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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】微小電極の識別方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20231117BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20231117BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20231117BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
A61N1/05
A61B6/03 360J
A61B6/03 377
A61B6/12
A61N1/36
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019565872
(86)(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 SE2018000014
(87)【国際公開番号】W WO2018222101
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】1700109-0
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】508194652
【氏名又は名称】ニューロナノ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショウエンボリ、イェンス
(72)【発明者】
【氏名】テリン、ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】モーシン、マハメッド
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504767(JP,A)
【文献】特表2015-523895(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185180(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0004981(US,A1)
【文献】特表2012-529338(JP,A)
【文献】特表2006-500991(JP,A)
【文献】特表2002-537890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
A61N 1/36
A61B 5/25
A61B 6/12
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経組織または内分泌組織から選択される軟組織に埋め込まれた微小電極をコンピュータ断層撮影(CT)及びX線から選択される放射手段により識別可能とする金属パターンを備える、各々100μmまでの直径を有する2本以上の微小電極の組であって、
細長い導電性の電極本体を備える微小電極において、
前記電極本体は、前記微小電極の遠位端から延在するセクションまたは遠位端の近くに配置されたセクションである、周囲軟組織との電気的接触をもたらす遠位セクション、を提供する接触部を備え、
前記パターンは金属を含有する3つ以上のセクションを備え、
前記セクションは前記電極本体の長手方向に延在し、前記電極本体上、および/または、前記電極本体においてポリマー材料からなる非導電性コートにより覆われた部分の上に配置され、
前記パターンは、前記遠位端からの距離が前記電極本体の長さの10%以下の前記電極本体の遠位端の近傍に配置され、
前記パターンは、前記微小電極本体の遠位部を覆うポリマー材料からなる第1の非導電性コート上に配置され、
前記セクションはポリマー材料からなる第2の非導電性コートにより更に覆われており、または、
前記パターンは、前記電極本体上に配置され、ポリマー材料からなる前記非導電性コートにより覆われている、
微小電極の組。
【請求項2】
セクションは、ポリマー内に分散された金属粒子により形成される、請求項1に記載の微小電極の組。
【請求項3】
セクションは、金属層により形成される、請求項1に記載の微小電極の組。
【請求項4】
セクションは、前記電極本体を囲んで延在する環状である、請求項に記載の微小電極の組。
【請求項5】
前記金属は、金、白金、銅、クロム、イリジウム、タングステン、ステンレス鋼などの貴金属なる群より選ばれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の微小電極の組。
【請求項6】
前記電極本体は円柱状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の微小電極の組。
【請求項7】
前記電極本体は、5μm~50μmの厚さを有し、
前記金属層は、2μm~30μmの厚さを有する、請求項に記載の微小電極の組。
【請求項8】
セクションは、1mmまたは2mm以上の軸方向延在部を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の微小電極の組。
【請求項9】
前記パターンは、そのセクション間の軸方向距離が異なる、請求項1~8のいずれか一項に記載の微小電極の組。
【請求項10】
水性体液内で溶解可能または膨潤可能な材料のマトリックスに包含される、請求項9に記載の微小電極の組。
【請求項11】
前記マトリックスは、近位端と遠位端を有し、遠位端に向かって先細りする円柱状である、請求項10に記載の微小電極の組。
【請求項12】
前記電極本体は、ポリマーバルジまたはコートが設けられた遠位末端部と、前記ポリマーバルジまたはコートの近位端とポリマー材料の前記非導電性コート、ポリマー材料の前記第1の非導電性コート、又はポリマー材料の前記第2の非導電性コートのいずれか1つの前記遠位端との間に延在する非絶縁部とを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の微小電極の組。
【請求項13】
5本の微小電極を備え、そのうちの4本の微小電極が、中央微小電極の周囲に対称的に配置され、前記電極本体には前記遠位端においてポリマーガイド要素が設けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載の微小電極の組。
【請求項14】
前記中央微小電極の前記ポリマーガイド要素は、前記電極本体に回転対称に取り付けられ、前記中央微小電極の周囲に対称的に配置される前記4本の微小電極の前記ポリマーガイド要素は、前記電極本体に非回転対称に取り付けられる、請求項13に記載の微小電極の組。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟組織に埋め込まれた同一設計の複数の微小電極の中から特定の微小電極の配置を識別する方法、および本発明で使用する個々にマークされた微小電極に関する。
【背景技術】
【0002】
神経組織や内分泌組織などの軟組織に一度に複数の微小電極を埋め込むことは広く知られている。例えば、ニューロンから発信される電気信号の監視によるニューロンの空間的同定のためには、少なくとも3本、好ましくは少なくとも4本の微小電極が必要である。このような監視に必要となるのは、組織内における微小電極の空間的配置に関する情報である。興奮性細胞を刺激するために組織内に複数の微小電極を分散配置する状況では、各電極によって刺激される細胞または細胞群の識別のために、それらの空間的配置に関する情報が必要である。埋め込まれた微小電極の空間的配置が既知であることを条件として、磁気共鳴画像法(MRI)と、刺激の際にどの構造が治療効果を生み出すことができるのかに関する知識を組み合わせることにより、より効率的な刺激手順が設計できる。
【0003】
一度に2本以上の微小電極を埋め込むために、微小電極は永久的または一時的な手段により結束される。一時的な手段により結束される場合、その結束手段から解放された際に組織内において特定の微小電極の配置を識別することは困難であり、特に、埋め込みに際して、同一形状または実質的に同一形状の微小電極を用いた場合、或いは、同一形状または実質的に同一形状を採用した微小電極を用いた場合には困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主要な目的は、同一設計または実施的に同一設計の複数の電極の中から、人または動物の軟組織に挿入された特定の微小電極を識別する方法を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、該方法において使用する微小電極を提供することである。
【0006】
更なる目的が、以下の本発明の要約、図面に示すいくつかの好適な実施形態、添付の請求項より明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、軟組織、特に神経組織または内分泌組織に埋め込まれた、放射手段により識別不能な設計、特に同一設計または類似設計の2本以上の微小電極の組に含まれる微小電極を放射手段により識別する方法が提供される。識別には、埋め込まれた微小電極の組における特定の微小電極の識別、つまり、該組の他の微小電極に対して識別することだけでなく、組織内のその配置に関して識別することも含む。微小電極として、直径100μmまで、特に、50μmまでの電極を想定する。
【0008】
本発明の方法は、同一設計または放射手段により識別不能な設計の2本以上の微小電極であって、軟組織に挿入された際に個々に識別されることが望まれる微小電極を提供することを含む。特に、微小電極が、個々に識別可能となるのみならず、周囲組織との電気的接触をもたらす遠位セクションの位置に関して識別可能となることが望まれる。接触をもたらす遠位セクションは、微小電極の遠位端から延在するセクションまたは遠位端の近くに配置されたセクションであってよい。本発明の好ましい一態様によれば、本発明の微小電極は、束またはアレイの形態で他の微小電極と同時に、すなわちそれらと固定空間関係で軟組織に挿入されるが、その固定空間関係を、該固定関係をもたらす手段の分解による劣化、崩壊、又はその両方が生じた際に失うものである。本発明の別の好ましい態様によれば、本発明の微小電極は、他の微小電極と連続して軟組織に挿入されるものであるか、または、1本以上の微小電極と同時に、且つ、1本以上の微小電極に関して連続して軟組織に挿入されるものである。
【0009】
本発明の識別可能な微小電極は、その近位端から延びるポリマーの第1の絶縁層によって部分的に覆われた細長い導電性電極本体と、絶縁層の遠位部に配置された金属または金属合金を含む一意のパターンと、パターン上に配置された第2の絶縁層とを含む。2本以上の識別可能な微小電極は、軟組織への挿入のために、水性体液内で溶解可能または膨潤可能な材料のマトリックス内に配置された微小電極束またはアレイに含められる。挿入を容易とするために、マトリックスには、乾燥ゼラチンまたはヒアルロン酸のコートなどの水和時に流動促進特性を有するコートを設けてもよい。微小電極本体は、好ましくは円柱状である。微小電極本体は導電性であり、金属、特に貴金属、および/または、導電性ポリマーのみからなるか、含むものである。
【0010】
束またはアレイの組織への挿入の際に、マトリックスの材料は水性体液との接触により溶解または膨潤する。微小電極においてパターンを担持する部分の位置は、放射手段、特に、コンピュータ断層撮影(CT)だけでなくX線でも特定される。本発明の微小電極の形状は既知であるため、パターンの位置の特定により微小電極の隣接部分もまた良好な精度で識別可能である。最も重要なことは、その接触部、つまり、微小電極本体の周囲の組織と電気的に接触する非絶縁部分の位置を正確に特定することである。従って、一意のパターンは、接触セクションの極めて近傍に配置されることが好ましく、接触セクションに隣接する絶縁セクション上に配置されることが好ましい。
【0011】
本発明の微小電極の束またはアレイは、3本以上の微小電極、好ましくは4本以上の微小電極を備える。各微小電極は、その近位端またはその近傍に、微小電極を介して周囲の組織との間で電気信号を送受信することができる制御部に電気的に接続するための手段を有する。組織内で発生した電気信号を絶縁されたリード線によって転送する代わりに、電極に接続された埋め込み無線周波エミッターなどを介して無線伝送を行うこともある。
【0012】
本発明の好適な態様によると、電極本体は、ポリマーコートまたはバルジが設けられた遠位末端部と、コートまたはバルジの近位端と第1の絶縁層の遠位端との間に延在する非絶縁部とを有する。
【0013】
一意のパターンは、電極本体の長手方向に延び、互いに分離する3つ以上のセクションを備えることが好ましい。CTまたはX線による視認性を良くするために、パターンの要素は、互いに1mm以上、特に2mm以上の距離で軸方向に配置されることが好ましい。
【0014】
本発明の他の好適な態様によると、束またはアレイに含まれる微小電極のうち、いくつか、ほとんど、または全ての微小電極が、セクション間の距離が異なる同数のセクションを有するパターンを共有する。
【0015】
微小電極の束またはアレイを包含するマトリックスによる形成体は、好ましくはその遠位端に向かって先細りする円柱状である。束またはアレイの微小電極は、円柱軸に平行に配置され、特に、遠位端方向において10%または15%を超えて該軸から逸れない、つまり、該方向において離散しないことが好ましい。マトリックス本体には、挿入を容易にするために、水性体液と接触すると低摩擦表面をもたらすように乾燥ゼラチンまたはヒアルロン酸の層などの滑剤層を設けてもよい。
【0016】
放射手段による識別用パターンは、電極本体の非導電性ポリマーコート上に配置されるが、好ましくは第2の非導電性ポリマーコートにより被覆される。パターンは3つ以上の分離セクションを含み、各セクションは、ポリマーに分散した金属粒子の形態などで金属を含むか、第1の絶縁層上に金属層として配置される。好ましい金属としては、金または白金などの貴金属、銅、クロム、イリジウム、タングステン、ステンレス鋼が挙げられる。
【0017】
本発明の個々に識別可能な微小電極には電極本体を有するものが含まれ、電極本体の厚さは、金属層の厚さ2μm以上、例えば5μm以上または10μm以上を含めて8μm以上であり、例えば最大50μm以上、または最大100μm、さらには最大200μmである。金属/金属含有層と電極本体との合計厚さ、または、本体の絶縁層上の金属/金属含有層の合計厚さが、電極本体の厚さ、または、絶縁層と電極本体の合計厚さと比べて、20%、特に50%を超えてより大きいことが好ましい。
【0018】
このように、本発明によると、軟組織、特に神経組織または内分泌組織に挿入された際に微小電極を放射手段により識別する方法が開示され、微小電極は、それぞれ導電性電極本体を備える2本以上の微小電極の組に含まれるものであり、前記複数の微小電極は該手段により識別不能な設計、特に同一設計または類似設計のものである。本方法は、
-コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomogrphy)またはX線により検知可能な金属の一意のパターンまたは金属を含有する一意のパターンであって、微小電極本体上および/または微小電極本体に配置された1つ以上の絶縁層上に軸方向に配置され、互いに分離した3つ以上のセクションを少なくとも備えるパターンを微小電極に設けることと、
-微小電極の組を組織内に同時または連続的に挿入することと、
-放射手段、特にCTまたはX線により微小電極を識別することを含み、
一意のパターンは電極本体の遠位端の近傍、特に、遠位端からの距離が電極本体の長さの10%以下、特に5%以下、最も好ましくは2%以下の位置に配置される。本発明の好ましい態様によると、一意のパターンは、電極本体に繰り返し配置されないか、または、繰り返し配置される場合には、前記組の各電極本体に一意の繰り替えし数で配置される。
【0019】
本方法において使用される微小電極は、好ましくは、細長い導電性の電極本体を備える。電極本体は、第1のポリマー絶縁層により部分的に覆われており、一意のパターンは第1の絶縁層の遠位部に配置され、第2の絶縁層に覆われているか、または、一意のパターンは電極本体の遠位部に配置され、絶縁層に覆われている。
【0020】
特に、一意のパターンは、電極本体の遠位端の近傍、つまり、遠位端からの距離が電極本体の長さの10%以下、特に5%以下、最も好ましくは2%以下の位置に配置される。
【0021】
更に好ましくは、一意のパターンは、電極本体に繰り返し配置されないか、または、繰り返し配置される場合には、前記組の各電極本体に一意の繰り替えし数で配置される。
【0022】
本発明の同時挿入のための方法は、水性体液内で溶解可能または膨潤可能な材料のマトリックスで2本以上の微小電極の組を包含して微小電極束またはアレイを形成することと、束またはアレイを軟組織に挿入することと、マトリックス材料が溶解または膨潤した際に、放射手段、特にCTまたはX線により一意のパターンの位置を特定することを含む。
【0023】
好ましい態様によると、同時挿入のための方法は、水性体液内で溶解可能または膨潤可能な材料のマトリックスで3本以上の微小電極の組を包含して微小電極束またはアレイを形成することと、束またはアレイを軟組織に挿入することと、マトリックス材料が溶解または膨潤した際に、放射手段、特にCTまたはX線により一意のパターンの位置を特定することを含む。マトリックスは、好ましくは、その遠位端に向かって先細りする円柱状である。
【0024】
本方法で使用される束またはアレイは、3本以上の微小電極、より好ましくは4本以上の微小電極を備える。
【0025】
本発明の更に好ましい態様によると、本方法で使用される微小電極の電極本体は、非導電性ポリマーコートまたはバルジが設けられた遠位末端部と、コートまたはバルジの近位端と第1の絶縁層または絶縁層の遠位端との間に延在する非絶縁部とを有する。一意のパターンは、互いに分離する3つ以上のセクションを備えることが好ましい。好ましくは、束またはアレイの全ての微小電極が、セクション間の距離が異なる同数のセクションを有するパターンを共有する。
【0026】
また、本発明によると、軟組織、特に神経組織または内分泌組織に埋め込まれた際に微小電極を放射手段により識別するための一意の金属パターンを備える微小電極も開示される。微小電極は細長い導電性の本体と、金属を含有する3つ以上のセクションを備えるパターンとを有する。パターンは、微小電極本体の近位部を覆う、絶縁材料からなる第1の非導電性ポリマーコート上に配置される。パターンは、電極本体の長手方向に延びる3つ以上のセクションを備え、セクションはポリマー材料からなる第2の非導電性コートにより被覆される。あるいは、パターンは電極本体に配置されて、ポリマー材料からなる非導電コートにより被覆される。ただし、パターンは、電極本体の遠位端の近傍、つまり、遠位端からの距離が電極本体の長さの10%以下、特に5%以下、最も好ましくは2%以下の位置に配置される。
【0027】
一意のパターンのセクションは、金属層またはポリマー内に分散された金属粒子により形成可能である。セクションは環状で、電極本体を取り囲むまたは実質的に取り囲むことが好ましい。パターンのセクションを構成する金属、またはセクションが含有する金属は、金または白金などの貴金属、銅、クロム、イリジウム、タングステン、ステンレス鋼からなる群から選択されることが好ましい。
【0028】
微小電極の本体は好ましくは円柱状である。好ましい本体の厚さは5μmまたは8μm~25μmまたは50μmであり、金属層は、2μmまたは5μm~15μmまたは30μmの厚さを有する。一意のパターンのセクションの軸方向の延在は、1mmまたは2mm以上であることが好ましい。
【0029】
また、本発明によると、本発明の2本以上の微小電極であって、それぞれのパターンがセクション間の軸方向距離に関し異なる微小電極を備える束またはアレイも開示される。束またはアレイは、水性体液内で溶解可能または膨潤可能な材料からなり、近位端と遠位端を有し、遠位端に向かって先細りする円柱状であるマトリックスに封入されていることが好ましい。
【0030】
更に、本発明によると、軟組織、特に神経組織または内分泌組織への埋め込みのための本発明の微小電極の束またはアレイの使用も開示される。
【0031】
3本以上の微小電極の組における各微小電極には、CTまたはX線により認知可能な一意のパターンが設けられる。前記組は、軟組織、特に神経組織または内分泌組織へのその微小電極の連続埋め込みに使用することができる。
【0032】
3本以上の微小電極の組の好適な使用は、軟組織内において1つ以上のニューロンの位置を特定するためのものである。
【0033】
本発明を、図に示す好適な実施形態を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、水性体液内で溶解可能または膨潤可能な材料の円柱状のマトリックス内に平行に配置された5本の微小電極の束を軸方向断面U-Uと横方向断面S-Sにて示す。
図1a図1aは、水性体液内で溶解可能または膨潤可能な材料の円柱状のマトリックス内に平行に配置された5本の微小電極の束を軸方向断面U-Uと横方向断面S-Sにて示す。
図2図2は、図1の束において、コンピュータ断層撮影(CT)により互いに区別可能な一意のパターンが設けられた3本の微小電極を同じ断面図にて示す。
図2a図2aは、図2の微小電極の一意のパターンが設けられた部分の拡大図である。
図2b図2bは、一意のパターンのうちの1つを横断する径方向断面T-Tの対応拡大図である。
図3図3は、図1の束において、コンピュータ断層撮影(CT)により互いに区別可能な一意のパターンが設けられた3本の微小電極を同じ断面図にて示す。
図4図4は、図1の束において、コンピュータ断層撮影(CT)により互いに区別可能な一意のパターンが設けられた3本の微小電極を同じ断面図にて示す。
図5図5は、本発明の電極の更なる実施形態を、図2の断面に対応する軸方向断面にて示す。
図6図6は、本発明の電極の更なる実施形態を、図2の断面に対応する軸方向断面にて示す。
図7図7は、本発明の電極の更なる実施形態を、図2の断面に対応する軸方向断面にて示す。
図8図8は、本発明の電極の更なる実施形態を、図2の断面に対応する軸方向断面にて示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0035】
図1および図1aの微小電極束1は、5本の微小電極を備え、そのうちの4本の電極30、40、50、60が、中央微小電極20の周囲に対称的に配置されている。金属又は導電性ポリマー製の電極本体2にはその遠位端においてポリマーガイド要素が設けられている。なお、ガイド要素のうち、微小電極20、30、および40用のもののみを図示する。ガイド要素には、中央微小電極20の電極本体2に回転対称に取り付けられたガイド要素4と、微小電極30、40、50、60のそれぞれの本体2に非回転対称に取り付けられたガイド要素4’、4”(他のものは図示せず)の2種類がある。ここで、微小電極20、30、40、50、60の遠位末端部が、それぞれ、中央ガイド要素4および周辺ガイド要素4’、4”を担持している。ガイド要素は、これらの遠位末端部において自身により電気的に絶縁されている。微小電極本体2の近位端からガイド要素4、4’、4”まで延在する残りの部分は、非絶縁部5を除いてほとんどが、例えば、ポリウレタンやパリレンC製のポリマーコート3により絶縁されており、非絶縁部5は、コート3の遠位端からガイド要素4、4’、4”の近位端までの短い部分である。埋め込まれた際に、非絶縁部5、5’、5”は周囲組織と電気的接触を確立する。
【0036】
周辺微小電極30、40、50、60においては、ガイド要素4’、4”は、それぞれのガイド要素軸G-G、G’-G’が、遠位方向において、それぞれの軸H-H、H’-H’と中央微小電極20の平行に伸びる軸K-とから分散するように配置されている。なお、軸K-は中央微小電極20とガイド要素4とで共有される軸である。微小電極20、30、40、50、60のこの配置は、グルコースまたはゼラチンなどの水性体液内で溶解可能または分解可能な生体適合性材料の円柱状のマトリックス70に埋め込まれて固定される。図1において、DおよびPは、マトリックス体の遠位端および近位端を示す。電極20、30、40、50、60は平行に配置されており、Fは共通の平面に配置されたそれらの遠位端を示す。マトリックス70は、その遠位端において、束1の軟組織への挿入を容易とする平滑先端を形成している。マトリックスは、高摩擦材料製の場合、もしくは、グルコース等の水性体液に迅速に溶解する傾向にある場合には、ゼラチンなどの溶解を遅延させ滑剤として作用する薄層71により被覆されることが好ましい。
【0037】
束1が軟組織へ挿入されると、マトリックス70は、体液内において溶解を開始する。溶解が完了すると、電極20、30、40、50、60は、もはや相対移動に関する拘束を受けなくなる。電極20、30、40、50、60は、標的、特に、ニューロンまたはニューロン群に対して所望の位置を占めるように組織のより深くにそれぞれ意図的にまたは意図せずに挿入される。周辺微小電極30’、40’は、それらの溶解時の初期の向きとガイド要素4、4’、4”の向きとにより、電極束1の円柱軸と一致する中央微小電極20のK-の中心軸から扇状に広げられる。そして、生体組織でのそれらの配置は、コンピュータ断層撮影(CT)やX線などによって非侵襲的にのみ特定できる。しかしながら、従来技術の微小電極はこれらの手法による識別に適切なものではなく、特に、CTによる識別には不向きである。これらをポリマーコート3もしくはガイド要素4、4’、4”、またはその両方により検知可能とするために一意のパターンやマーカーが施される。
【0038】
微小電極をマーキングする方法の一つの態様においては、銀または金などの貴金属のサブミクロン粒子が配合されたポリウレタン接着剤が提供される。ポリマーコート3上に金属を含有する接着剤の複数の小区画、特に複数のリングが電極毎に異なるパターンで塗布される。2リングパターンを用いてもよいが、3つ以上のリングを備えるパターンが好ましい。そして、パターンは、該パターンを組織や体液との接触から保護するために非導電性ポリマーの更なる層により覆われる。
【0039】
図2図3、および図4は、図1および図1aのマーキングされていない状態の電極20、30、40に対応する電極20’、30’、40’を示しており、電極20、30、40には、環状パターンA:21、22、23、環状パターンB:31、32、33、環状パターンC:41、42、43が設けられている。各パターンは、パターンA、B、Cのリング21、22、23間、リング31、32、33間、リング41、42、43間の軸方向距離が各パターンを一意とするように異なっていることにより異なる。微小電極20’の隣接するリング21、22間距離とリング22、23間距離は同じである一方、リング31、32間距離とリング33、34間距離、および、リング41、42間距離とリング42、43間距離は、遠位リングと中央リングの間の距離が、微小電極30’においてより小さい一方、微小電極40’においてより大きくなっている点で、それぞれ異なっている。この逆のことがこれら電極の中央リングと近位のリングの間の距離に関して成り立つ一方、遠位リング31、41と近位リング33、43の間の距離は同じである。微小電極をマーキングする他の適切な金属として、金、白金、イリジウムが挙げられるが、銅やクロムもまた使用することが可能である。
【0040】
識別のために、マークされた各電極が撮影され、マーク間、特にリング間の距離が特定される。各微小電極の自動識別を可能とするために、CTソフトウエアが較正される。
【0041】
微小電極を金属パッチやリングを用いてマーキングする方法の他の態様においては、金属ビームがマスクの複数のスリットを介して電極本体の絶縁部分にスプレーされて、その後、非導電性ポリマー層で覆われる。他の有用な方法には、マスクを介するイオンスパッタリングが含まれる。
【0042】
本方法で現在用いる微小電極の好ましい直径は、約2μmの絶縁層を含めて約12μmである。絶縁層上に配置される厚さ3μmの金属マーカーの層により、金属マーカー層上に配置される、被検出性の向上をもたらさない追加絶縁層を除く合計有効直径はCT検出限界をはるかに超える約18μmとなる。
【実施例2】
【0043】
図5図7は、一意のパターンL、M、Nが設けられた3つの微小電極50、50’、50”の組を示す。各パターンは、電極本体53、53’、53”上に軸方向に配置される3つの金属要素または金属含有要素56、57、58、要素56’、57’、58’、要素56”、57”、58”を備える。電極本体52、52’、52”の近位部と、その上に配置された金属要素56、57、58、要素56’、57’、58’、要素56”、57”、58”は、電極本体52、52’、52”の遠位端の近傍まで延在する主絶縁ポリマー層53、53’、53”により覆われる。遠位端の先端は、末端絶縁層54、54’、54”により覆われる。末端絶縁層54、54’、54”の近位端と主絶縁層53、53’、53”の遠位端との間に延在する電極本体の短い部分55、55’、55”は剥き出しであり、微小電極50、50’、50”が包含された電極束のマトリックス(図示せず)が分解または崩壊すると、周囲細胞と電気的に接触する。
【実施例3】
【0044】
図8は、図5図7の微小電極50、50’、50”の第一変形例60を示し、第一変形例60は、一意のパターンOの1つの金属要素またはセグメント66が、電極本体62の遠位先端に配置され、図5図7の実施形態の末端絶縁層54、54’、54”に対応する絶縁性ポリマーコート64で覆われている点で、前者とは異なるものである。パターンOの最も遠位に配置されたセグメント66は、他の2つの金属セグメント67、68とその両者の間の電極本体62の剥き出し部分65とを覆う主絶縁層63から離間した絶縁層64により覆われる。
【実施例4】
【0045】
図9は、図5図7の微小電極50、50’、50”の第二変形例70を示し、第二変形例70は、電極本体72に取り付けられた3つの金属セグメント76、77、78を備える一意のパターンPを覆う1つの絶縁層73を有する点で前者とは異なる。微小電極70の剥き出し部分75は、層73の遠位端から電極70の遠位先端まで延在する。
図1
図1a
図2
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9