(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】蛍光体ホイール
(51)【国際特許分類】
F21V 29/502 20150101AFI20231117BHJP
F21V 29/78 20150101ALI20231117BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20231117BHJP
【FI】
F21V29/502 100
F21V29/78
F21V9/30
(21)【出願番号】P 2022578154
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047272
(87)【国際公開番号】W WO2022163220
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021010674
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 昇
(72)【発明者】
【氏名】本多 洋介
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154048(WO,A1)
【文献】特開2019-61235(JP,A)
【文献】特開2018-55054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/502
F21V 29/78
F21V 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに背向する第1主面及び第2主面を有する基板と、
前記第1主面に設けられた蛍光体層と、
前記第1主面及び第2主面のいずれかの面に対向して配置され、かつ、前記基板とともに回転される、板材からなる放熱部材と、を備え、
前記放熱部材は、
前記いずれかの面に向かって突出するように前記放熱部材の中央部に設けられ、前記いずれかの面と接する接触面を有する突出部と、
前記中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される複数のフィンと、
前記放熱部材から視て前記複数のフィンが切り起こされる向きと同じ向きに前記放熱部材の外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部とを有し、
前記突出部は、前記接触面を介して前記基板に接することにより、前記基板と前記放熱部材との間に一定の間隔を確保し、かつ、前記基板の熱を前記放熱部材の前記周辺領域まで伝導する、
蛍光体ホイール。
【請求項2】
前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、R曲げ形状である、
請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項3】
前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、Z曲げ形状である、
請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項4】
前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、度曲げ形状である、
請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項5】
前記複数のフィンのそれぞれは、前記いずれかの面に向かって切り起こされている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項6】
前記蛍光体層は、前記基板の一方の面において帯状かつ円環状に設けられており、
前記放熱部材の直径は、前記蛍光体層の内径よりも小さい、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項7】
前記基板は、円盤状であり、
前記蛍光体層は、前記基板の周方向に沿う帯状に形成されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光体ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプロジェクタなどに採用される光源装置として、レーザ光源から照射されるレーザ光(励起光)によって発光する蛍光体ホイールがある。蛍光体ホイールは、レーザ光の照射による蛍光体層の発熱がもたらす劣化を抑制するために、蛍光体層にレーザ光が照射されている間、回転軸回りに回転される。
【0003】
蛍光体ホイールの放熱性能を向上させる技術として、両側側面に蛍光体が配置された2つの支持部材を対向させた隙間空間に、羽構造のフィンを形成する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1によれば、冷媒としての空気が隙間空間を通流することで、蛍光体にもたらされる熱の排出を促進できるので、蛍光体ホイールの放熱性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年においては、蛍光体ホイールの放熱性能をさらに高めることが望まれている。
【0006】
本開示は、放熱性能がより向上する蛍光体ホイールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る蛍光体ホイールは、互いに背向する第1主面及び第2主面を有する基板と、前記第1主面に設けられた蛍光体層と、前記第1主面及び第2主面のいずれかの面に対向して配置され、かつ、前記基板とともに回転される、板材からなる放熱部材と、を備え、前記放熱部材は、前記いずれかの面に向かって突出するように前記放熱部材の中央部に設けられ、前記いずれかの面と接する接触面を有する突出部と、前記中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される複数のフィンと、前記放熱部材から視て前記複数のフィンが切り起こされる向きと同じ向きに前記放熱部材の外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部とを有し、前記突出部は、前記接触面を介して前記基板に接することにより、前記基板と前記放熱部材との間に一定の間隔を確保し、かつ、前記基板の熱を前記放熱部材の前記周辺領域まで伝導する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の蛍光体ホイールは、放熱性能がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る蛍光体ホイールの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る蛍光体ホイールの側面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る基板を第1主面側から見たときの正面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る放熱部材を第1主面側から見たときの正面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る放熱部材を第1主面側から見たときの斜視図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1の別態様に係る蛍光体ホイールの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る放熱部材を第1主面側から見たときの正面斜視図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る放熱部材を第2主面側から見たときの背面斜視図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る放熱部材のフィン近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2の変形例に係る放熱部材を第1主面側から見たときの正面斜視図である。
【
図13】
図13は、比較例に係る放熱部材を第1主面側から見たときの正面斜視図である。
【
図14】
図14は、比較例に係る放熱部材のフィン近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
【
図15】
図15は、実施の形態3に係る放熱部材を第1主面側から見たときの正面斜視図である。
【
図17】
図17は、実施の形態3に係る蛍光体ホイールの実機試作品に対する検証結果を示す図である。
【
図18】
図18は、比較例に係る放熱部材のフィン近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
【
図19】
図19は、実施の形態3に係る放熱部材のフィン近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
【
図20A】
図20Aは、実施の形態3に係る切り欠き部のサイズの別の例を示す図である。
【
図20B】
図20Bは、実施の形態3に係る切り欠き部のサイズの別の例を示す図である。
【
図21A】
図21Aは、実施の形態3の変形例に係る切り欠き部の形状の別の例を示す図である。
【
図21B】
図21Bは、実施の形態3の変形例に係る切り欠き部の形状の別の例を示す図である。
【
図22A】
図22Aは、実施の形態3の変形例に係る切り欠き部が放熱部材の回転軸寄りに形成された場合の例を示す図である。
【
図22B】
図22Bは、実施の形態3の変形例に係る切り欠き部が放熱部材の外周縁寄りに形成された場合の例を示す図である。
【
図23】
図23は、実施の形態3に係る蛍光体ホイールの蛍光体層の温度低減効果の解析結果を示す図である。
【
図24】
図24は、放熱部材の回転軸寄りに形成された切り欠き部を有する放熱部材のフィン近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
【
図25】
図25は、実施の形態4に係る放熱部材を第1主面側から見たときの正面斜視図である。
【
図28】
図28は、
図26に示す曲げ端部と異なる寸法の曲げ端部付近の一部拡大斜視図である。
【
図29】
図29は、実施の形態4に係る蛍光体ホイールの実機試作品に対する検証結果を示す図である。
【
図30A】
図30Aは、比較例に係る放熱部材の外周縁端部近傍の相対速度の解析結果を示す図である。
【
図30B】
図30Bは、実施の形態4に係る放熱部材の曲げ端部近傍の流体の相対速度の解析結果を示す図である。
【
図31】
図31は、変形例1に係る曲げ端部を有する放熱部材及び基板の一部拡大側面図である。
【
図33】
図33は、
図32に示す曲げ端部と異なる寸法の曲げ端部付近の一部拡大斜視図である。
【
図34】
図34は、実施の形態4に係る蛍光体ホイールの蛍光体層の温度低減効果の解析結果を示す図である。
【
図36】
図36は、
図34の「R1*1」における二乗平均圧力の時間微分の値のコンター図である。
【
図37】
図37は、
図34の「C1.5*1」における二乗平均圧力の時間微分の値のコンター図である。
【
図38】
図38は、変形例2に係る曲げ端部を有する放熱部材及び基板の一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
また、以下の実施の形態で説明に用いられる図面においては座標軸が示される場合がある。Z軸方向は、蛍光体ホイールの高さ方向として説明される。Z軸+側は、上側(上方)と表現され、Z軸-側は、下側(下方)と表現される場合がある。また、X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向に垂直な平面上において、互いに直交する方向である。以下の実施の形態において、正面図とはX軸+側から見たときの図面を意味し、背面図とはX軸-側から見たときの図面を意味する。また、側面図とはY軸方向から見たときの図面を意味する。
【0013】
(実施の形態1)
[蛍光体ホイール1]
以下、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の分解斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の側面図である。
【0014】
実施の形態1に係る蛍光体ホイール1は、反射型の蛍光体ホイールであり、レーザプロジェクタ、設備向け照明装置及び内視鏡などの光源等に使用される。蛍光体ホイール1は、
図1及び
図2に示されるように、基板11と、基板11に設けられた蛍光体層12と、放熱部材30と、モータ40と、調整板41とを備える。なお、調整板41は、モータ40の回転動力を基板11等にバランスよく伝達するために回転時の重心ずれの調整に用いられるが、必須構成ではない。調整板41は、モータ40のハブであってもよい。
【0015】
[基板11]
図3は、実施の形態1に係る基板11を第1主面側から見たときの正面図である。
【0016】
基板11は、互いに背向する第1主面及び第2主面を有し、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、基板11の平面視における形状は、円形である。なお、平面視における形状とは、基板11に垂直な方向(X軸+側)から見た場合の形状(つまり、正面形状)である。基板11の直径は、例えば、8cm程度であるが、特に限定されない。
【0017】
図3に示すように、基板11では、第1主面に蛍光体層12が設けられている。基板11の中央には、調整板41と連結されるモータ40の一部(ハブ、ロータ等)を突出させるための開口33が設けられている。また、基板11は、中心(中心位置)に回転軸Jが通り、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される。
【0018】
基板11の材料は、アルミニウム、ステンレスまたはサファイアなど熱伝導性の良好な金属であれば特に限定されない。本実施の形態では、基板11は、例えば、アルミニウムによって形成される。アルミニウムは比較的熱伝導率が高く、軽量であるため、基板11は、アルミニウムによって形成されることにより放熱性能を高めることができるだけでなく軽量化も実現されるからである。また、基板11の厚みは、例えば、1.5mm以下である。
【0019】
[蛍光体層12]
蛍光体層12は、基板11の第1主面に設けられる。
【0020】
ここで、蛍光体層12は、例えば、YAG系の多数の黄色蛍光体粒子を含む樹脂材料からなるとしてもよい。この場合、樹脂材料の基材は、例えば、透光性及び熱硬化性を有するシリコーン樹脂である。蛍光体層12は、このような樹脂材料が基板11の第1主面にスクリーン印刷された後、加熱炉で加熱硬化されることによって設けることができる。
【0021】
また、蛍光体層12は、例えば、YAG系の黄色蛍光体粒子とバインダとで構成されていてもよい。この場合、蛍光体層12では、光変換効率の改善のため、励起光から蛍光への変換に寄与するYAG系の黄色蛍光体粒子の量が多いほうがよい。つまり、蛍光体層12では、蛍光体粒子含有比率は大きい方がよい。バインダは、蛍光体層12を構成する黄色蛍光体粒子以外の混合物である。バインダは、例えば、アルミナなどの熱伝導率の高い無機物質によって形成される。アルミナの熱伝導率は、シリコーン樹脂の熱伝導率の10倍以上である。このため、蛍光体層12は、黄色蛍光体粒子とアルミナによって形成されたバインダとによって構成されることにより、高い熱伝導率を実現することができる。
【0022】
なお、
図1~
図3では図示されないが、基板11の第1主面と蛍光体層12との間には、反射膜が設けられてもよい。
【0023】
本実施の形態では、蛍光体層12は、
図3に示すように、平面視において、円盤状の基板11の周方向θに沿って帯状となるリング状(円環状)に設けられる。より具体的には、蛍光体層12は、蛍光体ホイール1の回転中心である回転軸Jから距離が等しい円周上にリング状(円環状)に設けられる。換言すると、蛍光体層12の径方向rにおける幅は、一定となっている。さらに、蛍光体層12は、第1主面の周縁に設けられるのが望ましい。なお、基板11が円盤状の基板ではない場合にも、蛍光体層12は円環状に設けられるとよい。
【0024】
ところで、蛍光体層12は、レーザ光が照射されることにより発光する。このとき、蛍光体層12の一点に集中的にレーザ光が照射されることを避けるため、蛍光体ホイール1は、蛍光体層12にレーザ光が照射されている間、モータ40によって、回転軸Jを中心に回転される。これにより、レーザ光の照射による発熱によって蛍光体層12に含まれる蛍光体粒子の劣化が抑制される。
【0025】
[放熱部材30]
放熱部材30は、板材からなり、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される。
図1及び
図2に示す例では、放熱部材30は、基板11の第2主面に対向して配置されている。ここで、基板11の第1主面は、蛍光体層12が設けられている。
【0026】
図4は、
図2に示す放熱部材30の拡大側面図である。
図5は、実施の形態1に係る放熱部材30を第1主面側から見たときの正面図である。
図6は、実施の形態1に係る放熱部材30を第1主面側から見たときの斜視図である。なお、背面とは、上述したように、基板11の第2主面と対向する面(正面)と反対側、かつ、放熱部材30に垂直な方向(すなわちX軸-側)から放熱部材30を見たときの面である。
【0027】
放熱部材30は、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、放熱部材30の平面視における形状は、円形である。なお、放熱部材30の直径は、例えば、7cm程度であるが、3cm~100cm程度であってもよい。なお、放熱部材30の直径は、後述するように放熱部材30が基板11の第1主面に対向して配置される場合には、蛍光体層12の内径よりも小さければ特に限定されない。換言すると、放熱部材30が基板11の第1主面に対向して配置される場合には、放熱部材30の直径は、基板11の一方の面において帯状かつ円環状に設けられている蛍光体層12の内径よりも小さければよい。一方、放熱部材30の直径は、
図1に示すように、放熱部材30が基板11の第2主面に対向して配置される場合には、基板11の直径より蛍光体層12の内径よりも大きくてもよいし、基板11の直径よりも大きくてもよい。
【0028】
本実施の形態では、放熱部材30は、
図1、
図2、
図4~
図6に示すように、複数のフィン31と、突出部34とを有する。例えば
図1及び
図2に示すように、本実施の形態では、放熱部材30は、基板11の第2主面に対向して配置されている。また、複数のフィン31は基板11の第2主面に向かって切り起こされており、突出部34も基板11の第2主面に向かって突出している。より具体的には、複数のフィン31は、放熱部材30における板材の複数の一部領域である複数の領域32を切り起こすことで形成される。複数の領域32は、複数のフィン31が形成された後に貫通孔となる。なお、突出部34及び複数のフィン31及び領域32等の詳細は後述する。
【0029】
放熱部材30の材料は、例えばステンレス、鉄、銅、サファイアまたはアルミニウムなどの金属の板材であればよいが、特に限定されない。
【0030】
<突出部34>
突出部34は、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に向かって突出するように放熱部材30の中央部に設けられ、当該いずれかの面と接する接触面を有する。突出部34は、接触面を介して基板11に接することにより、基板11と放熱部材30との間に一定の間隔を確保し、かつ、基板11の熱を放熱部材30の中央部を除く周辺領域まで伝導する。
【0031】
本実施の形態では、突出部34は、例えば
図2に示すように、基板11と放熱部材30との間隔を一定に保持するために、基板11の第2主面に突出するように放熱部材30の中央部に設けられている。突出部34は、絞り加工により形成される。
【0032】
突出部34の厚みすなわち、基板11と放熱部材30との間隔は、
図2及び
図4に示すように、後述する放熱部材30の周辺領域を切り起こすことにより形成される複数のフィン31の高さ以上であればよい。突出部34は、例えば
図5及び
図6に示すように、基板11の第2主面に接触させるための接触面であって帯状かつ円環状の接触面を有する。
【0033】
なお、突出部34の中央には、開口33が設けられ、モータ40と調整板41を介して接続される。これにより、放熱部材30は、中心(中心位置)に回転軸Jが通り、モータ40によって回転軸Jを中心として、基板11とともに回転駆動される。なお、この開口33の大きさ(直径)は、調整板41と連結するためのモータ40の一部が突出できる程度の大きさであればよい。例えば、開口33は、モータ40の一部と最大1mmの隙間を有する大きさであればよい。
【0034】
また、突出部34の直径は、例えば、3.7cm程度であるが、これに限らない。突出部34の直径は、放熱部材30の内径よりも小さければよく、開口33の径よりも大きければ、特に限定されない。
【0035】
このように、突出部34は、
図1、
図2、
図4~
図6に示される通り、帯状かつ円環状の接触面を有するように、放熱部材30の中央部に設けられる。これにより、突出部34は、基板11と放熱部材30の周辺領域との間に空気からなる一定の間隔の空隙(空間)を形成することができるスペーサとして機能するだけでなく、蛍光体層12で生じる熱を基板11から放熱部材30の周辺領域に伝えることができる熱伝導の経路として機能する。
【0036】
<フィン31>
複数のフィン31は、切り起こし加工により形成される。より具体的には、複数のフィン31は、放熱部材30の板材のうち中央部を除く周辺領域における複数の領域32を切り起こして形成される。複数のフィン31のそれぞれは、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に向かって切り起こされている。本実施の形態では、例えば
図1~
図3に示されるように、複数のフィン31は、複数の領域32が基板11の第2主面に向かって切り起こされることで、基板11の第2主面に向かって立設されている。
【0037】
また、複数のフィン31の高さは、
図2及び
図3に示すように、突出部34の厚みよりも小さい。
【0038】
なお、フィン31は、
図1及び
図2に示す例では、蛍光体層12の内径よりも内側領域に対応する放熱部材30の領域内にある周辺領域に形成されているが、これに限らない。フィン31は、放熱部材30が基板11の第1主面に対向して配置され、放熱部材30の直径が蛍光体層12の内径よりも大きい場合には、蛍光体層12の領域に対応する放熱部材30の領域を含めた周辺領域に形成されていてもよい。さらに、フィン31は、放熱部材30が基板11の第1主面に対向して配置され、放熱部材30の直径が蛍光体層12の内径よりも大きい場合には、蛍光体層12の外径よりも外側に対応する放熱部材30の領域を含めた周辺領域に形成されていてもよい。
【0039】
複数のフィン31は、例えば
図5及び
図6に示すように、放熱部材30の周辺領域において、中心(回転軸J)から一定の距離に、周方向θに沿って円環状に配置される。複数のフィン31の形状は、例えば、略矩形状(略台形状)であるが、先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。換言すると、
図5及び
図6に示す例のように、複数のフィン31のそれぞれは、周辺領域において径方向rに対して一定の角度を有するように形成されており、基板11の第2主面(または放熱部材の正面)に対して一定の角度を有するように切り起こされている。なお、複数のフィン31のそれぞれは、周辺領域に形成されていればよく、径方向rに沿って形成されていなくてもよい。また、複数のフィン31のそれぞれは、基板11の第2主面(または放熱部材30の正面)に対して垂直に立設されなくてもよい。
【0040】
ところで、本実施の形態において、複数のフィン31のそれぞれは、回転軸Jを中心として、放熱部材30の回転に応じて当該フィン31よりも外側(遠心方向)に風を送る。換言すると、複数のフィン31のそれぞれは、放熱部材30の背面側(X軸-側)にある空気(流体)を、貫通孔である複数の領域32を抜けて、基板11と放熱部材30との間の空間の外側に向けて送る。これにより、複数のフィン31によって生じる空気の流れである風(気流)を、蛍光体層12の冷却に用いることができる。
【0041】
なお、フィン31の径方向rに対する角度、及び、フィン31の第2主面に対する角度は、外側に効果的に風を送ることができればよく、
図4~
図6に示される例にも限定されない。
【0042】
<領域32>
領域32は、上述したように、放熱部材30の板材のうちの一部領域であり、複数のフィン31が形成された後には貫通孔となる。
【0043】
より具体的には、複数の領域32は、周辺領域に位置する。さらに、複数の領域32は、
図5に示すように、基板11から放熱部材30に向かう方向から視て(第1主面から視て)、放熱部材30の中心から所定距離離れた位置かつ周方向θに略等間隔となる位置から、径方向rと所定以上の角度を有する仮想的な直線に沿った位置にある。複数の領域32は、相似する形状であってもよいが、相似する形状に限らない。
【0044】
また、複数の領域32は、
図5及び
図6に示すように、放熱部材30を貫通する貫通孔となっており、複数のフィン31によって生じる風の通る通気孔として機能する。複数の領域32は、例えば
図5に示すように、周辺領域において、放熱部材30の中心(回転軸J)から一定の距離に、周方向θに沿って円環状に位置している。なお、複数の領域32がランダムに配置されると、放熱部材30の回転が安定せず、異音等が生じる原因になるので、複数の領域32は略等間隔に配置される。複数の領域32の形状は、例えば、略矩形状(略台形状)であるが、角が落とされて丸くなっていてもよい。
【0045】
また、複数の領域32のそれぞれは、
図5に示すように、径方向rに対して一定の角度を有するように形成されている。なお、複数の領域32のそれぞれは、径方向rに沿って形成されていなくてもよい。複数の領域32の径方向rに対する角度の大きさは、切り起こされた複数のフィン31が外側に効果的に風を送ることができるように決定されればよく、
図5に示す例には限定されない。
【0046】
[モータ40]
モータ40は、例えば
図1に示すように、電子回路(不図示)に制御されることにより、基板11及び放熱部材30を回転駆動する。モータ40は、例えば、アウターロータ型のモータであるが、特に限定されない。
【0047】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1は、互いに背向する第1主面及び第2主面を有する基板11と、第1主面に設けられた蛍光体層12と、基板11の第2主面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される、板材からなる放熱部材30とを備える。放熱部材30は、当該第2主面に向かって突出するように放熱部材30の中央部に設けられ、当該第2主面と接する接触面を有する突出部と、中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される複数のフィンと、を有する。突出部34は、接触面を介して基板11に接することにより、基板11と放熱部材30との間に一定の間隔を確保し、かつ、基板11の熱を放熱部材30の周辺領域まで伝導する。
【0048】
このように、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1は、反射型の蛍光体ホイールであり、基板11の第1主面にのみ蛍光体層12を備える。また、蛍光体ホイール1は、突出部34が設けられた放熱部材30を備えることにより、基板11と放熱部材30との間に一定の間隔の空間を形成することができる。これにより、複数のフィン31によって生じる風を、複数の領域32(貫通孔)を抜けさせて、基板11と放熱部材30との間の空間の外側に向けて送ることができる。つまり、複数のフィン31によって生じる風を蛍光体層12の冷却に用いることができる。よって、蛍光体ホイール1の放熱性能を向上することができる。また、蛍光体ホイール1は、基板11と突出部34とが接触することにより、蛍光体層12で生じる熱を基板11から放熱部材30の周辺領域に伝える熱伝導の経路を形成することができるので、さらに、放熱性能を向上することができる。
【0049】
以上のようにして、放熱性能がより向上した蛍光体ホイール1を実現できる。
【0050】
さらに、放熱部材30に形成される複数のフィンは、板材の複数の領域を切り起こして形成するので、簡素に形成できることから、削り出しで製造する場合と比較して、コストを低くすることができる。
【0051】
なお、放熱部材30の中央に設けられた開口33の大きさは、調整板41と連結するためのモータ40の一部が突出できる程度の大きさであればよいとして説明したが、これに限らない。開口33の大きさより大きくして、通風のために用いるとしてもよい。すなわち、放熱部材30は、放熱部材30の中心部に、通風のために形成された開口33を有しており、基板11とともに回転される放熱部材30の回転軸Jは、開口33を通るとしてもよい。
【0052】
これにより、複数のフィン31によって生じる風を、複数の領域32(貫通孔)を抜けさせるだけでなく、開口33も抜けさせて、基板11と放熱部材30との間の空間(空隙)の外側に向けて送ることができる。したがって、蛍光体層12の冷却に用いることができる、基板11と放熱部材30との間の空間を通る風の量を増やすことができるので、蛍光体ホイール1の放熱性能をより向上することができる。
【0053】
なお、蛍光体ホイール1の構成は、上述した態様に限らず、放熱性能をさらに向上させるために、基板11にフィンを形成してもよいし、基板11に貫通孔としての開口を形成してもよい。
【0054】
また、上記の実施の形態1では、
図1及び
図2の例で示されるように、蛍光体ホイール1を構成する放熱部材30は、基板11の第2主面に対向して配置されているとして説明したが、これに限らない。
図7は、実施の形態1の別態様に係る蛍光体ホイール1Aの分解斜視図である。すなわち、
図7に示す蛍光体ホイール1Aのように、放熱部材30は、基板11の蛍光体層12が設けられた第1主面に対向して配置されていてもよい。この場合、複数のフィン31は基板11の第1面に向かって切り起こされ、突出部34も基板11の第1主面に向かって突出するように形成されればよい。さらに、この場合、放熱部材30に突出部34を設けず、調整板41を突出部34の機能を兼ねさせてもよい。また、放熱部材30と、突出部34の機能を兼ねさせた調整板41とを一体化させてもよい。これにより、部品点数をさらに削減でき、コスト削減を図れる。
【0055】
(実施の形態2)
上記の実施の形態1では、放熱性能が向上した蛍光体ホイール1等について説明したが、上述した態様に限らない。放熱性能をさらに向上させるために、蛍光体ホイール1が備える放熱部材の突出部にさらに貫通孔を形成してもよい。この場合の放熱部材を実施の形態2として以下説明する。以下では、実施の形態1で説明した放熱部材30と異なる点を中心に説明する。
【0056】
[放熱部材30B]
図8は、実施の形態2に係る放熱部材30Bを第1主面側から見たときの正面斜視図である。
図9は、実施の形態2に係る放熱部材30Bを第2主面側から見たときの背面斜視図である。
図10は、
図9の放熱部材30Bの一部拡大図である。なお、
図5及び
図6等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0057】
図8及び
図9に示す放熱部材30Bは、
図5及び
図6に示される放熱部材30に対して、突出部34Bにさらに貫通孔35Bが形成されている点で異なる。
【0058】
<突出部34B>
突出部34Bは、実施の形態1と同様に、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に向かって突出するように放熱部材30の中央部に設けられている。また、突出部34Bは、当該いずれかの面と接する接触面341と接触面341を底面とする周壁342とを有する。
【0059】
突出部34Bは、実施の形態1と同様に、基板11と放熱部材30Bとの間隔を一定に保持するために、基板11の第2主面に突出するように放熱部材30Bの中央部に設けられている。突出部34Bは、絞り加工により形成される。なお、突出部34Bの中央に設けられる開口33及び突出部34Bの直径などは、実施の形態で説明した通りのため、ここでの説明を省略する。
【0060】
このように、突出部34Bは、実施の形態1と同様に、基板11と放熱部材30Bの周辺領域との間に空気からなる一定の間隔の空隙(空間)を形成することができるスペーサとして機能する。また、突出部34Bは、接触面341を介して基板11に接することにより、蛍光体層12で生じる熱を基板11から放熱部材30Bの周辺領域に伝えることができる熱伝導の経路として機能する。
【0061】
本実施の形態では、さらに、突出部34Bは、周壁342に、通風のために形成された複数の貫通孔35Bを有する。
【0062】
<貫通孔35B>
貫通孔35Bは、突出部34Bの周壁342に設けられる。より具体的には、複数の貫通孔35Bのそれぞれは、
図8~
図10に示されるように、周壁342と接触面341との境界部に形成される。つまり、複数の貫通孔35Bのそれぞれは、周壁342と接触面341とに跨って形成されている。
【0063】
また、複数の貫通孔35Bのそれぞれは、放熱部材30Bの回転軸Jと複数のフィン31のそれぞれとを結ぶ領域と異なる位置に形成されている。つまり、貫通孔35Bとフィン31とは、径方向rでは並ばないように形成されている。
【0064】
ここで、
図10を用いて貫通孔35Bの寸法感について説明する。放熱部材30Bの外径を例えばφ70mm~80m、領域32の径方向rの長さ(長尺方向の長さ)を11mm~14mm程度とした場合、接触面341の外径はφ35mm~38mm程度であり、貫通孔35Bの径は、φ3mm程度となる。
【0065】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1、1Aでは、放熱部材30Bと突出部34Bとの境界部に、突出部34Bの周壁342と接触面341とに跨って貫通孔35Bが形成される。
【0066】
この構成により、蛍光体層12と放熱部材30Bとの間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができる。これにより、蛍光体層12の温度の低減をさらに図ることができるので、蛍光体ホイール1、1Aの放熱性能を向上することができる。
【0067】
ここで、以上のように構成された本実施の形態に係る蛍光体ホイール1、1Aの実機を試作して所定時間動作させたときの蛍光体層12の温度上昇を検証したのでその検証結果について説明する。なお、比較例として、貫通孔35Bを有さない実施の形態1に係る蛍光体ホイール1、1Aの実機試作品に対する検証も行った。
【0068】
この結果、本実施の形態では、蛍光体層12の温度上昇が115.7℃であった検証結果が得られた。比較例では、蛍光体層12の温度上昇が119.5℃であった検証結果が得られた。つまり、本実施の形態に係る蛍光体層12の温度上昇が、比較例に係る蛍光体層12の温度上昇よりも低いことが確認できた。
【0069】
図11は、実施の形態2に係る放熱部材30Bのフィン31近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
図11には、貫通孔35Bを通り、フィン31近傍に向かう流体(空気)の流れの様子が流線で示されている。なお、
図11示す流線は、流体(空気)の流れをベクトルで表示したものである。
【0070】
フィン31は、上述したように、フィン31が設けられた放熱部材30、30Bの平面部と基板11とで挟み込まれた領域(例えば
図1及び
図8参照)に存在する流体(空気)を、放熱部材30、30Bの外周方向へかき出す機能を有する。この機能により、実施の形態1、2に係る蛍光体ホイール1、1Aでは、対流による熱伝達が促進されるので、基板11に設けられている蛍光体層12の温度を低減させることができる。
【0071】
本実施の形態では、さらに、放熱部材30Bに貫通孔35Bを備えることで、
図11に示すように、貫通孔35Bを通り放熱部材30Bの外周方向に向かう流体(空気)は、途中、フィン31に当たる。このようにして、実施の形態2に係る蛍光体ホイール1、1Aは放熱部材30Bに貫通孔35Bを備えることで、貫通孔35Bを備えない場合(
図12に示す比較例に係る蛍光体ホイール1、1A)と比較して、対流による熱伝達を促進することができ、放熱性が向上すると考えられる。
【0072】
(変形例)
上述した実施の形態2では、放熱部材30Bと突出部34Bとの境界部に、突出部34Bの周壁342と接触面341とに跨って貫通孔35Bが形成されるとして説明したが、これに限らない。
図12に示すように、突出部34Bの周壁342のみに貫通孔35Cが形成されるとしてもよい。
【0073】
図12は、実施の形態2の変形例に係る放熱部材30Cを第1主面側から見たときの正面斜視図である。なお、
図8及び
図9等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0074】
図12に示す放熱部材30Cは、
図8及び
図9に示される放熱部材30Bに対して、突出部34Cにおいて通風のために形成された複数の貫通孔35Cの位置が異なる。その他は、上述した貫通孔35Bと同様である。
【0075】
より具体的には、貫通孔35Cは、突出部34Cの周壁342に設けられる。複数の貫通孔35Cのそれぞれは、
図12に示されるように、周壁342にのみに形成され、かつ、放熱部材30Cから接触面341に向かう方向に視て、周壁342の中央に形成されている。なお、複数の貫通孔35Bのそれぞれと同様に、複数の貫通孔35Cのそれぞれは、放熱部材30Cの回転軸Jと複数のフィン31のそれぞれとを結ぶ領域と異なる位置に形成されている。つまり、貫通孔35Cとフィン31とは、径方向rでは並ばないように形成されている。
【0076】
この構成により、蛍光体層12と放熱部材30Cとの間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができる。これにより、蛍光体層12の温度の低減をさらに図ることができるので、蛍光体ホイール1、1Aの放熱性能を向上することができる。
【0077】
なお、貫通孔が、突出部34Cにおいて周壁342と接触面341との境界部に形成され、かつ、周壁342と放熱部材30とに跨って形成されることは、実施の形態2における範囲には含まれない。蛍光体層12と放熱部材30Cとの間で生じる流体(空気)の流れを促進することができないからである。以下、比較例としてこれについて簡単であるが説明する。
【0078】
図13は、比較例に係る放熱部材90を第1主面側から見たときの正面斜視図である。なお、
図12と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図14は、比較例に係る放熱部材90のフィン31近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
図14にも、貫通孔95を通り、フィン31に向かう流体(空気)の流れの様子が流線で示されている。
【0079】
図13に示すように、比較例に係る放熱部材90は、
図8及び
図9に示される放熱部材30Bと
図12に示す放熱部材30Cとに対して、突出部34に設けられる貫通孔95の位置が異なっている。より具体的には、突出部34に設けられる貫通孔95は、
図13に示すように突出部34において周壁342と放熱部材90との境界部に形成され、かつ、周壁342と帆熱部材90とに跨って形成される。
【0080】
図13に示すような貫通孔95を備える放熱部材90では、
図14に示すように、貫通孔95を通り外周方向に向かう流体(空気)がフィン31に当たり、放熱部材30の外周へ抜け出る軌跡(流線)は少なく、一方でフィン31に当たるこ となくフィン31よりも回転軸J側に近い部分を抜ける軌跡(流線)が多い。このため、
図7に示すような貫通孔35B(貫通孔35C)を備える放熱部材30B(30C)と比較すると、蛍光体層12と放熱部材30Cとの間で生じる流体(空気)の流れを促進することができず、対流による熱伝達を促進することができない。
【0081】
(実施の形態3)
上記の実施の形態1、2では、放熱性能が向上した蛍光体ホイール1等について説明したが、上述した態様に限らない。放熱性能をさらに向上させるために、蛍光体ホイール1が備える放熱部材30の複数のフィン31が切り起こされる領域32の面積を広げるよう領域32にさらに切り欠き部を形成してもよい。この場合を実施の形態3として以下説明する。以下では、実施の形態1で説明した放熱部材30と異なる点を中心に説明する。
【0082】
[放熱部材30D]
図15は、実施の形態3に係る放熱部材30Dを第1主面側から見たときの正面斜視図である。
図16は、
図15の放熱部材30Dの一部拡大図である。なお、
図5及び
図6等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0083】
図15及び
図16に示す放熱部材30Dは、
図5及び
図6に示される放熱部材30に対して、領域32Dにさらに切り欠き部321が形成されている点で異なる。
【0084】
<領域32D>
領域32Dは、実施の形態1と同様に、放熱部材30Dの板材のうちの一部領域であり、複数のフィン31が形成された後には貫通孔となる。また、複数の領域32Dは、
図15に示すように、複数のフィン31によって生じる風の通る通気孔として機能する。放熱部材30Dにおいて領域32Dが設けられる位置、形状は、実施の形態1で説明した通りであるためここでの説明を省略する。
【0085】
本実施の形態では、複数の領域32Dのそれぞれは、さらに、フィン31と連なる辺と対向する辺の一部を切り欠いて形成される切り欠き部321を有する。
【0086】
<切り欠き部321>
切り欠き部321は、領域32Dの辺の一部を切り欠いて形成される。より具体的には、切り欠き部321は、例えば
図16に示すように、領域32Dにおける辺の一部であってフィン31と連なる辺と対向する辺の一部を切り欠いて形成される。
【0087】
切り欠き部321の形状は、例えば
図16に示すように、半円切り欠き形状である。なお、
図16に示す例では、切り欠き部321は、領域32Dにおけるフィン31と連なる辺と対向する辺の中央部に位置している。
【0088】
ここで、
図16に示す例における切り欠き部321の寸法感について説明する。放熱部材30Dの外径を例えばφ70mm~80m、領域32Dの径方向rの長さ(長尺方向の長さ)を11mm~14mm程度とした場合、切り欠き部321の径方向rの長さR1は2mm程度である。
【0089】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1、1Aでは、放熱部材30Dの複数のフィン31が切り起こされる領域32Dにおいてさらに切り欠き部321が形成される。
【0090】
この構成により、切り欠き部321の面積分だけ、複数の領域32Dの機能としての通気孔であって複数のフィン31によって生じる風の通る通気孔の面積を増やすことができる。よって、蛍光体層12と放熱部材30Dとの間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができる。これにより、蛍光体層12の温度の低減をさらに図ることができるので、蛍光体ホイール1、1Aの放熱性能を向上することができる。
【0091】
ここで、以上のように構成された本実施の形態に係る蛍光体ホイールの実機を試作して検証した検証結果について説明する。
【0092】
図17は、実施の形態3に係る蛍光体ホイール1、1Aの実機試作品に対する検証結果を示す図である。
図17には、所定時間動作させたときの蛍光体層12の温度上昇と、所定時間動作中の騒音レベルとが検証結果として示されている。なお、
図17には、比較例として、切り欠き部321を有さない構成すなわち実施の形態1に係る蛍光体ホイール1、1Aの実機試作品に対する検証結果も併せて示されている。
【0093】
図17から、実施の形態3に係る蛍光体ホイール1、1Aの蛍光体層12の温度上昇が、比較例に係る蛍光体ホイール1、1Aの蛍光体層12の温度上昇よりも低いことが確認できる。
【0094】
なお、放熱部材30(30D)に複数のフィン31を形成する構成等により蛍光体ホイール1、1Aの放熱性能を向上させることができるものの、当該構成により風切り騒音が発生してしまうという副産物がある。しかし、実施の形態3に係る蛍光体ホイール1、1Aと比較例に係る蛍光体ホイール1、1Aとでは騒音レベルに差はないのがわかる。
【0095】
図18は、比較例に係る放熱部材30のフィン31近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
図19は、実施の形態3に係る放熱部材30Dのフィン31近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
図18及び
図19には、通気孔として機能する領域32及び領域32Dを通り、フィン31に向かう流体(空気)の流れの様子が流線で示されている。なお、
図28及び
図19に示すベクトル線は、流体(空気)の流れを表示したものである。
【0096】
例えば
図18に示すように、フィン31は、フィン31が設けられた放熱部材30の平面部と基板11とで挟み込まれた領域(例えば
図1及び
図8参照)に存在する流体(空気)を、放熱部材30の外周方向へかき出す機能を有する。この機能により、実施の形態1、2に係る蛍光体ホイール1、1Aでは、対流による熱伝達が促進されるので、基板11に設けられている蛍光体層12の温度を低減させることができる。また、通気孔として機能する領域32からフィン31に向かって流れ込む流体も、フィン31に当たり、その後に放熱部材30の外周へかき出されることになる。これもまた、熱伝達を促進する一助となる。
【0097】
本実施の形態では、さらに、放熱部材30Dの領域32に切り欠き部321を設けることにより、領域32が担っていた機能としての通気孔の面積を増やすことができる。これにより、
図19に示すように、領域32及び切り欠き部321が担う機能としての通気孔を通る流量は増加するので、対流による熱伝達を促進することができ、放熱性が向上すると考えられる。
【0098】
(変形例)
なお、切り欠き部321のサイズと形状とは、
図16で示した例に限らない。切り欠き部321のサイズ(大きさ)と形状のバリエーションについて
図20A~
図21Bを用いて説明する。
【0099】
図20A及び
図20Bは、実施の形態3に係る切り欠き部321のサイズの別の例を示す図である。
図20A及び
図20Bには、
図16に示される例よりも大きいサイズで形成された切り欠き部321が示されている。ここで、
図16に示される切り欠き部321の径方向rの長さR1を2mm程度とし、領域32Dの径方向rの長さ(長尺方向の長さ)を11mm~14mm程度とする。この場合、
図20Aに示される切り欠き部321の径方向rの長さR3は例えば6mm程度であってもよい。また、
図20Bに示される切り欠き部321の径方向rの長さR5は例えば10mm程度であってもよい。
【0100】
図21A及び
図21Bは、実施の形態3の変形例に係る切り欠き部321Aの形状の別の例を示す図である。
図21A及び
図21Bには、
図16に示される例と異なる形状で形成された切り欠き部321Aが示されている。より具体的には、切り欠き部321Aは、領域32Dにおけるフィン31と連なる辺と対向する辺の中央部の位置にVの字切り欠き形状で形成されている。切り欠き部321Aは、
図21A及び
図21Bに示すようにサイズは小さくてもよいし大きくてもよい。
【0101】
このように、切り欠き部321Aの形状は、Vの字切り欠き形状であってもよい。なお、Vの字切り欠き形状は、三角形状と表現してもよい。
【0102】
また、
図16に示す例では、切り欠き部321は、領域32Dにおけるフィン31と連なる辺と対向する辺の中央部に位置するように形成されていたが、これに限らない。以下、切り欠き部321の形成される位置のバリエーションについて
図22A及び
図22Bを用いて説明する。
【0103】
図22Aは、実施の形態3の変形例に係る切り欠き部321Bが放熱部材30Dの回転軸J寄りに形成された場合の例を示す図である。より具体的には、
図22Aに示すように、切り欠き部321Bは、領域32Dにおけるフィン31と連なる辺と対向する辺の中央部よりも放熱部材30Dの回転軸J寄りに形成されてもよい。
【0104】
図22Bは、実施の形態3の変形例に係る切り欠き部321Cが放熱部材30Dの外周縁寄りに形成された場合の例を示す図である。より具体的には、
図22Bに示すように、切り欠き部321Bは、領域32Dにおけるフィン31と連なる辺と対向する辺の中央部よりも放熱部材30Dの外周縁寄りに形成されてもよい。
【0105】
なお、
図22Aに示す切り欠き部321B及び
図22Bに示す切り欠き部321Cの形状は半円切り欠き形状であるが、Vの字切り欠き形状であってもよい。
【0106】
図23は、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1、1Aの蛍光体層12の温度低減効果の解析結果を示す図である。
図23に示される結果は、熱流体シミュレーションから得た解析結果である。
【0107】
図23には、
図15に示される径方向rの長さR1の半円切り欠き形状である切り欠き部321が321(R1)として示され、
図20Aに示される径方向rの長さR3の半円切り欠き形状である切り欠き部321が321(R3)として示されている。また、
図20Bに示される径方向rの長さR5の半円切り欠き形状である切り欠き部321が321(R5)として示されている。また、
図23には、
図21Aに示される小さなVの字切り欠き形状である切り欠き部321Aが321A(小)として示され、
図21Bに示される大きなVの字切り欠き形状である切り欠き部321Aが321A(大)として示されている。
【0108】
また、
図23には、
図22Aに示される放熱部材30Dの回転軸J寄りに形成された切り欠き部321Bが321Bとして示され、
図22Bに示される放熱部材30Dの外周縁寄りに形成された切り欠き部321Cが321Cとして示されている。なお、321Bと321Cの径方向rの長さはR1としている。さらに、
図23には、比較例として、例えば実施の形態1の領域32のような切り欠き部を有さない構成の場合の結果も示されている。
【0109】
図23からわかるように、切り欠き部321の面積が大きい程、蛍光体層12の温度低減効果があることがわかる。また、点線囲いに含まれる蛍光体層12の温度低減の効果(結果)を比較すると次のようなこともわかる。すなわち、径方向rの長さが同一の半円切り欠き形状であっても、領域32Dの辺における中央部よりも放熱部材30Dの外周縁寄りまたは回転軸J寄りに切り欠き部が形成される方が、蛍光体層12の温度低減の効果があることがわかる。以下、回転軸J寄りに形成された切り欠き部321Bが中央部に形成された切り欠き部321と比較して、蛍光体層12の温度低減の効果が高い理由を考察したので説明する。
【0110】
図24は、放熱部材30Dの回転軸J寄りに形成された切り欠き部321Bを有する放熱部材30Dのフィン31近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
図24には、切り欠き部321Bから流れ込む流体(空気)の流れの様子が流線で示されている。
【0111】
図24からわかるように、回転軸J寄りに形成された切り欠き部321Bから流れ込む流体(空気)は、フィン31に当たり、回転軸J側から放熱部材30Dの外周縁に向かって流れ出る。そして、流体がフィン31と接触を繰り返し、放熱部材30Dの外周縁へ流れ出ている様子がわかる。つまり、回転軸J寄りに形成された切り欠き部321Bは、中央部に形成された切り欠き部321と比較して、より多くの流体をより長い時間をかけてフィン31と接触させることができるので、流体にフィン31との熱交換をより多く行わせることができる。このため、回転軸J寄りに形成された切り欠き部321Bは、中央部に形成された切り欠き部321と比較して、蛍光体層12の温度低減効果が高くなり、放熱性が向上すると考えられる。
【0112】
なお、外周縁寄りに形成された切り欠き部321Cが、中央部に形成された切り欠き部321と比較して、蛍光体層12の温度低減の効果が高い理由に対しても考察したので説明する。
【0113】
まず、軸回転体である実施の形態3の蛍光体ホイール1、1Aは、外周縁に近い程その速度は速くなる。このため、外周縁寄りに形成された切り欠き部321Cから流れ込む流体は、中央部に形成された切り欠き部321から流れ込む流体よりも速い。ここで、流速が速いと、流速が遅い場合と比較してフィン31との熱交換が促進され、放熱性が向上すると考えられる。
【0114】
このように、外周縁寄りに形成された切り欠き部321Cを有する領域32Dから流れ込む流体の流速に起因して、外周縁寄りに形成された切り欠き部321Cは中央部に形成された切り欠き部321と比較して蛍光体層12の温度低減効果が高くなるので放熱性が向上すると考えられる。
【0115】
(実施の形態4)
上記の実施の形態1~3では、蛍光体ホイール1、1Aの放熱性能を向上させるための構成等について説明した。以下の実施の形態4では、風切り騒音を抑制できる蛍光体ホイール1、1Aの構成について説明する。以下では、実施の形態1で説明した放熱部材30と異なる点を中心に説明する。
【0116】
[放熱部材30E]
図25は、実施の形態4に係る放熱部材30Eを第1主面側から見たときの正面斜視図である。
図26は、
図25の放熱部材30E及び基板11の一部拡大側面図である。
図26には、例えば
図25の点線丸囲いの部分の放熱部材30Eが示されている。なお、
図5及び
図6等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0117】
図25及び
図26に示す放熱部材30Eは、
図5及び
図6に示される放熱部材30に対して、外周縁端部が基板11の方向にR曲げされている点で異なる。
【0118】
放熱部材30Eは、実施の形態1と同様に、板材からなり、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される。また、放熱部材30Eは、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、放熱部材30Eの平面視における形状は、円形である。放熱部材30Eは、
図25に示すように、複数のフィン31と、領域32と、突出部34とを有し、開口33が設けられている。放熱部材30Eのサイズ及び材質などは、実施の形態1で説明した通りであるためここでの説明を省略する。
【0119】
本実施の形態では、放熱部材30Eは、さらに、放熱部材30Eから視て複数のフィン31が切り起こされる向きと同じ向きに放熱部材30Eの外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部301を有する。
【0120】
<曲げ端部301>
曲げ端部301は、放熱部材30Eの一部を用いて形成される。より具体的には、曲げ端部301は、例えば
図25に示すように、放熱部材30Eの外周縁端部を、放熱部材30Eから視て複数のフィン31が切り起こされる向きと同じ向きに曲げ加工されて形成される。
【0121】
放熱部材30Eを径方向rに沿う直線で切断したときの曲げ端部301の形状は、例えば
図26に示すように、R曲げ形状である。
【0122】
ここで、
図27を用いて曲げ端部301の寸法感とR曲げ形状とについて説明する。
【0123】
図27は、
図26に示す曲げ端部301付近の一部拡大斜視図である。
図28は、
図26に示す曲げ端部301と異なる寸法の曲げ端部301A付近の一部拡大斜視図である。
【0124】
放熱部材30Eの外径を例えばφ70mm~80m程度とした場合、
図27に示す曲げ端部301は、長さと高さとが1.0mm程度であり、鈍角の曲げ角度でR曲げされている。なお、曲げ端部301のR曲げの寸法感は、この場合に限らない。例えば
図28に示すように、長さが0.5mm程度で高さが1mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度でR曲げされている曲げ端部301Aであってもよい。図示しないが、同様に、長さが1.5mm程度で高さが1.0mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度でR曲げされている曲げ端部であってもよい。
【0125】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1、1Aでは、放熱部材30Eの外周縁端部が放熱部材30Eから視て複数のフィン31が切り起こされる向きと同じ向きに鈍角の曲げ角度でR加工された曲げ端部301、301Aを有する。これにより、風切り騒音を抑制できる。
【0126】
ここで、以上のように構成された本実施の形態に係る蛍光体ホイール1、1Aの実機を試作して検証した検証結果について説明する。
【0127】
図29は、実施の形態4に係る蛍光体ホイール1、1Aの実機試作品に対する検証結果を示す図である。
図29には、所定時間動作させたときの蛍光体層12の温度上昇と、所定時間動作中の騒音レベルとが検証結果として示されている。なお、
図29には、比較例として、曲げ端部301を有さない構成すなわち実施の形態1に係る蛍光体ホイール1、1Aの実機試作品に対する検証結果も併せて示されている。
【0128】
図29から、実施の形態4に係る蛍光体ホイール1、1Aの蛍光体層12の温度上昇と、比較例に係る蛍光体ホイール1、1Aの蛍光体層12の温度上昇と差がないのがわかる。一方、実施の形態4に係る蛍光体ホイール1、1Aの騒音レベルは、比較例に係る蛍光体ホイール1、1Aの騒音レベルより低いことが確認できる。
【0129】
図30Aは、比較例に係る放熱部材30の外周縁端部近傍の相対速度の解析結果を示す図である。
図30Bは、実施の形態4に係る放熱部材30Eの曲げ端部301近傍の流体の相対速度の解析結果を示す図である。ここで、
図30Aにおける相対速度は、基板11の表面近傍と、放熱部材30の外周縁端部近傍とにおける流体の相対速度である。
図30Bにおける相対速度は、基板11の表面近傍と、放熱部材30Eの曲げ端部301近傍とにおける流体の相対速度である。
【0130】
例えば
図30Aの点線領域aに示すように、比較例では、基板11と放熱部材30とが対向する領域において、基板11の表面近傍で流速の相対速度の高い部分がみられる。さらに当該領域では流速の相対速度も一様ではないことから、当該流域で渦の発生が想定される。この渦が騒音発生のひとつの要因と考えられる。
【0131】
一方、例えば
図30Bの点線領域bに示すように、本実施の形態では、基板11と放熱部材30Eとが対向する領域において、流速の相対速度の高い部分は見られない。比較例と本実施の形態とから、放熱部材30Eの外周縁端部を曲げ端部301となるように加工することにより当該領域での流速の相対速度が均一化され、当該領域の乱流渦発生が減少していると想定される。よって騒音の低減をもたらすと考えられる。つまり、本実施の形態では、放熱部材30Eの外周縁端部が放熱部材30Eから視て複数のフィン31が切り起こされる向きと同じ向きに外周縁端部をR曲げ加工して曲げ端部301、301Aが形成される。これにより、比較例で見られる基板11表面近傍での流速の相対速度の変化を緩和できるので、比較例よりも騒音レベルが低減すると考えられる。
【0132】
よって、実施の形態4に係る蛍光体ホイール1、1Aの騒音レベルは、比較例に係る蛍光体ホイール1、1Aの騒音レベルより低いという
図29に示される検証結果が得られると考えられる。
【0133】
(変形例1)
なお、放熱部材30Eに形成される曲げ端部の形状は、
図27及び
図28で示した例に限らない。以下、放熱部材30Eに形成される曲げ端部の形状のバリエーションについて
図31~
図33を用いて説明する。
【0134】
図31及び
図32は、実施の形態4に係る放熱部材30Eに形成される曲げ端部の形状の別の例を示す図である。
図31には、変形例1に係る曲げ端部301Bを有する放熱部材30E及び基板11の一部拡大側面図が示されており、
図32には
図31に示す曲げ端部301B付近の一部拡大斜視図が示されている。
図33は、
図32に示す曲げ端部301Bと異なる寸法の曲げ端部301C付近の一部拡大斜視図である。
【0135】
より具体的には、
図31及び
図32に示すように、放熱部材30Eを径方向rに沿う直線で切断したときの曲げ端部301Bの形状は、度曲げ形状であってもよい。
【0136】
放熱部材30Eの外径を例えばφ70mm~80m程度とした場合、
図32に示す曲げ端部301Bは、長さと高さとが1.0mm程度であり、鈍角の曲げ角度で度曲げ(C曲げとも称する)されている。なお、曲げ端部301Bの度曲げの寸法感は、この場合に限らない。例えば
図33に示すように、長さが1.5mm程度で高さが1mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度で度曲げされている曲げ端部301Cであってもよい。図示しないが、同様に、長さが1.0mm程度で高さが0.5mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度で度曲げされている曲げ端部であってもよい。
【0137】
図34は、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1、1Aの蛍光体層12の温度低減効果の解析結果を示す図である。
図34に示される結果は、熱流体シミュレーションから得た解析結果である。この熱流体シミュレーションでは、蛍光体ホイール1、1Aにおける基板11と放熱部材30、30Eとの距離を2mmとし、放熱部材30、30Eの外径を例えばφ70mm程度、突出部34の接触面の径φを37mm、フィン31の短尺方向の長さを1.7mm程度としている。
【0138】
また、
図34に示されるRは外周縁端部が基板11の方向にR曲げされていること意味し、
図34に示されるCは外周縁端部が基板11の方向に度曲げ(C曲げ)されていること意味する。また、
図34に示されるRまたはCの後には、外周縁端部の長さと高さとが例えば1*1のように示されている。
【0139】
より具体的には、
図34において、「R1*1」は、例えば
図27に示される長さが1.0mm程度で高さが1.0mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度でR曲げされている曲げ端部301を放熱部材30Eが有する場合を示している。「R1*0.5」は、例えば
図28に示される長さが1.0mm程度で高さが0.5mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度でR曲げされている曲げ端部301Aを放熱部材30Eが有する場合を示している。同様に、「R1.5*1」は、長さが1.5mm程度で高さが1.0mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度でR曲げされている曲げ端部を放熱部材30Eが有する場合を示している。「R2*2」は、長さが2.0mm程度で高さが2.0mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度でR曲げされている曲げ端部を放熱部材30Eが有する場合を示している。「R2*1.5」は、長さが2.0mm程度で高さが1.5mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度でR曲げされている曲げ端部を放熱部材30Eが有する場合を示している。
【0140】
また、
図34において、「C1*1」は、例えば
図32に示される長さが1.0mm程度で高さが1.0mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度で度曲げ(C曲げ)されている曲げ端部301Bを放熱部材30Eが有する場合を示している。「C1.5*1」は、例えば
図33に示される長さが1.5mm程度で高さが1.0mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度で度曲げ(C曲げ)されている曲げ端部301Cを放熱部材30Eが有する場合を示している。また、「C1*0.5」は、例えば
図32に示される長さが1.0mm程度で高さが0.5mm程度、かつ、鈍角の曲げ角度で度曲げ(C曲げ)されている曲げ端部を放熱部材30Eが有する場合を示している。
【0141】
さらに、
図34には、比較例として、例えば実施の形態1の放熱部材30のような曲げ端部を有さない構成の場合の結果も示されている。
【0142】
図34の「R2*2」からわかるように、曲げ端部の高さが2mm程度で放熱部材30Eと基板11との隙間をなくしてしまうと、蛍光体層12の温度低減がマイナスすなわち放熱効果をなくしてしまうのがわかる。また、
図34の「R2*1.5」から、曲げ端部の高さが1.5mm程度以上だと、蛍光体層12の温度低減がマイナスすなわち放熱効果を損なうのがわかる。
【0143】
一方で、
図34の「R1*1」、「R1*0.5」、「R1.5*1」、「C1*1」、「C1.5*1」及び「C1*0.5」は、蛍光体層12の温度低減の効果に差はあまりないものの、比較例よりも効果があることがわかる。
【0144】
なお、
図34のうち、比較例、「R1*1」及び「C1.5*1」の騒音レベルを検証した。この検証において、流体解析から得られる二乗平均圧力の時間微分の値を活用した。
【0145】
ところで、本開示に係る蛍光体ホイール1、1Aから生じる騒音の主たる要因は乱流騒音である。乱流騒音とは、流れ場に存在する乱流渦によって生じる音である。その渦どおしが衝突し、崩壊するタイミングで音が発生する。本開示に係る蛍光体ホイール1、1Aは、軸回転体として高速に回転するため、乱流渦が多数存在する。
【0146】
また、流速が音速に比べて十分遅い低マッハ数流れにおいて、物体周辺に生ずる渦による音圧はLighthill-Curleの理論により物体表面圧力の時間微分により計算できることが広く知られている。したがって、Lighthill-Curleの理論に基づき、騒音源の大小を示すひとつの指標として、圧力の時間微分を二乗平均した値を活用することができる。そこで、蛍光体ホイール1、1Aが回転する際に生じる流体騒音の大小を見極めるためのひとつの指標として、流体解析から得られる二乗平均圧力の時間微分の値を活用した。
【0147】
また、この二乗平均した圧力の時間微分は、流体解析によって導出できるので、蛍光体ホイール1、1Aの回転動作によって変化する蛍光体ホイール表面での圧力変動を数値化したものともいえる。なお、流体解析では,圧力の時間的な変動量を捉えるため過渡応答を計算し、その過渡応答計算によって得られる結果を考察する方法として時間平均をとった流れ場を評価する手法がよく用いられる。物体表面圧力を時間微分すると、値が正負に変動し、通常の平均では相殺して0(ゼロ)となってしまうため、二乗平均した値を用いる。これにより、時間的な正負の変動の大きさを1つのコンター図(等高線のような図)によって騒音レベルを評価(検証)することができる。
【0148】
図35は、
図34の比較例における二乗平均圧力の時間微分の値のコンター図である。
図36は、
図34の「R1*1」における二乗平均圧力の時間微分の値のコンター図である。すなわち、
図36には、曲げ端部301を放熱部材30Eが有する場合における二乗平均圧力の時間微分の値のコンター図が示されている。
図37は、
図34の「C1.5*1」における二乗平均圧力の時間微分の値のコンター図である。すなわち、
図37には、曲げ端部301Cを放熱部材30Eが有する場合における二乗平均圧力の時間微分の値のコンター図が示されている。
【0149】
図35と、
図36及び
図37とを比較すると、
図35に示す比較例の放熱部材30の外周縁端部の付近よりも、
図36または
図37に示す曲げ端部301または曲げ端部301Cを有する放熱部材30Eの外周縁端部の付近における二乗平均圧力の時間微分の値が、小さいのがわかる。これにより、
図35に示す比較例の放熱部材30の外周縁端部の付近よりも、
図36または
図37に示す曲げ端部301または曲げ端部301Cを有する放熱部材30Eの外周縁端部の付近の方が、乱流渦発生が減少していると言えるので、騒音の低減をもたらすと考えられる。
【0150】
よって、
図34の「R1*1」及び「C1.5*1」すなわち放熱部材30Eの外周縁端部は、放熱部材30Eの外周縁端部に曲げ端部301または曲げ端部301Cを形成することは、放熱効果を阻害することなく、低騒音化を図るために有効な手段であると言える。
【0151】
以上、本実施の形態によれば、放熱部材30Eの外周縁端部に曲げ端部を形成することで、蛍光体ホイール1、1Aの放熱性能を阻害せず、複数のフィン31により発生する風切り騒音を抑制することができる。
【0152】
(変形例2)
なお、放熱部材30Eに形成される曲げ端部の形状は、上述したR曲げ形状または度曲に限らず、Z曲げ形状であってもよい。
【0153】
図38及び
図39は、実施の形態4に係る放熱部材30Eに形成される曲げ端部の形状のさらに別の例を示す図である。
図38には、変形例2に係る曲げ端部301Dを有する放熱部材30E及び基板11の一部拡大側面図が示されており、
図39には
図38に示す曲げ端部301D付近の一部拡大斜視図が示されている。
図40は、
図39に示す曲げ端部301Dと異なる曲げ端部301D付近の一部拡大斜視図である。
【0154】
より具体的には、
図38及び
図39に示すように、放熱部材30Eを径方向rに沿う直線で切断したときの曲げ端部301Dの形状は、Z曲げ形状であってもよい。
【0155】
放熱部材30Eの外径を例えばφ70mm~80m程度とした場合、
図39に示す曲げ端部301Dは、長さL1と長さL2とが1.0mmで高さが2mm程度で、Z曲げされている。長さL1は、外周縁からの長さであり、長さL2は、曲げ端部301Dの立ち上がっている箇所の長さである。なお、曲げ端部301DのZ曲げされた箇所は、L字になっているがこの場合に限らない。例えば
図40に示すように、曲げ端部301DのZ曲げされた箇所は、R字であってもよい。なお、
図40に示される曲げ端部301Dの寸法感は、
図39に示される曲げ端部301Dと同じである。すなわち、
図40に示す曲げ端部301Dは、長さL1と長さL2とが1.0mmで高さが2mm程度で、Z曲げされていてもよい。
【0156】
(他の実施の形態等)
上述した実施の形態及び変形例は一例にすぎず、各種の変更、付加、省略等が可能であることは言うまでもない。
【0157】
また、上述した実施の形態及び変形例で示した構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示の範囲に含まれる。例えば、実施の形態4で示した曲げ端部を有する放熱部材に、さらに、実施の形態2で示した構成を加えてもよい。すなわち、実施の形態4で示した曲げ端部を有する放熱部材の突出部の周壁に貫通孔をさらに設けてもよい。また、例えば、実施の形態3で示した曲げ端部を有する放熱部材に、さらに、実施の形態2で示した構成を加えてもよい。すなわち、実施の形態4で示した曲げ端部を有する放熱部材の領域にさらに切り欠き部を形成してもよい。また、例えば、実施の形態4で示した曲げ端部を有する放熱部材に、さらに、実施の形態2及び3で示した構成を加えてもよい。すなわち、実施の形態4で示した曲げ端部を有する放熱部材の領域にさらに切り欠き部を形成し、当該放熱部材の突出部の周壁に貫通孔を設けてもよい。これらにより、風切り騒音を抑制できるだけでなく、放熱性をさらに向上することができる蛍光体ホイール1、1Aの構成を実現できる。
【0158】
また、その他、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。例えば、実施の形態及び変形例で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0159】
また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0160】
また、本開示は、さらに、以下のような蛍光体ホイールで構成される光源装置またはレーザプロジェクタも含まれる。
【0161】
すなわち、上述した実施の形態及び変形例で示した蛍光体ホイールと、レーザ光源などの励起光源と、励起光源からの出射光を蛍光体ホイールに導光する光学系を備える光源装置も本開示に含まれる。また、上述した実施の形態及び変形例で示した蛍光体ホイールと、蛍光体ホイールを回転させるモータと、蛍光体層にレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光源によって照射されたレーザ光に応じて蛍光体層から発せられる光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、光変調素子によって変調された光を投射する投射レンズとを備える投射型映像表示装置も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本開示の蛍光体ホイールは、反射型の蛍光体ホイールとして、レーザプロジェクタ、設備向け照明装置及び内視鏡などの光源等投写型映像表示装置などに適用可能である。
【符号の説明】
【0163】
1、1A 蛍光体ホイール
11 基板
12 蛍光体層
30、30B、30C、30D、30E、90 放熱部材
31 フィン
32、32D 領域
33 開口
34、34B、34C 突出部
35B、35C、95 貫通孔
40 モータ
41 調整板
301、301A、301B、301C、301D 曲げ端部
321、321A、321B、321C 切り欠き部
341 接触面
342 周壁