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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】スリッターの刃物位置決め機構
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/02 20060101AFI20231117BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B26D1/02 A
B26D7/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019177907
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053727
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000151667
【氏名又は名称】株式会社東伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 哲
(72)【発明者】
【氏名】栗塚 隆臣
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 崇
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-144575(JP,A)
【文献】実開昭49-129189(JP,U)
【文献】特開2008-279569(JP,A)
【文献】特公昭47-027194(JP,B1)
【文献】実開昭63-083293(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/02
B26D 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反から巻き出したウエブを第1刃物および第2刃物の間で切断し、所定幅に切断したウエブを巻き取って製品を得るスリッターの刃物位置決め機構であって、
前記第1刃物が設けられた第1刃物軸を支持する対をなすホルダのそれぞれに対応して設けられ、スリッターのフレームに固定された基部を貫通する送りねじの回転によって該ホルダを前記第1刃物と前記第2刃物とのオーバーラップ量が変化するように直線的に移動する送りねじ機構部と、
前記基部に配置された前記送りねじを中心として一端が軸支されると共に他端が前記ホルダに軸支されたアームと、対をなすアームの他端間に架設された連係部とによる平行リンクを有し前記連係部が前記第1刃物軸の軸方向へ移動されることより、該ホルダを前記第1刃物と前記第2刃物とのオフセット量が変化するように移動する平行リンク機構部と、を備えている
ことを特徴とするスリッターの刃物位置決め機構。
【請求項2】
一方の前記送りねじ機構部の送りねじおよび他方の前記送りねじ機構部の送りねじを、同期して回転するように連係する連係軸と、
前記連係軸を作動する駆動手段と、を備えている請求項1記載のスリッターの刃物位置決め機構。
【請求項3】
前記平行リンク機構部の前記連係部をオフセット方向へ移動する作動手段を備えている請求項1または2記載のスリッターの刃物位置決め機構。
【請求項4】
前記平行リンク機構部による前記第1刃物のオフセット方向の移動を規制するストッパを備えている請求項1~3の何れか一項に記載のスリッターの刃物位置決め機構。
【請求項5】
前記アームと、該アームの前記送りねじ側を支持する基部との間に、該アームを該送りねじ側へ付勢するばねが配置されている請求項1~4の何れか一項に記載のスリッターの刃物位置決め機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スリッターにおいて、第1刃物と第2刃物のオーバーラップ量やオフセット量を調節するための刃物位置決め機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば図17に示すように、原反ロール14から巻き出されてローラRに案内されて走行するウエブ12を切断手段202によって流れ方向に切断し、所定幅に切断したウエブ12をロール状に巻き取って製品ロール16を形成するスリッター200がある。このようなスリッターの切断手段は、円筒形の上刃と円筒形の下刃とを噛み合わせて、ウエブを切断している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-327818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような切断手段では、上刃の外周縁と下刃の外周縁との重なり度合いを示すオーバーラップ量や、上刃の外周縁と下刃の外周縁との間隔を示すオフセット量を、ウエブの厚さや材質などに応じて調節することが、ウエブの良好な切断面を得るうえで必須である。従って、オーバーラップ量およびオフセット量を精度よく調節することができる切断手段が求められている。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、第1刃物と第2刃物とのオーバーラップ量やオフセット量を精度良く調節できるスリッターの刃物位置決め機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のスリッターの刃物位置決め機構は、
原反から巻き出したウエブを第1刃物および第2刃物の間で切断し、所定幅に切断したウエブを巻き取って製品を得るスリッターの刃物位置決め機構であって、
前記第1刃物が設けられた第1刃物軸を支持する対をなすホルダのそれぞれに対応して設けられ、送りねじの回転によって該ホルダを前記第1刃物と前記第2刃物とのオーバーラップ量が変化するように直線的に移動する送りねじ機構部と、
一端が前記送りねじを中心として軸支されると共に他端が前記ホルダに軸支されたアームおよび対をなすアームの他端間に架設された連係部によって、該ホルダを前記第1刃物と前記第2刃物とのオフセット量が変化するように移動する平行リンク機構部と、を備えていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、第1刃物が設けられた第1刃物軸を保持するホルダを送りねじ機構部によって直線的に移動する構成であるので、オーバーラップ量を精度よく調節できる。また、第1刃物が設けられた第1刃物軸を保持する対をなすホルダを平行リンク機構部によって移動する構成であるので、オフセット量を精度よく調節することができる。
【0007】
請求項2に係る発明では、一方の前記送りねじ機構部の送りねじおよび他方の前記送りねじ機構部の送りねじを、同期して回転するように連係する連係軸と、
前記連係軸を作動する駆動手段と、を備えていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、第1刃物が設けられた第1刃物軸を保持する対をなすホルダをオーバーラップが変化する方向に移動する送りねじ機構部が、駆動手段で回転される連係軸で同期して作動される構成であるので、オーバーラップ量を精度よく調節できる。また、駆動手段で送りねじ機構部を作動するので、作業者の負担を軽減できる。
【0008】
請求項3に係る発明では、前記平行リンク機構部の前記連係部をオフセット方向へ移動する作動手段を備えていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、作動手段で平行リンク機構部を作動するので、作業者の負担を軽減できる。
【0009】
請求項4に係る発明では、前記平行リンク機構部による前記第1刃物のオフセット方向の移動を規制するストッパを備えていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、ストッパによる簡単な構成によって平行リンク機構部を移動規制して、オフセット量を精度よく調節することができる。
【0010】
請求項5に係る発明では、前記アームと、該アームの前記送りねじ側を支持する基部との間に、該アームを該送りねじ側へ付勢するばねが配置されていることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、送りねじのバックラッシを防止して、オーバーラップ量を精度よく調節できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスリッターの刃物位置決め機構によれば、第1刃物と第2刃物とのオーバーラップ量やオフセット量を精度良く調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るスリッターを概略的に示す説明図である。
図2】実施形態のスリッターを後側から示す背面図である。
図3】実施形態のウエブ端末吸着装置の台部を示す概略斜視図である。
図4】実施形態のウエブ端末吸着装置を示す平面図であり、台部を2点鎖線で示す。
図5】実施形態のウエブ端末吸着装置を示す側面図であり、台部を2点鎖線で示す。
図6】実施形態のウエブ端末吸着装置を示す回路図である。
図7】実施形態のウエブ端末吸着装置によるウエブの繋ぎ合わせ工程を示す説明図である。
図8】実施形態の切断手段を示す平面図である。
図9】実施形態の切断手段を示す背面図である。
図10】実施形態の切断手段における第1刃物の位置決め構造を示す概略斜視図である。
図11】実施形態の切断手段における第1刃物の位置決め構造の要部を示す平面図である。
図12】実施形態の切断手段における第1刃物の位置決め構造の要部を示す縦断面図である。
図13】実施形態の切断手段における第1刃物の位置決め構造の要部を示す背面図である。
図14】実施形態の調整ローラユニットを、巻き取り部の正面側から概略的に示す斜視図である。
図15】実施形態の調整ローラユニットの1つを概略的に示す斜視図である。
図16】実施形態の調整ローラユニットを概略的に示す側面図であり、(a)はウエブの巻き取り時の状態を示し、(b)は調整ローラユニットを製品ロールから退避させた状態を示す。
図17】従来例に係るスリッターを概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係るスリッターの刃物位置決め機構につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【0014】
ウエブに所定の処理を施すウエブ処理機としては、ウエブを必要な幅にカットしてロール状に巻き取る加工を行うスリッターや、加工ラインにおいて一旦巻き取ったウエブを仕上げ加工や2次加工などの処理をした後に再び巻き取るリワインダーなどが挙げられる。以下の実施形態では、スリッターを例示して説明する。また、ウエブとしては、合成樹脂からなるフィルム、ペーパー、アルミニウムなどの金属箔等を挙げることができ、ウエブを巻芯に巻き掛けたロール状物をロールという。そして、特に区別する場合は、ウエブが巻き出される処理前のロールを「原反ロール(または原反)」といい、所定処理後のウエブを巻き取って形成されるロールを「製品ロール(または製品)」という。
【実施例
【0015】
(スリッターの概要)
図1に示すように、実施形態に係るスリッター(ウエブ処理機)10は、原反ロール(原反)14を支持する巻き出し部18と、ウエブ12を所定幅で切断する切断手段20と、所定幅に切断されたウエブ12を巻き取って製品ロール(製品)16とする巻き取り部22とを備えている。スリッター10には、巻き出し部18と巻き取り部22との間に設置された複数の本体ローラ(ローラ)Rによって、ウエブ12が巻き出し部18から巻き取り部22に向かって走行するパスラインが構成されている。また、スリッター10は、巻き取り部22において、巻取軸24に保持された巻芯26に巻き取るウエブ12を整える調整ローラ28,30を有する調整ローラユニット(ローラユニット)32を備えている。スリッター10は、巻き出し部18に支持された原反ロール14から巻き出されたウエブ12を、パスラインの途中で切断手段20によって該ウエブ12の流れ方向に切断し、所定幅にしたウエブ12を巻き取り部22で複数箇所に分けて巻芯26にそれぞれ巻き取って、所定幅のウエブ12が巻かれた製品ロール16を得るように構成されている。
【0016】
以下の説明では、スリッター10において、巻き出し部18が設けられる側を前側とし、巻き取り部22が設けられる側を後側として、前後方向を指称する。従って、実施形態では、巻き出し部18に使用者がアクセスする正面側が、スリッター10の前面であり、巻き取り部22に使用者がアクセスする正面側が、スリッター10の後面である。また、スリッター10では、前後方向と交差する水平方向を左右方向といい、左右方向が巻芯26の軸方向になるように原反ロール14および製品ロール16が支持されて、ウエブ12の幅方向が左右方向になっている。そして、巻き出し部18からパスラインを経て巻き取り部22に向かうウエブ12の走行方向を、ウエブ12の流れ方向といい、図1に示すように、ウエブ12の流れ方向はローラRに案内されて向きが変化する。
【0017】
スリッター10は、使用者が作業する側を手前といい、その反対側を奥という場合もある。巻き出し部18に使用者がアクセスする場合は、スリッター10の前面側が手前となると共にスリッター10の後面側が奥となる。一方、切断手段20、巻き取り部22および調整ローラユニット32には、スリッター10の後面側からアクセスするので、スリッター10の後面側が手前となると共にスリッター10の前面側が奥となる。
【0018】
(巻き出し部)
図1に示すように、巻き出し部18は、原反ロール14を支持する原反ロール支持部34と、原反ロール14から巻き出されたウエブ12を案内する複数のガイドローラ38を備えたガイドローラユニット36とを備えている。巻き出し部18は、原反ロール支持部34で支持された原反ロール14と、ガイドローラ38(ガイドローラユニット36)とが同調して、左右方向(原反ロール14における巻芯26の軸方向)に移動するように構成されている。巻き出し部18は、図示しないセンサによって原反ロール14から引き出されたウエブ12の縁を検知することでウエブ12の左右方向の位置ずれを判別し、この結果をもとに、原反ロール14およびガイドローラ38,38を左右方向に往復移動させている。これにより、巻き出し部18は、原反ロール14に巻き掛けられたウエブ12が左右方向へ位置ずれしているなどに起因して、原反ロール14から引き出されたウエブ12が蛇行することを防止している。
【0019】
(ウエブ端末吸着装置)
図1に示すように、ガイドローラユニット36には、巻き取り部22に巻き取られたウエブ12の終端と、新たに原反ロール支持部34(巻き出し部18)にセットされた原反ロール14から巻き出したウエブ12の始端とを繋ぐ際に用いられるウエブ端末吸着装置40が設けられている。図1および図3~5に示すように、ウエブ端末吸着装置40は、ウエブ12のパスラインにおいてウエブ12を支持可能に構成された台部42を備えている。図6に示すように、ウエブ端末吸着装置40は、コンプレッサー44から供給される圧縮空気によって負圧を生成するエジェクタによる負圧発生器46を備えている。図4および図6に示すように、ウエブ端末吸着装置40は、負圧発生器46に接続された気筒部48と、気筒部48に設けられて、負圧発生器46で生成された負圧によりウエブ12を吸着可能に構成された複数の吸着ヘッド50とを備えている。
【0020】
(台部)
図1に示すように、台部42は、ガイドローラユニット36において2基のガイドローラ38(第1ガイドローラ38Aおよび第2ガイドローラ38B)によって前後方向に水平に流れるウエブ12の下側に対応して設置されている。台部42は、吸着したウエブ12を支持する上面が、ウエブ12のパスラインに合わせて水平に形成されている。また、台部42は、原反ロール支持部34および原反ロール支持部34にセットされた原反ロール14の上側に配置され、スリッター10の前面側(巻き出し部18の手前側)から使用者の手が届くようにアクセス可能になっている。図3図5に示すように、台部42は、ウエブ12の流れ方向に並べて配置した2枚の板状体によって上面が構成されて、2枚の板状体の間に左右方向に延びるスリット42aが設けられている。
【0021】
(負圧発生器および気筒部)
図6に示すように、ウエブ端末吸着装置40は、1基の負圧発生器46に対して1本の気筒部48が繋がっており、負圧発生器46とこの負圧発生器46に繋がる気筒部48の組からなる吸着部45を、複数備えている。吸着部45は、台部42の上側を通るウエブ12に対して台部42を挟んで反対側となる台部42の下側に配置されて、台部42で上側が覆われている。図4に示すように、複数(実施形態は3基)の気筒部48が、台部42の下側において左右方向(ウエブ12の流れ方向と交差する方向)に並べて配置されている。また、左右方向に並ぶ気筒部48の列が、台部42の下側においてウエブ12の流れ方向に複数(実施形態は2列)配列されている。また、気筒部48は、長手が左右方向に延びるように配置され、複数(実施形態は3基)の吸着ヘッド50が長手方向(左右方向:ウエブ12の流れ方向と交差する方向)に互いに離して設けられている。
【0022】
(吸着ヘッド)
図3図5に示すように、吸着ヘッド50は、台部42に上下方向に貫通して形成された開口に嵌め合わせて設置され、台部42からウエブ12側に臨むようになっている。吸着ヘッド50は、ウエブ12に接するヘッド部分が、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどの弾力性を有する弾性体で構成されている。
【0023】
ウエブ端末吸着装置40は、吸着部45が、左右方向に並べて3セット配置されると共に、左右方向に並ぶ複数の吸着部45の列が、ウエブ12の流れ方向に並べて2列設置されている。図6に示すように、ウエブ端末吸着装置40は、ウエブ12の流れ上流側(手前側)に設置された吸着部45と、ウエブ12の流れ方向下流側(奥側)に設置された吸着部45とが、互いに独立して作動可能に構成されている。また、ウエブ端末吸着装置40は、左右方向に並ぶ同じ列の吸着部45が1つのグループとして作動可能に構成されている。ウエブ端末吸着装置40は、流れ方向上流側の吸着部45のグループと、流れ方向下流側の吸着部45のグループとの両方を作動または作動停止したり、一方のグループを作動するのに対して他方のグループを作動停止したりするなど、グループ毎で作動状態を切り替え可能である。実施形態では、1つのコンプレッサー44から吸着部45の前記グループ毎に圧縮空気を送る経路が分岐し、この分岐経路毎に圧縮空気の流通を制御する電磁弁などの切替手段52が設けられている(図6参照)。そして、切替手段52の下流側において、3基の吸着部45(負圧発生器46)対応して、圧縮空気を送る経路が分岐している。
【0024】
スリッター10では、原反ロール14から巻き出されたウエブ12が、ウエブ端末吸着装置40の台部42の上を通るように案内されている(図7(a)参照)。新しい原反ロール14に交換するとき、ウエブ端末吸着装置40を作動することで、製品ロール16に繋がるウエブ12の終端が吸着ヘッド50によって吸着されて台部42上で保持される(図7(c)参照)。この状態で、スリット42aを利用してウエブ12の終端をカットしたり、両面テープの貼付や接着剤の塗布等の接続準備を行ったりするなど、所要の処理を行うことができる。新しい原反ロール14に交換して(図7(c)参照)、原反ロール14からウエブ12を台部42上に巻き出し、ウエブ12の始端を吸着ヘッド50によって吸着して台部42上で保持する(図7(d)参照)。この状態で、スリット42aを利用してウエブ12の始端をカットしたり、両面テープの貼付や接着剤の塗布などの接続準備を行ったり、ウエブ12の終端とウエブ12の始端とを接続したりするなど、所要の処理を行うことができる。
【0025】
(ウエブ端末吸着装置の作用効果)
ウエブ端末吸着装置40は、スリッター10で対応する最大幅のウエブ12を吸着保持できるように複数の吸着ヘッド50が設けてあるが、例えば最大幅よりも狭小な幅のウエブ12であると、左右方向外側に配置された吸着ヘッド50がウエブ12で覆われないことがある。しかし、ウエブ端末吸着装置40は、エジェクタによる負圧発生器46によって負圧を生成しているので、ウエブ12で一部の吸着ヘッド50が覆われなくても負圧が破壊されることはなく、ウエブ12で覆われた吸着ヘッド50によってウエブ12を適切に吸着して保持することができる。また、ウエブ端末吸着装置40は、吸着ヘッド50がウエブ12で覆われているか否か、あるいは台部42とウエブ12との間の隙間の有無によって、吸着ヘッド50の吸着性能が影響を受け難く、ウエブ12をしっかりと保持することができる。ウエブ端末吸着装置40は、ウエブ12によって覆われない吸着ヘッド50が生じても、当該吸着ヘッド50に蓋をする等の手間がかからず、ウエブ12の段取り替え作業などの効率化に寄与し得る。
【0026】
ウエブ端末吸着装置40は、左右方向に並ぶ複数の気筒部48のそれぞれに設けられた吸着ヘッド50によって、ウエブ12を左右方向に亘って適切に吸着して保持することができる。気筒部48には、左右方向に並べて複数の吸着ヘッド50が設けられているので、複数の吸着ヘッド50によって、ウエブ12を左右方向に亘って適切に吸着して保持することができる。しかも、気筒部48毎に負圧発生器46が設けられて系統が互いに独立した吸着部45を構成しているので、左右方向に並ぶ気筒部48毎に区画して独立した吸着領域が形成される。従って、ある吸着領域がウエブ12からはみ出したとしても、ウエブ12で覆われた他の吸着領域では、吸着ヘッド50で吸着してウエブ12を適切に保持することができる。
【0027】
ウエブ端末吸着装置40は、流れ方向に並ぶ複数の気筒部48のそれぞれに設けられた吸着ヘッド50によって、ウエブ12を流れ方向に適切に吸着して保持することができる。しかも、気筒部48毎に負圧発生器46が設けられて系統が互いに独立した吸着部45を構成しているので、流れ方向に並ぶ気筒部48毎に区画して独立した吸着領域が形成される。従って、ある吸着領域がウエブ12からはみ出したとしても、ウエブ12で覆われた他の吸着領域では、吸着ヘッド50で吸着してウエブ12を保持することができる。また、流れ方向上流側の吸着領域にウエブ12の始端を配置する前であっても、流れ方向下流側の吸着領域の吸着ヘッド50で吸着してウエブ12の終端を保持することができ、また逆のパターンも可能である。
【0028】
ウエブ端末吸着装置40は、独立して作動する吸着部45がウエブ12の流れ方向に並べて設けてあるので、例えば、流れ方向下流側の吸着部45でのウエブ12の終端を保持または保持解除と、流れ方向下流側の吸着部45でのウエブ12の始端を保持または保持解除とを個別に行うことができる。このように、ウエブ端末吸着装置40は、作業性に優れ、使い勝手がよい。
【0029】
(切断手段)
次に、図8図13を主に参照して、パスラインにおいて第1刃物54と第2刃物56との間でウエブ12を流れ方向に切断する切断手段20について、特に第1刃物54の位置を調節する刃物位置決め機構を説明する。なお、実施形態では、左右方向へ離して配置される複数組の刃物54,56によって、複数個の製品ロール16を形成するようにウエブ12を切断している。なお、実施形態では、刃物54,56として、ゲーベル刃を例示しているが、他の種類の刃物であってもよい。
【0030】
(切断手段-概要)
図9に示すように、切断手段20は、左右方向(ウエブ12の流れ方向と直交する方向)に延びるように支持された第1刃物軸58に、左右方向に離して設けられた第1刃物(上刃)54を備えている。切断手段20は、第1刃物軸58の下側に該第1刃物軸58と平行に設けられた第2刃物軸60に、第1刃物54に対応して左右方向に離して設けられた第2刃物(下刃)56を備えている(図13参照)。切断手段20は、刃物位置決め機構によって、第1刃物54と第2刃物56とが重なり合う量(オーバーラップ:図12参照)を調節可能であると共に、第1刃物54と第2刃物56との間隔(オフセット:図13参照)を調節可能になっている。以下の説明では、第1刃物軸58が第2刃物軸60に対して接近又は離間してオーバーラップ量が変化する方向をオーバーラップ方向という。また、第1刃物54が第1刃物軸58の軸方向に移動することで、第1刃物54が第2刃物56に対して接近又は離間してオフセット量が変化する方向をオフセット方向という。なお、実施形態では、刃物位置決め機構が第1刃物54の第1刃物軸58を支持する取付ブロック62,62に設けられ、第2刃物56はオーバーラップ方向およびオフセット方向に動かないように固定されている。
【0031】
(刃物位置決め機構)
図8および図9に示すように、第1刃物軸58の端部のそれぞれが取付ブロック62で支持されている。左右2つの取付ブロック62,62を区別する場合は、第1刃物軸58の右端を支持する取付ブロック62を右取付ブロック62Aといい、第1刃物軸58の左端を支持する取付ブロック62を左取付ブロック62Bという。各取付ブロック62は、スリッター10のメインフレーム11Aに固定されたブロック基部(基部)64と、ブロック基部64に対して移動可能に支持されたブロックアーム(アーム)66と、ブロックアーム66に支持されて、第1刃物軸58を着脱可能に保持する軸ホルダ(ホルダ)68とを備えている。刃物位置決め機構は、送りねじ機構部によってブロックアーム66がブロック基部64に対してオーバーラップ方向(上下方向)に移動されて、軸ホルダ68と共に第1刃物軸58がオーバーラップ方向に移動することで、第1刃物54をオーバーラップ方向に移動させる。また、刃物位置決め機構は、平行リンク機構部によってブロックアーム66がブロック基部64に対してオフセット方向(左右方向)に回動されて、軸ホルダ68と共に第1刃物軸58がオフセット方向に回動することで、第1刃物54をオフセット方向に移動させる。
【0032】
(送りねじ機構部)
図12に示すように、ブロックアーム66は、該ブロックアーム66の一端から下方へ延びる案内軸70が、ブロック基部64の下部に軸支されて、ブロック基部64に対して案内軸70を中心として上下方向の軸周りに回動可能になっている。また、ブロックアーム66の他端には、軸ホルダ68が上下方向の軸周りに回動可能に軸支されている。取付ブロック62には、ブロック基部64の上部を上下方向に貫通して送りねじ72が設けられ、ブロックアーム66の一端に案内軸70と同軸的に形成された雌ねじ部66aに送りねじ72が螺合している。送りねじ72の上端には、ウォームホイール74が設けられ、ウォームホイール74が、オーバーラップ用モータ(駆動手段)76によって回転駆動される連係軸78に設けられた円筒ウォーム80と噛み合っている。オーバーラップ用モータ76は、右取付ブロック62Aに設置されている。連係軸78は、右取付ブロック62Aおよび左取付ブロック62Bの間に左右方向に架設され、左右の取付ブロック62A,62Bの送りねじ74のウォームホイール74に対応して、連係軸78に2基の円筒ウォーム80が左右に離して設けられている。オーバーラップ用モータ76を駆動して連係軸78を回転すると、各円筒ウォーム80に噛み合ったウォームホイール74の回転に伴って送りねじ72が回転することで、送りねじ72と雌ねじ部66aとの噛み合いによりブロックアーム66が上下方向(オーバーラップ方向)に直線的に移動する。このように、送りねじ機構部は、軸ホルダ68のそれぞれに対応して設けられた送りねじ72の回転によって、軸ホルダ68を第1刃物54における第2刃物56とのオーバーラップ量が変化するように直線的に移動する。左右のブロックアーム66は、左右の送りねじ62が同期して同じ方向へ回転されるので、同期して上下方向(オーバーラップ方向)における同じ方向に移動する。
【0033】
右取付ブロック62Aには、ブロックアーム66の上下方向(オーバーラップ方向)の位置を検出する位置検出手段82が設けられ、位置検出手段82としては、例えば、ポテンショメータを用いている。送りねじ機構部は、位置検出手段82で読み取った情報(数値)に基づいてオーバーラップ用モータ76を駆動制御することで、オーバーラップ量を数値的に管理可能に構成されている。
【0034】
図12に示すように、取付ブロック62には、ブロックアーム66と、ブロックアーム66の送りねじ72側を支持するブロック基部64との間に、ブロックアーム66を送りねじ62側へ付勢するばね83が配置されている。実施形態のばね83は、案内軸70にコイル部分を嵌め合わせて、ブロックアーム66とブロック基部64の下部との間に設置された圧縮コイルばねであり、ブロックアーム66を下側から上側の送りねじ72に向けて弾力的に付勢している。
【0035】
(平行リンク機構部)
平行リンク機構部は、一端が送りねじ72を中心として軸支されると共に他端が軸ホルダ68に軸支された左右のブロックアーム66,66と、左右対をなすブロックアーム66,66の他端間に架設された連係バー(連係部)84とを備えている。平行リンク機構部は、左右のブロックアーム66,66と連係バー84とによって構成される平行リンクによって、左右の軸ホルダ68,68を第1刃物54と第2刃物56とのオフセット量が変化するように同期して左右方向へ移動している。具体的には、連係バー84は、左取付ブロック62Bに設置されたオフセット用シリンダ(作動手段)86によって左右方向に移動される。また、左取付ブロック62Bには、平行リンク機構部の平行リンクの左方への移動を規制するストッパ87が設けられ、左側のブロックアーム66B(または左側の軸ホルダ68)がストッパ87に当たって平行リンク機構部の平行リンクが位置決めされる。ストッパ87は、左取付ブロック62Bに対して送りねじ部分が噛み合っており、自身の回転により左右方向に直線的に移動する送りねじ構造である。ストッパ87は、ストッパレバー87aにより回転することで、自身の左右方向の位置を変更可能であり、実施形態では、回転量(回転角度)に伴う左右方向の移動量を判別可能であることで、オフセット量を数値的に管理可能に構成されている。
【0036】
(刃物位置決め機構の作用効果)
オーバーラップ用モータ76の駆動により連係軸78が回転すると、円筒ウォーム80およびウォームホイール74の噛み合いにより送りねじ72が回転する。雌ねじ部66aと送りねじ72との噛み合いによって、ブロックアーム66が案内軸70でガイドされたもとで、上または下へ移動する。これによりブロックアーム66に支持された軸ホルダ68に保持された第1刃物軸58が上へ移動することで、第1刃物54の外周縁が第2刃物56の外周縁との重なりが小さくなるように調節される。これに対して、ブロックアーム66に支持された軸ホルダ68に保持された第1刃物軸58が下へ移動することで、第1刃物54の外周縁が第2刃物56の外周縁との重なりが大きくなるように調節される。このように、第1刃物54が設けられた第1刃物軸58を保持する軸ホルダ68を、ブロックアーム66を介して送りねじ機構部によって直線的に移動する構成であるので、オーバーラップ量を精度よく調節できる。このとき、位置検出手段82によるオーバーラップ量の検出に基づいて送りねじ機構部を制御することで、オーバーラップ量を精度よく、また再現性よく調節することができる。しかも、オーバーラップ量を数値として把握することができるので、ウエブ12の厚さや材質等に応じたオーバーラップ量の調節を簡単に行うことができる。
【0037】
第1刃物54が設けられた第1刃物軸58を保持する対をなす軸ホルダ68,68をオーバーラップ方向に移動する左右の送りねじ機構部の送りねじ72,72が、オーバーラップ用モータ76で回転される連係軸78で同期して作動される構成であるので、第1刃物軸58が傾いてしまうことを防ぎ、オーバーラップ量を精度よく調節できる。また、オーバーラップ用モータ76で左右の送りねじ機構部を作動するので、使用者の負担を軽減できる。
【0038】
送りねじ機構部は、ブロックアーム66と、ブロックアーム66における送りねじ72側の端部を支持するブロック基部64の下部との間に、ブロックアーム66を送りねじ72側(上方)へ付勢するばね83が配置されている。ブロックアーム66は、ばね83によって送りねじ72に向けて弾力的に押されているので、送りねじ72と雌ねじ部66aとのバックラッシを防止することができる。従って、送りねじ機構部によって。オーバーラップ量を精度よく調節できる。
【0039】
オフセット用シリンダ86の作動により連係バー84が左方向または右方向に移動されると、連係バー84で繋がる左右のブロックアーム66,66が案内軸70を中心に回動し、ブロックアーム66に支持された軸ホルダ68が左または右に移動する。これにより、左右の軸ホルダ68,68に保持された第1刃物軸58が左へ移動することで、第1刃物54の外周縁が第2刃物56の外周縁に近づくように位置調節される。これに対して、左右の軸ホルダ68,68に保持された第1刃物軸58が右へ移動することで、第1刃物54の外周縁が第2刃物56の外周縁から遠ざかるように位置調節される。このように、第1刃物54が設けられた第1刃物軸58を保持する軸ホルダ68を、左右のブロックアーム66,66および連係バー84で構成される平行リンク機構部によって移動する構成であるので、オフセット量を精度よく調節できる。また、オフセット用シリンダ86で平行リンク機構部を作動するので、使用者の負担を軽減できる。
【0040】
平行リンク機構部は、左取付ブロック62Bに設けられたストッパ87に左側のブロックアーム66(または軸ホルダ68)を当てて左右方向の位置決めを行っている。このとき、オフセット用シリンダ86によってストッパ87で平行リンク機構部を位置規制した状態を保つようにすればよい。ストッパ87は、送りねじ構造によって左右方向の位置を変更可能であるので、オフセット量を精度よく、また再現性よく調節することができる。しかも、ストッパ87の位置によってオフセット量を数値として把握することができるので、ウエブ12の厚さや材質等に応じたオフセット量の調節を簡単にすることができる。
【0041】
(ローラの配置概要)
図1に示すように、スリッター10は、原反ロール14から巻き出されたウエブ12を、サブフレーム11B側に設けられた巻き出し部18のガイドローラ38およびメインフレーム11Aに設けられた本体ローラ(ローラ)Rで案内している。スリッター10は、本体ローラRで構成されるパスラインに設けられた切断手段20でウエブ12を流れ方向に切断し、スリッター10において巻き出し部18と反対側に設けられた巻き取り部22の巻取軸24で巻き取って製品ロール16を製造している。
【0042】
(ガイドローラ)
図1および図7に示すように、巻き出し部18は、ガイドローラ38として、原反ロール支持部34にセットされた原反ロール14の上側に配置された第1ガイドローラ38A、第1ガイドローラ38Aの後側に配置された第2ガイドローラ38Bと、第2ガイドローラの上側に配置された第3ガイドローラ38Cとを備えている。巻き出し部18は、上方へ引き出したウエブ12を第1ガイドローラ38Aおよび第2ガイドローラ38Bの間で水平に案内した後に、第2ガイドローラ38Bで上方へ案内してから第3ガイドローラ38Cに巻き掛けて後方へ案内している。このように、巻き出し部18のガイドローラ38によって、スリッター10における上部領域へウエブ12を持ち上げるように案内している。実施形態では、第3ガイドローラ38Cとして、ウエブ12の張力を検出可能な張力検出ローラを用いている。
【0043】
(本体ローラ)
図1に示すように、本体ローラRとしては、ウエブ12の流れ方向上流から下流側に向けて、第3ガイドローラ38Cの後方に設けられた第1本体ローラR1と、第1本体ローラR1の後斜め上側に設けられた第2本体ローラR2と、第2本体ローラR2の後方に設けられた第3本体ローラR3とを備えている。実施形態では、第1本体ローラR1および第2本体ローラR2が近接して配置されて、第1本体ローラR1で上方へ方向転換させたウエブ12を、第1本体ローラR1および第2本体ローラR2の間で「S」字状に案内するエスラップと呼ばれる態様になっている。また、第1本体ローラR1および第2本体ローラR2としては、駆動ローラが用いられている。更に、第2本体ローラR2の前斜め上側には、第2本体ローラR2の外周へ向けて付勢されたニップローラNRが設けられ、ニップローラNRと第2本体ローラR2との間に挟んでウエブ12を送るようになっている。このように、第1本体ローラR1および第2本体ローラR2がなす所謂エスラップの態様やタッチローラNRによる挟持などによって、ウエブ12のスムーズな搬送を図っている。
【0044】
図1に示すように、第2本体ローラR2および第3本体ローラR3の間には、切断手段20が設けられている。切断手段20において上下方向に並べて配置された第1刃物54および第2刃物56が、第2本体ローラR2および第3本体ローラR3よりも上方に配置されている。従って、第2本体ローラR2から後斜め上方へ案内されたウエブ12が、第1刃物54と第2刃物56との間で切断された後、第1刃物54と第2刃物56との間から後斜め下方へ案内されて第3本体ローラR3に巻き掛けられる。このように、スリッター10におけるウエブ12のパスラインが、切断手段20を通る位置が最も高くなるように構成されている。また、切断手段20よりもウエブ12の流れ方向下流側に設けられた第3本体ローラR3が、切断手段20より下方に配置されて、切断手段20の水平方向手前側(後方)にローラ等のウエブ12を案内する手段が配置されておらず、スリッター10の後側から切断手段20を容易に確認可能になっている(図2参照)。なお、実施形態では、第3本体ローラR3として、ウエブ12の張力を検出可能な張力検出ローラを用いている。
【0045】
図1に示すように、第3本体ローラR3のウエブ12の流れ方向下流側には、第3本体ローラR3の前斜め下方(切断手段20の下側)に位置して、第4本体ローラR4が設けられている。第4本体ローラR4の下方には、第1下段用本体ローラR5および第2下段用本体ローラR6が設けられている。所定幅で切断されたウエブ12は、第4本体ローラR4から上段の巻取軸24または下段の巻取軸24に向けて振り分けられる。上段に向かうウエブ12は、上段の調整ローラユニット32の第1調整ローラ28に巻き掛けられて、第1調整ローラ28と巻取軸24の間を通って、上段の巻取軸24にセットされた巻芯26に巻き取られる。下段に向かうウエブ12は、下段用本体ローラR5,R6を経て下段の調整ローラユニット32の第1調整ローラ28に巻き掛けられて、第1調整ローラ28と巻取軸24の間を通って、下段の巻取軸24にセットされた巻芯26に巻き取られる。なお、第4本体ローラR4および第2下段本体ローラR6としては、駆動ローラまたはフリーローラを用いることができる。実施形態では、第1下段本体ローラR5として、ウエブ12の張力を検出可能な張力検出ローラを用いている。実施形態では、張力検出ローラである第3本体ローラR3および第1下段本体ローラR5が、手前側(後側)に配置されて、張力の調節を巻き取り部22側から簡単に実施できるようになっている。
【0046】
図1に示すように、スリッター10は、切断手段20よりも巻取軸24が下方に配置されている。また、スリッター10では、調整ローラユニット32が切断手段20よりも下側に配置されており、切断手段20の下側において調整ローラユニット32が前後方向へ直線的に移動するように構成されている。スリッター10は、メインフレーム11A側において上段の巻取軸24に向かうウエブ12のパスラインを構成する本体ローラR(第1本体ローラR1、第2本体ローラR2、第3本体ローラR3、第4本体ローラR4)が、何れも上段の調整ローラユニット32よりも上側に配置されおり、上段の調整ローラユニット32の奥側にスペースを設けてある。スリッター10は、メインフレーム11A側において下段の巻取軸24に向かうウエブ12のパスラインを構成する本体ローラR(第1本体ローラR1、第2本体ローラR2、第3本体ローラR3、第4本体ローラR4、第1下段用本体ローラR5、第2下段用本体ローラR6)が、何れも下段の調整ローラユニット32よりも上側に配置されおり、下段の調整ローラユニット32の奥側にスペースを設けてある。
【0047】
スリッター10は、切断手段20および本体ローラRがメインフレーム11Aの後側に偏って配置されており、切断手段20がスリッター10の後側に寄せて設置してある。スリッター10は、切断手段20および本体ローラRをメインフレーム11Aの後側に偏って配置することで、サブフレーム11B側に設けられたガイドローラ38などの部材との間にスペースを確保している。第3ガイドローラ38Cと第1本体ローラR1との間が比較的広くスペースが確保されており、このスペースを用いてウエブ12を確認したり、ウエブ12のシワを伸ばしたりするなどを行うことができる。
【0048】
(調整ローラユニット)
図14図16を主に参照して、巻き取り部22におけるウエブ12の巻き取り時に、巻き込まれる空気量を制限することで、製品ロール16を整える調整ローラ28,30を有する調整ローラユニット32について説明する。
【0049】
(調整ローラユニット-概要)
図14に示すように、調整ローラユニット32は、ウエブ12を巻取軸24に巻き取って製品ロール16を形成する巻き取り部22に設けられている。調整ローラユニット32は、製品ロール16の厚みの変化に応じて巻取軸24に対して変位する第1調整ローラ28および第2調整ローラ30をユニットフレーム88に有しており、両調整ローラ28,30によってウエブ12の巻き取りに際する巻き込み空気量を制御している。巻き取り部22には、巻取軸24が上下方向に離して2基設けられており、上下の巻取軸24,24のそれぞれに対応して、調整ローラユニット32が設置されている。ここで、上下の調整ローラユニット32,32は、第2調整ローラ30の設置数が異なる以外は同じ構成であるので、片側のみ説明する。
【0050】
(調整ローラユニット-ユニットフレーム)
図1に示すように、調整ローラ28,30を支持するユニットフレーム88は、巻取軸24よりもウエブ12を巻き出す巻き出し部18側に配置されている。そして、ユニットフレーム88は、巻取軸24に近づけた位置(第1位置)から巻き出し部18側への前方に向けて、メインフレーム11Aに対して直線的に移動可能に設けられている(図16参照)。具体的には、図14に示すように、ユニットフレーム88は、左右に対向配置された一対のユニットプレート88a,88aを、左右方向に延びるユニットステー88bで連結して構成されている。ユニットフレーム88は、ユニットプレート88aの外側にそれぞれ設けられた直動ガイド90に左右両側から支持されて、メインフレーム11Aに対して前後方向へ直線的に移動可能に構成されている。ユニットフレーム88は、メインフレーム11Aとの間に設けられたユニットアクチュエータ92の作動によって前後方向へ移動する。図14に示すように、ユニットフレーム88は、ユニットプレート88aの外側にそれぞれ設けられたユニットラック94が、左右のメインフレーム11A,11間に左右方向へ延在するように支持された旋回軸96に左右方向に離して設けられた一対のピニオン98,98にそれぞれ噛み合っている。これにより、ユニットフレーム88は、左右のユニットプレート88a,88aが同期して移動するようになっている。
【0051】
図16(a)に示すように、ユニットフレーム88は、スリッター10における巻き出し部18と巻き取り部22との間において第1調整ローラ28に向けてウエブ12を案内するパスラインを構成する本体ローラRの下側のスペースに配置されている。そして、図16(b)に示すように、ユニットフレーム88は、巻き出し部18側へ向かう前方移動によりスリッター10の内側(奥側)に入るように変位し、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30が、本体ローラRの下側に位置するように退避する。
【0052】
(調整ローラユニット-第1調整ローラ)
図14および図15に示すように、第1調整ローラ28は、左右の端部がユニットフレーム88における左右のユニットプレート88a,88aにそれぞれ回転可能に支持され、左右方向に延びる軸周りに回転可能に構成されている。第1調整ローラ28は、巻取軸24における左右方向に離した複数箇所で巻き取られる製品ロール16の全てに対応し得るように、左右方向に幅広に形成されている。第1調整ローラ28は、ウエブ12の巻き取りの際に、巻取軸24にウエブ12を巻き取って形成される製品ロール16の周面に押し付けられるように配置される所謂タッチローラである。第1調整ローラ28は、作動制御されたユニットアクチュエータ92によりユニットフレーム88が前後方向へ直線的に移動することで、ウエブ12の巻き取りに伴う製品ロール16の厚みの変化に応じて前方へ直線的に変位しつつ所定の押圧力で製品ロール16を押さえ付ける(図16(a)参照)。第1調整ローラ28は、ユニットフレーム88が前方へ移動することで巻き取り部22の正面と反対側へ直線的に移動して、巻取軸24に支持された製品ロール16から離れる位置(第2位置)まで退避可能になっている(図16(b)参照)。なお、第1調整ローラ28は、その中心軸が巻取軸24の中心軸と同じ高さになるように配置されている。
【0053】
(調整ローラユニット-第2調整ローラ)
図14に示すように、調整ローラユニット32には、巻取軸24における左右方向に離した複数箇所で巻き取られる製品ロール16の1つずつに対応して、第2調整ローラ30が設けられている。上段の調整ローラユニット32には、3箇所で巻き取られる製品ロール16に対応して、左右方向に並べて3基の第2調整ローラ30が設置され、下段の調整ローラユニット32には、2箇所で巻き取られる製品ロール16に対応して、左右方向に並べて2基の第2調整ローラ30が設置されている。そして、第2調整ローラ30は、ウエブ12の巻き取りの際に、巻取軸24にウエブ12を巻き取って形成される製品ロール16の周面に押し付けられるように配置される所謂タッチローラである。第2調整ローラ30は、巻取軸24よりも上方に配置されて、製品ロール16の上端から前端にかけた周面に当たるようになっている。
【0054】
図14および図15に示すように、各第2調整ローラ30は、ユニットフレーム88における左右のユニットプレート88a,88aに架け渡されたアーム軸100に一端が固定されたローラアーム102の他端に設けられている。ローラアーム102は、その一端が固定されるアーム軸100を支点として他端が回動変位可能になっている。第2調整ローラ30は、ローラアーム102に対して左右方向に延びる軸周りに回転可能に支持されており、1つの製品ロール16の左右幅に合わせて、第1調整ローラ28よりも幅狭に形成されている。アーム軸100は、一方のユニットプレート88aに設置されたアームアクチュエータ104により回動され、これによりローラアーム102の一端を中心に第2調整ローラ30が回動変位される。このように、第2調整ローラ30は、作動制御されたアームアクチュエータ104によりローラアーム102がスイング動作することで、ウエブ12の巻き取りに伴う製品ロール16の厚みの変化に応じて、巻取軸24に対して近づくまたは遠ざかるように回動変位しつつ所定の押圧力で製品ロール16を押さえ付ける(図16(a)参照)。また、第2調整ローラ30は、作動制御されたユニットアクチュエータ92によりユニットフレーム88が前後方向へ直線的に移動することに伴って、巻取軸24に対して直線的に変位する。このように、第2調整ローラ30は、複合的に変位する。
【0055】
図16(b)に示すように、第2調整ローラ30は、製品ロール16から離すように上方へ回動することで、製品ロール16の周面に接触しないように退避させることが可能である。また、第2調整ローラ30は、ユニットフレーム88が前方へ移動することで巻き取り部22の手前側と反対側(奥側)へ直線的に移動して、巻取軸24に支持された製品ロール16から離れる位置まで退避可能になっている。このように、調整ローラユニット32は、第1調整ローラ28を製品ロール16に接した状態を保ったまま、第2調整ローラ30を製品ロール16から退避させることが可能である。また、調整ローラユニット32は、ユニットフレーム88を前方へ退避させることで、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30の両方を製品ロール16から退避させることが可能である。
【0056】
(調整ローラユニット-作用効果)
前述した調整ローラユニット32は、ユニットフレーム88が、巻取軸24よりも巻き取り部22の正面側と反対になる巻き出し部18側に設けられると共に、ユニットフレーム88が巻き出し部18側へ移動する構成であるので、巻き取り部22の正面側からアクセスする際にユニットフレーム88が妨げにならない。また、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30は、ユニットフレーム88に設けられて、ユニットフレーム88が巻き出し部18側へ移動するにつれて一緒に移動するので、巻き取り部22の正面側からアクセスする際に第1調整ローラ28および第2調整ローラ30が妨げにならない。従って、巻取軸24に巻芯26を取り付けるときや製品ロール16を巻取軸24から取り外すときなど、巻き取り部22の正面側から行う作業に際して調整ローラユニット32が邪魔をしない。
【0057】
調整ローラユニット32は、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30の両方が、ユニットフレーム88の巻き出し部18側への移動に伴って巻き取り部22の正面と反対側へ移動して、巻取軸24に支持された製品ロール16から離れる位置まで退避するので、巻き取り部22の正面側からアクセスする際に邪魔にならない。また、調整ローラユニット32は、ユニットフレーム88が、本体ローラRによって構成されるウエブ12を案内するパスラインにおいて該ウエブ12を切断する前述の切断手段の下側に配置されているので、巻き取り部22の正面側から切断手段20にアクセスする際に邪魔にならない。
【0058】
メインとなる第1調整ローラ28は、直線的に移動する構成であるので、揺動アームの先端に取り付けられて揺動するように変位する所謂ピボット式のタッチローラと比べて、製品ロール16に対する押し付け力の変化を小さくすることができる。従って、第1調整ローラ28によって製品ロール16を適当な力で押し付けて空気量を制限することができるので、ウエブ12がきれいに巻かれた製品ロール16を得ることができる。
【0059】
調整ローラユニット32は、左右のユニットプレート88a,88aがユニットステー88bで連結されると共に、ユニットフレーム88の左右のそれぞれに設けられたラックアンドピニオン機構によって、左右がずれなく移動するようになっている。従って、左右方向に離して複数箇所でウエブ12を巻き取って形成される製品ロール16のそれぞれを、調整ローラ28,30によって均等な力で押さえることができる。
【0060】
スリッター10は、本体ローラRを装置上部に配置して、その下側のスペースを前後に移動する調整ローラユニット32の設置に用いるように、上下方向のスペースを有効利用しているので、装置全体の前後寸法をコンパクトにすることができる。
【0061】
切断手段20が巻き取り部22の巻取軸24および調整ローラ28,30を有する調整ローラユニット32よりも高い位置に設けられると共に、調整ローラユニット32が、巻取軸24よりも奥側で巻き取り部22側または巻き出し部18側へ直線的に移動して配置変更する構成なので、調整ローラ28,30が邪魔にならずに、切断手段20に対して巻き取り部22側からアクセスし易くすることができる。換言すると、調整ローラユニット32の奥側で前後方向に水平移動するので、調整ローラユニット32の上側にアームなどの調整ローラユニット32に関連する構成が配置されず、調整ローラユニット32の上側のスペースに切断手段20を配置することができる。このように、上下段の巻取軸24,24の間ではなく、切断手段20を使用者の目の高さに配置することができ、切断手段20の手前側に、アームなどの調整ローラユニット32に関連する構成が配置されていないので、切断手段20が隠されない。
【0062】
切断手段20よりもウエブ12の流れ方向下流側の本体ローラR(R1~R6)が、切断手段20より下方に配置されているので、本体ローラR(R1~R6)および該本体ローラR(R1~R6)に案内されるウエブ12が邪魔にならず、切断手段20に対して巻き取り部22側からアクセスし易くすることができる。パスラインが、切断手段20を通る位置が最も高くなるように構成されているので、本体ローラR(R1~R6)および該本体ローラR(R1~R6)に案内されるウエブ12が邪魔にならず、切断手段20に対して巻き取り部22側からアクセスし易くすることができる。
【0063】
切断手段20よりもウエブ12の流れ方向上流側でかつ該巻き出し部18よりも流れ方向下流側に設けられた本体ローラR(R1,R2)が、巻取軸24よりも上方に配置されているので、調整ローラユニット32の移動スペースを巻取軸24の奥側に確保できる。
【0064】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば、以下のように変更してもよい。
(1)ウエブ端末吸着装置は、吸着部(負圧発生器+気筒部)が1基であってもよく、ウエブの流れ方向と直交する方向に並ぶ吸着部が、2基または4基以上であってもよく、また、ウエブの流れ方向に並ぶ吸着部が3基以上であってもよい。
(2)気筒部に設ける吸着ヘッドは、実施形態の3基に限らず、2基または4基以上であってもよい。
(3)実施形態のように、負圧発生器と気筒部とが1対1の関係であることが好ましいが、1基の負圧発生器に気筒部が2本以上接続される構成であってもよい。
(4)実施形態では、複数の吸着部のグループを切替手段によって制御するが、これに限らず、吸着部毎に切替手段で制御するようにしてもよい。
(5)送りねじ機構部は、雄ねじ部分と雌ねじ部分とが直接噛み合う狭義の送りねじに限らず、雄ねじ部分と雌ねじ部分とがボールを介して噛み合うボールねじやその他のねじであってもよい。
(6)第2調整ローラの設置数は、前述した実施形態に限らず、適宜変更可能であり、例えば、1基であってもよい。
(7)実施形態では、調整ローラがロールに接触するように配置されるタッチローラを例示したが、これに限らず、ロールと間隔をあけて配置してロールとの間隔が所要幅になるようにコントロールされる所謂ニアローラであってもよい。
(8)実施形態の駆動手段や作動手段としてのアクチュエータは、油圧シリンダ、空圧シリンダ、水圧シリンダなどの流体圧シリンダあるいは電動シリンダや、ソレノイド、電動機、サーボモータなど電気を用いるものなど、各種アクチュエータを使用できる。
【符号の説明】
【0065】
10 スリッター(ウエブ処理機),12 ウエブ,14 原反ロール(原反),
16 製品ロール,54 第1刃物,56 第2刃物,58 第1刃物軸,
60 第2刃物軸,64 ブロック基部(基部),66 ブロックアーム(アーム),
68 軸ホルダ(ホルダ),72 送りねじ,76 オーバーラップ用モータ(駆動手段),
78 連係軸,84 連係バー(連係部),86 オフセット用シリンダ(作動手段),
87 ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17