(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】コック、反応装置及び化学製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 3/26 20060101AFI20231117BHJP
F16K 5/02 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
F16K3/26 A
F16K5/02 E
(21)【出願番号】P 2020533394
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2019027788
(87)【国際公開番号】W WO2020026777
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018143585
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182914
【氏名又は名称】佐々木 善紀
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 浩平
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-122250(JP,A)
【文献】特開2009-236179(JP,A)
【文献】特開2006-138347(JP,A)
【文献】特表2007-534503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/26
F16K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管体と第2管体とを含む少なくとも2つの管体と、これらを連結するコック本体部と、該コック本体部に
回転可能に取り付けられ
るシール部材と、を備え
、
前記シール部材は、前記コック本体部の内壁面に対して摺動する摺動部と、試料を保持する凹部で構成される保持部と、を有し、
前記凹部は、前記摺動部に取り囲まれるように形成されており、
前記凹部が旋回して、前記第1管体側から前記第2管体側に前記試料を移動可能に構成される、コック。
【請求項2】
前記
第1管体よりも前記
第2管体の方が下方にあり、
前記凹部が旋回して前記
第2管体の流路に露出したときに、前記凹部に収容されていた前記試料が重力によって前記流路内を落下する、請求項1に記載の
コック。
【請求項3】
前記シール部材は、前記第1管体と前記第2管体とを含む少なくとも2つの管体を連結するコック本体部に対してスライド可能に取り付けられる、請求項1又は2に記載のコック。
【請求項4】
第1管体と第2管体とを含む少なくとも2つの管体と、これらを連結するコック本体部と、該コック本体部に
対してスライド可能に取り付けられ
るシール部材と、を備え
、
前記シール部材の前記コック本体部に対するスライド方向に沿ってみたときに、第1管体と第2管体は、互いにずれるように前記コック本体部に接続されており、
前記シール部材を貫通する貫通孔と前記コック本体部の内壁面が、試料を保持する保持部を構成し、
前記貫通孔は、第1の位置で前記第1管体の流路と連通し、前記第1の位置から前記コック本体部に対して前記シール部材をスライドさせた第2の位置において前記第2管体の流路と連通し、
前記第1管体と前記第2管体とを連通させることなく、前記第1管体側から前記第2管体側に前記試料を移動可能に構成される、コック。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の
コックと反応器とを備え、
前記第1管体が前記コック本体部よりも上側に、前記第2管体がコック本体部よりも下側になるように配置され、前記第2管体と前記反応器とが接続されており、
前記第1管体から導入され前記保持部に収容された前記試料が
、前記コックを操作することで前記保持部から前記第2管体を経由して前記反応器内に落下する反応装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の反応装置を用いて化学製品を製造する工程を有する、化学製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール部材、コック、反応装置及び化学製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質を用いた実験又は化学製品の製造の際、副生物の低減、反応生成物の分解の抑制等のため、反応器内部への空気等の侵入を抑制することが必要な場合がある。このような場合、例えば、特許文献1に記載されているような不活性ガスが充填されるグローブボックス内に反応装置を入れ、その中で原料を供給したり、各種操作を行ったりすることが必要となる。このようなグローブボックスを用いての作業は、ボックスに直結されたグローブを着用して行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グローブボックス内での作業は、グローブを着用した状態での作業であることから、手先で細かい操作を行うことが難しく、作業者の負担となっている。また、グローブボックス内に実験装置又は製造装置を設置したうえでグローブボックス内を不活性ガスで置換する必要がある。このため準備に時間と手間を要し、その結果作業効率が低下する。そこで、本開示では、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することが可能なシール部材、コック、及び反応装置を提供する。また、化学製品を効率よく製造することが可能な化学製品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るシール部材は、少なくとも2つの管体の間に設けられるシール部材であって、試料を保持する保持部を有し、一方の管体側から他方の管体側に試料を移動可能に構成される。このようなシール部材は、シンプルな構成でシール性を有しつつ試料を移動できるため、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。
【0006】
保持部は試料を収容する凹部で構成され、凹部が旋回して試料を一方の管体側から他方の管体側に移動してよい。試料を収容する凹部を有することで、保持及び移動できる試料の量を多くすることができる。
【0007】
シール部材は、少なくとも2つの管体を連結するコック本体部に回転可能に取り付けられ、コック本体部の内壁面に対して摺動する摺動部を有し、保持部は摺動部によって区画される領域内に設けられてよい。このような摺動部を有することによって、シール部材のシール性を十分に優れたものにすることができる。
【0008】
シール部材は、少なくとも2つの管体を連結するコック本体部に対してスライド可能に取り付けられてもよい。これによって、簡便な操作で試料を移動することができる。シール部材は、コック本体部に対して、保持部が一方の管体の流路に連通する状態と、保持部が他方の管体に連通する状態とが切り替わるようにスライドしてよい。
【0009】
本開示の一側面に係るシール部材は、少なくとも2つの管体の間に設けられるシール部材であって、少なくとも2つの管体を連結するコック本体部に対してスライド可能に取り付けられ、シール部材を貫通する貫通孔と2つの管体を連結するコック本体部の内壁面が試料を保持する保持部を構成し、一方の管体側から他方の管体側に試料を移動可能に構成される。このようなシール部材は、シンプルな構成でシール性を有しつつ試料を移動できるため、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。
【0010】
少なくとも2つの管体は、第1管体と第2管体とを有してよい。この場合、シール部材は、第1管体と第2管体とを連通させることなく、第1管体側から第2管体側に試料を移動可能に構成されてよい。これによって、第1管体と第2管体の間を十分に遮断することができる。
【0011】
本開示の一側面に係るシール部材は、コック本体部に回転可能に取り付けられるシール部材であって、回転の際にコック本体部の内壁面に対して摺動する摺動部と、摺動部によって区画された領域内に形成され、回転に伴って旋回して試料を保持及び放出可能に構成される凹部と、を備える。
【0012】
このようなシール部材は、シンプルな構成でシール部材を回転するという簡便な操作で試料の保持及び放出を行うことができる。また、凹部が摺動部によって区画された領域内に形成されることからシール性に十分に優れる。したがって、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。
【0013】
本開示の一側面に係るコックは、少なくとも2つの管体と、これらを連結するコック本体部と、該コック本体部に取り付けられる上述のいずれかのシール部材と、を備える。このコックは、シンプルな構成でシール性を有しつつ試料を保持及び放出可能なシール部材を備えることから、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。
【0014】
本開示の一側面に係る反応装置は、上記シール部材と反応器とを備え、上記保持部から試料が反応器内に落下する。この反応装置は、上記保持部で保持されていた試料を反応器内に落下させるものである。このような反応装置は、シンプルな構成でシール性を有しつつ試料を反応器内に落下させるものであることから、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。
【0015】
本開示の一側面に係る反応装置は、シール部材と反応器とを備え、上記凹部から試料が反応器内に落下する。この反応装置は、上記凹部で保持されていた試料を反応器内に落下させるものである。このような反応装置は、シンプルな構成でシール性を有しつつ試料を反応器内に落下させるものであることから、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。
【0016】
本開示の一側面に係る化学製品の製造方法は、上述の反応装置を用いて化学製品を製造する工程を有する。この製造方法では上述の反応装置を用いることから、化学製品を効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することが可能なシール部材、コック、及び反応装置を提供することができる。また、化学製品を効率よく製造することが可能な化学製品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
【
図5】第2実施形態に係るシール部材を示す図である。
【
図6】第3実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
【
図7】第3実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
【
図8】第3実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
【
図9】第4実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
【
図10】第4実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照して、本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、以下の各実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
図1は、第1実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
図1のコック60は、コック本体部40と、コック本体部40を例えば上下方向から挟むようにしてコック本体部40にそれぞれ接続される第1管体20及び第2管体30と、コック本体部40に挿入され、第1管体20と第2管体30の間を遮断するシール部材10と、を備える。シール部材10は、ガスの侵入を抑制するシール機能と、試料を保持する機能と、試料を第1管体20側から第2管体30側に移動する機能を兼ね備える。
【0021】
シール部材10は、一方の端部にハンドル部14と、他方の端部に固定部16と、両端部の間に摺動部18と、を有する。シール部材10は、ハンドル部14と固定部16とによって、
図1の横方向の移動が規制され、コック本体部40に回転可能に固定される。固定部16は、パッキン50を介して固定部材52と螺合し、シール部材10は、パッキン50及び固定部材52と一体となって、コック本体部40に対して回転する。
【0022】
シール部材10がコック本体部40に対して回転する際、シール部材10の摺動部18は、コック本体部40の内壁面42に対して摺動する。凹部12は摺動部18によって区画されており、摺動部18が内壁面42に対して摺動しながらシール部材10が回転する。このため、コック本体部40に対してシール部材10を回転している間も、コック60は良好なシール性を維持することができる。例えば、第1管体20から第2管体30にガスが流入すること、及び、コック本体部40とシール部材10との隙間から外気が侵入することを抑制することができる。
【0023】
図1に示すように、凹部12が第1管体20の流路に露出しているときに、第1管体20から試料を導入すれば、凹部12に試料が保持される。凹部12は試料の収容及び放出を十分に円滑にする観点から、シール部材10の回転軸から周面に向かう方向に拡がるように、例えばすり鉢状、漏斗状又は半球体状に形成されてよい。凹部12の外縁は、試料が摺動部18と内壁面42との間に入り込むことを抑制する観点から、角張っていてよい。
【0024】
図2は、
図1と同じコック60を示す図であり、
図1の状態とは違う状態を示している。
図2は、
図1に示す状態から、シール部材10を半回転させたときの状態を示している。シール部材10は、ハンドル部14を操作して回転させることができる。
図1に示す状態からシール部材10を回転したときに、固定部材52及びパッキン50も一緒に回転してもよい。このとき、パッキン50はコック本体部40の端面に摺動しながら回転してよい。
【0025】
コック本体部40に対してシール部材10を半回転すると、凹部12はシール部材10の回転に伴って旋回し、第2管体30の流路に露出する。
図1,2に示すように、第1管体20よりも第2管体30の方が下方にある場合、
図2の状態になると、
図1の状態において凹部12に収容されていた試料は、旋回した後、重力によって第2管体30の流路内を落下する。このように、コック60は、重力を利用して凹部12から試料を放出できるため、極めて単純な操作で第2管体30の下方に接続される反応器等に試料を導入することができる。
【0026】
図2の状態で凹部12から試料を落下させた後、コック本体部40に対してシール部材10をさらに半回転すると、
図1の状態に戻る。この状態では、第1管体20の流路を経由して再び凹部12に試料を導入してもよい。このように試料の保持部に相当する凹部12は試料の収容(保持)と放出とを繰り返し行うことができる。
【0027】
シール部材10は第1管体20と第2管体30とを連通させる貫通孔を有しない。このため、第1管体20と第2管体30との間を、ガス等の媒体が流通することを抑制することができる。また、シール部材10は、回転の際にコック本体部40の内壁面42と摺動する摺動部18を有し、これによって、第2管体30の流路が継続してシールされる。すなわち、凹部12は摺動部18に取り囲まれており、摺動部18によって区画される領域内に形成されている。このため、凹部12が第2管体30の流路に露出したときも、コック本体部40の内壁面42と摺動部18とが接触していることから、コック本体部40の両端部からの第2管体30の流路内への外気の侵入を十分に抑制することができる。
【0028】
コック60は、
図1に示す状態で凹部12に試料が導入され、
図2に示す状態で凹部12から試料を放出する。
図1の状態から
図2の状態に変更するためにハンドル部14を操作している間も、第1管体20と第2管体30の間は、シール部材10によって継続して遮断される。このように、コック60は気密性のみならず、第1管体20と第2管体30の間の遮断性にも優れる。したがって、コック60は、高い気密性と高い遮断性が求められる反応装置用の試料供給器として特に有用である。
【0029】
試料は、液状試料であってもよいし、固形試料であってもよい。試料の種類に特に制限はなく、有機物、無機物又はこれらの混合物のいずれであってもよい。例えば、空気及び水分の侵入を十分に抑制する必要がある有機合成反応の原料に用いられる試料であってよい。これによって、例えば、有機材料、医薬、農薬など、種々の有機合成物を効率よく製造することができる。
【0030】
試料は、もし液体であれば、例えばキャニュレーションによって気密性を維持しつつ反応器内に試料を導入することができる。しかしながら、試料が固形である場合、キャニュレーションによって導入することができない。このため、本実施形態のシール部材10及びコック60は、溶媒に溶解しない試料、又は溶解し難い試料を導入することが必要な場合に特に有用である。なお、キャニュレーションの場合、特に反応に不要な溶媒を用いることが必要になる場合があるが、本実施形態のコックは、反応に不要な溶媒を用いずに試料を導入することができる点で優位性がある。
【0031】
図3は、コック60を分解して示す分解図である。シール部材10のハンドル部14と固定部16との間の摺動部18は、ハンドル部14から固定部16に向かって細くなるようにテーパー状に加工されている。シール部材10は、コック本体部40及びパッキン50に挿入され、固定部16と固定部材52とを螺合することによって、コック本体部40に回転可能に取り付けられる。シール部材10のコック本体部40への固定方法は、このような方法に限定されず、回転可能に固定可能な方法を適宜採用することができる。
【0032】
シール部材10は、例えば樹脂製であってもよく、ガラス製又は金属製であってもよい。シール性の向上及び耐腐食性の観点から、樹脂製又はガラス製であってよい。さらに、加工の容易性の観点又は摺動性の観点から、樹脂製であってよい。樹脂は、耐久性向上の観点から、フッ素樹脂であってよい。シール部材10をガラス製とする場合は、気密性及び操作性向上の観点から、少なくとも摺動部18の部分を擦りガラスや樹脂製で構成してもよい。コック本体部40はガラス製であってもよいし、樹脂製又は金属製であってもよい。
【0033】
図4は、第1実施形態に係る反応装置を示す図である。反応装置100は、反応器70と、反応器70に接続されたコック60とを備える。反応器70は、例えば主管71と側管72を備えるガラス製のフラスコであってよい。コック60は、第1管体20がコック本体部40よりも上側に、第2管体30がコック本体部40よりも下側になるように配置され、第2管体30は、反応器70の主管71に挿入されている。第1管体20の開口部には着脱可能な栓体86が取り付けられている。栓体86を取り外し、第1管体20の開口から試料を導入すれば、コック60に備えられるシール部材10の凹部に試料を収容することができる。
【0034】
反応器70の側管72には、バルブ74が連結されている。バルブ74の先端に取り付けられたキャップ76には、マニホールド82と連通するニードル84が貫通して連結されている。バルブ74を操作することによって、マニホールド82から反応器70内にアルゴンガスなどの不活性ガスを供給したり、反応器70内の圧力を減圧状態にしたりすることができる。
【0035】
攪拌機能を備える温度調節槽95には、ドライアイスを含む冷媒90が貯留され、冷媒90内に反応器70の少なくとも一部を浸漬させる。反応器70内に原料液110とともにマグネチックスターラーを入れ、攪拌機能を起動すれば、原料液110が攪拌され、冷媒90との熱交換によって原料液110が所望の温度範囲に冷却される。反応器70の内部を不活性ガスに置換した状態で、コック60のハンドル部14を操作すれば、凹部12に収容されていた試料が、第2管体30を経由して反応器70内に落下し、原料液110に混合される。
【0036】
このように、ハンドル部14を操作するという簡便な作業だけで、試料を反応器70内に導入することができる。また、コック60は、第1管体20と第2管体30と間を遮断しつつ第2管体30への外気の侵入を十分に抑制することができる。このようにシール性にも優れることから反応器70内への外気の侵入を十分に抑制しつつ、簡便な操作で反応器70内に試料を導入することができる。したがって、気密性が求められる反応を行う場合に特に有効である。
【0037】
本開示の反応装置は、上述の実施形態に限定されない。冷媒は氷水でもよいし、液体窒素であってよい。温度調節槽95はオイルバスであってよく、この場合、反応器70は加熱され、加熱環流下で反応を行うものであってもよい。反応器70はフラスコではなく、グラスライニングを有する反応器であってもよい。その場合、反応器をジャケット式として、スチーム等で加熱できるようにしてもよい。
【0038】
図5は、本開示の第2実施形態に係るシール部材を示す図である。
図5のシール部材10Bは、シャッター部12Aを備えており、第1管体20と第2管体30との間に設けられる。シャッター部12Aは、試料の保持部としての機能と、第1管体20と第2管体30との間を遮断する機能とを兼ね備える。シャッター部12Aを閉止した状態で、第1管体20から試料を導入すれば、シャッター部12Aの上に試料が保持される。そして、レバー17を操作してシャッター部12Aを開放すれば、試料は第1管体20側から第2管体30側に移動し、第2管体30の流路に放出される。
【0039】
第2管体30の流路に放出された試料は、例えば第2管体30の下方に接続された反応器に導入される。その後、シャッター部12Aを閉止すれば、シャッター部12Aは試料の保持と放出を繰り返して行うことができる。本実施形態では、シャッター部12Aの開閉操作のみで試料の保持と放出とを行うことができる。このようにシンプルな構成で試料を保持して移動できることから、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。
【0040】
図6~
図8は、本開示の第3実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
図6のコック62は、円柱形状を有するコック本体部40Aと、コック本体部40Aに対してスライド可能且つ回転可能に取り付けられる円柱形状を有するシール部材10Aと、コック本体部40Aの上側に接続される第1管体20と、コック本体部40Aの下側に接続される第2管体30とを備える。シール部材10Aは基端側にハンドル部14Aを有する。シール部材10Aは先端側からコック本体部40Aに挿入される。
【0041】
シール部材10Aには、円周方向に沿って3本のリング状の摺動部18A,18B,18Cが取り付けられている。摺動部18A,18B,18Cは、例えば樹脂製のリングである。コック本体部40Aに対してシール部材10Aを回転又はスライドさせると、摺動部18A,18B,18Cはコック本体部40Aの内壁面42Aに対して摺動しながら回転又はスライドする。摺動部18A,18B,18Cは、シール部材10Aの先端から基端に向かって、この順で所定の間隔で取り付けられている。凹部12は、摺動部18Aと摺動部18Bで区画される領域内に形成されている。シール部材10Aの先端と対向するコック本体部40Aの先端部にはガス孔44が設けられている。ガス孔44を設けることによって、コック本体部40Aの内部と外部との間でガスを流通させることができる。
【0042】
第1管体20はコック本体部40Aの先端部側に接続されるのに対し、第2管体30はコック本体部40Aの中央部に接続されている。すなわち、スライド方向に沿ってみたときに、第1管体20と第2管体30は、互いにずれるように接続されている。このようなコック62を用いた場合、第1管体20側から第2管体30側への試料の移動は、以下の操作で行う。
【0043】
図6に示すように、シール部材10Aがコック本体部40Aの奥まで挿入された状態にする。シール部材10Aを挿入する際に、ガス孔44を開放しておけば、ガス孔44は、コック本体部40A内のガス抜きとして機能し、シール部材10Aの挿入を円滑に行うことができる。そして、ハンドル部14Aを用いてシール部材10Aをコック本体部40に対して回転させ、シール部材10Aに形成された凹部12が第1管体20の流路に露出するように位置合わせを行う。位置合わせ後、第1管体20の流路から試料を導入し、凹部12に収容する。このとき、第2管体30の流路は、摺動部18Bと摺動部18Cの間に位置するため、第2管体30の流路の気密性は良好に維持される。
【0044】
次に、ハンドル部14Aをコック本体部40Aに対してスライドさせる操作を行い、コック本体部40Aと第2管体30との接続部が、摺動部18A,18Bの間になるように位置合わせを行う。これによって、コック62を
図7の状態にする。この操作の際、ガス孔44を開放しておけば、ガス孔44はガス流入口として機能し、シール部材10Aのスライドを円滑に行うことができる。この状態では、試料は凹部12に保持されている。
【0045】
続いて、ハンドル部14Aを操作してシール部材10Aをコック本体部40Aに対して半回転させ、凹部12を旋回して下方に向け、コック62を
図8に示す状態にする。凹部12はシール部材10Aの回転に伴って旋回し、第2管体30の流路に露出する。このときも、凹部12は、摺動部18Aと摺動部18Bに区画される領域内に形成されていることから、第2管体30の流路の気密性が良好に維持される。
図6~
図8に示すように、第1管体20よりも第2管体30の方が下方にある場合、
図8の状態になると、
図6,
図7の状態において凹部12に収容されていた試料は、重力によって第2管体30の流路内を下方に落下する。このように重力を利用して試料を落下できるため、極めて単純な操作で、第2管体30の下方に接続される反応器等に試料を導入することができる。
【0046】
図8の状態で凹部12から試料を落下させた後、コック本体部40Aに対してシール部材10Aをさらに半回転すると、
図7の状態に戻る。そして、コック本体部40Aに対してシール部材10Aをスライドさせて挿入すれば、
図6の状態に戻る。この際、ガス孔44を開放しておけば、シール部材10Aの挿入を円滑に行うことができる。
図6の状態で、第1管体20の流路を経由して再び凹部12に試料を導入してもよい。このように試料の保持部に相当する凹部12は試料の収容(保持)と放出とを繰り返し行うことができる。
【0047】
シール部材10Aは第1管体20と第2管体30とを連通させる貫通孔を有しない。このため、第1管体20と第2管体30との間を、ガス等の媒体が流通することを抑制することができる。また、シール部材10Aは、シール部材10Aのスライド及び回転の際にコック本体部40Aの内壁面42と摺動する摺動部18A,18B,18Cを有し、第2管体30の流路が外部と連通しないようになっている。このため、ハンドル部14を操作している間も、コック本体部40Aの両端部から第2管体30への外気の侵入を十分に抑制することができる。
【0048】
コック62は、
図6に示す状態で凹部12に試料が導入され、
図8に示す状態で凹部12から試料を放出する。また、
図6の状態から
図8の状態に変更するためにハンドル部14Aを操作している間(例えば
図7の状態も含む)も、第1管体20と第2管体30の間は、摺動部18A,18Bによって継続して遮断される。このように、コック62は気密性のみならず、第1管体20と第2管体30の間の遮断性にも優れる。したがって、コック62は、高い気密性と高い遮断性が求められる反応装置用の試料供給器として特に有用である。
【0049】
図9~
図10は、本開示の第4実施形態に係るシール部材及びコックを示す図である。
図9のコック64は、コック本体部40Cと、コック本体部40Cに対してスライド可能に取り付けられるシール部材10Cと、コック本体部40Cの上側に接続される第1管体20と、コック本体部40Cの下側に接続される第2管体30とを備える。シール部材10Cは基端側に取手部14Cを有する。シール部材10Cは先端側からコック本体部40Cに挿入される。コック本体部40C及びシール部材10Cは、円柱形状を有していてもよいし、四角柱等の角柱形状を有していてもよい。
【0050】
シール部材10Cには、その表面に沿って3本のリング状の摺動部18A,18B,18Cが取り付けられている。摺動部18A,18B,18Cは、例えば樹脂製のリングである。コック本体部40Cに対してシール部材10Cをスライドさせると、摺動部18A,18B,18Cはコック本体部40Cの内壁面42Cに対して摺動しながら回転又はスライドする。摺動部18A,18B,18Cは、シール部材10Cの先端から基端に向かって、この順で所定の間隔で取り付けられている。
【0051】
シール部材10Cには、摺動部18Aと摺動部18Bで区画される領域内において、シール部材10Cを貫通する貫通孔12Bが形成されている。貫通孔12Bとコック本体部40Cの内壁面42Cは、第1管体20から供給される試料の保持部を構成する。
【0052】
シール部材10Cの先端と対向するコック本体部40Cの先端部にはガス孔44が設けられている。ガス孔44を設けることによって、コック本体部40Cの内部と外部との間でガスを流通させることができる。
【0053】
第1管体20はコック本体部40Cの先端部側に接続されるのに対し、第2管体30はコック本体部40Cの中央部に接続されている。すなわち、スライド方向に沿ってみたときに、第1管体20と第2管体30は、互いにずれるように接続されている。このようなコック62を用いた場合、第1管体20側から第2管体30側への試料の移動は、以下の操作で行う。
【0054】
図9に示すように、シール部材10Cがコック本体部40Cの奥まで挿入された状態にする。シール部材10Cを挿入する際に、ガス孔44を開放しておけば、ガス孔44は、コック本体部40C内のガス抜きとして機能し、シール部材10Cの挿入を円滑に行うことができる。
図9の状態では、シール部材10Cに形成された貫通孔12Bが第1管体20の流路に連通するように、シール部材10Cとコック本体部40Cとが位置合わせされている。位置合わせは、取手部14Cを用いてシール部材10Cをコック本体部40に対してスライドすることによって行うことができる。
図9に示す状態で、第1管体20の流路から試料を導入し、貫通孔12B内に試料を導入して保持する。このとき、第2管体30の流路は、摺動部18Bと摺動部18Cの間に位置するため、第2管体30の流路の気密性は良好に維持される。
【0055】
次に、取手部14Cを把持してシール部材10Cをコック本体部40Cに対してスライドさせ、
図10に示す状態にする。この操作の際、ガス孔44を開放しておけば、ガス孔44はガス流入口として機能し、シール部材10Cのスライドを円滑に行うことができる。
図10の状態では、貫通孔12Bは、第2管体30の流路に連通する。このときも、貫通孔12Bは、摺動部18Aと摺動部18Bの間に形成されていることから、第2管体30の流路の気密性が良好に維持される。
【0056】
図9,
図10に示すように、第1管体20よりも第2管体30の方が下方にある場合、
図10の状態になると、
図9の状態において貫通孔12B内に保持されていた試料は、重力によって第2管体30の流路内を下方に落下する。このように重力を利用して試料を落下できるため、極めて単純な操作で、第2管体30の下方に接続される反応器等に試料を導入することができる。
【0057】
図10の状態で貫通孔12Bから試料を落下させた後、コック本体部40Cに対してシール部材10Cをスライドさせて挿入すれば、
図9の状態に戻る。この際、ガス孔44を開放しておけば、シール部材10Cの挿入を円滑に行うことができる。
図9の状態で、第1管体20の流路を経由して再び貫通孔12B内に試料を導入してもよい。このように、シール部材10C及びコック64は、試料の保持と放出とを繰り返し行うことができる。
【0058】
シール部材10Cは貫通孔12Bを有するため、コック本体部40Cに対してシール部材10Cをスライドすることによって、試料を第1管体20側から第2管体30側に移動することができる。貫通孔12Bは、第1管体20と第2管体30の両方に同時に連通しないため、第1管体20と第2管体30との間を、ガス等の媒体が流通することを抑制できる。また、シール部材10Cは、シール部材10Cのスライドの際にコック本体部40Cの内壁面42と摺動する摺動部18A,18B,18Cを有し、第2管体30の流路が外部と連通しないようになっている。このため、取手部14Cを操作している間も、コック本体部40Cの両端部から第2管体30への外気の侵入を十分に抑制することができる。
【0059】
コック64は、
図9に示す状態で貫通孔12B内に試料が導入され、
図10に示す状態で貫通孔12Bから試料を放出する。また、
図9の状態から
図10の状態に変更するために取手部14Cを操作している間も、第1管体20と第2管体30の間は、摺動部18A,18Bによって継続して遮断される。このように、コック62は気密性のみならず、第1管体20と第2管体30の間の遮断性にも優れる。したがって、コック64は、高い気密性と高い遮断性が求められる反応装置用の試料供給器として特に有用である。
【0060】
上記各実施形態に係るシール部材10,10A,10B,10C、及びコック60,62,64は、種々の反応器に接続して用いることができる。例えば、不活性ガス雰囲気下で行う必要がある反応に用いられる反応器は、外気(酸素)の流入を防止するため高い気密性を有することが求められる。このような反応器に接続して用いてもよい。
【0061】
本開示のシール部材、コック及び反応装置は、装置構造を複雑化することなく、高いシール性及び気密性を維持しつつも、試料を簡便な操作で反応器内に導入することができる。したがって、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することができる。また、このような反応器を用いて化学製品を製造する工程を行うことによって、効率よく且つ安定的に化学製品を製造することができる。化学製品は、例えば有機化合物又は無機化合物等の化合物であってよい。また、最終製品であってもよいし中間製品であってもよい。
【0062】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述の実施形態のコックは、いずれも2本の管体を有していたが、3本以上の管体を備えていてもよい。例えば3本の管体を備える場合、第1管体から第1の試料を導入して保持部に第1の試料を保持し、第2管体に第1の試料を放出してよい。その後、第1管体から第2の試料を導入して保持部に第2の試料を保持し、第3管体に第2の試料を放出してよい。このように、互いに種類の異なる第1の試料及び第2の試料を別々の管体に放出するように構成されてよい。
【0063】
また、
図4の反応装置は、コック60に代えてコック62又はコック64を有していてもよいし、
図5に示すシール部材10Bを有していてもよい。シール部材10Bのシャッター部12A、シール部材10,10Aのハンドル部14,14A、及びシール部材10Cの取手部14Cは、手動で操作するように構成されていてもよく、図示しない制御装置によって自動で操作されるように構成されていてもよい。また、シール部材10の形状は特に限定されず、例えばボール形状であってよい。
【実施例】
【0064】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1,2に示すコック60を備える
図4のような反応装置100を用いて、以下の反応式(1)で表されるグリコシル化反応を行った。具体的な手順は以下のとおりとした。
【0065】
【0066】
スターラーとモレキュラーシーブ4A(20mg)を入れたフラスコの内部をアルゴンガスで置換した。ジクロロメタン(0.50mL)、N-ヨードスクシンイミド(68.1mg,303μmol)、上記反応式(1)における化合物(I)(50.6mg,84.2μml)及び上記反応式(1)におけるアルコール化合物(II)(48.1mg,84.3μmol)の溶液を、反応器70に相当するフラスコ内に入れた。
【0067】
栓体86を開放し、
図1に示すように凹部12が上方を向くように角度調製されたシール部材10の凹部12に、粉状のインジウムトリフラート(In(OTf)
3,141mg,251μmol)を収容した。その後、栓体86を閉止し、シール部材10を回転させ、第2管体30を経由してフラスコ内にインジウムトリフラートを落下させ、溶液に混合した。温度調節槽95内にドライアイスとエタノールを入れてフラスコ内の混合液を冷却し、スターラーで攪拌しながら-78℃~-40℃で45分間反応させた。その後、-78℃で、ジクロロメタンに溶解した下記式(IV)のアルコール(125μL,125μmol)のジクロロメタン溶液(アルコール濃度:1M)を反応液に加え、攪拌しながら60分間かけて0℃まで昇温し、チオ硫酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液を加えて反応を停止した。
【0068】
【0069】
無水硫酸ナトリウムを用いて有機層を脱水し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/エチルアセテート=10/1~5/1)を用いて濃縮液の精製を行い無色の生成物を得た。生成物の分析の結果、上記反応式(1)で表される反応が進行していることが確認された。式(III)で表されるグルコピラノシド(58.7mg,54.0μmol)の収率は64%であった。
【0070】
グルコピラノシドの分析結果は、以下のとおりであった。
・比施光度:[α]D
21 +11.15 (c 0.90, CHCl3)
・屈折率:Rf = 0.43 (hexane/EtOAc = 2/1)
・IR分析: 2891, 1727, 1271, 1094, 1027, 700 cm-1
【0071】
・1H NMR (400 MHz, C6D6): δ 8.18 (dd, J = 7.6, 1.2 Hz, 2H), 8.09 (dd, J = 7.6, 1.2 Hz, 2H), 7.58 (dd, J = 7.6, 2.0 Hz, 2H), 7.47 (dd, J = 7.6, 2.0 Hz, 2H), 7.30 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.22 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 2H), 7.14-6.88 (m, 21H), 6.07 (dd, J = 10.8, 9.6 Hz, 1H), 5.84 (dd, J = 10.8, 7.8 Hz, 1H), 5.34 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 5.26 (s, 1H), 5.17 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 5.11 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 5.06 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 4.90 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 4.80-4.67 (m, 3H), 4.59 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.51 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.43 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.36 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 10.3, 4.8 Hz, 1H), 4.22-4.10 (m, 2H), 4.04 (dd, J = 9.2, 7.8 Hz, 1H), 3.87 (ddd, J = 9.6, 6.0, 6.0 Hz, 1H), 3.81-3.66 (m, J = 7.1 Hz, 2H), 3.66-3.38 (m, 3H), 3.34-3.17 (m, 2H), 2.48 (dd, J = 8.0, 6.8 Hz, 2H), 1.79-1.55 (m, 2H)
【0072】
・13C NMR (100 MHz, C6D6):δ 166.0, 165.6, 141.9, 138.8, 138.7, 138.2, 138.1, 133.2, 133.1, 130.3, 130.2, 130.1 (2C), 130.0 (2C), 129.1, 128.9 (3C), 128.7 (3C), 128.6 (3C), 128.6 (5C), 128.5 (4C), 127.9 (4C), 127.6, 126.8 (3C), 126.0 (2C), 104.5, 101.8, 101.2, 95.6, 95.4, 81.4, 77.9, 77.4, 76.8, 75.9, 75.4, 74.9, 72.8, 70.3, 70.0, 69.0, 69.0, 68.7, 66.6, 32.1, 32.4
・高分解能質量分析(HRESIMS):m/z 1109.4303 [M + Na]+ (calcd for C65H66NaO15, 1109.4294)
【0073】
(比較例1)
図1,2に示すようなコック部を備えない反応装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、反応式(1)で表されるグリコシル化反応による合成を試みた。比較例1では、フラスコ上部の栓体を開けて、粉状のインジウムトリフラートをフラスコ内に直接導入した。導入後、栓体をすぐに閉止し、実施例1と同じ条件で合成を行った。一連の操作を行って得られた生成物の分析を行ったところ、式(III)で表されるグルコピラノシドの収率は1%以下であった。このように収率が低くなった要因として、インジウムトリフラートを導入する際に、外気が侵入し、外気に含まれる水分が反応を阻害したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示によれば、化学物質を取り扱う際の作業効率を向上することが可能なシール部材、コック、及び反応装置が提供される。また、化学製品を効率よく製造することが可能な化学製品の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0075】
10,10A,10B,10C…シール部材、12…凹部(保持部)、12A…シャッター部(保持部)、14,14A…ハンドル部、14C…取手部、16…固定部、17…レバー、18,18A,18B,18C…摺動部,20,30…管体、40,40A,40C…コック本体部,42,42A,42C…内壁面、44…ガス孔、50…パッキン、52…固定部材、60,62,64…コック、70…反応器、71…主管、72…側管、74…バルブ、76…キャップ、82…マニホールド、84…ニードル、86…栓体、90…冷媒、95…温度調節槽、100…反応装置、110…原料液。