(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】電磁比例弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
F16K31/06 305Z
F16K31/06 305B
F16K31/06 305J
(21)【出願番号】P 2019047674
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕平
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実公昭58-30969(JP,Y2)
【文献】特開2005-304298(JP,A)
【文献】特開2017-155934(JP,A)
【文献】特開平9-229209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能なスプールを有し、前記スプールの移動により制御対象への制御圧を制御する弁ユニットと、
中空部を有するハウジングと、
前記中空部内に設けられたソレノイドコイルと、
前記中空部内に設けられており前記ソレノイドコイルへの励磁電流の印加により前記軸方向に移動することで前記スプールを駆動する駆動部材と、
前記ハウジングの底壁の外表面に前記軸方向と直交する径方向に延びるように形成された溝に設けられており、前記軸方向に対して傾斜するピン傾斜面を有し、
前記径方向において前記駆動部材と接しない第1位置から前記第1位置よりも前記径方向の内方にあり前記ピン傾斜面が前記駆動部材と接する第2位置へ移動可能であるピンと、
を備える電磁比例弁。
【請求項2】
前記駆動部材が前記ピン傾斜面と相補的な形状の駆動部材傾斜面を有し、前記ピンが前記第2位置にある場合に前記ピン傾斜面が前記駆動部材傾斜面に接している、
請求項
1に記載の電磁比例弁。
【請求項3】
軸方向に移動可能なスプールを有し、前記スプールの移動により制御対象への制御圧を制御する弁ユニットと、
中空部を有するハウジングと、
前記中空部内に設けられたソレノイドコイルと、
前記中空部内に設けられており前記ソレノイドコイルへの励磁電流の印加により前記軸方向に移動することで前記スプールを駆動する駆動部材と、
前記ハウジングの底壁の外表面に前記軸方向と直交する径方向に延びるように形成された溝に設けられており、前記径方向において、前記駆動部材と接しない第1位置から前記第1位置よりも前記径方向の内方にあり前記駆動部材と接する第2位置へ移動可能であり、前記第2位置において前記駆動部材に対して前記軸方向への推力を作用させるピンと、
を備える電磁比例弁。
【請求項4】
前記ハウジングの
前記底壁の開口を閉塞するコネクタを備え、
前記ピンは、前記コネクタと前記ハウジングとの間に設けられる、
請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の電磁比例弁。
【請求項5】
前記コネクタは、前記軸方向と平行に延びる平坦面を有し、
前記ピンは、前記平坦面に設けられる、
請求項
4に記載の電磁比例弁。
【請求項6】
前記コネクタは、前記ソレノイドコイルに励磁電流を印加するためのケーブルの一部を収容している、
請求項
4又は請求項
5に記載の電磁比例弁。
【請求項7】
前記ピンは、前記コネクタから前記径方向外方に突出している凸部を有する、
請求項
4から請求項
6のいずれか1項に記載の電磁比例弁。
【請求項8】
請求項
1から請求項
7のいずれか1項に記載の電磁比例弁を備える方向切替弁。
【請求項9】
請求項
8に記載の方向切替弁を備える建設機械。
【請求項10】
軸方向に移動可能なスプールを有し、前記スプールの移動により制御対象への制御圧を制御する弁ユニットと、
中空部を有するハウジングと、
前記中空部内に設けられたソレノイドコイルと、
前記中空部内に設けられており前記ソレノイドコイルへの励磁電流の印加により前記軸方向に移動することで前記スプールを駆動する駆動部材と、
前記ハウジングの開口を閉塞するコネクタと、
前記ハウジングの底壁の外表面に前記軸方向と直交する径方向に延びるように形成された溝内であって前記コネクタと前記ハウジングとの間に設けられ、前記軸方向に対して傾斜するピン傾斜面を有し、
前記径方向において前記駆動部材と接しない第1位置から前記第1位置よりも前記径方向の内方にあり前記ピン傾斜面が前記駆動部材と接する第2位置へ移動可能であるピンと、
その少なくとも一部が前記コネクタに収容されている前記ソレノイドコイルに励磁電流を印加するためのケーブルと、
を備える電磁比例弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁比例弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドアクチュエータへ印加する励磁電流を調整してスプールの位置を移動させることで制御対象の油圧機器へ供給するパイロット油の給排を制御する電磁比例弁が知られている。かかる電磁比例弁は、特開2017-020541号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
電磁比例弁では、ソレノイドアクチュエータを制御するための電気系統に不具合が起きると、スプールの移動が困難または不能となることがある。このため、電磁比例弁に手動でスプール位置を変更するための手動ピンが設けられることがある。このような手動ピンを備える電磁比例弁は、特開2000-274547号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-020541号公報
【文献】特開2000-274547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示されているように、ソレノイドコイルに電力を供給するための電力ケーブルは、当該ソレノイドコイルを収容するハウジングの側面に配置されることがある。電磁比例弁は、方向制御弁に制御圧を供給するパイロット弁として用いられることがある。建設機械においては複数の方向制御弁が互いの軸方向が平行となるように配置されるため、電力ケーブルがハウジングの側面から外部に引き出されると、電磁比例弁の制御圧で作動する方向制御弁をコンパクトに配置することが難しくなる。
【0006】
このため、電力ケーブルをハウジングの側面ではなく軸方向の端にある端面から引き出すことが考えられる。しかしながら、電力ケーブルをハウジングの軸方向の端面から引き出すと、電力ケーブルを引き出す位置が手動ピンの配置位置と干渉してしまう。このように、スプール位置を手動で調整するための手動ピンを備える従来の電磁比例弁においては、電力ケーブルをハウジングの端面から引出すことが難しいという問題がある。
【0007】
本開示は、上述した従来の問題の少なくとも一部を緩和又は解決することができる新規の電磁比例弁を提供することを目的とする。本開示のより具体的な目的の一つは、手動でスプールを駆動するためのマニュアルピンを備える電磁比例弁において、軸方向の端部から電力ケーブルを引出せるようにすることである。本開示の上記以外の目的は、本明細書の記載全体を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による駆動装置は、ハウジングの中空部内に設けられたソレノイドコイルと、前記中空部内に設けられており、前記ソレノイドコイルへの励磁電流の印加により軸方向に移動可能なスプールを駆動する駆動部材と、前記軸方向に対して傾斜するピン傾斜面を有し、前記軸方向と直交する径方向において前記駆動部材と接しない第1位置から前記第1位置よりも前記径方向の内方にあり前記ピン傾斜面が前記駆動部材と接する第2位置へ移動可能であるピンと、を備える。
【0009】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、軸方向に移動可能なスプールを有し、前記スプールの移動により制御対象への制御圧を制御する弁ユニットと、中空部を有するハウジングと、前記中空部内に設けられたソレノイドコイルと、前記中空部内に設けられており前記ソレノイドコイルへの励磁電流の印加により前記軸方向に移動することで前記スプールを駆動する駆動部材と、前記軸方向に対して傾斜するピン傾斜面を有し、前記軸方向と直交する径方向において前記駆動部材と接しない第1位置から前記第1位置よりも前記径方向の内方にあり前記ピン傾斜面が前記駆動部材と接する第2位置へ移動可能であるピンと、を備える。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記駆動部材が前記ピン傾斜面と相補的な形状の駆動部材傾斜面を有し、前記ピンが前記第2位置にある場合に前記ピン傾斜面が前記駆動部材傾斜面に接している。
【0011】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、軸方向に移動可能なスプールを有し、前記スプールの移動により制御対象への制御圧を制御する弁ユニットと、中空部を有するハウジングと、前記中空部内に設けられたソレノイドコイルと、前記中空部内に設けられており前記ソレノイドコイルへの励磁電流の印加により前記軸方向に移動することで前記スプールを駆動する駆動部材と、前記軸方向と直交する径方向において、前記駆動部材と接しない第1位置から前記第1位置よりも前記径方向の内方にあり前記駆動部材と接する第2位置へ移動可能であり、前記第2位置において前記駆動部材に対して前記軸方向への推力を作用させるピンと、を備える。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記ハウジングの開口を閉塞するコネクタを備え、前記ピンは、前記コネクタと前記ハウジングとの間に設けられる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記コネクタは、前記軸方向と平行に延びる平坦面を有し、前記ピンは、前記平坦面に設けられる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記コネクタは、前記ソレノイドコイルに励磁電流を印加するためのケーブルの一部を収容している。
【0015】
前記ピンは、前記コネクタから前記径方向外方に突出している凸部を有する。
【0016】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、軸方向に移動可能なスプールを有し、前記スプールの移動により制御対象への制御圧を制御する弁ユニットと、中空部を有するハウジングと、前記中空部内に設けられたソレノイドコイルと、前記中空部内に設けられており前記ソレノイドコイルへの励磁電流の印加により前記軸方向に移動することで前記スプールを駆動する駆動部材と、前記ハウジングの開口を閉塞するコネクタと、前記コネクタと前記ハウジングとの間に設けられ、前記軸方向に対して傾斜するピン傾斜面を有し、前記軸方向と直交する径方向において前記駆動部材と接しない第1位置から前記第1位置よりも前記径方向の内方にあり前記ピン傾斜面が前記駆動部材と接する第2位置へ移動可能であるピンと、その少なくとも一部が前記コネクタに収容されている前記ソレノイドコイルに励磁電流を印加するためのケーブルと、を備える。
【0017】
本発明の一実施形態による方向切替弁は、上記のいずれかの電磁比例弁を備える。
【0018】
本発明の一実施形態による建設機械は、上記の方向切替弁を備える。
【発明の効果】
【0019】
本開示によって、手動でスプールを駆動するためのマニュアルピンを備える電磁比例弁において、軸方向の端部から電力ケーブルを引出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による電磁比例弁1の一部の軸方向に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図1においては、ピン19がプランジャ16と接しない第1位置にある。
【
図2】本発明の一実施形態による電磁比例弁1の一部の軸方向に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図2においては、ピン19がプランジャ16に接する第2位置にある。
【
図3】
図1の電磁比例弁1の端面を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による電磁比例弁に備えられる駆動部材及びピンを模式的に示す図である。
【
図5】
図1の電磁比例弁を備える方向切替弁を説明するブロック図である。
【
図6】
図5の方向切替弁を備える建設機械を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。各図面においては、説明の都合上、一部の構成要素が省略されることがある。
【0022】
本発明の一実施形態による電磁比例弁1について、
図1から
図3を参照して説明する。電磁比例弁1は、駆動装置10と、弁ユニット20と、を備える。駆動装置10と弁ユニット20とは中心軸Aに沿って配置されている。本明細書において、中心軸Aに沿う方向を単に「軸方向」ということがある。本明細書において前後に言及するときには、文脈上別に解される場合を除き、
図1に示されている前後方向を基準とする。よって、弁ユニット20は、駆動装置10の前方に配置されている。
【0023】
電磁比例弁1は、油圧源に油圧機器を連通させ当該油圧源から当該油圧機器に油を供給する供給位置と、油を貯留するタンクに油圧機器を連通させて当該油圧機器から油をタンクに排出する排出位置、及び、油圧機器を油圧源およびタンクから遮断する中立位置の三つの状態のいずれかに維持される。
【0024】
弁ユニット20は、中心軸Aに沿う軸方向に沿って延びる中空の弁本体21と、この弁本体21の内部に設けられたスプール22と、を備える。弁本体21は、圧力源に連通する圧力源ポートと、タンクに連通するタンクポートと、制御対象の油圧機器に制御圧を出力する制御ポートと、を有する。ポートについてはいずれも図示が省略されている。
【0025】
駆動装置10は、スプール22に軸方向への推力を作用させることにより、スプール22の軸方向における位置を制御する。駆動装置10は、中空のハウジング11と、コネクタ12と、ハウジング11の中空部内に設けられたソレノイドコイル14と、ソレノイドコイル14により駆動されるプランジャー16と、プランジャー16をガイドする円筒部材15と、プランジャー16の前端から前方に延びる駆動ロッド17と、固定鉄心18と、を備える。プランジャー16及び駆動ロッド17もハウジング11の中空部内に設けられている。
【0026】
ハウジング11は、中心軸A方向に沿って延びる有底の円筒形状を有する。ハウジング11は、その前方が弁ユニット20に向かって開口している。ハウジング11の前方の開口は、固定鉄心18及びそれ以外のシール部材により封止されている。ハウジング11の底壁11bは、軸方向に延びる貫通孔を有する。この貫通孔は、コネクタ12により閉塞されている。
【0027】
円筒部材15は、軸方向に延びる有底の円筒形状を有する。円筒部材15の内径はプランジャー16の大径部16aの外径とほぼ等しい。円筒部材15は、その側面に、ピン19を受け入れる貫通孔15aを有する。
【0028】
コネクタ12は、
図3に示されているように、中心軸Aの方向から視た視点でほぼ長方形の形状を有する上壁12aと、上壁12aから軸方向に離間して配置された底壁12bと、この上壁12aと底壁12bとを接続する4つの側壁12cと、を有する。これらの上壁12a、底壁12b、及び側壁12cにより、コネクタ12の内部空間が画定される。上壁12aは貫通孔を有する。側壁12cは概ね平坦である。側壁12cは平坦な平坦面を有する。コネクタ12は、その内部空間にケーブル13の一部を収容する。ケーブル13は、図示を省略しているが、ソレノイドコイル14と電気的に接続される。ソレノイドコイル14は、不図示のコントローラからケーブル13を介して入力される制御信号に基づいて励磁される。コネクタ12は、軸方向に延びる貫通孔を有しており、ケーブル13はこの貫通孔から外部に引き出される。
【0029】
プランジャー16及び駆動ロッド17は、いずれも中心軸A上に配置されている。プランジャー16及び駆動ロッド17は、一体のワンピース構造を有していてもよい。プランジャー16及び駆動ロッド17は、軸方向に移動可能に設けられている。駆動ロッド17は、プランジャー16から軸方向前方に延びている。駆動ロッド17の先端(前端)は、スプール22の基端(後端)と接している。スプール22は、戻りバネ(不図示)により軸方向後方へ常時付勢されているため、駆動ロッド17とスプール22との接触が維持される。
【0030】
プランジャー16の少なくとも一部は磁性体から成る。プランジャー16は、少なくともその一部がソレノイドコイル14の径方向内側に配置される。プランジャー16は、ソレノイドコイル14により駆動される。すなわち、プランジャー16は、ソレノイドコイル14によって駆動されることにより、軸方向へ移動することができる。具体的には、ソレノイドコイル14に励磁電流を印加することにより、プランジャー16が固定鉄心18に吸着される。これにより、プランジャー16及び駆動ロッド17が軸方向の前方へ移動してスプール22へ軸方向前方への推力を作用させる。このようにしてプランジャー16及び駆動ロッド17によりスプール22が駆動される。本明細書においては、電気的な制御によりスプール22を駆動する部材を駆動部材という。プランジャー16及び駆動ロッド17の軸方向への移動によりスプール22が駆動されるので、プランジャー16及び駆動ロッド17は駆動部材の例である。駆動部材は、プランジャー16及び駆動ロッド17以外の部材を含んでもよい。後述するピン19は、手動で動かすものであり、電気的に駆動されないため、駆動部材には含まれない。
【0031】
プランジャー16及び駆動ロッド17により駆動されたスプール22は、軸方向前方へ移動する。ソレノイドコイル14への励磁電流の供給を絶てば、付勢部材からの不勢力により、スプール22は、プランジャー16及び駆動ロッド17とともに軸方向後方へ移動する。このように、ソレノイドコイル14へ励磁電流を印加することによりスプール22の軸方向における位置を変えることができ、これにより、電磁比例弁1を供給位置、排出位置、又は中立位置のいずれかに切り替えることができる。
【0032】
ハウジング11の底壁11bは、その外表面の一部に溝11cを有する。溝11は、底壁11bの外表面において径方向に延びている。コネクタ12の4つの側壁12cのうちの一つには、ピンを受け入れる貫通孔12c1が設けられている。ピン19は、溝11内に設けられる。ピン19の一部は、ハウジング11の外部空間から貫通孔12c1を通過してハウジング11の内部空間まで延びる。このように、ピン19は、ハウジング11とコネクタ12との間に設けられている。ピン19は、中心軸Aからの視点において側壁12cの外表面よりも径方向外側に突出する凸部19aを有する。
【0033】
ピン19は、溝11に沿って径方向に移動することができる。
図1は、径方向の第1位置に位置しているピン19を示しており、
図2は径方向の第2位置に位置しているピン19を示している。ピン19の第2位置は、第1位置よりも径方向内方の位置である。
図1に示されているように、ピン19は、第1位置においてはプランジャー16と接しない。ピン19は、第1位置に位置する場合には、プランジャー16のストローク範囲に干渉しない位置に設けられる。
図2に示されているように、ピン19は、第1位置よりも径方向内方にある第2位置に位置している場合に、プランジャー16と接している。ピン19は、中心軸Aに対して傾斜するピン傾斜面19bを有する。ピン傾斜面19bは、ピン19の径方向内側の面である。ピン傾斜面19bは、ピン19の面のうち径方向に平行で軸方向に垂直な第1径方向面19cと第2径方向面19dとを接続している。第1径方向面19cは、第2径方向面19dよりも軸方向の後方にある。ピン傾斜面19aは、第1径方向面19cの径方向の長さが第2径方向面19dの径方向の長さよりも長くなる向きに傾斜している。
図2に示されているピン19の位置は、第2位置の例である。第2位置は、ピン19がプランジャー16に接している位置である。ピン19が第1位置から径方向内側に押し込まれると、径方向の接触開始位置においてピン傾斜面19aがプランジャー16に最初に接する。第2位置は、この接触開始位置よりも径方向内方にある位置を意味する。
【0034】
ピン19がピン傾斜面19aにおいてプランジャー16の先端(後端)と接しているときに、ピン19をさらに径方向内方に押し込むことにより、ピン19からプランジャー16に対して軸方向の推力を作用させることができる。したがって、電気系統の不具合があってソレノイドコイル14によるプランジャー16の駆動が不可能となっても、ピン19を例えば操作者の操作により径方向内方に押し込むことによりプランジャー16及び駆動ロッド17を軸方向に移動させることができ、その結果、スプール22の位置を切り替えることができる。
【0035】
図4を参照して、別の実施形態における駆動部材及び当該駆動部材と接するピンについて説明する。
図4は、本発明の別の実施形態による電磁比例弁に備えられる駆動部材及びピンを模式的に示す図である。
図4に示されている駆動部材は、プランジャー116とプランジャー116の前端から前方に延びる駆動ロッド117とを有している。プランジャー116は、その後端にピン119のピン傾斜面と相補的な形状の駆動部材傾斜面116aを有する。図示の実施形態では、駆動部材傾斜面116aは、ピン傾斜面119aとは同じ角度で中心軸Aに対して傾斜している。径方向内方に第2位置まで押し込まれたピン119は、そのピン傾斜面119aにおいてプランジャー116の駆動部材傾斜面116aと接する。ピン119のピン傾斜面119aとプランジャー116の駆動部材傾斜面116aとが接しているときにピン119をさらに径方向内方に押し込むことにより、ピン119からプランジャー116に対して軸方向の推力を作用させることができる。
【0036】
続いて、電磁比例弁1の動作について説明する。ソレノイドコイル14が励磁されていない場合、スプール22は排出位置に維持される。この状態から、ソレノイドコイル14が励磁されるとプランジャー16が駆動され、このプランジャー16が駆動ロッド17とともに軸方向前方へ移動する。このとき、駆動ロッド17の前端はスプール22と接しているため、スプール22に軸方向前方への推力が作用する。この推力によって、スプール22は、排出位置から中立位置に到達する。ソレノイドコイル14にさらに大きな励磁電流が印加されると、プランジャー16及び駆動ロッド17がさらに軸方向前方へ移動する。この駆動ロッド27から受ける推力により、スプール22は供給位置に到達し、制御対象の油圧機器に制御圧が供給される。
【0037】
電気系統の不具合やそれ以外の理由により、ソレノイドコイル14への励磁電流の印加によるプランジャー16の駆動ができない場合には、操作者によって行われるピン19又はピン119を径方向内方に押し込む操作により、プランジャー16が軸方向に移動させられ、これによりスプール22の位置を切り替えられる。
【0038】
続いて、
図5及び
図6を参照して、電磁比例弁1のアプリケーションの例について説明する。
図5は、電磁比例弁1を備える方向切替弁100を説明するブロック図である。図示のように、方向切替弁100は、電磁比例弁1と、電磁比例弁1から供給される制御圧により作動する弁構造体2と、を備える。弁構造体2は、メインスプールを備えており、電磁比例弁1から出力される制御圧によって当該メインスプールの位置を切り替えることにより、不図示の油圧シリンダへの作動油の供給量を調整する。
【0039】
図6は、方向切替弁100を備える建設機械200を説明するブロック図である。建設機械200は、方向切替弁100を備える。建設機械は、例えば油圧により作動する油圧ショベルである。建設機械200は、様々な油圧シリンダを備える。建設機械200が備える油圧シリンダには、ブームを駆動するブームシリンダ、アームを駆動するアームシリンダ、バケットを駆動するバケットシリンダ、及びこれら以外の油圧シリンダが含まれる。方向切替弁100は、建設機械200に備えられる油圧シリンダに対する作動油の供給量を制御する。
【0040】
続いて、上記実施形態が奏する作用効果について説明する。上記の実施形態による電磁比例弁1は、軸方向に延びる中空のハウジング11と、ハウジング11内に軸方向に移動可能に設けられ、スプール22を駆動するプラジャー16及び駆動ロッド17と、軸方向に対して傾斜するピン傾斜面を有するピン19と、を備える。ピン19は、操作者の操作によって、径方向においてピン19とプランジャー16とが接しない第1位置からこの第1位置よりも径方向の内方にありピン傾斜面19bがプランジャー16と接する第2位置へ移動可能である。したがって、電気系統の不具合などの理由によりプランジャーが電気的に制御できなくなってもピン19の操作によりスプール22の位置を切り替えることができる。このピン19の移動方向が軸方向に垂直な径方向であるため、ピン19と軸方向に引き出されるケーブル13との干渉の回避が容易となる。
【0041】
上記の実施形態において、プランジャー116は、ピン傾斜面119aと相補的な形状の駆動部材傾斜面116aを有している。これにより、ピン119がプランジャー116に接する際に面接触となるので、ピン119及びプランジャー116の破損を抑制できる。
【0042】
上記の実施形態において、コネクタ12の側壁12cは、軸方向と平行に延びる平坦面を有し、ピン19は、当該平坦面に設けられる。ハウジング11の側面は円筒形状を有することが多いため、ピン19をハウジング11の側面に設けることは困難な場合が多い。上記の実施形態では、ピン19は、コネクタ12の側壁12cの平坦面に取り付けられるので、ピン19の取り付けが容易となる。
【0043】
ピン19は、コネクタ12から径方向外方に突出している凸部19aを有する。これにより、操作者がピン19を容易に操作することができる。
【0044】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、配置、及び工程は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、配置、及び工程を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0045】
本明細書及び添付図面で明示された駆動装置10及び弁ユニット30の構成部材の具体的な形状、配置、機能、及び材料は例示である。本発明の趣旨に反しない限り、駆動装置10及び弁ユニット30の各構成部材の形状、配置、機能、及び材料は、適宜変更され得る。例えば、ピン19の径方向内方への移動は、直線的な移動ではなくともよい。例えば、ピン19,119は、軸周りに公転することで径方向内方へ移動してもよい。ピン19,119の形状は、本明細書において明示的に示されたものには限られない。ピン19,119は、プランジャー16,116に接している位置からさらに径方向内方へ押されたときにプランジャー16,116に対して軸方向の推力を与えることができる任意の形状をとり得る。
【0046】
駆動装置10は、ソレノイドコイル23に励磁電流を流した際に、駆動ロッド27が軸方向後方へ移動するように駆動ロッドを駆動してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 電磁比例弁
10 駆動装置
12 コネクタ
13 ケーブル
14 ソレノイドコイル
16,116 プランジャー
17 駆動ロッド
19,119 ピン
19a 凸部
19b,119b ピン傾斜面
20 弁ユニット
22 スプール
116a 駆動部材傾斜面