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特許7386516コアレス回転電気機械およびこれに用いる円環コイル
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  • 特許-コアレス回転電気機械およびこれに用いる円環コイル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】コアレス回転電気機械およびこれに用いる円環コイル
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/47 20060101AFI20231117BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20231117BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H02K3/47
H02K15/04 D
H02K3/04 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019229508
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021097564
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】517221310
【氏名又は名称】コアレスモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】白木 学
(72)【発明者】
【氏名】川野 将太郎
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-068609(JP,A)
【文献】特開2017-070140(JP,A)
【文献】特開平08-126275(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/47
H02K 15/04
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに回転自在に取付けられた回転シャフトと、当該回転シャフトとともに回転するロータと、このロータの一端面に開口する円環溝に挿入されケーシング等の固定部材に片持ち支持される円環コイルと、前記円環溝の周面に取り付けられ円環コイルと対面するマグネットと、を有するコアレス回転電気機械において、前記固定部材に片持ち支持される円環コイルの自由端であって前記マグネットから軸線方向に離隔した位置に補強リングを取り付けたことを特徴とするコアレス回転電気機械。
【請求項2】
前記補強リングはL型断面とし、断面の一方は円環コイルの端面に接触し、他方は円環コイルのマグネット配置側に接触していることを特徴とする請求項1に記載のコアレス回転電気機械。
【請求項3】
前記補強リングは金属または樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のコアレス回転電気機械。
【請求項4】
前記補強リングは円環コイルのコイル導線の折り返し端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコアレス回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアレス回転電気機械およびこれに用いる円環コイルに係り、特に円環コイルの自由端側の変形強度を増したコアレス回転電気機械およびこれに用いる円環コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
コアレスモータに代表されるコアレス回転電気機械は、特許文献1に記載されているように、円筒ケースの中央部に回転シャフトを回転支持し、また、シャフトと同心円状に配置された円環コイルを固定配置するとともに、円環コイルの内周側と外周側にはシャフトとともに回転し得るインナヨークとアウタヨークを設け、インナヨーク若しくはアウタヨークの円環コイルと対面する部位にマグネットを配置した構成となっている。円環コイルは、絶縁層と熱融着層が外周面上に形成された導線を巻回し、この巻回された導線を加熱下でプレス成形して円筒形状のコイルを作製するものとされる。
【0003】
円環コイルは、熱融着層として例えばポリイミドが使用され、円環形状を保持するようになっている。また、更に、特許文献2に示されるように、円環コイルの内周面と外周面に未硬化の熱硬化性樹脂を塗布し、加熱硬化させて固めている。このような円環コイルは片端部を固定ディスクにより堅固に固定され、もう一方の端部は自由端(開放端)となって、いわゆる片持ち状態で取り付けられている。装着に際しては、自由端(開放端)側をヨークとマグネットとの間の小さな円環隙間から挿入する。これにより、円環コイルとマグネットやヨーク等の回転子との相対的な速度が速くなっても、コイルと回転子との接触を防止し、円環コイルの損傷が防止される。
【0004】
ところが、モータを駆動してしまうと、マグネット側にトルクが働くと、逆に円環コイルに反トルクが生じてしまう。円環コイルの一端が固定されているため、自由端(開放端)側が反トルクの影響を受けてしまい、自由端(開放端)側が円形を保持できず歪んでしまう。この歪みがマグネットやヨーク等の回転子と接触してしまう可能性がある。このような欠点は円環コイルを用いたコアレス発電機の場合も同様である。また、モータ搭載製品が例えば自動車などの駆動に用いられる場合に道路凹凸など外部からの振動に起因して円環コイルが回転子に接する可能性がある。
【0005】
これに対して特許文献3のように円環コイルの開口端に軸受を介してケーシングに固定するものがあるが、これは円環コイルが両端支持されて自由端がないもので、本願の課題そのものが存在しない。また、特許文献4に示されるものも知られているが、これは円環コイルが回転するもので、コイル自由端に環状部材を取り付け、この管状部材にカウンターバランス(周縁の突起)を設けているものである。円環コイルの回転時の回転バランスのための突起を形成しやすいよう環状部材に設けているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-70140号公報
【文献】特開2004-32842号公報
【文献】特開平10-174355号公報
【文献】特開2010-68609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に着目し、ヨーク側の回転に伴う反トルクの影響により円環コイルの自由端(開放端)が歪み、マグネットまたはヨークとの接触事故を起こすことを防止するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るコアレス回転電気機械は、ケーシングに回転自在に取付けられた回転シャフトと、当該回転シャフトとともに回転するロータと、このロータの一端面に開口する円環溝に挿入されケーシング等の固定部材に片持ち支持される円環コイルと、前記円環溝の周面に取り付けられ円環コイルと対面するマグネットと、を有するコアレス回転電気機械において、前記固定部材に片持ち支持される円環コイルの自由端であって前記マグネットから軸線方向に離隔した位置に補強リングを取り付けたものである。
【0009】
この場合において、前記補強リングはL型断面とし、断面の一方は円環コイルの端面に接触し、他方は円環コイルのマグネット配置側に接触するようにしてもよい。また、前記補強リングは金属または樹脂から構成することができる。さらに、前記補強リングは円環コイルのコイル導線の折り返し端部に取り付けられている構成とすればよい。
【0010】
本発明に係る円環コイルは、複数の導線からなり円筒状に形成されコアレス回転電気機械に用いられる円環コイルであって、前記導線が折り返されて円筒端部を形成する部位に補強リングを取り付けた構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、片持ち支持される円環コイルの自由端であって前記マグネットから軸方向に離隔した位置に補強リングを取り付けたことにより、モータ駆動時にマグネット側にトルクが生じ、円環コイル側に反トルクが生じても。円環コイルの自由端側を補強リングが拘束し、その反トルクによる歪みを防止することができる。この補強リングはL字状の断面にすると装着しやすくなる。補強リングは金属または樹脂でつくることにより簡単に歪みの阻止を行うことができる。また、補強リングを円環コイルの導線の折り返し端部に取り付けているため、コイルの作用に影響しないものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係るコアレスモータの断面図である。
図2】実施例に係るコアレスモータにおけるロータアッセンブリの断面図である。
図3】コイルリングの断面図である。
図4】円環コイルの断面図である。
図5】コイルリングの斜視図である。
図6】円環コイルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るコアレス回転電気機械およびこれに用いる円環コイルの具体的実施例を、図面を参照して、詳細に説明する。
なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部であり、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0014】
この実施例はコアレスモータに適用した例である。このコアレスモータの組立図を図1に示している。その分解図を図2~4に示し、ロータアッセンブリ(図2)、補強リング(図3)、円環コイル(図4)をそれぞれ示している。また、補強リングの斜視図を図5に示し、円環コイルの斜視図を図6に示している。
【0015】
コアレスモータは外周を取り囲むモータケース10の中央部に回転シャフト12を備え、一部をケースフランジ14から外部に突出させて出力軸としている。回転シャフト12はモータケース10の内部でフランジ14に形成した円筒スリーブ16に挿通され、二か所の軸受18により軸支されている。
【0016】
回転シャフト12の内奥部は円筒スリーブ16から突出されており、突出外面にハブ20を取付けし、ハブ20を介して円筒スリーブ16の外周位置に同心円状にロータ21を取付けている。したがって、ロータ21は回転シャフト12とともに回転が可能である。ロータ21は円筒形状とされているが、その壁面部を二重構造にして外周面側のアウタヨーク22と内周面側のインナヨーク24としている。このアウタヨーク22とインナヨーク24はハブ20の端面側で折り返されて、他方端側(フランジ14側の端部)には円環隙間28が開口している。アウタヨーク22とインナヨーク24の間の円環隙間28には、特にアウタヨーク22の内周面に永久磁石などからなるマグネット26が配置固定されている。このマグネット26とインナヨーク24との間の円環隙間28に円環コイル30が配置されている。
【0017】
円環コイル30は、例えば特開2017-70140号公報に示されるようなもので、複数の導線と絶縁体を所定形状に形成しつつ、一方を導線の折り返し部とし、他方を配線部として円環状に形成したもので、ポリイミドなどを用いて凝固させて形成している。このような円環コイル30の一端側(導体配線側)は半径方向に配置されるドーナツ盤状のステータディスク32によって施蓋状態となって覆い、ボルトなどを介して前述したケースフランジ14に取り付けられる。この結果、堅固にケースフランジ14に固定される。ステータスディスク32にはコイル配線基板などが形成されている。また、ステータスディスク32の外周位置には固定リング34が設けられている。
【0018】
このように構成された円環コイル30は、自由端側を円環隙間28に挿入されるが、実際コイルとして機能するのは胴長中央部の範囲であるため、マグネット26と円環コイル30との関係は、胴長方向で長さが異なっており、組立状態において、マグネット26の長さより円環コイル30の長さは長くされている。すなわち、コイル導線の折り返し部分であるコイルエンドとしてのコイル自由端がマグネット26よりヨーク内奥部側に突出している。
【0019】
このような構成において、本実施例は、前記片持ち支持される円環コイル30の自由端であって、前記マグネット26から軸線方向に離隔した位置に補強リング36を取り付けたものである。すなわち、円環隙間28の最奥部は、アウタヨーク22、ヨーク折り曲げ部、円環コイル30の自由端、およびマグネット26の先端面で形成される空間とされる。この空間に補強リング36が位置して円環コイル30の自由端に固着されている。これにより補強リング36は固定されている円環コイル30とともに定位置にあって、その周りをアウタヨーク22とインナヨーク24、およびマグネット26が一体で回転する。
【0020】
補強リング36はL字状の断面を有し、円環コイル30の自由端の先端肉厚を受ける部分と、円環コイル30の外周面を保護する部分とからなっている。したがって、補強リング36は円環コイル30の肉厚より若干厚肉の矩形断面を有するリング素材の内周面側に上記したL字状の段差が生じるように削り出して形成される。
【0021】
また、補強リング36は非磁性材料とされる金属材料もしくは樹脂材料によって形成される。実施例では真鍮から形成している。これらは非磁性材料であればよく、ロータ21とマグネット26および円環コイル30によって形成される磁気回路を崩さないものであれば非常に弱い磁性体であってもよい。
なお、円環コイル30の配線はケースに設けた配線コネクタ38を介して電源に接続される。
【0022】
このように構成されたコアレスモータでは、アウタヨーク22とインナヨーク24との間に断面ドーナツ状の磁界が形成されている下で、円環コイル30に所定の電流を供給することでロータ21が回転し、ハブ20を通じて回転シャフト12が回転する。この回転シャフト12の回転と同時に回転するロータ21により円環コイル30には反トルクが発生する。円環コイル30の一方の端部はステータディスク32等により堅固に固定されているが、ロータ21の円環隙間28に挿通されている自由端が反トルク作用により円形が歪むことがある。しかし、この実施例では補強リング36により拘束され、円形が乱れることはない。
【0023】
補強リング36はL字形状とすることで簡単に装着でき、また接着樹脂を用いることで凹凸があっても容易にできる。さらに補強リング36を金属または樹脂により形成することで簡単かつ容易に歪みを防止できる形態にすることが可能である。
【0024】
このような構成によれば、片持ち支持される円環コイル30の自由端であって前記マグネット26から軸方向に離隔した位置に補強リング36を取り付けたことにより、モータ駆動時にマグネット26側にトルクが生じ、円環コイル30側に反トルクが生じても、円環コイル30の自由端側を補強リング36が拘束し、その反トルクによる歪みを防止することができる。この補強リング36はL字状の断面にすると装着しやすくなる。補強リング36は金属または樹脂でつくることにより簡単に歪みの阻止を行うことができる。また、補強リング36を円環コイルの導線の折り返し端部に取り付けているため、コイルの作用に影響しないものとなっている。
これらの構成は発電機などコアレス構造のものに適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10……モータケース、12……回転シャフト、14……ケースフランジ、16……円筒スリーブ、18……軸受、20……ハブ、21……ロータ、22……アウタヨーク、24……インナヨーク、26……マグネット、28……円環隙間、30……円環コイル、32……ステータスディスク、34……固定リング、36……補強リング、38……配線コネクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6