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  • 特許-乾燥・濃縮システムの運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】乾燥・濃縮システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/28 20060101AFI20231117BHJP
   F26B 21/02 20060101ALI20231117BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20231117BHJP
【FI】
B01D1/28 ZAB
F26B21/02
C02F11/13
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019218695
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021087908
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】八木 翼
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070886(JP,A)
【文献】特開2019-187090(JP,A)
【文献】特開2019-090579(JP,A)
【文献】特開2019-123284(JP,A)
【文献】特開平04-092715(JP,A)
【文献】特開平06-193579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00-1/08
B01D 1/00-8/00
F26B 1/00-25/22
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮性ガスが加熱媒体として供給される伝熱部を有する伝導伝熱乾燥・濃縮機と、
前記伝導伝熱乾燥・濃縮機からの排ガスと前記伝熱部からの凝縮液とが熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器から生ずる蒸気を吸込む圧縮機からなる乾燥・濃縮システムにおいて、
前記圧縮機の共振を生ずる回転速度に対して下限回転速度と上限回転速度が設定され、
前記圧縮機の吸込側の圧力に基づき圧縮機の回転速度が算出され、
該算出される回転速度が前記下限回転速度を越え且つ前記上限回転速度未満の範囲内のとき、該算出直前の回転速度が下限回転速度以下である場合は下限回転速度が圧縮機の回転速度として決定され、該算出直前の回転速度が上限回転速度以上である場合は上限回転速度が圧縮機の回転速度として決定される乾燥・濃縮システムの運転方法。
【請求項2】
前記請求項1において、
前記下限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに高温の凝縮性ガスが混合され、
前記上限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに非凝縮性ガスが混合される乾燥・濃縮システムの運転方法。
【請求項3】
凝縮性ガスが加熱媒体として供給される伝熱部を有する伝導伝熱乾燥・濃縮機と、
前記伝導伝熱乾燥・濃縮機からの排ガスと前記伝熱部からの凝縮液とが熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器から生ずる蒸気を吸込む圧縮機からなる乾燥・濃縮システムにおいて、
前記圧縮機の共振を生ずる回転速度に対して下限回転速度と上限回転速度が設定され、
前記圧縮機の吸込側の圧力に基づき圧縮機の回転速度が算出され、
該算出される回転速度が下限回転速度を越え且つ上限回転速度未満の範囲内であり、下限回転速度と上限回転速度の中間の中間回転速度との関係において、該算出される回転速度が該中間回転速度以下である場合は下限回転速度を圧縮機の回転速度として決定され、該算出される回転速度が該中間回転速度を越える場合は上限回転速度を圧縮機の回転速度として決定され
前記下限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに高温の凝縮性ガスが混合され、
前記上限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに非凝縮性ガスが混合される乾燥・濃縮システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮機を具える乾燥・濃縮システムにおいて、圧縮機の共振を抑制する運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物として、乾燥であれば下水汚泥等が挙げられ、濃縮であれば工場廃水などが挙げられる。被処理物は乾燥・濃縮機の伝熱部と接触し、伝熱部の加熱により被処理物から水分が蒸発する。該蒸発水分を含む排ガスが乾燥・濃縮機から排出される。排ガスは熱を保有しているため、熱交換器を用いて排ガスから熱回収が行なわれる。
乾燥・濃縮機の伝熱部には加熱のための熱源として加熱媒体が供給され、一例として高温高圧の水蒸気が用いられる。凝縮性ガスである該水蒸気は、前記被処理物を加熱した後凝縮してドレンとなり、ドレンは乾燥・濃縮機から排出され、前記熱交換器に供給される。該熱交換器では、ドレンは前記排ガスから回収された熱により再蒸発され、低圧の水蒸気となる。該低圧水蒸気は圧縮機により圧縮され、高温高圧の水蒸気となり、前記伝熱部に加熱媒体として供給される。この様な凝縮性ガスを加熱媒体として循環して利用される乾燥・濃縮システムが成り立つ。
【0003】
一般的な乾燥・濃縮設備であれば排ガスの熱は廃熱となり捨てられる。しかしながら
本乾燥・濃縮システムによれば、排ガスの熱は加熱媒体に回収されるため、高いエネルギー効率での運転が可能となる。該乾燥・濃縮システムに関る発明は、例えば特許文献1に示されている。尚特許文献1は本発明の出願人によるものである。
該乾燥・濃縮システムに用いられる圧縮機は、一般的にはインバータの運転周波数の設定値によりその回転速度が制御される。ここで圧縮機はある一定の回転速度において共振を生ずるため、共振時の著しい騒音や振動による悪影響を回避すべく、共振の起きない回転速度で運転される。
圧縮機の共振の影響を抑制する運転方法として、例えば特許文献2によれば、共振を生ずる回転速度で運転する状況の場合、共振を起こす回転速度よりも高い回転速度と低い回転速度の2値の間で時間分割して交互の回転速度で運転する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2017-220505
【文献】特開平6-193579公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献2の手段では、高い回転速度と低い回転速度の2値の間で交互に運転されるので、機械的には共振を起こす回転速度での運転が、短時間とはいえ生じざるをえない。
乾燥・濃縮システムは、乾燥・濃縮機内に一定量の乾燥・濃縮過程の被処理物が存在するため、例えば被処理物の供給量や物性が変化したとしても、物量や熱量等の状態量の変化は緩やかに生じる。そのため本システムに特許文献2の手段を用いて圧縮機の共振を抑制すると、2値の間で交互に運転させる制御が長時間継続し、先に述べた短時間の共振の発生頻度は非常に高いものとなり、好ましくない。加えて2値の間で交互に運転すれは圧縮機の吐出側では流体の脈流を生じ、これにより生じる振動が圧縮機の吐出側(下流側)の機器等に機械的な悪影響を及ぼす恐れが高く、またこれらの機器の制御に乱れも生じさせ易い。
本発明は上述の課題に対し、圧縮機の共振を生ずる回転速度を可能な限り回避する乾燥・濃縮システムの運転方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載の乾燥・濃縮システムの運転方法は、凝縮性ガスが加熱媒体として供給される伝熱部を有する伝導伝熱乾燥・濃縮機と、前記伝導伝熱乾燥・濃縮機からの排ガスと前記伝熱部からの凝縮液とが熱交換する熱交換器と、前記熱交換器から生ずる蒸気を吸込む圧縮機からなる乾燥・濃縮システムにおいて、前記圧縮機の共振を生ずる回転速度に対して下限回転速度と上限回転速度が設定され、前記圧縮機の吸込側の圧力に基づき圧縮機の回転速度が算出され、該算出される回転速度が前記下限回転速度を越え且つ前記上限回転速度未満の範囲内のとき、該算出直前の回転速度が下限回転速度以下である場合は下限回転速度が圧縮機の回転速度として決定され、該算出直前の回転速度が上限回転速度以上である場合は上限回転速度が圧縮機の回転速度として決定されることを特徴として成るものである。
【0007】
また、請求項2記載の乾燥・濃縮システムの運転方法は、前記要件に加え、前記下限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに高温の凝縮性ガスが混合され、前記上限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに非凝縮性ガスが混合されることを特徴として成るものである。
【0008】
更にまた請求項3記載の乾燥・濃縮システムの運転方法は、凝縮性ガスが加熱媒体として供給される伝熱部を有する伝導伝熱乾燥・濃縮機と、前記伝導伝熱乾燥・濃縮機からの排ガスと前記伝熱部からの凝縮液とが熱交換する熱交換器と、前記熱交換器から生ずる蒸気を吸込む圧縮機からなる乾燥・濃縮システムにおいて、前記圧縮機の共振を生ずる回転速度に対して下限回転速度と上限回転速度が設定され、前記圧縮機の吸込側の圧力に基づき圧縮機の回転速度が算出され、該算出される回転速度が下限回転速度を越え且つ上限回転速度未満の範囲内であり、下限回転速度と上限回転速度の中間の中間回転速度との関係において、該算出される回転速度が該中間回転速度以下である場合は下限回転速度を圧縮機の回転速度として決定され、該算出される回転速度が該中間回転速度を越える場合は上限回転速度を圧縮機の回転速度として決定され、前記下限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに高温の凝縮性ガスが混合され、前記上限回転速度を圧縮機の回転速度として決定される場合は前記排ガスに非凝縮性ガスが混合されることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、状態量の変化が緩やかな乾燥・濃縮システムにおいて、圧縮機の共振を生ずる回転速度を可能な限り回避する運転を行なうことができる。
【0010】
また請求項2記載の本発明によれば、以上に述べた凝縮性ガスまたは非凝縮性ガスを供給することにより、供給されない場合と比較し、算出される回転速度はより大きな値またはより小さな値となるため、下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内から外れるまでに要する時間を短縮することができる。
【0011】
更にまた請求項3記載の本発明によれば、状態量の変化が緩やかな乾燥・濃縮システムにおいて、圧縮機の共振を生ずる回転速度を可能な限り回避する運転を行なうことができる。そして、以上に述べた凝縮性ガスまたは非凝縮性ガスを供給することにより、供給されない場合と比較し、算出される回転速度はより大きな値またはより小さな値となるため、下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内から外れるまでに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の乾燥・濃縮システムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において本発明に係る乾燥・濃縮システムとその運転方法についての詳細を説明する。
【実施例
【0014】
図1は本発明における乾燥・濃縮システムDの系統図である。
乾燥・濃縮システムDは、主には乾燥・濃縮機1、集塵機2、ドレンタンク3、熱交換器4、圧縮機5、ヘッダ6、ヒータ7および補助ボイラ8から構成されている。尚、被処理物として液の濃縮を行なう場合であれば、集塵機2を具えなくても構わない。
乾燥・濃縮機1は伝導伝熱型連続乾燥・濃縮機であり、乾燥・濃縮機1の内部には回転する伝熱部が具えられている。伝熱部の内部には、被処理物を加熱するための加熱媒体である凝縮性ガスが一端側から供給され、他端側から凝縮したドレンとして排出され、ドレンタンク3に送られる。加熱媒体の一例として高温高圧の水蒸気が用いられる。ドレンタンク3からドレンは不図示のポンプにより圧送され、送液経路の途中に備えられた不図示の減圧弁を通過して熱交換器4に送られる。
被処理物の一例として下水汚泥により説明すれば、該下水汚泥は乾燥・濃縮機1の一端側から連続的に供給され、前記伝熱部の回転により一端側から他端側に移動されつつ、前記伝熱部と接触して受熱して水分が蒸発し、他端側から乾燥した乾燥品として連続的に排出される。被処理物として液が供給される場合、乾燥・濃縮機1から濃縮液を排出することができる。
乾燥・濃縮機1の前記伝熱部の上部の空間は不図示のファン等の排気装置により大気圧より若干低圧に維持される。該空間にはキャリアガスが供給され、該空間をキャリアガスが通過しつつ、被処理物から蒸発する水分を同伴して排ガスとして乾燥・濃縮機1の外部に排出される。キャリアガスの一例として過熱水蒸気が用いられる。
該排ガスは集塵機2により微粉を除去された後、熱交換器4に送られる。
熱交換器4の一例としてシェルアンドチューブ式の熱交換器4が用いられる。該熱交換器4はシェル、伝熱管、及び缶板等から構成され、シェル内部の伝熱管は垂直方向に適宜の間隔を空けて通常は多数本が配列され、それぞれの伝熱管の両端は共に上下の缶板に溶接されている。伝熱管の内部に前記排ガスが流入し、伝熱管の外部、すなわち熱交換器4のシェル、缶板および伝熱管とにより囲み形成された空間には前記ドレンタンク3からのドレンが供給される。ドレンは、該空間の上部まではドレンに満たされないように適宜の量に制御される。
該空間の上部と圧縮機5とはダクト経路により連通されている。圧縮機5は本実施例では不図示のインバータにより運転されるものであり、圧縮機5の運転により吸込側のダクト経路は低圧な状態となる。吸込側のダクト経路に具えられる不図示の圧力センサによりダクト経路の圧力が測定され(以後、測定圧力と称することがある)、該測定圧力が信号として不図示の制御部に入力される。該制御部では、制御部に事前に設定された設定圧力と前記測定圧力の差に基づき演算等の処理が行なわれる。該処理により圧縮機の回転速度が算出され、詳しくは後述する方法により、実際に圧縮機5を運転する回転速度が決定される。尚、本発明における制御部の一部が前記インバータである。
熱交換器4では、前記排ガスが伝熱管の内部に流入することで伝熱管の外部のドレンは加熱される。これによりドレンは蒸発し、圧縮機5に吸込まれ、高温高圧の水蒸気として圧縮機5から吐出される。
該高温高圧の水蒸気はヘッダ6に送られ、一部はヘッダ6から前記伝熱部に供給される。他の一部はヒータ7に送られ、該ヒータ7により過熱水蒸気となり、キャリアガスとして乾燥・濃縮機1に供給される。乾燥・濃縮システムDでの必要量を越える余剰の高温高圧の水蒸気は、ヘッダ6から乾燥・濃縮システムD以外の不図示のシステムに供給される。
補助ボイラ8はヘッダ6と連通し、ヘッダ6に高温高圧の水蒸気が供給される。乾燥・濃縮システムDの起動時等の水蒸気を必要とするときになどに供給が行なわれる。
以上に述べた様に乾燥・濃縮システムDは、連続運転時において凝縮性ガスが循環利用されるシステムである。
【0015】
次に圧縮機5の共振と回転速度について説明する。
圧縮機5の共振はある一定の回転速度で生じる。該回転速度は試験的な乾燥・濃縮運転などにより事前に把握される。
圧縮機5は一般的にはインバータにより駆動され、回転速度はインバータの運転周波数と対応関係にある。インバータのある一定の運転周波数で共振を生じることから共振周波数などと呼ばれ、これを避けた運転周波数で圧縮機の運転が行なわれる。
実際の運転においては、安全を見込み、共振を起こす回転速度よりも低い回転速度f1(以後、下限回転速度f1と称することがある)と高い回転速度f2(以後、上限回転速度f2と称することがある)を事前に定める。下限回転速度f1を越え、上限回転速度f2未満の範囲内(以後、下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内と称することがある)から外れた回転速度で圧縮機5は運転される。
圧縮機5の吸込側のダクト経路では、経路内の圧力は一定時間毎に測定され、都度これに基づき制御部内で回転速度を決定するための新たな算出処理等が繰り返される。これは被処理物の性状がしばしば変化するために必要とされる。性状の変化により乾燥・濃縮機1に供給される例えば下水汚泥量が変化し、乾燥・濃縮システムD内の物量と熱量のバランスが変化するからである。
算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内から外れた回転速度であるときは、該算出される回転速度が制御部内において圧縮機5の回転速度として決定され、圧縮機5は該回転速度で運転される。
算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内であるときは、該範囲内の回転速度とはならない様に制御部により回転速度が決定される。詳しくは以後の第一の実施例、第二の実施例及び第三の実施例により説明する。
【0016】
運転方法の第一の実施例について説明する。
算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内のときであり、該算出の直前の圧縮機5の回転速度が下限回転速度f1以下で運転されている場合、下限回転速度f1が回転速度として制御部により決定され、圧縮機5は下限回転速度f1で一定時間(以下、一定時間tmと称する)運転される。これ以降も、算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内から外れるまでは、下限回転速度f1で一定時間tmを時間間隔として圧縮機5の運転が続けられる。
算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内のときであり、該算出の直前の圧縮機5の回転速度が上限回転速度f2以上で運転されている場合、上限回転速度f2が回転速度として制御部により決定され、圧縮機5は上限回転速度f2で一定時間tmの間運転される。これ以降も、算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内から外れるまでは、上限回転速度f2で一定時間tmを時間間隔として圧縮機5の運転が続けられる。
【0017】
次に運転方法の第二の実施例について説明する。
尚、第一の実施例と同じ事項は説明を省略する場合がある。
ここでは下限回転速度f1と上限回転速度f2の中間の中間回転速度f3が制御部内に事前に設定されている。中間回転速度f3は、例えば圧縮機5の共振による振動の振幅が最大となる回転速度を設定することができる。あるいは下限回転速度f1と上限回転速度f2の値を足して2で除した回転速度を設定することでも構わない。
算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内となるときで、且つ、該算出される回転速度が中間回転速度f3以下である場合、下限回転速度f1が回転速度として制御部により決定され、圧縮機5は下限回転速度f1で一定時間(以下、一定時間tnと称する)運転される。該算出される回転速度が中間回転速度f3を越えている場合、制御部により上限回転速度f2が回転速度として決定され、圧縮機5は上限回転速度f2で一定時間tnの間運転される。
これ以降も、算出される回転速度が下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内であり、該算出される回転速度が中間回転速度f3以下であれば下限回転速度f1により、中間回転速度f3を越えていれば上限回転速度f2により、一定時間tnを時間間隔として圧縮機の運転が続けられる。
【0018】
次に運転方法の第三の実施例について説明する。
本第三の実施例は、第一の実施例または第二の実施例における制御と並行して行われることが可能である。尚、第一の実施例または第二の実施例と同じ事項は説明を省略する場合がある。
まず第一の実施例と並行して行われる場合について説明する。
制御部により下限回転速度f1が回転速度として決定される場合、熱交換器4の伝熱管の内部には排ガスとは別途に高温の凝縮性ガスが一定時間tmの間供給される。
これ以後も、制御部により下限回転速度f1が回転速度として決定される場合は高温の凝縮性ガスの供給が繰り返される。
高温の凝縮性ガスの一例として高温の水蒸気が用いられる。例えば補助ボイラ8の高温高圧の水蒸気が適宜に減圧されて用いられる。例えば排ガスの熱交換器4に至る経路の途中に高温の凝縮性ガスの供給口が設けられ、これにより排ガスと凝縮性ガスは混合され、熱交換器4に送られる。凝縮性ガスの供給経路にはその供給と停止が不図示の弁により行なわれる。該弁は制御部により制御される。
高温の凝縮性ガスが供給されることによりドレンの蒸発量は増加し、圧縮機の吸込側の圧力は上昇する。そのため凝縮性ガスが供給されない場合と比較し、制御部により算出される回転速度は、より高い値として算出される。
制御部により上限回転速度f2が回転速度として決定される場合、熱交換器4の伝熱管の内部には非凝縮性ガスが一定時間tmの間供給される。
これ以後も、制御部により上限回転速度f2が回転速度として制御部により決定される場合は非凝縮性ガスの供給が繰り返される。
非凝縮性ガスの一例として大気が用いられる。例えば排ガスの熱交換器4に至る経路の途中に非凝縮性ガスの供給口が設けられ、これにより排ガスと非凝縮性ガスは混合され、熱交換器4に送られる。非凝縮性ガスの供給経路にはその供給と停止が不図示の弁により行なわれる。該弁は制御部により制御される。
非凝縮性ガスが供給されることによりドレンの蒸発量は減少し、圧縮機の吸込側の圧力は降下する。そのため非凝縮性ガスが供給されない場合と比較し、制御部により算出される回転速度は、より低い値として算出される。
次に第二の実施例と並行して行われる場合について説明する。
制御部により下限回転速度f1が回転速度として決定される場合は熱交換器4の伝熱管の内部に高温の凝縮性ガスが一定時間tnの間供給され、上限回転速度f2を回転速度として決定される場合は熱交換器4の伝熱管の内部に非凝縮性ガスが一定時間tnの間供給される。
これ以後も、制御部により下限回転速度f1が回転速度として決定される場合は高温の凝縮性ガスの供給が一定時間tnを時間単位として繰り返され、制御部により上限回転速度f2が回転速度として決定される場合は非凝縮性ガスの供給が一定時間tnを時間単位として繰り返される。
高温の凝縮性ガスにはボイラ8からの水蒸気、非凝縮性ガスには大気を用いることができる。
以上に述べた凝縮性ガスまたは非凝縮性ガスを供給することにより、供給されない場合と比較し、算出される回転速度はより大きな値またはより小さな値となるため、下限回転速度f1から上限回転速度f2の範囲内から外れるまでに要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0019】
D 乾燥・濃縮システム
1 乾燥・濃縮機
2 集塵機
3 ドレンタンク
4 熱交換器
5 圧縮機
6 ヘッダ
7 ヒータ
8 補助ボイラ
図1