(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドクリーニング方法及びインクジェットヘッドクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
B41J2/165 201
B41J2/165 303
B41J2/165 401
B41J2/165 305
(21)【出願番号】P 2020034522
(22)【出願日】2020-02-29
【審査請求日】2023-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596117773
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(72)【発明者】
【氏名】矢代 浩一
(72)【発明者】
【氏名】石原 巧也
(72)【発明者】
【氏名】永田 隼人
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001421(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065577(WO,A1)
【文献】特開2017-064921(JP,A)
【文献】特開平09-290511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング方法において、
第1ワイパーにメンテナンス液を付与した状態で、前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第1ワイピングステップと、
前記第1ワイピングステップを実行したのちに、前記複数のノズルからインクを強制排出する排出動作を実行するインクパージステップと、
前記排出動作の実行中又は前記排出動作の実行後に、前記メンテナンス液により第2ワイパーを洗浄する第2ワイパー洗浄動作を実行する第2ワイパー洗浄ステップと、
前記インクパージステップに
おける前記排出動作
の実行
後に、
前記第2ワイパー洗浄動作により洗浄された前記第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイピングステップと、
を有するインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項2】
インクを吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有する
複数のインクジェットヘッドのクリーニング方法において、
第1ワイパーにメンテナンス液を付与した状態で、前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第1ワイピングステップと、
前記第1ワイピングステップを実行したのちに、前記複数のノズルからインクを強制排出する排出動作を実行するインクパージステップと、
前記インクパージステップにおいて前記排出動作を実行したのちに、第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイピングステップとを有
し、
前記第1ワイピングステップにおいて、前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動を複数回実行し、各々の相対移動において前記複数のインクジェットヘッドの中の異なる前記インクジェットヘッドの前記ノズル面をふき取るインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項3】
インクを吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有する
複数のインクジェットヘッドのクリーニング方法において、
第1ワイパーにメンテナンス液を付与した状態で、前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第1ワイピングステップと、
前記第1ワイピングステップを実行したのちに、前記複数のノズルからインクを強制排出する排出動作を実行するインクパージステップと、
前記インクパージステップにおいて前記排出動作を実行したのちに、第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイピングステップとを有
し、
前記第2ワイピングステップにおいて、前記第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動を複数回実行し、各々の相対移動において前記複数のインクジェットヘッドの中の異なる前記インクジェットヘッドの前記ノズル面をふき取るインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項4】
前記第1ワイピングステップは、前記第1ワイパーを前記ノズル面に対向して配置するステップと、前記ノズル面と前記第1ワイパーとが接触するふき取り開始位置に前記インクジェットヘッドを移動させるステップと、前記ノズル面と前記第1ワイパーとが接触した状態で前記インクジェットヘッドと前記第1ワイパーとを相対移動させるステップにより構成されており、
前記第2ワイピングステップは、前記第2ワイパーを前記ノズル面に対向して配置するステップと、前記ノズル面と前記第2ワイパーとが接触するふき取り開始位置に前記インクジェットヘッドを移動させるステップと、前記ノズル面と前記第2ワイパーとが接触した状態で前記インクジェットヘッドと第2ワイパーとを相対移動させるステップにより構成されている、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項5】
前記第1ワイピングステップを実行する前に、前記第1ワイパーを前記メンテナンス液によって洗浄する第1ワイパー洗浄ステップを実行し、
前記第2ワイピングステップを実行する前に、前記第2ワイパーを前記メンテナンス液によって洗浄する第2ワイパー洗浄ステップを実行する、請求項1
から請求項
4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項6】
複数回の前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動のうちの一の相対移動により第1のインクジェットヘッドのノズル面をふき取り、前記複数回の前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動のうちの別の一の相対移動により第2のインクジェットヘッドのノズル面をふき取り、前記第2のインクジェットヘッドは前記第1のインクジェットヘッドに対して、前記相対移動の方向と交差する交差方向に関して第1の間隔で配置され且つ前記相対移動の方向に関して第2の間隔で配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項7】
前記一の前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動及び前記別の一の前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動の各々において複数のインクジェットヘッドの前記ノズル面をふき取ることを特徴とする、請求項
6に記載のインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項8】
複数回の前記第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動のうちの一の相対移動により第1のインクジェットヘッドのノズル面をふき取り、前記複数回の前記第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動のうちの別の一の相対移動により第2のインクジェットヘッドのノズル面をふき取り、前記第2のインクジェットヘッドは前記第1のインクジェットヘッドに対して、前記相対移動の方向と交差する交差方向に関して第1の間隔で配置され且つ前記相対移動の方向に関して第2の間隔で配置されていることを特徴とする、請求項3に記載のインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項9】
前記一の前記第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動及び前記別の一の前記第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動の各々において複数のインクジェットヘッドの前記ノズル面をふき取ることを特徴とする、請求項8に記載のインクジェットヘッドのクリーニング方法。
【請求項10】
インクを吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置において、
液体を保持する手段を有し、前記インクジェットヘッドとの相対移動によって前記ノズル面をふき取る第1ワイピング動作を実行する第1ワイパーと、
前記第1ワイパーにメンテナンス液を付与するメンテナンス液付与手段
と、
インクを前記複数のノズルから強制排出する排出動作を実行するインクパージ手段と、
前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイピング動作を実行する第2ワイパーと、
前記メンテナンス液により前記第2ワイパーを洗浄する第2ワイパー洗浄動作を実行する第2ワイパー洗浄手段と、
前記第1ワイピング動作、前記排出動作、前記第2ワイピング動作及び前記第2ワイパー洗浄動作を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記メンテナンス液付与手段により前記メンテナンス液が付与された前記第1ワイパーを用いて前記第1ワイピング動作を実行させ、前記第1ワイピング動作の実行後に前記インクパージ手段により前記排出動作を実行させ、前記排出動作の実行中又は前記排出動作の実行後に前記第2ワイパー洗浄手段により前記第2ワイパー洗浄動作を実行させ、
更に前記インクパージ手段による前記排出動作の実行後に、
前記第2ワイパー洗浄動作により洗浄された前記第2ワイパーを用いて前記第2ワイピング動作を実行させることを特徴とするインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項11】
インクを吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有する複数のインクジェットヘッドのクリーニング装置において、
液体を保持する手段を有し、前記インクジェットヘッドとの相対移動によって前記ノズル面をふき取る第1ワイピング動作を実行する第1ワイパーと、
前記第1ワイパーにメンテナンス液を付与するメンテナンス液付与手段と
、
インクを前記複数のノズルから強制排出する排出動作を実行するインクパージ手段と、
前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイピング動作を実行する第2ワイパーと
、
前記第1ワイピング動作、前記排出動作及び前記第2ワイピング動作を制御する制御手段とを有
し、
前記制御手段は、前記メンテナンス液付与手段により前記メンテナンス液が付与された前記第1ワイパーにより前記第1ワイピング動作を実行させ、前記第1ワイピング動作の実行後に前記インクパージ手段により前記排出動作を実行させ、前記排出動作の実行後に前記第2ワイパーにより前記第2ワイピング動作を実行させ、
更に前記制御手段は、前記第1ワイピング動作において、前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動を複数回実行させ、各々の相対移動において前記複数のインクジェットヘッドの中の異なる前記インクジェットヘッドの前記ノズル面をふき取ることを特徴とするインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項12】
インクを吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有する複数のインクジェットヘッドのクリーニング装置において、
液体を保持する手段を有し、前記インクジェットヘッドとの相対移動によって前記ノズル面をふき取る第1ワイピング動作を実行する第1ワイパーと、
前記第1ワイパーにメンテナンス液を付与するメンテナンス液付与手段と、
インクを前記複数のノズルから強制排出する排出動作を実行するインクパージ手段と、
前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイピング動作を実行する第2ワイパーと
、
前記第1ワイピング動作、前記排出動作及び前記第2ワイピング動作を制御する制御手段とを有
し、
前記制御手段は、前記メンテナンス液付与手段により前記メンテナンス液が付与された前記第1ワイパーにより前記第1ワイピング動作を実行させ、前記第1ワイピング動作の実行後に前記インクパージ手段により前記排出動作を実行させ、前記排出動作の実行後に前記第2ワイパーにより前記第2ワイピング動作を実行させ、更に前記制御手段は、前記第2ワイピング動作において、前記第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動を複数回実行させ、各々の相対移動において前記複数のインクジェットヘッドの中の異なる前記インクジェットヘッドの前記ノズル面をふき取ることを特徴とするインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項13】
前記第1ワイパーは、回動可能な支持部材に支持されており、
前記メンテナンス液付与手段は、前記メンテナンス液を貯蔵するメンテナンス液貯蔵槽を有し、
前記支持部材は前記メンテナンス液貯蔵槽に接続されており、
前記支持部材を回動させることで、前記第1ワイパーを、前記メンテナンス液貯蔵槽に貯蔵された前記メンテナンス液に浸漬させることを特徴とする、請求項10
から請求項12のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項14】
前記支持部材には、さらに前記第2ワイパーが支持されており、
前記支持部材を回動させることで、前記第2ワイパーを、前記メンテナンス液貯蔵槽に貯蔵された前記メンテナンス液に浸漬させることを特徴とする、請求項1
3に記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項15】
前記相対移動の方向と交差する方向に第1の間隔で配置された複数の前記インクジェットヘッド各々の前記ノズル面をふき取るための前記第1ワイパーが、前記第1の間隔で複数配置されており、
一の前記相対移動により、前記第1の間隔で配置された複数の前記インクジェットヘッドを、前記第1の間隔で配置されている複数の前記第1ワイパーによりふき取ることを特徴とする、請求項11に記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項16】
前記複数の前記第1ワイパーが、前記相対移動と交差する方向で、かつ前記支持部材の回動方向に関して所定距離離れた間隔で配置され、
前記複数の前記インクジェットヘッドの各々を、前記複数の前記第1ワイパーの各々でふき取り、
前記複数の前記インクジェットヘッドの各々は、前記相対移動の方向かつ前記相対移動と交差する方向に所定の間隔で配置されていることを特徴とする、請求項1
5に記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項17】
前記相対移動の方向と交差する方向に第1の間隔で配置された複数の前記インクジェットヘッド各々の前記ノズル面をふき取るための前記第2ワイパーが、前記第1の間隔で複数配置されており、
一の前記相対移動により、前記第1の間隔で配置された複数の前記インクジェットヘッドを、前記第1の間隔で配置されている複数の前記第2ワイパーによりふき取ることを特徴とする、請求項12に記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項18】
前記複数の前記第2ワイパーが、前記相対移動と交差する方向で、かつ前記支持部材の回動方向に関して所定距離離れた間隔で配置され、
前記複数の前記インクジェットヘッドの各々を、前記複数の前記第2ワイパーの各々でふき取り、
複数の前記インクジェットヘッドの各々は、前記相対移動の方向かつ前記相対移動と交差する方向に所定の間隔で配置されていることを特徴とする、請求項17に記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項19】
前記支持部材は、外周面を有し、回動可能な棒状の棒状シャフトであり、
前記棒状シャフトの周面の第1の位置及び前記棒状シャフトの回動方向に関して前記第1の位置から所定距離離れた第2の位置の各々に、前記相対移動の方向と交差する交差方向に前記第1の間隔で配置された複数のインクジェットヘッド各々の前記ノズル面をふき取るための前記第1ワイパーが、前記棒状シャフトの軸線方向に且つ前記第1の間隔に応じた間隔で複数配置され、
更に前記棒状シャフトの周面の第3の位置及び前記棒状シャフトの回動方向に関して前記第3の位置から所定距離離れた第4の位置の各々に、前記交差方向に前記第1の間隔で配置された複数のインクジェットヘッド各々の前記ノズル面をふき取るための前記第2ワイパーが、前記棒状シャフトの軸線方向に且つ前記第1の間隔に応じた間隔で複数配置され、
前記第1の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドの前記ノズル面を、前記第3の位置に配置された複数の前記第2ワイパーによりふき取り、前記第2の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドの前記ノズル面を、前記第4の位置に配置された複数の前記第2ワイパーによりふき取り、
前記第2の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドは、前記第1の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドに対して、前記相対移動の方向に第2の間隔を置いて配置されていることを特徴とする、請求項14に記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドクリーニング方法及びインクジェットヘッドクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット描画装置では、印刷動作を継続することで、インク吐出時に発生するインクの粉塵(インクミスト)などが、インクジェットヘッドの複数のインク吐出ノズルにより形成されるノズル面の表面に付着して汚染されることで、ノズル詰まりや、吐出方向のずれ(ヨレ)などの吐出状態の異常が生じることがある。
【0003】
そこで、インクジェット描画装置においては、インクの正常吐出を維持するため、一般にインクジェットヘッドのノズル面をクリーニングする各種手法が用いられている。
【0004】
たとえば、特許文献1では、硬度の異なる2つのゴムブレードを用いてノズル面をふき取る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェットヘッドのノズル面に付着してノズル面を汚染するインクが、溶媒の気化により自然乾燥することがある。
この自然乾燥により、ノズル面に付着したインクが増粘乾燥して、ノズル面に密着してしまい除去が困難になる問題が生じる。この問題により、インクジェットヘッドのノズルのつまりやヨレなどのインク吐出の異常を促進する。
【0007】
また、この問題は、インクの中でも自然乾燥しやすいインクでは特に顕著に発生し、溶媒に水が使用されている水性インクや溶媒にアルコールが使用されているアルコールインクでは特に顕著に発生する。さらに、この問題は、水性インクの中でも、溶媒に顔料とともに樹脂が分散されている水性ラテックスインクなどはインクが増粘しやすいため特に顕著に発生する。
【0008】
この場合、例えば特許文献1に開示されるゴムブレードを用いたクリーニング方法では、ノズル面表面で乾燥増粘したインクを完全に除去できず、インクジェットヘッドの吐出異常の改善が難しい。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、上記の問題を解決し、インクジェットヘッドのノズル面に発生したインクミスト等の汚染を確実に除去して、インクジェットヘッドによるインクの正常吐出を維持できるインクジェットヘッドクリーニング方法及びインクジェットヘッドクリーニング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の発明者は、鋭意工夫の結果、以下の構成を見出した。
【0011】
すなわち、本発明において、液体を吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング方法は、
第1ワイパーにメンテナンス液を付与させた状態で、前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第1ワイピングステップと、
前記第1ワイピングステップを実行したのちに、前記複数のノズルからインクを強制排出するインクパージステップと、
インクパージステップを実行したのちに、第2ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイピングステップとを有する。
【0012】
また、本発明では、液体を吐出する複数のノズルが配置されているノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置において、
液体を保持する手段を有する第1ワイパーと、
前記第1ワイパーにメンテナンス液を付与するメンテナンス液付与手段と、
前記メンテナンス液付与手段により前記メンテナンス液が付与された前記第1ワイパーと前記インクジェットヘッドとの相対移動によって前記ノズル面をふき取った後に、前記複数のノズルからインクを強制排出するインクパージ手段と、
前記インクパージ手段により前記複数のノズルからインクを強制排出した後に、前記インクジェットヘッドとの相対移動により前記ノズル面をふき取る第2ワイパーとを有することを特徴とする、インクジェットヘッドのクリーニング装置と構成してもよい。
【0013】
さらに、本発明では、前記第1ワイパーまたは前記第2ワイパーは、回動可能な支持部材に支持されており、
前記メンテナンス液付与手段は、前記メンテナンス液を貯蔵するメンテナンス液貯蔵槽であり、
前記支持部材は前記メンテナンス液貯蔵槽に接続されており、
前記支持部材を回動させることで、前記第1ワイパーまたは前記第2ワイパーを、前記メンテナンス液貯蔵槽に貯蔵された前記メンテナンス液に浸漬させることを特徴とする、インクジェットヘッドのクリーニング装置と構成してもよい。
【0014】
さらに、本発明では、前記第1ワイパーまたは前記第2ワイパーは、外周面を有する回動可能な棒状の棒状シャフトであり、
前記棒状シャフトの周面の第1の位置及び前記棒状シャフトの回動方向に関して前記所定位置から所定距離離れた第2の位置の各々に、前記相対移動の方向と交差する交差方向に第1の間隔で配置された複数のインクジェットヘッド各々の前記ノズル面をふき取るための前記第1ワイパーが、前記棒状シャフトの軸線方向に且つ前記第1の間隔に応じた間隔で複数配置され、
更に前記棒状シャフトの周面の第3の位置及び前記棒状シャフトの回動方向に関して前記第3の位置から所定距離離れた第4の位置の各々に、前記交差方向に前記第1の間隔で配置された複数のインクジェットヘッド各々の前記ノズル面をふき取るための前記第2ワイパーが、前記棒状シャフトの軸線方向に且つ前記第1の間隔に応じた間隔で複数配置され、
前記第1の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドの前記ノズル面を、前記第3の位置に配置された複数の前記第2ワイパーによりふき取り、前記第2の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドの前記ノズル面を、前記第4の位置に配置された複数の前記第2ワイパーによりふき取り、
前記第2の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドは、前記第1の位置に配置された複数の前記第1ワイパーにより前記ノズル面がふき取られる複数のインクジェットヘッドに対して、前記相対移動の方向に第2の間隔を置いて配置されていることを特徴とするインクジェットヘッドのクリーニング装置と構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、上記の構成とすることで、上記の問題を解決し、インクジェットヘッドのノズル面に発生したインクミスト等の汚染を確実に除去して、インクジェットヘッドによるインクの正常吐出を維持できるインクジェットヘッドクリーニング方法及びインクジェットヘッドクリーニング装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態であるインクジェット描画装置の概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるインクジェット描画装置の概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるクリーニングユニットの概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である保水性ワイパー及びブレードワイパーの断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態である保水性ワイパー及びブレードワイパーの正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態であるインクジェットヘッドのクリーニングシーケンスを示すフローチャートである。
【
図7】インクジェットヘッドの汚染状態を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態である複数のインクジェットヘッドが搭載されたキャリッジのインクジェットヘッドノズル面側の底面図である。
【
図9】本発明の一実施形態であるクリーニングユニットを構成するワイパーユニットの斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態であるクリーニングユニットを構成するワイパーユニットの側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態であるクリーニングユニットを構成するワイパーユニットの正面図である。
【
図12】本発明の一実施形態であるインクジェット描画装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図13】本発明の一実施形態であるインクジェット描画装置におけるインク供給経路に関する電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の実施形態として、クリーニングユニットが搭載されたインクジェット描画装置を、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態であるインクジェット描画装置の正面図であり、
図2は本発明の一実施形態である、インクジェット描画装置の平面図である。
【0020】
本実施形態におけるインクジェット描画装置1は、インクジェットヘッド11が複数搭載されたキャリッジ13を有する。インクジェットヘッド11はインクを吐出するための複数のノズルが配置されているノズル面を有し、本実施形態においては、ノズル面は矩形状になっている。これらの複数のノズルは、ノズル面の長手方向(X軸方向)に並んで配置されている。
【0021】
また、本実施形態では、
図2に示すように、キャリッジ13には、インクジェットヘッド11が、X軸方向に対して平行に、かつY軸方向に複数個並べて配置されている。
【0022】
キャリッジ13には、キャリッジ13を略水平に移動させるためのX軸移動手段15が接続されている。
X軸移動手段は、キャリッジ13を、印刷時には被記録媒体の載置されたプラテンの上方に移動させ、非印刷時及びインクジェットヘッド11のクリーニング時はプラテン上から退避させてクリーニングユニット3の上方に移動させる。本実施形態では、X軸移動手段15は、被記録媒体搬送方向(Y軸方向)に対して、略直交する方向(X軸方向)に移動させるように配置されている。
なお、X軸移動手段には直線移動する駆動系である直動モーターを使用することが好ましく、リニアモーター、ボールネジ、タイミングベルトなど、適宜のものが使用される。本実施形態ではリニアモーターが使用されている。
【0023】
また、キャリッジ13には、キャリッジ13を上下方向(Z軸方向)に移動させるためのZ軸移動手段17が接続されている。
Z軸移動手段にはサーボモーター、ステッピングモーター等が使用される。本実施形態ではサーボモーターが使用されている。なお、Z軸移動手段には、落下防止のためのブレーキ手段が備えられていることが好ましい。
【0024】
そして、X軸移動手段15によりキャリッジ13が通過する位置であって、かつキャリッジ13に対して下方の位置に、クリーニングユニット3が配置されている。
【0025】
クリーニングユニット3には、棒状シャフト19に接続されたブレードワイパー21及び保水性ワイパー23が接続されて構成されているワイパーユニット7が、回動可能に、メンテナンス液を貯蔵しているメンテナンス液貯蔵槽26に接続されている。
【0026】
また、メンテナンス液貯蔵槽に隣接して、後述のインクパージを実施した際にインクジェットヘッド11のノズルから強制排出されたインクを受け止めるためのインクパージトレイ27が接続されている。
【0027】
クリーニングユニット3は、クリーニングシーケンス実行時は、キャリッジ13を、X軸移動手段15の駆動により、クリーニングユニット3上方のクリーニング位置まで移動させてクリーニングシーケンスを実行させる。
また、非印刷時にインクジェットヘッド11のノズル面を外気から遮断して、インク乾燥を防いでインクジェットヘッド11を保管するためのキャッピングユニット5が、クリーニングユニット3に隣接しY軸方向に略水平移動可能にY軸移動手段29に接続され、クリーニングユニット3に対して上方(Z軸方向)に配置されている。
【0028】
キャッピング時には、キャッピングユニット5は、クリーニングユニット3の上方まで移動する。一方キャリッジ13はキャッピングユニット5の上方に移動した後、軸移動手段17により下降する。これにより、キャッピングユニット5を構成するキャッピングゴム31にインクジェットヘッド11のノズル面を接続させてキャッピングする。
印刷時及びクリーニングシーケンス実施時は、キャッピングユニット5は、クリーニングユニット3上から水平移動させて退避させる。
Y軸移動手段には、X軸移動手段と同様に直動モーターが用いられ、リニアモーター、ボールネジ、タイミングベルトなど、適宜のものが使用される。
【0029】
次に、本実施形態にかかるインクジェット描画装置1の電気的構成について
図12及び
図13を参照しつつ説明する。
【0030】
図12は、インクジェット描画装置1の電気的構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるインクジェット描画装置1は、制御コンピューター41を備える。制御コンピューター41は、例えば、CPUや、メモリーなどを備える。
【0031】
メモリーは例えばRAM及びROMにより構成され、RAMにはCPUの演算結果や印刷画像データが一時的に記録されたりする。また、ROMには、
図6に示すフローチャートに記載されるようなクリーニングシーケンスの実行プログラムのほか、インクジェットヘッド11や、上記のX、Y、Z軸の各種移動手段を駆動制御する制御プログラムなどが格納されている。
【0032】
制御コンピューター41は、LAN等のインターフェースを介して、コントローラー43に接続され通信されている。コントローラー43には例えばプログラマブルコントローラー(PLC)などが使用され、接続される各種ドライバ類を制御する。
【0033】
そして、コントローラー43は、モーター駆動ドライバ45を介してX軸移動手段15を構成する直動モーター53を駆動制御するとともに、モーター駆動ドライバ47を介してZ軸移動手段を構成する駆動モーター55を駆動制御している。また、モーター駆動ドライバ49を介して、後述の棒状シャフト19を回動させる駆動モーター51を駆動制御している。
【0034】
図13は、インクジェット描画装置1におけるインクジェットヘッド及びインク供給系を制御するための電気的構成を示すブロック図である。
図12と同様に、インクジェットヘッド11及びインク供給系は、制御コンピューター41とコントローラー43によって制御されている。
コントローラー43には、モーター制御ドライバ62を介して、チューブポンプを駆動させるモーター65に接続されている。
コントローラー43からの指令により、モーター65を駆動させ、インクが貯蔵されているインクタンク61からチューブ63を介して、インク経路内の気圧調整を実施するサブタンク67にインクが供給される。より具体的にはサブタンク67には液面センサーが付き、コントローラー43はサブタンク67に接続される液面センサーの信号によりモーター65を駆動させ、サブタンク67内に設定された量のインクが供給されるように制御されている。
【0035】
サブタンク67にはエアーバルブ69が接続され、エアーバルブ69は制御コンピューター41の指令を受けたコントローラー43により開閉状態を制御されている。
サブタンク67内の気圧は、エアーバルブ69に接続されている正圧供給源71と負圧供給源73からの正圧または負圧の供給関係を、エアーバルブ69の開閉状態を切り替えることで制御されている。
【0036】
より具体的には、通常時は、サブタンク内の圧力を負圧に維持する事で、インクジェットヘッド11のノズルからインクが漏れないように制御されている。後述のインクパージを実施する場合は、サブタンク69内の圧力を上記制御により正圧に切り替えることで、サブタンク69内に供給されるインクを正圧によりインクジェットヘッド11のノズルより押し出し、インクがノズルより強制排出される。また、正圧を加える時間を制御する事で、インクパージによるインク強制排出量を調整できる。
【0037】
次に、本発明の実施形態にかかるクリーニングユニット3について
図1から
図5を適宜参照しつつ詳述する。
【0038】
図3は、本発明の実施形態にかかるクリーニングユニット3の模式断面図である。
【0039】
クリーニングユニット3は、ワイパーユニット7とメンテナンス液が貯蔵されたメンテナンス液貯蔵槽26と、インクパージトレイ27により構成されている。
【0040】
ワイパーユニット7は、棒状シャフト19に、第1ワイパーと第2ワイパーが、棒状シャフト19の軸中心に対して放射状に、かつ矩形の一端が棒状シャフト19の軸方向に対して略平行になるように支持されている。本実施形態では第1ワイパーとして、矩形状の保水性ワイパー23と、第2ワイパーとして、矩形状のブレードワイパー21が、それぞれ使用されている。以下、本実施形態の説明として、第1ワイパーは保水性ワイパー23として、第2ワイパーはブレードワイパー21としてそれぞれ説明する。
【0041】
棒状シャフト19の断面形状は、クリーニングシーケンス実施時には、インクジェットヘッド11のノズル面を均一にワイピングできるように、保水性ワイパー23又はブレードワイパー21が、インクジェットヘッド11のノズル面に接触した際に、保水性ワイパー23又はブレードワイパー21と棒状シャフト19とが接続されている棒状シャフト19外周点と、インクジェットヘッド11のノズル面との、ノズル面に対して略垂直方向の距離が均一になるように構成されていることが好ましい。例えば、円筒形状や、正多角形状などが想定される。本実施形態では正多角形状で、正六角形としてある。
そして、棒状シャフト19の端部には、棒状シャフト19並びにこれに接続される保水性ワイパー23及びブレードワイパー21を、棒状シャフト19の軸を中心に回動させるための駆動モーター51が接続されている。駆動モーター51は、上記の通り、コントローラー43の制御により、モーター駆動ドライバ49を介して、棒状シャフト19を回動させる。
【0042】
駆動モーター51を駆動制御することで、クリーニングシーケンス実施時に、棒状シャフト19を回動させて保水性ワイパー23やブレードワイパー21をインクジェットヘッド11のノズル面に接触させる動作や保水性ワイパー23やブレードワイパー21をメンテナンス液貯蔵槽26に貯蔵されるメンテナンス液に浸漬させて洗浄させる動作を実施させることができる。
【0043】
駆動モーター51は保水性ワイパー23やブレードワイパー21をインクジェットヘッド11のノズル面に接触する位置に停止できる動作ができることが好ましく、サーボモーターやステッピングモーターなどが好適となる。
なお、本実施形態では、保水性ワイパー23と、ブレードワイパー21の両方を、1本の棒状シャフト19に接続する構成を示しているが、保水性ワイパーとブレードワイパーを両方備える構成であれば、複数の棒状シャフトに分けて接続する構成でもよく、その他の構成であってもよいことを確認する。
【0044】
ここで、保水性ワイパー23とブレードワイパー21の構造について説明する。
図4は、保水性ワイパー23及びブレードワイパー21の断面図であり、
図5は保水性ワイパー23及びブレードワイパー21の正面図である。
本実施形態では、
図5の通り、保水性ワイパー23及びブレードワイパー21はいずれも薄型矩形状に形成されている。いずれのワイパーも、ノズル面のインクを確実に除去できるように、インクジェットヘッド11のノズル面の短手方向(幅方向)を覆う形状にすることが有効である。
【0045】
保水性ワイパー23の材質については、後述の通り、メンテナンス液を吸収保持した状態で、インクジェットヘッド11のノズル面をワイピングするために、液体を保持できる保水性を有する素材であることが必要である。
従って、保水率の高い、内部に連続した孔構造を内包する多孔質の材質が好適である。例えばウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のスポンジ状の連続発泡体、織物、不織布、あるいはこれらの組み合わせによって構成してもよい。
【0046】
ブレードワイパー23の材質については、ノズル面に接触した際にノズル面が損傷せず、かつノズル面に追従できるような弾性素材であることが好ましく、かつインクに浸漬されるため、耐薬品性を有する等化学的安定性を有する素材であることが好ましい。例えば、シリコーンゴム(Si,Q)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)などが想定される。
【0047】
そしてワイパーユニット7の下部に、メンテナンス液が貯蔵されたメンテナンス液貯蔵槽26が、ワイパーユニット7を回動させた際に、保水性ワイパー23又はブレードワイパー21を、貯蔵されたメンテナンス液に浸漬させて洗浄できるように配置されている。
【0048】
メンテナンスユニットに使用されるメンテナンス液には、インクジェット描画装置1に用いられるインクの種類や特性に応じて、インクを溶解洗浄できるものを適宜選択し使用する。
【0049】
次に、本発明の実施形態に係る、インクジェットヘッドのクリーニングシーケンスを説明する。
【0050】
クリーニングシーケンスは、必要に応じて適宜実行され、例えば、インクジェット描画装置1起動時、印刷開始前、印刷終了後のインクジェットヘッドのキャッピング前などに適宜実行される。
【0051】
図6は、クリーニングシーケンスを説明するフローチャートである。以下、
図6を中心に参照しつつクリーニングシーケンスを説明する。
【0052】
まず、第1ワイピングステップを実施する前に、フロー2の保水性ワイパー洗浄ステップを実施する。これは、第1ワイピングステップの実行前に、保水性ワイパー23を清潔に保ち、インクジェットヘッド11のノズル面への不純物付着を防止するとともに、保水性ワイパー23にメンテナンス液を浸漬させ、メンテナンス液を保水性ワイパー23に供給して付与させることを目的とする。なお、保水性ワイパー23にメンテナンス液を付与する手段には、その他の方法も想定でき、例えば、保水性ワイパー23内部にメンテナンス液を供給する供給経路を設ける方法なども想定できる。
【0053】
本実施形態では、制御コンピューター41から、コントローラー43およびモーター駆動ドライバ49を介して、ワイパーユニット7に接続される駆動モーター51に指令を出し、ワイパーユニット7を回動させる。そして、ワイパーユニット7を構成する棒状シャフト19に接続される保水性ワイパー23を、メンテナンス液貯蔵槽に貯蔵されているメンテナンス液に浸漬させて保水性ワイパー洗浄ステップを実行する。
【0054】
次に、第1ワイピングステップを実行する。第1ワイピングステップの構成について説明する。
【0055】
まず、保水性ワイパー23でノズル面をワイピングできるように、フロー2に示す、保水性ワイパー23をノズル面に対向して略直交するように配置する保水性ワイパースタンバイステップを実行する。
【0056】
本実施形態では、制御コンピューター41から、コントローラー43およびモーター駆動ドライバ49を介して、ワイパーユニット7に接続される駆動モーター51に指令を出し、ワイパーユニット7を回動させ保水性ワイパー23を略鉛直に配置する。
【0057】
次に、フロー3の、保水性ワイパー23をノズル面に接触させ、保水性ワイパー23とインクジェットヘッド11を相対移動させて前記ノズル面をふき取る、保水性ワイパーワイピングを実施する。
【0058】
本実施形態では、制御コンピューター41からコントローラー43に指令を出し、モーター駆動ドライバ45を介して直動モーター53を駆動させることでX軸移動手段15を駆動させ、キャリッジ13に搭載されるインクジェットヘッド11を、ノズル面に対向して略鉛直に配置された保水性ワイパー23上方まで移動させる。
【0059】
次に、制御コンピューター41からコントローラー43に指令を出し、モーター駆動ドライバ47を介して駆動モーター55を駆動させてZ軸移動手段17を駆動させ、キャリッジ13に搭載されるインクジェットヘッド11を、Z軸方向に下降させ、ノズル面と保水性ワイパー23の先端とを接触させる。なお、この時、インクジェットヘッド11を、ノズル面の長手方向(X軸方向)一方最端部に保水性ワイパー23が接触するように移動させると、より効率的にワイピングできる。
【0060】
そして、X軸移動手段を、上記と同様に駆動させ、キャリッジ13に搭載されるインクジェットヘッド11を、ノズル面と保水性ワイパー23の先端とを接触させた状態を維持しつつ略平行に移動させて、フロー3を実行する。
【0061】
このように、後述のブレードワイパー21によるワイピングの前に、保水性ワイパー23によるワイピングを実施する趣旨は、ノズル面を保水性ワイパーが保持するメンテナンス液で浸漬することで、印刷時などにインクジェットヘッド11のノズル面に付着して乾燥し、増粘したインクを、洗浄液により粘度を下げてノズル面からふき取りやすくするためである。
【0062】
すなわち、インクジェット印刷時に発生したインクミストがノズル面に付着した場合、特に乾燥して増粘しやすい水系インクのようなインクを用いた場合、
図7αのように、溶媒の気化により増粘した増粘インク33がノズル面に堆積してしまう。ノズル面に付着したインクが増粘した状態のまま、ゴム等の弾性体のワイパーでふき取ろうとする場合、増粘インク33がノズル面との密着性を発揮する結果、ワイパーで増粘したインクを除去できず、
図7βで示すように、かえって増粘インク33をノズル面上で塗り広げる結果となる。これにより、増粘したインクによってノズル詰まりを引き起こし、最悪の場合はインクジェットヘッド11を破損させてしまう。また、増粘したインクは、後述のインクパージでも十分に除去することが難しい場合があり、増粘したインクの除去が不完全であると、ノズル詰まりを誘発する。
【0063】
そこで、付着したインクの粘度を下げることが有効であるため、本実施形態では、メンテナンス液を保持する保水性ワイパー23によりワイピングを実施することで、増粘インク33をメンテナンス液により粘度を下げ溶かしながらワイピングを実施し、増粘インク33を除去している。
【0064】
なお、第1ワイピングステップにおいて、インクジェットヘッド11がキャリッジ13に複数個搭載されている場合には、
図6のフローチャートに従い、フロー2とフロー3を繰り返し実行される。インクジェットヘッド11がキャリッジ13に複数個搭載されている場合における、第1ワイピングステップの具体的な繰り返し方法については後述する。
以上のように、
図6のフローに従い、必要に応じて、フロー2とフロー3を繰り返し実施することで、第1ワイピングステップを完了する。
【0065】
次に、フロー4のインクパージステップについて説明する。
フロー4では、インクジェットヘッド11のノズル面を構成する複数ノズルから、強制的にインクを排出(インクパージ)し、ノズル内を洗浄する。
【0066】
インクパージの手法としては、インクをノズルに強制供給する方法も、ノズルからエアーによりインクを吸引する方法も、その他適宜の方法も想定できる。
【0067】
本実施形態では、キャリッジ13をX軸方向に移動させて、キャリッジ13をメンテナンス液貯蔵槽26上から退避させて、インクパージ位置であるインクパージトレイ27上に移動させる。そして、上述の通り、制御コンピューター41から、コントローラー43を介して、エアーバルブ69に 指令を出し、サブタンク69内の圧力を正圧に切り替えることで、空気圧により、サブタンク69内のインクを、インクジェットヘッド11に供給する。これにより、インクジェットヘッド11のノズルからインクが強制排出される。
【0068】
また、インクジェットヘッド11の使用状況に応じて、正圧を加える時間を制御して、インクパージによるインク強制排出量を調整する。さらに、インクジェットヘッド11をインクパージトレイ27上に退避させてインクパージを実施することにより、メンテナンス液貯蔵槽26の中に排出されたインクが侵入して貯蔵されたメンテナンス液を不要に汚染することを回避する。
【0069】
ここで、第1ワイピングステップの後にインクパージステップを実施する趣旨について説明する。
【0070】
第1ワイピングステップにより、ノズル面を多量の洗浄液で湿潤化させて保水性ワイパー23によるワイピングを実施した場合、ノズル面を構成するノズル(オリフィス)の径が非常に小さいため、毛細管現象により洗浄液がノズル内に侵入し、ノズル付近にあるインクにメンテナンス液が混入してしまう。
【0071】
インクジェット印刷においては、インク安定吐出のため、インクジェットヘッド11のノズル部分におけるインクのメニスカス(インクの界面張力によってノズル内のインクの表面に形成されている曲面)を適切な形状に制御する必要がある。しかし、ノズル内のインクにメンテナンス液が混入した場合、ノズル内のインクの界面張力の特性が変わる結果、所定のメニスカス形状を維持できなくなりメニスカスが破壊されてしまう。よって、そのまま印刷してしまうと、インクの吐出異常が発生し、印刷画質の劣化が生じてしまう。
【0072】
スポンジや不織布のような保水性ワイパーのみでこの問題を防ぎ、第1ワイピングステップのみでインクジェットヘッド11のクリーニングを完了させようとするには、保水性ワイパーが保持するメンテナンス液の保持量を制御する必要がある。しかし、そのためには、保水性ワイパーを所定のメンテナンス液保持量となるよう絞る機構の導入や絞り量の制御の導入、若しくは保水性ワイパーに付与するメンテナンス液量を制御する機構の導入やその制御が必要になる。このような方法を実現するには難しい制御を伴う上に、クリーニングユニット及びインクジェット描画装置1全体の機械的構成が極めて複雑かつ高価になってしまう。
【0073】
そこで、本実施形態では、第1ワイピングステップの後に、インクパージステップを実行することで、インクジェットヘッド11のノズル内に混入した微細な不純物を排出するだけでなく、洗浄液が混入したインクごとインクを排出し、適切なインクメニスカス形状を回復することができる。
【0074】
フロー4のインクパージステップが完了したのち直ちに、または、フロー4の実行中に、フロー5のブレードワイパー洗浄ステップを実施する。これは、第2ワイピングステップの実行前に、ブレードワイパー21を清潔に保ち、インクジェットヘッド11のノズル面への不純物付着を防止することを目的とする。
【0075】
本実施形態では、ワイパーユニット7を回動させてメンテナンス液貯蔵槽26に貯蔵されているメンテナンス液にブレードワイパー21を浸漬して実行する。
【0076】
フロー4、及びフロー5が完了したのち直ちに、第2ワイピングステップを実行する。第2ワイピングステップの構成について説明する。
【0077】
まず、フロー6で、ブレードワイパー21でノズル面をワイピングできるように、ブレードワイパー21をノズル面に対向して略直交するように配置するブレードワイパースタンバイステップを実行する。本実施形態では、ワイパーユニット21を回動させブレードワイパー21を略鉛直上方に配置する。
【0078】
次に、フロー7の、ブレードワイパー21をノズル面に接触させ、ブレードワイパー21とインクジェットヘッド11を相対移動させて前記ノズル面をふき取る、ブレードワイパーによるワイピングを実施する。
【0079】
本実施形態では、制御コンピューター41からコントローラー43に指令を出し、モーター駆動ドライバ45を介して直動モーター53を駆動させることでX軸移動手段15を駆動させ、キャリッジ13に搭載されるインクジェットヘッド11を、ノズル面に対向して略鉛直に配置されたブレードワイパー21上方まで移動させる。
次に、制御コンピューター41からコントローラー43に指令を出し、モーター駆動ドライバ47を介して駆動モーター55を駆動させてZ軸移動手段17を駆動させ、キャリッジ13に搭載されるインクジェットヘッド11を、Z軸方向に下降させ、ノズル面とブレードワイパー21の先端とを接触させる。なお、この時、インクジェットヘッド11を、ノズル面の長手方向(X軸方向)一方最端部にブレードワイパー21が接触するように移動させると、より効率的にワイピングできる。
そして、X軸移動手段を、上記と同様に駆動させ、キャリッジ13に搭載されるインクジェットヘッド11を、ノズル面とブレードワイパー21の先端とを接触させた状態を維持しつつ略平行に移動させて、フロー7を実行する。
【0080】
フロー7により、フロー4のインクパージステップによりノズルから排出され、ノズル面に付着しているインクをワイピングして除去する。
【0081】
なお、この段階では、フロー4の実行からフロー7の実行までの時間が短いため、ノズル面に付着しているインクは未だ乾燥増粘しておらず、インクを完全に除去することができる。また、本実施形態では、ブレードワイパー21は保水性の無い弾性体により形成されている。よって、洗浄液を保持フロー5により若干のメンテナンス液が付着している可能性があるが、ノズルに毛細管現象によって洗浄液が混入するような洗浄液は保持していないため、洗浄液の混入によるインクメニスカスの破壊も発生しない。
【0082】
また、インクジェットヘッド11がキャリッジ13に複数個搭載されているような場合は、第1ワイピングステップの際と同様にフロー6とフロー7を繰り返し実施して、キャリッジ13に搭載されているすべてのインクジェットヘッド11のノズル面をワイピングする。
【0083】
以上のフローを実行することで、第2ワイピングステップが完了し、本実施形態にかかるクリーニングシーケンスがすべて終了となる。
【0084】
すべてのクリーニングシーケンスが完了したのちは、必要に応じて、印刷をする場合はキャリッジ13を被記録媒体が載置されているプラテン上に移動させて印刷を開始し、または印刷を終了する場合は、キャッピングユニット5をクリーニングユニット3上に移動させ、キャリッジ13をZ軸方向に下降させて、キャッピングユニット5のキャッピング部にインクジェットヘッド11のノズルを接触させキャッピングを完了する。
【0085】
さらに、もう一つの実施形態として、インクジェットヘッドがキャリッジに複数列配置されている場合の第1ワイピングステップ及び第2ワイピングステップの実施方法について説明する。
【0086】
インクジェットプリンターにおいては、一度に広い幅に印刷する必要がある場合に、インクジェットヘッドのノズルが所定列に並ぶノズル列方向に複数のインクジェットヘッドを、各インクジェットヘッド11のノズル列が重なるようにオーバーラップさせてキャリッジ上に配置する方法が一般に行われる。
【0087】
インクジェットヘッドをオーバーラップして配置する配置方法は、インクジェットヘッドの形状によって適宜の方法が想定されるが、一例として、ノズル面が矩形状に形成されている本実施形態におけるインクジェットヘッド11の場合は、
図8に図示するように、複数個のインクジェットヘッド11を長手方向(ノズル列方向)に、間隔をあけて直線上に隣接して配置し、さらにインクジェットヘッド11を、配置したインクジェットヘッド11をノズル列方向に対して平行にかつ、すべてのインクジェットヘッド11のノズル面を形成するノズル列の端部同士が重なりあうように、空いている間隔の部分に配置する。
【0088】
このようなインクジェットヘッド11のオーバーラップ配置は、たとえばインクジェットヘッド11のノズル面の下を被記録媒体が一回通過するときに、画像形成に必要なすべてのインクの付与を実施して印刷を完了させるいわゆるワンパス方式の場合や、一回の走査による印刷可能幅を広げて生産タクトを向上させる必要のある場合などに適用される。
【0089】
この場合、ワイピングをノズル面のノズル列方向に対する一方端部から他方端部に向けて実施する際に、配置されているすべてのインクジェットヘッド11のノズル面を一度にワイピングしてしまうと、配置されているインクジェットヘッド11のノズル面同士が接続されておらず間隔があいているため、ノズル面のみならず、キャリッジ13のノズル面側の底面も同時にワイピングしてしまう。
【0090】
このようにキャリッジ13の底面までワイピングしてしまうと、キャリッジ13の底面に付着する不純物をインクジェットヘッド11のノズル面に塗り広げる問題や、キャリッジ13底面と、インクジェットヘッド11のノズル面との隙間にワイパーが接触してワイパーを破損させてしまう問題も生じる。
【0091】
そこで、これらの問題を回避するための構成を説明する。
【0092】
まず、ワイピングすべき複数のインクジェットヘッド11のうち、インクジェットヘッド11の配置関係に応じて、一度にワイピング可能なインクジェットヘッド11を、一つのインクジェットヘッド群と設定する。
【0093】
このようなインクジェットヘッド群の設定方法について、
図8に示すようなノズル面が矩形状のインクジェットヘッド11であれば、インクジェットヘッド11がX軸移動手段15により移動する方向であるX軸方向と交差する方向に所定の間隔で配置されている複数のインクジェットヘッド11を、一つのインクジェットヘッド群と設定する。本実施形態の例であれば、インクジェットヘッド11の長手方向に対して略平行に、かつインクジェットヘッド11の長手方向一方端部が、インクジェットヘッド11の長手方向に対して略垂直に配置されている複数のインクジェットヘッド11を一つのインクジェットヘッド群と設定する。
【0094】
図8の例であれば、αと示された2つのインクジェットヘッド11とβと示された2つのインクジェットヘッド11が、各々一つのインクジェットヘッド群となる。また、インクジェットヘッド群αを構成するインクジェットヘッド11に対して、インクジェットヘッド11がX軸移動手段15により移動する方向であるX軸方向かつこれと交差するY軸方向に、所定の間隔をおいて配置されている、γと示された2つのインクジェットヘッド11が一つのインクジェットヘッド群となる。ここでは、それぞれインクジェットヘッド群α、インクジェットヘッド群β、インクジェットヘッド群γと説明する。
【0095】
次に、複数のインクジェットヘッド群に対してワイピングを実施する場合のワイパーユニット7の構造について、
図9から
図11を用いて詳述する。
【0096】
図9及び
図10に示す通り、棒状シャフト19の断面形状は、正多角形になっており、本実施形態では、正六角形となっている。ワイピングすべきインクジェットヘッド11の列が増えるごとに、またインクジェットヘッド群が増えるごとに、さらに多角形にすることも、円形にすることも想定できる。
【0097】
そして、
図9及び
図11で示す通り、第1ワイピングステップを実現するための複数の保水性ワイパー23が、棒状シャフト19の外周面の正六角形一辺を構成する面に、インクジェットヘッド11が配置される間隔に合わせて一列に並べて配置される。
図8に示すインクジェットヘッド11の配置であれば、保水性ワイパー23も、αと示された2つのインクジェットヘッド11の所定の間隔に合わせて配置される。このように一列に配置される複数の保水性ワイパー23を1つの保水性ワイパー群とし、ここでは保水性ワイパー群Aと説明する。
【0098】
さらに、
図9から
図11に示すように、複数の保水性ワイパー23が、先ほど保水性ワイパー群を配置した外周面から棒状シャフト19の回転軸中心に対して周をずらした棒状シャフト19の外周面の他の正六角形一辺を構成する面に、先ほど配置した保水性ワイパー23とは棒状シャフト19の軸方向の位置をずらして、配置される。
図8に示すインクジェットヘッド11の配置であれば、保水性ワイパー23も、γと示された二つのインクジェットヘッド11の間隔に合わせて配置される。このように一列に配置される複数の保水性ワイパー23を、もう一つの保水性ワイパー群とし、ここでは保水性ワイパー群Bとする。ワイピングすべきインクジェットヘッド11の列が増えるごとに、またインクジェットヘッド群が増えるごとに、同様に保水性ワイパー群C、Dと保水性ワイパー群を増やしていく。
【0099】
また、保水性ワイパー23の配置と同様に、
図9及び
図11で示す通り、第2ワイピングステップを実現するための複数のブレードワイパー21が、先ほど保水性ワイパー群A及び保水性ワイパー群Bを配置した外周面から棒状シャフト19の回転軸中心に対して周をずらした棒状シャフト19の外周面の他の正六角形一辺を構成する面に、インクジェットヘッド11が配置される所定の間隔に合わせて一列に並べて配置される。
図8に示すインクジェットヘッド11の配置であれば、ブレードワイパー21も、αと示された2つのインクジェットヘッド11の間隔に合わせて配置される。このように一列に配置される複数のブレードワイパー21を1つのブレードワイパー群とし、ここではブレードワイパー群Aと説明する。
【0100】
さらに、
図9から
図11に示すように、複数のブレードワイパー群が、いままで保水性ワイパー群とブレードワイパー群を配置した外周面から棒状シャフト19の回転軸中心に対して周をずらした棒状シャフト19の外周面の他の正六角形一辺を構成する面に、先ほど配置したブレードワイパー21とは棒状シャフト19の軸方向の位置をずらして、配置される。
図8に示すインクジェットヘッド11の配置であれば、ブレードワイパー21も、γと示された二つのインクジェットヘッド11の間隔に合わせて配置される。このように一列に配置される複数のブレードワイパー21を、もう一つのブレードワイパー群とし、ここではブレードワイパー群Bとする。ワイピングすべきインクジェットヘッド11の列が増えるごとに、またインクジェットヘッド群が増えるごとに、同様に保水性ワイパー群C、Dと保水性ワイパー群を増やしていく。
【0101】
以上のようにして、ワイパーユニット7を構成する。なお、必ずしも1本の棒状シャフト19のみでワイパーユニット7を構成する必要はなく、必要に応じて複数の棒状シャフト19を用いて各ワイパー群を適宜分割して配置してもよく、回動しない方式にしてもよいことを確認する。
【0102】
次に、本実施形態における第1ワイピングステップ及び第2ワイピングステップの実施方法を説明する。
【0103】
まず、第1ワイピングステップを、
図8に示される配置の複数のインクジェットヘッド11に対して実施する場合について説明する。最初に、インクジェットヘッド群αに対して、保水性ワイパー群Aを用いて1回目の第1ワイピングステップを実施する。
次に、インクジェットヘッド群αとインクジェットヘッド11のノズル面長手方向に並んでいるインクジェットヘッド群βに対して、保水性ワイパー群Aを用いて、2回目の第1ワイピングステップを実施する。
【0104】
そして、ワイパーユニット7を回動させ、インクジェットヘッド群γに対して、保水性ワイパー群Bを用いて、3回目の第1ワイピングステップを実施する。
以上の過程を経て、すべてのインクジェットヘッド11に対して、第1ワイピングステップを実施することができた。
【0105】
また、第2ワイピングステップを、
図8に示される配置の複数のインクジェットヘッド11に対して実施する場合についても説明する。最初に、インクジェットヘッド群αに対して、ブレードワイパー群Aを用いて1回目の第2ワイピングステップを実施する。
次に、インクジェットヘッド群αとインクジェットヘッド11のノズル面長手方向に並んでいるインクジェットヘッド群βに対して、ブレードワイパー群Aを用いて、2回目の第2ワイピングステップを実施する。
【0106】
そして、ワイパーユニット7を回動させ、インクジェットヘッド群γに対して、ブレードワイパー群Bを用いて、3回目の第2ワイピングステップを実施する。
以上の過程を経て、すべてのインクジェットヘッド11に対して、第2ワイピングステップを実施することができた。
【0107】
以上のような構成にする理由について以下、第1ワイピングステップを例として説明する。
【0108】
例えば、複数の保水性ワイパー23を、棒状シャフト19の外周面の正六角形一辺を構成する一つの面に、
図8の例であれば、保水性ワイパー23を、インクジェットヘッド群αとインクジェットヘッド群γの間隔に合わせて、4枚配置する。しかし、このような構成で第1ワイピングステップを実施すると、インクジェットヘッド11のノズル面長手方向の一方端部からワイピングを開始する場合において、インクジェットヘッド群αをワイピングするときに、インクジェットヘッド群αとインクジェットヘッド群γとで、ワイピングの開始始点が異なるため、インクジェットヘッド群γのノズル列方向のキャリッジ13底面までワイピングしてしまう。このような過程で、キャリッジ13底面をワイピングしてしまう問題が生じる。
【0109】
そこで、上記のように保水性ワイパー群Aと保水性ワイパー群Bと分けて配置することで、インクジェットヘッド群α又はインクジェットヘッド群βをワイピングする際に、インクジェットヘッド群γをワイピングするための保水性ワイパー群Bがキャリッジ13底面をワイピングしないため、上記の問題を回避することができる。第2ワイピングステップの際も同様となる。
【0110】
以上の構成とすることで、複数のインクジェットヘッド11を有する場合であってもクリーニングシーケンスを適切に実施することができた。
【符号の説明】
【0111】
1 インクジェット描画装置
3 クリーニングユニット
5 キャッピングユニット
7 ワイパーユニット
11 インクジェットヘッド
13 キャリッジ
15 X軸移動手段
17 Z軸移動手段
19 棒状シャフト
21 ブレードワイパー
23 保水性ワイパー
26 メンテナンス液貯蔵槽
27 インクパージトレイ
29 Y軸移動手段
33 増粘インク
41 制御コンピューター
43 コントローラー
45 モーター駆動ドライバ
47 モーター駆動ドライバ
49 モーター駆動ドライバ
51 駆動モーター
53 直動モーター
55 駆動モーター
61 インクタンク
62 モーター駆動ドライバ
63 インク供給経路
65 モーター
67 サブタンク
69 エアーバルブ
71 正圧供給原
73 負圧供給源