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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】立体造形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20231117BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20231117BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20231117BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20231117BHJP
   B29C 64/241 20170101ALI20231117BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231117BHJP
【FI】
B29C64/209
B05B1/14 Z
B28B1/30
B29C64/106
B29C64/241
B33Y30/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019170139
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021045906
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木ノ村 幸士
(72)【発明者】
【氏名】村田 哲
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達也
(72)【発明者】
【氏名】森山 英明
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087579(JP,A)
【文献】特開2017-119360(JP,A)
【文献】特表2017-537817(JP,A)
【文献】特開2018-199940(JP,A)
【文献】特開2019-147343(JP,A)
【文献】特表2020-514100(JP,A)
【文献】国際公開第2018/140182(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0245885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/14
B28B 1/30
B29C 64/10,64/106,64/20,64/209,
64/241,64/30,64/40
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/00,70/00,
80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを主材とする粘性材料を積層するとともに、前記粘性材料の層間の界面に助剤を散布して立体的な造形物を形成する立体造形システムであって、
前記粘性材料を吐出する主ノズルと、前記主ノズルの周囲に配設されて前記粘性材料の上面に前記助剤を散布する複数の補助ノズルと、複数の前記補助ノズルの中から前記主ノズルの進行方向の前側または後側に配設された前記補助ノズルを選択する制御手段と、を備え、
前記制御手段で選択された前記補助ノズルから前記助剤が散布されることを特徴とする、立体造形システム。
【請求項2】
セメントを主材とする粘性材料を積層するとともに、前記粘性材料の層間の界面に助剤を散布して立体的な造形物を形成する立体造形システムであって、
前記粘性材料を吐出する主ノズルと、前記粘性材料の上面に前記助剤を散布する補助ノズルと、内輪と外輪とを有するベアリングと、を備え、
前記ベアリングの内輪は、前記主ノズルの外面に固定されており、
前記補助ノズルは、前記ベアリングの外輪に固定されていて、前記主ノズルの移動に伴い当該主ノズルの進行方向の前側または後側に配置されるように、前記主ノズルの周囲を回動可能に設けられていることを特徴とする、立体造形システム。
【請求項3】
セメントを主材とする粘性材料を積層するとともに、前記粘性材料の層間の界面に助剤を散布して立体的な造形物を形成する立体造形システムであって、
前記粘性材料を吐出する主ノズルと、前記粘性材料の上面に前記助剤を散布する補助ノズルと、を備え、
前記補助ノズルは、前記主ノズルの進行方向の前側または後側において前記主ノズルに固定されていて、
前記主ノズルは、進行方向に応じて縦軸を中心に回動し、
前記補助ノズルは、前記主ノズルとともに回動することを特徴とする、立体造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性材料を層状に積み重ねることにより造形物を形成する立体造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
粘性材料であるセメント系材料(ペースト、モルタル、コンクリート等)を用いた3Dプリンタによる造形物の施工方法が知られている。3Dプリンタによる施工方法では、締固めを行わずに粘性材料を積み重ねるため、層間で十分な付着強度が得られずに、層同士の界面が不連続面になる可能性がある。
特許文献1には、セメント系材料により形成された下層の上面に、凝結遅延剤を塗布または噴霧してから、上層を設ける積層構造の製造方法が開示されている。この積層構造の製造方法によれば、凝結遅延剤により下層のセメント系材料の凝結時間を遅らせるため、下層と上層の付着性が向上する。
ところが、下層の上面に凝結遅延剤を塗布または噴霧する作業は手間がかかる。特に大規模な構造物を構築する場合において、各層の上面に凝結遅延剤を塗布または噴霧するためには、仮設足場等を組み立てる必要があり、手間と費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-119360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、粘性材料を層状に積み重ねて造形物を形成する場合において、層間の界面に助剤を簡易に設置することを可能とした立体造形システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、本発明は、セメントを主材とする粘性材料を積層するとともに、前記粘性材料の層間の界面に助剤を散布して立体的な造形物を形成する立体造形システムであって、前記粘性材料を吐出する主ノズルと、前記粘性材料の上面に助剤を散布する補助ノズルとを備えるものである。
第一の発明では、複数の補助ノズルが前記主ノズルの周囲に配設されていて、複数の前記補助ノズルの中から前記主ノズルの進行方向の前側または後側に配設された前記補助ノズルを選択する制御手段を備え、前記制御手段に選択された前記補助ノズルから前記助剤を散布する。第一の発明の立体造形システムにおいて、主ノズルの周囲に配設する補助ノズルの数は、主ノズルの移動方向に追従可能となるように適宜設定すればよい。例えば、主ノズルが平面的に全方向に移動する場合には、八つの補助ノズルを主ノズルの周囲に配設するのが望ましい。
第二の発明では、内輪と外輪を有するベアリングをさらに備えていて、前記ベアリングの内輪は、前記主ノズルの外面に固定されており、前記補助ノズルは前記ベアリングの外輪に固定されていて、前記主ノズルの移動に伴い当該主ノズルの進行方向の前側または後側に配置されるように、前記主ノズルの周囲を回動可能に設けられている。
第三の発明では、前記補助ノズルが前記主ノズルの進行方向の前側または後側において前記主ノズルに固定されていて、前記主ノズルは進行方向に応じて縦軸を中心に回動し、前記補助ノズルは前記主ノズルとともに回動する。
かかる立体造形システムによれば、主ノズルの近傍に設けられた補助ノズルにより助剤を散布するため、助剤を塗布または噴霧するための作業を別途実施する必要がなく、その作業の手間および費用を削減することができる。
補助ノズルは、主ノズルの前側または後側から助剤を散布するため、層間の界面の助剤を散布することができ、その結果、層間の付着性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の立体造形システムによれば、粘性材料を層状に積み重ねて造形物を形成する場合において、層間の付着性を向上させるための助剤を界面に対して簡易に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る立体造形システム1の概要を示す斜視図である。
図2】第一の実施形態の主ノズルおよび補助ノズルを示す斜視図である。
図3】立体造形システム1の概要を示す模式図である。
図4】第一の実施形態の補助ノズルによる助剤散布の手順を示すフローチャートである。
図5】第二の実施形態の主ノズルおよび補助ノズルの概要を示す図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図6】第三の実施形態の主ノズルおよび補助ノズルの概要を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第一の実施形態>
第一の実施形態では、セメント系材料を主材とする粘性材料Cをノズルから押し出しながら二次元形状を生成し、これを高さ方向に積層することにより三次元の造形物(立体的な造形物)を形成する場合について説明する。本実施形態では、図1に示す立体造形システム1を利用して造形物を形成する。立体造形システム1は、主ノズル2、ノズル支持手段3、補助ノズル4、制御手段5を備える、いわゆる3Dプリンタである。
主ノズル2は、粘性材料Cを吐出しながら平面移動する(図3参照)。主ノズル2は、平面移動により所定の二次元形状を形成したら、上方に移動する。すなわち、主ノズル2は、三次元的に移動可能に、ノズル支持手段3により支持されている。主ノズル2は、図2に示すように、漏斗状を呈しており、吐出口が下向きに設けられている。主ノズル2の吐出口の周囲には複数の補助ノズル4が取り付けられている。主ノズル2は、図3に示すように、制御手段5に接続されていて、制御手段5からの信号に応じて粘性材料Cの吐出を行う。
【0009】
本実施形態のノズル支持手段3は、主ノズル2をX軸およびY軸に沿って平面移動させるとともに、Z軸に沿って上下動させる。すなわち、立体造形システム1は、ノズル支持手段3を介して主ノズル2を3次元的に移動させることで、立体的な造形物を形成することを可能としている。本実施形態のノズル支持手段3は、図1に示すように、X軸に沿って配設されたX軸レール31と、Y軸に沿って配設された一対のY軸レール32と、Z軸に沿って立設されたZ軸柱33とを備えている。X軸レール31は、主ノズル2を摺動可能に支持している。主ノズル2は、X軸レール31に沿って移動することで、X軸方向に移動する。また、X軸レール31は、一対のY軸レール32に摺動可能に横架されている。X軸レール31がY軸レール32に沿って摺動することで、主ノズル2がY軸方向に移動する。また、主ノズル2がX軸レール31に沿って移動するのと同時にX軸レール31がY軸レール32に沿って移動することで、主ノズル2が斜め方向に移動する。すなわち、X軸レール31およびY軸レール32により、主ノズル2を自由に平面移動させることができる。さらに、Y軸レール32は、Z軸柱33によって上下動可能に支持されている。Y軸レール32がZ軸柱33に沿って移動することで、主ノズル2が上下動する。
ノズル支持手段3は、図3に示すように、制御盤51を介して制御手段5に接続されており、制御手段5から送信された信号に応じてX軸レール31およびY軸レール32を移動させることで、主ノズル2を所定の方向に移動させる。
【0010】
補助ノズル4は、主ノズル2から吐出された粘性材料Cの上面に助剤Rを散布する。図2に示すように、本実施形態では、八つの補助ノズル4が主ノズル2の周囲に配設されている。補助ノズル4は、治具を介して主ノズル2に固定されている。すなわち、補助ノズル4は、主ノズル2とともに移動する。補助ノズル4同士の間隔は等間隔である。補助ノズル4は、図3に示すように、助剤Rを貯留するタンク41から延設された送液管42の先端に取り付けられていて、送液管42を介して供給された助剤Rを散布する。本実施形態では、タンク41から延設された送液管42に電磁弁43を介して分岐管44が接続されていて、補助ノズル4は分岐管44に接続されている。電磁弁43は、制御手段5に電気的に接続されていて、制御手段5から送信された信号に応じて分岐管44の弁の開閉を行う。タンク41には、コンプレッサー45が接続されていて、コンプレッサー45からタンク41に供給された圧縮空気によりタンク41内の圧力を上昇させることで、送液管42を介して助剤Rを圧送する。
【0011】
本実施形態の補助ノズル4は、図2に示すように、主ノズル2の吐出口よりも高い位置に配設されている。補助ノズル4は、噴射方向が斜め下向きになるように配設されている。また、補助ノズル4は、粘性材料Cの上方から粘性材料Cの上面の幅と同程度の幅に均等に助剤Rを散布する。補助ノズル4には、充円錐ノズル、空円錐ノズル等、様々な種類の中から選定したものを使用する。補助ノズル4の種類は、選定した助剤Rの標準散布量、安定的に散布できる噴霧圧力の範囲、ノズル固有の噴霧角度、対象とする粘性材料Cの積層幅等を考慮して、予備試験などを行って決定すればよい。なお、粘性材料Cの積層幅の外側に助剤Rを噴霧することがないように、積層幅内に均等に散布できる補助ノズル4を取り付けることが望ましい。また、補助ノズル4の噴射方向は限定されるものではなく、例えば、鉛直であってもよい。
【0012】
助剤Rの散布は、八つの補助ノズル4のうちの制御手段5により選択された補助ノズル4のみから行われる。制御手段5により選択された補助ノズル4は、主ノズル2から粘性材料Cが吐出されている際に助剤Rを散布する。なお、主ノズル2から粘性材料Cが吐出されていない場合は、補助ノズル4から助剤Rは散布しない。ここで、助剤Rには、粘性材料C同士の接合性を向上するための材料を使用する。本実施形態では、吐出後の粘性材料Cの表面の硬化を遅延させることを目的として凝結遅延剤を使用する。なお、助剤Rには、凝結遅延剤等のコンクリート用化学混和剤の他、水等を使用することができる。
【0013】
制御手段5は、主ノズル2および補助ノズル4を制御する。制御手段5は、図4に示すように、まず、製造する造形物の各データを取得する(S1)。制御手段5は、取得した造形物のデータに基づいて、主ノズル2の移動方向や主ノズル2からの粘性材料Cの吐出の制御を行う。また、制御手段5は、助剤Rを散布する補助ノズル4を選択する機能、選択した補助ノズル4に供給する助剤Rの量を制御する機能を備えている。本実施形態では、複数の補助ノズル4の中から主ノズル2の進行方向の後側に配設された補助ノズル4を選択する。制御手段5により選択された補助ノズル4から助剤Rが散布される。制御手段5は、造形物の各データに基づいて、式1を利用して主ノズル2の進行角度を算出する(S2)。次に、式2により、主ノズル2の移動方向の角度にπを加算して、主ノズル2の逆方向の角度を算出する(S3)。主ノズル2の逆方向の角度を算出したら、八個の補助ノズル4のうち、この角度の最も近い位置にある補助ノズル4を選出する(S4)。主ノズル2から粘性材料Cが吐出されている場合は、選出された補助ノズル4の弁を開いて、補助ノズル4から助剤Rを散布させる(S5)。
【0014】
【数1】
【0015】
立体造形システム1を利用した造形物の形成方法では、ノズル支持手段3を用いて所定のルートに沿って主ノズル2を移動させつつ、主ノズル2から粘性材料Cを吐出する。このとき、主ノズル2の進行方向後側に配設された補助ノズル4から助剤Rを吐出し、主ノズル2から吐出された粘性材料Cの上面に助剤Rを散布する。主ノズル2の進行方向が変化した場合には、助剤Rを散布する補助ノズル4が変更される。
粘性材料Cにより所定の形状の二次元形状が生成されたら、主ノズル2を上方に移動させて、同様の動作を繰り返すことで、既設の粘性材料Cの二次元形状の層の上面に新たな粘性材料Cの二次元形状の層を生成する。同様に粘性材料Cを繰り返し積層することにより、三次元形状の造形物を形成する。
【0016】
以上、本実施形態の立体造形システム1を利用した造形物の形成方法によれば、主ノズル2の近傍に設けられた補助ノズル4により助剤Rを散布するため、既設の層の上面に助剤Rを塗布または噴霧するための作業を別途実施する必要がなく、その作業の手間および費用を削減することができる。
補助ノズル4は、主ノズル2の後側から助剤Rを散布するため、層間の界面の助剤Rを散布することができ、その結果、層間の付着性の向上を図ることができる。
助剤Rを散布する補助ノズル4は、主ノズル2の移動方向に応じて選択されるため、既設の粘性材料Cの層の上面に確実に助剤Rが散布される。
なお、補助ノズル4の数は、造形物の形状に応じて適宜決定すればよい。例えば、造形物の形状が四角形の場合には、補助ノズル4の数を四つにしてもよいし、造形物の形状が三角形の場合には補助ノズル4の数を三つにしてもよい。このとき、補助ノズル4同士の間隔は必ずしも等間隔である必要はなく、造形物の角に応じて適宜配置すればよい。また、造形物が壁状(直線状)である場合には、補助ノズル4は一つまたは二つであってもよい。
【0017】
<第二の実施形態>
第二の実施形態では、第一の実施形態と同様に、立体造形システム1を利用して、セメント系材料を主材とする粘性材料Cを主ノズル2から押し出しながら二次元形状を生成し、これを高さ方向に積層することにより三次元の造形物(立体的な造形物)を形成する場合について説明する。本実施形態の立体造形システム1は、補助ノズル4が主ノズル2の周囲を回動する点で、第一の実施形態の立体造形システム1と異なっている。
【0018】
補助ノズル4は、主ノズル2から吐出された粘性材料Cの上面に助剤Rを散布する。本実施形態の補助ノズル4は、主ノズル2の移動に伴い、主ノズル2の進行方向の後側に配置されるように、主ノズル2の周囲を回動可能に設けられている。補助ノズル4は、図5(a)および(b)に示すように、ベアリング46を介して、主ノズル2の外面に取り付けられている。補助ノズル4は、ベアリング46の外輪に固定されており、ベアリング46の内輪は主ノズル2の外面に固定されている。ベアリング46の外輪には、補助ノズル回転用モータ47から延設された回転伝達ベルト48が周設されている。補助ノズル回転用モータ47を駆動させると、回転伝達ベルト48を介して回転力がベアリング46に作用するため、補助ノズル4が主ノズル2の周囲に沿って回動する。本実施形態では、三つの補助ノズル4が等間隔で主ノズル2の周囲を囲うように設けられている。助剤Rの散布には、三つの補助ノズル4のうちの制御手段5により主ノズル2の進行方向の後ろ側に対し最近傍に位置する補助ノズル4を選択する。これは補助ノズル4が主ノズル2の周囲を回転するために要する時間を最小化し、主ノズル2の移動方向と補助ノズル4による助剤Rの散布位置に時間遅れに伴い発生するずれを抑制するためである。制御手段5により選択された補助ノズル4は、主ノズル2の進行方向の後側に位置するように主ノズル2の周囲を回動した後、助剤Rを散布する。
【0019】
制御手段5は、主ノズル2の進行方向に応じて、補助ノズル4が主ノズル2の進行方向後側に位置するように補助ノズル回転用モータ47を制御するとともに、当該補助ノズル4から助剤Rを散布する信号を送信する。
この他、主ノズル2、ノズル支持手段3、補助ノズル4および制御手段5の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0020】
以上、本実施形態の立体造形システム1を利用した造形物の形成方法によれば、主ノズル2の近傍に設けられた補助ノズル4により助剤Rを散布するため、既設の層の上面に助剤Rを塗布または噴霧するための作業を別途実施する必要がなく、その作業の手間および費用を削減することができる。
補助ノズル4は、主ノズル2の後側から助剤Rを散布するため、層間の界面の助剤Rを散布することができ、その結果、層間の付着性の向上を図ることができる。
助剤Rを散布する補助ノズル4は、主ノズル2の移動方向に応じて移動するため、既設の粘性材料Cの層の上面に確実に助剤Rが散布される。
なお、補助ノズル4の数は、製造する造形物の形状等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、直線的な造形物を製造する場合には、補助ノズル4を一つとしてもよい。その場合には、補助ノズル4を主ノズル2の進行方向の後側に回動させて助剤Rを散布すればよい。
【0021】
<第三の実施形態>
第三の実施形態では、第一及び第二の実施形態と同様に、立体造形システム1を利用して、セメント系材料を主材とする粘性材料Cを主ノズル2から押し出しながら二次元形状を生成し、これを高さ方向に積層することにより三次元の造形物(立体的な造形物)を形成する場合について説明する。本実施形態の立体造形システム1は、主ノズル2が進行方向の変化に伴って縦軸を中心に回動する点で、第一及び第二の実施形態の立体造形システム1と異なっている。
主ノズル2は、図6に示すように、粘性材料Cを吐出しながら平面移動する。主ノズル2は、平面移動により所定の二次元形状を形成したら、上方に移動する。すなわち、主ノズル2は、三次元的に移動可能に、ノズル支持手段3により支持されている。主ノズル2は、制御手段5に接続されていて、制御手段5からの信号に応じて粘性材料Cの吐出を行う。本実施形態の主ノズル2は、断面視矩形状を呈していて、一定の幅に粘性材料Cを吐出する。また、主ノズル2は、進行方向の変化に伴い縦軸を中心に回転することで、常に同じ幅で粘性材料Cを吐出する。
【0022】
補助ノズル4は、主ノズル2から吐出された粘性材料Cの上面に助剤Rを散布する。本実施形態の補助ノズル4は、主ノズル2の進行方向の後側に固定されていて、主ノズル2の回動とともに回動する。補助ノズル4は、主ノズル2の後側に治具を介して固定されている。補助ノズル4は、主ノズル2が粘性材料Cを吐出している際に、助剤Rを散布する。
この他、主ノズル2、ノズル支持手段3、補助ノズル4および制御手段5の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0023】
以上、本実施形態の立体造形システム1を利用した造形物の形成方法によれば、主ノズル2の後側に設けられた補助ノズル4により助剤Rを散布するため、既設の層の上面に助剤Rを塗布または噴霧するための作業を別途実施する必要がなく、その作業の手間および費用を削減することができる。
補助ノズル4は、主ノズル2の後側から助剤Rを散布するため、層間の界面の助剤Rを散布することができ、その結果、層間の付着性の向上を図ることができる。
助剤Rを散布する補助ノズル4は、主ノズル2の回動に伴って回動するため、既設の粘性材料Cの層の上面に確実に助剤Rが散布される。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、下層の硬化を遅らせて下層と上層との付着強度を高めることを目的として、粘性材料Cを吐出した直後に、主材の上面に助剤Rを散布する場合について説明したが、助剤Rを散布する順序は、主材を吐出する直前であってもよい。例えば、自ら反応して硬化する断面修復用のプライマーやポリマーセメントモルタルなどのセメント系材料を助剤Rとして使用する場合には、主ノズル2の進行方向前側の補助ノズル4から助剤Rを散布するのが望ましい。
ノズル支持手段3の構成は、主ノズル2を3次元的に移動させることが可能であれば限定されるものではなく、例えば多軸式ロボットアームの先端に装着し支持してもよい。
また、前記実施形態では、主ノズル2を3次元的に移動させる立体造形システム1について説明したが、立体造形システム1の構成はこれに限定されるものではない。例えば、主ノズル2が平面移動するとともに造形物が形成される製作テーブルが上下動することで立体的な造形物が形成されるものであってもよい。
補助ノズル4の散布範囲は、円錐状であってもよいし扇状であってもよい。また、補助ノズル4の散布角度は適宜決定すればよい。
【符号の説明】
【0025】
1 立体造形システム
2 主ノズル
3 ノズル支持手段
4 補助ノズル
5 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6