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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】保持装置および保持装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231117BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20231117BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C23C16/458
C23C14/50 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019110791
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020205294
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和孝
(72)【発明者】
【氏名】駒津 貴久
(72)【発明者】
【氏名】土佐 晃文
(72)【発明者】
【氏名】森川 量子
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-101505(JP,A)
【文献】特開2011-049196(JP,A)
【文献】特開2010-016363(JP,A)
【文献】特開2007-150294(JP,A)
【文献】特開平11-087481(JP,A)
【文献】特開2017-183381(JP,A)
【文献】特開2009-158829(JP,A)
【文献】特開2005-136104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 16/458
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略垂直な第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面と、側面と、を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の表面に開口するガス導入口と前記保持体の前記側面に開口するガス吹出口とに連通するガス流路が形成された保持体、
を備え、前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記保持体の内部に、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記ガス流路に連通し、かつ、前記孔の他方の端部が、直接的にまたは間接的に、前記保持体の外部に連通していない孔が形成されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
第1の方向に略垂直な第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面と、側面と、を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の前記第2の表面に開口するガス導入口と前記保持体の前記側面に開口するガス吹出口とに連通するガス流路が形成された保持体、
を備え、前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記保持体の内部に、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記保持体の前記側面に開口し、かつ、前記孔の他方の端部が、前記ガス流路に連通していない孔が形成されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の保持装置において、
前記孔の他方の端部は、前記保持体の表面に開口している、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の方向視において、前記第1の表面の面積に占める前記ガス流路と前記孔との面積の比率と、前記第1の表面を、前記第1の表面の中心を基点として、外縁方向に前記ガス吹出口の数で仮想的に等分したときに形成される各分割領域の各面積に占める各前記分割領域に重なる領域に形成された前記ガス流路と前記孔との面積の比率とは、略同一である、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項5】
第1の方向に略垂直な第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面と、側面と、を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の前記第2の表面に開口するガス導入口と前記保持体の前記側面に開口するガス吹出口とに連通するガス流路と、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記ガス流路に連通し、かつ、前記孔の他方の端部が、直接的にまたは間接的に、前記保持体の外部に連通していない孔と、が形成された保持体、を備え
前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、
前記ガス流路と、前記孔とを形成する溝部が形成された、熱処理前の前記保持体である積層体を準備する第1の工程と、
前記積層体を熱処理する第2の工程と、
を備える、ことを特徴とする保持装置の製造方法。
【請求項6】
第1の方向に略垂直な第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面と、側面と、を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の前記第2の表面に開口するガス導入口と前記保持体の前記側面に開口するガス吹出口とに連通するガス流路と、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記保持体の前記側面に開口し、かつ、前記孔の他方の端部が、前記ガス流路に連通していない孔と、が形成された保持体、を備え
前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、
前記ガス流路と、前記孔とを形成する溝部が形成された、熱処理前の前記保持体である積層体を準備する工程と、
前記積層体を熱処理する工程と、
を備える、ことを特徴とする保持装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物(例えば、半導体ウェハ)を保持しつつ所定の温度(例えば、400~800℃程度)に加熱する加熱装置(「サセプタ」とも呼ばれる。)が知られている。加熱装置は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置、スパッタリング成膜装置等)やエッチング装置(プラズマエッチング装置等)といった半導体製造装置の一部として使用される。
【0003】
一般に、加熱装置は、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略直交する保持面および裏面を有する板状の保持体と、第1の方向に延びる柱状であり、保持体の裏面に接合された柱状支持体とを備える。保持体の内部には、抵抗発熱体が配置されており、保持体の裏面側には、抵抗発熱体に電気的に接続された複数の受電電極(電極パッド)が配置されている。また、柱状支持体内には、各受電電極に接合された電極端子が収容されている。電極端子および受電電極を介して抵抗発熱体に電圧が印加されると、抵抗発熱体が発熱し、保持体の保持面上に保持された対象物(例えば、半導体ウェハ)が例えば400~800℃程度に加熱される。
【0004】
保持体の内部には、更に、雰囲気ガスを加熱装置の外周に供給するためのガス流路であって、保持体の表面に開口するガス導入口とガス吹出口とに連通するガス流路が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-261670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱装置に保持されたウェハの温度分布が不均一になると、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するため、加熱装置にはウェハの温度分布を均一にする性能が求められる。しかしながら、上記従来技術では、第1の方向視において、第1の表面のうち、ガス流路と重なる領域と、ガス流路と重ならない領域とで、保持体とウェハとの間の伝熱性が異なり、その結果、温度分布にばらつきが生じうるという課題がある。
【0007】
なお、このような課題は、加熱装置に限らず、内部に、保持体の表面に開口するガス導入口とガス吹出口とに連通するガス流路が形成された保持体を備え、保持体の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略垂直な第1の表面を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の表面に開口するガス導入口とガス吹出口とに連通するガス流路が形成された保持体、を備え、前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記保持体の内部に、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記ガス流路に連通し、かつ、前記孔の他方の端部が、直接的にまたは間接的に、前記保持体の外部に連通していない孔が形成されている。本保持装置では、孔がガス流路と重ならない領域(非重複領域)に形成されているため、第1の方向視において、第1の表面のうち、非重複領域における、保持体と対象物との間の伝熱性を、ガス流路と重なる領域における当該伝熱性に近づけることができる。また、孔の一方の端部は、ガス流路に連通しているため、孔の内部を、ガス流路の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔の他方の端部は、直接的にまたは間接的に、保持体の外部に連通していない。換言すれば、孔の他方の端部は、袋小路状である。このため、孔が、ガス流路におけるガス吹出口からのガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本保持装置によれば、ガス流路のガス吹出口におけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0011】
(2)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略垂直な第1の表面を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の表面に開口するガス導入口とガス吹出口とに連通するガス流路が形成された保持体、を備え、前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記保持体の内部に、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記保持体の表面に開口し、かつ、前記孔の他方の端部が、前記ガス流路に連通していない孔が形成されている。本保持装置では、孔が非重複領域に形成されているため、第1の方向視において、第1の表面のうち、非重複領域における、保持体と対象物との間の伝熱性を、ガス流路と重なる領域における当該伝熱性に近づけることができる。また、孔の一方の端部は、保持体の表面に開口しているため、孔の内部を、保持体の外部、すなわち、ガス流路の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔の他方の端部は、ガス流路に連通していない。このため、孔が、ガス流路のガス吹出口からのガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本保持装置によれば、ガス流路のガス吹出口におけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記孔の他方の端部は、前記保持体の表面に開口している構成としてもよい。すなわち、孔の両方の端部は、ともに保持体の表面に開口している。このため、孔における通気性がより向上し、より効果的に、保持体の外部、すなわち、ガス流路の内部と同様の雰囲気下とすることができる。また、孔の両方の端部が、ともに保持体の表面に開口しているため、本保持装置を洗浄する際に、孔の内部の洗浄が容易となる。従って、本保持装置によれば、孔の内部の洗浄を容易とするとともに、ガス流路のガス吹出口におけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきをより効果的に低減することができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、前記第1の方向視において、前記第1の表面の面積に占める前記ガス流路と前記孔との面積の比率と、前記第1の表面を、前記第1の表面の中心を基点として、外縁方向に前記ガス吹出口の数で仮想的に等分したときに形成される各分割領域の各面積に占める各前記分割領域重なる領域に形成された前記ガス流路と前記孔との面積の比率とは、略同一である構成としてもよい。換言すれば、第1の方向視において、ガス流路と孔とから構成される空間部分は、第1の表面の全体に亘って比較的同等に分散して配置されている。従って、本保持装置によれば、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきをより効果的に低減することができる。
【0014】
(5)本明細書に開示される保持装置の製造方法は、第1の方向に略垂直な第1の表面を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の表面に開口するガス導入口とガス吹出口とに連通するガス流路と、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記ガス流路に連通し、かつ、前記孔の他方の端部が、直接的にまたは間接的に、前記保持体の外部に連通していない孔と、が形成された保持体、を備え、前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、前記ガス流路と、前記孔とを形成する溝部が形成された、熱処理前の前記保持体である積層体を準備する第1の工程と、前記積層体を熱処理する第2の工程と、を備える。本保持装置の製造方法では、上記ガス流路と上記孔とが形成された、熱処理前の保持体である積層体を準備し、当該積層体を熱処理する。このため、積層体を熱処理する際に、積層体に含まれる有機バインダ中の炭素成分は、保持体の内部に形成されたガス流路に加え、孔を通過することにより、保持体の外部へと除去される。このため、保持体の内部において、ガス流路と重ならない領域(非重複領域)においても、炭素成分の残存量を低減することができる。換言すれば、ガス流路付近の炭素成分の残存量と、ガス流路が存在しない部分、すなわち、孔付近の炭素成分の残存量との差を小さくすることができる。これにより、保持体の内部における、炭素成分の残存量のばらつきに起因する絶縁抵抗のばらつきや、熱伝導性のばらつきを低減することができ、ひいては、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきを低減することができる。また、孔の一方の端部は、ガス流路に連通しているため、孔の内部を、ガス流路の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔の他方の端部は、直接的にまたは間接的に、保持体の外部に連通していない。換言すれば、孔の他方の端部は、袋小路状である。このため、孔が、ガス流路におけるガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本保持装置の製造方法によれば、ガス流路のガス吹出口におけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0015】
(6)本明細書に開示される保持装置の製造方法は、第1の方向に略垂直な第1の表面を有する板状の保持体であって、内部に、前記保持体の表面に開口するガス導入口とガス吹出口とに連通するガス流路と、前記第1の方向視において、前記ガス流路と重ならない領域に形成された孔であって、前記孔の一方の端部が、前記保持体の表面に開口し、かつ、前記孔の他方の端部が、前記ガス流路に連通していない孔と、が形成された保持体、を備え、前記保持体の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、前記ガス流路と、前記孔とを形成する溝部が形成された、熱処理前の前記保持体である積層体を準備する工程と、前記積層体を熱処理する工程と、を備える。本保持装置の製造方法では、上記ガス流路と上記孔とが形成された、熱処理前の保持体である積層体を準備し、当該積層体を熱処理する。このため、積層体を熱処理する際に、積層体に含まれる有機バインダ中の炭素成分は、保持体の内部に形成されたガス流路に加え、孔を通過することにより、保持体の外部へと除去される。このため、保持体の内部において、ガス流路と重ならない領域(非重複領域)においても、炭素成分の残存量を低減することができる。換言すれば、ガス流路付近の炭素成分の残存量と、ガス流路が存在しない部分、すなわち、孔付近の炭素成分の残存量との差を小さくすることができる。これにより、保持体の内部における、炭素成分の残存量のばらつきに起因する絶縁抵抗のばらつきや、熱伝導性のばらつきを低減することができ、ひいては、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきを低減することができる。また、孔の一方の端部は、保持体の表面に開口しているため、孔の内部を、保持体の外部、すなわち、ガス流路の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔の他方の端部は、ガス流路に連通していない。このため、孔が、ガス流路におけるガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本保持装置の製造方法によれば、ガス流路のガス吹出口におけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体の第1の表面上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、加熱装置、静電チャック、保持装置、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における加熱装置100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態における加熱装置100のYZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】第1実施形態における加熱装置100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図4】第1実施形態における加熱装置100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図5】第1実施形態における加熱装置100の製造方法を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態における加熱装置100の製造方法を模式的に示す説明図である。
図7】第2実施形態における加熱装置100AのXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態:
A-1.加熱装置100の構成:
図1は、本実施形態における加熱装置100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における加熱装置100のYZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、本実施形態における加熱装置100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。また、図4は、本実施形態における加熱装置100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。なお、図2には、図1および図4のII-IIの位置における加熱装置100のYZ断面構成が示されており、図3には、図1および図4のIII-IIIの位置における加熱装置100のXZ断面構成が示されている。また、図4には、図2および図3のIV-IVの位置における加熱装置100のXY断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、加熱装置100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を面方向というものとする。加熱装置100は、特許請求の範囲における保持装置に相当する。
【0019】
加熱装置100は、対象物(例えば、半導体ウェハW)を保持しつつ所定の処理温度(例えば、400~800℃程度)に加熱する装置であり、サセプタとも呼ばれる。加熱装置100は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置、スパッタリング成膜装置等)やエッチング装置(プラズマエッチング装置等)といった半導体製造装置の一部として使用される。
【0020】
図1および図2に示すように、加熱装置100は、保持体10と柱状支持体20とを備える。
【0021】
保持体10は、略円板状の部材であり、例えば、Al(アルミナ)やAlN(窒化アルミニウム)を主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。より詳細には、保持体10は、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部OPと、外周部OPの内側に位置する内側部IPとから構成されている。保持体10における内側部IPの厚さ(Z軸方向における厚さであり、以下同様)は、外周部OPに形成された切り欠きの分だけ、外周部OPの厚さより厚くなっている。すなわち、保持体10の外周部OPと内側部IPとの境界の位置で、保持体10の厚さが変化している。
【0022】
保持体10の内側部IPの直径は、例えば95mm以上、495mm以下程度であり、保持体10の外周部OPの直径は、例えば100mm以上、500mm以下程度である(ただし、外周部OPの直径は内側部IPの直径より大きい)。また、保持体10の内側部IPの厚さ(上下方向における長さ)は、例えば3mm以上、20mm以下程度であり、保持体10の外周部OPの厚さは、例えば2mm以上、18mm以下程度である。
【0023】
保持体10の上面S1の内、内側部IPにおける上面(以下、「保持面」ともいう)S11は、所定の方向(本実施形態ではZ軸方向)に略直交する略円形の表面である。保持面S11は、対象物(例えば、半導体ウェハW)を保持する保持面として機能する。保持面S11は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0024】
保持体10の上面S1の内、外周部OPにおける上面(以下、「外周上面」ともいう)S12は、Z軸方向に略直交する略円環状の表面である。保持体10の外周上面S12には、例えば、半導体ウェハWの位置決めを目的として、エッジリングERが固定されている。エッジリングERは、Z軸方向に延び、かつ、Z軸方向視で略円環状の部材である。エッジリングERは、例えば、アルミナにより形成されている。エッジリングERは、Z軸方向視において、エッジリングERの内周面Seが、保持体10の内側部IPにおける側面S4から、例えば0.5mm~5mm程度離れるように固定される。すなわち、エッジリングERの内周面Seと、保持体10の内側部IPにおける側面S4との間には隙間が形成されている。後述するガス流路14のガス吹出口OGから排出された不活性ガスは、当該隙間に供給されるとともに、Z軸正方向(上方向)へと噴出し、その結果、保持体10の保持面S11、保持面S11に保持される対象物(例えば、半導体ウェハW)、エッジリングERを取り囲むエアカーテン(図示せず)を形成する。このエアカーテンにより、保持面S11や対象物(例えば、半導体ウェハW)に塵や汚れ等の不純物が付着することを抑制し、かつ、エッジリングERをプラズマから保護することができる。
【0025】
図2に示すように、保持体10の内部には、発熱抵抗体であるヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50は、例えば、タングステンまたはモリブデン等の金属を含む材料により形成されている。本実施形態では、ヒータ電極50は、Z軸方向視で略同心円状に延びる線状のパターンを構成している。ヒータ電極50の線状パターンの両端部は、保持体10の中心部近傍に配置されており、各端部にはビア導体52の上端部が接続されている。また、図2および図3に示すように、保持体10の裏面S2には、一対の凹部12が形成されており、各凹部12の位置には、導電性の給電電極(電極パッド)54が設けられている。本実施形態では、給電電極54は、Z軸方向視で略円形であり、タングステンを含む材料(例えば、タングステンと窒化アルミニウムとの混合材料)により形成されている。ビア導体52の下端部は、給電電極54に接続されている。その結果、ヒータ電極50と給電電極54とがビア導体52を介して電気的に接続された状態となっている。図3および図4に示すように、保持体10の内部には、さらに、ガス流路14と孔16とが形成されている。ガス流路14および孔16の詳細構成については、後で詳述する。なお、図2では、後述の孔16の図示を省略している。
【0026】
柱状支持体20は、上記所定の方向(上下方向)に延びる略円柱状部材である。柱状支持体20は、保持体10と同様に、AlNやAlを主成分とするセラミックス等の絶縁体により形成されている。柱状支持体20の外径は、例えば30mm以上、90mm以下程度であり、柱状支持体20の高さ(上下方向における長さ)は、例えば100mm以上、300mm以下程度である。
【0027】
保持体10と柱状支持体20とは、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3とが上下方向に対向するように配置されている。柱状支持体20は、保持体10の裏面S2の中心部付近に、公知の接合材料により形成された接合部30を介して接合されている。
【0028】
図2に示すように、柱状支持体20には、保持体10の裏面S2側に開口する貫通孔22が形成されている。貫通孔22には、複数の(本実施形態では2つの)端子部材70が収容されている。端子部材70は、例えばZ軸方向視で略円形の柱状部材であり、ニッケル(Ni)含む材料(例えば、純ニッケルやニッケルを含む合金(例えばコバール))により形成されている。
【0029】
また、Z軸方向において各端子部材70の上端部と各給電電極54との間には、緩衝部材60が配置されている。緩衝部材60は、例えばZ軸方向視で略円形の板状部材であり、タングステンを含む材料(例えば、純タングステンやタングステンを含む合金)により形成されている。緩衝部材60は、端子部材70と給電電極54との間の熱膨張差を緩和する機能を担う部材である。緩衝部材60の直径は、例えば4.5mm~10.0mmである。緩衝部材60の厚さは、例えば0.5mm~5mmである。
【0030】
緩衝部材60の上面は、電極側ロウ付け部(図示せず)により、給電電極54の下面(露出面)と接合(ロウ付け)されている。また、緩衝部材60の下面は、端子側ロウ付け部(図示せず)により、端子部材70と接合されている。電極側ロウ付け部および端子側ロウ付け部は、例えば、Ni系(Ni-Cr系合金等)、Au系(純Au、Au-Ni系合金等)、Ag系(純Ag等)のロウ材である。
【0031】
図示しない電源から各端子部材70、各緩衝部材60、各給電電極54、各ビア導体52を介してヒータ電極50に電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱し、保持体10の上面S1上に保持された対象物(例えば、半導体ウェハW)が所定の温度(例えば、400~800℃程度)に加熱される。
【0032】
A-2.ガス流路14の詳細構成:
図3および図4に示すように、保持体10の内部には、ガス流路14が形成されている。ガス流路14は、ヒータ電極50に対して裏面S2側に形成されており、保持体10の裏面S2に開口するガス導入口IGと、互いに略同径であり、保持体10の内側部IPにおける側面S4にそれぞれ開口する3つのガス吹出口OG、とに連通している。ガス流路14、ガス導入口IGおよびガス吹出口OGのそれぞれの径は、例えば0.4mm以上、4mm以下程度である。
【0033】
本実施形態において、ガス流路14は、3つの横流路14aと、1つの縦流路14bとから構成されている。横流路14aは、面方向に延びる経路(空間)であり、一方の端部をガス吹出口OGとし、かつ、他方の端部において、縦流路14bに連通している。より詳しくは、各横流路14aは、Z軸方向視で、保持体10の中心POを中心として略放射線状に、かつ、互いに等間隔となるように配置されている。このため、Z軸方向視で、各横流路14aにおけるガス吹出口OGから保持体10の中心POまでの最短距離は互いに同等である。縦流路14bは、保持体10の保持面S11の中心POにおいて、Z軸方向に延びる経路(空間)であり、一方の端部をガス導入口IGとし、かつ、他方の端部において、横流路14aに連通している。すなわち、本実施形態において、3つの横流路14aは、1つの縦流路14bを共有している。このため、ガス流路14において、ガス導入口IGから各ガス吹出口OGまでの各最短距離は互いに同等である。これにより、各ガス吹出口OGから排出されるガス流量を同等とすることができる。また、上述のように、本実施形態では、3つのガス吹出口OGと、1つのガス導入口IGとを有している。このように、本実施形態において、ガス導入口IGの数は、ガス吹出口OGの数より少ない。保持体10の保持面S11における均熱性の確保の観点や、保持体10の内側部IPにおいて配置が制限される観点から、ガス導入口IGの数は少ないことが好ましい。
【0034】
ガス流路14における縦流路14bは、ガス導入口IGにおいて、ガス供給管STに接続している。ガス供給管STは、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス等)を供給可能なガス供給源(図示せず)に接続され、かつ、柱状支持体20の貫通孔22内に配置されている。これにより、ガス供給源から供給された不活性ガスは、ガス供給管STとガス流路14とを通過し、ガス吹出口OGから排出され、上述のエアカーテンを形成する。
【0035】
A-3.孔16の構成:
図3および図4に示すように、保持体10(具体的には、内側部IP)の内部には、孔16が形成されている。孔16は、ヒータ電極50に対して裏面S2側に形成されており、かつ、Z軸方向において、ガス流路14の内の横流路14aと同じ位置に配置されている。すなわち、孔16は、横流路14aと同様に、面方向に延びる空間である。また、Z軸方向視における保持体10の内側部IPにおいて、孔16は、ガス流路14(特には、横流路14a)と重ならない領域(以下、「非重複領域An」ともいう)に形成されている。また、本実施形態において、孔16は、1つの横流路14aに対して、それぞれ2つの外側孔16aと内側孔16bとが連通している。外側孔16aの一方の端部E1は横流路14aに連通しており、かつ、他方の端部E2は袋小路状となっている。すなわち、他方の端部E2は、直接的におよび間接的に、保持体10の外部に連通していない。内側孔16bについても、外側孔16aと同様に、一方の端部は横流路14aに連通しており、かつ、他方の端部は袋小路状となっている。
【0036】
本実施形態において、Z軸方向視において、保持体10における内側部IPの保持面S11の面積に占める、ガス流路14と孔16との面積の合計面積の比率(以下、「全体比率」ともいう)は、例えば0.5%以上、10%以下程度である。また、本実施形態において、Z軸方向視において、内側部IPの保持面S11を、中心POを基点として、周方向にガス吹出口OGの数(本実施形態において3つ)で仮想的に等分したときに形成される分割領域Ptの面積に占める、当該分割領域Ptに重なる領域に形成されたガス流路14と孔16との面積の合計面積の比率(以下、「個別比率」ともいう)は、上記全体比率と略同一である。ここで、個別比率が全体比率と「略同一」であるとは、完全に同一比率であることのみならず、個別比率の値が、全体比率の下限値または上限値に対して、例えば±10%程度(絶対値)の範囲であることをも含むことを意味する。
【0037】
A-4.加熱装置100の製造方法:
次に、第1実施形態における加熱装置100の製造方法について説明する。図5は、第1実施形態における加熱装置100の製造方法を示すフローチャートである。また、図6は、第1実施形態における加熱装置100の製造方法の概要を示す説明図である。
【0038】
加熱装置100(保持体10および柱状支持体20)の製造方法は、例えば以下の通りである。初めに、図6に示すように、上側シートブロック10pu(図6(A)参照)と下側シートブロック10pb(図6(B)参照)とを準備する(S110)。ステップS110は、例えば、次の工程により行われる。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム(Y)粉末1重量部と、アクリル系バインダ20重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、トルエン等の有機溶剤を加え、ボールミルにて20時間混合し、グリーンシート用スラリーを作製する。このグリーンシート用スラリーをキャスティング装置でシート状に成形した後に乾燥させ、グリーンシートを複数枚作製する。
【0039】
また、窒化アルミニウム粉末、アクリル系バインダ、テルピネオール等の有機溶剤の混合物に、タングステン等の金属粉末を添加して混練することにより、メタライズペーストを作製する。このメタライズペーストを例えばスクリーン印刷装置を用いて印刷することにより、特定の各グリーンシートに、後にヒータ電極50や給電電極54等となる未焼結導体層を形成する。また、グリーンシートにあらかじめビア孔を設けた状態で印刷することにより、後にビア導体52となる未焼結導体部を形成する。さらに、グリーンシートにあらかじめガス流路14(横流路14aおよび縦流路14b)となる溝部14g(横溝部14agおよび縦溝部14bg)(図6(B)参照)と、孔16となる溝部(図示せず)とを設ける。なお、孔16となる溝部を設ける位置は、加熱装置100の設計段階において、保持面S11の温度分布をシミュレーション等に基づいて測定し、その測定結果に基づいて、保持面S11の温度分布が均一となるよう決定することができる。溝部14gおよび孔16となる溝部は、特許請求の範囲における溝部に相当する。
【0040】
そして、作製した複数のグリーンシートのうち、ヒータ電極50やビア導体52等となる未焼結導体層が形成されたグリーンシートを含む所定枚数のグリーンシートを積層して圧着し、必要に応じて外周を切断して、上側シートブロック10puを作製する(図6(A)参照)。また、作製した複数のグリーンシートのうち、溝部14gおよび孔16となる溝部が形成されたグリーンシートを含む所定枚数のグリーンシートを積層して熱圧着し、必要に応じて外周を切断して、下側シートブロック10pbを作製する(図6(B)参照)。上側シートブロック10puおよび下側シートブロック10pbの外周を切断する際には、Z軸方向視において、下側シートブロック10pbの径が上側シートブロック10puの径より大きくなるよう切断する。
【0041】
次に、上側シートブロック10puの下面Suと下側シートブロック10pbの上面Sbとを、接着層(図示せず)を介して対向させるようにして、上側シートブロック10puと下側シートブロック10pbとを積層し、圧着して積層体10pを準備する(S120、図6(C)参照)。接着層は、例えば、上述のグリーンシート用スラリーに接着用の樹脂、可塑剤や溶剤等を加えたものである。ステップS110およびS120は、特許請求の範囲における第1の工程に相当する。
【0042】
次に、積層体10pを熱処理して保持体10を作製する(S130、図6(D)参照)。本実施形態において、具体的には、熱処理として、脱脂および焼成を行うことができる。ステップS130は、特許請求の範囲における第2の工程に相当する。以上の工程により、保持体10を準備することができる。
【0043】
次に、柱状支持体20を作製する(S140)。柱状支持体20の作製方法、例えば以下の通りである。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム粉末1重量部と、PVAバインダ3重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、メタノール等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合し、スラリーを得る。このスラリーをスプレードライヤーにて顆粒化し、原料粉末を作製する。次に、貫通孔22に対応する中子が配置されたゴム型に原料粉末を充填し、冷間静水圧プレスして成形体を得る。得られた成形体を脱脂し、さらにこの脱脂体を焼成する。以上の工程により、柱状支持体20が作製される。
【0044】
次に、保持体10と柱状支持体20とを接合する(S150)。保持体10の裏面S2および柱状支持体20の上面S3に対して必要によりラッピング加工を行った後、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3との少なくとも一方に、例えば希土類や有機溶剤等を混合してペースト状にした公知の接合剤を均一に塗布した後、脱脂処理する。次いで、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3とを重ね合わせ、ホットプレス焼成を行うことにより、保持体10と柱状支持体20とを接合する。
【0045】
最後に、端子部材70およびエッジリングER等を配置する(S160)。端子部材70の配置は、例えば、次の方法により行うことができる。まず、保持体10と柱状支持体20との接合の後、各緩衝部材60を貫通孔22内に挿入し、各緩衝部材60の上面を各給電電極54の下面に、ロウ材(例えば、Ni系、Au系、Ag系のロウ材)を用いてロウ付けする。また、各端子部材70を貫通孔22内に挿入し、各端子部材70の上端部を各緩衝部材60に、ロウ材(例えば、Ni系、Au系、Ag系のロウ材)を用いてロウ付けする。また、エッジリングERの配置については、あらかじめ準備されたエッジリングERを保持体10の外周部OPにおける外周上面S12に、接着剤を介して接合する。このとき、エッジリングERは、内側部IPの外周において、エッジリングERの内周面Seと内側部IPの側面S4との間の間隔が略同一となるよう接合される。主として以上の製造方法により、上述した構成の加熱装置100が製造される。
【0046】
A-5.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の加熱装置100は、保持面S11を有する板状であり、内部に、保持体10の裏面S2に開口するガス導入口IGと、側面S4に開口するガス吹出口OGとに連通するガス流路14が形成された保持体10、を備え、保持体10の保持面S11上に半導体ウェハWといった対象物を保持する加熱装置100である。本実施形態の加熱装置100は、さらに、保持体10(具体的には、内側部IP)の内部に、Z軸方向視において、ガス流路14と重ならない領域(非重複領域An)に孔16が形成されている。当該孔16(例えば、外側孔16a)は、一方の端部E1が、ガス流路14(特には、横流路14a)に連通し、かつ、他方の端部E2が、直接的にまたは間接的に、保持体10の外部に連通していない。本実施形態の加熱装置100では、孔16が非重複領域Anに形成されているため、Z軸方向視において、保持面S11のうち、非重複領域Anにおける、保持体10と半導体ウェハWとの間の伝熱性を、ガス流路14と重なる領域における当該伝熱性に近づけることができる。また、孔16(例えば、外側孔16a)の一方の端部E1は、ガス流路14(特には、横流路14a)に連通しているため、孔16の内部を、ガス流路14の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔16の他方の端部E2は、直接的にまたは間接的に、保持体10の外部に連通していない。換言すれば、孔16の他方の端部E2は、袋小路状である。このため、孔16が、ガス流路14におけるガス吹出口OGからのガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本実施形態の加熱装置100によれば、ガス流路14のガス吹出口OGにおけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体10における内側部IPの保持面S11上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0047】
本実施形態の加熱装置100では、Z軸方向視において、保持面S11の面積に占めるガス流路14と孔16との面積の比率と、保持面S11を、保持面S11の中心POを基点として、外縁方向にガス吹出口OGの数(本実施形態において3つ)で仮想的に等分したときに形成される各分割領域Ptの各面積に占める各分割領域Ptに位置するガス流路14と孔16との面積の比率とは、略同一である。換言すれば、Z軸方向視において、ガス流路14と孔16とから構成される空間部分は、保持面S11の全体に亘って比較的同等に分散して配置されている。従って、本実施形態の加熱装置100によれば、保持体10における内側部IPの保持面S11上の温度分布のばらつきをより効果的に低減することができる。
【0048】
本実施形態の加熱装置100の製造方法では、保持面S11を有する板状であり、内部に、保持体10の裏面S2に開口するガス導入口IGと、側面S4に開口するガス吹出口OGとに連通するガス流路14と、Z軸方向視において、ガス流路14と重ならない領域(非重複領域An)に形成された孔16であり、一方の端部E1が、ガス流路14(特には、横流路14a)に連通し、かつ、他方の端部E2が、直接的にまたは間接的に、保持体10の外部に連通していない孔16と、が形成された保持体10を備え、保持体10の保持面S11上に半導体ウェハWといった対象物を保持する加熱装置100の製造方法において、ガス流路14と、孔16とを形成する溝部14g等が形成された、熱処理前の保持体10である積層体10pを準備する第1の工程(S110,S120)と、積層体10pを熱処理する第2の工程(S130)とを備える。
【0049】
本実施形態の加熱装置100の製造方法では、上記ガス流路14と上記孔16とが形成された、熱処理前の保持体10である積層体10pを準備し、当該積層体10pを熱処理する。このため、積層体10pを熱処理する際に、積層体10pに含まれる有機バインダ中の炭素成分は、保持体10(具体的には、内側部IP)の内部に形成されたガス流路14に加え、孔16を通過することにより、保持体10の外部へと除去される。このため、保持体10の内部において、ガス流路14と重ならない領域(非重複領域An)においても、炭素成分の残存量を低減することができる。換言すれば、ガス流路14付近の炭素成分の残存量と、ガス流路14が存在しない部分、すなわち、孔16付近の炭素成分の残存量との差を小さくすることができる。これにより、保持体10(具体的には、内側部IP)の内部における、炭素成分の残存量のばらつきに起因する絶縁抵抗のばらつきや、熱伝導性のばらつきを低減することができ、ひいては、保持体10における内側部IPの保持面S11上の温度分布のばらつきを低減することができる。また、孔16の一方の端部E1は、ガス流路14(具体的には、横流路14a)に連通しているため、孔16の内部を、ガス流路14の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔16の他方の端部E2は、直接的にまたは間接的に、保持体10の外部に連通していない。換言すれば、孔16の他方の端部E2は、袋小路状である。このため、孔16が、ガス流路14におけるガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本実施形態の加熱装置100の製造方法によれば、ガス流路14のガス吹出口OGにおけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体10における内側部IPの保持面S11上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0050】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の加熱装置100Aの構成を概略的に示す説明図である。図7には、上述した図4の断面に対応する第2実施形態の加熱装置100AのXY断面構成が示されている。以下では、第2実施形態の加熱装置100Aの構成の内、上述した第1実施形態の加熱装置100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0051】
図7に示すように、第2実施形態の加熱装置100Aの構成は、上述した第1実施形態の加熱装置100の構成と比較して、ガス流路14に連通する孔16に代えて、ガス流路14に連通していない孔16Aを備えている点で異なっている。具体的には、第2実施形態の加熱装置100Aでは、保持体10A(具体的には、内側部IP)の内部には、有底孔16cと貫通孔16dとから構成される孔16Aが形成されている。また、孔16Aは、第1実施形態における孔16と同様に、ヒータ電極50に対して裏面S2側に4形成されており、かつ、Z軸方向において、ガス流路14の内の横流路14aと同じ位置に配置されている。また、孔16Aは、第1実施形態における孔16と同様に、Z軸方向視における保持体10Aの内側部IPにおいて、ガス流路14(特には、横流路14a)と重ならない領域(非重複領域An)に形成されている。上述のように、孔16Aは、ガス流路14(具体的には、横流路14a)に連通していない。具体的には、孔16Aの内の有底孔16cの一方の端部E3は、保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口しており、かつ、他方の端部E4は袋小路状となっている。また、孔16Aの内の貫通孔16dは、その両方の端部E5,E6において、保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口している。
【0052】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、Z軸方向視において、保持体10Aにおける内側部IPの保持面S11の面積に占める、ガス流路14と孔16Aとの面積の合計面積の全体比率は、例えば0.5%以上、10%以下程度である。また、Z軸方向視において、内側部IPの保持面S11を、中心POを基点として、周方向にガス吹出口OGの数(本実施形態において3つ)で仮想的に等分したときに形成される分割領域の面積に占める、当該分割領域に重なる領域に形成されたガス流路14と孔16Aとの面積の合計面積の個別比率は、上記全体比率と略同一である。
【0053】
また、本実施形態における加熱装置100Aの製造方法についても、以下の点を除き、第1実施形態における加熱装置100の製造方法と同様である。本実施形態の加熱装置100Aの製造方法では、ステップS110において、Z軸方向視において、第1実施形態における溝部とはパターンの異なる溝部が設けられる。すなわち、ステップS110において、Z軸方向視において、図7に示す孔16Aを形成するよう溝部を設ける。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の加熱装置100Aは、第1実施形態の加熱装置100と同様に、保持面S11を有する板状であり、内部に、保持体10Aの裏面S2に開口するガス導入口IGと、側面S4に開口するガス吹出口OGとに連通するガス流路14が形成された保持体10A、を備え、保持体10Aの保持面S11上に半導体ウェハWといった対象物を保持する加熱装置100Aである。また、本実施形態の加熱装置100Aは、さらに、保持体10A(具体的には、内側部IP)の内部に、Z軸方向視において、ガス流路14と重ならない領域(非重複領域An)に孔16Aが形成されている。本実施形態において、当該孔16Aの内の有底孔16cは、一方の端部E3が、保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口し、かつ、有底孔16cの他方の端部E4が、ガス流路14(例えば、横流路14a)に連通していない。また、貫通孔16dは、両方の端部E5,E6が、保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口し、かつ、ガス流路14(例えば、横流路14a)に連通していない。本実施形態の加熱装置100Aでは、孔16Aが非重複領域Anに形成されているため、Z軸方向視において、保持面S11のうち、非重複領域Anにおける、保持体10Aと半導体ウェハWとの間の伝熱性を、ガス流路14と重なる領域における当該伝熱性に近づけることができる。また、孔16Aの一方の端部(有底孔16cにおいて端部E3、貫通孔16dにおいて例えば端部E5)は、保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口しているため、孔16Aの内部を、保持体10Aの外部、すなわち、ガス流路14の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔16Aの他方の端部(有底孔16cにおいて端部E4、貫通孔16dにおいて例えば端部E6)は、ガス流路14に連通していない。このため、孔16Aが、ガス流路14のガス吹出口OGからのガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本実施形態の加熱装置100Aによれば、ガス流路14のガス吹出口OGにおけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体10Aにおける内側部IPの保持面S11上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0055】
また、本実施形態では、孔16Aの内の貫通孔16dにおいて、他方の端部E6は、一方の端部E5と同様に、保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口している。すなわち、貫通孔16dの両方の端部E5,E6は、ともに保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口している。このため、貫通孔16dにおける通気性がより向上し、より効果的に、保持体10Aの外部、すなわち、ガス流路14の内部と同様の雰囲気下とすることができる。また、貫通孔16dの両方の端部E5,E6が、ともに保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口しているため、本実施形態の加熱装置100Aを洗浄する際に、貫通孔16dの内部の洗浄が容易となる。従って、本実施形態の加熱装置100Aによれば、貫通孔16dの内部の洗浄を容易とするとともに、ガス流路14のガス吹出口OGにおけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体10Aの内側部IPにおける保持面S11上の温度分布のばらつきをより効果的に低減することができる。
【0056】
本実施形態の加熱装置100Aの製造方法では、保持面S11を有する板状であり、内部に、保持体10Aの裏面S2に開口するガス導入口IGと、側面S4に開口するガス吹出口OGとに連通するガス流路14と、Z軸方向視において、ガス流路14と重ならない領域(非重複領域An)に形成された孔16Aであり、一方の端部(有底孔16cにおいて端部E3、貫通孔16dにおいて例えば端部E5)が、ガス流路14(例えば、横流路14a)に連通し、かつ、他方の端部(有底孔16cにおいて他方の端部E4、貫通孔16dにおいて例えば端部E6)が、直接的にまたは間接的に、保持体10Aの外部に連通していない孔16Aと、が形成された保持体10Aを備え、保持体10Aの保持面S11上に半導体ウェハWといった対象物を保持する加熱装置100Aの製造方法において、ガス流路14と、孔16Aとを形成する溝部14g等が形成された、熱処理前の保持体10Aである積層体を準備する第1の工程と、積層体10pを熱処理する第2の工程とを備える。
【0057】
本実施形態の加熱装置100Aの製造方法では、上記ガス流路14と上記孔16Aとが形成された、熱処理前の保持体10Aである積層体10pを準備し、当該積層体10pを熱処理する。このため、積層体10pを熱処理する際に、積層体10pに含まれる有機バインダ中の炭素成分は、保持体10A(具体的には、内側部IP)の内部に形成されたガス流路14に加え、孔16Aを通過することにより、保持体10Aの外部へと除去される。このため、保持体10Aの内部において、ガス流路14と重ならない領域(非重複領域An)においても、炭素成分の残存量を低減することができる。換言すれば、ガス流路14付近の炭素成分の残存量と、ガス流路14が存在しない部分、すなわち、孔16A付近の炭素成分の残存量との差を小さくすることができる。これにより、保持体10A(具体的には、内側部IP)の内部における、炭素成分の残存量のばらつきに起因する絶縁抵抗のばらつきや、熱伝導性のばらつきを低減することができ、ひいては、保持体10Aにおける内側部IPの保持面S11上の温度分布のばらつきを低減することができる。また、孔16Aの一方の端部(有底孔16cにおいて端部E3、貫通孔16dにおいて例えば端部E5)は、保持体10Aの内側部IPにおける側面S4に開口しているため、孔16Aの内部を、保持体10Aの外部、すなわち、ガス流路14の内部と同様の雰囲気下とすることができる。一方、孔16Aの他方の端部(有底孔16cにおいて他方の端部E4、貫通孔16dにおいて例えば端部E6)は、ガス流路14に連通していない。このため、孔16Aが、ガス流路14におけるガス吹出量へ影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、本実施形態の加熱装置100Aの製造方法によれば、ガス流路14のガス吹出口OGにおけるガス吹出量に影響を与えることなく、保持体10Aにおける内側部IPの保持面S11上の温度分布のばらつきを低減することができる。
【0058】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
上記実施形態における加熱装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、保持体10が、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部OPと、外周部OPの内側に位置する内側部IPとから構成されているが、保持体10に切り欠きが形成されておらず、保持体10のZ軸方向の厚さが全体にわたって一様であるとしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、保持体10の外周上面S12に、Z軸方向視で略円環状のエッジリングERが固定されている構成が採用されているが、これに限定されない。例えば、エッジリングERが固定されていない構成であってもよい。また、エッジリングERの形状は、上記略円環状に限定されない。
【0061】
上記実施形態における加熱装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、Z軸方向において、ガス流路14と、孔16(孔16A)とは、同じ位置に配置されているが、これに限定されず、両者が異なる位置に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、Z軸方向において、孔16(孔16A)は、単一の位置に配置されているが、これに限定されず、複数の異なる位置に分かれて配置されていてもよい。また、上記実施形態において、保持体10には、ガス流路14に連通する孔16とともに、ガス流路14に連通していない孔16Aが形成されていてもよい。
【0062】
上記第1実施形態において、1つの横流路14aに対して、それぞれ2つの外側孔16aと内側孔16bとが連通する構成としたがこれに限定されない。例えば、1つの横流路14aに対して、それぞれ1つのまたは3つ以上の外側孔16aと内側孔16bとが連通する構成としてもよい。また、横流路14aに代えて、または、横流路14aとともに、縦流路14bに連通する孔16を有する構成としてもよい。
【0063】
上記第2実施形態において、保持体10Aは、複数の有底孔16cと貫通孔16dとを有する構成としたが、その数は限定されない。また、有底孔16cと内側孔16bとのいずれか一方を有する構成としてもよい。
【0064】
上記実施形態において、Z軸方向視における孔16(孔16A)のパターンは、特に限定されるものではない。また、Z軸方向視における孔16(孔16A)の形状は、円弧状、直線状、波形状等とすることができる。
【0065】
上記実施形態において、Z軸方向視において、保持体10における全体比率の値は、特に限定されず、0.5%未満、10%超であってもよい。また、上記実施形態では、全体比率は、個別比率と略同一としたが、これに限定されず、全体比率と個別比率とが異なる構成であってもよい。
【0066】
上記実施形態のガス流路14では、3つの横流路14aが1つの縦流路14bを共有している構成としたが、これに限定されず、各横流路14aがそれぞれ対応する縦流路14bを有する構成であってもよい。すなわち、保持体10(保持体10A)は、複数のガス導入口IGを備えていてもよい。
【0067】
また、本発明は、加熱装置100に限らず、内部に、保持体10の表面に開口するガス導入口IGとガス吹出口OGとに連通するガス流路14が形成された保持体10を備え、保持体10の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、静電チャック等)にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10:保持体 10A:保持体 10p:積層体 10pb:下側シートブロック 10pu:上側シートブロック 12:凹部 14:ガス流路 14a:横流路 14ag:横溝部 14b:縦流路 14bg:縦溝部 14g:溝部 16:孔 16A:孔 16a:外側孔 16b:内側孔 16c:有底孔 16d:貫通孔 20:柱状支持体 22:貫通孔 30:接合部 50:ヒータ電極 52:ビア導体 54:給電電極(電極パッド) 60:緩衝部材 70:端子部材 100:加熱装置 100A:加熱装置 ER:エッジリング IG:ガス導入口 IP:内側部 OG:ガス吹出口 OP:外周部 PO:中心 Pt:分割領域 S11:保持面 S12:外周上面 S1:上面 S2:裏面 S3:上面 S4:側面 ST:ガス供給管 Sb:上面 Se:内周面 Su:下面 W:半導体ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7