(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】トランクス
(51)【国際特許分類】
A41B 9/02 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
A41B9/02 L
(21)【出願番号】P 2023097438
(22)【出願日】2023-06-14
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592186777
【氏名又は名称】株式会社カイタックホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 国夫
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】実公昭42-009056(JP,Y1)
【文献】特開2000-170005(JP,A)
【文献】特開2008-150732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B9/02-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右側臀部の左部を覆う第1生地と、
左側臀部の右部を覆う第2生地と、
第1生地に縫合され右前と側面と右側臀部の右部を含む右後とを覆う第1身頃生地と、
第2生地に縫合され左前と側面と左側臀部の左部を含む左後と
を覆う第2身頃生地とを有するトランクスであり、
第1生地の一端部と第2生地の一端部とは、臀裂部の部分で身丈方向に沿って縫合されており、
第
1生地は、右側臀裂部に沿って延在する形状であり、右側臀部の左部を覆い、右側臀部の左部から右側股下部を経て右側鼠径部に向かって延在する形状であり、
第2生地は、左側臀裂部に沿って延在する形状であり、左側臀部の右部を覆い、左側臀部の右部から左側股下部を経て左側鼠径部に向かって延在する形状であり、
右側臀部の左部を覆う第1生地と右側臀部の右部を覆う第1身頃生地との縫合部には第1膨出部が設けられ、
左側臀部の右部を覆う第2生地と左側臀部の左部を覆う第2身頃生地との縫合部には第2膨出部が設けられ、
第1生地及び第2生地は、経緯糸からなる織布であり、
第1生地は、第1膨出部の頂点から右側股下部に至る領域おいて、第1膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第1生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されており、
第2生地は、第2膨出部の頂点から左側股下部に至る領域において、第2膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第2生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されたトランクス。
【請求項2】
右側臀裂部に沿って延在する形状であり、右側臀部の左部を覆う第1生地と、
左側臀裂部に沿って延在する形状であり、左側臀部に右部を覆う第2生地と、
第1生地に縫合され右前と側面と右側臀部の右部を含む右後とを覆う第1身頃生地と、
第2生地に縫合され左前と側面と左側臀部の左部を含む左後と
を覆う第2身頃生地とを有するトランクスであり、
第1生地の一端部と第2生地の一端部とは、臀裂部の部分で身丈方向に沿って縫合されており、
第
1身頃生地の股下部は、右前から右側股下部を経て右側臀部の左部に向かって延在する形状であり、
第2身頃生地の股下部は、左前から左側股下部を経て左側臀部の右部に向かって延在する形状であり、
右側臀部に位置する第1生地と第1身頃生地との縫合部には第1膨出部が設けられ、
左側臀部に位置する第2生地と第2身頃生地との縫合部には第2膨出部が設けられ、
第1身頃生地及び第2身頃生地は、経緯糸からなる織布であり、
第1生地は、第1膨出部の頂点から右側股下部に至る領域において、第1膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第1生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されており、
第2生地は、第2膨出部の頂点から左側股下部に至る領域において、第2膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第2生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されたトランクス。
【請求項3】
第1膨出部は、第1生地の縁及び/又は第1身頃生地の縁に設けられた余部により形成され、
第2膨出部は、第2生地の縁及び/又は第2身頃生地の縁に設けられた余部により形成される請求項1に記載のトランクス。
【請求項4】
第1身頃生地、又は第2身頃生地は、着用者の側面において、前身頃と後身頃と連続する
1枚の生地で構成される請求項1又は2に記載のトランクス。
【請求項5】
第1生地の他端部と第1身頃生地の一端部とは、身丈方向に沿って縫合され、
第2生地の他端部と第2身頃生地の一端部とは、身丈方向に沿って縫合されている請求項1又は2に記載のトランクス。
【請求項6】
右側股下部から延びる第1生地の端部は、右前において、第
1身頃生地の端部と縫合されており、
左側股下部から延びる第2生地の端部は、左前において、第2身頃生地の端部と縫合されている請求項1に記載のトランクス。
【請求項7】
右側股下部から延びる第1生地の端部は、右後において、第
1身頃生地の端部と縫合されており、
左側股下部から延びる第2生地の端部は、左後において、第2身頃生地の端部と縫合されている請求項2に記載のトランクス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布で構成されるトランクスに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、右側の後身頃と、左側の後身頃と、マチ布とを、バイアス生地で構成したトランクスが記載されている。具体的には、
図2等に双方向の矢印で記載されているように、経糸又は緯糸の延在方向が斜め方向になるように生地を配置している。右側の後身頃と、左側の後身頃と、マチ布とは、平織生地で構成されるとされている。また、右側の後身頃と、左側の後身頃とは、左右対称となるように、中央線上で縫合されるとされている。マチ布は、身頃との縫い合わせの他には、縫い目が存在しないとされている。
【0003】
以下の特許文献2には、右後身頃と、左後身頃と、中央後身頃と、左前身頃と、右前身頃とを縫合したトランクスが記載されている。着用者の臀部の部分には、生地にゆとりを持たせるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-96303号公報
【文献】特開平8-302501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のトランクスでは、右側の後身頃と、左側の後身頃と、マチ布とが、バイアス生地で構成されるため、着用者が着座したり屈んだりした際に、生地が身幅方向又は身丈方向に伸びやすくなる。しかしながら、特許文献1のトランクスでは、生地に着用者の臀部の突部を収容するゆとりが不十分であり、着用者が着座したり屈んだりした際に、臀部や股下部分の生地が突っ張る感覚が残ることがあった。また、特許文献1のトランクスでは、着用者の臀部における突部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、マチ布の経糸又は緯糸の延在方向とが一致している。着用者の姿勢が変化した際には、着用者の臀部の頂点と股下との間で生地に張力が発生し、着用者に強い不快感を与えることがあった。
【0006】
特許文献2のトランクスでは、着用者の臀裂部の位置に中央後身頃と名付けた1枚の生地が配置される。中央後身頃は、右側臀部の左部と左側臀部の右部と臀裂部とを覆う形状である。特許文献2のトランクスでは、着用者の臀裂部の部分で中央後身頃がダブついて着心地が損なわれることがあった。
【0007】
本発明は、編地に比して伸縮性に劣る織布で構成されるトランクスにおいて、着用者の臀裂部に対して生地がフィットしやすく、しかも臀部の突部周辺においても生地が臀部にフィットしやすく、かつ、着用者の姿勢が変化した際などにおいて、着用者の臀部の突部と股下部との間で生地を伸びやすくして着心地を向上させたトランクスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
右側臀部の左部を覆う第1生地と、左側臀部の右部を覆う第2生地と、第1生地に縫合され右前と側面と右側臀部の右部を含む右後とを覆う第1身頃生地と、第2生地に縫合され左前と側面と左側臀部の左部を含む左後とを覆う第2身頃生地とを有するトランクスであり、第1生地の一端部と第2生地の一端部とは、臀裂部の部分で身丈方向に沿って縫合されており、第1生地は、右側臀裂部に沿って延在する形状であり、右側臀部の左部を覆い、右側臀部の左部から右側股下部を経て右側鼠径部に向かって延在する形状であり、第2生地は、左側臀裂部に沿って延在する形状であり、左側臀部の右部を覆い、左側臀部の右部から左側股下部を経て左側鼠径部に向かって延在する形状であり、右側臀部の左部を覆う第1生地と右側臀部の右部を覆う第1身頃生地との縫合部には第1膨出部が設けられ、左側臀部の右部を覆う第2生地と左側臀部の左部を覆う第2身頃生地との縫合部には第2膨出部が設けられ、第1生地及び第2生地は、経緯糸からなる織布であり、第1生地は、第1膨出部の頂点から右側股下部に至る領域おいて、第1膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第1生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されており、第2生地は、第2膨出部の頂点から左側股下部に至る領域において、第2膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第2生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されたトランクスにより、上記の課題を解決する。
【0009】
右側臀裂部に沿って延在する形状であり、右側臀部の左部を覆う第1生地と、左側臀裂部に沿って延在する形状であり、左側臀部に右部を覆う第2生地と、第1生地に縫合され右前と側面と右側臀部の右部を含む右後とを覆う第1身頃生地と、第2生地に縫合され左前と側面と左側臀部の左部を含む左後とを覆う第2身頃生地とを有するトランクスであり、第1生地の一端部と第2生地の一端部とは、臀裂部の部分で身丈方向に沿って縫合されており、第1身頃生地の股下部は、右前から右側股下部を経て右側臀部の左部に向かって延在する形状であり、第2身頃生地の股下部は、左前から左側股下部を経て左側臀部の右部に向かって延在する形状であり、右側臀部に位置する第1生地と第1身頃生地との縫合部には第1膨出部が設けられ、左側臀部に位置する第2生地と第2身頃生地との縫合部には第2膨出部が設けられ、第1身頃生地及び第2身頃生地は、経緯糸からなる織布であり、第1生地は、第1膨出部の頂点から右側股下部に至る領域において、第1膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第1生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されており、第2生地は、第2膨出部の頂点から左側股下部に至る領域において、第2膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第2生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されたトランクスにより、上記の課題を解決する。
【0010】
前記トランクスにおいて、第1膨出部は、第1生地の縁及び/又は第1身頃生地の縁に設けられた余部により形成され、第2膨出部は、第2生地の縁及び/又は第2身頃生地の縁に設けられた余部により形成される構成とすることができる。
【0011】
前記トランクスにおいて、第1身頃生地、又は第2身頃生地は、着用者の側面において、前身頃と後身頃と連続する1枚の生地で構成することが好ましい。これにより、着用者の側面における縫合線を省略し、着心地を向上させることができる。
【0012】
前記トランクスにおいて、第1生地の他端部と第1身頃生地の一端部とは、身丈方向に沿って縫合され、第2生地の他端部と第2身頃生地の一端部とは、身丈方向に沿って縫合される構成とすることが好ましい。
【0013】
前記トランクスにおいて、右側股下部から延びる第1生地の端部は、右前において、第1身頃生地の端部と縫合されており、左側股下部から延びる第2生地の端部は、左前において、第2身頃生地の端部と縫合された構成とすることが好ましい。
【0014】
前記トランクスにおいて、右側股下部から延びる第1生地の端部は、右後において、第1身頃生地の端部と縫合されており、左側股下部から延びる第2生地の端部は、左後において、第2身頃生地の端部と縫合された構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、編地に比して伸縮性に劣る織布で構成されるトランクスにおいて、着用者の臀裂部に対して生地がフィットしやすく、しかも臀部の突部周辺においても生地が臀部にフィットしやすく、かつ、着用者の姿勢が変化した際などにおいて、着用者の臀部の突部と股下部との間で生地を伸びやすくして着心地を向上させたトランクスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】トランクスの一実施形態を示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は正面図である。
【
図2】
図1のトランクスの経緯糸の方向を示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は正面図である。
【
図3】
図1のトランクスを構成する生地を示す図であり、(a)は第1生地を示す図であり、(b)は第1身頃生地を示す図である。
【
図4】
図3と同様の図であり、経緯糸を示す線を省略した図である。
【
図5】
図1のトランクスを構成する生地を示す図であり、(a)は第2身頃生地を示す図であり、(b)は第2生地を示す図である。
【
図6】
図1のトランクスを底面から示した図であり、(a)は背面を上にした図であり、(b)は正面を上にした図である。
【
図7】織布の伸長率を示す図であり、ZAは経糸の方向であり、ZKは緯糸の方向である。
【
図8】トランクスの他の実施形態を示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は正面図である。
【
図9】
図8のトランクスの経緯糸の方向を示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は正面図である。
【
図10】
図8のトランクスを構成する生地を示す図であり、(a)は第1生地を示す図であり、(b)は第1身頃生地を示す図である。
【
図11】
図8のトランクスを構成する生地を示す図であり、(a)は第2身頃生地を示す図であり、(b)は第2生地を示す図である。
【
図12】トランクスの着用者における身体の部位の名称を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のトランクスの実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、右、又は左は、着用者の身体を基準とする。また、トランクスを形成する各生地の形状は、
図12に示したように、着用者の身体の部位のいずれの部分を覆うかを基準とする。なお、
図12は、トランクスの着用者における身体の部位の名称を示すものである。
【0018】
[第1実施形態]
図1ないし
図6に、トランクスの一実施形態を示す。本実施形態のトランクス1は、右側臀部の左部を覆う第1生地11と、左側臀部の右部を覆う第2生地12と、第1生地11に縫合され右前と側面と右側臀部の右部を含む右後とを覆う第1身頃生地21と、第2生地12に縫合され左前と側面と左側臀部の左部を含む左後と
を覆う第2身頃生地22とを有する。第1生地11、第2生地12、第1身頃生地21、及び第2身頃生地22は、経緯糸からなる織布で構成される。トランクス1の場合、平織組織の織布で構成される。
【0019】
第1生地11は、右側臀裂部に沿って延在する形状であり、右側臀部の左部を覆い、右側臀部の左部から右側股下部を経て右側鼠径部に向かって延在する形状である。第2生地12は、左側臀裂部に沿って延在する形状であり、左側臀部の右部を覆い、左側臀部の右部から左側股下部を経て左側鼠径部に向かって延在する形状である。第1生地11の一端部と第2生地12の一端部とは、臀裂部の部分で身丈方向に沿って縫合される。
【0020】
右側臀部の左部を覆う第1生地11と右側臀部の右部を覆う第1身頃生地21との縫合部には第1膨出部31が設けられる。第1膨出部31は、
図3に示したように、第1生地11の縁及び/又は第1身頃生地21の縁に設けられた余部113、211により形成される。余部は、生地を略円弧状に張り出した形状として形成される。
【0021】
左側臀部の右部を覆う第2生地12と左側臀部の左部を覆う第2身頃生地22との縫合部には第2膨出部32が設けられる。第2膨出部32は、
図5に示したように、第2生地12の縁及び/又は第2身頃生地22の縁に設けられた余部123、221により形成される。余部は、生地を略円弧状に張り出した形状として形成される。
【0022】
図3に示したように、第1生地11は、未縫製の状態で、長さに比して幅が小さい形状である第1部分111と、第1部分111の延在方向に交差し、第1部分111の延在方向を基準として、左斜下方向に伸びる第2部分112とを有する形状である。第1部分111と第2部分112とは連続し、左端部が円弧状部を備える形状であり、右端部に余部113を有する形状である。第2部分112の先端部は、略直線状とされ、第1身頃生地21との縫合部114とされる。
【0023】
図5に示したように、第2生地12は、未縫製の状態で、長さに比して幅が小さい形状である第1部分121と、第1部分121の延在方向に交差し、第1部分121の延在方向を基準として、右斜下方向に伸びる第2部分122とを有する形状である。第1部分121と第2部分122とは連続する形状であり、右端部が円弧状部を備える形状であり、左端部が余部123を有する形状である。第2部分122の先端部は、略直線状とされ、第2身頃生地22との縫合部124とされる。
【0024】
図3に示したように、第1身頃生地21は、略方形状であり、左端部に余部211を有し、右端部の下端部に上述の第1生地11との縫合部212を有する。縫合部212は、略直線状に構成される。
【0025】
図5に示したように、第2身頃生地22は、略方形状であり、右端部に余部221を有し、左端部の下端部に上述の第2生地12との縫合部222を有する。縫合部222は、略直線状に構成される。
【0026】
第1生地11は、
図2に示したように、第1膨出部31の頂点から右側股下部に至る領域おいて、第1膨出部31の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線L1と、第1生地11を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置される。なお、
図2においては、前記頂点は×印で示す。また、前記角度は、
図3において一点鎖線で示す、身幅方向の水平線を基準とする。バイアス方向は、経糸の延在方向と緯糸の延在方向とを交差させて構成される格子を想定した際に、格子の対角を結ぶ線の方向と一致する。L1の角度は、縫製の具合によって、若干変動する。
【0027】
第2生地12は、
図2に示したように、第2膨出部32の頂点から左側股下部に至る領域において、第2膨出部32の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線L1と、第2生地12を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置される。
【0028】
第1身頃生地21、又は第2身頃生地22は、着用者の側面において、前身頃と後身頃と連続する1枚の生地で構成される。第1生地11の他端部と第1身頃生地21の一端部とは、身丈方向に沿って縫合される。第2生地12の他端部と第2身頃生地22の一端部とは、身丈方向に沿って縫合される。第1身頃生地21の他端部と、第2身頃生地22の他端部とは縫合され、筒状に形成される。
【0029】
着用者の背面の右側股下部から延びる第1生地11の端部である第2部分112の縫合部114は、右前において、第1身頃生地21の端部である縫合部212と縫合される。着用者の背面の左側股下部から延びる第2生地12の端部である第2部分122の縫合部124は、左前において、第2身頃生地22の端部である縫合部222と縫合される。
【0030】
第1生地11、第2生地12、第1身頃生地21、及び第2身頃生地22を縫合すると、着用者の下腹部、側面部、及び臀部を覆う筒状体が構成される。筒状体の下端部には、2個の脚ぐりが形成される。筒状体の上端部は、環状のウエスト布41と縫合される。
【0031】
図2に示したように、第1生地11と第1身頃生地21とは、縫合部114、212により、縫合され、トランクスの前側において、身丈方向に伸びる縫合線を形成する。同様に、第2生地12と第2身頃生地22とは、縫合部124、222により、縫合され、トランクスの前側において、身丈方向に伸びる縫合線を形成する。縫合線の上端部は、略円弧状とされる。
【0032】
[第2実施形態]
図8ないし
図10に、トランクスの他の実施形態を示す。本実施形態のトランクス1bは、右側臀裂部に沿って延在する形状であり、右側臀部の左部を覆う第1生地11bと、左側臀裂部に沿って延在する形状であり、左側臀部に右部を覆う第2生地12bと、第1生地11bに縫合され右前と側面と右側臀部の右部を含む右後とを覆う第1身頃生地21bと、第2生地12bに縫合され左前と側面と左側臀部の左部を含む左後と
を覆う第2身頃生地22bとを有する。第1生地11b、第2生地12b、第1身頃生地21b、及び第2身頃生地22bは、経緯糸からなる織布で構成される。トランクス1の場合、平織組織の織布で構成される。第1生地11bの一端部と第2生地12bの一端部とは、臀裂部の部分で身丈方向に沿って縫合される。
【0033】
右側臀部に位置する第1生地11bと第1身頃生地21bとの縫合部には第1膨出部31が設けられる。第1膨出部31は、
図10に示したように、第1生地11の縁及び/又は第1身頃生地21の縁に設けられた余部113、211により形成される。
【0034】
左側臀部に位置する第2生地12bと第2身頃生地22bとの縫合部には第2膨出部32が設けられる。第2膨出部32は、
図11に示したように、第2生地12bの縁及び/又は第2身頃生地22bの縁に設けられた余部123、221により形成される。
【0035】
図10に示したように、第1生地11bは、未縫製の状態で、長さに比して幅が小さい形状である第1部分111bを有する。第1部分111bの右端部には、余部113が配される。第1部分111bの先端部は、略直線状とされ、第1身頃生地21bとの縫合部114bとされる。
【0036】
図11に示したように、第2生地12bは、上記の第1生地11bと左右方向に対称な形状である。すなわち、第2生地12bは、未縫製の状態で、長さに比して幅が小さい形状である第1部分121bを有する。第1部分121bの左端部には、余部123が配される。第1部分121bの先端部は、略直線状とされ、第2身頃生地22bとの縫合部124bとされる。
【0037】
図10に示したように、第1身頃生地21bは、略方形状であり、左端部に余部211と、右端部の下部に設けられる股下布部213とを有する。股下布部213は、未縫製の状態で、斜下方に向かって延在し、幅方向の大きさに比して、長さ方向の大きさが大きい形状である。股下布部213の先端部は、略直線状になっており、上述の第1生地11bとの縫合部212bとされている。
【0038】
図11に示したように、第2身頃生地22bは、上記の第1身頃生地21bと左右方向に対称な形状である。すなわち、第2身頃生地22bは、略方形状であり、右端部に余部221と、左端部の下部に設けられる股下布部223とを有する。股下布部223は、未縫製の状態で、斜下方に向かって延在し、幅方向の大きさに比して、長さ方向の大きさが大きい形状である。股下布部223の先端部は、略直線状になっており、上述の第2生地12bとの縫合部222bとされている。
【0039】
第1生地11b、及び第1身頃生地21bは、
図10において破線で示したように、第1生地11bの第2部分を、第1身頃生地21bの股下布部213に移動させた形状である。第2生地12b、及び第2身頃生地22bについても同様である。
【0040】
第1身頃生地21bの股下部は、
図8に示したように、右前から右側股下部を経て右側臀部の左部に向かって延在する形状である。右側股下部から延びる第1身頃生地21bの股下布部213の端部である縫合部212bは、右後において、第1生地11bの端部である縫合部114bと縫合される。
【0041】
第2身頃生地22bの股下部は、
図8に示したように、左前から左側股下部を経て左側臀部の右部に向かって延在する形状である。左側股下部から延びる第2身頃生地22bの股下布部223の端部である縫合部222bは、左後において、第2生地12の端部である縫合部124bと縫合される。
【0042】
第1生地11bは、
図9に示したように、第1膨出部31の頂点から右側股下部に至る領域において、第1膨出部31の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線L1と、第1生地11bを構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置される。
【0043】
第2生地12bは、
図9に示したように、第2膨出部32の頂点から左側股下部に至る領域において、第2膨出部32の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線L1と、第2生地12bを構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置される。
【0044】
図9に示したように、第1生地11bと第1身頃生地21bとは、縫合部114b、212bにより、縫合され、トランクスの後側において、身丈方向に伸びる縫合線を形成する。縫合線の上端部は、略円弧状とされる。同様に、第2生地12bと第2身頃生地22bとは、縫合部124b、222bにより、縫合され、トランクスの後側において、身丈方向に伸びる縫合線を形成する。縫合線の上端部は、略円弧状とされる。
【0045】
[作用]
上記第1実施形態及び第2実施形態に係るトランクス1、1bは、共に、織布で構成される。そのため、トランクス1、1bの生地は、本来、伸縮性に乏しい。トランクス1、1bは、第1生地11、11b、及び第2生地12、12bを、臀裂部に沿って身丈方向に縫合する構成としている。このため、トランクス1、1bは、織布で構成されるにもかかわらず、臀裂部に生地が沿いやすい。臀裂部の周辺において生地が余ることがないので、歩行時や着席時などにおいて、臀裂部において余った生地が身体に接触することにより生じる違和感を少なくすることができる。
【0046】
トランクス1、1bは、上述のように、織布で構成され、臀裂部の周辺が比較的にタイトに構成されている。本来であれば、着席時など臀部が突出する姿勢をとった際に、臀部の突部において生地が引っ張られて強い不快感が生じる。トランクス1、1bでは、臀部の突部が位置する部分に第1膨出部31と第2膨出部32を設けて、生地に張力が掛かりにくく構成されている。また、第1膨出部31の頂点から右側股下部に至る領域において、第1膨出部31の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線L1と、第1生地11、11bを構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置される。第2生地12、12bは、第2膨出部32の頂点から左側股下部に至る領域において、第2膨出部32の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線L1と、第2生地12、12bを構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致する。
図6において双方向の矢印で示したように、第1膨出部31、及び第2膨出部32を中心として、股下部分の第1生地、及び第2生地、並びに第1身頃生地及び第2身頃生地が、バイアス方向に伸縮する。これによって、織布でありながらも、生地の張りが緩和され、着用者の不快感も緩和することができる。第1生地、及び第2生地は、トランクスの正面側から臀部に設けられた膨出部に向かって生地が連続し、又はトランクスの背面側から鼠径部に向かって生地が連続する。このため、生地が一方向に連続して伸びて着用者に生地が突っ張る感覚を感じさせにくい。
【0047】
図7に示したように、トランクスを構成する織布において、経糸が原点ZからA点に延在し、緯糸が原点ZからK点に延在する場合、生地の伸長率が最も大きくなるのは45°の角度である。本明細書では経緯糸の延在方向を基準とする前記45°の角度をバイアス方向と呼ぶ。上記の仮想線L1は、バイアス方向と一致させる。上記仮想線L1は、身幅方向の水平線を基準として、第1膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下るようにする。トランクスは、織布で構成され、定型性が小さく、縫製の具合によって仮想線L1の角度が変動する。上記仮想線L1の角度を上記範囲とすることにより、縫製の具合が変動しても、股下部における生地の伸びを得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 トランクス
11 第1生地
111 第1部分
112 第2部分
113 余部
114 縫合部
12 第2生地
121 第1部分
122 第2部分
123 余部
124 縫合部
21 第1身頃生地
211 余部
212 縫合部
22 第2身頃生地
221 余部
222 縫合部
31 第1膨出部
32 第2膨出部
113 余部
211 余部
123 余部
221 余部
41 ウエスト布
L1 仮想線
1b トランクス
11b 第1生地
111b 第1部分
114b 縫合部
12b 第2生地
121b 第1部分
124b 縫合部
21b 第1身頃生地
212b 縫合部
213 股下布部
22b 第2身頃生地
222b 縫合部
223 股下布部
【要約】 (修正有)
【課題】織布で構成されるトランクスにおいて、臀裂部に対して生地がフィットしやすく、臀部の突部周辺においても生地が臀部にフィットしやすく、かつ、着用者の姿勢が変化した際、着用者の臀部の突部と股下部との間で生地を伸びやすくして着心地を向上させる。
【解決手段】右側臀部の左部を覆う第1生地と右側臀部の右部を覆う第1身頃生地との縫合部には第1膨出部が設けられ、左側臀部の右部を覆う第2生地と左側臀部の左部を覆う第2身頃生地との縫合部には第2膨出部が設けられ、第1生地及び第2生地は、経緯糸からなる織布であり、第1生地は、第1膨出部の頂点から右側股下部に至る領域において、第1膨出部の頂点から斜め40~80°の角度で股下部に向かって下る仮想線と、第1生地を構成する経糸又は緯糸のバイアス方向とが一致するように配置されており、第2生地も同様に配置されたトランクスである。
【選択図】
図2