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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】配列性繊維シート製造装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/28 20060101AFI20231117BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20231117BHJP
   B65H 57/28 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B65H54/28 L
D01D7/00 Z
B65H57/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020056257
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155162
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】塚原 法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】辻 清孝
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩二
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-7609(JP,A)
【文献】特開2012-154000(JP,A)
【文献】特開昭63-282057(JP,A)
【文献】特開昭59-149269(JP,A)
【文献】特開平2-81875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/28
D01D 7/00
B65H 57/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料を溶融もしくは溶液状態で押出すノズルと、
前記ノズルから押出された前記高分子材料が自然冷却もしくは自然乾燥された繊維を巻取る、巻取りドラムと、
前記繊維の前記巻取りドラム上への巻取り位置を規制するガイドと、
前記ノズルを前記巻取りドラムの回転軸と平行な方向に移動させるノズル移動手段と、
を備え、
前記ノズルと前記ガイドとは、一体となって移動する、配列性繊維シート製造装置。
【請求項2】
前記ガイドは、前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸と平行な方向に押圧する、請求項1に記載の配列性繊維シート製造装置。
【請求項3】
前記ガイドは、前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸に対して垂直な方向に押圧する、請求項1に記載の配列性繊維シート製造装置。
【請求項4】
前記ガイドは、
前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸と平行な方向に押圧する第1ガイドと、
前記第1ガイドにより押圧された後の前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸に対して垂直な方向に押圧する第2ガイドと、
により構成されている、請求項1に記載の配列性繊維シート製造装置。
【請求項5】
前記ガイドには、少なくとも複数の凹部が形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の配列性繊維シート製造装置。
【請求項6】
前記ガイドには、前記ガイドを冷却する冷却手段が備えられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の配列性繊維シート製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列性を有する繊維シートを形成する、製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエチレンフタレートやポリスチレン等の高分子材料からなる、微細且つ均一な配列性を有する繊維シートが、細胞培養における足場材料や濾過用フィルター用途等として、注目されている。
【0003】
例えば、細胞培養の足場材料としては、特許文献1の図2が示すような、平面状のマイクロメッシュ構造を有する、配列性繊維シートが用いられており、細胞は、この配列性繊維シート上で培養される。
【0004】
一般的に配列性繊維シートは、高分子材料を溶融もしくは溶液状態でノズルから押し出して繊維にする紡糸工程と、紡糸された繊維を回転体に塗布し、巻き取る工程と、により形成される。特許文献2には、配列性繊維シートを製造する装置の例が示されている。
【0005】
特許文献2の図1が示す製造装置では、ノズルから押し出された繊維4(スランド)は、シリンダ6に取り付けられた爪7により保持されている。爪7は、シリンダ6の作用により、巻取りドラム2の回転軸と平行な方向に移動する構造になっており、爪7が移動することで、繊維4は、巻き取りドラム2に取り付けられたチューブ3上に配列性を持って巻き取られ、配列性繊維シートが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-506861号公報
【文献】特開平2-81875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4に記載した、特許文献2の配列性繊維シートの製造装置では、ノズル101と巻取りドラム2とは、それぞれ所定の位置に固定されている。そのため、ノズル101と巻取りドラム2との相対的な位置関係は不変のまま、繊維4を保持した爪7が、シリンダ6の作用により、回転ドラム2の回転軸と平行な方向Xに沿って、B-B’間を往復運動することで、配列性を有する繊維シートを形成していく構造である。この為、爪7が移動する際の爪7と繊維4との接触圧力は、爪7が繊維4の抵抗摩擦力を受けるが故に、高くなる。そのことにより、一般的に細胞培養の足場として、好適とされる直径5~20μm程度の微細な繊維4を用いて、配列性繊維シートを形成しようとすると、爪7と繊維4の接触圧力が高いが故に、繊維4の断線が発生し易い、といった品質面での課題があった。
【0008】
また、爪7と回転ドラム2との間の距離が長い為、所定の配列ピッチに対し、その間で、ズレが生じやすく、配列ピッチが不均一になる、といった課題もあった。
【0009】
以上より、本発明の目的は、細胞培養における足場材料や濾過用フィルター等として用いられる、微細且つ均一な配列性を有する繊維シートを安定的に品質良く形成する配列性繊維シート製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る配列性繊維シート製造装置は、高分子材料を溶融もしくは溶液状態で押出すノズルと、
前記ノズルから押出された前記高分子材料が自然冷却もしくは自然乾燥された繊維を巻取る、巻取りドラムと、
前記繊維の前記巻取りドラム上への巻取り位置を規制するガイドと、
前記ノズルを前記巻取りドラムの回転軸と平行な方向に移動させるノズル移動手段と、
を備え、
前記ノズルと前記ガイドとが一体となって移動する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る配列性繊維シート製造装置によれば、微細な繊維を巻取りドラム上に正確、且つ均一なピッチで配列することが可能となる。これにより、細胞培養における足場材料や濾過用フィルター等として用いられる、微細且つ均一な配列性を有する繊維シートを安定的に品質良く製造、提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1-1】実施の形態1に係る配列性繊維シート製造装置の一例の構成を示す模式図である。
図1-2】図1-1の配列性繊維シート製造装置の巻取りドラムの回転軸の方向から見た側面図である。
図2-1】実施の形態2に係る配列性繊維シート製造装置の一例の巻取りドラムの回転軸の方向から見た側面図である。
図2-2】図2-1の配列性繊維シート製造装置の上部Fから見たガイドの平面図である。
図3】実施の形態3に係る配列性繊維シート製造装置の一例の構成を示す模式図である。
図4】従来の配列性繊維シート製造装置の一例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様に係る配列性繊維シート製造装置は、高分子材料を溶融もしくは、溶液状態で押出すノズルと、
前記ノズルから押出された、前記高分子材料が自然冷却もしくは自然乾燥された繊維を巻取る、巻取りドラムと、
前記繊維の前記巻取りドラム上への巻取り位置を規制するガイドと、
前記ノズルを前記巻取りドラムの回転軸と平行な方向に移動させる手段と、
を備え、
前記ノズルと前記ガイドとが一体となって移動する。
【0014】
上記構成によれば、微細な繊維を巻取りドラム上に正確、且つ均一なピッチで配列することが可能となる。
【0015】
第2の態様に係る配列性繊維シート製造装置は、上記第1の態様において、前記ガイドは、前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸と平行な方向に押圧してもよい。
【0016】
第3の態様に係る配列性繊維シート製造装置は、上記第1の態様において、前記ガイドは、前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸に対して、垂直な方向に押圧してもよい。
【0017】
第4の態様に係る配列性繊維シート製造装置は、上記第1の態様において、前記ガイドは、
前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸と平行な方向に押圧する第1ガイドと、
前記第1ガイドにより押圧された後の前記繊維を前記巻取りドラムの回転軸に対して、垂直な方向に押圧する第2ガイドと、
により、構成されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、巻取りドラムの回転軸と平行な方向に押圧する第1ガイドと、第1ガイドにより押圧された後の記繊維を巻取りドラムの回転軸に対して、垂直な方向に対し、垂直方向に押圧する第2ガイドと、を有することにより、繊維を所定の配列ピッチを維持したまま、巻取りドラムの極近傍まで、近接させることが可能となる。そこで、ガイドと巻取りドラムとの間の距離が大きいと生じる所定ピッチからのズレを抑制し、極めて正確、且つ均一に繊維を巻取りドラム上に配列することが出来る。
【0019】
第5の態様に係る配列性繊維シート製造装置は、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記ガイドには、少なくとも複数の凹部が形成されていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、ガイドに凹部を設けたことにより、ガイドでの繊維位置ズレを防止することが出来、より正確、且つ均一に繊維を巻取りドラム上に配列することが可能となる。
【0021】
第6の態様に係る配列性繊維シート製造装置は、上記第1から第5のいずれかの態様において、前記ガイドには、前記ガイドを冷却する、冷却手段が備えられていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、ガイドを冷却する手段を備えることで、繊維とガイドとの付着力、言い換えれば、抵抗摩擦力を低減することが出来、断線防止や巻取りドラム上への安定した繊維配列が可能となる。
【0023】
以下、実施の形態に係る配列性繊維シート製造装置について、添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1-1は、実施の形態1に係る配列性繊維シート製造装置100の一例の構成を示す模式図である。図1-2は、図1-1の配列性繊維シート製造装置100の巻取りドラム103の回転軸の方向(X方向)から見た側面図である。なお、図面では、便宜上、巻取りドラム103の回転軸の方向をX方向とし、鉛直上方をY方向とし、図1-1の手前から奥側の方向をZ方向とした。
この配列性繊維シート製造装置100は、ノズル101と、巻取りドラム103と、ガイド105、106と、ノズル移動手段と、を備える。ノズル101によって高分子材料を溶融もしくは溶液状態で押出す。また、巻取りドラム103は、ノズル101から押出された高分子材料が自然冷却もしくは自然乾燥された繊維102を巻取る。ガイド105、106によって繊維102の巻取りドラム103上への巻取り位置を規制する。また、図示しないノズル移動手段によってノズル101を巻取りドラム103の回転軸104と平行な方向に移動させる。この配列性繊維シート製造装置100では、ノズル101とガイド105、106とは、一体となって移動する。
【0025】
この配列性繊維シート製造装置100によって、ポリエチレンフタレートやポリスチレン等の高分子材料が、有機溶剤による膨潤や加熱により、溶融もしくは、溶液状態でノズル101から押し出され、自然冷却もしくは自然乾燥されることにより、固形状態の繊維102が形成される。
この配列性繊維シート製造装置100によれば、ノズル101とガイド105、106とが一体となって移動する構造のため、移動時にガイドが繊維から受ける抵抗摩擦力が極めて小さい。そこで、直径5~20μm程度の微細な繊維102であっても断線すること無く、巻取りドラム103上に正確、且つ均一なピッチで配列できる。そこで、微細且つ均一な配列性を有する繊維シートを安定的に品質良く製造、提供できる。
【0026】
以下に、この配列性繊維シート製造装置100を構成する部材について説明する。
【0027】
<高分子材料>
高分子材料として、例えば、ポリスチレンを採用できる。高分子材料の融点以上の温度に保持することで、溶融状態とすることができる。また、例えば、ペレット状のポリスチレンを有機溶媒であるDMF(N、N-ジメチルホルムアミド)に30重量%膨潤させることで、溶液状態とすることができる。
【0028】
<ノズル>
ノズル101は、上記高分子材料を溶融状態または溶液状態で押し出すことができればよい。
【0029】
<巻取りドラム>
巻取りドラム103は、例えば、回転軸104を中心として回転可能な円筒状のドラムであればよい。この巻取りドラム103によって、ノズル101から押出された高分子材料が自然冷却もしくは自然乾燥された繊維102を巻取る。
【0030】
<ガイド>
ガイド105、106は、繊維102の巻取りドラム103上への巻取り位置を規制するものである。ガイド105、106は、図1-1、図1-2では二つの部材からなるが、これに限られず、1つの部材であってもよい。また、ガイドは、繊維102を巻取りドラム103の回転軸104と平行な方向に押圧してもよい。さらに、ガイドは、繊維102を巻取りドラム103の回転軸104に対して垂直な方向に押圧してもよい。
【0031】
またさらに、ガイド105、106は、繊維102を巻取りドラム103の回転軸104と平行な方向に押圧する第1ガイド105と、第1ガイド105により押圧された後の繊維102を巻取りドラム103の回転軸104に対して垂直な方向に押圧する第2ガイド106と、を備えてもよい。また、ガイド105、106には、複数の凹部、例えば、図2-2に示すような溝107が形成されていてもよい。さらに、ガイド105、106には、ガイド105、106を冷却する冷却手段が備えられていてもよい。
【0032】
<ノズル移動手段>
ノズル移動手段(図示せず)は、ノズル101を巻取りドラム103の回転軸104と平行な方向に移動させるものであればよい。また、ノズル移動手段によって、ノズル101とガイド105、106とを一体となって移動させる。
【0033】
<配列性繊維シートの製造方法>
この配列性繊維シート製造装置100を用いた配列性繊維シートの製造方法を説明する。
(1)実施の形態1では、高分子材料として、例えば、ポリスチレンを採用し、ペレット状のポリスチレンを有機溶媒であるDMF(N、N-ジメチルホルムアミド)に30重量%膨潤させた溶液を用いて、直径5μm径の繊維102を形成できる。
(2)次に、繊維102は、第1ガイド105により、巻取りドラム103における回転軸104と平行な方向(X方向)に押圧される。その後、繊維102は、第2ガイド106により、巻取りドラム103の回転軸104に対し、垂直な方向(Z方向)に押圧されることで、巻取りドラム103上に巻き取られる。
(3)次いで、ノズル101と、第1ガイド105及び第2ガイド106とは、一体となり、巻取りドラム103の回転軸104方向であるA-A’に沿って移動することで、所定の配列性を持って、繊維102は、巻取りドラム103上に巻き取られていく。
(4)巻取りドラム103上に巻き取られる繊維102の間隔は、一体となり移動するノズル101と、第1ガイド105及び第2ガイド106との移動速度の調整により、任意の値で形成可能である。本実施の形態1では、例えば、30μm間隔の配列性を持った繊維シートを形成できる。
【0034】
実施の形態1においては、ノズル101から押し出された繊維102を巻取りドラム103に配列性を持って巻取る工程において、ノズル101と第1ガイド105及び第2ガイド106が一体となって移動する構造を有する。この為、移動時にガイド105、106が繊維102から受ける抵抗摩擦力が極めて小さい。そこで、直径5μm~20μm程度の微細な繊維102であっても、断線すること無く、巻取りドラム103上に安定的に配列することができる。
また、均一な配列性を有する繊維シートの作製には、第1ガイド105及び第2ガイド106と巻取りドラム103とを出来る限り近接させることが好ましい。これによって、ガイド105、106と巻取りドラム103との間に距離が大きい際に生じる所定ピッチからのズレを防止することができる。本実施の形態1では、巻取りドラム103の回転軸104の方向に押圧する第1ガイド105と、第1ガイド105により押圧された後の繊維102を巻取りドラム103の回転軸104の方向に対して垂直方向に押圧する第2ガイド106とを有する。これにより、繊維102を所定の配列ピッチを維持したまま、巻取りドラム103の極近傍まで、近接することができる。この為、第1ガイド105及び第2ガイド106と巻取りドラム103との間の距離は、1mmとなるように構成できる。それにより、30μm間隔という微細ピッチで、繊維102を正確、且つ均一に巻取りドラム103上に配列することができる。
【0035】
尚、図1では記載を省略したが、実際の実施の形態では、巻取りドラム103上には、例えば、フッ素処理等で表面処理された、高い剥離性を有するフィルムを巻きつけておいてもよい。これにより、繊維102の巻取り終了後、高い剥離性を有するフィルムから巻き取られた繊維102を剥離することで、微細且つ均一な配列性を有する繊維シートを作製できる。
【0036】
また、図1では、繊維102を巻取りドラム103における回転軸104と平行な方向(X方向)に押圧する第1ガイド105と、巻取りドラム103の回転軸104に対し、垂直な方向(Z方向)に押圧する第2ガイドとの双方を有する装置構成を示したが、これに限られない。例えば、繊維間の間隔が100μm以上と、それほど微細な配列性を必要としない繊維シートを作製する際などは、第1ガイド105、もしくは、第2ガイド106のどちらかのみを備えた装置構成であってもよい。
【0037】
(実施の形態2)
更に図2-1、図2-2、図3を用いて、実施の形態2に係る配列性繊維シート製造装置100aの一例の構成を説明する。図2-1は、実施の形態2に係る配列性繊維シート製造装置100aの一例の巻取りドラム103の回転軸104の方向から見た側面図である。図2-2は、図2-1の配列性繊維シート製造装置100aの上部Fから見たガイド105、106の平面図である。
図2-1に示すように、配列性繊維シート製造装置100aにおいて、巻取りドラム103上に繊維102を第1ガイド105及び第2ガイド106で押圧しながら巻き取っていく。図2-2に示すように、巻取りドラム103の回転軸104に対して垂直方向(Y方向)の上部Fから見ると、第1ガイド105及び第2ガイド106の繊維102と接触する面には、複数の凹部107が形成されている。実施の形態では、幅20μm、深さ20μmの切込みを20μm間隔で形成している。尚、凹部107の形状、寸法は、図2-2に示す場合に限定するものでは無く、作製する繊維102の直径を鑑みて、好適な形状、寸法で形成すればよい。
【0038】
この配列性繊維シート製造装置100aでは、第1ガイド105及び第2ガイド106に凹部107を形成することで、ガイド105、106での繊維位置ズレを防止することが出来、より正確、且つ均一に繊維102を巻取りドラム103上に配列することが可能となる。
【0039】
設計値30μm間隔で繊維102を配列した際、凹部が形成されていないガイドを用いた場合、出来栄えは、30μm±10μmの間隔であるのに対し、凹部を形成したガイドを用いた場合は、30μm±5μmの均一性を持つ、配列性繊維シートを作製出来る。
【0040】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に係る配列性繊維シート製造装置100bの一例の構成を示す模式図である。
図3に示すように、この配列性繊維シート製造装置100bでは、第2ガイド106に対し、アルミやSUSからなる放熱プレート109とペルチェ素子108とを配置し、第2ガイド106を冷却する機構を備えている。繊維102は、自然冷却された状態で第2ガイド106と接するが、その際、繊維102は、温度に比例した粘性(付着性)を帯びている。繊維102の断線防止や巻取りドラム上への安定した繊維配列を行うには、繊維102と第2ガイド106との付着力、言い換えれば、抵抗摩擦力を出来る限り低減することが望ましい。上記のようにガイド106を冷却する手段を備えれば、自然冷却された状態より、更に繊維102の温度を下げ、付着力を低減することが出来、高品質での繊維配列シート作製が可能となる。なお、本実施の形態3では、冷却手段として、放熱プレート109とペルチェ素子108とで構成される装置事例を示したが、冷却手段はそれに限定されるものではない。
【0041】
また、第2ガイド106に冷却手段を備える事例を示したが、第1ガイド105に冷却手段を備える構成や、第1ガイド105及び第2ガイド106の両方ともに冷却手段を備えた構成であっても構わない。
【0042】
尚、本開示は、図1-1~図3で示した構造及び実施の形態に示す構造に限るものではない。
【0043】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る配列性繊維シート製造装置によれば、微細な繊維を巻取りドラム上に正確、且つ均一なピッチで配列することが可能となり、細胞培養における足場材料や濾過用フィルター等として用いられる、微細且つ均一な配列性を有する繊維シートを安定的に品質良く製造、提供することが出来る。
【符号の説明】
【0045】
100、100a、100b 配列性繊維シート製造装置
101 ノズル
102 繊維
103 巻取りドラム
104 回転軸
105 第1ガイド
106 第2ガイド
107 溝部
108 ペルチェ素子
109 放熱プレート
4 繊維
6 シリンダ
7 爪
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4