湾曲させることにより、荷重に応じて突起部31が誘電体40に接触する過程をさらに調整できる。これにより、静電容量をリニアに変化させ得る荷重の範囲(ダイナミックレンジ)をさらに広げ得る可能性がある。
【0077】
また、上記実施形態では、図2(a)および図3(a)に示したように、導電弾性体30は、中央部P1が端部に比べて誘電体40に近くなるよう、Z軸正方向に球面状に撓んだ状態で配置されたが、導電弾性体30の撓み方向はこれに限らない。たとえば、図11(b)に示すように、導電弾性体30は、上面32の端部が中央部P1に比べて誘電体40に近くなるよう、Z軸負方向に球面状に撓んだ状態で配置されてもよい。この場合の導電弾性体30の撓みは、図2(a)の撓みを上下に反転させた形状となる。
【0078】
ただし、このように導電弾性体30の撓み方向が設定されると、初期状態から荷重が加えられた場合に、導電弾性体30の外側に位置する広い範囲の突起部31が同時に誘電体40に接触するため、初期接触時における静電容量の変化が急峻になりやすい。このため、荷重に応じて静電容量をリニアに変化しやすくするためには、上記実施形態のように、導電弾性体30の撓み方向をZ軸正方向として、中央部P1が端部に比べて誘電体40に近付けられることが好ましいと考えられる。
【0079】
また、上記実施形態では、図5(a)に示したように、X軸方向とY軸方向に沿って複数の突起部31が格子状に並んで上面32に形成されたが、複数の突起部31の配置はこれに限らない。たとえば、図12(a)に示すように、蜂の巣構造状に、すなわち1つの突起部31の周囲に60°間隔で隣り合う突起部31が位置付けられるよう、複数の突起部31が並んで配置されてもよい。また、図12(b)に示すように、X-Y平面における導電弾性体30の中央部から、破線で示すように放射状に延びる直線に沿って突起部31が並んで配置されてもよい。また、上面32に形成される突起部31の密度は、上記実施形態のように等密度でなくてもよく、荷重に対する静電容量の変化がリニアに変化しやすくなるよう、上面32における突起部31の密度を調整してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、突起部31は球面形状とされたが、これに限らず、誘電体40に近づくにつれて(Z軸正方向に進むにつれて)断面積が小さくなれば、他の形状であってもよい。たとえば、突起部31は、錐体形状を有してもよい。図13(a)に示すように、突起部31は、円錐形状であってもよい。この場合、側方から見て(X軸方向およびY軸方向に見て)、突起部31は、先端が1点に尖った三角形状である。また、突起部31は、角錐形状であってもよい。また、突起部31は、錐体の頂部が切り欠かれた形状であってもよく、たとえば、錐台形状を有してもよい。図13(b)に示すように、突起部31は、四角錐台であってもよい。この場合、側方から見て(X軸方向およびY軸方向に見て)、突起部31は、台形形状である。また、突起部31は、円錐台形状であってもよい。
【0081】
また、突起部31は、図14(a)~(c)に示すように、X-Y平面において一方向に延びた突条形状を有してもよい。図14(a)~(c)では、便宜上、突条形状の突起部31がY軸方向に3つ並んでいるものとして図示されており、Z軸方向のスケールが大きく図示されている。
【0082】
図14(a)に示すように、突起部31は、X軸方向に見た場合に三角形状であり、Y軸方向に見た場合にZ軸正側の先端がY軸方向に所定の長さを有する台形形状であるような突条形状であってもよい。また、図14(b)に示すように、突起部31は、X軸方向に見た場合に台形形状であり、Y軸方向に見た場合にZ軸正側の先端がY軸方向に所定の長さを有する台形形状であるような突条形状であってもよい。また、図14(c)に示すように、突起部31は、X軸方向に見た場合に半円形状であり、Y軸方向に見た場合にZ軸正側の先端がY軸方向に所定の長さを有する台形形状であるような突条形状であってもよい。
【0083】
なお、図14(a)~(c)では、導電弾性体30はX-Y平面においてY軸方向にのみ撓んでいるが、これに限らず、X-Y平面においてX軸方向にのみ撓んでいてもよく、上記実施形態のように球面形状に撓んでいてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、誘電体40の下面41が全ての突起部31に接触したときに、導電弾性体30の撓みが解消されたが、これに限らず、誘電体40の下面41が全ての突起部31に接触したときに、導電弾性体30が依然として撓んでいてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、導電弾性体30および金属板20は一体的に成型されたが、荷重センサ1内における導電弾性体30の初期状態の姿勢を撓んだ状態に一定に維持できれば、金属板20を省略してもよい。また、金属板20を省略した場合、導電弾性体30と基板10との間の隙間に、弾性力を有する弾性部材を配置してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、導電弾性体30の外形および複数の突起部31の配置範囲の形状は、X-Y平面において長方形形状であったが、これに限らず、X-Y平面において正方形形状であってもよく、円形状や楕円形状であってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、1つの電極50に対して1つの導電弾性体30が配置されたが、これに限らず、1つの電極50に対して2つ以上の導電弾性体30が、互いに所定の間隔をあけてX-Y平面内に並んで配置されてもよい。
【0088】
図15は、1つの電極50に対して、2つの導電弾性体30が、互いに所定の間隔をあけてY軸方向に並んで配置される変更例を模式的に示す分解斜視図である。この場合、それぞれの導電弾性体30に対して導線34が設けられており、それぞれの導線34は、荷重センサ1の外部の装置に対して接続される。外部の装置は、2つの導電弾性体30に基づく静電容量の変化をそれぞれ検出し、得られた2つの静電容量を加算して全体の静電容量の変化を検出する。そして、外部の装置は、全体の静電容量の変化に基づいて、荷重センサ1に対して付与された荷重を検出する。
【0089】
また、上記実施形態では、図2(a)および図3(a)に示したように、金属板20および導電弾性体30は、中央部が端部に比べてZ軸正方向に球面状に撓んだ状態で配置され、誘電体40および電極50は、X-Y平面に平行となるよう配置された。しかしながら、これに限らず、図16(a)に示すように、金属板20および導電弾性体30は、X-Y平面に平行となるよう配置され、誘電体40および電極50は、中央部が端部に比べてZ軸負方向に球面状に撓んだ状態で配置されてもよい。
【0090】
また、図16(b)に示すように、金属板20および導電弾性体30は、中央部が端部に比べてZ軸正方向に球面状に撓んだ状態で配置され、誘電体40および電極50も、中央部が端部に比べてZ軸負方向に球面状に撓んだ状態で配置されてもよい。すなわち、金属板20および導電弾性体30と、誘電体40および電極50とが、互いに接近方向に撓んだ撓み形状を有していてもよい。
【0091】
なお、図16(a)、(b)の構成では、カバー60が省略され、電極50のZ軸正側に、基板10と同様の材料からなる、所定の厚みを有する基板61が配置される。
【0092】
図16(a)、(b)のいずれの場合も、上記実施形態と同様、誘電体40に接触する突起部31の数と、突起部31と誘電体40との間の接触面積と、誘電体40と導電弾性体30との間の距離とを変化させることによって、電極50、誘電体40および導電弾性体30により形成されるコンデンサの静電容量を、広い荷重の範囲においてリニアに変化させることができる。これにより、広いダイナミックレンジにおいて簡素な処理により、荷重を検出できる。よって、ダイナミックレンジを広く確保しつつ簡素な処理により荷重を検出することができる。
【0093】
また、図16(b)の構成では、荷重に応じて、下側の金属板20および導電弾性体30と、上側の誘電体40および電極50の両方が撓むため、荷重に応じて突起部31が誘電体40に接触する過程をさらに調整できる。これにより、静電容量をリニアに変化させ得る荷重の範囲(ダイナミックレンジ)をさらに広げ得る可能性がある。
【0094】
また、上記実施形態において、図17(a)、(b)に示すように、導電弾性体30の中央部P1に開口71が形成されてもよい。開口71は、図17(a)に示すように、Z軸方向に見て円形状であり、図17(b)に示すように、金属板20および導電弾性体30をZ軸方向に貫通している。
【0095】
開口71を形成する際には、中央部に孔21(図17(b)参照)が形成された金属板20が金型内にあらかじめ挿入され、そこへ導電弾性体30の材料が注入される。そして、上記実施形態と同様、金属と樹脂を一体化する成型方法により、金属板20と導電弾性体30の一体構造が製造され、成型後の冷却過程において、金属板20と導電弾性体30の膨張率の差により、開口71の円周部分が端部に比べて撓んだ形状となる。
【0096】
このとき、金属板20の中央部には孔21が形成されているため、導電弾性体30の中央部には孔35(図17(b)参照)が形成される。このように、導電弾性体30の中央部に孔35が形成されると、冷却過程において、金属板20の中心付近において導電弾性体30が盛り上がって形成されることが抑制される。
【0097】
すなわち、上記実施形態のように、金属板20の中心付近に孔21が形成されず、図17(a)に示した開口71の部分にも導電弾性体30が形成される場合、この部分における導電弾性体30の膨張のバラつきにより、中央における金属板20および導電弾性体30の反り量(基板10の上面から開口71の下端までの長さ)にバラつきが生じる場合がある。これに対し、図17(a)、(b)の構成では、金属板20の中心付近に導電弾性体30が形成されないため、冷却過程において、中央における金属板20および導電弾性体30の反り量にバラつきが出ることを抑制できる。これにより、荷重の変化に応じた静電容量の変化にバラつきが生じることを抑制できる。
【0098】
図17(a)、(b)に示す変更例においても、上記実施形態と同様、誘電体40に接触する突起部31の数と、突起部31と誘電体40との間の接触面積と、誘電体40と導電弾性体30との間の距離とを変化させることによって、電極50、誘電体40および導電弾性体30により形成されるコンデンサの静電容量を、広い荷重の範囲においてリニアに変化させることができる。これにより、広いダイナミックレンジにおいて簡素な処理により、荷重を検出できる。よって、ダイナミックレンジを広く確保しつつ簡素な処理により荷重を検出することができる。また、中央における金属板20および導電弾性体30の反り量のバラつきが抑制されるため、所望のダイナミックレンジを実現できる。
【0099】
なお、図18(a)のように、金属板20および導電弾性体30と、誘電体40および電極50とが、互いに接近方向に撓んだ撓み形状を有する場合も、導電弾性体30の中央部P1に開口71が形成されてもよい。この場合、図18(b)に示すように、誘電体40および電極50の中央部にも開口72が形成されてもよい。
【0100】
なお、図17(a)~図18(b)に示す変更例において、開口71、72は、Z軸方向に見て円形状であったが、これに限らず、楕円形状や矩形形状など、他の形状でもよい。また、開口71は、金属板20および導電弾性体30の中央を含む範囲(中央部)に設けられたが、これに限らず、導電弾性体30がZ軸正方向に最も突出した部分に設けられればよい。同様に、開口72は、誘電体40および電極50の中央を含む範囲(中央部)に設けられたが、これに限らず、誘電体40がZ軸負方向に最も突出した部分に設けられればよい。また、図11(b)に示す変更例においても、導電弾性体30の中央部P1に開口71が形成されてもよい。
【0101】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 荷重センサ
20 金属板(薄板)
30 導電弾性体(弾性体)
31 突起部
32 上面
33 下面
40 誘電体
41 下面
50 電極
51 下面
71 開口
P1 中央部
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