(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】速結端子ユニット、及び配電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/20 20060101AFI20231117BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H02B1/20 T
H02B1/40 D
(21)【出願番号】P 2020055097
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】593042007
【氏名又は名称】株式会社因幡電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安見 守正
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 保憲
(72)【発明者】
【氏名】井上 順一
(72)【発明者】
【氏名】乾 幹弥
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-074544(JP,A)
【文献】特開2019-047579(JP,A)
【文献】特開2006-066223(JP,A)
【文献】特開2017-103019(JP,A)
【文献】特開2019-149898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 7/08
H01R 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が差し込まれる電線挿通孔を
正面側に有するケースと、前記電線挿通孔に差し込まれた前記電線を保持する速結端子部と、前記電線挿通孔に差し込まれた前記電線に接触し回転軸を中心に回転して
前記ケースの覗き窓を介して前記電線の挿入状態を表示する表示部材と、
前記速結端子部に保持された状態の前記電線に電気的に導通可能であり且つ前記ケースの背面側に露出し且つアースに接続されるための接続用端子と、を備え、
前記表示部材は、前記電線挿通孔に差し込まれ前記速結端子部を通過する電線の進路に侵入する第1姿勢と、前記電線の進路から退避した第2姿勢とのいずれかの姿勢に回転により姿勢変更可能に構成されており、
前記表示部材は、前記電線の差し込み量の増加に応じて前記第1姿勢から前記第2姿勢に姿勢変更し、前記第2姿勢において前記電線の差し込み量にかかわらず姿勢変更
せず、
前記速結端子部は、前記表示部材以外から外力を受けることで保持状態の前記電線を解放可能に構成されており、
前記表示部材は、前記ケースの内部に収容され前記ケースに包囲されている、アース用速結端子ユニット。
【請求項2】
前記表示部材は、前記回転軸を有する軸部から延びて前記電線と接触し得る電線接触端部と、前記軸部から延びて前記挿入状態を表示する表示端部と、を備え、
前記第2姿勢において前記表示端部は前記ケースに接触していない、請求項1に記載の
アース用速結端子ユニット。
【請求項3】
前記第1姿勢へ向かう弾性反発力を前記表示部材に対して付与する復帰部を更に備え、
前記復帰部は前記表示部材に一体に形成され、前記復帰部と前記表示部材は同一部材である、請求項1又は2に記載の
アース用速結端子ユニット。
【請求項4】
前記ケースは、前記速結端子部及び前記表示部材を収容する内部空間を有するケース本体と、前記内部空間を閉塞するケース蓋と、を有し、
前記ケース本体は、前記電線挿通孔を有し、
前記電線挿通孔に差し込まれ前記速結端子部を通過する電線の挿抜方向の差し込み側に前記ケース蓋が配置されて
おり、
前記速結端子部及び前記表示部材は、前記ケース本体及び前記ケース蓋に挟まれ、
前記回転軸は、前記電線の挿抜方向に直交しており、
前記表示部材は、前記回転軸を有する軸部を有し、前記軸部が前記ケース本体及び前記ケース蓋に前記電線の挿抜方向の両側から挟まれた状態で回転可能に支持されている、請求項1~3のいずれかに記載の
アース用速結端子ユニット。
【請求項5】
前記表示部材の一部は、前記速結端子部よりも前記ケース蓋側に配置されており、前記表示部材は、前記電線の挿抜方向に沿って見て、前記速結端子部に部分的に重なっている、請求項
4に記載の
アース用速結端子ユニット。
【請求項6】
複数の遮断器と、
帯状導体のアースと、前記アースに前記接続用端子が接続された請求項1~
5のいずれかに記載の
アース用速結端子ユニットと、を有する配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、配電盤に配置される帯状導体(例えば銅帯)に対して電線を接続する際に用いる速結端子ユニット、及び配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤は、特許文献1に例示するように、複数の配線用遮断器と、配電盤の回路部の一部を構成する銅帯等の帯状導体と、を有する。帯状導体はアースとして利用されており、電線が帯状導体に電気的に接続される。電線の帯状導体への電気的接続を容易にするために、電線を挟み持つ速結端子ユニットが帯状導体に取り付けられている。
【0003】
特許文献2は、遮断器に速結端子ユニットが組み込まれた例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-149898号公報
【文献】特開2002-109984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電線を速結端子ユニットに接続する手順は次の通りである。電線の被覆を所定長さ分剥がし、その後、被覆がはがされた電線を速結端子ユニットの電線挿通孔に差し込み、その後、速結端子ユニットにおける電線の挿入状態を表示する表示部を見て、電線の挿入が適切になされているか否かを確認する。ここで、従来の速結端子ユニットには、次の(1)及び(2)のうち少なくとも1つの問題があると考えられる。
【0006】
(1)電線の差し込み不足及び電線の差し込み過ぎの双方が好ましくないと考えられており、電線の被覆を剥ぐ寸法を適切にするために、電線の被覆を剥ぐ作業に神経を使い、作業効率が悪い。
(2)表示部は電線の差し込み量に応じて移動するために、電線の差し込み量にばらつきが生じると、使用者にとって表示部の見え方にばらつきが生じ、適切に電線が差し込まれていたとしても、挿入状態に不安を感じてしまう。
【0007】
本開示は、電線を接続する作業を容易にすると共に、作業者の不安を低減する表示をする速結端子ユニット及び配電盤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の速結端子ユニットは、電線が差し込まれる電線挿通孔を有するケースと、前記電線挿通孔に差し込まれた前記電線を保持する速結端子部と、前記電線挿通孔に差し込まれた前記電線に接触し回転軸を中心に回転して前記電線の挿入状態を表示する表示部材と、を備え、前記表示部材は、前記電線挿通孔に差し込まれ前記速結端子部を通過する電線の進路に侵入する第1姿勢と、前記電線の進路から退避した第2姿勢とのいずれかの姿勢に回転により姿勢変更可能に構成されており、前記表示部材は、前記電線の差し込み量の増加に応じて前記第1姿勢から前記第2姿勢に姿勢変更し、前記第2姿勢において前記電線の差し込み量にかかわらず姿勢変更しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本開示の配電盤を構成する第1導体、第2導体、遮断器及び速結端子ユニットを示す正面図。
【
図3】第1導体、第2導体、遮断器及び速結端子ユニットを示す断面図。
【
図4】速結端子ユニットを示す正面図、側面図、及び背面図。
【
図5】
図4におけるA1-A1部位断面図。(a)電線が差し込まれていない状態を示す。(b)電線が差し込まれた状態を示す。
【
図7】速結端子ユニットの組立方法を示す、
図4におけるA1-A1部位断面図。
【
図8】速結端子ユニットの組立方法を示す分解斜視図。
【
図9A】第1の向きで取り付けられている速結端子ユニットを示す正面図、及び側面図。
【
図9B】第2の向きで取り付けられている速結端子ユニットを示す正面図、及び側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
配電盤は、
図1に示すように、操作スイッチ10を有する複数の遮断器1と、複数の遮断器1を収納すると共に正面側X1を向く開口20を有する筐体2と、筐体2の開口20を閉塞可能な扉3と、を有する。
図1及び
図3に示すように、遮断器1の操作スイッチ10は、接点を開閉するために入状態及び切状態のいずれかに切換可能であり、筐体2側に取り付けられた状態で正面側X1に向かって突出している。筐体2は、
図1に示すように、開口20を有する箱形をなし、天板部21、背板部22、側板部23及び底板部24で、遮断器1を含む電気機器を収納する空間を形成している。
図3に示すように、配電盤を構成する各電気機器(遮断器1を含む)は中板(非図示)に取り付けられ、中板が筐体2の背板部(非図示)に取り付けられる。
図1に示すように、遮断器1を含む電気機器の正面側X1には、扉3が側板部23に開閉可能に取り付けられている。扉3には、遮断器1に対応する覗き窓30が形成されており、遮断器1の操作スイッチ10が覗き窓30から正面側X1に開放(露出)している。扉3は、内部の電気機器の導電部を遮蔽して安全性を確保すると共に、見栄えを向上させるために設けられる。本実施形態では、扉3は、観音開きの扉であるが、これに限定されない。例えば片開きの扉であってもよい。
【0012】
図2及び
図3に示すように、配電盤は、複数の遮断器1と、配電盤の回路部の一部を構成する銅帯等の帯状導体5と、を有する。配電盤の外部から引き込まれた又は配電盤内の機器を接続する電線Sは、遮断器1又は帯状導体5と電気的に接続される。電線Sを遮断器1に接続する作業を容易に行えるようにするために、遮断器1には速結端子部が設けられている。また、帯状導体5と電線Sとを電気的に接続する作業を容易に行えるようにするために、速結端子ユニット6を設けている。
【0013】
なお、電線の配線は仕様に応じて適宜変わるので、配電盤の出荷時には電線が配線されていない場合があり、
図2は、配線の様子を示す正面図である。
【0014】
帯状導体5は、アースとして設けられ、互いに平行に複数配置される。本実施形態では、2本配置され、1つがELCB(Earth Leakage Circuit Breaker;漏電ブレーカ用)用の第1導体5aとして設けられ、もう1つがED(D種接地用)用の第2導体5bとして設けられているが、これに限定されない。帯状導体5の長手方向は、筐体2に対して上下方向(Y1,Y2)に沿って配置される。
図2では上下方向、
図3では紙面に対して垂直方法である。第1導体5a及び第2導体5bは、正面側X1から背面側X2を見た奥行方向における位置(高さ)が同じである。
【0015】
<速結端子ユニット>
速結端子ユニット6は、
図3に示すように、第1導体5a及び第2導体5bよりも正面側X1に配置される。速結端子ユニット6は、
図4、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、ケース60と、ケース60に収容される1つの速結端子部62と、ケース60に収容される表示部材65と、を有する。
【0016】
ケース60は、箱状に形成され、配電盤への取り付け状態において正面側X1となる面に1つの電線挿通孔63が形成されている。速結端子部62は、電線挿通孔63に差し込まれた電線Sを保持する。具体的には、速結端子部62は、電線Sに電気的に接続される端子板62aと、電線Sを端子板62aに向けて押し付ける弾性部材62bと、を有する。電線Sは、端子板62aと弾性部材62bによって挟まれて固定される。速結端子ユニット6は、速結端子部62の挟持構造(端子板62a及び弾性部材62b)から電線Sを離すための解除操作を入力するための解除操作部64を有する。解除操作部64を操作することで、差し込まれた電線Sの挿抜が自在となる。具体的には、解除操作部64をケース60の内側に押すことで、解除操作部64が弾性部材62bに接触し、弾性部材62bのうち電線Sの抜けを防止する係止端を電線Sから離間させる。これにより、電線Sの抜脱が可能になる。
【0017】
表示部材65は、電線挿通孔63に差し込まれた電線Sに接触し回転軸C1を中心に回転して電線Sの挿入状態を表示する。具体的には、表示部材65の軸部65bがケース60によって回転軸C1を中心として回転可能に支持されている。表示部材65は、軸部65bから延びて挿入状態を表示する表示端部65aと、軸部65bから延びて電線Sと接触し得る電線接触端部65cと、を有する。ケース60には、覗き窓60hが形成されている。表示部材65の表示端部65aが除き窓60hを介して外部から視認できるか否かにより、表示部材65は電線Sの挿入状態を表示する。表示端部65aには、表示部材65の他の部位とは異なる色(例えば、黄色や赤色など)が付されている。本実施形態では、表示端部65aが覗き窓60h全体を占めて視認できる場合には、電線Sが適切な接続状態であることを意味する。表示端部65aが覗き窓60hから視認できない場合又は表示端部65aが覗き窓60hの一部のみを占めて視認される場合には、電線Sが差し込み不足であることを意味する。
【0018】
図4及び
図6に示すように、速結端子ユニット6は、接続用端子61を有する。接続用端子61は、速結端子部62の端子板62aに電気的に接続され且つケース60の背面側X2に露出する。速結端子部62の端子板62aは接続用端子61と導通している(
図6参照)。速結端子ユニット6のケース60は絶縁性の部材(例えば樹脂)で形成されているが、端子板62aから接続用端子61までの適切な電気的経路を確保することができれば、ケース60の絶縁材の材料を任意に変更可能である。ケース60の正面側X1には、電線Sの被覆を剥ぐ寸法を示すストリップゲージ66bと、適合する電線径を示す表示66aと、が設けられている。
【0019】
速結端子ユニット6は、第1姿勢p1へ向かう弾性反発力を表示部材65に対して付与する復帰部65dを備える。復帰部65dは、ケース60の内壁を足場として表示部材65を付勢する。本実施形態では、特に限定されないが、復帰部65dは表示部材65と一体に形成され、復帰部65dと表示部材65は同一部材である。特に限定されないが、表示部材65は樹脂製である。なお、表示部材65と復帰部65dを別部材にしてもよい。
【0020】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、表示部材65は、第1姿勢p1と、第2姿勢p2とのいずれかの姿勢に回転により姿勢変更可能に構成されている。第1姿勢p1は、
図5(a)に示すように、電線挿通孔63に差し込まれ速結端子部62を通過する電線Sの進路Rに侵入する姿勢である。電線Sの進路は、電線挿通孔63、端子板62a及びケース60の内壁によって規定される電線Sが通り得る空間であり、多くの場合、電線の規定太さに対応する柱状となる。特に限定されないが、電線Sの挿抜方向RDが直線状であることが好ましい。本実施形態では、特に限定されないが、電線の規定太さをφ1.6mm~φ2.0mmとしている。電線の規定太さは、例示に過ぎず、これに限定されず、適宜変更可能である。例えば、φ2.6mmなども考えられる。第1姿勢p1における表示部材65は、差し込まれた電線Sに接触可能となる。第2姿勢p2は、
図5(b)に示すように、電線Sの進路Rから退避した姿勢である。
【0021】
図5(a)に示す第1姿勢p1における表示部材65は、電線Sの差し込み量が増加するにともなって、電線接触端部65cが電線Sで押され、復帰部65dによる弾性反発力に対抗しながら、第1姿勢p1から第2姿勢p2に姿勢変更する。
図5(b)に示す第2姿勢p2においては、電線Sの差し込み量がそれ以上増大しても、電線の挿抜方向RDに沿って電線Sが電線接触端部65cを押さないため、電線Sの差し込み量にかかわらず姿勢変更しない。表示部材65は、電線Sの更なる侵入を阻害しない。表示部材65は、復帰部65dによって第1姿勢p1へ復帰する力が付与されているが、電線接触端部65cに接触する電線Sによって表示部材65の姿勢が第2姿勢p2に保持される。電線Sが抜脱されれば、復帰部65dによって第1姿勢p1へ復帰する。
【0022】
このように、本実施形態では、電線Sの差し込み量が不足していれば、表示端部65aが覗き窓60hを介して露出しない又は露出が不十分となるので、電線Sの差し込み量が不足していることを作業者が理解しやすい。また、本実施形態では、電線Sの差し込み量が適切な場合および電線Sを差し込み過ぎた場合の双方で表示端部65aの露出度が同じになる。すなわち、電線Sの差し込み過ぎが許容される。
【0023】
図5(b)に示すように、第2姿勢p2において表示端部65aはケース60に接触せずに、表示端部65aとケース60との間に隙間が設けられている。仮に、第2姿勢p2において表示端部65aがケース60に接触すれば、ケース60から表示端部65aに入力される力と、電線Sから電線接触端部65cに入力される力とが相反する方向となり、表示部材65に負荷が生じてしまう。第2姿勢p2において表示端部65aがケース60に接触しなければ、上記負荷を無くすことができ、表示部材65の耐久性を向上させることが可能となる。
【0024】
<組立容易構造>
図5~8に示すように、ケース60は、ケース本体60aと、ケース蓋60bと、を有する分割体である。ケース本体60a及びケース蓋60bの間には、互いに嵌り合う爪及び凹溝が形成されており、爪及び凹溝の嵌り合いによってケース蓋60bがケース本体60aに固定される。ケース本体60aは、速結端子部62(端子板62a,弾性部材62b)及び表示部材65を収容する内部空間SP1を有する箱状に形成されている。ケース蓋60bは、内部空間SP1を閉塞する。ケース本体60aは、電線Sの挿抜方向RDの抜く側RD1に配置され、ケース蓋60bは電線Sの挿抜方向RDの差し込み側RD2に配置されている。すなわち、電線Sの挿抜方向RDとケースの開閉方向とが一致している。
【0025】
速結端子部62(端子板62a,弾性部材62b)は、ケース本体60a及びケース蓋60bに挟まれており、ケース本体60a及びケース蓋60bに接触することで、挿抜方向RDの位置が固定されている。これは、速結端子部62が、ケース本体60a及びケース蓋60bの少なくともいずれかに常時接触することを意味するものではない。表示部材65は、回転軸C1を有する軸部65bを有する(
図8参照)。軸部65bがケース本体60aの円弧凹部及びケース蓋60bの円弧凹部に挟まれた状態で回転可能に支持されている。本実施形態では、特に限定されないが、円弧凹部が表示部材65を回転可能に支持するが、これに限定されない。例えば、表示部材65を回転可能に支持できれば、円弧に限定されず、V字形状、U字形状などの形状に変更可能である。
【0026】
図5に示すように、表示部材65の一部(電線接触端部65c)は、速結端子部62よりもケース蓋側RD2に配置されている。表示部材65は、電線Sの挿抜方向RDに沿って見て(ケース蓋側から見て)、速結端子部62(特に端子板62a)に部分的に重なっている。これにより、表示部材65の奥に速結端子部62(特に端子板62a)が配置されているため、表示部材65をケース本体60aから抜かなければ、速結端子部62(特に端子板62a)がケース本体60aから抜けず、組立中に多数の部品が外れることが低減され、組立を容易にすることが可能となる。
【0027】
組立方法は、
図7及び
図8に示すように、まず、ケース本体60aの内部空間SP1に対して端子板62aを挿入し、次に、ケース本体60aと端子板62aとで包囲される内部空間SP1に対して弾性部材62bを挿入し、次に、表示部材65を内部空間SP1に挿入する。この際に、表示部材65の軸部65bを、ケース本体60aの対応する円弧凹部に接触させる。次に、ケース本体60aに対してケース蓋60bを取り付ける。この際に、ケース蓋60bに形成された円弧凹部を表示部材65の軸部65bに嵌め、ケース本体60a及びケース蓋60bそれぞれの円弧凹部で軸部65bを挟み、表示部材65を回転可能に支持する。これにより、内部空間SP1に速結端子部62及び表示部材65を入れて、ケース蓋60bを取り付けて組立できる構造になり、組立を容易にすることが可能となる。
【0028】
<速結端子ユニット6の取り付け構造>
図9Aに示すように、速結端子ユニット6は、接続用端子61が第1導体5aに導通し且つ第2導体5bに導通しない第1の向きp3で第1導体5a又は第2導体5bに取り付け可能に構成されている。さらに、
図9Bに示すように、速結端子ユニット6は、接続用端子61が第2導体5bに導通し且つ第1導体5aに導通しない第2の向きp4で第1導体5a又は第2導体5bに取り付け可能に構成されている。
図9A、Bに示す実施形態では、第1の向きp3にて第1導体5aに速結端子ユニット6が取り付けられ、第2の向きp4にて第2導体5bに速結端子ユニット6が取り付けられているが、これに限定されない。例えば、ケース60の背面側X2に露出する接続用端子61の場所を変更することにより、第1の向きp3にて第2導体5bに速結端子ユニット6が取り付けられ、第2の向きp4にて第1導体5aに速結端子ユニット6が取り付けられるように構成することも可能である。
【0029】
図9A及び
図9Bに示すように、電線挿通孔63は、正面視でケース60の中心C2から偏心した位置に配置されている。このような電線挿通孔63の配置によれば、速結端子ユニット6の向きによって
図2に示すように電線挿通孔63の位置が所定の2つの位置(右寄り又は左寄り)のいずれかになるので、第1導体5aと第2導体5bのどちらに導通しているかを一目で把握することが可能となり、作業性を向上させることが可能となる。
【0030】
図9Aに示すように、第1の向きp3にある速結端子ユニット6の電線挿通孔63に電線Sを挿入すれば、速結端子部62及び接続用端子61を介して、電線Sが第1導体5aに電気的に接続され、電線Sは第2導体5bとは導通されず絶縁状態となる(経路L参照)。一方、
図9Bに示すように、第2の向きp4にある速結端子ユニット6の電線挿通孔63に電線Sを挿入すれば、速結端子部62及び接続用端子61を介して、電線Sが第2導体5bに電気的に接続され、電線Sは第1導体5aとは導通されず絶縁状態となる(経路L参照)。
【0031】
このような構造によれば、1つの速結端子ユニット6を用いて、速結端子ユニット6の取り付け向きを変更するだけで、2種類の帯状導体5(アース)に接続を選択できる。しかも、電線Sを挿入するだけで接続される速結端子部62を採用しているので、接続作業が容易となる。それでいて、1つの速結端子ユニット6に1つの電線挿通孔63のみ形成されているので、電線挿通孔63が複数存在する場合に比べて間違えることがない。
【0032】
次に、速結端子ユニット6の固定方法について説明する。
【0033】
図4、
図9A及び
図9Bに示すように、第1導体5a及び第2導体5bには、ネジ溝5sが形成されている。速結端子ユニット6のケース60は、正面視にて一方側SP3にボルト孔67が設けられ、他方側SP4且つ背面側X2には位置決め突起68が形成されている。速結端子ユニット6は、ネジ溝5sに挿入される頭付きボルト71で第1導体5a又は第2導体5bに締結される。
図9Aの例では、速結端子ユニット6は第1導体5aに締結され、
図9Bの例では、速結端子ユニット6は第2導体5bに締結される。ネジ溝5sと、ネジ溝5sに挿入される頭付きボルト71であれば、ボルト・ナット構造に比べて、固定作業が容易となる。
【0034】
どの遮断器1に対応するアース線としての電線が帯状導体5のどの箇所に取り付けられているかの判別し易さが求められる場合がある。その場合には、
図2に示すように、遮断器1及び速結端子ユニット6は、第1導体5a及び第2導体5bの長手方向に沿って複数配置されており、正面視において、複数の遮断器1の配置間隔D1と、複数の速結端子ユニット6の配置間隔D2とが同一であることが好ましい。
【0035】
以上のように、本実施形態の速結端子ユニット6は、電線Sが差し込まれる電線挿通孔63を有するケース60と、電線挿通孔63に差し込まれた電線Sを保持する速結端子部62と、電線挿通孔63に差し込まれた電線Sに接触し回転軸C1を中心に回転して電線Sの挿入状態を表示する表示部材65と、を備え、表示部材65は、電線挿通孔63に差し込まれ速結端子部62を通過する電線Sの進路Rに侵入する第1姿勢p1と、電線Sの進路Rから退避した第2姿勢p2とのいずれかの姿勢に回転により姿勢変更可能に構成されており、表示部材65は、電線Sの差し込み量の増加に応じて第1姿勢p1から第2姿勢p2に姿勢変更し、第2姿勢p2において電線Sの差し込み量にかかわらず姿勢変更しないことが好ましい。
【0036】
この構成によれば、電線Sの差し込み量の増加に応じて表示部材65が第1姿勢p1から第2姿勢p2に姿勢変更し、表示部材65が電線Sの進路から退避するので、電線Sの差し込み過ぎが許容される。電線Sの差し込み過ぎが許容されると、電線Sの被覆を除去する寸法の許容量が増えるので、被覆を剥ぐ作業を簡素化して電線の接続作業を容易にすることが可能となる。
それでいて、表示部材65が第2姿勢p2において電線Sの差し込み量にかかわらず姿勢変更しないので、電線Sの差し込み量が適正な場合と、電線Sを差し込み過ぎの場合の表示が同じとなる。電線Sの差し込み不足状態かそれ以外の2状態のみを表示部材65が表示するので、作業者が不安を感じることを低減可能となる。
【0037】
特に限定されないが、本実施形態のように、表示部材65は、回転軸C1を有する軸部65bから延びて電線Sと接触し得る電線接触端部65cと、軸部65bから延びて前記挿入状態を表示する表示端部65aと、を備え、第2姿勢p2において表示端部65aはケース60に接触していないことが好ましい。この構成によれば、表示部材65にかかる負荷を低減又は無くすことができ、表示部材65の耐久性を向上させることが可能となる。
【0038】
特に限定されないが、本実施形態のように、第1姿勢p1へ向かう弾性反発力を表示部材65に対して付与する復帰部65dを更に備え、復帰部65dは表示部材65に一体に形成され、復帰部65dと表示部材65は同一部材であることが好ましい。この構成によれば、復帰部65dと表示部材65が別部材である場合に比べて組立作業を容易にすることが可能となる。また、例えば、金属と樹脂のように別材料にすることで一方の部材に負荷がかかり過ぎて耐久性が低減することを回避可能となる。
【0039】
特に限定されないが、本実施形態のように、ケース60は、速結端子部62及び表示部材65を収容する内部空間SP1を有するケース本体60aと、内部空間SP1を閉塞するケース蓋60bと、を有し、ケース本体60aは、電線挿通孔63を有し、電線挿通孔63に差し込まれ速結端子部62を通過する電線Sの挿抜方向RDの差し込み側RD2にケース蓋60bが配置されていることが好ましい。この構成によれば、内部空間SP1に速結端子部62及び表示部材65を入れて、ケース蓋60bを取り付けて組立できる構造になり、組立を容易にすることが可能となる。
【0040】
特に限定されないが、本実施形態のように、速結端子部62及び表示部材65は、ケース本体60a及びケース蓋60bに挟まれていることが好ましい。この構成によれば、ケース蓋60bを取り付けるだけで、速結端子部62及び表示部材65を固定でき、組立を容易にすることが可能となる。
【0041】
特に限定されないが、本実施形態のように、表示部材65は、回転軸C1を有する軸部65bを有し、軸部65bがケース本体60a及びケース蓋60bに挟まれた状態で回転可能に支持されていることが好ましい。これにより、簡素な構成で、表示部材65を回転可能にして組み立てることが可能となる。
【0042】
特に限定されないが、本実施形態のように、表示部材65の一部は、速結端子部62よりもケース蓋側RD2に配置されており、表示部材65は、電線Sの挿抜方向RDに沿って見て、速結端子部62に部分的に重なっていることが好ましい。この構成によれば、ケース蓋60bを外してみて、奥から手前に向けて速結端子部62及び表示部材65の順で配置されるので、表示部材65が外れなければ速結端子部62が外れず、組立中に部材が不意に外れにくくなり、組立性を向上させることが可能となる。
【0043】
特に限定されないが、本実施形態の配電盤は、複数の遮断器1と、上記速結端子ユニット6と、を有することが好ましい。このように構成すれば、電線の接続作業の効率を向上させることができ、更に、電線の配線ミスを防止可能な配電盤を提供することができる。
【0044】
本開示は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0045】
例えば、上記では説明の便宜上「正面側」及び「背面側」と説明しているが、これらの意味は、配電盤における「正面側」及び「背面側」に限定される意味ではない。電線接続構造において速結端子ユニット側が「正面側」であり、帯状導体側が「背面側」という意味である。また、本実施形態では、速結端子ユニット6はアース用であることが好ましいが、アース用以外にも採用可能である。
【符号の説明】
【0046】
60 ケース
60a ケース本体
60b ケース蓋
62 速結端子部
63 電線挿通孔
65 表示部材
65a 表示端部
65b 軸部
65c 電線接触端部
65d 復帰部
S 電線
C1 回転軸
R 電線の進路
p1 第1姿勢
p2 第2姿勢
RD 挿抜方向
RD2 ケース蓋側(差し込み側)