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  • 特許-排水処理システム及びその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】排水処理システム及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20231117BHJP
   C02F 3/00 20230101ALI20231117BHJP
【FI】
C02F3/12 A
C02F3/12 J
C02F3/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019129838
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021013892
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000133939
【氏名又は名称】テラル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左鴻 雅光
(72)【発明者】
【氏名】金子 順也
(72)【発明者】
【氏名】森永 紗英
(72)【発明者】
【氏名】西村 欣英
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-174960(JP,A)
【文献】米国特許第08221631(US,B1)
【文献】特開2006-247469(JP,A)
【文献】特開2017-064666(JP,A)
【文献】特開2012-179590(JP,A)
【文献】特表2006-502373(JP,A)
【文献】特開昭60-179196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00 - 3/34
B03B 3/00 - 5/00
G05B 1/00 - 1/11
G05B 6/00 - 6/05
G05B 9/00 - 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を処理する排水処理槽、前記排水処理槽内に空気を送るブロワ、及び前記ブロワの動作を制御する制御部を有する排水処理装置と、
前記排水処理槽内に配置されて前記排水処理槽内の排水の状態を検出するセンサを有する検出装置と、
前記センサが検出した検出値に対応した無線信号を前記制御部に無線送信する送信部を有する無線装置と、
を備え、
前記排水処理装置は、前記排水処理槽の内側と外側とを連通する臭突管を有し、
前記検出装置は、前記排水処理槽の外側に配置されて前記検出値を前記検出値に対応した変換信号に変換する変換器、及び前記臭突管に敷設され一端が前記センサに電気的に接続されて他端が前記変換器に電気的に接続された信号線を有し、
前記送信部は、前記変換信号に対応した前記無線信号を前記制御部に無線送信することを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記センサは、前記排水処理槽内に配置されて前記排水処理槽内の排水の溶存酸素量を検出することを特徴とする請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記排水処理システムは、ディスポーザで粉砕した生ごみを前記排水とともに処理するものであって、
前記排水処理槽で処理した処理水は公共下水道及び集合住宅に設置された浄化槽の何れかへ排出されることを特徴とする請求項1から2までのいずれか1項に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記排水処理装置は、前記排水処理槽が地下に配置され、前記制御部が地上に配置されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の排水処理システム。
【請求項5】
排水を処理する排水処理槽、前記排水処理槽内に空気を送るブロワ、及び前記ブロワの動作を制御する制御部を有する排水処理装置と、
前記排水処理槽内に配置されて前記排水処理槽内の排水の状態を検出するセンサを有する検出装置と、
前記センサが検出した検出値に対応した無線信号を前記制御部に無線送信する送信部を有する無線装置と、
を備え、
記制御部は、前記無線信号が正常状態である場合、前記ブロワの状態を前記無線信号に基づいて稼働させる第1稼働状態にし、前記無線信号が非正常状態である場合、前記ブロワの状態を前記無線信号によらず稼働する第2稼働状態にすることを特徴とする排水処理システム。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の排水処理システムの施工方法であって、
既に設置された前記排水処理装置に前記検出装置を取り付ける取付工程を備えることを特徴とする排水処理システム の施工方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理システム及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスポーザによって粉砕された生ごみを処理する排水処理槽を備えた排水処理システムが開示されている。この排水処理システムは、好気性微生物を利用して生ごみを処理する。この排水処理システムは好気性微生物を良好に活動させるために、複数の送風機(ブロワ)を用いて排水処理槽内の生ごみ及び排水に対して曝気・攪拌を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-34601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような排水処理システムは、排水処理槽内の生ごみ及び排水の量(濃度)が少なくても、その量を考慮することなく送風機が常に稼働した状態にされる場合が多い。つまり、排水処理槽内における生ごみ及び排水の量が少ない場合、排水処理槽内における生ごみ及び排水に対して過剰に曝気・攪拌をすることになるため、処理水の水質が悪化したり、無駄に電力を消費する状況が発生したりし得る。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、排水を良好に処理することができる排水処理システム及びその施工方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の排水処理システムは、排水を処理する排水処理槽、前記排水処理槽内に空気を送るブロワ、及び前記ブロワの動作を制御する制御部を有する排水処理装置と、前記排水処理槽内に配置されて前記排水処理槽内の排水の状態を検出するセンサを有する検出装置と、前記センサが検出した検出値に対応した無線信号を前記制御部に無線送信する送信部を有する無線装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
第2発明の排水処理システムの施工方法は、第1発明の排水処理システムの施工方法であって、既に設置された前記排水処理装置に前記検出装置を取り付ける取付工程を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の排水処理システムの概略図である。
図2図2は、実施例1の排水処理システムの好気担体槽内の生ごみ及び排水における溶存酸素量の時間的変化を示すグラフ、及び各ブロワの稼働状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施例1>
本発明の排水処理システムは、主としてマンション等の集合住宅において、各住戸のキッチンに設置されているディスポーザで粉砕された生ごみ(以下単に生ごみともいう)を排水と共に専用の配管を用いて流下させて集合住宅の敷地内に設置した排水処理槽で処理するものである。排水処理槽では好気性微生物によって生ごみの処理がなされる。このため、ブロワによって排水処理槽内の生ごみ及び排水に向けて24時間連続で酸素の供給を行い、排水処理槽内の生ごみ及び排水に対して曝気・攪拌を施す。排水処理槽で処理した処理水は公共下水道及び集合住宅に設置された浄化槽の何れかへ排出する。
【0010】
〔排水処理システムの全体構成〕
排水処理システム100は、図1に示すように、排水処理装置10、検出装置30、及び無線装置50を備えている。排水処理装置10は、排水処理槽11、臭突管12、3台のブロワ13A,13B,13C、及び制御部14を有している。検出装置30は、センサ31、変換器32、及び信号線33を有している。無線装置50は、送信部51、及び受信部52を有している。
【0011】
〔排水処理装置の構成〕
排水処理槽11は、例えば、集合住宅の敷地内の地下に埋設される。排水処理槽11は生ごみ及び排水を処理する。排水処理槽11は、内部を複数の仕切壁11A,11B,11C,11Dによって仕切ることによって、流入ポンプ槽11E、無機分離槽11F、好気担体槽11G、分離槽11H、及び放流ポンプ槽11Jが形成されている。仕切壁11Aの上端の上下方向の位置は、仕切壁11B,11C,11Dよりも高い。排水処理槽11の流入ポンプ槽11E側に位置する側壁には生ごみ及び排水が流入する流入口11Kが形成されている。排水処理槽11の放流ポンプ槽11J側に位置する側壁には処理水が流出する流出口11Lが形成されている。排水処理槽11の上壁には内部を点検する際に用いる3つの点検口11Mが形成されている。点検口11Mの上端は、地上面Gとほぼ同じ高さにされており、マンホールM1で閉鎖されている。
【0012】
流入ポンプ槽11Eの下端部には第1ポンプ11Nが設置されている。第1ポンプ11Nには、第1ポンプ11Nによって吸い込まれた流入ポンプ槽11Eに貯留した生ごみ及び排水を無機分離槽11Fに搬送する第1流通路11Pが設けられている。第1ポンプ11Nから離れた側の第1流通路11Pの端部は仕切壁11Aの上端を跨いで無機分離槽11Fに垂下するように配置されている。
【0013】
放流ポンプ槽11Jの下端部には第2ポンプ11Qが設置されている。第2ポンプ11Qには、第2ポンプ11Qによって吸い込まれた放流ポンプ槽11Jに流入した処理水を流出口11Lに搬送する第2流通路11Rが設けられている。
【0014】
排水処理槽11には供給路11Sが設けられている。供給路11Sは後述するブロワ13A,13B,13Cから供給された空気を排水処理槽11内の生ごみ及び排水に送り込み、生ごみ及び排水に対して曝気・攪拌を施すものである。供給路11Sの一端部にはブロワ13A,13B,13Cが接続されている。供給路11Sの他端部は排水処理槽11内の上端部に横方向に伸びて配置されている。供給路11Sの排水処理槽11内に位置する他端部からは、流入ポンプ槽11E、無機分離槽11F、好気担体槽11G、及び放流ポンプ槽11Jのそれぞれの下端部まで分岐路11Tが伸びている。各分岐路11Tの下端にはブロワ13A,13B,13Cから供給された空気を噴出する噴出口11Uが設けられている。
【0015】
臭突管12は筒状をなして横方向に伸びて形成されている。臭突管12は地上面Gと排水処理槽11の上壁との間に配置されている。臭突管12の外周面には臭突管12内と排水処理槽11内とを連通する連通管12Aが連結されている。臭突管12の一端は後述する機械室Rに連通している。臭突管12の他端は蓋12Bによって閉鎖されている。臭突管12は排水処理槽11の内側と外側とを連通する。
【0016】
3台のブロワ13A,13B,13Cは、排水処理槽11が埋設された近傍の地下に形成された機械室R内に設置されている。これらブロワ13A,13B,13Cは供給路11S、分岐路11T及び噴出口11Uを介して排水処理槽11内に空気を送る。機械室Rの上端には地上と連通する出入口Dが形成されている。出入口Dの上端はマンホールM2で閉鎖されている。
【0017】
制御部14は機械室Rから所定の距離を離れた位置であって、地上面Gの上側に設けられた収納箱Bに収納されている。制御部14はブロワ13A,13B,13Cの動作を制御することができる。制御部14は例えばシーケンスを制御する機器を主体として構成されており、PLC(Programmable Logic Controller)等の機器を有している。制御部14と機械室R内に配置されたブロワ13A,13B,13Cとは、地下に埋設された配線用経路W内に敷設された電線(図示せず)を介して電気的に接続されている。制御部14は地上に設置されており、これにより、制御部14が雨等で水没する機会を減らすことができ、ブロワ13A,13B,13Cの制御を継続することができる。
【0018】
〔検出装置の構成〕
センサ31は、例えば、公知の蛍光式の溶存酸素センサ(DOセンサ)等が用いられる。センサ31は排水処理槽11の好気担体槽11G内に配置されている。センサ31は好気担体槽11G内の排水における溶存酸素量を検出することができる。つまり、センサ31は排水処理槽11内の排水の状態を検出する。好気担体槽11Gにおけるセンサ31を配置する位置は無機分離槽11Fに近い位置が好ましい。
【0019】
信号線33はセンサ31と後述する変換器32とを電気的に接続する。信号線33の一端は好気担体槽11G内に配置されたセンサ31に電気的に接続されている。信号線33は連通管12A及び臭突管12に敷設されている。信号線33の他端は排水処理槽11の外側である機械室R内に配置された後述する変換器32に電気的に接続されている。
【0020】
変換器32は機械室R内に配置されている。変換器32はセンサ31が検出した溶存酸素量の検出値をこの検出値に対応した変換信号である電流値に変換する機能を有する。変換器32には機械室R内に設けられたコンセントから電力が供給されている(図示せず。)。
【0021】
〔無線装置の構成〕
送信部51は、機械室R内に配置され、変換器32に電気的に接続されている。送信部51は変換器32で変換された電流値(変換信号)に対応する無線信号を制御部14に電気的に接続された受信部52に向けて無線送信する機能を有する。送信部51には機械室R内に設けられたコンセントから電力が供給されている(図示せず。)。
【0022】
受信部52は制御部14に電気的に接続されている。受信部52は変換器32に電気的に接続された送信部51からの無線信号を受信することができる。受信部52は収納箱B内に設けられた電源(図示せず)と電気的に接続されて電力が供給されている。受信部52と送信部51との無線通信には、例えば、特定小電力無線、LPWA、LTE、及び携帯無線等の電波による通信機の何れかが用いられ得る。こうして排水処理システム100が構成されている。
【0023】
〔検出装置を取り付ける取付工程の説明〕
マンション等の集合住宅に既に設置された排水処理装置10にセンサ31を後から取り付けようとしても、センサ31と制御部14とを直接的に信号線33で電気的に接続することは困難である。具体的には、センサ31と制御部14とを接続する信号線33を収納箱Bから機械室Rの間の配線用経路Wに新たに敷設することは困難である。さらに、集合住宅が有する駐車場の地下に排水処理装置10が埋設されている場合において信号線33を新たに埋設する工事を実施することも困難である。具体的には、こうした工事を実施するにはマンション等の集合住宅の住民に対して駐車場の利用を制限することになる可能性があるためである。このため、本発明の発明者らは既に設置された排水処理装置10に検出装置30及び無線装置50を容易に取り付ける取付工程を備えた排水処理システム100の施工方法を見出した。
【0024】
先ず、センサ31に信号線33の一端を電気的に接続し、好気担体槽11G内に設置する。具体的には、排水処理槽11の点検口11Mを介して信号線33の一端が電気的に接続されたセンサ31を好気担体槽11G内に設置する。そして、機械室R内に変換器32を設置する。
【0025】
次に、臭突管12及び連通管12Aに信号線33を敷設する。具体的には、公知の高圧洗浄機等を用いて信号線33を臭突管12及び連通管12Aに敷設する。例えば、排水処理槽11側において、センサ31に信号線33の一端を電気的に接続しておき、信号線33の他端部側を高圧洗浄機のノズルと共に連通管12Aを介して臭突管12に挿入する。そして、高圧洗浄機から臭突管12の内側で洗浄水を噴射する。これにより、信号線33の他端部は洗浄水の勢いによって臭突管12に敷設されて機械室R内に到達する。こうして、信号線33の他端部を臭突管12から機械室R内に配置する。そして、信号線33の他端を機械室R内に設置された変換器32に電気的に接続する。そして、変換器32に送信部51を電気的に接続する。そして、機械室R内に設けられたコンセント(図示せず)から変換器32及び送信部51に電力を供給する。そして、収納箱Bに収納された制御部14に受信部52を電気的に接続する。そして、収納箱B内に設けられた電源(図示せず)と受信部52とを電気的に接続して受信部52に電力を供給する。こうして、既に設置された排水処理装置10に検出装置30を取り付ける取付工程が終了する。
【0026】
〔排水処理システムの動作〕
次に、排水処理システム100における動作の一例について図1を参照しつつ説明する。
各ブロワ13A,13B,13Cは制御部14によって動作した状態にされている。これにより、供給路11S、各分岐路11T及び各噴出口11Uを介して、流入ポンプ槽11E、無機分離槽11F、好気担体槽11G、及び放流ポンプ槽11Jのそれぞれの下端部に空気が供給され、各槽に貯留された生ごみ及び排水に対して曝気・攪拌を施す。
【0027】
次に、ディスポーザによって破砕された生ごみ及び排水が流入口11Kを介して流入ポンプ槽11Eに流入する。そして、第1ポンプ11N及び第1流通路11Pを介して、生ごみ及び排水が流入ポンプ槽11Eから無機分離槽11Fに搬送される。無機分離槽11Fでは魚の骨や貝殻等の比重が比較的大きい生ごみを沈殿させる。沈殿した比重が比較的大きい生ごみは点検口11Mを介して定期的に汲み上げられて処分される。
【0028】
次に、無機分離槽11Fにおいて沈殿しなかった生ごみ及び排水は好気担体槽11Gに流入する。例えば、無機分離槽11Fと好気担体槽11Gとを仕切る仕切壁11Bの上端部に形成された貫通孔を介して無機分離槽11Fにおいて沈殿しなかった生ごみ及び排水が好気担体槽11Gに流入する。好気担体槽11Gでは、無機分離槽11Fにおいて沈殿しなかった生ごみが好気性微生物によって分解される。
【0029】
好気担体槽11Gに設置されたセンサ31は好気担体槽11Gにおける排水の溶存酸素量の値を常に検出している。そして、センサ31によって検出された溶存酸素量の検出値がセンサ31から出力され、信号線33を介して変換器32に入力される。変換器32では入力された溶存酸素量の検出値が、この検出値に対応した電流値(変換信号)に変換される。そして、変換器32から送信部51へ電流値が変換信号として出力される。そして、送信部51は受信部52へ変換信号に対応した無線信号を無線送信する。そして、受信部52は無線信号を受信し、この信号を制御部14に出力する。制御部14には受信部52から無線信号が常に入力される。無線信号は変換信号に対応し、変換信号はセンサ31が検出した溶存酸素量の検出値に対応している。つまり、送信部51はセンサ31が検出した溶存酸素量の検出値に対応した無線信号を制御部14に無線送信する。制御部14は無線装置50を介して溶存酸素量の検出値に対応した無線信号を受信する。制御部14は無線信号を受信することによって好気担体槽11Gにおける排水の溶存酸素量の値を間接的に把握することができる。
【0030】
次に、好気担体槽11Gにおいて分解された生ごみ及び排水が分離槽11Hに流入する。例えば、好気担体槽11Gと分離槽11Hとを仕切る仕切壁11Cの上端部に設けられた貫通孔を介して好気担体槽11Gにおいて分解された生ごみ及び排水が分離槽11Hに流入する。分離槽11Hでは好気担体槽11Gにおいて分解された生ごみが沈殿する。分離槽11Hの上部には好気担体槽11Gにおいて分解された生ごみが沈殿することによって処理水(上澄水)が生成される。
【0031】
次に、分離槽11Hから放流ポンプ槽11Jに処理水が流入する。具体的には、分離槽11Hと放流ポンプ槽11Jとを仕切る仕切壁11Dの上端を乗り越える(オーバーフローする)ように分離槽11Hの上部に生成された処理水が放流ポンプ槽11Jに流入する。そして、第2ポンプ11Q、第2流通路11R及び流出口11Lを介して、処理水が放流ポンプ槽11Jから外部に排出される。
【0032】
〔制御部における動作〕
次に、制御部14における動作の一例を説明する。
制御部14は無線信号が正常状態であるか、非正常状態であるかを把握し得る構成とされている。例えば、制御部14は無線信号の強度が所定の閾値以上である場合に正常状態と判別し、所定の閾値未満である場合に非正常状態であると判別する。制御部14は無線信号が正常状態であると判別すると、ブロワ13A,13B,13Cの稼働状態を無線信号に基づいて稼働させる第1稼働状態にする。ブロワ13A,13B,13Cが第1稼働状態であるとき、制御部14は、受信した無線信号に応じてブロワ13A,13B,13Cのそれぞれの動作を個別に制御して、少なくとも1台のブロワが常に稼働した状態にする。
【0033】
これに対して、制御部14は無線信号が非正常状態であると判別するとブロワ13A,13B,13Cの稼働状態を無線信号によらず稼働する第2稼働状態にする。ブロワ13A,13B,13Cが第2稼働状態であるとき、制御部14は全てのブロワ13A,13B,13Cが稼働した状態にする。
【0034】
第1稼働状態の動作の一例を図2を参照しつつ説明する。図2の上側に示すグラフのように、好気担体槽11G内の溶存酸素量の値が変化した場合における制御部14によるブロワ13A,13B,13Cの動作の制御について説明する。
【0035】
制御部14は各ブロワ13A,13B,13Cのそれぞれにおける稼働時間を積算して記憶し得る構成とされている。制御部14は溶存酸素量の検出値が上昇して所定の閾値に到達した時点において稼働中のブロワの内、積算した稼働時間(以下、積算稼働時間ともいう)が最も長いブロワの稼働を停止させるようにブロワ13A,13B,13Cの動作を制御する。
【0036】
具体的には、図2の下側に示すタイミングチャートのように、時刻T1より前、すなわち、溶存酸素量の値が基準値+1より小さいとき、ブロワ13A,13B,13Cが全て稼働している。そして溶存酸素量の値が上昇し、時刻T1に溶存酸素量の値が基準値+1に到達すると、制御部14はこの時刻において積算稼働時間が最も長いブロワ13Cの稼働を停止する。そして、さらに溶存酸素量の値が上昇し、時刻T2に溶存酸素量の値が基準値+2に到達すると、制御部14はこの時刻において稼働中のブロワ13A,13Bの内で積算稼働時間最も長いブロワ13Bの稼働を停止する。
【0037】
そして、さらに溶存酸素量の値が上昇した後下降して時刻T3に溶存酸素量の値が基準値+2に到達すると制御部14はブロワ13Bの稼働を開始する。そして、さらに溶存酸素量の値が下降して時刻T4に溶存酸素量の値が基準値+1に到達すると制御部14はブロワ13Cの稼働を開始する。
【0038】
そして、さらに溶存酸素量の値が下降した後上昇して時刻T5に溶存酸素量の値が基準値+1に到達すると制御部14はこの時刻において積算稼働時間が最も長いブロワ13Aの稼働を停止する。そして、さらに溶存酸素量の値が上昇して時刻T6に溶存酸素量の値が基準値+2に到達すると制御部14はこの時刻において稼働中のブロワ13B,13Cの内で積算稼働時間が最も長いブロワ13Cの稼働を停止する。
【0039】
そして、さらに溶存酸素量の値が上昇した後下降して時刻T7に溶存酸素量の値が基準値+2に到達すると制御部14はブロワ13Cの稼働を開始する。そして、さらに溶存酸素量の値が下降して時刻T8に溶存酸素量の値が基準値+1に到達すると制御部14はブロワ13Aの稼働を開始する。
【0040】
このように、排水処理システム100は送信部51から受信部52に対して無線送信することができる。このため、制御部14の位置によらず変換器32を設置することができる。また、排水処理システムの設置方法は、排水処理装置10が既に設置された後であっても設置工程を実行することによって検出装置30及び無線装置50を容易に追加して設置することができる。
【0041】
したがって、排水処理システム100は排水を良好に処理することができ、排水処理システムの施工方法は排水を良好に処理することができる排水処理システム100を提供することができる。
【0042】
排水処理装置10は、排水処理槽11が地下に配置され、制御部14が地上に配置されている。このため、排水処理装置10は制御部14が雨等で水没する機会を減らすことができ、ブロワ13A,13B,13Cの制御を継続することができる。
【0043】
排水処理システム100の排水処理装置10は、排水処理槽11の内側と外側とを連通する臭突管12を有している。検出装置30は、排水処理槽11の外側に配置されて検出値を検出値に対応した変換信号に変換する変換器32、及び臭突管12に敷設され一端がセンサ31に電気的に接続されて他端が変換器32に電気的に接続された信号線33を有する。送信部51は変換信号に対応した無線信号を制御部14に無線送信する。このため、排水処理システム100は臭突管12を利用して信号線33を容易に敷設することができると共に、変換器32を排水処理槽11外に配置することができるため、送信部51が排水処理槽11に包まれずに済む。このため、排水処理槽11に妨げられることなく送信部51からの無線信号を外部に良好に出力することができる。
【0044】
排水処理システム100の制御部14は、無線信号が正常状態である場合、ブロワ13A,13B,13Cの状態を無線信号に基づいて稼働させる第1稼働状態にし、無線信号が非正常状態である場合、ブロワ13A,13B,13Cの状態を無線信号によらず稼働する第2稼働状態にする。このため、排水処理システム100は、無線信号が正常状態であれば、無線信号に応じてブロワ13A,13B,13Cを稼働させることができ、無線信号が非正常状態であれば、無線信号によらずブロワ13A,13B,13Cを稼働させることができる。これにより、例えば、検出装置30や無線装置50が故障して無線信号が非正常状態になった場合であってもブロワ13A,13B,13Cの稼働を継続させることができ、好気性微生物の活動を継続させることができる。
【0045】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、溶存酸素量の信号に基づいてブロワの稼働を個別に制御しているが、インバータ等によってブロワに供給する電力の大きさを溶存酸素量の信号に基づいて変更し、ブロワから供給路に供給する空気の量を調整する構成としてもよい。
(2)実施例1では、センサによって溶存酸素量を検出しているが、センサによって排水のpHや温度等を検出する構成としてもよい。
(3)実施例1では、送信部から受信部に向けて無線信号を無線送信しているが、送信部と受信部との間に無線送信を中継する中継器を設ける構成としてもよい。
(4)実施例1では、マンション等の集合住宅に設置されていることを例示しているが、戸建て住宅に既に設置された排水処理装置に検出装置を取り付けてもよい。
(5)実施例1では、制御部は常に少なくとも1台のブロワが稼働した状態を維持しているが、溶存酸素量の信号に基づいてブロワの稼働を全て停止した状態にしてもよい。
(6)実施例1では、ブロワの数が3台であるが、ブロワの数が2台以下でもよく、4台以上でもよい。
(7)実施例1に例示した排水処理槽の構成は1つの事例であり、他の構成を有した好気性生物処理槽全般にも適用される。
(8)実施例1では、制御部がPLCを主体に構成されているが、マイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)の少なくとも何れかのメモリ、A/D変換器等を有していてもよい。
(9)実施例1では、信号線の他端を臭突管の排水処理槽側から機械室に向けて洗浄水の勢いによって配置しているが、信号線の一端を臭突管の機械室側から排水処理槽に向けて洗浄水の勢いによって配置してもよい。
(10)実施例1では、制御部が地上に配置されているが、制御部が地下の機械室とは別の場所に配置されていてもよい。つまり、制御部は機械室とは別の場所に配置されていればよい。この場合、制御部は無線信号を受信することによって好気担体槽における排水の溶存酸素量の値を間接的に把握することができる。
【0046】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
10…排水処理装置
11…排水処理槽
12…臭突管
13A,13B,13C…ブロワ
14…制御部
31…センサ
32…変換器
33…信号線
50…無線装置
51…送信部
100…排水処理システム
図1
図2