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  • 特許-ケイ酸質肥料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】ケイ酸質肥料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05D 3/04 20060101AFI20231117BHJP
   C05D 5/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C05D3/04
C05D5/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018195887
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020063173
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏夫
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/037825(WO,A1)
【文献】特開2018-043888(JP,A)
【文献】特開2018-043896(JP,A)
【文献】特開2014-198643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ブレディジャイト(Ca1.7Mg0.3SiO)とゲーレナイト(CaAlSiO)を含むケイ酸質肥料であって、CuKαの特性X線での粉末X線回折において、ブレディジャイトの(222)面のX線回折強度/ゲーレナイトの(211)面のX線回折強度の比が0.20以上であり、Ca/Siモル比が1.80以上である、ケイ酸質肥料の製造方法であって、
高炉水砕スラグおよびカルシウム源の原料の混合工程、混合原料の焼成工程、並びに、焼成物の冷却工程を含む、ケイ酸質肥料の製造方法
【請求項2】
前記ケイ酸質肥料の、水‐弱酸性陽イオン交換樹脂法により測定した水溶性ケイ酸が10%以上、およびケイ酸の水溶率が35%以上である、請求項1に記載のケイ酸質肥料の製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程で用いる焼成炉がロータリーキルンである、請求項1または2に記載のケイ酸質肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸の水溶性および苦土のく溶性が高い、特にケイ酸の水溶性が高い、ケイ酸質肥料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸質肥料には、ケイカル(ケイ酸カルシウム)とケイ酸カリ(ケイ酸カリウム)肥料があり、従来、稲作等に用いられてきた。これらの肥料のうち、ケイカルは製鋼過程で副生する鉄鋼スラグで、主にSiO、CaO、およびAlを含み、土壌へのケイ酸の補給やアルカリ性化合物による酸性土壌の矯正等の効果がある。
しかし、ケイカルからのケイ酸の溶出量(可溶性ケイ酸)は、0.5Mの塩酸水溶液中では30質量%を越えるものの、土壌のpHである5~7程度では5質量%程度と少ない。そのため、ケイカルは水田1000m当たり約200kgもの量を施肥することもあり、手間やコストの点から農家にとってその分負担が大きい。また、ケイカルは肥料の三要素である窒素、燐、および加里のいずれも含まないため、通常、ケイカルと肥料の三要素を含む他の肥料を混合する必要がある。しかし、中性域でも、比較的、ケイ酸の溶出量が多い熔成りん肥と混合する場合、ケイカルの混合量は、熔成りん肥40kgに対し200kgと多量になる。
【0003】
そこで、ケイカルの欠点である低いケイ酸の水溶性を改善したケイ酸質肥料やその製造方法が、いくつか提案されている。
例えば、特許文献1に記載のケイ酸質肥料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程でスラグを回収した後、少なくとも1300~1000℃の温度領域を10℃/分未満の冷却速度で冷却して得られる、塩基度(CaO/SiO)が0.52~2.0で可溶性珪酸を10mass%以上含有するスラグからなる肥料である。この肥料は、高炉スラグの排出工程において、塩基度および冷却速度を特定することにより、スラグの可溶性珪酸が向上したものである。従来、ケイ酸質肥料のケイ酸溶出特性は、0.5Mの塩酸溶解法で評価するとされている。しかし、実際は、この0.5Mの塩酸溶解法よりも、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法で測定した水溶性ケイ酸の方が、作物のケイ酸の吸収量をより正しく評価できるという研究報告もあるが、特許文献1では、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法によるケイ酸の溶出についての記載はない。
【0004】
また、特許文献2に記載のケイ酸質肥料は、主成分がCaO、SiO、MgO、およびAlからなり、CaOを40~60mass%、SiOを25~40mass%、MgOを5~15mass%、およびAlを0~5mass%含み、かつCaO/SiO質量比が1.4~2.0の結晶質のスラグである。特許文献2には、このスラグを構成する鉱物の中でも、特にダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO)が、pH=5以上で高いケイ酸溶出特性を示すことを見出したとある。
【0005】
さらに、特許文献3に記載の肥料用原料は、高炉溶銑の溶銑予備処理工程で回収されるスラグであって、SiO、CaO、およびMgOの合計の含有量が75mass%以上であり、かつCaO、MgO及びSiOの割合が、点a(CaO:39.5mass%,MgO:4.0mass%,SiO:56.5mass%)、点b(CaO:35.8mass%,MgO:13.0mass%,SiO:51.2mass%)、点c(CaO:42.6mass%,MgO:13.0mass%,SiO:44.4mass%)、点d(CaO:46.0mass%,MgO:15.5mass%,SiO:38.5mass%)、点e(CaO:48.7mass%,MgO:14.4mass%,SiO:36.9mass%)、および点f(CaO:60.6mass%,MgO:4.0mass%,SiO:35.4mass%)で囲まれる範囲内にあるスラグである。前記の組成範囲のスラグは、0.5Mの塩酸溶解法による可溶性ケイ酸、および中性リン酸緩衝液による可溶性ケイ酸が多いとあるが、スラグの鉱物組成、および水-弱酸性陽イオン交換樹脂法による水溶性ケイ酸については、記載がない。
【0006】
さらに、特許文献4に記載のケイ酸質肥料は、式:0.5≦CaO/(SiO-Al)≦2.5、を満足する組成を有し、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法による水溶性ケイ酸の含有率は15%以上であるが、リン酸原料を用いて焼成法で作製され、最低でも3.8mass%のPを含むから、実際にはケイ酸リン肥である。
【0007】
ところで、前記ケイカルの原料である鉄鋼スラグは、製鋼スラグと高炉スラグに分類され、さらに製鋼スラグは電気炉スラグと転炉系スラグに分類され、他方、高炉スラグは高炉徐冷スラグと高炉水砕スラグに分類される。こられのスラグのうち、高炉水砕スラグの発生量が最も多く年間2000万トンにのぼり、製鋼スラグの全発生量の約半分を占める。そして、現在、その9割以上がセメント原料として有効利用されているが、将来、セメント需要の低下により、高炉水砕スラグは有効利用されないで余ることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2003/037825号公報
【文献】特開2004-218065号公報
【文献】特開2006-306696号公報
【文献】特開2018-43896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、高炉水砕スラグを原料の一部に用いて製造したケイ酸質肥料であって、特にケイ酸の水溶性が高いケイ酸質肥料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記予想を見据えて、前記目的を達成できるケイ酸質肥料を検討したとこ
ろ、スラグ中に含まれるMg成分をブレディジャイト中に固定したケイ酸質肥料は、ケイ
酸の水溶性が向上することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記の
構成を有するケイ酸質肥料の製造方法である。
[1]少なくとも、ブレディジャイト(Ca1.7Mg0.3SiO)とゲーレナイト(CaAlSiO)を含むケイ酸質肥料であって、CuKαの特性X線での粉末X線回折において、ブレディジャイトの(222)面のX線回折強度/ゲーレナイトの(211)面のX線回折強度の比が0.20以上であり、Ca/Siモル比が1.80以上である、ケイ酸質肥料の製造方法であって、
高炉水砕スラグおよびカルシウム源の原料の混合工程、混合原料の焼成工程、並びに、焼成物の冷却工程を含む、ケイ酸質肥料の製造方法
[2]前記ケイ酸質肥料の、水‐弱酸性陽イオン交換樹脂法により測定した水溶性ケイ酸が10%以上、およびケイ酸の水溶率が35%以上である、前記[1]に記載のケイ酸質肥料の製造方法。
[3]前記焼成工程で用いる焼成炉がロータリーキルンである、前記[1]または[2]に記載のケイ酸質肥料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のケイ酸質肥料およびその製造方法は、以下の効果を奏する。
(i) 本発明のケイ酸質肥料は、ケイ酸の水溶性および苦土のく溶性が高く、特にケイ酸の水溶性が高い。
(ii) 本発明のケイ酸質肥料は、将来、多量に余ると予想される高炉水砕スラグを、原料として有効利用できる。
(iii) 本発明のケイ酸質肥料は焼成して製造するため、溶融して製造する溶融肥料に比べ、製造に要するエネルギーの消費が少なく、省エネルギーである。
(vi) 本発明のケイ酸質肥料の製造方法おいて、焼成炉としてロータリーキルンを用いれば、連続生産が可能で生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1および2、並びに、比較例1~3の焼成物のX線回折線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、ケイ酸質肥料とその製造方法に分けて詳細に説明する。
1.ケイ酸質肥料
本発明のケイ酸質肥料は、少なくとも、ブレディジャイト(Ca1.7Mg0.32SiO)とゲーレナイト(CaAlSiO)を含むケイ酸質肥料であって、ブレディジャイトの(222)面のX線回折強度/ゲーレナイトの(211)面のX線回折強度の比が0.1以上である。該強度の比が、0.1以上であれば、後掲の表4に示すように、ケイ酸の水溶性および苦土のく溶性が高く、特にケイ酸の水溶性が高い。なお、該強度比は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上である。
本発明のケイ酸質肥料特有の技術的特徴は、Si成分とMg成分をブレディジャイトの鉱物中に固定することにより、ケイ酸の水溶率と苦土のく溶率が向上する点にある。
【0014】
また、本発明のケイ酸質肥料のCa/Siのモル比は、好ましくは1.7以上である。該モル比が、1.7以上であれば、後掲の表4に示すように、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法により測定したケイ酸の水溶率は37%以上になる。なお、該モル比は、、より好ましくは1.75以上、さらに好ましくは1.8以上、特に好ましくは1.9以上である。
【0015】
ここで、ケイ酸の水溶率とは、ケイ酸質肥料中の全ケイ酸に対する、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法により測定した水溶性ケイ酸の質量比の百分率(%)である。また、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法により測定した水溶性ケイ酸は、中性(pH=7)付近でのケイ酸分の溶解性を表す値であり、以下の文献Aおよび文献Bに記載されている方法に準拠して測定する。
文献A:加藤直人著「農林水産省・農業環境技術研究所報告」16巻,9-75頁(1998)
文献B:加藤、尾和共著 Soil Sci.Plant Nutr.,43巻,2号,351-359頁(1997)
また、水溶性ケイ酸の測定においてイオン交換樹脂を用いるのは、ケイ酸質肥料から溶出するアルカリ土類金属等のアルカリ性物質が溶液中に溶けて生ずるpHの上昇を、イオン交換樹脂のイオン交換能を利用して防止するためである。水田の土壌はほぼ中性でありpH緩衝能が高いため、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法を用いると、実際の水田に、より近い環境下でケイ酸の水溶性を評価できる。
なお、原料およびケイ酸質肥料中の酸化物の定量は、蛍光エックス線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法により行うことができる。
【0016】
2.ケイ酸質肥料の製造方法
次に、本発明のケイ酸質肥料の製造方法について説明する。
本発明のケイ酸質肥料の製造方法は、高炉水砕スラグとカルシウム源だけを混合して得られた混合原料を、焼成炉を用いて焼成して、ブレディジャイトの(222)面のX線回折強度/ゲーレナイトの(211)面のX線回折強度の比が0.1以上であるケイ酸質肥料を製造する方法である。ケイ酸質肥料中にブレディジャイトが生成すると、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法により測定した水溶性ケイ酸の溶出が顕著に向上する。
本発明のケイ酸質肥料の製造方法は、好ましくは、ケイ酸質肥料のCa/Siモル比を調整するため、非晶質の高炉水砕スラグとカルシウム源を、CaOの含有率が50質量%以上、およびCa/Siのモル比が1.7以上になるように混合して、1300℃で焼成した後、毎分30℃以下の速度で冷却して、ケイ酸質肥料を製造する方法である。
以下、本発明のケイ酸質肥料の製造方法について、必須の工程である、高炉水砕スラグおよびカルシウム源の原料の混合工程、混合原料の焼成工程、および、焼成物の冷却工程等に分けて詳細に説明する。
【0017】
(1)原料の混合工程
該工程は、ケイ酸質肥料(焼成物)中にブレディジャイトが生成し、ケイ酸質肥料中のCaOの含有率が50質量%以上、およびCa/Siのモル比が1.7以上となるように、少なくとも、高炉水砕スラグおよびカルシウム源を混合して混合原料(焼成用原料)を得る工程である。混合し易い粒度にするために、前記原料は、必要に応じてボールミル、ローラーミル、またはロッドミル等で粉砕する。
前記原料のうち、高炉水砕スラグは、表1にその化学組成の1例を示すように、Alを十数パーセント、MgOを数パーセント含有する、非晶質のケイ酸カルシウムの1種である。
高炉水砕スラグ中には、もともと酸化アルミニウムが含まれるため、焼成して冷却するだけでもゲーレナイトまたはメリライトは生成するが、ケイ酸質肥料中にブレディジャイトが生成するためには、好ましくは、Ca/Siのモル比が1.7以上となるように、高炉水砕スラグと石灰石(炭酸カルシウム)を混合する。Ca/Siのモル比が1.7以上と、ケイ酸質肥料のCa/Siのモル比が高いほど、ケイ酸質肥料中のケイ酸の水溶性は高くなる。
【0018】
また、原料の混合方法は、例えば、各原料の一部を電気炉等で焼成した後、該焼成灰中の酸化物を定量し、該定量値と所定の配合に基づき、各原料を混合する方法が挙げられる。該酸化物の定量は、蛍光エックス線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法を用いて行うことができる。焼成前の原料の化学組成は、焼成物の化学組成と、焼成による揮発成分を除きほぼ同一であるから、例えば、CaOの含有率が50~52質量%の焼成物を得るためには、通常、CaOの含有率が該範囲を満たす焼成用原料を用いれば十分である。ただし、正確を期すためには、該原料の一部を電気炉等で焼成して、該原料中のCaOの含有率と、該焼成物中のCaOの含有率との相関を事前に把握しておき、該相関に基づき、原料の混合割合を、目的とする焼成物中のCaOの含有率になるように修正することが好ましい。
【0019】
前記混合工程において混合する原料のうち、前記高炉水砕スラグは、製鐵所の製鋼過程において副生する高炉スラグを水中で急冷して得られる水砕スラグである。
また、前記カルシウム源は、ケイ酸質肥料中のCaOの含有率が50~52質量%の範囲内になるように調製するために用いる原料である。該カルシウム源は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、および石灰石等から選ばれる1種以上が挙げられる。
さらに、Ca/Siのモル比を調整するための原料として、ケイ酸源を用いることができる。ケイ酸源は、石炭灰、珪石、珪砂、鋳物砂、白土、ゼオライト、珪藻土、火山灰、廃コンクリート、および生コンスラッジ等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、ケイ酸源は、化学組成比の調整が容易なため、SiOの含有率が50質量%以上のケイ酸源が好ましい。なお、前記ケイ酸源の内、廃コンクリート、および生コンスラッジ等は、カルシウム源としても機能する。
【0020】
(2)混合原料の焼成工程
該工程は、前記混合原料を、焼成炉を用いて焼成する工程である。前記混合原料は、粉末のままで、該粉末に水を添加してスラリーにした状態で、または脱水ケーキの状態で焼成するか、若しくは、より焼成効率を上げるために、該粉末を、パンペレタイザー等の造粒機や、ブリケットマシン、ロールプレス等の成形機で、それぞれ造粒や成形してから焼成する。
前記焼成工程において、焼成温度は好ましくは1250~1350℃である。該温度が1250℃未満では焼成が不十分でケイ酸の水溶性が低くなるおそれがあり、1350℃を超えると焼成物が溶融して溶融物になるおそれがある。また、前記焼成炉は、連続生産が可能であるためロータリーキルンが好ましい。また、焼成時間は、好ましくは10~60分、より好ましくは20~40分である。該時間が10分未満では焼成が不十分であり、60分を超えると生産効率が低下する。
【0021】
(3)焼成物の冷却工程
該工程は、焼成物中にブレディジャイトが生成するための必須の工程であり、冷却速度は毎分30℃以下である。冷却速度が毎分30℃を超えると、ブレディジャイトの生成量が減少する傾向にある。
【0022】
(4)粉砕および造粒工程
該工程は、前記焼成物の粒度を調整するための工程であり、粉塵の発生を抑制して、肥料の取り扱いを容易にするためや、肥料効果を十分に発揮させるために、肥料の粒度を調整する必要がある場合に選択される任意の工程である。該粒度は0.1~10mmが好ましく、0.5~5mmがより好ましい。
粉砕手段として、例えば、ジョークラッシャー、ローラーミル、ボールミル、またはロッドミル等を用いることができ、また、造粒手段として、例えば、パン型ミキサ、パンペレタイザー、ブリケットマシン、ロールプレス、または押出成型機等を用いることができる。
また、該工程では、肥料の用途に応じて、適宜、りん酸、窒素、または加里等のその他の肥料成分を、新たに添加することができる。
【実施例
【0023】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
表1に示す化学組成を有する高炉水砕スラグ(新日鐵住金社製)、酸化カルシウム(試薬2級)を用い、表2に示す実施例1、2、および比較例2、3の配合に従い混合して混合原料を調製した。次に、該混合原料を用いて、一軸加圧成形機により、直径40mm、高さ10mmの円柱状のペレットを成形した。さらに、該円柱状のペレットを電気炉内に載置して、昇温速度20℃/分で、1300℃まで昇温し、該温度の下で10分間焼成して焼成物を得た。さらに、該焼成物を、鉄製乳鉢を用いて目開き600μmのふるいを全通するまで粉砕して、粉末状のケイ酸質肥料(実施例1、2、比較例2、3)を製造した。ケイ酸質肥料の化学組成を表3に示す。なお、比較例1は、成分調整および加熱処理のいずれも行わない、入手したそのままの高炉水砕スラグである。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
3.ケイ酸の水溶率と苦土のく溶率の算出
(1)全ケイ酸と全苦土の測定
ケイ酸質肥料中の全ケイ酸と全苦土は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に従い分析した。
(2)水溶性ケイ酸の測定とケイ酸の水溶率の算出
水溶性ケイ酸の測定とケイ酸の水溶率の算出は、水-弱酸性陽イオン交換樹脂法を用いて以下の手順で行った。すなわち、
あらかじめ水酸化ナトリウム水溶液と希塩酸を用いて逆再生処理したイオン交換樹脂(アンバーライトIRC-50、オルガノ社製)2gと純水1リットルを入れた樹脂製のビーカー内に、前記実施例および比較例で得たケイ酸質肥料0.2gをそれぞれ加え、マグネチックスターラーで静かに10分間撹拌した後、10日間静置した。この10日間が経過した後、再度、マグネチックスターラーで静かに10分間撹拌して30分間静置し、上澄み液2mlをメスフラスコに分取し、塩酸(1+1)1mlを添加した後、20mlに希釈した。次に、ICP発光分析法により該希釈液中のSiの濃度を定量し、SiOの濃度に換算して水溶性ケイ酸を測定し、全ケイ酸に対する水溶性ケイ酸の質量比率であるケイ酸の水溶率を算出した。
(3)く溶性苦土の測定と苦土のく溶率の算出
く溶性苦土の測定および苦土のく溶率の算出は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に規定されている、2質量%のクエン酸水溶液を用いた方法に従い、く溶性苦土を測定して、全苦土に対するく溶性苦土の比率である苦土のく溶率を算出した。
以上の結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】
表4に示すように、本発明のケイ酸質肥料(実施例1、2)の水溶性ケイ酸は、それぞれ13.2%および17.8%、ケイ酸の水溶率は、それぞれ37%および51%と、いずれも高かった。これに対し、比較例1の高炉水砕スラグ、比較例2、3のケイ酸質肥料の水溶性ケイ酸は、それぞれ3.6、9.9および10.5%、またケイ酸の水溶率はそれぞれ9、26および28%と、実施例1、2を下回った。
以上の結果から、本発明のケイ酸質肥料は、ケイ酸の水溶性および苦土のく溶率が高く、高炉水砕スラグの新たな用途を提供できる。また、本発明のケイ酸質肥料の製造方法は、溶融による溶融肥料の製造に比べ、焼成によるエネルギー消費が少ないため、省エネルギーに寄与できるとともに、ロータリーキルンを用いた場合、連続生産が可能で生産効率は高くなる。
図1