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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】自転車の盗難防止ロック装置
(51)【国際特許分類】
   B62H 5/00 20060101AFI20231117BHJP
   E05B 71/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B62H5/00 A
E05B71/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020008799
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021115903
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】中西 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小川 満
(72)【発明者】
【氏名】安田 正幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 征史
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】実公昭16-015871(JP,Y1)
【文献】特開昭58-067576(JP,A)
【文献】特開平06-298142(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102837764(CN,A)
【文献】実公昭07-007879(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 5/00 - 5/20
1/00 - 1/14
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車に固定した錠本体によってロック可能位置とロック不能位置とにわたって往復移動可能に保持され、自転車のスタンドの揺動に伴って往復移動する移動体と、移動体を係止する施錠位置と移動体に摺接する施錠待機位置と移動体の移動を許容する解錠位置とにわたって出退する閂と、閂を施錠位置に向けて押し出す閂駆動部と、施錠位置に押し出された閂を受け止める閂受け部と、閂駆動部の押圧力に抗して閂を解錠位置に後退させる鍵操作部を備え、
鍵操作部は、鍵開操作において閂を閂駆動部の押圧力に抗して後退させて解錠位置に拘束する拘束状態と、鍵閉操作において拘束状態を解除し、閂駆動体の押圧力を受ける閂の移動を許容する非拘束状態とにわたって稼働することを特徴とする自転車の盗難防止ロック装置。
【請求項2】
スタンドの横倒姿勢において、移動体がロック不能位置にあり、閂の出退方向において閂の前方に位置する移動体が閂を受け止めて施錠待機位置に保持し、
スタンドの起立姿勢において、移動体がロック可能位置にあり、閂駆動部により押し出される閂を閂受け部が受け止めて施錠位置に保持し、移動体の移動方向において移動体の前方に位置する閂が移動体を係止してスタンドをロックすることを特徴とする請求項1に記載の自転車の盗難防止ロック装置。
【請求項3】
鍵操作部は、鍵と、閂と相互に連動し、鍵開操作において鍵と一体的に回転して閂を閂駆動部の押圧力に抗して施錠位置から解錠位置まで後退させるレバー部と、閂の解錠位置に対応する開位置にあるレバー部を係止して鍵操作部を拘束状態となすボールラッチ部を有することを特徴とする請求項1に記載の自転車の盗難防止ロック装置。
【請求項4】
レバー部と一体的に回転するフックと、レバー部が閂の施錠位置に対応する閉位置にあるときにフックに係合する爪と、爪と一体的に稼働し、フックと爪の係合を解除するリリース釦を有することを特徴とする請求項3に記載の自転車の盗難防止ロック装置。
【請求項5】
鍵操作部は、錠本体に設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の自転車の盗難防止ロック装置。
【請求項6】
鍵操作部は、自転車のハンドルバーに装着され、ワイヤーを介して閂と連動することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の自転車の盗難防止ロック装置。
【請求項7】
スタンドが両足スタンドからなり、両足スタンドは、自転車に固定したスタンド取付板にスタンド支軸を介して保持され、接地する起立姿勢と後方に跳ね上げた横倒姿勢とにわたってスタンド支軸の軸心廻りに揺動し、両足スタンドの一側のスタンド脚部材が移動体と係合し、錠本体がスタンド取付板に固定されていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の自転車の盗難防止ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車の盗難防止ロック装置に関し、自動ロック機構の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自転車には例えば図9図10に示すものがある。これは電動アシスト自転車を例示するものである。自転車100はフレーム111の後端部に両足スタンド121を備えており、両足スタンド121は、スタンド取付板122と、スタンド脚部材123を有している。
スタンド取付板122はフレーム111に固定して自転車100の左右に配置してあり、スタンド取付板122がスタンド脚部材123をスタンド支軸122aにより揺動可能に保持している。スタンド脚部材123は起立姿勢となる使用時位置と、横倒姿勢となる非使用時位置とにわたって揺動可能であり、姿勢保持ばね124がスタンド脚部材123を起立姿勢もしくは横倒姿勢に維持する。
【0003】
姿勢保持ばね124は自転車100の左右に配置してあり、スタンド取付板122とスタンド脚部材123との間に掛け渡している。両足スタンド121は、自転車100の左側に対応する一方側のスタンド脚部材123はロックレバー125を有し、ロックレバー125に一方の姿勢保持ばね124の一端を連結している。ロックレバー125は、スタンド脚部材123よりも前方に位置してスタンド脚部材123の揺動を阻止するロックセット位置とスタンド脚部材123よりも後方に位置してスタンド脚部材123の揺動を可能にするロック解除位置とにわたって揺動する。
このような従来の自転車に使用する盗難防止部品には、前輪に装着する箱型の錠前や、後輪に装着するサークル型の錠前がある。あるいは、サドルを傾けるだけで施錠操作が完了し、サドルが傾斜した姿勢に堅持されるとともに、スタンドがロックされるものもある。
【0004】
また、特許文献1には、自転車の施錠機構が記載されている。この特許文献1では、スタンドがスタンド支軸の軸心廻りに回動し、接地する起立姿勢と後方に跳ねあがる横倒姿勢とにわたって可動自在である。ロック体は、ロック体支軸の軸心廻りに回動可能で、巻きばねで一側方向に押圧されており、伝達ワイヤが巻きばねの押圧力に抗してロック体を懸架支持している。
【0005】
スタンドは、起立姿勢に向けて揺動する時に、巻きばねの押圧力に抗してロック体をロック体支軸の軸心廻りの他側方向に向けて押圧する。スタンドが起立姿勢となるとロック体とスタンドとの係合が外れ、巻きばねの押圧力を受けるロック体が伝達ワイヤで懸架支持されたロック位置に復帰してスタンドを起立姿勢にロックする。
解錠時には、伝達ワイヤによりロック体を他側方向に牽引してロック体を非ロック位置に揺動させ、スタンドを後方に跳ね上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-298142公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、箱型の錠前やサークル型の錠前を使用する場合には、自転車を降りてスタンドを立てる操作とは別途に、手作業で施錠作業を行う必要がある。このため、施錠作業を忘れて自転車から離れてしまうことがある。さらに、箱型の錠前やサークル型の錠前は自転車のスポークに当接する部材で車輪の回転を阻止するので、施錠した状態で自転車を無理に動かすと、スポークが変形したり、折れたりすることがある。
【0008】
また、特許文献1の施錠機構では、ロック体が伝達ワイヤにより懸架支持されることでロック位置に留まっており、盗難行為等で伝達ワイヤが切断されると、ロック体が巻きばねの力でロック位置から外れた位置に移動して解錠状態となってしまう。すなわち、盗難行為に対してフェイルセーフが実現できていない。
本発明は、施錠のための手作業を行うことなく、スタンドを立てるだけで自動的に施錠することができ、かつ盗難行為に対して施錠状態を維持できる自転車の盗難防止ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置は、自転車に固定した錠本体によってロック可能位置とロック不能位置とにわたって往復移動可能に保持され、自転車のスタンドの揺動に伴って往復移動する移動体と、移動体を係止する施錠位置と移動体に摺接する施錠待機位置と移動体の移動を許容する解錠位置とにわたって出退する閂と、閂を施錠位置に向けて押し出す閂駆動部と、施錠位置に押し出された閂を受け止める閂受け部と、閂駆動部の押圧力に抗して閂を解錠位置に後退させる鍵操作部を備え、鍵操作部は、鍵開操作において閂を閂駆動部の押圧力に抗して後退させて解錠位置に拘束する拘束状態と、鍵閉操作において拘束状態を解除し、閂駆動体の押圧力を受ける閂の移動を許容する非拘束状態とにわたって稼働することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置において、スタンドの横倒姿勢において、移動体がロック不能位置にあり、閂の出退方向において閂の前方に位置する移動体が閂を受け止めて施錠待機位置に保持し、スタンドの起立姿勢において、移動体がロック可能位置にあり、閂駆動部により押し出される閂を閂受け部が受け止めて施錠位置に保持し、移動体の移動方向において移動体の前方に位置する閂が移動体を係止してスタンドをロックすることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置において、鍵操作部は、鍵と、閂と相互に連動し、鍵開操作において鍵と一体的に回転して閂を閂駆動部の押圧力に抗して施錠位置から解錠位置まで後退させるレバー部と、閂の解錠位置に対応する開位置にあるレバー部を係止して鍵操作部を拘束状態となすボールラッチ部を有することを特徴とする。
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置において、レバー部と一体的に回転するフックと、レバー部が閂の施錠位置に対応する閉位置にあるときにフックに係合する爪と、爪と一体的に稼働し、フックと爪の係合を解除するリリース釦を有することを特徴とする。
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置において、鍵操作部は、錠本体に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置において、鍵操作部は、自転車のハンドルバーに装着され、ワイヤーを介して閂と連動することを特徴とする。
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置において、スタンドが両足スタンドからなり、両足スタンドは、自転車に固定したスタンド取付板にスタンド支軸を介して保持され、接地する起立姿勢と後方に跳ね上げた横倒姿勢とにわたってスタンド支軸の軸心廻りに揺動し、両足スタンドの一側のスタンド脚部材が移動体と係合し、錠本体がスタンド取付板に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置によれば、自転車走行時にスタンドは横倒姿勢にあり、移動体はロック不能位置にあって、閂の出退方向において閂の前方に位置する。閂駆動部により押圧される閂は、移動体に受け止められて施錠待機位置に留まる。
自転車の駐車時に、スタンドを横倒姿勢から起立姿勢に揺動する過程で、閂は移動体に摺接して移動体の移動を許容する。スタンドが起立姿勢になると、移動体がロック可能位置に到達して、閂の出退方向において閂の前方に移動体が無くなり、閂が閂駆動部によって押し出される。
【0015】
施錠待機位置から押し出された閂は閂受け部が受け止めることで施錠位置に保持される。この状態で、閂は移動体の移動方向において移動体の前方に位置して移動体に当接し、閂が移動体を係止してスタンドをロックする。
このため、スタンドを起立させる操作を行うだけで盗難防止ロック装置が自動的に施錠される。また、閂は閂駆動部の押圧力を受けて閂受け部に押圧されるので、閂が施錠位置に確実に留まり、盗難行為等を受けても閂が施錠位置から外れることはなく、フェイルセーフを実現できる。
【0016】
自転車を使用するときに、スタンドを横倒姿勢とする場合には、鍵で鍵操作部を稼働させて鍵開操作を行う。鍵開操作により、鍵操作部は閂を閂駆動部の押圧力に抗して後退させて解錠位置に拘束する拘束状態となる。拘束状態において、移動体の移動方向において移動体の前方には閂がなく、移動体を介したスタンドのロック状態が解除され、スタンドが起立姿勢から横倒姿勢へ移動可能となる。
スタンドが横倒姿勢になった後に、鍵閉操作して拘束状態を解除することで、鍵操作部は閂駆動体の押圧力を受ける閂の移動を許容する非拘束状態となり、閂が移動体に摺接する施錠待機位置に留まる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の盗難防止ロック装置の作動状態を示し、(a)は施錠状態を示す図、(b)は解錠途中を示す図、(c)は解錠状態を示す図、(d)は施錠待機状態を示す図
図2】同盗難防止ロック装置の鍵操作部の作動状態を示し、(a)は施錠状態を示す図、(b)は解錠状態を示す図
図3】同盗難防止ロック装置の施錠状態示す斜視図
図4】同盗難防止ロック装置の施錠待機状態示す斜視図
図5】同盗難防止ロック装置の裏面側を示す斜視図
図6】本発明の他の盗難防止ロック装置の施錠状態示す図
図7】同盗難防止ロック装置の施錠待機状態示す図
図8】同盗難防止ロック装置の鍵操作部の作動状態を示し、(a)は施錠状態を示す図、(b)は解錠状態を示す図
図9】従来の自転車のスタンドを示す正面図
図10】従来の自転車を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置の実施の形態1を図面に基づいて説明する。
図1から図5において、盗難防止ロック装置1は、自転車、例えば電動アシスト自転車2の両足スタンド3に装着されている。本実施の形態1では両足スタンド3を例示するが、本発明は片足スタンドにも適用可能である。
両足スタンド3は、スタンド取付板4と、スタンド脚部材5を有している。スタンド取付板4は自転車2のフレーム6に固定して自転車2の左右に配置してあり、スタンド取付板4がスタンド支軸7(図5参照)を介してスタンド脚部材5を揺動可能に保持している。スタンド脚部材5は接地して起立姿勢となる使用時位置と、後方に跳ね上げて横倒姿勢となる非使用時位置とにわたってスタンド支軸7の軸心廻りに揺動可能である。
盗難ロック装置1は、図2においてカバー8を装着した状態を示しており、図1および図3から図5においてカバー8を外した状態を示している。盗難ロック装置1は、スタンド取付板4に固定した錠本体9に閂10および閂10に対する受座をなす移動体11を有している。
【0019】
錠本体9は、スタンド支軸7の周りに円弧状のガイド溝12を有しており、ガイド溝12は錠本体9を表裏方向に貫通している。移動体11は、錠本体9の内部に配置されており、ガイド溝12を通して錠本体9の裏面側に突出する係合部13(図5参照)を有している。係合部13は、錠本体9から突出する2本の突起14と、双方の突起14の間に渡した蓋15を有しており、突起14の間にスタンド脚部材5を配置した後に蓋15を双方の突起14にネジ16で固定している。
【0020】
移動体11および係合部13はスタンド脚部材5の揺動に伴ってガイド溝12に沿って往復移動し、移動体11が錠本体9の内部において、図1(a)に示すロック可能位置Aと、図1(d)に示すロック不能位置Bとにわたって往復移動可能に保持されている。
錠本体9の内部において、閂10は移動体11の移動経路を横切る方向に出退自在に保持されている。閂10は、図1(a)に示す施錠位置Laと、図1(d)に示す施錠待機位置Lbと、図1(c)に示す解錠位置Lcとにわたって出退し、施錠位置Laでは移動体11の移動経路上に位置して移動体11の先端面11aに当接し、施錠待機位置Lbでは移動体11の側面11bに摺接し、解錠位置Lcでは移動体11の移動経路から外れた位置に後退する。
【0021】
閂10は錠本体9の凹部18に配置されており、凹部18には閂10を施錠位置Laに向けて押し出す閂駆動部19を配置している。ここでは閂駆動部19として圧縮コイルばね(押しばね)を使用しているが、ゴム材等の弾性体を使用することも可能である。
錠本体9には施錠位置Laに押し出された閂10を受け止める閂受け部17を設けている。閂受け部17は閂10の出退方向において閂10に対向する位置に形成された窪みであり、施錠位置Laに押し出された閂10の先端に嵌合する。
錠本体9は内部に鍵操作部20を備えている。鍵操作部20は、鍵21と、鍵21を着脱自在に保持するシリンダー22と、シリンダー22の内筒23と一体的に回転するレバー部24と、レバー部24の特定位置に係合するボールラッチ部25を有している。
【0022】
レバー部24は先端側に長円形のカム穴26を有し、カム穴26が閂10に設けた案内子27に係合している。このカム穴26と案内子27の係合によりレバー部24は閂10と相互に連動しており、鍵開操作においてレバー部24が鍵21と一体的に回転して閂10を閂駆動部19の押圧力に抗して施錠位置Laから解錠位置Lcまで後退させる。
ボールラッチ部25は、図1(c)に示すように閂10の解錠位置Lcに対応する開位置Oにあるレバー部24を係止して鍵操作部20を拘束状態に保持する。
さらに、鍵操作部20は、レバー部24と一体的に回転するフック28と、図1(a)に示すようにレバー部24が閂10の施錠位置Laに対応する閉位置Cにあるときにフック28に係合する爪29と、爪29と一体的に稼働し、押圧操作によりフック28と爪29の係合を解除するリリース釦30を有している。
【0023】
以下、上記構成の作用を説明する。
(スタンド非使用状態)
自転車2の走行時、すなわち両足スタンド3が非使用時位置にあって横倒姿勢にあるときには、図1(d)、図4に示すように、移動体11がロック不能位置Bにあり、閂10の出退方向において閂10の前方に位置する移動体11で閂10を受け止めて施錠待機位置Lbに保持する。
【0024】
(スタンド使用状態)
自転車2の駐車時、すなわち両足スタンド3が使用時位置にあって起立姿勢にあるときには、図1(a)、図3に示すように、移動体11がロック可能位置Aにあり、閂駆動部19により押し出される閂10を閂受け部17が受け止めて施錠位置Laに保持する。
この状態で、閂10が移動体11の移動方向において移動体11の前方に位置し、閂10が移動体11を係止し、かつ移動体11の係合部13を介してスタンド脚部材5の揺動を阻止して両足スタンド3をロックする。
また、鍵操作部20は、図1(a)に示すように、レバー部24と一体的に回転するフック28が爪29と係合してレバー部24の回転を阻止する。
【0025】
(スタンド非使用状態から使用状態への遷移)
自転車2を停車し、両足スタンド3を非使用時位置から使用時位置に揺動させる。この両足スタンド3が横倒姿勢から起立姿勢に揺動する過程で、閂10は移動体11の側面11bに摺接して移動体11の移動を許容する。両足スタンド3が起立姿勢になると、移動体11がロック可能位置Aに到達して、閂10の出退方向において閂10の前方に移動体11が無くなり、閂10が閂駆動部19によって押し出される。
施錠待機位置Lbから押し出された閂10は閂受け部17が受け止めることで施錠位置Laに保持される。また、鍵操作部20は、図1(a)に示すように、レバー部24と一体的に回転するフック28が爪29と係合してレバー部24の回転を阻止する。
このスタンド非使用状態から使用状態への遷移においては、両足スタンド3を起立させる操作を行うだけで盗難防止ロック装置1が自動的に施錠される。また、閂10は閂駆動部19の押圧力を受けて閂受け部17に押圧されるので、閂10が施錠位置Laに確実に留まり、盗難行為等を受けても閂10が施錠位置Laから外れることはなく、フェイルセーフを実現できる。
【0026】
(スタンド使用状態から非使用状態への遷移)
自転車2を使用するときに、両足スタンド3を起立姿勢から横倒姿勢に揺動させる場合には、鍵21をシリンダー22に挿入し、リリース釦30を押圧操作してフック28と爪29の係合を解除しつつ、鍵21を回転させて鍵操作部20を鍵開操作する。
図1(b)に示すように、鍵開操作により、鍵操作部20のレバー部24は閂10を閂駆動部19の押圧力に抗して解錠位置Lcに向けて後退させる。さらに鍵開操作が進むと、図1(c)に示すように、レバー部24が開位置Oに移動し、閂10が解錠位置Lcに達して拘束状態となり、ボールクラッチ部25がレバー部24を係止して鍵操作部20を拘束状態に保持する。拘束状態は手操作において鍵21を保持することでも可能であるし、ボールクラッチ部25に代えて他の部品を使用することも可能である。
【0027】
拘束状態では、移動体11の移動方向において移動体11の前方には閂10がなく、移動体11を介した両足スタンド3のロック状態が解除されている。この状態で、両足スタンド3を起立姿勢から横倒姿勢へ移動させる。
両足スタンド3が横倒姿勢になった後に、鍵閉操作して鍵操作部20の拘束状態を解除、すなわちボールクラッチ部25によるレバー部24の係止を解除してレバー部24の移動を可能にする。この状態で、図1(d)に示すように、鍵操作部20は非拘束状態となり、閂駆動体19の押圧力を受ける閂10が移動を許容されて移動体11の側面11bに摺接する施錠待機位置Lbに留まる。
本実施の形態1では、鍵操作部20が錠本体9の内部に配置されており、閂10を作動させるワイヤ等の部材が露出していないので盗難防止性能が高くなる。
【0028】
(実施の形態2)
本発明に係る自転車の盗難防止ロック装置の実施の形態2を図面に基づいて説明する。先の実施の形態1で説明したものと同様の構成要素には同符号を付して説明する。
図6から図8において、盗難防止ロック装置51は、先の実施の形態1で説明した盗難防止ロック装置1における鍵操作部20を除いた構成と基本的に同様である。
本実施の形態2では、自転車2のハンドルバー52にキーボックス53が装着されており、キーボックス53に鍵操作部20を収納している。
【0029】
鍵操作部20は、基本的な構成が先の実施の形態1で説明したものと同様であり、ここではレバー部24がワイヤー54を介して閂10と連動し、図8(a)に示す鍵閉操作状態と、図8(b)示す鍵開操作状態とにわって稼働する。
そして、鍵開操作において鍵21を回転させると、図1(a)から(c)で示したものと同様に、レバー部24が鍵21と一体的に回転し、ワイヤー54を介して閂10を閂駆動部19の押圧力に抗して施錠位置Laから解錠位置Lcまで後退させ、鍵操作部20が拘束状態となる。
鍵閉操作において鍵21を回転させると、図1(d)で示したものと同様に、鍵操作部20は非拘束状態となり、閂駆動体19の押圧力を受ける閂10が移動を許容されて移動体11の側面11bに摺接する施錠待機位置Lbに留まる。
【0030】
(スタンド非使用状態)
図6に示すように、自転車2の走行時、すなわち両足スタンド3が非使用時位置にあって横倒姿勢にあるときには、移動体11がロック不能位置Bにあり、閂10の出退方向において閂10の前方に位置する移動体11で閂10を受け止めて施錠待機位置Lbに保持する。
(スタンド使用状態)
図7に示すように、自転車2の駐車時、すなわち両足スタンド3が使用時位置にあって起立姿勢にあるときには、移動体11がロック可能位置Aにあり、閂駆動部19により押し出される閂10を閂受け部17が受け止めて施錠位置Laに保持する。
この状態で、閂10が移動体11の移動方向において移動体11の前方に位置し、閂10が移動体11を係止し、かつ移動体11の係合部13を介してスタンド脚部材5の揺動を阻止して両足スタンド3をロックする。
【0031】
(スタンド非使用状態から使用状態への遷移)
自転車2を停車し、両足スタンド3を非使用時位置から使用時位置に揺動させる。この両足スタンド3が横倒姿勢から起立姿勢に揺動する過程で、閂10は移動体11の側面11bに摺接して移動体11の移動を許容する。両足スタンド3が起立姿勢になると、図7に示すように、移動体11がロック可能位置Aに到達して、閂10の出退方向において閂10の前方に移動体11が無くなり、閂10が閂駆動部19によって押し出される。
施錠待機位置Lbから押し出された閂10は閂受け部17が受け止めることで施錠位置Laに保持される。
【0032】
(スタンド使用状態から非使用状態への遷移)
自転車2を使用するときに、両足スタンド3を起立姿勢から横倒姿勢に揺動させる場合には、図8(a)、(b)に示すように、鍵21をシリンダー22に挿入し、リリース釦30を押圧操作してフック28と爪29の係合を解除しつつ、鍵21を回転させて鍵操作部20を鍵開操作する。
鍵開操作により、図1(a)から(c)で示したものと同様に、鍵操作部20のレバー部24は、ワイヤー54を介して閂10を閂駆動部19の押圧力に抗して解錠位置Lcに向けて後退させる。さらに鍵開操作が進むと、レバー部24が開位置Oに移動し、閂10が解錠位置Lcに達して拘束状態となり、ボールクラッチ部25がレバー部24を係止して鍵操作部20を拘束状態に保持する。
【0033】
拘束状態では、移動体11の移動方向において移動体11の前方には閂10がなく、移動体11を介した両足スタンド3のロック状態が解除されている。この状態で、両足スタンド3を起立姿勢から横倒姿勢へ移動させる。
両足スタンド3が横倒姿勢になった後に、鍵閉操作して鍵操作部20の拘束状態を解除、すなわちボールクラッチ部25によるレバー部24の係止を解除してレバー部24の移動を可能にする。この状態で、図6に示すように、鍵操作部20は非拘束状態となり、閂駆動体19の押圧力を受ける閂10が移動を許容されて移動体11の側面11bに摺接する施錠待機位置Lbに留まる。
本実施の形態2では、施錠待機位置Lbから押し出された閂10は閂受け部17が受け止めることで施錠位置Laに保持されているので、盗難行為によってワイヤー54が切断されても、閂10が施錠位置Laに保持される。
本発明は実施の形態1、2に限定されるものではなく、電動アシスト自転車のみならず通常の自転車にも適用可能である
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、スタンドを備えた自転車に適用されるものであり、電動アシスト自転車等に有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 盗難防止ロック装置
2 電動アシスト自転車
3 両足スタンド
4 スタンド取付板
5 スタンド脚部材
6 フレーム
7 スタンド支軸
8 カバー
9 錠本体
10 閂
11 移動体
11a 先端面
11b 側面
12 ガイド溝
13 係合部
14 突起
15 蓋
16 ネジ
17 閂受け部
18 凹部
19 閂駆動部
20 鍵操作部
21 鍵
22 シリンダー
23 内筒
24 レバー部
25 ボールラッチ部
26 カム穴
27 案内子
28 フック
29 爪
30 リリース釦
51 盗難防止ロック装置
52 ハンドルバー
53 キーボックス
54 ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10