(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】無線通信ユニット及びそれを用いた無線ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 76/10 20180101AFI20231117BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20231117BHJP
H04W 92/14 20090101ALI20231117BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W88/08
H04W92/14
(21)【出願番号】P 2019091671
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】江川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】新井 国充
(72)【発明者】
【氏名】前田 智志
(72)【発明者】
【氏名】勝又 貞行
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0141561(US,A1)
【文献】特開2015-216564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、第一の別の無線通信ユニットである上流ユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)と上流側のユニット間無線ベアラ(以下、上流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能な中継無線通信部とを備え、
前記無線基地局部は、第二の別の無線通信ユニットである下流ユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)と下流側のユニット間無線ベアラ(以下、下流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能とされ、
前記EPC機能部は下流ユニット間無線ベアラ設定要求を前記無線基地局部に送信する一方、前記無線基地局部は前記下流ユニット間無線ベアラ設定要求が示す条件に従い前記下流中継無線通信部とともに前記下流ユニット間無線ベアラを構築するものであり、
前記EPC機能部は端末用無線ベアラ設定要求を前記無線基地局部に送信する一方、前記無線基地局部は前記端末用無線ベアラ設定要求が示す条件に従い前記移動端末とともに前記端末用無線ベアラを構築するものであり、
前記中継無線通信部は、前記上流ユニットのEPC機能部(以下、上流EPC機能部という)が発行する上流ユニット間無線ベアラ設定要求を受信し、該上流ユニット間無線ベアラ設定要求が示す条件に従い前記上流無線基地局部とともに前記上流ユニット間無線ベアラを構築するものであり、
前記EPC機能部は、前記無線基地局部の通信エリア内にて該無線基地局に前記端末
用無線ベアラを介して接続中の複数の前記移動端末について、それら接続中の移動端末のノード特定情報を登録する接続中端末ノード登録部を備え、前記無線基地局部から転送されてくるIPパケットの送信先ノードを前記接続中端末ノード登録部の登録内容と照合し、前記送信先ノードが、前記接続中端末ノード登録部に登録されたノード特定情報のいずれかに対応する移動端末を示す場合には、前記IPパケットを該移動端末に前記無線基地局部にて折り返す形で転送する一方、前記送信先ノードが前記接続中端末ノード登録部に登録されていないノードを示す場合には前記IPパケットを前記中継無線通信部及び前記無線基地局部の少なくともいずれかから前記無線通信ユニット外の送信先に転送する制御を行な
い、
前記EPC機能部と前記中継無線通信部との間に、前記EPC機能部と外部ネットワークとの間のIPパケットの送受信を中継するルータが設けられており、前記EPC機能部は、前記IPパケットの送信先が前記ルータを介して接続される外部ネットワーク上のノードである場合に該IPパケットを前記ルータに転送することを特徴とする無線通信ユニット。
【請求項2】
前記接続中端末ノード登録部は前記接続中の移動端末のノード特定情報として該移動端末のIPアドレスを登録するものである請求項1記載の無線通信ユニット。
【請求項3】
前記EPC機能部は、前記送信先ノードが前記接続中端末ノード登録部に登録されていないノードを示す場合には前記IPパケットを前記中継無線通信部及び前記無線基地局部の双方に転送するものであり、
前記中継無線通信部は、前記EPC機能部から転送される前記IPパケットを、前記上流ユニット間無線ベアラを介して前記上流無線基地局部に上りパケットとして転送する一方、前記無線基地局部は前記EPC機能部から転送される前記IPパケットを、前記下流ユニット間無線ベアラを介して
、前記第二の別の無線通信ユニットである下流ユニットの無線基地局部に下りパケットとして転送する請求項2記載の無線通信ユニット。
【請求項4】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、前記移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、前記EPC機能部に有線接続されるとともに、第一の別の無線通信ユニットである上流ユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)と上流側のユニット間無線ベアラ(以下、上流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能な中継無線通信部とを備え、前記無線基地局部は、第二の別の無線通信ユニットである下流ユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)と下流側のユニット間無線ベアラ(以下、下流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能とされ、前記EPC機能部は端末用無線ベアラ設定要求を前記無線基地局部に送信する一方、前記無線基地局部は前記端末用無線ベアラ設定要求が示す条件に従い前記移動端末とともに前記端末用無線ベアラを構築するものであり、前記中継無線通信部は、前記上流ユニットのEPC機能部(以下、上流EPC機能部という)が発行する上流ユニット間無線ベアラ設定要求を受信し、該上流ユニット間無線ベアラ設定要求が示す条件に従い前記上流無線基地局部とともに前記上流ユニット間無線ベアラを構築するものであり、前記EPC機能部は、前記無線基地局部の通信エリア内にて該無線基地局に前記端末
用無線ベアラを介して接続中の複数の前記移動端末について、それら接続中の移動端末のノード特定情報を登録する接続中端末ノード登録部を備え、前記無線基地局部から転送されてくるIPパケットの送信先ノードを前記接続中端末ノード登録部の登録内容と照合し、前記送信先ノードが、前記接続中端末ノード登録部に登録されたノード特定情報のいずれかに対応する移動端末を示す場合には、前記IPパケットを該移動端末に前記無線基地局部にて折り返す形で転送する一方、前記送信先ノードが前記接続中端末ノード登録部に登録されていないノードを示す場合には前記IPパケットを前記中継無線通信部及び前記無線基地局部の少なくともいずれかから前記無線通信ユニット外の送信先に転送する制御を行なうように各々構成された無線通信ユニットが2以上順次隣接配置された無線通信ユニット群からなり、
該無線通信ユニット群は、互いに隣接する無線通信ユニット対の基地局セルが一部重なる位置関係で前記ユニット間無線ベアラによりカスケード接続されるとともに、
前記無線通信ユニット対の一方に接続された移動端末と他方に接続された移動端末とが、前記無線通信ユニット対及び該無線通信ユニット対を接続す
るユニット間ベアラを介して前記IPパケットの送受信を行な
い、
前記ユニット間無線ベアラによりカスケード接続された2以上の前記無線通信ユニットの各前記EPC機能部は、個々の無線通信ユニットの前記無線基地局部に接続中の前記移動端末のノード特定情報を、前記ユニット間無線ベアラを経由して他の無線通信ユニットに転送することにより、2以上の前記無線通信ユニット間にて接続中の前記移動端末のノード特定情報が共有化されるようになっており、
前記EPC機能部は共有化された前記ノード特定情報に基づき、前記接続中端末ノード登録部として前記IPパケットの転送テーブルを作成し、該転送テーブルを参照して前記IPパケットの転送制御を行ない、
2以上の前記無線通信ユニットの少なくともいずれかにおいて、前記EPC機能部と前記中継無線通信部との間に、前記EPC機能部と外部ネットワークとの間のIPパケットの送受信を中継するルータが設けられており、
該ルータが設けられた無線通信ユニットの前記EPC機能部は、転送されてくるIPパケットの送信先ノードが前記転送テーブルに含まれていないノードを示す場合に、前記IPパケットを、前記ルータを介して前記外部ネットワークに転送することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項5】
前記ユニット間無線ベアラによりカスケード接続された3以上の前記無線通信ユニットからなり、前記無線通信ユニット群の1つの無線通信ユニットをなす第一の無線通信ユニットに接続された移動端末と、前記無線通信ユニット群において前記第一
の無線通信ユニットに対し1以上の中間の無線通信ユニットを隔てて配置された第二の無線通信ユニットに接続された移動端末とが、前記第一の無線通信ユニット、前記中間の無線通信ユニット及び前記第二の無線通信ユニットと、それら無線通信ユニットを接続する前記ユニット間ベアラを介して前記IPパケットの送受信を行なう請求項
4記載の無線ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットに関するものであり、複数ユニット間の連携動作を容易に実現でき、広域エリアのカバーリング対応にも好適に使用可能な無線通信ユニットと、それを用いた無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP仕様に基づく高速通信規格(例えば、LTE(Long Term Evolution)あるいはWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)の無線通信ネットワークにおいては、無線通信アクセス網を収容するEPC(Evolved Packet Core)をエリア内に構築することが必須であり、移動端末が接続する無線基地局は該EPCを介してIPパケットの送受信制御を受ける。一方、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットPCなどの移動端末の普及に伴い、海上や過疎地域、あるいは災害等により通信機能が喪失した地域など、EPCや無線基地局がインフラ的に整備されていない地域(以下、「無線非整備地域」と称する)においても、移動端末を利用したいという要望が高まっている。
【0003】
こうした要望に応えるべく、例えば特許文献1には、無線基地局とEPC機能部とを一体化した複合型の無線通信ユニットが提案されている。このような無線通信ユニットを上記のような無線非整備地域に設置することで、該ユニットに含まれる無線基地局部により小規模ながら通信可能エリアが構築され、ユニット内のEPC機能部が通信制御を行なう形で、前記無線基地局部に接続する複数の移動端末間で無線通信を行なうことが可能となる。しかし、無線通信ユニット1台でカバーできる通信エリアは狭く、また、通信容量も限られている。この場合、無線非整備地域内に無線通信ユニットを複数台配置することも考えられるが、ユニット間での通信連携が考慮されておらず、異なる複合装置に接続された移動端末同士の通信ができない、という欠点がある。また、移動端末の接続台数が増えたり、動画データなどの大容量データの送受信がなされたりした場合など、エリア内の通信トラフィックが過剰となった場合は輻輳などの問題を生じやすい問題がある。
【0004】
そこで、特許文献2~7には、複数の無線通信ユニットを連携させ、移動端末からの通信トラフィックを各無線通信ユニットに分散して転送処理する構成が開示されている。具体的には、特許文献5の
図6に、移動端末との通信をオフロードさせるための無線通信ユニット同士の連携経路として、衛星装置を経由する形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016- 12841号公報
【文献】特開2018-137661号公報
【文献】特開2018-137662号公報
【文献】特開2018-137663号公報
【文献】特開2018-137664号公報
【文献】特開2018-137665号公報
【文献】特開2018-137666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2~7においては、複数の無線通信ユニットが相互接続されている様子が図示されている(例えば、特許文献2の
図1等)。上述した衛星装置を経由したオフロード形態を除くと、この接続がいかなる実体にて構成されものかにつき、具体的な開示は文献中にてなされていない。しかし、仮に無線通信ユニット間が有線接続されていると考えた場合、無線非整備地域内の相応に広い通信エリア内に無線通信ユニットを分散配置しようとすれば、装置間を接続する通信ケーブルが非常に長くなる。その結果、信号品質及び通信容量の低下を招き、これを防止するための中継装置が必要となるなど、接続インフラ構築のためのコストが高騰する問題がある。さらに、列車や自動車、船舶など、無線通信ユニットが移動体に搭載される用途にあっては、各無線通信ユニットをケーブル接続することは物理的に不可能である。また、ネットワークを介してIPパケットを伝送しようとする場合、送信先ノードまでの通信経路情報の把握が必要である。例えば、外部ネットワークに接続可能な場合は、HSS(Home Subscriber Server)などへのアクセスにより、ルーティングテーブルなどの通信経路情報を取得することができる。しかし、上記のように無線非整備地域内に閉鎖的な無線ネットワークを構築する際にはHSSが使用できる環境はほとんど期待できず、移動端末がセル間を常時移動して接続・切断を繰り返す無線ネットワークにおいて、過不足のない通信経路情報の体系を後付けで構築することは非常に難しい。
【0007】
本発明の課題は、複数の無線通信ユニットを簡便な構造により無線連携させることが可能であり、ひいては複数ユニット間の連携動作を容易に実現できるとともに、外部ネットワークから通信経路情報を取得しなくとも、複数ユニット間のIPパケットの伝送制御を実行可能な無線通信ユニットと、それを用いた無線ネットワークシステムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の無線通信ユニットは、スタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、EPC機能部に有線接続されるとともに、第一の別の無線通信ユニットである上流ユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)と上流側のユニット間無線ベアラ(以下、上流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能な中継無線通信部とを備え、無線基地局部は、第二の別の無線通信ユニットである下流ユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)と下流側のユニット間無線ベアラ(以下、下流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能とされ、EPC機能部は下流ユニット間無線ベアラ設定要求を無線基地局部に送信する一方、無線基地局部は下流ユニット間無線ベアラ設定要求が示す条件に従い下流中継無線通信部とともに下流ユニット間無線ベアラを構築するものであり、EPC機能部は端末用無線ベアラ設定要求を無線基地局部に送信する一方、無線基地局部は端末用無線ベアラ設定要求が示す条件に従い移動端末とともに端末用無線ベアラを構築するものであり、中継無線通信部は、上流ユニットのEPC機能部(以下、上流EPC機能部という)が発行する上流ユニット間無線ベアラ設定要求を受信し、該上流ユニット間無線ベアラ設定要求が示す条件に従い上流無線基地局部とともに上流ユニット間無線ベアラを構築するものであり、EPC機能部は、無線基地局部の通信エリア内にて該無線基地局に端末用無線ベアラを介して接続中の複数の移動端末について、それら接続中の移動端末のノード特定情報を登録する接続中端末ノード登録部を備え、無線基地局部から転送されてくるIPパケットの送信先ノードを接続中端末ノード登録部の登録内容と照合し、送信先ノードが、接続中端末ノード登録部に登録されたノード特定情報のいずれかに対応する移動端末を示す場合には、IPパケットを該移動端末に無線基地局部にて折り返す形で転送する一方、送信先ノードが接続中端末ノード登録部に登録されていないノードを示す場合にはIPパケットを中継無線通信部及び無線基地局部の少なくともいずれかから無線通信ユニット外の送信先に転送する制御を行なうことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の無線ネットワークシステムは、3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、EPC機能部に有線接続されるとともに、第一の別の無線通信ユニットである上流ユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)と上流側のユニット間無線ベアラ(以下、上流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能な中継無線通信部とを備え、無線基地局部は、第二の別の無線通信ユニットである下流ユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)と下流側のユニット間無線ベアラ(以下、下流ユニット間無線ベアラという)を介して接続可能とされ、EPC機能部は端末用無線ベアラ設定要求を無線基地局部に送信する一方、無線基地局部は端末用無線ベアラ設定要求が示す条件に従い移動端末とともに端末用無線ベアラを構築するものであり、中継無線通信部は、上流ユニットのEPC機能部(以下、上流EPC機能部という)が発行する上流ユニット間無線ベアラ設定要求を受信し、該上流ユニット間無線ベアラ設定要求が示す条件に従い上流無線基地局部とともに上流ユニット間無線ベアラを構築するものであり、EPC機能部は、無線基地局部の通信エリア内にて該無線基地局に端末用無線ベアラを介して接続中の複数の移動端末について、それら接続中の移動端末のノード特定情報を登録する接続中端末ノード登録部を備え、無線基地局部から転送されてくるIPパケットの送信先ノードを接続中端末ノード登録部の登録内容と照合し、送信先ノードが、接続中端末ノード登録部に登録されたノード特定情報のいずれかに対応する移動端末を示す場合には、IPパケットを該移動端末に無線基地局部にて折り返す形で転送する一方、送信先ノードが接続中端末ノード登録部に登録されていないノードを示す場合にはIPパケットを中継無線通信部及び無線基地局部の少なくともいずれかから無線通信ユニット外の送信先に転送する制御を行なうように各々構成された無線通信ユニットが2以上順次隣接配置された無線通信ユニット群からなり、該無線通信ユニット群は、互いに隣接する無線通信ユニット対の基地局セルが一部重なる位置関係でユニット間無線ベアラによりカスケード接続されるとともに、無線通信ユニット対の一方に接続された移動端末と他方に接続された移動端末とが、無線通信ユニット対及び該無線通信ユニット対を接続するユニット間ベアラを介してIPパケットの送受信を行なうことを特徴とする。なお、上流ユニット間無線ベアラと下流ユニット間無線ベアラは、着目している無線通信ユニットの上流側に構築されるか、下流側に構築されるかの違いのみであり、隣接する無線通信ユニット対の中継無線通信部と無線基地局部とを相互に接続する無線ベアラとしての機能的実体は同じであり、以下、これらを総称する場合は単に「ユニット間ベアラ」と称するものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無線通信ユニットは、上流側の別の無線通信ユニットである上流ユニット(上流無線基地局部)と上流ユニット間無線ベアラを介して接続可能な中継無線通信部が設けられる。また、無線基地局部は、下流側の別の無線通信ユニットである下流ユニット(下流中継無線通信部)と下流ユニット間無線ベアラを介して接続可能とされる。EPC機能部は、無線基地局部の通信エリア内にて該無線基地局に端末用無線ベアラを介して接続中の複数の移動端末について、それら接続中の移動端末のノード特定情報を登録する接続中端末ノード登録部を備え、無線基地局部から転送されてくるIPパケットの送信先ノードを接続中端末ノード登録部の登録内容と照合し、送信先ノードが、接続中端末ノード登録部に登録されたノード特定情報のいずれかに対応する移動端末を示す場合には、IPパケットを該移動端末に無線基地局部にて折り返す形で転送する一方、送信先ノードが接続中端末ノード登録部に登録されていないノードを示す場合にはIPパケットを中継無線通信部及び無線基地局部の少なくともいずれかから無線通信ユニット外の送信先に転送する制御を行なう。つまり、上記本発明の無線通信ユニットにおいてEPC機能部は、移動端末の接続が生じるごとにノード特定情報を取得して接続中端末ノード登録部に登録することで、伝送対象のIPパケットの送信先が配下の移動端末であるか、ユニット外の移動端末であるかを容易に把握できる。その結果、EPC機能部は、外部ネットワークから通信経路情報を取得しなくとも、複数ユニット間のIPパケットの伝送制御を実行可能となる。
【0011】
また、ある無線通信ユニットの中継無線通信部は、何学的トポロジーにおいて順次隣接配置される複数の無線通信ユニットがユニット間無線ベアラによりカスケード接続することが可能となり、本発明の無線ネットワークシステムを構築できる。該無線ネットワークシステムは上記本発明の無線通信ユニット群により構築されることで、基地局セルが一部重なる位置関係でカスケード接続された無線通信ユニット対の一方に接続された移動端末と他方に接続された移動端末との間で、IPパケットの送受信を問題なく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の無線ネットワークシステムの構成単位となる無線通信ユニット対の概念を示す模式図。
【
図2】
図1の無線通信ユニット対の電気的構成の概略を示すブロック図。
【
図3】本発明の無線通信ユニットの電気的構成の一例を示すブロック図。
【
図4】UE(移動端末)の電気的構成の一例を示すブロック図。
【
図6】3GPPのコントロールプレーンのプロトコルスタックを概念的に示す図。
【
図7】3GPPのユーザプレーンのプロトコルスタックを概念的に示す図。
【
図8】3GPPの下りリンクのチャネルマッピングを概念的に示す図。
【
図9】同じく上りリンクのチャネルマッピングを概念的に示す図。
【
図10】周波数バンドチャネル、及びリソースブロックの関係を示す概念図。
【
図11】本発明の無線ネットワークシステムの構成形態の一例を模式的に示す図。
【
図13】UEに対するチャネル設定の処理の流れを示すフローチャート。
【
図14】無線通信ユニットの中継無線通信部の、上流側の別の無線通信ユニットに対するアタッチシーケンスを示す通信フロー図。
【
図15】UE(移動端末)の無線通信ユニットに対するアタッチシーケンスを示す通信フロー図。
【
図18】同一の無線通信ユニットに接続されたUE間でのIPパケット転送制御シーケンスを示す通信フロー図。
【
図19】隣接する無線通信ユニットに各々接続されたUE間でのIPパケット転送制御シーケンスを示す通信フロー図。
【
図20】カスケード接続された3つの無線通信ユニットの両端に各々接続されたUE間でのIPパケット転送制御シーケンスを示す通信フロー図。
【
図21】カスケード接続された3つの無線通信ユニットの末端に位置する無線通信ユニットのルータを介して、IPパケットを外部ネットワークに転送する制御シーケンスを示す通信フロー図。
【
図22】簡易ハンドオーバ処理の制御シーケンスを示す通信フロー図。
【
図23】UEリスト(接続中端末ノード登録部)の概念を示す図。
【
図25】無線通信ユニット対の変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の無線ネットワークシステムの構成単位となる無線通信ユニット対の概念を一実施形態として示す模式図である。無線通信ユニット対は本発明の一実施形態である同一構成の無線通信ユニット1(A),1(B)からなり(以下、無線通信ユニット対1(A),1(B)ともいう)、それぞれ3GPPで規定された方式(本実施形態では、LTEとするが、WiMAXなど他の方式であってもよい)の通信プロトコルスタックに従い、UE(移動端末)5との間で無線通信を行なうものとして構成されている。
【0014】
無線通信ユニット1(A),1(B)は、それぞれ移動体である大型船舶WS(A),WS(B)に設置され、後に詳述するユニット間無線ベアラ55により無線接続されている。各無線通信ユニット1(A),1(B)は、それぞれUE(移動端末)5が接続可能となるセル50(A),50(B)を形成する。また、大型船舶WS(A),WA(B)(例えば漁業母船、タンカーなど)の周囲では小船舶FB(例えば、漁船、タグボートなど)が操業をおこなっており、セル50(A)又はセル50(B)内の小船舶FBの乗員がUE5を携行している。それらUE5は、それぞれ最も近い無線通信ユニット1(A),1(B)に対し端末用無線ベアラ57により無線接続されている。なお、UE5は大型船舶WS(A),WA(B)の乗員が携行するものであってもよい。また、無線通信ユニット1(A),1(B)の設置先は船舶以外の移動体(車両など)であってもよいし、例えば陸上の所望の設置先に固定配置してもよい。
【0015】
図2は、無線通信ユニット1(A),1(B)の機能ブロック構成を示すものである。無線通信ユニット1(A),1(B)は電気的にはいずれも同一の構成を有する。そして、本明細書において複数の無線通信ユニット及びその構成要素を互いに区別して示す場合は、対応する構成要素に同一の番号を付与しつつ、該番号に続く形で括弧付きの大文字アルファベットを付与して示す。一方、無線通信ユニット間の区別を行なわずに各構成要素を示す場合は、括弧付きの大文字アルファベットを省略する場合がある。以下、無線通信ユニット1(A)側の符号を主体的に用いて説明するが、必要に応じて無線通信ユニット1(B)側についても、対応する符号を援用しつつ説明する。また、本明細書に添付の図面において無線ベアラを示す矢印線を破線にて示し、有線のベアラないし電気的な接続線は実線又は一点鎖線の矢印線で示している。
【0016】
無線通信ユニット1(A)は、UE(移動端末)5が端末用無線ベアラ57を介して接続可能な無線基地局部4(A)(eNodeB(evolved NodeB))と、無線基地局部4(A)に有線接続され、該無線基地局部4(A)に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部3(A)とを有する。また、該EPC機能部3(A)には、上流側の無線通信ユニット1(B)(上流ユニット)の無線基地局部4(B)(上流無線基地局部)に対し上流側のユニット間無線ベアラ55(上流ユニット間無線ベアラ)を介して接続可能な中継無線通信部9(A)が有線接続されている。
【0017】
一方、無線通信ユニット1(B)は、同様の無線基地局部4(B)と、無線基地局部4(B)に有線接続され、該無線基地局部4(B)に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC機能部3(B)と、EPC機能部3(B)に有線接続される中継無線通信部9(B)を備える。該中継無線通信部9(B)は、無線通信ユニット1(B)の上流側にさらに別の無線通信ユニットが配置されていれば、その無線通信ユニットの無線基地局部に対しユニット間無線ベアラを介して接続可能である(
図11参照)。また、無線基地局部4(B)は、下流側の無線通信ユニット1(A)(下流ユニット)の中継無線通信部9(A)(下流中継無線通信部)に対し、下流側のユニット間無線ベアラ55(下流ユニット間無線ベアラ)を介して接続可能とされている。つまり、ユニット間無線ベアラ55は、無線通信ユニット1(A)から見たときは上流ユニット間無線ベアラとなり、無線通信ユニット1(B)から見たときは下流ユニット間無線ベアラとなる。そして、ユニット間無線ベアラ55(下流ユニット間無線ベアラと上流ユニット間無線ベアラ)は、端末側無線ベア57ラと同一方式の無線プロトコルスタック、本実施形態においてはいずれもLTEの無線プロトコルスタックに従って構築される。
【0018】
次に、いずれの無線通信ユニット1(A),1(B)(以下、総称する場合は無線通信ユニット1という)においても、EPC機能部3は、コントロールプレーン側のゲートウェイとなるMME(Mobility Management Entity)2、ユーザプレーン側のゲートウェイとなるS-GW(Serving Gateway)6、EPC機能部3、及び該EPC機能部3の上流側ネットワーク要素(ここで、ルータ8(後述)及び中継無線通信部9)の結節点に位置し、上流側ネットワーク要素側(つまり、上流ユニット側)に向けたIPアドレス管理を行なうP-GW(PDN (Packet Data Network) Gateway)7を有する。また、無線基地局部4には複数のUE5が端末用無線ベアラ57を介して無線接続される。
【0019】
コントロールプレーン側において無線基地局部(eNodeB)4は、S1-MMEインターフェースを介してMME2に接続される。また、ユーザプレーン側において無線基地局部4は、S1-Uインターフェースを介してS-GW6に接続される。また、S-GW6はS5インターフェースを介してP-GW7と接続される。一方、一般的なLTEネットワークにおいては、複数の無線基地局は共通のコアネットワークに接続され、隣接する無線基地局のセル間をUEが移動する場合、コントロールプレーン側にて無線基地局同士を接続するX2インターフェースあるいはコアネットワーク側のS1インターフェースを介してハンドオーバ制御がなされる。しかし、本実施形態においては、無線通信ユニット1(A),1(B)のセル50(A),50(B)間をUEが移動する場合、両無線通信ユニット1(A),1(B)の無線基地局部4(A),4(B)はX2インターフェースで接続されておらず、また、コアネットワークに相当するEPC機能部3(A),3(B)が互いに独立しているため、上記従来の形態のハンドオーバ制御がなされない。これに代わって、特有の簡易ハンドオーバ処理がなされるが、詳細については後述する。
【0020】
図3は、無線通信ユニット1の電気的構成を示すブロック図である。EPC機能部3はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU301、プログラム実行領域となるRAM302、マスクROM303(恒久的に書換えが不要なマイコンハードウェア周辺制御用等のファームウェアを格納している;以下、同様)及びそれらを相互に接続するバス306等からなる。また、バス306にはフラッシュメモリ305が接続され、ここにEPC用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア305aと、前記LTEプロトコルスタックをプラットフォームとして、
図2のMME2、S-GW6及びP-GW7の各機能を仮想的に実現するMMEエンティティ305b、S-GWエンティティ305c及びPーGWエンティティ305dの各プログラムがインストールされている。さらに、フラッシュメモリ305には、IPパケットの転送ルーティングを行なうための転送テーブル305e、接続中端末ノード登録部305f及びチャネルマップ305gも格納されている。
【0021】
また、バス306には上流側通信インターフェース304A及び下流側通信インターフェース304Bが接続されている。P-GW用のIPパケットの入出力ポートは上流側通信インターフェース304Aに、S-GW用のIPパケットの入出力ポートは下流側通信インターフェース304Bにそれぞれ確保される。なお、上記の構成では、
図2のMME2、S-GW6及びP-GW7をコンピュータハードウェア上での仮想機能ブロックとして構成しているが、各々独立したハードウェアロジックにより構成してもよい。
【0022】
無線基地局部4はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU401、プログラム実行領域となるRAM402、マスクROM403及びそれらを相互に接続するバス406等からなる。バス406にはフラッシュメモリ405が接続され、ここに無線基地局用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア405aが格納されている。また、バス406には端末用無線ベアラの構築によりUEと無線接続するための無線通信部412と、通信インターフェース404が接続されている。通信インターフェース404はEPC機能部3の下流側通信インターフェース304Bと有線の通信バス31により接続されている。
【0023】
中継無線通信部9はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU901、プログラム実行領域となるRAM902、マスクROM903及びそれらを相互に接続するバス906等からなる。バス906にはフラッシュメモリ905が接続され、ここに中継無線通信部用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア905aが格納されている。また、バス906にはユニット間無線ベアラの構築により上流無線基地局部と無線接続するための無線通信部912と、通信インターフェース904が接続されている。通信インターフェース904はEPC機能部3の上流側通信インターフェース304Aと有線の通信バス30により接続されている。通信ファームウェア905aに組み込まれている中継無線通信部用のLTEプロトコルスタックは後述するUE(移動端末)用のプロトコルスタックと同一のものが使用される。換言すれば、中継無線通信部9の上流無線基地局部への接続手順は、UE(移動端末)の接続手順と方式的には同一である。
【0024】
また、通信バス30には、EPC機能部3とインターネット等の外部ネットワーク60との間のIPパケットの送受信を中継するルータ8が接続されている(すなわち、EPC機能部3と中継無線通信部9との間にルータ8が設けられている)。
【0025】
次に、無線通信ユニット1は、着脱式の二次電池モジュール21(例えば、リチウムイオン二次電池モジュールやニッケル水素二次電池モジュールなど)と、無線基地局部4、EPC機能部3、ルータ8及び中継無線通信部9の各機能回路ブロックと、二次電池モジュール21からの入力電圧を各機能回路ブロックの駆動電圧に変換して出力する電源回路部22とが可搬型筐体23に一体的に組付けられた構造を有する。これにより、無線通信ユニット1は、二次電池モジュール21から駆動電源電圧を自律的に調達でき、商用交流などの外部電源電圧が使用不能な設置場所(例えば海上など)においても問題なく使用可能である。可搬型筐体23は金属ないし強化型樹脂製の箱型であり、
図3に示す例では、搬送ないし移動の便宜を図るため、可搬型筐体23の底部にキャスター24を、同じく背面に手押し用の取手24を設けている。
【0026】
放電により二次電池モジュール21の出力電圧が下がった場合は、可搬型筐体23から二次電池モジュール21を取り外し、例えば図示しない商用交流電源や自家発電装置に接続された専用の充電器に装着して充電することが可能である。また、電源回路部22は、上記商用交流や移動体に設けられた集中電源部などの外部電源電圧も受電できるようになっており、上記駆動電源電圧に変換出力が可能である。さらに、当該外部電源電圧により二次電池モジュール21の充電を実行できるように構成することもできる。例えば電源回路部22が商用交流等から受電している状態で、停電により該受電が途絶えた場合は二次電池モジュール21からの受電に切り替えることで、無線通信ユニット1の動作が継続可能となるように構成することもできる。
【0027】
次に、
図4は、UE(移動端末)5の電気的構成の一例を示すブロック図である。UE5はマイコン100を処理主体として備えたスマートフォンとして構成されている。マイコン100は、CPU101、プログラム実行領域となるRAM102、ROM103、入出力部104及びそれらを相互に接続するバス106等からなる。また、バス106にはフラッシュメモリ105が接続され、ここにUE5の動作環境を構築するためのOS(図示せず)と、端末アプリ105b等がインストールされている。
【0028】
また、入出力部104にはグラフィックコントローラ1091を介してモニタ109が接続されている。モニタ109には入力部をなすタッチパネル110が重ね合わされ、モニタ109に表示形成される種々のソフト操作部(ボタンやアイコンなど:
図13~
図17参照)と協働して、UE5の動作制御に必要な種々の情報入力がなされるようになっている。タッチパネル110はタッチパネルコントローラ1101を介して入出力部104に接続されている。入出力部104には静止画ないし動画を撮影するためのカメラ111が接続されている。さらに、バス106には無線通信部112が接続されている。UE5は該無線通信部112にて、
図2の無線通信ユニット1の無線基地局部4と端末用無線ベアラ57を介して無線接続される。
【0029】
図5は、UE5と無線通信ユニット1との間のデータ伝送に使用するIPパケットの構造を示す模式図である。IPパケット300はIPヘッダ301とペイロード302とからなり、IPヘッダ301にはPDU識別番号、データの送信元アドレス301a、送信先アドレス301bなどが書き込まれる。
【0030】
図6及び
図7は、LTEシステムにおける無線プロトコルスタックを示し、
図6はユーザプレーンのプロトコルスタックを、
図7はコントロールプレーンのプロトコルスタックを示している。該無線プロトコルスタックは、OSI参照モデルのレイヤ1~レイヤ3に区分されており、レイヤ1はPHY(物理)層である。レイヤ2は、MAC(Medium Access Control:メディアアクセス制御)層、RLC(Radio Link Control:無線リンク制御)層、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol:パケットデータ暗号化)層を含む。レイヤ3は、RRC(Radio Resource Control:無線リソース制御)層及びNAS(Non-Access Stratum:非アクセス)層を含む。
【0031】
各層の役割は以下の通りである。
・PHY層:符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行なう。UE5及び中継無線通信部9のPHY層と無線基地局部(eNodeB)4のPHY層との間では、物理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・MAC層:データの優先制御、HARQによる再送制御処理、及びランダムアクセス手順等を行なう。UE5及び中継無線通信部9のMAC層と無線基地局部4のMAC層との間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。無線基地局部4のMAC層は、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE5への割当リソースブロックを決定するスケジューラを含む。
【0032】
・RLC層:MAC層及びPHY層の機能を利用してデータを受信側のRLC層に伝送する。UE5のRLC層と無線基地局部4のRLC層との間では、論理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・PDCP層:PDUのヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行なう。
・RRC層:制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE5のRRC層と無線基地局部4のRRC層との間では、各種設定のためのメッセージ(RRCメッセージ)が伝送される。RRC層は、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル及び物理チャネルを制御する。UE5のRRCと無線基地局部4のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE5はRRCコネクティッドモードとなり、そうでない場合はRRCアイドルモードとなる。
【0033】
以上の層はコントロールプレーン及びユーザプレーンの双方にて使用される。一方、コントロールプレーンのみ、UE5、中継無線通信部9及びMME2には、RRC層よりさらに上位にセッション管理及びモビリティ管理等を行なうNAS層が設けられる。また、無線基地局部4のEPC機能部3側とのユーザデータ伝送インターフェースには、GTP-U(GPRS(General Packet Radio Service)Tunneling Protocol for User Plane)層が設けられている。GTP-U層は、接続先のUE5ないし中継無線通信部9の識別や、使用する無線ベアラの識別を行なうためのものである。
【0034】
次に、
図8は、LTEシステムにおける下りリンクのチャネルマッピングを示す。ここでは、論理チャネル(Downlink Logical Channel)、トランスポートチャネル(Downlink Transport Channel)及び物理チャネル(Downlink Physical Channel)相互間のマッピング関係を示している。以下、順に説明する。
・DTCH(Dedicated Traffic Channel:専用トラフィックチャネル)は、データの送信のための個別論理チャネルである。DTCHは、トランスポートチャネルであるDLSCH(Downlink Shared Channel:下りシェアドチャネル)にマッピングされる。
【0035】
・DCCH(Dedicated Control Channel:専用制御チャネル):UE5とネットワークとの間の個別制御情報を送信するための論理チャネルである。DCCHは、UE5及び中継無線通信部9が無線基地局部4とRRC接続を有する場合に用いられる。DCCHは、DLSCHにマッピングされる。
・CCCH(Common Control Channel:共通制御チャネル):UE5及び中継無線通信部9と無線基地局部4との間の送信制御情報のための論理チャネルである。CCCHは、UE5及び中継無線通信部9が無線基地局部4との間でRRC接続を有していない場合に用いられる。CCCHは、DLSCHにマッピングされる。
【0036】
・BCCH(Broadcast Control Channel:放送制御チャネル):システム情報配信のための論理チャネルである。BCCHは、トランスポートチャネルであるBCH(Broadcast Channel、放送チャネル)又はDLSCHにマッピングされる。
・PCCH(Paging Control Channel:ページング制御チャネル):ページング情報、及びシステム情報変更を通知するための論理チャネルである。PCCHは、トランスポートチャネルであるPCH(Paging Channel:ページングチャネル)にマッピングされる。
【0037】
また、トランスポートチャネルと物理チャネルとの間のマッピング関係は以下の通りである。
・DLSCH及びPCH:PDSCH(Physical Downlink Shared Channel:物理下りシェアドチャネル)にマッピングされる。DLSCHは、HARQ、リンクアダプテーション、及び動的リソース割当をサポートする。
・BCH:PBCH(Physical Broadcast Channel:物理ブロードキャストチャネル)にマッピングされる。
【0038】
次に、
図9は、LTEシステムにおける上りリンクのチャネルマッピングを示す。
図8と同様に、論理チャネル(Downlink Logical Channel)、トランスポートチャネル(Downlink Transport Channel)及び物理チャネル(Downlink Physical Channel)相互間のマッピング関係を示している。以下、順に説明する。
【0039】
・CCCH(Common Control Channel:共通制御チャネル):UE5及び中継無線通信部9とEPC機能部3との間の制御情報を送信するために使用される論理チャネルであり、EPC機能部3と無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)接続を有していないUE5によって使用される。
・DCCH(Dedicated Control Channel:専用制御チャネル):1対1(point-to-point)の双方向の論理チャネルであり、UE5及び中継無線通信部9とEPC機能部3と間で個別の制御情報を送信するために利用するチャネルである。専用制御チャネルDCCHは、RRC接続を有しているUE5によって使用される。
・DTCH(Dedicated Traffic Channel:専用トラフィックチャネル):1対1の双方向論理チャネルであり、特定のUE又は中継無線通信部専用のチャネルであって、ユーザ情報の転送のために利用される。
【0040】
・ULSCH(Uplink Shared Channel:上りリンク共用チャネル):HARQ)、動的適応無線リンク制御、間欠送信(DTX:Discontinuous Transmission)がサポートされるトランスポートチャネルである。
・RACH(Random Access Channel:ランダムアクセスチャネル):制限された制御情報が送信されるトランスポートチャネルである。
【0041】
・PUCCH(Physical Uplink Control Channel:物理上りリンク制御チャネル):下りリンクデータに対する応答情報(ACK(Acknowledge)/NACK(Negative acknowledge))、下りリンクの無線品質情報、および、上りリンクデータの送信要求(スケジューリングリクエスト:Scheduling Request:SR)を無線基地局部4に通知するために使用される物理チャネルである。
・PUSCH(Physical Uplink Shared Channel:物理上りリンク共用チャネル):上りリンクデータを送信するために使用される物理チャネルである。
・PRACH(Physical Random Access Channel:物理ランダムアクセスチャネル):主にUE5から無線基地局部4への送信タイミング情報(送信タイミングコマンド)を取得するためのランダムアクセスプリアンブル送信に使用される物理チャネルである。ランダムアクセスプリアンブル送信はランダムアクセス手順の中で行なわれる。
【0042】
図9に示すように、上りリンクでは、次のようにトランスポートチャネルと物理チャネルのマッピングが行われる。上りリンク共用チャネルULSCHは、物理上りリンク共用チャネルPUSCHにマッピングされる。ランダムアクセスチャネルRACHは、物理ランダムアクセスチャネルPRACHにマッピングされる。物理上りリンク制御チャネルPUCCHは、物理チャネル単独で使用される。また、共通制御チャネルCCCH、専用制御チャネルDCCH、専用トラフィックチャネルDTCHは、上りリンク共用チャネルULSCHにマッピングされる。
【0043】
次に、LTEシステムの下りリンクにおいては、UE5及び中継無線通信部9は無線基地局部4に対してOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing、直交周波数分割多重)アクセス(OFDMA)により無線接続する。OFDMA方式は、周波数分割多重と時間分割多重とを複合させた二次元の多重化アクセス方式として特徴づけられる。具体的には、直交する周波数軸と時間軸のサブキャリアを分割してUE5に割り振り、各サブキャリアの信号がゼロ(0点)になるように、周波数軸上で直交するサブキャリアを分割する。サブキャリアを分割して周波数軸上に割り当てることにより、あるサブキャリアがフェージングの影響を受けても影響のない別のサブキャリアを選択することができるので、ユーザは無線環境に応じてより良好なサブキャリアを使用でき、無線品質を維持できる利点が生ずる。
【0044】
そして、OFDMA方式においては、周波数軸と時間軸とが張る仮想平面上で定義されるリソースブロック(Resource Block:以下、RBともいう)が無線リソースとして採用される。RBは
図10に示すように、上記平面を180kHz/0.5msecでマトリックスに区切ったブロックとして定義され、各ブロックは周波数軸上では15kHz間隔で隣接する12個のサブキャリアを、時間軸上ではフレームの1スロット分(7シンボル)を含む。このRBは時間軸上で隣接する2つ(1msec)を1組としてUE5及び中継無線通信部9に割り当てられる。他方、LTEシステムの上りリンクにおいても、SC-FDM(Single Career Frequency-Division Multiplexing)アクセス(SC-FDMA)が採用される点を除き、同様の概念のリソースブロックが無線リソースとして用いられる。OFDMAでは1つのリソースブロックが周波数軸上で12のサブキャリア(帯域幅:15kHz)に分割されるのに対し、SC-FDMAはサブキャリアへの分割がなされないシングルキャリア方式である。
【0045】
本実施形態においては、
図2に示すように、個々の無線通信ユニット1の中継無線通信部9について、(上流)ユニット間無線ベアラ55を構築可能な(隣接)無線基地局4の数が1つのみに定められている。ユニット間無線ベアラ55を構築可能な(隣接)無線基地局4の数を複数に定めることも原理的には可能であるが、この場合、相互接続される無線通信ユニット1の重なり合うセル内にて、ユニット間無線ベアラに割り振られる周波数チャネル数が増加する結果、UE5が使用可能な周波数チャネルの数が逆に減少し、輻輳などの問題を生じやすくなる。また、無線通信ユニット1同士の接続トポロジーが複雑化し、IPパケット伝送の経路制御処理が極めて煩雑になる問題がある。このような問題は、(上流)ユニット間無線ベアラ55を構築可能な(隣接)無線基地局4の数を1つのみに制限することで解決できる。
【0046】
図11は、上記の構成の無線通信ユニット1を採用した場合の、本発明の無線ネットワークシステムの構成例を示すものである。該無線ネットワークシステムにおいて無線通信ユニット群1(A)~1(D)は、互いに隣接する無線通信ユニット対(1(A)と1(B)、1(B)と1(C)、1(C)と1(D))の基地局セル(50(A)と50(B)、50(B)と50(C)、50(C)と50(D))が一部重なる位置関係で、ユニット間無線ベアラ55(A),55(B),55(C)によりカスケード接続されている。該構成により、無線通信ユニット1同士の接続トポロジーが極めて簡略化されていることが容易に把握できる。この場合、例えば無線通信ユニット対1(A),1(B)の一方に接続されたUE5(A)(移動端末)と他方に接続されたUE5(B)(移動端末)とが、無線通信ユニット対1(A),1(B)及び該無線通信ユニット対1(A),1(B)を接続するユニット間ベアラ55(A)を介してIPパケットの送受信を行なうことができる。無線通信ユニット群1(A)~1(D)は、例えば全てが前述の船舶や車両などの移動体上に搭載されていてもよいし、一部のもののみを移動体上に搭載し、残余のものを建物内などに固定設置するようにしてもよい。
【0047】
また、
図11においては、ユニット間無線ベアラ55(A),55(B),55(C)によりカスケード接続された無線通信ユニットが3以上(
図11では、4つ)となっている。この場合、無線通信ユニット群1(A)~1(D)の1つの無線通信ユニットをなす第一の無線通信ユニット1(A)に接続されたUE(移動端末)5(A)と、無線通信ユニット群1(A)~1(D)において第一の無線通信ユニット1(A)に対し1以上の中間の無線通信ユニット1(B),1(C)を隔てて配置される第二の無線通信ユニット1(C),1(D)に接続されたUE(移動端末)5(C),5(D)とが、第一の無線通信ユニット1(A)、中間の無線通信ユニット1(B),1(C)及び第二の無線通信ユニット1(C),1(D)と、それら無線通信ユニット1(A)~1(D)を接続するユニット間ベアラ55(A),55(B),55(C)とを介してIPパケットを送受信できるようになっている。このように、カスケード接続される無線通信ユニットの数を容易に増やすことができ、より広大なエリアにてUE5同士の無線通信によるIPパケットの送受信が可能となる。
【0048】
3GPP仕様の無線通信方式においては、該3GPPに規定された複数の周波数バンドのいずれが割り当てられる。この割り当てられる周波数バンドは、通信方式によって相違し、例えばLTEバンドとしてはバンド1、3、6、8、11、18、19、21、26、28、41及び42が使用されている。いずれのバンドも、予め定められた帯域幅の複数の周波数チャネルに分割され、EPC機能部3は、
図2のユニット間無線ベアラ55及び端末用無線ベアラ57を、予め定められた周波数チャネルを選択して構築することとなる。すなわち、下流ユニット間チャネル、上流ユニット間チャネル及び端末側チャネルは、各々3GPPに規定される複数のバンドのいずれかに属する周波数チャネルとして設定される。
【0049】
本実施形態において、EPC機能部3は、(下流)ユニット間無線ベアラ55の設定周波数チャネルを、予め定められた特定の1つの周波数チャネルである(下流)ユニット間チャネルに固定設定する。また、端末用無線ベアラ57の設定周波数チャネルである端末側チャネルについては、(下流)ユニット間チャネルと同一の周波数チャネルに設定される。つまり、EPC機能部3は、直下の無線基地局部4に対し、下流側の無線通信ユニット1の中継無線通信部9と移動端末5に対し同一の周波数チャネルを設定する。
【0050】
端末用無線ベアラ57は、無線基地局部4に接続するUE5の台数や、伝送されるデータの容量に起因した通信トラフィックの混雑状況に応じて、同一バンド内で使用する周波数チャネルの数は適宜変更する必要がある。また、隣接する無線通信ユニットの重なりを有するセル間でUEが移動する場合、移動前のセルと移動後のセルとで各無線基地局部に接続する際の端末用無線ベアラ57の使用周波数チャネルが同一であるとセル間干渉の問題を生ずる。よって、UE(移動端末)5は、下流側のセルに移動したときは、移動先のセルの無線通信ユニット1の無線基地局部4に対し、その無線基地局部4から見た(下流)ユニット間無線ベアラ55の設定周波数チャネル((下流)ユニット間チャネル)に切り替える形で後述のハンドオーバ処理がなされる。他方、UE(移動端末)5が上流側のセルに移動したときは、移動先のセルの無線通信ユニット1の無線基地局部4に対し、その無線基地局部4から見た(上流)ユニット間無線ベアラ55の設定周波数チャネル((上流)ユニット間チャネル)に切り替える形で後述のハンドオーバ処理がなされる。つまり、UE(移動端末)5がセル間を移動するに伴い、端末側チャネルを逐次切り替える形で端末用無線ベアラ57が構築される。しかし、ユニット間無線ベアラ55については、多数のUE5が接続される各通信ユニット1からのIPパケットの伝送が集約されて通信トラフィック量が非常に大きくなるため、IPパケット伝送処理を可能な限りスムーズに行うことが求められる。このとき、個々のセル内のUE5の接続状況に応じて、ユニット間無線ベアラ55の周波数チャネル設定が頻繁に変更されてしまう状況が生じると、複数の無線通信ユニット1を横断するIPパケット伝送を行なおうとする際に、ユニット間無線ベアラ5での通信途絶等の問題が生じやすくなる。
【0051】
しかしながら、
図11のような、複数の無線通信ユニット1(A)~1(D)をカスケード接続する無線ネットワークシステムの構成においては、ユニット間無線ベアラ55による隣接ユニットの無線基地局部4との接続トポロジーが大きく変化しない限り、個々の無線通信ユニット1の中継無線通信部9の接続先となる無線基地局部4は固定されており、中継無線通信部9に対して周波数チャネル切替えを伴うハンドオーバ処理は不要となる。そこで、ユニット間無線ベアラ55について、予め定められた特定の1つの周波数チャネルであるユニット間チャネルに固定設定することで、ユニット間無線ベアラ55のチャネル切替えに伴う通信途絶等を効果的に防止でき、複数の無線通信ユニット1を横断する際のIPパケット伝送の安定性を大幅に向上することができる。
【0052】
次に、
図11において、無線通信ユニット1(A)のセル50(A)、無線通信ユニット1(B)のセル50(B)及び無線通信ユニット1(C)のセル50(C)とは互いに重なりを生じている。この場合、例えば無線通信ユニット1(B)から見て上流及び下流の無線通信ユニット1(A),1(C)を接続するユニット間無線ベアラ55(A),(B)のユニット間チャネルは、これを互いに異なる周波数チャネルに設定することで、ユニット間無線ベアラ55(A),(B)の構築に際して、これに関与する、互いに一部重なる複数のセル50(A)~50(C)の間で電波干渉を効果的に防止することができる。
【0053】
より具体的には、無線通信ユニット1(A)~1(D)の各EPC機能部3は、(上流)ユニット間無線ベアラが構築される際に、下流ユニット間チャネルを、上流ユニット間無線ベアラに対して設定される上流ユニット間チャネルと異なる周波数チャネルに設定する一方、端末用チャネル群については、下流ユニット間チャネル及び上流ユニット間チャネルとのいずれとも異なる周波数チャネル群として設定している。例えば、無線通信ユニット1(B)に着目してみた場合、無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3は、上流ユニット間無線ベアラ55(B)に対して設定される上流ユニット間チャネルを例えばCH2に設定する。一方、無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3は、該無線通信ユニット1(A)から見た上流ユニット間無線ベアラ55(A)(無線通信ユニット1(B)から見れば下流ユニット間無線ベアラである)に対して設定される上流ユニット間チャネル(無線通信ユニット1(B)から見れば下流ユニット間チャネルである)を、上記CH2と相違するCH1に設定するのである。このとき、下流ユニット間チャネルCH1と上流ユニット間チャネルCH2とを同一バンド内の互いに異なる周波数チャネルとして設定することで、ユニット間無線ベアラを構築するための無線基地局部4及び中継無線通信部9のハードウェアを、単一バンド仕様にて簡便に構成できる利点が生ずる。
【0054】
また、端末側チャネルについては、上記同一バンドに属する周波数チャネルのうち、下流ユニット間チャネルと同一のチャネルに設定される。例えば、
図11の無線ネットワークシステム全体に1つのバンドのみが割り当てられている場合、端末側チャネルは、同一バンドに属する周波数チャネルのうち、下流ユニット間チャネルと同一のチャネルを設定することで、端末用無線ベアラ構築も含めて無線基地局部4及び中継無線通信部9のハードウェアの単一バンド仕様化を図ることができ、装置構成の簡略化に寄与する。なお、端末側チャネルは、下流ユニット間チャネル及び上流ユニット間チャネルとして設定されるもの以外の残余の周波数チャネルから切り替え可能に選択してもよい。
【0055】
この場合、
図11のように順次カスケード接続される複数の無線通信ユニット1の列において、セル間の重なりが生じないように定められた限界距離L内に接続経路長が収まっている複数の無線通信ユニット1(A)~1(D)について、これらを接続するユニット間ベアラ55(A)~55(C)のユニット間チャネルを、全て異なる周波数チャネルに設定することが望ましいといえる。他方、限界距離L内に接続経路長が収まっている無線通信ユニット1(A)~1(D)に対し、さらにその上流又は下流に別の無線通信ユニットが接続される場合は、該別の無線通信ユニットを接続するユニット間無線ベアラのユニット間チャネルを、上記限界距離L内の無線通信ユニットに割り振られたユニット間チャネルのいずれかと同じ周波数チャネルに設定することも可能である。例えば、
図11において、無線通信ユニット1(A)のさらに上流側に新たな無線通信ユニットを接続する場合、該新たな無線通信ユニットからみて最も遠い無線通信ユニット1(A)の上流側ユニット間チャネルと同じ周波数チャネルCH1を、該新たな無線通信ユニットの下流側ユニット間チャネルとして設定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記の同一バンドとして、3GPPに規定されたバンド28が採用されている。バンド28は、地上波アナログテレビ放送の停波にともない空きを生じたVHF帯(700MHz帯)に設定されている。バンド28は低周波数帯のため通信速度が幾分遅い関係上、都市部など端末加入者の多いエリア等での採用が積極的に進められておらず、電波リソースの利用状況がそれほどひっ迫していないためスムーズな接続が期待できる。また、低周波数帯であるということは、電波の遠方到達性に優れ、1つの無線通信ユニットがカバーできるエリア(セル)の拡大を図ることができる。また、地下や障害物があっても繋がりやすい特性を有し、例えば海上や鉱山などで本発明の無線ネットワークシステムを構築する上でも好適であるといえる。
【0057】
次に、本発明の無線ネットワークシステムにおいて、
図11のごとく隣接するユニット間無線ベアラ55(A)~55(C)のユニット間チャネル設定を互いに異ならせるための具体的な手法としては、例えばユニット間無線ベアラ55(A)~55(C)を経由して、各無線通信ユニット1(A)~1(D)がユニット間チャネル情報を共有化することにより行なうことができる。
【0058】
また、無線ネットワークシステムに参加する無線通信ユニットの上限数が定められている場合には、
図11において個々の無線通信ユニット1(A)~1(D)に付与されるノードアドレスの組み合わせに応じて、割り振るべきユニット間チャネルの種別をチャネルマップの形で一律に定め、このチャネルマップを個々の無線通信ユニットのEPC機能部3に組み込んでおくことが、処理のさらなる簡略化を図るうえで有効である。各EPC機能部3は他の無線通信ユニットのEPC機能部3とチャネル設定情報を共有しなくとも、組み込まれたチャネルマップを参照することで、隣接するユニット間無線ベアラのユニット間チャネルが異なるものとなるように設定とすることが可能となる。この場合、EPC機能部1は、下流ユニット間チャネルとして選択可能な周波数チャネル群と、接続先となる下流中継無線通信部のノードアドレスとの対応関係を示すチャネルマップを記憶するチャネルマップ記憶部を有し、下流中継無線通信部からのアタッチ要求を受けるに伴い、該下流中継無線通信部のノードアドレスを取得するとともに、取得したノードアドレスに対応する周波数チャネルをチャネルマップ上にて特定し、特定された該周波数チャネルを下流ユニット間チャネルとして設定するように動作する。
【0059】
図12は、チャネルマップ305gの一例を示す。該チャネルマップ305gにおいては、システム構築に参加する無線通信ユニット1の数が4つであり、それぞれノードアドレスMID01~MID04が付与されている。そして、それらノードアドレスの組み合わせに応じ、対応する無線通信ユニットの間に設定するユニット間チャネルのチャネル番号が重複を生じないように定められている。
【0060】
図13は、EPC機能部3による上記チャネルマップ305gを用いたチャネル設定処理の流れを示すフローチャートである。B101では、下流側の無線通信ユニットのノードアドレスから、チャネルマップ305gを参照して下流側ユニット間チャネルのチャネル番号Ch#Mを取得する。B102では、上流側のユニット間チャネルのチャネル番号Ch#B(このチャネル番号Ch#Bは複数であってもよい)を上流側の無線通信ユニットから取得する。B103では、Ch#M/Ch#B以外の残余のチャネル番号からUE用のチャネル番号Ch#U1、Ch#U2・・・を選択する。そして、B104では、使用可能なチャネル番号(Ch#U1、Ch#U2・・・)を無線基地局部及びUEに通知する。この通知は、無線基地局部及びUEのアタッチシーケンスにて実行される。
【0061】
以下、中継無線通信部9とUE5のアタッチシーケンスの流れについて、
図14及び
図15を用いて説明する。
図14は中継無線通信部9のアタッチシーケンスを示す。TS1では中継無線通信部9から無線基地局部(eNodeB)4を経由してMME2に対し、アタッチ要求が出される。このとき、要求元に無線通信ユニットのIPアドレスを送信する。MME2はこれを受け、TS2にてS-GW6に対しベアラ設定要求を送信する。S-GW6はTS3にて、P-GW7との間でS5インターフェース上に物理回線のベアラ設定処理を実行する。ベアラが設定されればS-GW6はTS4にてMME2に、ベアラ設定応答を送信する。
【0062】
MME2は、TS5にて要求元ユニットのIPアドレスに対応する無線通信チャネルをチャネルテーブル305g(
図12)上で検索する。そして、TS6で、無線ベアラ設定要求(アタッチ受入れ)を無線基地局部4に設定チャネル番号とともに通知する。これを受けた無線基地局部4はTS7にて設定するべき無線ベアラ(ユニット間無線ベアラ)の設定チャネル番号を含むMIB(Master Information Block)を中継無線通信部9に送信する。
【0063】
TS8にて中継無線通信部9はユニット間チャネルを、受信したMIBに含まれる設定チャネル番号に固定設定し、設定完了を返信する。これを受け、TS9にて無線基地局部4はセッション開始要求(タッチ受入れ)を中継無線通信部9に通知する。TS10にて中継無線通信部9はユニット間無線ベアラを設定し、セッション開始応答を無線基地局部4に返す。TS11にて、無線基地局部4は、セッション開始応答をMME2に通知する。
【0064】
一方、
図15はUE5(移動端末)のアタッチシーケンスを示す。TS11ではUE5から無線基地局部(eNodeB)4を経由してMME2に対し、アタッチ要求が出される。このとき、要求元に無線通信ユニットのIPアドレスを送信する。MME2はこれを受け、TS12にてS-GW6に対しベアラ設定要求を送信する。S-GW6はTS13にて、P-GW7との間でS5インターフェース上に物理回線のベアラ設定処理を実行する。ベアラが設定されればS-GW6はTS14にてMME2に、ベアラ設定応答を送信する。
【0065】
MME2は、
図13の処理に従い、端末用無線ベアラ群として使用可能な設定チャネル番号を決定する。そして、TS16で、無線ベアラ設定要求(アタッチ受入れ)を無線基地局部4に決定した設定チャネル番号とともに通知する。これを受けた無線基地局部4はTS17にて設定するべき無線ベアラ(ユニット間無線ベアラ)の設定チャネル番号を含むMIB(Master Information Block)をUE5に送信する。
【0066】
TS18にてUE5は端末側チャネルを、受信したMIBに含まれる設定チャネル番号に設定し、設定完了を返信する。これを受け、TS19にて無線基地局部4はセッション開始要求(アタッチ受入れ)をUE5に通知する。TS20にてUE5は端末側無線ベアラを設定し、セッション開始応答を無線基地局部4に返す。TS21にて、無線基地局部4は、セッション開始応答をMME2に通知する。上記のように、UE5のアタッチシーケンスと中継無線通信部9のアタッチシーケンスとは、周波数チャネル設定の内容を除き、基本的に同一の手順に従い実行されている。
【0067】
LTEシステムにおいては、上記設定チャネル番号などの報知情報の送信量を運用・環境ごとに柔軟に変更するために、PBCHを用いた固定的な報知情報リソースと、PDSCHを用いた可変的に使用できる無線リソースとが組み合わせて使用される。ここで固定的なリソースであるPBCHを用いるのは、UE5(中継無線通信部9)が最初に取得する情報として報知情報が定められており、UE5(中継無線通信部9)が無線基地局部(eNodeB)4からの通知を受けることなしに受信できる必要があるためである。UE5は固定的なリソースであるPBCHを最初に受信し、PBCHからPDSCHを受信するための最低限の情報を得て、その情報をもとにPDSCHにて送られる報知情報を読むようにしている。PDSCHはRB単位で割り当て可能な可変リソースであるため、PDSCHにて送信する報知情報の量は可変である。これにより報知情報に使用するリソース量の変更が実現され、ネットワーク運用や環境により異なる報知情報量に応じた無線リソースの割り当てが可能となる。
【0068】
そして、このPBCHにより送信される報知情報のうち上記のMIBは、無線フレームの先頭(すなわち、サブフレーム番号=0)で送信されるものであり、時間リソース及び周波数リソースが常に固定された形で割り当てられる。その送信情報は、通常は、例えばPDSCHにより他の報知情報(例えばSIB(System Information Block))を受信するための情報、及び無線フレーム番号(SFN : System Frame Number)などである。しかし、本実施形態では、このMIBを利用して、無線基地局部4はUE5(中継無線通信部9)に対し、端末用無線ベアラあるいはユニット間無線ベアラのチャネル情報を配信する。MIBのサイズは24ビットに固定されているが、そのうちの10ビットは予備領域となっているので、例えばこの予備領域を利用して上記無線ベアラの設定チャネル情報を組み込むことが可能である。
【0069】
次に、
図11のごとく、ユニット間無線ベアラ55によりカスケード接続された2以上の無線通信ユニット1(A)~1(D)の各EPC機能部3は、個々の無線通信ユニット1(A)~1(D)の無線基地局部4に接続中のUE5(A)~5(D)(移動端末)のノードアドレス(ノード特定情報)を、ユニット間無線ベアラ55(A)~55(C)を経由して他の無線通信ユニットに転送できるようになっている。これにより、2以上の無線通信ユニット1(A)~1(D)間にて接続中のUE5(A)~5(D)のノードアドレスの無線通信ユニット1(A)~1(D)間での共有化が可能となる。そして、EPC機能部3は共有化されたノードアドレス(ノード特定情報)に基づいてIPパケットの転送テーブルを作成し、該転送テーブルを参照してIPパケットの転送制御を行なう。この転送テーブルは、UEのノード特定情報が無線通信ユニットのノードアドレス毎に登録されるものであり、接続中端末ノード登録部として機能する。
【0070】
図16は転送テーブルの一例を示すものである。転送テーブル305eは、個々の無線通信ユニットのノードアドレス(MAD01~MAD04)毎に、接続中のUEのノードアドレス(UEAD11,12・・・、UEAD21,22・・・)がリスト化された形で登録されている。
図17は、各EPC機能部3にてなされる該転送テーブルの更新処理の流れを示すものであり、A201で処理が開始されると、A202では無線通信ユニットのカスケード接続の順序が変化したか否かを確認する。もし変化していればA203に進み、転送テーブル305e上での無線通信ユニットのノードアドレス(MAD01~MAD04)の配列順を変更する。一方、変化していなければA203をスキップする。
【0071】
A204では無線通信ユニットの転送テーブル305e上での順位番号iを初期化し、A205では番号iの無線通信ユニットに接続中のUEのIPアドレスを取得する。A205では番号iがインクリメントされ、A207で番号iが最大値imax(無線通信ユニットの総数)を超えたか否かが判断される。超えていなければA205に戻り、以下A206までの処理を繰り返す。他方、超えている場合はA208に進み、他の無線通信ユニットからの接続中UEのIPアドレスを取得する。取得したIPアドレスは、転送テーブル305eの番号iの無線通信ユニットのノードアドレスに対応するテーブルセルに格納され、転送テーブル305eの内容が更新される。A209では、処理を終了するか否かを判断し、終了でなければA210で一定期間待機した後A202に戻り、以下の処理を繰り返す。
【0072】
図18は、同じ無線通信ユニット1に接続するUE5(UE(I)及びUE(II))間のIPパケットの伝送処理の流れを示すものである。U1及びU2は
図15により説明済みのアタッチシーケンスであり、端末用無線ベアラが構築される。U3でUE(I)からIPパケットが無線基地局部4に向け上りパケットとして送出される。無線基地局部4がこれをEPC機能部3に転送する。EPC機能部3では、
図16の転送テーブル305eを参照し、自身が属する無線通信ユニットに接続中のいずれかのUEのIPアドレスが、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスと一致しているか否かを確認する。
図18の場合、UE(II)のIPアドレスがこれに該当することとなり、D1にて該IPパケットを下りパケットとして配下の無線基地局部4に折り返し転送する。無線基地局部4はこれを受け取ってUE(II)に転送し、処理は完了する。
【0073】
図19は、
図11において、無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(A)と、隣接する無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(B)と間のIPパケットの伝送処理の流れを示すものである。U1~U3までの処理は
図18と同じである。U3において無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3は転送テーブル305eを参照し、受け取ったIPパケットの送信先アドレスが、自身が属する無線通信ユニット1(A)に接続中のいずれのUEのIPアドレスとも一致せず、かつ上流側の無線通信ユニット1(B)に接続中のUEのIPアドレスと一致していることを確認する。そして、U4にてそのIPパケットを、ユニット間無線ベアラ55(A)により上流側の無線通信ユニット1(B)に転送する。無線通信ユニット1(B)では、このIPパケットを受け取り、同様に転送テーブル305eを参照し、UE5(B)のIPアドレスが送信先のIPアドレスと一致することを確認する。そして、D2にて該IPパケットを下りパケットとして配下の無線基地局部4に転送する。無線基地局部4はこれを受け取ってUE5(B)に転送し、処理は完了する。
【0074】
たとえば、IPパケットの送信元のUEが、カスケード接続された無線通信ユニット群の中間のものに接続されており、送信先のUEが該無線通信ユニットよりも下流側の無線通信ユニットに接続中のUEである場合は、上記U3にてEPC機能部3は転送テーブル305eを参照し、受け取ったIPパケットの送信先アドレスが、自身が属する無線通信ユニットに接続中のいずれのUEのIPアドレスとも一致せず、かつ下流側の無線通信ユニットに接続中のUEのIPアドレスと一致していることを確認することとなる。そして、該IPパケットは下りパケットとして無線基地局部4に転送され、さらに送信先となるUEが接続される無線通信ユニットに下流側のユニット間ベアラを用いて転送される。
【0075】
図20は、
図11において、無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(A)と、2つ先の無線通信ユニット1(C)に接続中のUE5(C)と間のIPパケットの伝送処理の流れを示すものである。U1~U4までの処理は
図19と同じである。U4において無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3は転送テーブル305eを参照し、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスが、自身が属する無線通信ユニット1(B)に接続中のいずれのUEのIPアドレスとも一致しないことを確認し、U5にてそのIPパケットを、ユニット間無線ベアラ55(B)により上流側の無線通信ユニット1(C)に転送する。無線通信ユニット1(C)では、このIPパケットを受け取り、同様に転送テーブル305eを参照し、UE5(C)のIPアドレスが送信先のIPアドレスと一致することを確認する。そして、D3にて該IPパケットを下りパケットとして配下の無線基地局部4に転送する。無線基地局部4はこれを受け取ってUE5(C)に転送し、処理は完了する。
【0076】
図21は、無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(A)からのIPパケットが、無線ネットワークシステム外の送信先アドレスを有している場合の処理を示す。U1~U5までの処理は
図20と同じである。U5において無線通信ユニット1(C)のEPC機能部3は転送テーブル305eを参照し、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスが、自身が属する無線通信ユニット1(C)に接続中のいずれのUEのIPアドレスとも一致しないことを確認し、U6にてそのIPパケットをルータ8に転送する。すなわち、ルータ8が設けられた無線通信ユニット1(C)のEPC機能部3は、転送されてくるIPパケットの送信先ノードが転送テーブル305eに含まれていないノードを示す場合は、ルータ8を介してIPパケットを外部ネットワーク60に転送する。
【0077】
より詳細には、
図11の無線通信ユニット1(A)~1(D)はいずれもルータ8を内蔵しているが、そのいずれか1つのもの、
図11では、カスケード接続の上流側末端に位置する無線通信ユニット1(D)のルータ8だけが外部ネットワーク60に接続されている。外部ネットワーク60は例えば衛星通信回線61などによりルータ8と接続されるグローバル公共ネットワーク(インターネット)である。該構成により、本発明の無線ネットワークシステム外のネットワークを送信先とするIPパケットの転送処理を、簡単なアルゴリズムにより実現できていることがわかる。
【0078】
なお、各無線通信ユニットにおけるIPパケットの転送制御処理については、
図16に示す転送テーブル305eに代え、より簡便な接続中端末ノード登録部を用いた方式とすることも可能である。
図23はその一例を示すものであり、該接続中端末ノード登録部305fが設けられている無線通信ユニット1に接続中のUE5のノード特定情報のみをリストとして記憶している。ノード特定情報は、接続中のUEのIPアドレス(UEIP01,UEIP02,・・・)であるが、UE5を接続ノードとして特定できる情報であればこれに限らず、例えばUE5に組み込まれたSIM(subscriber identity module)カードのID(=UE5の端末加入者情報:SIMID01,SIMID02,・・・)や装置のMACアドレス(MAD01,MAD02,・・・)なども使用可能である。
【0079】
すなわち、
図11において、各無線通信ユニット1(A)~1(D)のEPC機能部3には、無線基地局部4のセル(通信エリア)内にて該無線基地局4に端末側無線ベアラ57(A)~57(D)を介して接続中の複数のUE5(A)~5(D)(移動端末)について、それら接続中のUE5(A)~5(D)のノード特定情報を登録する接続中端末ノード登録部305fを設けておく。EPC機能部3は、無線基地局部4から転送されてくるIPパケットの送信先ノード(送信先アドレス)を接続中端末ノード登録部305fの登録内容と照合し、送信先ノードが、接続中端末ノード登録部305fに登録されたノード特定情報のいずれかに対応するUE(移動端末)を示す場合には、IPパケットを該UEに対し無線基地局部4にて折り返す形で転送する。
【0080】
他方、送信先ノードが接続中端末ノード登録部305に登録されていないノードを示す場合にはIPパケットを中継無線通信部9及び無線基地局部4の双方に転送する。つまり、転送テーブル305eを用いる場合との違いは、外部の送信先を示すIPパケットを受け取ったEPC機能部3は、接続中端末ノード登録部305の内容のみでは送信先ノードが上流側と下流側のいずれに存在するかの判別ができない。そこで、外部の送信先を示すIPパケットについては、送信方向を特に限定せず、上流側と下流側の両方に転送を行なうことでこの問題を解決する。
【0081】
接続中端末ノード登録部305を用いる方式は、
図16の転送テーブル305eを用いる方式と異なり、その内容更新のために他の無線通信ユニットとの間での接続中UEの特定情報を共有するための通信処理が不要となる利点を有する。つまり、個々の無線通信ユニットは、自身の接続中UEの状態を把握する処理に専念すればよいのである。
図24はその処理の流れを示すものであり、A101で処理が開始されると、A102で新たなUEからアタッチ要求があるか否かを確認する。アタッチ要求があればA103に進み、該当するUEのノード特定情報を新規登録する一方、アタッチ要求がなければA103をスキップする。次に、A104では、接続切断したUEがあるか否かを確認する。接続切断したUEがあればA105に進み、該当するUEのノード特定情報を削除する一方、接続切断したUEがなければA105をスキップする。
【0082】
例えば
図11において無線通信ユニット1(B)に着目した場合、その中継無線通信部9は、EPC機能部3から転送されるIPパケットを、上流ユニット間無線ベアラ55(B)を介して上流側の無線通信ユニット1(C)の無線基地局部4(上流無線基地局部)に上りパケットとして転送する。他方、無線通信ユニット1(B)の無線基地局部4はEPC機能部3から転送されるIPパケットを、下流ユニット間無線ベアラ55(A)を介して下流側の無線通信ユニット1(A)の無線基地局部4(下流無線基地局部)に下りパケットとして転送する。この処理が各無線通信ユニット1(A)~1(D)にて実施されることで、送信先のUEが無線ネットワークシステム内に存在する場合は、伝送対象のIPパケットの送信先は、上りリンクと下りリンクのいずれかにて必ず特定できる。なお、上りリンクと下りリンクのうち、伝送対象のIPパケットの送信先が存在しなかった側では、IPパケットはリンク末端の無線通信ユニットまでたどり着くこととなるが、該末端の無線通信ユニットでも送信先のUEが見いだせなかった場合は、その無線通信ユニットでIPパケットを無効化する処理(例えば破棄する処理)を行なえばよい。
【0083】
そして、伝送対象のIPパケットが、無線ネットワークシステムの外部の送信先アドレスを示すものの場合の処理を考慮した場合、
図11のようにカスケード接続された無線通信ユニット1(A)~1(D)の一方の終端に位置するユニット(
図11では無線通信ユニット1(A)とする)を、上記IPパケットを破棄する処理を実行するユニットとして定め、他方の終端に位置するユニット(
図11では無線通信ユニット1(D)とする)は、ルータ8を介して外部ネットワーク60に接続できるように構成する。例えば中間の無線通信ユニット1(B)に接続されたUEが送信元となり、外部ネットワーク60に向けて送信先が指定されたIPパケットは、本方式において下りリンク側に転送されたものについては無線通信ユニット1(A)で破棄されるので、結局上りリンク側に送信されたIPパケットだけが生き残り、最終的に無線通信ユニット1(D)にたどり着くこととなる。無線通信ユニット1(D)では、
図19を援用して説明すれば、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスが、接続中端末ノード登録部305f内のいずれのUEのIPアドレスとも一致しないことを確認し、U6にてそのIPパケットをルータ8に転送する。該IPパケットは、ルータ8を介して外部ネットワーク60に送出される。
【0084】
最後に、前述の簡易ハンドオーバ処理について説明する。
図2を用いてすでに説明したごとく、本実施形態においては、無線通信ユニット対をなす一方の無線通信ユニット1(A)と他方の無線通信ユニット1(B)とがユニット間無線ベアラ55によってのみ通信接続される構成となっている。すなわち、無線通信ユニット対1(A),1(B)の無線基地局部4,4間は、これらを直接接続する制御インターフェースが省略されている(すなわち、従来のX2インターフェースが設けられない構成)。よって、
図11において無線通信ユニット1(A)に接続された移動端末5(A)が無線通信ユニット1(B)の通信セル50B内に移動した場合に、X2インターフェースを用いた通常のハンドオーバ処理を実施することができない。そこで、本実施形態では、
図20に示すシーケンスに従って、下記の簡易ハンドオーバ処理が実行される。すなわち、UE5(A)が無線通信ユニット1(A)に対し、U1及びU2において
図15に示すアタッチシーケンスを実行し、無線通信ユニット1(A)との間に端末用無線ベアラを構築する。これにより、UE5(A)は無線通信ユニット1(A)との間で上りパケット(U3)及び下りパケット(D1)の送受信が可能となる。
【0085】
そして、S101において、無線通信ユニット1(A)の無線基地局部4とUE5(移動端末)とを接続する端末側無線ベアラの切断をUE5(移動端末)が検出し、さらにS102で移動先の無線通信ユニット1(B)をUE5が検出することで、UE5はU1’において無線通信ユニット1(B)に対して新たなアタッチ要求を行なう。無線通信ユニット1(B)はこのアタッチ要求を受けることにより、U2と同様の処理に基づきUE5との間に新たな端末側無線ベアラを確立する。すなわち、無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3からの指令に基づき、無線通信ユニット1(B)の無線基地局部4と、移動後のUE5(A)(移動端末)との間に端末側無線ベアラが再構築される。以上の処理により、基地局間インターフェースが存在しない環境であるにも関わらず、UE5のセル間移動に伴う実質的なハンドオーバ処理が実現できていることがわかる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、あくまで例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図25に示す無線通信ユニット1’においては無線基地局部を、ユニット間無線ベアラ55を構築するための無線基地局部4(X)と、端末用無線ベアラ57を構築するための無線基地局部4(Y)とに分離する形で設けられている。そして、無線通信ユニット対1’(A),1’(B)において、上流側ユニット1’(A)の中継無線通信部9は、下流側ユニット1’(B)の無線基地局部4(X)との間にユニット間無線ベアラ55が構築され、UE5は無線基地局部4(Y)にのみ接続する。このとき、中継無線通信部9と無線基地局部4(X)との間と、UE5と無線基地局部4(Y)との間を、プロトコルの相違する通信方式としてもよい。この場合、無線基地局部4(X)と無線基地局部4(Y)には、互いに異なる方式の通信プロトコルスタックが搭載されることとなる。この場合、ユニット間無線ベアラ55と端末用無線ベアラ57を異なるバンドの周波数チャネルに設定することができる。また、中継無線通信部9と無線基地局部4(X)との間と、UE5と無線基地局部4(Y)との間を、同一の通信方式であって異なるバンドの周波数チャネルに設定することも可能である。さらに、ユニット間無線ベアラ55に設定するユニット間チャネルを1つの周波数チャネルに固定せず、複数周波数チャネルの間で適宜切り替えて設定することもできる。
【0087】
また、無線通信ユニット1は、
図11のようにユニット間無線ベアラ55により複数台カスケード接続して用いる形態に限らず、1台のみ単独で使用することも可能である。さらに、
図11において、複数のユニット間無線ベアラ55(A)~55(C)により順次カスケード接続された3以上(
図11においては4つ)の無線通信ユニット1(A)~1(D)の列の一方の端に位置する無線通信ユニット1(A)を第一端無線通信ユニットとし、他方の端に位置する無線通信ユニット1(D)を第二端無線通信ユニットとしたとき、第一端無線通信ユニット1(A)の中継無線通信部9と第二端無線通信ユニットの1(D)無線基地局部4とを、上記複数のユニット間無線ベアラ55(A)~55(C)とは別のユニット間無線ベアラ55(X)により接続可能とすることもできる。そして、3以上の無線通信ユニット1(A)~1(D)の列は、上記別のユニット間無線ベアラ55(X)の構築により無端形態にカスケード接続されることとなる。無線通信ユニット1(A)~1(D)をこのように無端接続することで、複数のユニット間無線ベアラ55(A)~55(C)及び55(X)は1つが冗長化される。よって、そのいずれかが中継無線通信部9ないし無線基地局部4の不調等により切断される事態が生じても、残余の正常なユニット間無線ベアラにより、無線通信ユニット1(A)~1(D)が相互にカスケード接続された状態を維持でき、ひいては無線通信ユニット1(A)~1(D)のそれぞれに接続するUE5(A)の相互通信を担保することができる。なお、
図11においてユニット間無線ベアラ55(X)は
図12のチャネルマップ305gに従い、CH4に設定されている。
【符号の説明】
【0088】
1(A),1(B) 無線通信ユニット
WS(A),WS(B) 大型船舶
2 MME
3 EPC機能部
301 CPU
302 RAM
303 マスクROM
304A 上流側通信インターフェース
304B 下流側通信インターフェース
305 フラッシュメモリ
305a 通信ファームウェア
305b MMEエンティティ
305c S-GWエンティティ
305d PーGWエンティティ
305e 転送テーブル
305f 接続中端末ノード登録部
305g チャネルマップ
306 バス
21 二次電池モジュール
22 電源回路部
23 可搬型筐体
30,31 通信バス
4 無線基地局部
401 CPU
402 RAM
403 マスクROM
404 通信インターフェース
405 フラッシュメモリ
405a 通信ファームウェア
406 バス
412 無線通信部
5 UE(移動端末)
6 S-GW
7 P-GW
8 ルータ
9 中継無線通信部
901 CPU
902 RAM
903 マスクROM
905 フラッシュメモリ
905a 通信ファームウェア
906 バス
912 無線通信部
50(A),50(B) 通信エリア
55 ユニット間無線ベアラ
57 端末用無線ベアラ