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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20231117BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20231117BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20231117BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231117BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231117BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/02
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018243908
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105308
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 理仁
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西脇 匡崇
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 一樹
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0009628(US,A1)
【文献】特表2014-531501(JP,A)
【文献】特開平01-261479(JP,A)
【文献】特表2012-514083(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244595(WO,A1)
【文献】特表平07-502558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/06
C09J 133/02
C09J 133/14
C09J 11/06
C09J 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤を含む粘着剤組成物であって、
前記粘着剤は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤であり、
前記アクリル系重合物は、アクリル系モノマーを50重量%より多く含むモノマー成分の重合物であり、
前記粘着剤に含まれる全炭素の50%以上はバイオマス由来の炭素であり、
前記モノマー成分は、炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含み、
前記モノマー成分は、炭素原子数16以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを30重量%以上含み、
前記炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一部は、炭素原子数12以上のバイオマス由来の分岐アルキル基をエステル末端に有する分岐アルキル(メタ)アクリレートであり、
前記モノマー成分は、前記炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基が相違する二種類以上の前記アルキル(メタ)アクリレートを含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記モノマー成分は、前記炭素原子数16以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを70重量%より多く含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートのうち前記分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合が20重量%以上である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを1重量%より多く含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーを含み、
前記カルボキシ基含有モノマーの含有量は、重量基準で、前記水酸基含有モノマーの含有量の0.5倍以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記粘着剤は、さらに粘着付与剤を含み、
前記粘着付与剤に含まれる全炭素の50%以上はバイオマス由来の炭素である、請求項1から5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記粘着剤に含まれる全炭素の60%以上はバイオマス由来の炭素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、家電製品から自動車、各種機械、電気機器、電子機器等の様々な産業分野において、典型的には該粘着剤の層を含む粘着シートの形態で、作業性がよく接着の信頼性の高い接合手段として広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-196471号公報
【文献】特許第5975979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球温暖化等の環境問題が重視されるようになり、石油等の化石資源系材料の使用量を低減することが望まれている。このような状況下、粘着剤の分野においても化石資源系材料の使用量を低減することが求められている。
【0005】
この点に関し、特許文献1には、バイオマス度が50重量%以上である粘着剤層を有する電子機器部材固定用両面粘着テープが記載されている(請求項1等)。ここでバイオマス度とは、粘着剤組成物を構成する使用原料全体の重量に対する植物由来の原料の重量割合をいう(段落0017)。特許文献1には、バイオマス度の高いポリエステル系粘着剤およびゴム系粘着剤の具体的実施例が記載されているが、バイオマス度の高いアクリル系粘着剤の実施例は記載されていない。
【0006】
また、特許文献2は、モル平均炭素原子数12~32の2-アルキルアルカノールの(メタ)アクリレートエステルを必須成分とする(コ)ポリマーを含む感圧接着剤組成物に関する(請求項1等)。特許文献2には、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーとして、再生可能な資源から誘導されたアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられているが(段落0030)、具体的な実施例において再生可能な資源から誘導されたアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである(メタ)アクリレートエステルモノマーを用いたことの記載はない。しかも、特許文献2に記載された実施例では、いずれも、水素添加C9石油樹脂(すなわち、石油由来の材料)であるRegalrez(商標)1094または炭化水素粘着付与樹脂であるArkon(商標)P90を、樹脂100重量部に対して50~100重量部も用いている(引用文献2の段落0058、0094、0109、表6、表9~11)。このことからもわかるように、特許文献2に記載された粘着剤は、化石資源系材料への依存の抑制に十分配慮したものとはいえない。
【0007】
そこで本発明は、化石資源系材料への依存が高度に抑制されたアクリル系粘着剤を含む粘着剤組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、かかる粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この明細書によると、粘着剤を含む粘着剤組成物が提供される。上記粘着剤は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤である。上記アクリル系重合物は、アクリル系モノマーを50重量%より多く含むモノマー成分の重合物である。上記粘着剤に含まれる全炭素の50%以上はバイオマス由来の炭素である。すなわち、粘着剤のバイオマス炭素比が50%以上である。このようにバイオマス炭素比の高いアクリル系粘着剤を含む粘着剤組成物によると、化石資源への依存を高度に抑制することができる。上記粘着剤に含まれる全炭素の60%以上がバイオマス由来の炭素であることがより好ましい。
【0009】
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを70重量%より多く含む。このような組成のモノマー成分によると、バイオマス炭素比の高い粘着剤が得られやすい。
【0010】
いくつかの態様において、上記アルキル(メタ)アクリレートは、炭素原子数12以上のバイオマス由来の分岐アルキル基をエステル末端に有する分岐アルキル(メタ)アクリレートを含み得る。上記分岐アルキル(メタ)アクリレートの使用により、アルキル基の結晶化を抑制しつつ、バイオマス炭素比を効果的に向上させることができる。結晶化抑制の効果を好適に発揮しやすくする観点から、上記アルキル(メタ)アクリレートのうち上記分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、20重量%以上(例えば、20重量%以上100重量%以下)であることが好ましい。
【0011】
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、上記炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基が異なる二種類以上の上記アルキル(メタ)アクリレートを含み得る。炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートとして、上記アルキル基が相違する二種類以上のアルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いることにより、良好な粘着性能と高いバイオマス炭素比とが好適に両立する傾向にある。
【0012】
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを1重量%より多く含む。カルボキシ基含有モノマーの含有量を1重量%超とすることにより、バイオマス炭素比の高いアクリル系粘着剤において、該粘着剤の凝集性を効果的に高め、粘着性能を向上させることができる。これにより、良好な粘着性能と高いバイオマス炭素比とを好適に両立する粘着剤が実現され得る。
【0013】
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーを含み得る。かかる態様において、上記カルボキシ基含有モノマーの含有量WCOOHは、重量基準で、上記水酸基含有モノマーの含有量WOHの0.5倍以上であることが好ましい。すなわち、WCOOH/WOH≧0.5を満たすことが好ましい。このような組成のモノマー成分によると、バイオマス炭素比の高いアクリル系粘着剤において、該粘着剤の凝集性を効果的に高め、粘着性能を向上させることができる。これにより、良好な粘着性能と高いバイオマス炭素比とを好適に両立する粘着剤が実現され得る。
【0014】
いくつかの態様において、上記粘着剤は、さらに粘着付与剤を含み得る。粘着付与剤の使用により、粘着性能を高めることができる。上記粘着付与剤としては、該粘着付与剤に含まれる全炭素の50%以上がバイオマス由来の炭素であるものを好ましく採用し得る。このような粘着付与剤は、その使用量にかかわらず、粘着剤のバイオマス炭素比を50%未満に低下させることがないので好ましい。
【0015】
この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える粘着シートが提供される。このような粘着シートは、バイオマス炭素比が50%以上のアクリル系粘着剤から構成された粘着剤層を備えることにより、化石資源系材料への依存が高度に抑制されたものとなり得るので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
図2】他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
図3】他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0018】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion: Fundamental and Practice”, McLaren & Sons (1966), p. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
【0019】
この明細書において、バイオマス由来の炭素とは、バイオマス材料、すなわち再生可能な有機資源に由来する材料に由来する炭素(再生可能炭素)を意味する。上記バイオマス材料とは、典型的には、太陽光と水と二酸化炭素とが存在すれば持続的な再生産が可能な生物資源(典型的には、光合成を行う植物)に由来する材料のことをいう。したがって、採掘後の使用によって枯渇する化石資源に由来する材料(化石資源系材料)は、ここでいうバイオマス材料の概念から除かれる。粘着剤のバイオマス炭素比、すなわち該粘着剤に含まれる全炭素に占めるバイオマス由来炭素の割合は、ASTM D6866に準拠して測定される質量数14の炭素同位体含有量から見積もることができる。
【0020】
この明細書において「アクリル系モノマー」とは、一分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ここで「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。したがって、ここでいうアクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。
【0021】
この明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。
【0022】
<粘着剤組成物>
ここに開示される粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物等であり得る。ここで、水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、粘着剤が水に分散した形態の水分散型粘着剤組成物や、粘着剤が水に溶解した形態の水溶性粘着剤組成物を包含する概念である。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。
【0023】
(バイオマス炭素比)
ここに開示される粘着剤組成物は、バイオマス炭素比(バイオベース度ともいう。)が50%以上の粘着剤を含むことによって特徴づけられる。粘着剤のバイオマス炭素比が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。かかる観点において、粘着剤のバイオマス炭素比は高いほど好ましいといえる。例えば、粘着剤のバイオマス炭素比は、55%以上であってよく、60%以上であってもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、80%超でもよい。バイオマス炭素比の上限は、定義上100%であり、材料の入手容易性の観点から、典型的には95%以下である。良好な粘着性能を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、粘着剤のバイオマス炭素比は、例えば92%以下であってよく、90%以下でもよく、88%以下でもよい。
なお、従来の一般的なアクリル系粘着剤のバイオベース度は0~30%程度であり、高くても40%未満である。
【0024】
(アクリル系重合物)
ここに開示される粘着剤組成物は、上記粘着剤として、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤を含有する。ここで「アクリル系重合物」とは、アクリル系モノマーを50重量%より多く含むモノマー成分に由来する重合物をいう。モノマー成分におけるアクリル系モノマーの含有量は、好ましくは70重量%以上であり、80重量%以上でもよい。いくつかの態様において、モノマー成分におけるアクリル系モノマーの含有量は、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、100重量%でもよい。一方、粘着特性のバランスを考慮して、いくつかの態様において、モノマー成分全体のうちアクリル系モノマーの割合は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、93重量%未満でもよい。
【0025】
上記アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、アルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。かかる組成のモノマー成分によると、良好な粘着特性を示す粘着剤が得られやすい。モノマー成分全体のうちアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。モノマー成分は、一種または二種以上のアルキル(メタ)アクリレートのみを含む組成であってもよい。一方、粘着特性のバランスを考慮して、いくつかの態様において、モノマー成分全体のうちアルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、93重量%未満でもよい。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1~36のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート、すなわちC1-36アルキル(メタ)アクリレートを好ましく採用し得る。上記アルキル基の炭素原子数が3以上である場合、該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。
【0027】
1-36アルキル(メタ)アクリレートの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸トリコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸ペンタコシル、(メタ)アクリル酸ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸ヘプタコシル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ノナコシル、(メタ)トリアコンチル、(メタ)アクリル酸ヘントリアコンチル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸トリトリアコンチル、(メタ)アクリル酸テトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸ペンタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸ヘキサトリアコンチル、後述する式(1)で表される構造を有する化合物、等が挙げられる。
【0028】
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、上記アルキル(メタ)アクリレートとして、バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含み得る。バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、典型的には、バイオマス由来のアルカノールと、バイオマス由来または非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルである。バイオマス由来のアルカノールの例には、バイオマスエタノール、パーム油やパーム核油、ヤシ油等の植物原料に由来するアルカノール、等が含まれる。バイオマス由来のアルカノールの炭素原子数が3以上である場合、該アルカノールは、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。バイオマス由来の分岐アルカノールの例には、バイオマス由来のβ-分岐アルコールが含まれる。このβ-分岐アルコールは、バイオマス由来のアルカノール(例えば、バイオマス由来の直鎖アルカノール)のゲルベ反応により形成されたゲルベアルコールであり得る。
【0029】
バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートの典型例は、バイオマス由来のC1-36アルカノールと、非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルである。かかるアルキル(メタ)アクリレートでは、アルカノールの炭素原子数が多いほど、該アルキル(メタ)アクリレートに含まれる総炭素原子数に占めるバイオマス由来炭素の個数割合、すなわち該アルキル(メタ)アクリレートのバイオベース度が高くなる。このため、バイオマス炭素比向上の観点から、C12以上のバイオマス由来アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを、モノマー成分の構成要素として好ましく採用し得る。以下、C12以上のバイオマス由来アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを「バイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレート」ということがある。また、以下において、C12以上のバイオマス由来の分岐アルキル基をエステル末端に有する分岐アルキル(メタ)アクリレートを「バイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートということがある。
【0030】
ここに開示される技術は、バイオマス炭素比向上の観点から、上記バイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートが、C14以上、C16以上、C18以上、C20以上、C22以上またはC24以上のバイオマス由来アルキル基をエステル末端に有するバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含む態様で好ましく実施され得る。ここに開示される技術のいくつかの好ましい態様において、以下の説明におけるバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、C14以上、C16以上、C18以上、C20以上、C22以上またはC24以上のバイオマス由来アルキル基をエステル末端に有するバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートであり得る。他のいくつかの好ましい態様において、以下の説明におけるバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートは、C14以上、C16以上、C18以上、C20以上、C22以上またはC24以上のバイオマス由来分岐アルキル基をエステル末端に有するバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートであり得る。また、ここに開示される技術において、所望のバイオマス炭素比が達成される限り、バイオマス由来炭素を含む化合物の一部または全部を、化学構造が同一であってよりバイオマス炭素比の低い化合物(バイオマス由来炭素を含まない化合物であり得る。)に置き換えることは妨げられない。
【0031】
ここに開示される技術は、モノマー成分がバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含む態様で好ましく実施され得る。上記バイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートにおけるバイオマス由来アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。バイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、それ自体のバイオベース度が高いため、モノマー成分の構成要素として用いられることで、粘着剤のバイオマス炭素比の向上に効果的に貢献し得る。粘着剤のバイオベース炭素比向上の観点からは、モノマー成分全体のうちバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、高いほうが有利である。上記割合は、例えば10重量%以上であってよく、通常は30重量%以上が適当であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。ここに開示される技術は、モノマー成分全体のうちバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの占める割合が70重量%より多い(例えば、70重量%より多く100重量%未満)である態様で好適に実施することができる。いくつかの態様において、上記割合は、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、100重量%(すなわち、モノマー成分が一種または二種以上のバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートのみを含む態様)であってもよい。一方、原料コストの低減や粘着特性の調節の目的から、いくつかの態様において、モノマー成分は、C12以上の非バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートや、C1-11のバイオマス由来または非バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。このため、いくつかの態様において、モノマー成分全体のうちバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、93重量%未満でもよく、80重量%未満でもよく、70重量%未満でもよい。
【0032】
モノマー成分がバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含む態様において、該モノマー成分に含まれるアルキル(メタ)アクリレート全体のうちバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、粘着剤のバイオベース炭素比向上の観点からは、高いほうが有利である。上記割合は、例えば30重量%以上であってよく、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上であり、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、100重量%でもよい。ここに開示される技術は、モノマー成分に含まれるアルキル(メタ)アクリレートの実質的に全部(典型的には99重量%以上であり、100重量%であり得る。)がバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートである態様で好適に実施することができる。一方、原料コストの低減や粘着特性の調節の目的から、いくつかの態様において、モノマー成分は、粘着剤のバイオマス炭素比が50%を下回らない限度で、C12以上の非バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含んでいてもよく、C1-11のバイオマス由来または非バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。このため、いくつかの態様において、モノマー成分に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、93重量%未満でもよく、80重量%未満でもよく、70重量%未満でもよい。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートにおけるエステル末端のアルキル基の炭素原子数が多くなると、該アルキル基が結晶化しやすくなる傾向にある。粘着剤中においてアルキル基の結晶化が過度に進行することは、粘着特性や性能安定性等を低下させる要因となり得る。直鎖アルキル基に比べて分岐アルキル基は、概して、アルキル基の炭素原子数が多くても該アルキル基の結晶性が抑制される傾向にある。かかる観点から、モノマー成分がバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むいくつかの態様において、該バイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一部は、バイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。バイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートの使用により、アルキル基の結晶化を抑制しつつ、モノマー成分に占めるバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの割合を高くしてバイオマス炭素比を効果的に向上させることができる。
【0034】
モノマー成分に含まれるバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの全体のうちバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、5重量%以上であることが適当であり、10重量%以上でもよい。結晶化抑制の効果を好適に発揮しやすくする観点から、バイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートのうちバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、20重量%以上であることが好ましく、50重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。ここに開示される技術は、モノマー成分に含まれるバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの実質的に全部(典型的には99重量%以上であり、100重量%であり得る。)がバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートである態様で好適に実施することができる。一方、原料コストの低減や粘着特性の調節の目的から、いくつかの態様において、バイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートのうちバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、93重量%未満でもよく、80重量%未満でもよく、70重量%未満でもよい。
【0035】
モノマー成分全体のうちバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、例えば10重量%以上であってよく、通常は30重量%以上が適当であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。ここに開示される技術は、モノマー成分全体のうちバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合が70重量%より多い(例えば、70重量%より多く100重量%未満)である態様で好適に実施することができる。いくつかの態様において、上記割合は、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、100重量%(すなわち、モノマー成分が一種または二種以上のバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートのみを含む態様)であってもよい。一方、原料コストの低減や粘着特性の調節の目的から、いくつかの態様において、モノマー成分全体のうちバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、93重量%未満でもよく、80重量%未満でもよく、70重量%未満でもよい。
【0036】
モノマー成分の構成要素として好ましく使用し得るバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートとして、以下の式(1)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【化1】
上記式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基である。-CHCHRは、バイオマス由来の分岐アルキル基である。上記バイオマス由来の分岐アルキル基の炭素原子数が12以上である場合、RおよびRは、直鎖状または分岐状の炭素原子数4~20のアルキル基から、それぞれ独立に、ただしRの炭素原子数とRの炭素原子数との合計が10以上34以下(上記バイオマス由来の分岐アルキル基の炭素原子数が14以上である場合は12以上34以下、16以上である場合は14以上34以下、18以上である場合は16以上34以下、20以上である場合は18以上34以下、22以上である場合は20以上34以下、24以上である場合は22以上34以下)となるように選択される。
【0037】
式(1)において、アルキル基の結晶化を抑制する観点から、RおよびRのうち炭素原子数がより多いアルキル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下でもよく、12以下でもよい。また、式(1)で表されるバイオ長鎖分岐アルキル(メタ)アクリレートのバイオベース度を高くするためには、RおよびRの炭素原子数は多いほうが有利である。RおよびRのうち炭素原子数がより少ないアルキル基の炭素原子数は、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上でもよい。バイオベース度を高め、かつ結晶化を抑制しやすくする観点からは、RとRとの炭素原子数の差が大きすぎないことが有利である。RとRとの炭素原子数の差は、例えば6以下であってよく、4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。RとRとの炭素原子数が同じでもよい。
【0038】
式(1)におけるRおよびRは、粘着剤組成物の製造時における攪拌容易性等の観点から、直鎖または直鎖に近い構造(例えば、直鎖の炭化水素鎖に1つの分岐メチル基を設けた構造)を有することが好ましく、RおよびRがいずれも直鎖構造であることがより好ましい。また、重合反応性や低温特性の観点からは、式(1)におけるRが水素原子である化合物、すなわちアクリレートが好ましい。
【0039】
式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、2-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2-ブチルデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルドデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
いくつかの態様において、モノマー成分は、少なくとも2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート(より好ましくは、2-デシルテトラデシルアクリレート)を含むことが好ましい。かかる態様において、モノマー成分のうち2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレートの割合は、例えば10重量%以上であってよく、20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。より高いバイオベース度を実現しやすくする観点から、上記割合は、40重量%以上でもよく、50重量%以上でもよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。
【0041】
ここに開示される粘着剤組成物のいくつかの好ましい態様において、上記モノマー成分は、バイオ長鎖アルキル基が相違する二種類以上のバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレート(を含み得る。上記アルキル基の相違は、炭素原子数の違いであってもよく、構造の違い(例えば、直鎖状と分岐状との違い、分岐状における分岐の長さや位置の違い)でもよく、それらの両方でもよい。アルキル基の炭素原子数および/または構造が異なる二種類以上のバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いることにより、粘着剤中において上記アルキル基の結晶化が抑制され得る。これにより、高いバイオマス炭素比と良好な粘着特性とをバランスよく両立させ得る。好ましく採用し得る組み合わせとして、アルキル基の炭素原子数が相違する二種以上のゲルベ(メタ)アクリレートの組み合わせ、アルキル基の炭素原子数が異なるゲルベ(メタ)アクリレートと直鎖アルキル(メタ)アクリレートとの組み合わせ、等が挙げられる。
二種類以上のバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いる場合、それらのバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの使用量比は特に限定されない。二種類以上のバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて用いることの効果を適切に発揮しやすくする観点から、モノマー成分に含まれるバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの全体を100重量%として、最も多く用いられる種類のバイオ長鎖アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば95重量%以下とすることが好ましく、90重量%以下とすることがより好ましく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよい。
【0042】
アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、上述のようなアルキル(メタ)アクリレートと、該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)とを組み合わせて含んでいてもよい。上記共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等)を有するモノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、アクリル系重合物に架橋点を導入したり、粘着剤の凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等。
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸。
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等。
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等の、N-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等(例えば、N-ビニル-2-カプロラクタム等のラクタム類)。
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
マレイミド類:例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等。
イタコンイミド類:例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル。
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類。
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
ビニルエーテル類:例えば、例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル。
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等。
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート等。
【0044】
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常はモノマー成分全量の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用による効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全量の0.1重量%以上としてもよく、1重量%以上としてもよい。また、共重合性モノマーの使用量は、モノマー成分全量の50重量%以下とすることができ、40重量%以下とすることが好ましい。これにより、粘着剤の凝集力が高くなり過ぎることを防ぎ、常温(25℃)でのタック感を向上させ得る。
【0045】
いくつかの好ましい態様において、アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、上記共重合性モノマーとして、少なくともカルボキシ基含有モノマーを含み得る。カルボキシ基含有モノマーの使用により、粘着剤の凝集力を高め、粘着特性を向上させ得る。カルボキシ基含有モノマーとしては、上記で例示したもの等を用いることができる。特に好ましいカルボキシ基含有モノマーとして、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MAA)が挙げられる。なかでもAAが好ましい。AAとMAAとを組み合わせて用いてもよい。
【0046】
共重合性モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、その使用量は、例えば、モノマー成分全体の0.1重量%以上であってよく、0.5重量%以上でもよい。いくつかの態様において、カルボキシ基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の1重量%以上であってよく、1重量%超でもよく、2重量%以上でもよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよく、6重量%以上でもよい。カルボキシ基含有モノマーの使用量が多くなると、粘着剤の凝集力は概して向上する傾向にある。したがって、カルボキシ基含有モノマーの使用量を適切に設定することにより、アクリル系重合物を形成するモノマー成分が長鎖アルキル(メタ)アクリレートを比較的多く含む組成であっても、粘着剤に適度な凝集力を付与することができる。カルボキシ基含有モノマーの使用量の上限は特に制限されないが、アルキル(メタ)アクリレートとの相溶性の観点から、通常は20重量%以下とすることが適当である。カルボキシ基含有モノマーは、バイオマス由来であってもよく、非バイオマス由来であってもよい。非バイオマス由来のカルボキシ基含有モノマーを使用する場合、該カルボキシ基含有モノマーの使用量は、粘着剤のバイオベース度向上の観点から、モノマー成分全体の15重量%以下とすることが好ましく、12重量%以下でもよく、10重量%以下でもよく、8重量%以下でもよい。
【0047】
いくつかの好ましい態様において、アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、上記共重合性モノマーとして、少なくとも水酸基含有モノマーを含み得る。カルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーとを組み合わせて含むことがより好ましい。これにより、粘着剤の凝集力を効果的に高め、粘着特性を向上させ得る。水酸基含有モノマーとしては、上記で例示したもの等を用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等を好適に使用することができる。なかでも好ましい例として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)が挙げられる。
【0048】
共重合性モノマーとして水酸基含有モノマーを用いる場合、その使用量は、例えば、モノマー成分全体の0.01重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.3重量%以上でもよく、0.7重量%以上でもよい。いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の1.5重量%以上でもよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよい。また、カルボキシ基含有モノマーとの組み合わせによる効果を良好に発揮しやすくする観点から、水酸基含有モノマーの使用量は、例えば、モノマー成分全体の10重量%以下であってよく、7重量%以下でもよく、4重量%以下でもよく、2重量%以下でもよく、1重量%未満、例えば0.8重量%以下でもよい。
【0049】
モノマー成分が共重合性モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーとを組み合わせて含む態様において、該モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの含有量(WCOOH)は、重量基準で、水酸基含有モノマーの含有量(WOH)の0.5倍以上であることが好ましい。すなわち、WCOOH/WOH≧0.5であることが好ましい。これにより、カルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーとの組み合わせ使用による凝集力向上および粘着特性向上の効果が好適に発揮される傾向にある。いくつかの態様において、WCOOH/WOHは、例えば1.0以上であってよく、2.5以上でもよく、4.5以上でもよく、7.0以上でもよく、10以上でもよい。WCOOH/WOHの上限は特に制限されず、例えば100以下であってもよく、50以下でもよく、20以下でもよい。
【0050】
いくつかの好ましい態様において、アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、上記共重合性モノマーとして、N-ビニル環状アミドを含み得る。N-ビニル環状アミドの使用により、粘着剤の凝集力や極性を調整し、粘着剤の保持性能(例えば、後述する耐熱保持性能)を向上させ得る。N-ビニル環状アミドの具体例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。特に好ましくはN-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-カプロラクタムである。N-ビニル環状アミドの使用量は、特に制限されないが、通常、モノマー成分全体の0.01重量%以上(好ましくは0.1重量%以上、例えば0.5重量%以上)とすることが適当である。いくつかの態様において、N-ビニル環状アミドの使用量は、モノマー成分全体の1重量%以上としてもよく、5重量%以上としてもよく、7重量%以上としてもよい。また、常温(25℃)でのタック感向上や低温における柔軟性向上の観点から、N-ビニル環状アミドの使用量は、通常、モノマー成分全体の40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよい。
【0051】
ここに開示される技術は、上記モノマー成分が、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマーおよび窒素原子含有環を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも一種の極性基含有モノマーを含む態様で好ましく実施され得る。かかる極性基含有モノマーの使用により、粘着剤の凝集力を効果的に高め、保持性能を向上させ得る。上記モノマー成分における上記極性基含有モノマーの含有量は、例えば1重量%超であってよく、好ましくは3重量%超であり、5重量%超でもよく、6重量%超でもよい。いくつかの態様において、上記極性基含有モノマーの含有量は、8重量%以上でもよく、10重量%以上でもよく、12重量%以上でもよく、16重量%以上でもよい、一方、粘着剤の凝集力が高くなり過ぎることを防ぐ観点から、極性基含有モノマーの含有量は、通常、40重量%以下であることが適当であり、好ましくは30重量%以下であり、25重量%以下でもよく、20重量%以下でもよい。
【0052】
ここに開示される技術は、例えば、上記モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーおよび窒素原子含有環を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも一種の極性基含有モノマーを含み、該極性基含有モノマーの含有量が1重量%超(好ましくは3重量%超であり、5重量%超でもよく、6重量%超でもよく、8重量%以上でもよく、10重量%以上でもよく、12重量%以上でもよく、16重量%以上でもよい。)である態様で好ましく実施することができる。上記カルボキシ基含有モノマーおよび窒素原子含有環を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも一種の極性基含有モノマーの含有量は、通常、40重量%以下であることが適当であり、好ましくは30重量%以下であり、25重量%以下でもよく、20重量%以下でもよい。
【0053】
モノマー成分が極性基含有モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーと窒素原子含有環を有するモノマーとを組み合わせて含む態様において、該モノマー成分における窒素原子含有環を有するモノマーの含有量(W)とカルボキシ基含有モノマーの含有量(WCOOH)との関係(重量基準)は、特に限定されない。W/WCOOHは、例えば0.1以上であってよく、0.2以上でもよく、0.5以上でもよく、1以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、W/WCOOHは、1より大きくすることができ、例えば1.2以上であってよく、1.5以上でもよく、1.7以上でもよく、2.0以上でもよい。また、W/WCOOHは、例えば50以下であってよく、30以下でもよく、20以下でもよく、10以下でもよく、5以下でもよく、3以下でもよい。
【0054】
特に限定するものではないが、アクリル系重合物のTgを構成するモノマー成分の組成は、該モノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度(Tg;以下、アクリル系重合物のTgともいう。)が0℃以下となるように設定することが好ましい。上記アクリル系重合物のTgは、粘着剤の接着性や低温特性等の観点から、通常、0℃以下であることが有利であり、-20℃以下であることが好ましく、-30℃以下であることがより好ましく、-40℃以下でもよく、-50℃以下でもよい。また、粘着剤の凝集性の観点から、いくつかの態様において、上記アクリル系重合物のTgは、-80℃以上であることが適当であり、-70℃以上でもよい。
【0055】
ここで、本明細書において上記アクリル系重合物および後述するアクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)とは、該重合物の調製に用いられるモノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。Tgの特定に係る対象の重合物がホモポリマーである場合、該ホモポリマーのTgと対象のポリマーのTgとは一致する。
【0056】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。具体的には、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989年)に数値が挙げられている。上記Polymer Handbookに複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。
【0057】
上記Polymer Handbookに記載のないモノマーのホモポリマーのガラス転移温度としては、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70℃~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度に相当する温度をホモポリマーのTgとする。
【0058】
アクリル系重合物を得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系重合物の合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。いくつかの態様において、溶液重合法を好ましく採用し得る。他のいくつかの態様において、光重合法を好ましく採用し得る。これらの重合方法において、重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力、光照射量、放射線照射量等)、モノマー以外の使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)等を適宜選択して行うことができる。
【0059】
重合にあたっては、重合方法や重合態様に応じて重合開始剤が用いられ得る。重合開始剤は、従来公知の熱重合開始剤や光重合開始剤等から適宜選択することができる。重合開始剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤(例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等);過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエート、過酸化ラウロイル等);レドックス系重合開始剤等が挙げられる。熱重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系重合物の調製に用いられるモノマー成分100重量部に対して0.01重量部~5重量部、好ましくは0.05重量部~3重量部の範囲内の量とすることができる。
【0061】
光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系重合物の調製に用いられるモノマー成分100重量部に対して0.01重量部~5重量部、好ましくは0.05重量部~3重量部の範囲内の量とすることができる。
【0062】
いくつかの態様において、アクリル系重合物は、上述のようなモノマー成分に重合開始剤を配合した混合物に紫外線(UV)を照射して該モノマー成分の一部を重合させた部分重合物の形態で、粘着剤組成物に含まれ得る。かかる部分重合物を含む粘着剤組成物を所定の被塗布体に塗布し、紫外線を照射させて重合を完結させることができる。このような部分重合物は、上記モノマー成分に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、典型的にはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。モノマーシロップを含む粘着剤組成物(典型的には、UV硬化型の粘着剤組成物)は、例えば、アクリル系重合物の調製に用いられるモノマー成分に紫外線を照射して部分重合物を得る第一段階と、該部分重合物に、必要に応じて用いられる他の材料(後述する多官能性モノマー、アクリル系オリゴマー、追加の光重合開始剤等であり得る。)を添加して混合する第二段階と、を含む方法により調製することができる。あるいは、アクリル系重合物の調製に用いられるモノマー成分のうちの一部(分量の一部でもよく、種類の一部でもよい。)に紫外線を照射して部分重合物を得る第一段階と、上記部分重合物に残りのモノマー成分および必要に応じて用いられる他の材料を添加して混合する第二段階と、を含む方法により調製してもよい。後者の調製方法は、例えば、アクリル系重合物を構成するモノマー成分のうち、極性基を有するモノマーの一部(分量の一部でもよく、種類の一部でもよい。)または全部を第二段階で添加する態様で実施することができる。
【0063】
特に限定するものではないが、アクリル系重合物の重量平均分子量(Mw)は、通常、凡そ5×10以上であることが適当である。かかるMwのアクリル系重合物によると、良好な凝集性を示す粘着剤が得られやすい。いくつかの態様において、アクリル系重合物のMwは、例えば10×10以上であってよく、20×10以上であってもよく、30×10以上であってもよい。また、被着体に対する密着性の観点から、アクリル系重合物のMwは、通常、凡そ500×10以下であることが適当である。アクリル系重合物のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0064】
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤組成物には、必要に応じて架橋剤を含有させることができる。架橋剤は、粘着剤の凝集力を高めるために役立ち得る。架橋剤は、粘着剤の分野において公知の各種架橋剤から選択することができる。かかる架橋剤の例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
架橋剤を用いる場合における使用量は特に限定されない。架橋剤の使用量は、100重量部に対して、例えば0.001~15重量部の範囲から選択し得る。凝集力の向上と被着体への密着性とをバランスよく両立する観点から、アクリル系重合物100重量部に対する架橋剤の使用量は、通常、12重量部以下とすることが好ましく、8重量部以下でもよく、6重量部以下でもよく、また、0.005重量部以上とすることが適当であり、0.01重量部以上でもよい。
【0066】
いくつかの態様において、架橋剤は、少なくともイソシアネート系架橋剤を含むことが好ましい。イソシアネート系架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。イソシアネート系架橋剤と他の架橋剤、例えばエポキシ系架橋剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0067】
イソシアネート系架橋剤としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。ポリイソシアネート系架橋剤1分子当たりのイソシアネート基の数は、好ましくは2~10個であり、例えば2~4個であり、典型的には2または3個である。上記ポリイソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;が例示される。より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート等のポリイソシアネート;これらポリイソシアネートとポリオールとの付加物;および、これらポリイソシアネートを、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等により多官能化したポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0068】
イソシアネート系架橋剤を用いる場合の使用量は、アクリル系重合物100重量部に対して、例えば凡そ0.1重量部以上であってよく、0.5重量部以上でもよく、1.0重量部以上でもよく、1.5重量部超でもよい。より高い使用効果を得る観点から、アクリル系重合物100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば2.0重量部超であってよく、2.5重量部以上でもよく、2.7重量部以上でもよい。また、アクリル系重合物100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、10重量部以下とすることが適当であり、7重量部以下でもよく、5重量部以下でもよく、4重量部以下でもよい。イソシアネート系架橋剤の使用量が多過ぎないことは、過度の架橋による粘着性の低下を避ける観点から有利となり得る。
【0069】
エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物を用いることができる。例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、三菱ガス化学製の商品名「テトラッドC」、「テトラッドX」等が挙げられる。
【0070】
エポキシ系架橋剤を用いる場合の使用量は、アクリル系重合物100重量部に対して、例えば0.005重量部以上とすることができ、より高い使用効果を得る観点から0.01重量部以上としてもよく、0.02重量部以上としてもよく、0.05重量部以上としてもよい。また、アクリル系重合物100重量部に対するエポキシ系架橋剤の使用量は、通常、2重量部以下とすることが適当であり、1重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよく、0.2重量部以下でもよい。エポキシ系架橋剤の使用量が多過ぎないことは、過度の架橋による被着体への密着性低下を避ける観点から有利となり得る。
【0071】
イソシアネート系架橋剤と他の架橋剤(すなわち、非イソシアネート系架橋剤)とを組み合わせて用いる場合、イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤(例えばエポキシ系架橋剤)との使用量の関係は、特に限定されない。被着体に対する密着性と凝集力とをより好適に両立する観点から、いくつかの態様において、非イソシアネート系架橋剤の含有量は、重量基準で、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/2以下とすることができ、凡そ1/5以下としてもよく、凡そ1/10以下でもよく、凡そ1/20以下でもよく、凡そ1/30以下でもよい。また、イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤(例えばエポキシ系架橋剤)とを併用することの効果を好適に発揮する観点から、非イソシアネート系架橋剤の含有量は、通常、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/1000以上、例えば凡そ1/500以上とすることが適当である。
【0072】
上述したいずれかの架橋剤の架橋反応をより効率よく進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、例えば、ジラウリン酸ジオクチルスズ等のスズ系触媒を好ましく用いることができる。架橋触媒の使用量は特に制限されず、例えば、アクリル系重合物100重量部に対して凡そ0.0001重量部~1重量部とすることができる。
【0073】
ここに開示される粘着シートの粘着剤層に使用され得る架橋剤の他の例として、一分子内に2以上の重合性官能基を有するモノマー、すなわち多官能性モノマーが挙げられる。多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。いくつかの態様において、一分子内に3以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを用いることにより、粘着剤の凝集力を効果的に向上させ得る。そのような多官能性モノマーの非限定的な例には、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスチロールヘキサアクリレート(DPHA)等が含まれる。
【0074】
架橋剤として多官能性モノマーを用いる場合におけるその使用量は、該多官能性モノマーの構造や官能基数等によっても異なり得るが、通常は、モノマー成分100重量部に対して0.01重量部~3.0重量部程度の範囲とすることが適当である。より高い効果を得る観点から、いくつかの態様において、多官能性モノマーの使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば0.02重量部以上であってもよく、0.03重量部以上でもよい。一方、過度な凝集力向上によるタックの低下を避ける観点から、多官能性モノマーの使用量は、モノマー成分100重量部に対して2.0重量部以下であってよく、1.0重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよい。いくつかの対応において、多官能性モノマーの使用量は、0.3重量部以下でもよく、0.2重量部以下でもよく、0.1重量部以下でもよい。上記多官能性モノマーの使用量は、例えば、一分子内に3以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを使用する場合に好ましく採用され得る。
【0075】
(粘着付与剤)
ここに開示される粘着剤組成物には、必要に応じて粘着付与剤(典型的には粘着付与樹脂)を含有させることができる。粘着付与剤は、粘着性能(例えば、剥離強度)の向上に役立ち得る。粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
ロジン系粘着付与樹脂の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0077】
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂;これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン系樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の例としては、テルペン-フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂等が挙げられる。
【0078】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
脂肪族系炭化水素樹脂としては、炭素原子数4~5程度のオレフィンおよびジエンから選択される一種または二種以上の脂肪族炭化水素の重合体等が例示される。上記オレフィンの例としては、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン等が挙げられる。上記ジエンの例としては、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン等が挙げられる。
芳香族系炭化水素樹脂の例としては、炭素原子数8~10程度のビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等が挙げられる。脂肪族系環状炭化水素樹脂の例としては、いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後に重合させた脂環式炭化水素系樹脂;環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体またはその水素添加物;芳香族系炭化水素樹脂または脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂;等が挙げられる。
【0079】
ここに開示される粘着剤層が粘着付与剤を含む場合、粘着付与剤としては、粘着剤のバイオマス炭素比向上の観点から、植物に由来する粘着付与剤(植物性粘着付与剤)を好ましく採用し得る。植物性粘着付与剤の例としては、上述のロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂が挙げられる。植物性粘着付与剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される粘着剤層が粘着付与剤を含む場合、粘着付与剤の総量に占める植物性粘着付与剤の割合は、30重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には80重量%以上)とすることが好ましい。特に好ましい一態様では、粘着付与剤の総量に占める植物性粘着付与剤の割合は、90重量%以上(例えば95重量%以上、典型的には99~100重量%)である。ここに開示される技術は、石油樹脂や石油由来の炭化水素樹脂等のような非バイオマス由来の粘着付与剤を実質的に使用しない態様で好ましく実施され得る。ここで、特定の粘着付与剤を実質的に使用しないとは、少なくとも意図的には該粘着付与剤を使用しないことをいい、典型的には該粘着付与剤の含有量が粘着剤の3重量%未満、より好ましくは1重量%未満であることをいう。植物性粘着付与剤以外の粘着付与剤を実質的に使用しないことが特に好ましい。
【0080】
粘着付与剤としては、該粘着付与剤に含まれる全炭素の50%以上がバイオマス由来の炭素であるものを好ましく採用し得る。すなわち、バイオマス炭素比が50%以上である粘着付与剤を好ましく採用し得る。このような粘着付与剤は、その使用量にかかわらず、粘着剤のバイオマス炭素比を50%未満に低下させることがないので好ましい。粘着付与剤のバイオマス炭素比は、60%以上でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよい。バイオマス炭素比が100%の粘着付与剤を使用してもよい。二種以上の粘着付与剤を使用する場合は、それらの合計量のうち少なくとも50重量%以上(より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上)がバイオマス炭素比50%以上(より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、例えば80%以上)の粘着付与剤であることが好ましい。ここに開示される技術は、バイオマス炭素比が50%以上の粘着付与剤のみを使用する態様で好ましく実施され得る。
【0081】
ここに開示される技術では、軟化点(軟化温度)が凡そ60℃以上(好ましくは凡そ80℃以上、より好ましくは凡そ95℃以上、例えば凡そ105℃以上)である粘着付与剤を好ましく使用し得る。かかる粘着付与剤によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。粘着付与剤の軟化点の上限は特に制限されない。相溶性等の観点から、いくつかの態様において、粘着付与剤の軟化点は、例えば凡そ200℃以下であってよく、凡そ180℃以下でもよく、凡そ140℃以下でもよく、凡そ120℃以下でもよい。なお、ここでいう粘着付与剤の軟化点は、JIS K5902:2006およびJIS K2207:2006のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0082】
粘着付与剤の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(剥離強度等)に応じて適宜設定することができる。いくつかの態様において、アクリル系重合物100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、例えば5重量部以上であってよく、通常は10重量部以上が適当であり、15重量部以上でもよく、20重量部以上でもよく、25重量部以上でもよい。また、粘着性能のバランスを考慮して、いくつかの態様において、アクリル系重合物100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、例えば100重量部以下であってよく、通常は70重量部以下が適当であり、50重量部以下が好ましく、40重量部以下でもよく、35重量部以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着付与剤を実質的に使用しない態様でも好ましく実施され得る。
【0083】
(アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物には、必要に応じて、アクリル系オリゴマーを含有させることができる。アクリル系オリゴマーは、粘着剤の凝集力の向上や剥離強度の向上に役立ち得る。アクリル系オリゴマーは、例えば、UV硬化型の粘着剤組成物において好ましく採用され得る。
【0084】
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、典型的には約1000以上約30000未満、好ましくは約1500以上約10000未満、さらに好ましくは約2000以上約5000未満であり得る。Mwが上記範囲内にあると、凝集性や隣接する面との接着性を向上させる効果が好適に発揮されやすい。アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0085】
アクリル系オリゴマーの形成に用いられるモノマー成分としては、上述した各種のC1-36アルキル(メタ)アクリレート(好ましくは、C1-20アルキル(メタ)アクリレート);上述した各種の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;上述した各種の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
アクリル系オリゴマーは、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートや芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;等に代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、接着性向上の観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の形成の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、エステル末端に飽和炭化水素基を有するモノマーが好ましく、例えばアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレートや飽和脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0087】
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める(メタ)アクリレートモノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的に一種または二種以上の(メタ)アクリレートモノマーのみからなるモノマー組成を有する。モノマー成分が脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとC1-20アルキル(メタ)アクリレートとを含む場合、それらの重量比は特に限定されず、例えば10/90~90/10の範囲、20/80~80/20の範囲、70/30~30/70の範囲等とすることができる。
【0088】
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上記の(メタ)アクリレートモノマーに加えて、必要に応じて官能基含有モノマーを用いることができる。官能基含有モノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有複素環を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める官能基含有モノマーの割合は、例えば1重量%以上、2重量%以上または3重量%以上とすることができ、また、例えば15重量%以下、10重量%以下または7重量%以下とすることができる。
【0089】
特に限定するものではないが、上記アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分の組成は、該モノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度(Tg;以下、アクリル系オリゴマーのTgともいう。)が10℃以上300℃以下の範囲となるように設定することが好ましい。上記アクリル系オリゴマーのTgは、例えば約30℃以上であってよく、約40℃以上でもよく、約60℃以上でもよく、約80℃以上または約100℃以上でもよい。アクリル系オリゴマーのTgが高くなると、凝集力を向上させる効果は概して高くなる傾向にある。被着体に対する密着性やアクリル系重合体との相溶性等の観点から、アクリル系オリゴマーのTgは、例えば約250℃以下であってよく、約200℃以下でもよく、約180℃以下または約150℃以下でもよい。
【0090】
好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、DCPMAとMMAの共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、CHMAとAAとの共重合体、等を挙げることができる。
【0091】
アクリル系オリゴマーは、所定のモノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤)の種類は、概ね、アクリル系重合物の合成に関して例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用される連鎖移動剤(例えばメルカプタン類)の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、詳細な説明は省略する。
【0092】
粘着剤にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、上記アクリル系重合物100重量部に対して、例えば0.01重量部以上とすることができ、より高い効果を得る観点から0.05重量部以上としてもよく、0.1重量部以上または0.2重量部以上としてもよい。また、アクリル系重合物との相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、通常、50重量部未満とすることが適当であり、好ましくは30重量部未満、より好ましくは25重量部以下であり、10重量部以下、5重量部以下または1重量部以下としてもよい。
【0093】
(その他の成分)
ここに開示される粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、フィラー、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含み得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。
【0094】
<粘着シート>
この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える粘着シートが提供される。かかる粘着シートは、例えば、粘着剤層の一方の表面により構成された第一粘着面と、該粘着剤層の他方の表面により構成された第二粘着面と、を備える基材レス両面粘着シートの形態であり得る。あるいは、ここに開示される粘着シートは、上記粘着剤層が支持基材の片面または両面に積層された基材付き粘着シートの形態であってもよい。以下、支持基材のことを単に「基材」ということもある。
【0095】
一実施形態に係る粘着シートの構造を図1に模式的に示す。この粘着シート1は、粘着剤層21からなる基材レスの両面粘着シートとして構成されている。粘着シート1は、粘着剤層21の一方の表面(第一面)により構成された第一粘着面21Aと、粘着剤層21の他方の表面(第二面)により構成された第二粘着面21Bとを、被着体の異なる箇所に貼り付けて用いられる。粘着面21A,21Bが貼り付けられる箇所は、異なる部材のそれぞれの箇所であってもよく、単一の部材内の異なる箇所であってもよい。使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の粘着シート1は、図1に示すように、第一粘着面21Aおよび第二粘着面21Bが、少なくとも粘着剤層21に対向する側がそれぞれ剥離面となっている剥離ライナー31,32によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート100の構成要素であり得る。剥離ライナー31,32としては、例えば、シート状の基材(ライナー基材)の片面に剥離処理剤による剥離層を設けることで該片面が剥離面となるように構成されたものを好ましく使用し得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート1とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面21Bが剥離ライナー31の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。
【0096】
他の一実施形態に係る粘着シートの構造を図2に模式的に示す。この粘着シート2は、第一面10Aおよび第二面10Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)10と、その第一面10A側に設けられた粘着剤層21とを備える基材付き片面粘着シートとして構成されている。粘着剤層21は、支持基材10の第一面10A側に固定的に、すなわち当該支持基材10から粘着剤層21を分離する意図なく、設けられている。使用前の粘着シート2は、図2に示すように、粘着剤層21の表面(粘着面)21Aが、少なくとも粘着剤層21に対向する側が剥離面となっている剥離ライナー31によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート200の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー31を省略し、第二面10Bが剥離面となっている支持基材10を用い、粘着シート2を巻回することにより粘着面21Aが支持基材10の第二面(背面)10Bに当接して保護された形態(ロール形態)であってもよい。
【0097】
さらに他の一実施形態に係る粘着シートの構造を図3に模式的に示す。この粘着シート3は、第一面10Aおよび第二面10Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)10と、その第一面10A側に固定的に設けられた第一粘着剤層21と、第二面10B側に固定的に設けられた第二粘着剤層22と、を備える基材付き両面粘着シートとして構成されている。使用前の粘着シート3は、図3に示すように、第一粘着剤層21の表面(第一粘着面)21Aおよび第二粘着剤層22の表面(第二粘着面)22Aが剥離ライナー31,32によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート300の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート3とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面22Aが剥離ライナー31の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。
【0098】
上述の剥離ライナーとしては、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離層を有する剥離ライナーや、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)やフッ素系樹脂等の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。ライナー基材としては、後述する粘着シートの基材と同様、バイオマス炭素比の高いものが好ましく用いられ得る。
【0099】
なお、ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着フィルム、粘着ラベル等と称されるものが包含され得る。粘着シートは、ロール形態であってもよく、枚葉形態であってもよく、用途や使用態様に応じて適宜な形状に切断、打ち抜き加工等されたものであってもよい。
【0100】
粘着剤組成物からの粘着剤層の形成は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、例えば、基材レスの両面粘着シートの場合は、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与した後、該粘着剤組成物を硬化させることにより該表面上に粘着剤層を形成することで粘着シートが形成され得る。また、基材付きの粘着シートの場合は、該基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して硬化させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して硬化させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。また、上記粘着剤組成物の硬化は、該粘着剤組成物に乾燥、架橋、重合、冷却等の硬化処理を施すことにより行うことができる。二種以上の硬化処理を同時にまたは段階的に行ってもよい。なお、ここに開示される粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0101】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40~150℃程度とすることができ、通常は60~130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0102】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。被着体に対する接着性と凝集性とのバランスを考慮して、粘着剤層の厚さは、例えば2μm~500μm程度とすることができる。被着体に対する接着性の観点から、粘着剤層の厚さは、通常、3μm以上であることが適当であり、5μm以上であることが好ましく、10μm以上でもよく、15μm以上でもよく、20μm以上でもよく、25μm以上でもよい。また、粘着シートの薄型化の観点から、粘着剤層の厚さは、例えば200μm以下であってよく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよい。ここに開示される粘着シートが基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートの場合、各粘着剤層の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0103】
(基材)
ここに開示される粘着シートは、基材の片面または両面に粘着剤層を備える基材付き粘着シートの形態であり得る。基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。使用し得る基材の非限定的な例としては、樹脂フィルム;ゴムシート;発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。
【0104】
電子機器用の分野においては、塵埃(例えば紙粉等の、微小な繊維または粒子)の発生源となりにくい基材が好ましく用いられ得る。ここに開示される粘着シートを電子機器分野に用いる場合には、紙や布等の繊維状物を含まない基材が好ましく、例えば樹脂フィルム、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を好ましく使用し得る。
【0105】
樹脂フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のポリオレフィンフィルム;塩化ビニル樹脂フィルム;塩化ビニリデン樹脂フィルム;酢酸ビニル樹脂フィルム;ポリスチレンフィルム;ポリアセタールフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドフィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリオレフィンシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。なかでも、寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)、加工性、引張強度等の観点から、樹脂フィルムが好ましい。なお、この明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念である。
【0106】
いくつかの態様において、強度や加工性の観点から、上記基材としてポリエステルフィルムを好ましく採用し得る。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル樹脂が用いられる。
【0107】
上記ポリエステルを構成するジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;これらの誘導体(例えば、テレフタル酸等の上記ジカルボン酸の低級アルキルエステル等);等が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
上記ポリエステルを構成するジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール;等が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。透明性等の観点から脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。上記ポリエステルを構成するジオールに占める脂肪族ジオール(好ましくはエチレングリコール)の割合は、50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には95重量%以上)であることが好ましい。上記ジオールは、実質的にエチレングリコールのみから構成されていてもよい。上記エチレングリコールとしては、バイオマス由来のエチレングリコール(典型的には、バイオマスエタノールを原料として得られるバイオマスエチレングリコール)が好ましく用いられ得る。例えば、上記ポリエステルを構成するエチレングリコールのうちバイオマス由来のエチレングリコールの占める割合は、例えば50重量%以上であってよく、75重量%以上であることが好ましく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。上記エチレングリコールの実質的に全部がバイオマス由来のエチレングリコールであってもよい。
【0109】
ポリエステル樹脂フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
【0110】
ここに開示される基材がポリエステルフィルム基材である場合、該ポリオレフィンフィルム基材は、ポリエステルに加えて上記ポリエステル以外のポリマーを含んでもよい。上記ポリエステル以外のポリマーとしては、上述の基材を構成し得る樹脂フィルムとして例示した各種ポリマー材料のうち、ポリエステル以外のものが好適例として挙げられる。ここに開示されるポリエステルフィルム基材がポリエステルに加えて上記ポリエステル以外のポリマーを含む場合、該ポリエステル以外のポリマーの含有量は、ポリエステル100重量部に対して100重量部未満とすることが適当であり、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。ポリエステル以外のポリマーの含有量は、ポリエステル100重量部に対して5重量部以下であってもよく、1重量部以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、ポリエステルフィルム基材の99.5~100重量%がポリエステルである態様で好ましく実施され得る。
【0111】
他のいくつかの態様において、強度と柔軟性の観点から、上記基材としてポリオレフィンフィルムを好ましく採用し得る。ポリオレフィンフィルムは、α-オレフィンを主モノマー(モノマー成分のなかの主成分)とする重合体を主成分とするフィルムである。上記重合体の割合は、通常は50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90~100重量%)である。ポリオレフィンの具体例としては、エチレンを主モノマーとするもの(ポリエチレン)、プロピレンを主モノマーとするもの(ポリプロピレン)等が挙げられる。上記ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が3~10のα-オレフィンから選択される一種または二種以上)との共重合体であってもよく、エチレンとオレフィン以外のモノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のエチレン性不飽和モノマーから選択される一種または二種以上)との共重合体であってもよい。また、上記ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が2,4~10のα-オレフィンから選択される一種または二種以上)との共重合体であってもよく、プロピレンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体であってもよい。ここに開示される基材は、上記のうち一種のポリオレフィンのみを含んでもよく、二種以上のポリオレフィンを含んでもよい。
【0112】
ここに開示される基材がポリオレフィンフィルム基材である場合、該ポリオレフィンフィルム基材は、ポリオレフィンに加えて上記ポリオレフィン以外のポリマーを含んでもよい。上記ポリオレフィン以外のポリマーとしては、上述の基材を構成し得る樹脂フィルムとして例示した各種ポリマー材料のうち、ポリオレフィン以外のものが好適例として挙げられる。ここに開示されるポリオレフィンフィルム基材がポリオレフィンに加えて上記ポリオレフィン以外のポリマーを含む場合、該ポリオレフィン以外のポリマーの含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して100重量部未満とすることが適当であり、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。ポリオレフィン以外のポリマーの含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して5重量部以下であってもよく、1重量部以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、ポリオレフィンフィルム基材の99.5~100重量%がポリオレフィンである態様で好ましく実施され得る。
【0113】
ここに開示される基材は、化石資源系材料の使用量低減の観点から、バイオマス材料を含むことが好ましい。上記基材を構成し得るバイオマス材料は特に限定されないが、例えば、バイオマスPET、バイオマスポリトリメチレンテレフタレート(バイオマスPTT)等のバイオマスポリエステル;ポリ乳酸;バイオマス高密度ポリエチレン(バイオマスHDPE)、バイオマス低密度ポリエチレン(バイオマスLDPE)、バイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(バイオマスLLDPE)等のバイオマスポリエチレン、バイオマスポリプロピレン(バイオマスPP)等のバイオマスポリオレフィン;バイオマスポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート);ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリ(キシリレンセバカミド)等のバイオマスポリアミド;バイオマスポリエステルエーテルウレタン、バイオマスポリエーテルウレタン等のバイオマスポリウレタン;セルロース系樹脂;等が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、バイオマスPET、バイオマスPTT、バイオマスHDPE、バイオマスLDPE、バイオマスLLDPE、バイオマスPPが好ましく、バイオマスPETが特に好ましい。上記のバイオマス材料は樹脂材料であることから、基材が樹脂フィルムである構成に好ましく適用され得る。上記のバイオマス材料を用いることによって、樹脂フィルム(好ましくはポリオレフィンフィルム)を基材とする粘着シートにおいて、化石資源系材料の使用量を低減することができる。
【0114】
基材を備える態様の粘着シートにおいて、該基材のバイオマス炭素比は、20%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。化石資源系材料の使用量低減をより重視する場合には、基材のバイオマス炭素比は、例えば50%以上であってよく、70%以上でもよく、85%以上でもよく、90%以上でもよい。上記バイオマス炭素比の上限は100%以下であるが、いくつかの態様においては、加工性や強度等を考慮して、基材のバイオマス炭素比は、例えば80%以下であってよく、60%以下でもよく、40%以下でもよく、20%未満でもよい。ここで、基材のバイオマス炭素比とは、粘着剤のバイオマス炭素比と同様、該基材に含まれる全炭素に占めるバイオマス由来炭素の割合のことをいう。基材のバイオマス炭素比は、ASTM D6866に準拠して測定される質量数14の炭素同位体含有量から見積もることができる。後述する粘着シートのバイオマス炭素比についても同様である。
【0115】
基材(例えば樹脂フィルムやゴムシート、発泡体シート等)の粘着剤層が配置される面(粘着剤層側表面)には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り層の形成等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。あるいは、上記基材は、上記粘着剤層側表面に投錨性を向上させるような表面処理が施されていないものであってもよい。下塗り層を形成する場合、該形成に使用する下塗り剤(プライマー)は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されず、例えば0.00μm超とすることができ、通常は0.1μm以上とすることが適当であり、効果を高める観点から0.2μm以上としてもよい。また、下塗り層の厚さは、1.0μm未満とすることが好ましく、0.7μm以下でもよく、0.5μm以下でもよい。一般的にプライマーは化石資源系材料への依存度が高いことから、下塗り層の厚さが大きすぎないことは、後述する粘着シートのバイオマス炭素比を低減する観点から有利となり得る。
【0116】
基材の片面に粘着剤層が設けられた片面粘着シートの場合、基材の粘着剤層非形成面(背面)には、剥離処理剤(背面処理剤)によって剥離処理が施されていてもよい。背面処理層の形成に用いられ得る背面処理剤としては、特に限定されず、シリコーン系背面処理剤やフッ素系背面処理剤、長鎖アルキル系背面処理剤その他の公知または慣用の処理剤を目的や用途に応じて用いることができる。背面処理剤は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
基材(例えば樹脂フィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%以下(例えば20重量%以下、典型的には10重量%以下)程度である。例えば、基材に顔料(例えば白色顔料)を含ませる場合、その含有割合は0.1~10重量%(例えば1~8重量%、典型的には1~5重量%)程度とすることが適当である。
【0118】
基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、一般的には1μm~500μm程度である。基材の取扱い性の観点から、上記基材の厚さは、例えば1.5μm以上であってよく、2μm以上でもよく、3μm以上でもよく、4μm以上でもよく、4.5μm以上でもよい。また、粘着シートの薄型化の観点から、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば150μm以下であってよく、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、20μm以下でもよく、10μm以下でもよく、7μm以下でもよく、5μm未満でもよく、4μm未満でもよい。
【0119】
ここに開示される粘着シート(粘着剤層を含み、基材付き粘着シートではさらに基材を含むが、剥離ライナーは含まない。)の厚さ(総厚)は、特に限定されず、例えば凡そ2μm~1000μmの範囲とすることができる。いくつかの態様において、粘着シートの厚さは、粘着特性等を考慮して、5μm~500μm(例えば10μm~300μm、典型的には15μm~200μm)程度とすることが好ましい。あるいは、薄型化を重視するいくつかの態様において、粘着シートの厚さは、100μm以下(例えば5μm~100μm)であってよく、70μm以下(例えば5μm~70μm)でもよく、45μm以下(例えば5μm~45μm)でもよい。
【0120】
ここに開示される粘着シートは、該粘着シートに含まれる全炭素の40%超がバイオマス由来の炭素であることが好ましい。すなわち、粘着シートのバイオマス炭素比が40%超であることが好ましい。このようにバイオマス炭素比の高い粘着シートを用いることにより、化石資源系材料の使用量を低減することができる。かかる観点において、粘着シートのバイオマス炭素比は高いほど好ましいといえる。粘着シートのバイオマス炭素比は、50%以上であることが好ましく、60%以上でもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよい。粘着シートのバイオマス炭素比の上限は定義上100%であるが、粘着性能を考慮して、いくつかの態様において、上記バイオマス炭素比は、例えば95%以下であってよく、より粘着性能が重視される場合には90%以下でもよく、85%以下でもよい。
なお、粘着剤層からなる基材レス粘着シートでは、該粘着剤層のバイオマス炭素比と粘着シート全体のバイオマス炭素比とは一致する。したがって、ここに開示される粘着シートが基材レス粘着シートである場合、該基材レス粘着シートのバイオマス炭素比は50%以上であり、典型的には50%以上100%未満である。
【0121】
ここに開示される粘着シートは、ステンレス鋼板に対する剥離強度が3N/20mm以上であることが好ましい。上記特性を示す粘着シートは、被着体に強固に接合することから、典型的には再剥離を意図しない態様で好ましく用いられ得る。より信頼性の高い接合を実現する観点から、上記剥離強度は、4N/20mm以上であることがより好ましく、5N/20mm以上であることがさらに好ましく、6N/20mm以上でもよい。いくつかの態様において、上記剥離強度は、12N/20mm以上でもよく、14N/20mm以上でもよく、16N/20mm以上でもよい。上記剥離強度の上限は特に制限されず、一般的には高いほど好ましい。一方、粘着剤のバイオマス炭素比を高めやすくする観点から、いくつかの態様において、上記剥離強度は、例えば50N/20mm以下であってよく、40N/20mm以下でもよく、30N/20mm以下でもよい。以下、上記剥離強度のことを対SUS剥離強度ともいう。
【0122】
上記対SUS剥離強度の測定は、次に述べる方法で行うことができる。すなわち、粘着シートを幅20mm、長さ150mmのサイズにカットして測定サンプルを作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの粘着面を露出させ、その粘着面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS304BA板)に2kgのゴムローラを1往復させて圧着する。これを50℃の環境下に2時間放置した後、23℃、50%RHの環境下にて、引張試験機を使用してJIS Z0237:2000に準じて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離強度(180°引きはがし粘着力)(N/20mm)を測定する。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」ミネベア(株)製)を使用することができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
なお、測定にあたっては、必要に応じて(例えば、基材レス両面粘着シートの場合、基材付き粘着シートであって基材が変形しやすい場合等)、測定対象の粘着シートに適切な裏打ち材を貼り付けて補強することができる。下記の耐熱保持力試験においても同様である。裏打ち材としては、例えば厚さ25μm程度のPETフィルムを用いることができ、後述の実施例ではこの裏打ち材を使用した。
【0123】
ここに開示される粘着シートは、温度80℃、荷重500gの条件で行われる耐熱保持力試験において、少なくとも60分間は試験片が落下しない程度の耐熱保持性を有することが好ましい。かかる耐熱保持性を示す粘着シートは、室温より高い温度域においても良好な保持性能を発揮することができることから、部材の固定、接合等の用途に好ましく用いられ得る。耐熱保持力試験は、次に述べる方法で行うことができる。すなわち、粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの各粘着面を被着体としてのベークライト板(フェノール樹脂板)に、幅10mm、長さ20mmの貼付け面積にて、2kgのローラを1往復させて圧着する。このようにして試験片を貼り付けた被着体を、上記試験片の長さ方向が鉛直方向となるようにして80℃の環境下に垂下し、30分静置する。次いで、上記試験片の自由端に500gの荷重を付与し、JIS Z0237に準じて、該荷重が付与された状態で80℃の環境下に60分間放置する。60分後、試験片がベークライト板から落下しているか否かを評価する。
【0124】
<用途>
ここに開示される粘着剤組成物は、バイオベース度の高いアクリル系粘着剤を含むことから、従来の一般的なアクリル系粘着剤(すなわち、バイオベース度の低いアクリル系年粘着剤)が使用されている各種の用途において該アクリル系粘着剤の代替として用いられることで、化石資源系材料の依存抑制に貢献することができる。ここに開示される粘着シートは、典型的には両面粘着シートの形態で、部材を固定または接合する用途に好ましく利用され得る。例えば、携帯電子機器における部材固定用途に好ましく用いられ得る。
【0125】
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
〔1〕 粘着剤を含む粘着剤組成物であって、
上記粘着剤は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤であり、
上記アクリル系重合物は、アクリル系モノマーを50重量%より多く含むモノマー成分の重合物であり、
上記粘着剤に含まれる全炭素の50%以上はバイオマス由来の炭素である、粘着剤組成物。
〔2〕 上記モノマー成分は、炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを70重量%より多く含む、上記〔1〕に記載の粘着剤組成物。
〔3〕 上記アルキル(メタ)アクリレートは、炭素原子数12以上のバイオマス由来の分岐アルキル基をエステル末端に有する分岐アルキル(メタ)アクリレートを含み、
上記アルキル(メタ)アクリレートのうち上記分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合が20重量%以上である、上記〔2〕に記載の粘着剤組成物。
〔4〕 上記モノマー成分は、上記炭素原子数12以上のバイオマス由来のアルキル基が相違する二種類以上の上記アルキル(メタ)アクリレートを含む、上記〔2〕または〔3〕に記載の粘着剤組成物。
〔5〕 上記モノマー成分は、炭素原子数16以上のバイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを70重量%より多く含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔6〕 上記アルキル(メタ)アクリレートは、炭素原子数16以上のバイオマス由来の分岐アルキル基をエステル末端に有する分岐アルキル(メタ)アクリレートを含み、上記アルキル(メタ)アクリレートのうち上記分岐アルキル(メタ)アクリレートの占める割合が20重量%以上である、上記〔5〕に記載の粘着剤組成物。
〔7〕 上記モノマー成分は、上記炭素原子数16以上のバイオマス由来のアルキル基が相違する二種類以上の上記アルキル(メタ)アクリレートを含む、上記〔5〕または〔6〕に記載の粘着剤組成物。
〔8〕 上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを1重量%より多く含む、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔9〕 上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーを含み、
上記カルボキシ基含有モノマーの含有量は、重量基準で、上記水酸基含有モノマーの含有量の0.5倍以上である、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔10〕 上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマーおよび窒素原子含有環を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも一種の極性基含有モノマーを含む、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔11〕 上記モノマー成分における上記極性基含有モノマーの含有量は、1重量%を超えて40重量%以下である、上記〔10〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔12〕 上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーおよび窒素原子含有環を有するモノマーを含み、上記窒素原子含有環を有するモノマーの含有量は、重量基準で、上記カルボキシ基含有モノマーの含有量の1倍以上20倍以下である、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔13〕 上記粘着剤は、さらに粘着付与剤を含み、
上記粘着付与剤に含まれる全炭素の50%以上はバイオマス由来の炭素である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔14〕 上記粘着剤に含まれる全炭素の60%以上はバイオマス由来の炭素である、上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔15〕 紫外線硬化型粘着剤組成物または溶剤型粘着剤組成物である、上記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【0126】
〔16〕 上記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える、粘着シート。
〔17〕 上記粘着剤層の厚さが3μm以上200μm以下である、上記〔16〕に記載の粘着シート。
〔18〕 基材付きまたは基材レスの両面粘着シートとして構成されている、上記〔16〕または〔17〕に記載の粘着シート。
〔19〕 上記粘着シートに含まれる全炭素の40%超がバイオマス由来の炭素である、上記〔16〕~〔18〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔20〕 ステンレス鋼板に対する剥離強度が3N/20mm以上である、上記〔16〕~〔19〕のいずれかに記載の粘着シート。
【実施例
【0127】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0128】
〔粘着剤組成物の調製〕
(例1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのバイオマス由来C24ゲルベアクリレート92.5部、アクリル酸(AA)7部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)0.5部と、重合溶媒としての酢酸エチルとを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌して重合系内の酸素を除去した。次いで、重合開始剤として0.2部の2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを加え、60℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーの溶液を得た。上記アクリル系ポリマー溶液を、例1に係る粘着剤組成物として使用した。
なお、上記バイオマス由来C24ゲルベアクリレート(表1では「C24」と表示)は、バイオマス由来のC24分岐アルキル基をエステル末端に有するアクリレートであって、より詳しくは、上述した式(1)中のRが水素原子であり、Rがバイオマス由来のC12直鎖アルキル基であり、Rがバイオマス由来のC10直鎖アルキル基である化合物である。
【0129】
(例2)
例1により得られたアクリル系ポリマー溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部当たり、エポキシ系架橋剤(商品名「TETRAD-C」、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン、三菱瓦斯化学社製;以下「エポキシ系架橋剤B」という。)0.1部を加え、均一に混合して粘着剤組成物を得た。
【0130】
(例3)
例1により得られたアクリル系ポリマー溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部当たり、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業社製;以下「イソシアネート系架橋剤A」という。)3部と、粘着付与樹脂としてヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS-145」(テルペンフェノール樹脂、軟化点約145℃、水酸基価70~110mgKOH/g、バイオベース度73%)30部とを加え、均一に混合して粘着剤組成物を得た。
【0131】
(例4)
モノマー成分の組成を表1に示すように変更した他は、例1と同様にしてアクリル系ポリマーの溶液を得た。ここで、表1中の「C16」は、バイオマス由来のC16分岐アルキル基をエステル末端に有するアクリレートであり、より詳しくは、上述した式(1)中のRが水素原子であり、Rがバイオマス由来のC直鎖アルキル基であり、Rがバイオマス由来のC直鎖アルキル基である化合物(バイオマス由来C16ゲルベアクリレート)である。上記アクリル系ポリマー溶液を、本例に係る粘着剤組成物として使用した。
【0132】
(例5)
モノマー成分の組成を表1に示すように変更した他は、例1と同様にしてアクリル系ポリマーの溶液を得た。ここで、表1中の「LA」は、バイオマス由来のC12直鎖アルキル基をエステル末端に有するラウリルアクリレートである。上記アクリル系ポリマー溶液を、本例に係る粘着剤組成物として使用した。
【0133】
(例6)
バイオマス由来C24ゲルベアクリレート(C24)40部、バイオマス由来のC18直鎖アルキル基をエステル末端に有するアクリレート(バイオマス由来C18ゲルベアクリレート;表2では「C18」と表示)59部、AA10部および4HBA1部と、光重合開始剤としての2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IGM Resins社製、商品名「Omnirad 651」)0.05部および1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Resins社製、商品名「Omnirad 184」)0.05部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップ100部に対し、多官能モノマーとしてジペンタエリスチロールヘキサアクリレート(DPHA)(新中村化学工業株式会社製)を0.3部、「Omnirad 651」を0.05部添加し、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0134】
(例7)
バイオマス由来C24ゲルベアクリレート(C24)40部、バイオマス由来C18ゲルベアクリレート(C18)59部、AA6部、4HBA1部およびN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)10部と、光重合開始剤としての「Omnirad 651」0.05部および「Omnirad 184」0.05部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップ100部に対し、DPAHを0.3部、「Omnirad 651」を0.05部添加し、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0135】
(例8)
バイオマス由来C24ゲルベアクリレート(C24)40部、バイオマス由来のC14直鎖アルキル基をエステル末端に有するアクリレート(バイオマス由来C14ゲルベアクリレート;表2では「C14」と表示)59部、AA6部、4HBA1部およびNVP10部と、光重合開始剤としての「Omnirad 651」0.05部および「Omnirad 184」0.05部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップ100部に対し、DPAHを0.05部、「Omnirad 651」を0.05部添加し、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0136】
(例9)
バイオマス由来C24ゲルベアクリレート(C24)60部、バイオマス由来C14ゲルベアクリレート(C14)39部、AA6部、4HBA1部およびNVP10部と、光重合開始剤としての「Omnirad 651」0.05部および「Omnirad 184」0.05部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップ100部に対し、DPAHを0.05部、「Omnirad 651」を0.05部添加し、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0137】
(例10)
バイオマス由来C24ゲルベアクリレート(C24)50部、バイオマス由来C14ゲルベアクリレート(C14)44部、AA7部およびNVP15部と、光重合開始剤としての「Omnirad 651」0.05部および「Omnirad 184」0.05部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップ100部に対し、DPAHを0.05部、「Omnirad 651」を0.05部添加し、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0138】
(例11)
石油由来(すなわち、非バイオマス由来)のイソノニルアクリレート(C9)90部およびAA10部と、光重合開始剤としての「Omnirad 651」0.05部および「Omnirad 184」0.05部とを混合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して部分重合物(モノマーシロップ)を作製した。得られたモノマーシロップ100部に対し、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート♯295」)を0.2部、「Omnirad 651」を0.05部添加し、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0139】
〔粘着シートの作製〕
例1~5の溶剤型粘着剤組成物を用いて、以下の手順で粘着シートを作製した。
すなわち、ポリエステルフィルムの片面がシリコーン系剥離処理剤による剥離面となっている厚さ38μmの剥離ライナー(三菱ポリエステル製、ダイアホイルMRF38)の剥離面に、各例に係る粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、ポリエステルフィルムの片面がシリコーン系剥離処理剤による剥離面となっている厚さ25μmの剥離ライナー(三菱ポリエステル製、ダイアホイルMRF25)の剥離面を貼り合わせた。このようにして、粘着剤層の両面が上記2枚のポリエステル製剥離ライナーで保護された形態の、例1~5に係る基材レス両面粘着シートを得た。
【0140】
例6~11のUV硬化型粘着剤組成物を用いて、以下の手順で粘着シートを作製した。
すなわち、ポリエステルフィルムの片面がシリコーン系剥離処理剤による剥離面となっている厚さ38μmの剥離ライナー(三菱ポリエステル製、ダイアホイルMRF38)の剥離面に、上記で調製した粘着剤組成物を、最終的な厚さが表2に示す値となるように塗布して塗布層を形成した。次いで、上記塗布層の表面に、ポリエステルフィルムの片面がシリコーン系剥離処理剤による剥離面となっている厚さ38μmの剥離ライナー(三菱ポリエステル製、ダイアホイルMRE38)を、当該フィルムの剥離面が上記塗布層側になるようにして被せた。これにより上記塗布層を酸素から遮断した。このようにして得られた塗布層を有するシートにケミカルライトランプ((株)東芝製)を用いて照度5mW/cmの紫外線を360秒間照射することにより、上記塗布層を硬化させて粘着剤層を形成した。このようにして、粘着剤層の両面が上記2枚のポリエステル製剥離ライナーで保護された形態の、例6~11に係る基材レス両面粘着シートを得た。なお、上記照度の値は、ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR-T1」、受光部型式UD-T36)による測定値である。
【0141】
〔測定および評価〕
各例により得られた粘着シートの剥離強度および例6~11により得られた粘着シートの耐熱保持性能を、上述の方法で測定した。また、各例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)について、粘着剤層を構成する粘着剤のバイオベース度を、ASTM D6866に準拠して測定した。結果を表1、2に示す。表2の耐熱保持性能の欄の「G」は、60分後に試験片が落下していなかった(すなわち、耐熱保持性能が良好であった)ことを示している。なお、例7~11の粘着シートについて、荷重を500gから1kgに変更して耐熱保持力試験を行ったところ、いずれも60分後に試験片が落下していなかったことが確認された。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
表1、2に示されるように、バイオベース度の高いアクリル系粘着剤により構成された粘着剤層を備える例1~10の粘着シートは、粘着剤層の厚さの違いを考慮して、粘着剤のバイオベース度がゼロである例11の粘着シートと遜色のない粘着性能を示した。
【0145】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1,2,3 粘着シート
10 支持基材
10A 第一面
10B 第二面(背面)
21 粘着剤層(第一粘着剤層)
21A 粘着面(第一粘着面)
21B 第二粘着面
22 粘着剤層(第二粘着剤層)
22A 粘着面(第二粘着面)
31,32 剥離ライナー
100,200,300 剥離ライナー付き粘着シート
図1
図2
図3