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特許7386488包材、その製造方法ならびにそれを用いた発熱組成物収容用袋体及び温熱体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】包材、その製造方法ならびにそれを用いた発熱組成物収容用袋体及び温熱体
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20231117BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20231117BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231117BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231117BHJP
   B65D 81/18 20060101ALI20231117BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
A61F7/08 334B
A61F7/08 334H
B32B27/12
B32B27/20 A
B32B27/32 Z
B65D81/18 F
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023034384
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2019020333の分割
【原出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2023076459
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000112509
【氏名又は名称】フェリック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113402
【弁理士】
【氏名又は名称】前 直美
(72)【発明者】
【氏名】宮下 永二
(72)【発明者】
【氏名】宮下 洋一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光浩
(72)【発明者】
【氏名】岡村 恵美
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-135237(JP,A)
【文献】特開2002-209926(JP,A)
【文献】特開2008-087411(JP,A)
【文献】特開2000-318074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
B32B 27/12
B32B 27/20
B32B 27/32
B65D 81/18
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の存在下で発熱する発熱組成物収容用の袋体であって、その少なくとも一面が、不織布層と、顔料を含有するポリエチレン系樹脂からなる第1の樹脂フィルム層と、顔料を含まないヒートシール性樹脂層からなる第2の樹脂フィルム層とをこの順で有する非通気性包材で構成されており、他の少なくとも一面は、通気性フィルム又はシートで構成されている、発熱組成物収容用の袋体;及び
前記袋体に収容された空気の存在下で発熱する発熱組成物
を含む、衣類又は身体に貼付しないタイプの温熱体
【請求項2】
前記通気性フィルム又はシートが、不織布層と、顔料を含有するポリエチレン系樹脂からなる第1の樹脂フィルム層と、顔料を含まないヒートシール性樹脂層からなる第2の樹脂フィルム層とをこの順で有する非通気性包材に穿孔することによって通気性とされたフィルム又はシートである、請求項1記載の温熱体
【請求項3】
前記顔料が、酸化チタン又は炭酸カルシウムを含む、請求項1又は2記載の温熱体
【請求項4】
前記第1の樹脂フィルム層が、低密度ポリエチレンからなる、請求項1~のいずれか1項記載の温熱体
【請求項5】
前記ヒートシール性樹脂層が、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレンからなる、請求項1~のいずれか1項記載の温熱体
【請求項6】
気密性外袋に収容されている、請求項1~5のいずれか1項記載の温熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気(酸素)と反応して発熱する発熱組成物収容用袋の包材、この包材の製造方法、ならびにこの包材を使用した発熱組成物収容用袋体及び温熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
空気と接触して発熱する発熱組成物を収容した通気性袋を含む温熱体は、温熱により疼痛を軽減するための医療用具や防寒のためのカイロなどとして一般に広く用いられている。このような温熱体は、衣類や身体に貼付するタイプのものと、貼付しないタイプのものに大別することができる。衣類や身体に貼付しないタイプ(以下「ハンドウォーマータイプ」ということがある)の温熱体は、基本的には手で保持したり、衣類やサポーターのポケット等に収納して使用することを想定して設計されている。また、ハンドウォーマータイプには、手やその他の身体部分に装着するための部材を有する温熱体も含まれる。
【0003】
この発熱組成物収容用袋を形成する包材は、鉄粉や活性炭のような黒色の物質を多く含有し黒又は黒に近い色である発熱組成物が、外から透けて見えるのを防止するために、隠蔽性を有することが求められる。また、包材には、発熱により変形や変質を起こしたり、あるいは使用中に破けたりシール部分が切れたりして発熱組成物が漏れないように、包材自体の強度と共に接合部のシール強度も求められる。
【0004】
このような要求を充足するために、一般に、包材は、耐熱性や強度を持たせる目的で使用される不織布層と、ヒートシール製袋性や強度を持たせる目的で使用されるフィルム層とで形成されている。
【0005】
この包材の製造法としては、不織布にフィルム層を1工程で2層押出しラミネートするタンデムラミネート法が多く用いられている。この場合、通常、不織布との接着のための透明な低密度ポリエチレン(LDPE)を1層目とし、ヒートシールのための透明なメタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)を2層目とするように加工される。包材に必要な白度、隠蔽度は、不織布によって調整されている。
【0006】
また、タンデムラミネート法ではなく、予め製膜されたキャストフィルムと不織布との中間層に、接着のための透明なLDPEを1層押出しラミネートする方法も用いられている。この場合、包材の白度、隠蔽度は、不織布もしくはキャストフィルムで調整されている。
【0007】
一般的に、タンデムラミネート法で製造する方が、樹脂が酸化活性化され柔軟性に富んだ仕上がりの包材が得られる。しかし、タンデムラミネート法では不織布との充分なラミネート強度を得ることが困難であり、接着のための透明なLDPEの加工時の樹脂温度を上げ流動接着性を良くするためにエネルギーをより多く消費する等の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-56894号公報
【文献】特開2002-209926号公報
【文献】特開2007-83552号公報
【文献】特開2011-104993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ハンドウォーマータイプの温熱体は、手で触ったり身体等に当てる位置を変えたりしながら使用されるため、柔軟性に富んだ包材が特に望まれている。本発明は、柔軟性に富み、ラミネート強度が高く、ハンドウォーマータイプの温熱体への使用が可能な、発熱組成物を収容する袋体用の包材としての使用に適する包材、また、強度、柔軟性、製造の経済性などの観点でバランスのよい包材、及びそのような包材の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、さらに、そのような包材を使用した、強度、柔軟性、製造の経済性などの点で優れた発熱組成物収容袋体及び温熱体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討して本発明に到達した。すなわち、本発明によれば、
〔1〕空気の存在下で発熱する発熱組成物を収容する袋体を構成するための包材であって、不織布層と、顔料を含有する第1の樹脂フィルム層と、ヒートシール性樹脂層を有する第2の樹脂フィルム層とを、この順で有することを特徴とする包材;
〔2〕前記ヒートシール性樹脂層が、相手フィルム又はシートとヒートシール可能なように前記第2の樹脂フィルム層の表面に位置する、前記〔1〕記載の包材;
〔3〕前記顔料が、酸化チタン又は炭酸カルシウムを含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の包材;
〔4〕前記第1の樹脂フィルム層が、低密度ポリエチレンからなる、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の包材;
〔5〕前記ヒートシール性樹脂層が、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレンからなる、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の包材;
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の包材を製造する方法であって、不織布層に、顔料を含有する第1の樹脂フィルム層をラミネートした後、前記第1の樹脂フィルム層に、ヒートシール性樹脂層を有する第2の樹脂フィルム層をラミネートする工程を含む方法;
〔7〕前記ラミネートを、タンデムラミネート法により行う、前記〔6〕記載の方法;
〔8〕少なくとも一面が、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の包材で形成されている発熱組成物収容用の袋体;
〔9〕前記〔8〕記載の袋体及びこの袋体に収容された空気の存在下で発熱する発熱組成物を含む温熱体;
〔10〕気密性外袋に収容されている、前記〔9〕記載の温熱体
が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タンデムラミネート法で容易に製造することができ、柔軟性に富むだけでなく、ハンドウォーマータイプの温熱体にも適する十分な強度の包材が提供される。本発明により、不織布と樹脂フィルムとのラミネート強度と、袋体形成時の相手包材とのヒートシール強度をいずれも向上させることができる。さらに、接着目的の樹脂フィルム層のみで容易に包材の白度、隠蔽度を上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の包材は、積層シートであり、基本的に、不織布層と、不織布層と第2の樹脂フィルム層との接着機能を担う第1の樹脂フィルム層と、製袋時の相手包材とのヒートシール機能を担う第2の樹脂フィルム層とを含む。
【0013】
不織布
不織布は、発熱組成物収容用袋体又は温熱体用の包材において、一般に温熱体の使用時の吸汗、包材強度の補強、機械適性の改善などの観点から使用される。本発明の包材に使用される不織布は、特に制限はなく、いかなるものであってもよい。たとえば、従来、温熱体及び医療用温熱用具等の技術分野で用いられるものが好適に使用できる。具体的には、材質としては、オレフィン系樹脂、特にポリエチレン系又はポリプロピレン系の樹脂、たとえば、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の人工繊維、及び/又は綿、麻、絹等の天然繊維を含む不織布であることができる。一般に、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の不織布が好適に使用される。
【0014】
不織布を構成する繊維は、複数の樹脂を含む複合繊維、混繊糸等であってもよく、不織布を構成する繊維の融点の下限は、120℃程度であればよく、130℃以上が好ましい。融点は、150℃以上がさらに好ましく、180℃以上が最も好ましい。融点の上限は、特に制限はないが、一般に、300℃程度である。なお、芯鞘構造のような複合繊維の場合は、表面(鞘)を構成する繊維の融点が上記の範囲であることが好ましい。このような複合繊維としては、たとえば、芯がポリプロピレン、鞘がポリエステルのような複合繊維が挙げられる。
【0015】
不織布の製造法としては、スパンボンド、サーマルボンド、スパンレース等が挙げられる。
【0016】
不織布の目付は、不織布材質の比重や交絡法の違いによる嵩高さにより変わってくるが、一般に約10g/m~約200g/m程度のものが適しており、特に約10g/m~約100g/mが好ましく、約10g/m~約50g/mが最も好ましい。温熱体の製造において、製袋時に包材を高速でヒートシールする場合は、包材の厚みの薄いものの方が伝熱が良く、経済的に温熱体を製造することができる。したがって、本発明の包材を高速ヒートロールによる製袋に使用する場合など、熱伝導を特に良くするためには、約15~約40g/mの目付の不織布が最も好ましい。
【0017】
第1の樹脂フィルム層
第1の樹脂フィルム層は、不織布層と第2の樹脂フィルム層との間に位置し、両者を接着する機能を担う層である。第1の樹脂フィルム層を形成する樹脂としては、オレフィン系樹脂を使用することができ、たとえば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等が挙げられる。低密度ポリエチレンが好ましい。
【0018】
第1の樹脂フィルム層の樹脂の融点としては、90℃以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましい。融点の上限は、130℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましい。第1の樹脂フィルム層の厚みとしては、一般に約5μm~100μm程度が適しており、特に約10μm~50μmが最も好ましい。高速でのヒートシールを適用する場合、本発明の包材において、第1の樹脂フィルム層は、厚み15~40μmが最も好ましい。
【0019】
本発明において、この第1の樹脂フィルム層は、顔料を含むことを特徴とする。これにより、樹脂フィルムの熱伝導率が向上し、樹脂の流動接着性が良くなり、ラミネート強度も向上し、ヒートシール強度も向上すると考えられる。
【0020】
顔料としては、フィルムの隠蔽性を高める作用のあるものであれば特に限定されない。たとえば、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化カルシウムなどの、無機顔料、有機顔料、又はいわゆる乳白セラミックスが挙げられる。酸化チタン又は炭酸カルシウムが特に好ましい。顔料は、1種でもよく、2種以上を使用してもよい。
【0021】
顔料の添加量は、第1の樹脂の重量を100%として、顔料正味2~30重量%の範囲であることができる。3~20重量%の範囲が特に好ましい。
【0022】
第2の樹脂フィルム層
第2の樹脂フィルム層は、ヒートシール性がある樹脂を含むものであれば特に限定されず、単層のフィルムでもよく、複層のフィルムでもよい。ヒートシール性のある樹脂層は、ヒートシールする相手フィルム又はシートとのヒートシールが可能なように第2の樹脂フィルム層の表面に位置する、すなわち不織布側(第1の樹脂フィルム層側)ではなく外側に露出するように配置する。相手フィルム又はシートは、ヒートシール可能なものであれば特に限定されない。ヒートシール性樹脂層としては、特にオレフィン系樹脂が好ましく、中でもポリエチレンが好ましく、特に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン又はそれを含むものが最も好ましい。
【0023】
第2の樹脂フィルム層は、ヒートシール性樹脂層のみからなるものであってもよいが、他の層が存在していてもよい。存在していてもよい付加的な層の樹脂としては、一般に、熱可塑性合成樹脂等が使用される。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート等が単独で又は組み合わせで好適に用いられる。
【0024】
第2の樹脂フィルム層の厚みとしては、一般に約3μm~100μm程度のものが適しており、特に約5μm~50μmが最も好ましい。高速でのヒートシールを適用する場合、本発明の包材において、第2の樹脂フィルム層は、厚み10~30μmが最も好ましい。
【0025】
包材の製造方法
本発明の包材は、従来公知の任意の方法により製造することができる。たとえば、予め各フィルム層を公知の方法で製膜した後、ドライラミネーションやホットメルトラミネーション等の公知の方法で不織布とラミネートすることにより製造することができる。各層を、熱接合あるいはホットメルト接着剤又はアクリル系もしくはウレタン系接着剤等の接着剤で積層する方法でもよく、また全面接合であってもよく、柔軟性を保つために部分接合であってもよい。好ましくは、ラミネーション法であり、押出ラミネート法が最も好ましい。
【0026】
タンデムラミネート法は、1工程で連続して2層のフィルムを積層することができ、柔軟性に優れた積層シートが得られるので、特に有利である。具体的には、不織布層に、第1の樹脂フィルム層の樹脂を1基目タンデム押出しラミネート法でラミネートし、続いて、その第1の樹脂フィルム層に、第2の樹脂フィルム層の樹脂を2基目タンデム押出しラミネート法でラミネートすることができる。
【0027】
こうして得られた積層シート包材は、実質的に非通気性であることができる。本発明に関して(実質的に)非通気性であるとは、完全に非通気性であるものに加えて、製造上発生したピンホールによる多少の通気性があるもの、温熱体において非通気性包材として使用する上で支障のない程度の通気性があるものなどを含む趣旨である。言い換えれば、製造過程において意図的に多孔質化又は穿孔などの加工を施したものでなく、その通気性が温熱体において非通気性包材として使用する上で支障のない程度であれば、(実質的に)非通気性である。
【0028】
上記のように製造された実質的に非通気性の包材は、針やレーザー等の公知の方法で穿孔すること等により、通気性の包材とすることもできる。
【0029】
温熱体
本発明の温熱体は、発熱組成物収容用袋及びこれに内包される発熱組成物から基本的に構成され、この発熱組成物収容用袋の少なくとも一面に本発明の包材を備えている。本発明の温熱体は、上記の構成に加えて、任意の付加的な要素を含んでいてもよい。
【0030】
発熱組成物収容用袋の少なくとも一面(通気面)は、通気性フィルム(又はシート)で構成される。通気性フィルムとしては、一般に単層又は多層の多孔質フィルム(特に延伸多孔質フィルム)等が用いられ、多孔質フィルム等と不織布等とのラミネートフィルムが好適に用いられる。多孔質フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化エチレン等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンが好ましく、中でも線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が加工性等の点からより好ましい。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。通気面を構成する包材は、針やレーザーで穿孔し通気性を有した本発明の包材であってもよい。
【0031】
本発明の温熱体における発熱組成物としては、種類に制約はなく従来公知の空気の存在によって発熱する組成物であればすべて適用でき、中でも金属粉を使用した発熱組成物が好適に用いられる。本発明に使用される発熱組成物は、通常、少なくとも金属粉、塩類、水及び保水剤(活性炭)を含有する。
【0032】
金属粉としては、一般的には鉄粉が使用されるが、酸化熱を生じるものであれば、それ以外のものであってもよい。塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の無機塩類が一般に使用される。保水剤としては、一般に活性炭が使用されるが、活性炭以外の保水剤(たとえば吸水性重合体、バーミキュライト、おが屑、シリカ系物質など)を含んでいてもよい。また、必要に応じて従来公知のその他の種々の成分を添加することができる。
【0033】
発熱組成物の組成例として具体的には、鉄粉、還元鉄、活性炭、アルミナ、シリカゲル、木炭、吸水性高分子、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、酢酸、クロル酢酸、水、アクリル系吸水高分子、CMC、ベントナイト、トルマリン(苦土電気石)、トリポリリン酸ソーダ、消石灰、バーミキュライト、木粉、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の発熱原料を適宣配合処方した組成物の使用が好適である。
【0034】
これらの成分の配合例としては、たとえば、発熱組成物の重量を100%として、鉄35~80重量%、活性炭1~20重量%、塩類1~10重量%、水5~45重量%、活性炭以外の保水剤0~45重量%からなるものが挙げられる。
【0035】
発熱組成物は、上記のような必須成分及び必要に応じて選択した任意の成分を、公知の方法で低酸素又は無酸素の条件下で混合することにより製造することができる。発熱組成物は、通気性袋体に収容した状態になれば何れの形態でも構わず、粉体であってもよく、これを公知の方法でさらに加工してもよい。たとえば圧延によるシート状、打錠によるキューブ状などの態様に形成してもよい。また、粘土状、粘性体状、インキ状、クリーム状、スラリー状、液状等の所望形態で使用してもよい。
【0036】
本発明の温熱体は、たとえば以下のようにして製造することができる。本発明の包材及び第2の包材(本発明の包材であっても他の包材であってもよい;たとえば、通気面を構成する包材)を、それぞれ同じ大きさの長方形(たとえば縦10~20cm、横5~10cm)等の所定形状に裁断する。本発明の温熱体は、台上に、本発明の包材の不織布面を下向き、第2の樹脂フィルム層のヒートシール性樹脂層を上向きに設置し、その上に、包材より小さく成形した発熱組成物を置き、さらに、発熱組成物を覆うように、第2の包材の樹脂フィルム層を下向きで重ね合わせ、ヒートシール装置により所定の温度で周縁部をヒートシールすることにより、製造することができる。あるいは、本発明の包材を、不織布層が外側になるように第2の包材と重ね合わせ、その周辺部の3つの辺を熱圧着又は粘着剤等の手段でシールすることによって袋体を得、次に、シールされていない開口部から発熱組成物を入れ、開口部を熱圧着等によりシールすることによっても製造することができる。
【0037】
さらに、本発明の温熱体は、当業界において通常使用されている回転ヒートシールロール式製造機を用いて、上記のヒートシールによる製袋及び発熱組成物封入を回転ロール上で一連で行い、長尺の包材から連続的に製造することができる。
温熱体の回転ロール式製造機は、長尺の包材と発熱組成物を連続して供給してヒートシールすることにより、矩形状等の温熱体を長手方向に連接するようにして形成し、連接された温熱体の連接部を裁断することによって複数の矩形状等の温熱体を連続して得るようにしたものである。本発明の温熱体を製造する場合、この回転ロール式製造機は、片面側の包材及び他面側の包材を搬送するガイド、1組以上の回転式ヒートシールロール及び1組の裁断ロールにより構成されている。回転式ヒートシールロールには、発熱組成物が充填できるように略箱状の凹部が設けられており、前記凹部の周部には、たとえば長手方向が幅14mm、軸方向が幅18mmの、シール面が設けられている。また前記シール面の断面形状は凹凸状に形成されており、シール面端部には、たとえば曲率半径1mmの、アール(R)を設けることもできる。回転ロール式製造機は、さらに発熱組成物をヒートシールロールの凹部に供給する発熱組成物供給手段(ホッパー)を備えていてもよい。
【0038】
外袋
温熱体は、通常、酸素を遮断する気密性の包装(外袋)に密閉して使用時まで保存される。このような外袋の材質、製造については公知である。
【実施例
【0039】
積層シート包材の製造
<実施例1>
PETスパンレース不織布(目付40g/m、Hangzhou Nbond Nonwoven社製)にLDPE樹脂(厚み30μm、東ソー社製LDPE樹脂に、DIC社製「PEONY HP WHITE C-11186MPT」70%濃度酸化チタン乳白マスターバッチをLDPE樹脂重量の10重量%添加)を1基目タンデム押出しラミネート法でラミネートした。そのLDPE面にmLLDPE樹脂(厚み15μm、日本ポリエチレン社製)を2基目タンデム押出しラミネート法で同じ工程で連続してラミネートした。全光線透過率の測定は、JIS K-7361-1試験方法でヘーズメーターを使用して行い、幅方向にn=5の測定をした平均値を全光線透過率とした。その結果、ラミネートされた包材の全光線透過率は33.4%であった。
【0040】
<比較例1>
PETスパンレース不織布(目付40g/m、Hangzhou Nbond Nonwoven社製)にLDPE樹脂(厚み30μm、東ソー社製)を1基目タンデム押出しラミネート法でラミネートした。そのLDPE面にmLLDPE樹脂(厚み15μm、日本ポリエチレン社製)を2基目タンデム押出しラミネート法で同じ工程で連続してラミネートした。ラミネートされた包材の全光線透過率は56.4%であった。
【0041】
<実施例2>
PPスパンボンド不織布(目付30g/m、Shandong HaiWei Hygiene New Material社製)にLDPE樹脂(厚み30μm、東ソー社製LDPE樹脂に、DIC社製「PEONY HP WHITE C-11186MPT」70%濃度酸化チタン乳白マスターバッチをLDPE樹脂重量の10重量%添加)を1基目タンデム押出しラミネート法でラミネートした。そのLDPE面にmLLDPE樹脂(厚み15μm、日本ポリエチレン社製)を2基目タンデム押出しラミネート法で同じ工程で連続してラミネートした。ラミネートされた全光線透過率は36.5%であった。
【0042】
<比較例2>
PPスパンボンド不織布(目付30g/m、Shandong HaiWei Hygiene New Material社製)にLDPE樹脂(厚み30μm、東ソー社製)を1基目タンデム押出しラミネート法でラミネートした。そのLDPE面にmLLDPE樹脂(厚み15μm、日本ポリエチレン社製)を2基目タンデム押出しラミネート法で同じ工程で連続してラミネートした。ラミネートされた全光線透過率は71.4%であった。
【0043】
性能試験
<試験例1>
上記で製造した各積層シート包材の不織布‐LDPE間のラミネート強度を、以下のようにして測定した。横15mm巾×縦150mm長の短冊状試験片を切り出し、試験片の端部を手で剥がして、フィルム端部、不織布端部をクランプした。速度300mm/分にて180度方向に引き剥がし、荷重測定器にて測定した値の平均値をラミネート強度とした。
【0044】
結果を表1に示す。
【表1】
【0045】
表1に示した結果より、第1の樹脂フィルム層に顔料を含ませることにより、樹脂フィルムの熱伝導率が向上し、樹脂の流動接着性が良くなり、ラミネート強度が向上したと考えられる。
【0046】
ヒートシール強度の測定
<試験例2>
上記で製造した積層シート包材のヒートシール強度を、以下のようにして測定した。ヒートシールする相手側包材として、同じく上記で製造した積層シート包材を使用した。第2の樹脂フィルム層が向き合うようにカイロ製造機にセットして、インラインで一方の積層シート包材に針で穿孔しながら、5.74m/分の速度のカイロ製造機で種々の温度で周辺部をヒートシールして、短辺100mm×長辺135mmの矩形のカイロを作製した。なお、シール方向は短辺が横シール、長辺が縦シールとなり、シール幅は横シール9mm、縦シール7mmである。
引張試験機(アイコーエンジニアリング製、MODEL1301-D,0113)を用いて上記のようにヒートシールした部分のシール強度を測定した。まず、矩形の袋の4辺の各シール部分を15±0.5mm×35±5mmの大きさに切り取り、試料とした。引張試験機のチャッキング間隔が40±5mmになるように上限調節リングねじをセットした。試験機のPEAKスイッチを押し、ランプを点灯させた。試料の一端(5~10mm)を試験機(上)チャッキング部にはさみ、試料の他の端を(下)チャッキング部にはさんだ。引張スピードを300(mm/分)にセットし、測定を開始した。試料の破壊又は引張の動きの停止が起こったら、測定MAX値を記録した。
【0047】
結果を表2に示す。なお、表2において、シール強度の「n=1」「n=2」は、それぞれ矩形の縦又は横シールされた各辺の番号を表す。
【表2】
【0048】
表2の結果より、第1の樹脂フィルム層に顔料を含ませることにより、樹脂フィルムの熱伝導率が向上し、ヒートシール強度が向上したと考えられる。また、表1の結果に示されているように、樹脂の流動性が良くなりラミネート強度が向上したことも、縦ヒートシール強度の向上に寄与したと考えられる。