IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キャタラーの特許一覧

<>
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図1
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図2
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図3
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図4
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図5
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図6
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図7
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図8
  • 特許-パティキュレートフィルタ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】パティキュレートフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20231117BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20231117BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20231117BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20231117BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20231117BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20231117BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B01D53/94 241
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J23/58 A ZAB
B01D39/20 D
B01D46/00 302
F01N3/022 C
F01N3/035 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019112755
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020203255
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】尾上 亮太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 凌
(72)【発明者】
【氏名】岩井 桃子
(72)【発明者】
【氏名】松下 大和
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515328(JP,A)
【文献】特表2017-510439(JP,A)
【文献】特表2008-510605(JP,A)
【文献】特開2007-132240(JP,A)
【文献】特開2009-243273(JP,A)
【文献】特開2013-015087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/96、
39/20、46/00
B01J 23/58、35/04
F01N 3/00- 3/38、
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置されて該内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するために用いられるパティキュレートフィルタであって、
排ガス流入側の端部のみが開口した入側セル、該入側セルと隣り合い排ガス流出側の端部のみが開口した出側セル、並びに前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁を有するウォールフロー構造の基材と、
前記隔壁の内部に形成されたウォッシュコート層と
を備え、
前記ウォッシュコート層は、
前記入側セルに接する前記隔壁の表面から前記隔壁の内方に所定の厚みで形成され、かつ、前記排ガス流入側の端部近傍から前記隔壁の延伸方向に沿って所定の長さで形成された入側層と、
前記出側セルに接する前記隔壁の表面から前記隔壁の内方に所定の厚みで形成され、かつ、前記排ガス流出側の端部近傍から前記隔壁の延伸方向に沿って所定の長さで形成されている出側層と
を備え、
前記入側層と前記出側層とが一部重複するように、前記入側層および前記出側層の各々の厚みと長さが設定されており、
前記入側層は、前記粒子状物質の燃焼を促進する貴金属触媒を実質的に含有しておらず、かつ、前記出側層は、前記貴金属触媒を含有しており、
前記入側層は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、カルシア、希土類金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物から選ばれる少なくとも1種からなり、
前記基材全体における前記隔壁の細孔の有効容積Vに対する前記ウォッシュコート層の総コート量Wの割合(W/V)が200g/L以上400g/L以下である、パティキュレートフィルタ。
【請求項2】
前記出側層における貴金属触媒の含有量は0.1g/L以上である、請求項1に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
前記延伸方向における前記隔壁の全長を100%としたとき、前記ウォッシュコート層の前記貴金属触媒を実質的に含有していない領域は、前記排ガス流出側の端部近傍から30%以上60%以下の領域に形成されている、請求項1または2に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁の厚みを100%としたとき、前記入側層は、前記入側セルと接する表面から前記隔壁の内方に75%以上100%以下の厚みで形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
前記隔壁の厚みを100%としたとき、前記出側層は、前記出側セルと接する表面から前記隔壁の内方に75%以上100%以下の厚みで形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項6】
前記隔壁の表面に前記ウォッシュコート層が実質的に存在しない、請求項1~4のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項7】
前記貴金属触媒が、Pt、Pd、Rhの群より選択される少なくとも一種類以上の白金族元素を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルタ。
【請求項8】
前記内燃機関はガソリンエンジンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パティキュレートフィルタに関する。詳しくは、内燃機関から排出される排ガスに含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するパティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンやディーゼル油等を燃料とする内燃機関からの排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の気体成分の他に、炭素を主成分とする粒子状物質(以下、「PM」ともいう。)が含まれている。HC、CO、NOx等の気体成分と同様に、このPMは、人体への影響を考慮した排出量が定められている。
【0003】
このPMを排ガスから除去する技術の一例として、PMを捕集するパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」ともいう。)を内燃機関の排気通路に配置する技術が挙げられる。かかるパティキュレートフィルタの一例として、ウォールフロー型のフィルタが挙げられる。このウォールフロー型のフィルタは、複数の中空部(セル)を有したハニカム構造の基材をベースにし、出口を閉塞させた入側セルと、入口を閉塞させた出側セルとを交互に形成することによって構築される。かかるウォールフロー型のフィルタに供給された排ガスは、入側セルに流入して多孔質の隔壁を通過した後に、出側セルを通ってフィルタ外部へ排出される。このとき、排ガス中のPMが隔壁の細孔内に捕集される。また、このようなウォールフロー型のフィルタでは、高温安定性やPM捕集性能などの向上のために、隔壁の内部(細孔の壁面)にウォッシュコート層を形成することがある。
【0004】
この種のウォールフロー型のフィルタでは、隔壁の細孔内へのPM堆積量が増加すると、細孔の目詰まりによってガス流通性が低下し、圧力損失(以下、「圧損」ともいう。)が増大する可能性がある。このため、近年のパティキュレートフィルタでは、細孔内に堆積したPMの酸化(燃焼)を促進する貴金属触媒がウォッシュコート層に担持されている。このような貴金属触媒を担持させたパティキュレートフィルタの一例が特許文献1、2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-220029号公報
【文献】特開2016-182536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、PM排出量に対する規制が強化されているため、従来よりもPM捕集性能に優れたパティキュレートフィルタが求められている。かかる要求を受けて検討を行った結果、本発明者らは、ウォールフロー型のフィルタでは、細孔径の小さな細孔にPMが優先的に捕集されることと、PM堆積量の増加によって隔壁の細孔が小径化することを見出した。これらの知見より、本発明者らは、ウォールフロー型のフィルタでは、継続した使用によるPM堆積量の増加に伴ってPM捕集性能が向上すると考えた。
【0007】
しかしながら、上述したように、細孔内へのPM堆積量が増加すると、ガス流通性の低下による圧損増大が生じる可能性があるため、近年のパティキュレートフィルタでは、PMの燃焼を促進する貴金属触媒がウォッシュコート層に担持されている。このような構造のパティキュレートフィルタでは、PM堆積量の増加に伴うPM捕集性能の向上の恩恵を得ることが難しい。このように、ウォールフロー構造のフィルタでは、PM捕集性能と圧損抑制性能とを高いレベルで両立させることが困難であることが分かった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、PM捕集性能と圧損抑制性能とを高いレベルで両立することができるパティキュレートフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するための検討を行う際に、本発明者らは次の点に着目した。
内燃機関の運転を開始した直後である運転初期では、PM含有量の多い低温の排ガスが排出される一方で、運転が安定した運転中期では、PM含有量が少ない高温の排ガスが排出されるという傾向がある。さらに、運転初期に排出される排ガスは、流量が少ないため、ガス流れ方向における上流側の隔壁を通過する傾向がある。一方、運転中期に排出される排ガスは、比較的に流量が多いため、下流側の隔壁を通過する傾向がある。
【0010】
本発明者らは、この運転時期によるPM含有量と排ガス流量の違いに着目して検討を重ねた結果、隔壁の上流側の領域に貴金属触媒を存在させず、かつ、下流側の領域に貴金属触媒を存在させることに思い至った。
先ず、隔壁の上流側の領域に貴金属触媒を存在させないことによって、当該上流側の領域において、PM堆積量の増加に伴うPM捕集性能の向上が生じやすくなる。これによって、PM含有量が多く、かつ、上流側の領域を通過する運転初期の排ガスから好適にPMを除去できる。また、運転初期の排ガスは、流量が少ないため、細孔径が比較的に小さな状態に維持される上流側の領域を通過した場合でも、急激な圧損上昇が生じにくい。
一方、隔壁の下流側の領域に貴金属触媒を存在させることによって、当該下流側の領域において、PMの燃焼によるガス流通性の回復が生じやすくなる。これにより、流量が多い排ガスが供給される運転中期における圧損の増大を好適に抑制できる。また、運転中期の排ガスは、PM含有量が少ないため、細孔径が比較的に大きな状態に維持される下流側の領域でもPMを十分に除去することができる。
【0011】
ここに開示されるパティキュレートフィルタは、上述の知見に基づいてなされたものである。かかるパティキュレートフィルタは、内燃機関の排気通路に配置されて該内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するために用いられる。このパティキュレートフィルタは、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セル、該入側セルと隣り合い排ガス流出側の端部のみが開口した出側セル、並びに入側セルと出側セルとを仕切る多孔質の隔壁を有するウォールフロー構造の基材と、隔壁の内部に形成されたウォッシュコート層とを備えている。そして、ウォッシュコート層は、入側セルに接する隔壁の表面から隔壁の内方に所定の厚みで形成され、かつ、排ガス流入側の端部近傍から隔壁の延伸方向に沿って所定の長さで形成された入側層と、出側セルに接する隔壁の表面から隔壁の内方に所定の厚みで形成され、かつ、排ガス流出側の端部近傍から隔壁の延伸方向に沿って所定の長さで形成されている出側層とを備え、入側層と出側層とが一部重複するように、入側層および出側層の各々の厚みと長さが設定されている。そして、ここに開示されるパティキュレートフィルタにおいて、入側層は、粒子状物質の燃焼を促進する貴金属触媒を実質的に含有しておらず、かつ、出側層は、貴金属触媒を含有している。
【0012】
ここに開示されるパティキュレートフィルタでは、貴金属触媒が実質的に存在していない入側領域のPM捕集性能が向上しやすいため、運転初期の排ガスからPMを好適に除去できる。そして、貴金属触媒が存在している出側領域のガス流通性が高い状態に維持されているため、流量が多い運転中期の排ガスが供給されても、急激な圧損の増大を適切に抑制できる。このように、ここに開示されるパティキュレートフィルタによれば、PM捕集性能と圧損抑制性能とを高いレベルで両立することができる。
【0013】
なお、本明細書では、説明の便宜上、入側層のみが形成されており、貴金属触媒が実質的に存在しない領域を「入側領域」と称する。また、出側層が形成されており、貴金属触媒が存在する領域を「出側領域」と称する。すなわち、ここに開示されるパティキュレートフィルタでは、ウォッシュコート層が形成されていない領域が生じることを避けるために、入側層と出側層とが一部重複しているが、この入側層と出側層と重複した領域は、貴金属触媒が存在しているため「出側領域」とみなされる。
【0014】
ここに開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、出側層における貴金属触媒の含有量は0.1g/L以上である。これにより、出側領域のガス流通性をより高い状態に維持することができる。
【0015】
ここに開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、延伸方向における隔壁の全長を100%としたとき、ウォッシュコート層の貴金属触媒を実質的に含有していない領域(すなわち、入側領域)は、排ガス流出側の端部近傍から30%以上60%以下の領域に形成されている。これにより、PM捕集性能と圧損抑制性能をより高いレベルで両立することができる。
【0016】
ここに開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、隔壁の厚みを100%としたとき、入側層は、入側セルと接する表面から隔壁の内方に75%以上100%以下の厚みで形成されている。これにより、入側領域におけるPM捕集性能をより好適に向上させることができる。
【0017】
ここに開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、隔壁の厚みを100%としたとき、出側層は、出側セルと接する表面から隔壁の内方に75%以上100%以下の厚みで形成されている。これにより、出側領域におけるPM捕集性能と圧損抑制性能をより高いレベルで両立することができる。
【0018】
ここに開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、基材全体における隔壁の細孔の有効容積Vに対するウォッシュコート層の全重量Wの割合(W/V)が200g/L以上400g/L以下である。本発明者らが行った実験によると、上記W/Vを所定の範囲内に制御することによって、PM捕集性能と圧損抑制性能をより高いレベルで両立することができる。
【0019】
また、上記したW/Vを制御する態様においては、隔壁の表面にウォッシュコート層が実質的に存在しないようにW/Vを制御するとより好ましい。これにより、急激な圧損増大をより適切に抑制できる。
【0020】
ここに開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、貴金属触媒が、Pt、Pd、Rhの群より選択される少なくとも一種類以上の白金族元素を含む。これらの白金族元素は、PM燃焼促進作用に優れているため、出側領域のガス流通性をより高い状態に維持することができる。
【0021】
ここに開示されるパティキュレートフィルタの好ましい一態様では、内燃機関は、ガソリンエンジンである。ガソリンエンジンからの排ガスは、比較的に高温であり、PMが燃焼しやすいため、PM堆積に伴うPM捕集性能の向上が生じにくい傾向がある。ここに開示されるパティキュレートフィルタは、このようなガソリンエンジンの排気通路に配置した場合でも、入側領域にPMを適切に堆積させることができるため、ガソリンエンジン用のパティキュレートフィルタ(GPF:Gasoline Particulate Filter)として特に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るパティキュレートフィルタが配置された排気系を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るパティキュレートフィルタを模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るパティキュレートフィルタを延伸方向に沿って切断した際の断面を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るパティキュレートフィルタを径方向に沿って切断した際の断面を模式的に示す図である。
図5図3のV領域を拡大した断面模式図である。
図6】サンプル1~4の圧損測定の結果を示すグラフである。
図7】サンプル1~4のPM堆積重量の結果を示すグラフである。
図8】サンプル5~16のPM捕集率測定の結果を示すグラフである。
図9】サンプル5~16の圧損測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、排気経路におけるパティキュレートフィルタの配置に関する一般的事項等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」との表記は、「A以上B以下」を意味する。
【0024】
A.全体構成
先ず、本実施形態に係るパティキュレートフィルタが使用された排ガス浄化装置の全体構成を説明する。図1は本実施形態に係るパティキュレートフィルタが配置された排気系を模式的に示す図である。図1に示される排気系では、内燃機関2の排気通路に排ガス浄化装置1が設けられている。
【0025】
内燃機関2には、酸素と燃料ガスを含む混合気が供給される。内燃機関2は、この混合気が燃焼した際の熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。そして、混合気の燃焼によって生じた排ガスは、図1中の矢印に示すように、エキゾーストマニホールド3と排気管4とから構成された排気通路に排出される。なお、本明細書では、説明の便宜上、排ガスの流れ方向における内燃機関2に近い側を上流側といい、内燃機関2から遠い側を下流側という。
【0026】
排ガス浄化装置1は、排気通路に排出された排ガスを浄化する。この排ガス浄化装置1は、エンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)7と、センサ8とを備えている。センサ8は、排ガスの成分や温度に関する情報を検知する。ECU7は、内燃機関2の運転を制御するための情報の一つとしてセンサ8における検知結果を受信する。さらに、図1に示される排ガス浄化装置1は、触媒部5とフィルタ部6とを備えている。
【0027】
触媒部5は、排気管4の内部に設けられている。触媒部5には、排ガス中の三元成分(NOx、HC、CO)を浄化する排ガス浄化触媒が用いられ得る。触媒部5に使用される排ガス浄化触媒の具体的な構成は、本発明を特徴付けるものではないため詳細な説明を省略する。なお、図1に示される排ガス浄化装置1では、フィルタ部6よりも上流側に触媒部5が配置されているが、触媒部の配置位置は特に制限されない。例えば、触媒部は、フィルタ部よりも下流側に配置されていてもよいし、フィルタ部の上流側と下流側の両方に一対配置されていてもよい。
【0028】
フィルタ部6は、排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集することによって排ガスを浄化する。本実施形態に係るパティキュレートフィルタは、この排ガス浄化装置1のフィルタ部6に用いられ得る。換言すると、本実施形態に係るパティキュレートフィルタは、排ガス浄化装置1の一構成要素として内燃機関2の排気通路(排気管4)に配置されている。
【0029】
B.パティキュレートフィルタ
以下、図2図5を参照しながら本実施形態に係るパティキュレートフィルタを説明する。図2および図3中の符号Xは「排ガスの流通方向」を示す。そして、符号X1は「排ガス流入側(上流側)」を示し、符号X2は「排ガス流出側(下流側)」を示す。なお、図2は本実施形態に係るパティキュレートフィルタを模式的に示す斜視図である。また、図3図2に示すパティキュレートフィルタを延伸方向(排ガスの流通方向X)に沿って切断した際の断面を模式的に示す図であり、図4はパティキュレートフィルタの径方向((排ガスの流通方向Xに対して垂直な方向)に沿って切断した際の断面を模式的に示す図である。そして、図5図3中の領域Vを拡大した断面模式図である。
【0030】
図2図5に示すように、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100は、ウォールフロー構造の基材10と、当該基材10の隔壁16内に形成されたウォッシュコート層20とを備えている。以下、各々について説明する。
【0031】
1.基材
図2に示すように、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、排ガスの流通方向Xに沿って伸びた円柱形の基材10が用いられている。上述したように、この基材10はウォールフロー構造を有している。具体的には、基材10は、複数の中空部(セル12、14)を有したハニカム構造を備えている。これらのセル12、14は、排ガスの流通方向Xに沿って延びている。そして、図3および図4に示すように、本実施形態における基材10のセル12、14は、入側セル12と、該入側セル12に隣り合う出側セル14とによって構成されている。そして、入側セル12と出側セル14との間は、多孔質の隔壁16によって仕切られている。なお、基材10の材料は、従来のこの種の用途に用いられ得る種々の材料を特に制限なく使用できる。この基材10の材料の一例として、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックスまたは合金(ステンレス等)等が挙げられる。また、本実施形態では、円柱形の基材10が用いられているが、基材の外形は特に制限されず、楕円柱形や多角柱形等であってもよい。
【0032】
入側セル12は、基材10内部に形成されたセル12、14のうち、排ガス流入側X1の端部のみが開口したセルを指す(図3参照)。すなわち、入側セル12は、排ガス流入側X1の端部がガス流入口12aとしてフィルタ外部に開放されていると共に、排ガス流出側X2の端部が封止部12bによって封止されている。一方、出側セル14は、排ガス流出側X2の端部のみが開口したセルを指す。すなわち、出側セル14は、排ガス流入側X1の端部が封止部14aによって封止されていると共に、排ガス流出側X2の端部がガス流出口14bとしてフィルタ外部に開放されている。
これらの入側セル12、出側セル14の形状や大きさは、パティキュレートフィルタ100に供給される排ガスの流量や成分を考慮して適宜変更できる。例えば、図4に示すように、本実施形態では、基材10の延伸方向Xと直交する断面(基材10の径方向に沿った断面)におけるセル12、14の断面形状が正方形である。この入側セル12と出側セル14の各々の断面積は、同程度であってもよいし、排ガスの流量を考慮して異ならせてもよい。また、セル12、14の断面形状は、本実施形態のような正方形に限定されず、平行四辺形、長方形、台形、三角形、五角形、円形などの一般的な形状を特に制限なく採用することができる。
また、図2および図4に示すように、基材10は、入側セル12と出側セル14の各々が相互に隣り合うように形成される。本実施形態の基材10は、断面正方形の入側セル12と出側セル14とが市松模様状に配置されるように形成されている。
【0033】
上述したように、入側セル12と出側セル14は、隔壁16によって仕切られている。本実施形態では、格子状に形成された隔壁16の各々が排ガスの流通方向Xに沿って延びており、当該隔壁16に囲まれた空間がセル12、14となる(図3および図4参照)。この隔壁16は、複数の細孔を有する多孔質構造を有している。具体的には、隔壁16の壁体17には、図5に示すような細孔18が複数形成されており、かかる細孔18の一部を通じて入側セルと出側セルとが連通している。これによって、図3中の矢印のように、入側セル12に流入した排ガスを隔壁16に通過させて出側セル14へ流出させることができる。なお、隔壁16の厚みTおよび全長Lは、PM捕集性能と圧損抑制性能とを両立するという観点で調節すると好ましい。例えば、隔壁16の厚みTは、概ね0.2mm~1.6mm程度であると好ましい。また、隔壁16の全長Lは、概ね50mm~500mm(好ましくは100mm~200mm)程度であると好ましい。
【0034】
隔壁16の気孔率は、圧損増大の抑制という観点から、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、55%以上が特に好ましい。一方、隔壁16の気孔率の上限は、基材10の機械的強度の維持という観点から、80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましく、65%以下が特に好ましい。なお、本明細書における「隔壁の気孔率」は、基材10の隔壁16の全体積(壁体17と細孔18の合計体積)に対する細孔18の体積の割合を指し、水銀圧入法によって測定された値である。
【0035】
また、細孔18の平均細孔径は、圧損抑制性能の向上という観点から、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましく、10μm以上が特に好ましい。一方、PM捕集性能の向上という観点から、細孔18の平均細孔径の上限は、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。なお、本明細書における「細孔18の平均細孔径」は、水銀圧入法によって求められた細孔分布の平均値を指す。
【0036】
2.ウォッシュコート層
図3に示すように、ウォッシュコート層20は、基材10の隔壁16の内部に形成された被覆層である。具体的には、図5に示すように、ウォッシュコート層20は、細孔18の壁面(細孔18と接する壁体17の表面)に形成された多孔質の耐熱層である。かかるウォッシュコート層20は、高温安定性や吸水性等を向上させる機能を備え得る。また、ウォッシュコート層20は、表面積の拡大や細孔18の小径化によるPM捕集性能の向上にも寄与し得る。本実施形態におけるウォッシュコート層20には、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。典型的には、ウォッシュコート層20は、耐熱性材料を主体として構成されている。典型的には、ウォッシュコート層20は、耐熱性材料を50質量%以上含むと好ましく、85質量%以上含むとより好ましい。かかる耐熱性材料には、JIS R2001に規定される耐火物が使用され得る。かかる耐火物の一例として、アルミナ(Al)等の中性耐火物、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)等の酸性耐火物、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)等の塩基性耐火物が挙げられる。これらの耐火物の中でもアルミナ(好ましくは、活性アルミナ)が好ましい。また、ウォッシュコート層20の耐熱性材料は、上述した耐火物のいずれか1種のみから構成されていてもよいし、2種以上の混合物(または複合体)によって構成されていてもよい。複合体としては、例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物等が挙げられる。また、ウォッシュコート層20は、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)を含んでいてもよい。かかる副成分の一例として、イットリア(Y)等の希土類金属酸化物、酸化バリウム(BaO)等のアルカリ土類金属酸化物などが挙げられる。
【0037】
そして、図3に示すように、本実施形態におけるウォッシュコート層20は、入側層22と出側層24とを備えている。そして、これらの入側層22と出側層24の厚みと長さは、入側層22と出側層24とが一部重複するように設定されている。以下、各々の層について説明する。
【0038】
(1)入側層
入側層22は、ガス流入口12a近傍の隔壁16を含む領域に形成されたウォッシュコート層である。具体的には、入側層22は、入側セル12に接する隔壁16の表面から隔壁16の内方に所定の厚みTで形成され、かつ、排ガス流入側X1の端部近傍から隔壁16の延伸方向(排ガスの流通方向X)に沿って所定の長さで形成されている。この入側層22の厚みTは、PM捕集性能の向上という観点から、隔壁16の厚みTの50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、75%以上が特に好ましい。また、入側層22の厚みTの上限は、特に制限されず、上記隔壁16の厚みTの100%以下であってもよいし、95%以下であってもよいし、90%以下であってもよい。なお、上記したように、本明細書では、この入側層22のみが形成された領域を「入側領域」と称する。
【0039】
そして、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、入側層22に貴金属触媒が実質的に含有されていない。詳しくは後述するが、貴金属触媒は、PMの燃焼を促進する機能を有する触媒材料であり、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等の貴金属を含有する。この貴金属触媒を実質的に含有しない入側層22を形成することにより、入側領域に堆積したPMが燃焼することを抑制できる。このため、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、入側領域において、PM堆積量の増加に伴うPM捕集性能の向上が生じやすくなっている。
【0040】
なお、本明細書において「貴金属触媒を実質的に含有しない」とは、貴金属触媒と解釈され得る成分が意図的に添加されていないことを指す。したがって、貴金属触媒と解釈され得る成分が原料や製造工程等に由来して微量に含まれるような場合や、他の触媒層から入側層に微量の貴金属触媒が移動した場合(例えば、出側層から入側層に貴金属触媒が移動した場合)などは、本明細書における「貴金属触媒を実質的に含有しない」の概念に包含される。例えば、入側層22の体積に対する貴金属触媒の含有量の割合(g/L)が0.05g/L以下(好ましくは0.03g/L以下、より好ましくは0.01g/L以下、さらに好ましくは0.005g/L以下、特に好ましくは0.001g/L以下)である場合、「貴金属触媒を実質的に含有しない」ということができる。
【0041】
(2)出側層
出側層24は、ガス流出口14b近傍の隔壁16を含む領域に形成されたウォッシュコート層である。具体的には、出側層24は、出側セル14に接する隔壁16の表面から隔壁16の内方に所定の厚みTで形成され、かつ、排ガス流出側X2の端部近傍から隔壁16の延伸方向(排ガスの流通方向X)に沿って所定の長さLで形成されている。PM捕集性能の向上という観点から、出側層24の厚みTは、隔壁16の厚みTの50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、75%以上が特に好ましい。また、出側層24の厚みTの上限は、特に制限されず、上記隔壁16の厚みTの100%以下であってもよく、95%以下であってもよく、90%以下であってもよく、85%以下であってもよい。なお、本明細書では、出側層24が形成された領域を「出側領域」と称する。この「出側領域」は、入側層22と出側層24とが重複する領域を含むものとする。
【0042】
そして、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、上述した入側層22と異なり、出側層24に貴金属触媒が含まれている。上記したように、貴金属触媒は、PMの燃焼を促進する機能を有する触媒材料であり、Au、Ag、Pd、Rh、Pt、Ru、Ir、Os等の貴金属元素の少なくとも一種を含有する。これらの中でもPt、Pd、Rh等の白金族元素は、PM燃焼を促進する作用に特に優れているため、出側層24に含有させる貴金属として特に好適である。また、貴金属触媒は、上述した貴金属の他に、当該貴金属を担持する担体を含んでいてもよい。かかる担体の材料としては、アルミナ(Al)、希土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO)等が挙げられる。
上述した貴金属触媒を出側層24に含有させることによって、出側領域に堆積したPMの燃焼を促進することができる。このため、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、出側領域の隔壁16の細孔18がPMによって目詰まりすることが防止され、当該出側領域におけるガス流通性が高い状態に維持される。
【0043】
なお、出側層24における貴金属触媒の含有量(出側層24の体積1Lに対する貴金属触媒の含有量gの割合)は、0.1g/L以上であることが好ましい。これにより、出側領域におけるガス流通性をより高い状態に維持することができる。また、出側領域におけるガス流通性を更に高い状態に維持するという観点から、出側層24における貴金属触媒の含有量は、0.5g/L以上がより好ましく、0.7g/L以上がさらに好ましく、1g/L以上が特に好ましい。また、出側層24における貴金属触媒の含有量の上限は、特に限定されず、20g/L以下であってもよい。但し、出側層24を容易に形成するという観点からは、10g/L以下が好ましく、7g/L以下がより好ましく、5g/L以下がさらに好ましく、2g/L以下が特に好ましい。
【0044】
(3)入側層と出側層との関係
上記したように、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、図3に示すように、隔壁16の延伸方向(排ガスの流通方向X)において、入側層22と出側層24とが一部重複している。これによって、ウォッシュコート層が形成されていない領域が隔壁16に生じることを確実に防止できる。このとき、入側層22のみが形成され、貴金属触媒を含まない領域(入側領域)の長さLは、隔壁16の全長L(100%)の30%以上であると好ましく、35%以上であるとより好ましく、40%以上であると更に好ましい。このように入側領域の長さLを一定以上確保することによって、運転初期の排ガスG1を適切に入側領域に通過させることができる。一方、入側領域の長さLの上限は70%以下であると好ましく、65%以下であるとより好ましく、60%以下であると更に好ましい。これにより、出側領域の長さLを十分に確保し、運転中期の排ガスG1を適切に出側領域に通過させることができる。かかる入側層の長さLの好適な一例は、55%である。
【0045】
そして、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、入側層22に貴金属触媒を実質的に含有させず、出側層24に貴金属触媒を含有させている。これによって、PM捕集性能と圧損抑制性能とを高いレベルで両立することができる。
具体的には、図3に示すように、運転初期の排ガスG1は、流量が少ないため隔壁16の入側領域を通過しやすい。この運転初期の排ガスG1には、比較的に多くのPMが含まれているが、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、貴金属触媒が実質的に存在していない入側領域のPM捕集性能が向上しやすいため、当該運転初期の排ガスG1からPMを適切に除去することができる。また、運転初期の排ガスG1は、上記のように流量が少ないため、細孔18が比較的に小さな状態に維持される入側領域を通過した場合でも、急激な圧損上昇が生じにくい。
一方、運転中期の排ガスG2は、流量が多いため隔壁16の出側領域を通過する。本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、貴金属触媒が存在する出側領域におけるガス流通性が高い状態に維持されているため、流量が多い運転中期の排ガスが供給されても、急激な圧損の増大を適切に抑制できる。また、運転中期の排ガスG2は、PM含有量が少ないため、細孔18が比較的に大きな状態に維持される出側領域でもPMを十分に除去することができる。
【0046】
(4)ウォッシュコート層の総コート量
本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100において、ウォッシュコート層20の総コート量は、圧損抑制効果とPM捕集性能の両方に影響し得るため、必要に応じて適宜調整されていることが好ましい。ここで、「ウォッシュコート層の総コート量」とは、入側層22と出側層24とを含むウォッシュコート層20の総重量を意味する。この総コート量が増加するに従って、細孔18の壁面に付着したウォッシュコート層20の厚みが増加するため、細孔18が小径化してPM捕集性能が向上する(図5参照)。一方で、総コート量を増加させ過ぎると、細孔18の外側(セル12、14に隣接した隔壁16の表面16a)にウォッシュコート層が形成される。この場合、セル12、14がウォッシュコート層によって塞がれて圧損が急激に増大するおそれがある。これらの点を考慮して本発明者らが実験を行った結果、基材10全体における隔壁16の細孔18の有効容積Vに対するウォッシュコート層20の総コート量Wの割合(W/V)を200g/L以上(好ましくは250g/L以上)とすることによって、好適なPM捕集性能が得られることが分かった。また、当該W/Vの上限を400g/L以下(好ましくは350g/L以下)とすることによって、急激な圧損の増大を防止できることが分かった。
なお、上述した「基材全体における隔壁の細孔の有効容積V」は、「隔壁の気孔率」と「有効隔壁の体積」とを掛けることによって求められる。上述したように「隔壁の気孔率」は、基材10の隔壁16の全体積(壁体17と細孔18の合計体積)に対する細孔18の体積の割合を指す。一方、「有効隔壁の体積」とは、排ガスが通過し得る隔壁の体積を指す。具体的には、図4中の隔壁16同士が交差する領域16bや、図3中の封止部12b、14aと接する領域16cには排ガスが通過しない。「有効隔壁の体積」とは、これらの排ガスが通過しない領域を除いた隔壁16の体積を指す。この「有効隔壁の体積」は、基材10の容積からセル12、14の容積を減算することによって求められる。このとき、「セル12、14の容積」は、図4に示すような正面視におけるセル12、14の開口面積の合計と基材10の全長Lとを掛けることによって算出できる。
【0047】
また、急激な圧損の増大を確実に防止するという観点からは、隔壁16の表面にウォッシュコート層20が実質的に存在しないように、上記W/Vを調節することが好ましい。なお、「隔壁の表面にウォッシュコート層が実質的に存在しない」とは、上記総コート量Wを100%とした場合に、隔壁16の細孔18の内部に存在するコート量が90%以上(好ましくは95%以上)であることをいう。
【0048】
(5)他の材料
ここに開示されるパティキュレートフィルタのウォッシュコート層には、本願発明の本質を損なわない範囲で、他の材料を添加することができる。かかるウォッシュコート層に添加され得る材料としては、OSC材(酸素吸放出材)、NOx吸収材、SCR(Selective Catalytic Reduction:選択的接触還元)触媒等が挙げられる。
【0049】
OSC材は、排ガス中の酸素濃度が高い(即ち空燃比がリーンである)ときに酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低い(即ち空燃比がリッチである)ときに酸素を放出する材料である。かかるOSC材の一例として、酸化セリウム(セリア:CeO)をベースとした材料が挙げられる。かかるCeOをベースとした材料としては、CZ系複合材料(CeO-ZrO複合酸化物)が挙げられる。このCZ系複合材料は、CeOとZrOとを主成分とした多結晶体または単結晶である。また、CZ系複合材料には、種々の付加成分が添加されていてもよい。かかる付加成分の一例として、希土類酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
【0050】
なお、OSC材は、隔壁16を通過する排ガスを酸化雰囲気に維持するという作用を有しているため、PMの燃焼を促進する機能を発揮し得る。このため、OSC材を使用する場合であっても、入側層22にはOSC材を実質的に含有させない方が好ましい。これによって、圧損抑制性能とPM捕集性能とをさらに高いレベルで両立させることができる。なお、「入側層がOSC材を実質的に含有しない」とは、上述した貴金属触媒と同様に、OSC材と解釈され得る成分が意図的に添加されていないことを指す。すなわち、入側層22の体積1Lに対するOSC材の含有量gの割合(g/L)が5g/L以下(好ましくは3g/L以下、より好ましくは2g/L以下、さらに好ましくは1g/L以下、特に好ましくは0.5g/L以下)である場合、「入側層がOSC材を実質的に含有しない」ということができる。
【0051】
NOx吸収材は、排ガスの空燃比が酸素過剰のリーン状態にあると排ガス中のNOxを吸収し、空燃比がリッチ状態になるとNOxを放出する材料である。かかるNOx吸収材としては、NOxに電子を供与し得る金属の一種または二種以上を含む塩基性材料を好ましく用いることができる。例えば、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類金属、ランタノイドのような希土類および銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)等の金属が挙げられる。これらの中でもバリウム化合物(例えば硫酸バリウム)は、高いNOx吸蔵能を有しているため好適である。
【0052】
SCR触媒は、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するものであればよい。SCR触媒としては特に限定されないが、例えば、β型ゼオライト、SAPO(シリコアルミノホスフェート)系ゼオライトが挙げられる。SAPOとしては、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-14、SAPO-17、SAPO-18、SAPO-34、SAPO-39、SAPO-42、SAPO-47等が例示される。SCR触媒は、任意の金属成分を含んでいてもよい。そのような金属成分として、銅(Cu)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、鉛(Pb)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、タングステン(W)、インジウム(In)、イリジウム(Ir)等が例示される。SAPOに上記金属を含有させることで、NOxをより効率良く浄化できるようになる。なお、ウォッシュコート層20にSCR触媒を含有させる場合には、アンモニアを生成するための還元剤(例えば尿素水)を供給する還元剤供給手段をパティキュレートフィルタよりも上流側(例えば、図1中のフィルタ部5よりも上流側)に配置すると好ましい。
【0053】
C.用途
上述したように、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100は、排ガス中のPMを除去するフィルタ部5として内燃機関2の排気通路に配置され得る(図1参照)。しかし、ここに開示されるパティキュレートフィルタは、これに限定されず、種々の用途に使用することができる。例えば、ここに開示されるパティキュレートフィルタは、出側層に貴金属触媒が含まれているため、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化する三元触媒としても機能し得る。このため、ここに開示されるパティキュレートフィルタは、図1中の触媒部5とフィルタ部6の両方の機能を兼ねた排ガス浄化触媒として使用することもできる。なお、ここに開示されるパティキュレートフィルタを三元触媒として使用する場合には、上述したOSC材やNOx吸収材などがウォッシュコート層に添加されていると好ましい。
【0054】
また、本発明を限定する意図はないが、ここに開示されるパティキュレートフィルタは、内燃機関2が自動車のガソリンエンジンである場合に特に好ましく使用される。ガソリンエンジンから排出される排ガスは、比較的に高温であるため、隔壁の細孔内にPMが堆積しにくい傾向がある。これに対して、ここに開示されるパティキュレートフィルタでは、入側領域に貴金属触媒が実質的に存在していないため、当該入側領域にPMを好適に堆積させることができる。このため、ここに開示されるパティキュレートフィルタは、ガソリンエンジンに使用した場合でもPM捕集性能を好適に向上させることができる。
【0055】
なお、ここに開示されるパティキュレートフィルタは、ガソリンエンジンに限らず、他のエンジン(例えばディーゼルエンジン)からの排ガスを浄化するために使用することもできる。特に、上述したように、ウォッシュコート層にSCR触媒を添加し、パティキュレートフィルタの上流側に還元剤供給手段を配置した場合には、ディーゼルエンジンからの排ガスに含まれるNOxを浄化するSCR装置と、PMを除去するフィルタ部とを兼ねることができる。
【0056】
D.パティキュレートフィルタの製造
以下、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100を製造する方法の一例を説明する。なお、ここに開示されるパティキュレートフィルタは、以下の製造方法によって製造されたパティキュレートフィルタに限定されない。
【0057】
本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100は、例えば、ウォッシュコート層20の材料を含むスラリーを調製し、当該スラリーを基材10の隔壁16の細孔18内に導入することによって製造できる。以下、各工程について説明する。
【0058】
(1)スラリーの調製
本工程では、上述したウォッシュコート層20の材料を所定の分散媒に分散させることによってスラリーを調製する。分散媒には、この種のスラリーの調製に用いられ得る分散媒を特に制限なく使用できる。例えば、分散媒は、極性溶媒(例えば、水)であってもよいし、非極性溶媒(例えば、メタノール等)であってもよい。また、スラリーには、上述したウォッシュコート層20の材料と分散媒の他に、粘度調整用の有機成分が含まれていてもよい。かかる粘度調整用の有機成分としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)等のセルロース系ポリマーが挙げられる。
【0059】
そして、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100を作製する際には、貴金属触媒を実質的に含有させない入側層用のスラリーと、貴金属触媒を含有させた出側層用のスラリーの2種類のスラリーを調製する。貴金属触媒に関する詳細な説明は、上述の説明と重複するため省略する。なお、入側層用スラリーと出側層用スラリーは、貴金属触媒以外の材料が異なっていてもよい。例えば、粘度調整用の有機成分の添加量や種類を異ならせることによって、入側層用スラリーと出側層用スラリーとの間で粘度を異ならせ、入側層と出側層の各々が形成される領域の調節を容易に行うことができる。
【0060】
(2)スラリーの導入
本工程では、上述のスラリーを隔壁16の細孔18内に導入することによってウォッシュコート層20を形成する。なお、スラリーを細孔18内に導入する手段は、特に限定されず、従来から公知の手段を特に制限なく使用することができる。かかるスラリー導入手段の一例として、エアブロー法や吸引コート法などが挙げられる。エアブロー法では、基材10の端部をスラリーに浸漬させてセル12、14内部にスラリーを浸透させた後に、基材10を取り出してエアブローを実施することによって、スラリーを細孔18内に導入する。一方、吸引コート法では、基材10の端部をスラリーに浸漬させた状態で、反対側の端部から吸引することによってスラリーを細孔18内に導入する。
【0061】
そして、本実施形態に係るパティキュレートフィルタ100では、入側層22と出側層24とを備えたウォッシュコート層20が形成されている。吸引コート法を使用して、このようなウォッシュコート層20を形成するには、先ず、基材10のガス流入口12aを入側層用のスラリーに浸漬させた状態でガス流出口14bから吸引する。これによって、排ガス流入側X1の端部近傍から所定の長さと厚みで入側層用のスラリーが塗布されるため、このスラリーを乾燥・焼成することによって入側層22が形成される。次に、基材10のガス流出口14bを出側層用のスラリーを浸漬させた状態でガス流入口12aから吸引する。これによって、排ガス流出側X2の端部近傍から所定の長さと厚みで出側層用のスラリーが塗布されるため、このスラリーを乾燥・焼成することによって出側層24が形成される。このとき、スラリー粘度や吸引コート装置の吸引力を調節し、各々のスラリーが塗布される領域を制御することによって、焼成後の入側層22の一部と出側層24の一部とを重複させることができる。
【0062】
なお、入側層22と出側層24を形成する順序は特に限定されず、出側層24を形成した後に入側層22を形成してもよい。また、上述した方法では、入側層用のスラリーの乾燥と焼成を行って入側層22を形成した後に、出側層用のスラリーを基材内部へ導入している。しかし、入側層用のスラリーを乾燥した後に、出側層用のスラリーを導入し、入側層用のスラリーと出側層用のスラリーの両方を同時に焼成してもよい。これらの場合でも、入側層22と出側層24とを備えたウォッシュコート層20を形成できる。
【0063】
また、スラリー導入後かつ乾燥前にエアブローを実施してもよい。これによって、セル12、14内にスラリーが残留することを防止できるため、セル12、14に接した隔壁16の表面16a(図5参照)に、ウォッシュコート層が形成されることを抑制できる。
【0064】
このようにして製造されたパティキュレートフィルタ100は、入側層22に貴金属触媒が実質的に含有されておらず、かつ、出側層24に貴金属触媒が含有されている。上述したように、かかる構成のパティキュレートフィルタ100では、入側領域のPM捕集性能が向上しやすく、かつ、出側領域の圧損抑制性能が高い状態に維持されるため、フィルタ全体としてPM捕集性能と圧損抑制性能とを高いレベルで両立することができる。
【0065】
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0066】
A.第1の試験
本試験例では、隔壁内部における貴金属触媒が存在する領域が異なるパティキュレートフィルタを複数作製し、各々のパティキュレートフィルタのPM捕集性能と圧損抑制性能を評価した。
【0067】
1.サンプルの準備
(1)サンプル1
硝酸パラジウム溶液と、アルミナ粉末と、酸化バリウム粉末と、イオン交換水とを混合してPd含有スラリーを調製した。そして、ウォールフロー型のフィルタ基材(コージェライト製、長さ152.4mm、セルの総容積1.7L)のガス流入口をPd含有スラリーに含浸させた状態で、吸引コート装置を用いてガス流出口から吸引することによって、基材の隔壁の上流側に所定の長さ・厚みでPd含有スラリーを導入した。そして、乾燥・焼成することによって貴金属触媒(Pd)を含有する入側層を形成した。次に、ガス流出口をPd含有スラリーに含浸させてガス流入口から吸引することによって、隔壁の下流側に所定の長さ・厚みでPd含有スラリーを導入した。そして、乾燥・焼成することによって貴金属触媒(Pd)を含有する出側層を形成した。入側領域と出側領域の各々の「長さL、L」、「コート量(導入したスラリー量)」および「Pdの含有量」を表1に示す。
【0068】
(2)サンプル2
本サンプルでは、硝酸パラジウム溶液(貴金属触媒の前駆体)を含有していないことを除いて、上記サンプル1のPd含有スラリーと同じ成分のPd未含有スラリーを調製した。すなわち、アルミナ粉末と、酸化バリウム粉末と、イオン交換水とを混合することによって、Pd未含有スラリーを調製した。そして、隔壁の上流側と下流側の両方にPd未含有スラリーを導入し、各々のスラリーの乾燥・焼成を行うことによって、入側層と出側層のいずれにも貴金属触媒(Pd)が含まれていないパティキュレートフィルタを作製した。なお、他の条件は、サンプル1と同様に設定した。
【0069】
(3)サンプル3
本サンプルでは、上述したPd含有スラリーを隔壁の上流側に導入することによって貴金属触媒(Pd)を含有する入側層を形成すると共に、Pd未含有スラリーを隔壁の下流側に導入することによって貴金属触媒を含有しない出側層を形成した。なお、他の条件は、サンプル1と同様に設定した。
【0070】
(4)サンプル4
本サンプルでは、Pd未含有スラリーを隔壁の上流側に導入することによって貴金属触媒を含有しない入側層を形成すると共に、Pd含有スラリーを隔壁の下流側領域に導入することによって貴金属触媒を含有する出側層を形成した。なお、他の条件は、サンプル1と同様に設定した。
【0071】
2.評価試験
(1)PM捕集性能
本評価では、各サンプルのPM捕集率を測定してPM捕集性能を評価した。具体的には、サンプル1~4の各々のパティキュレートフィルタを車両(2Lガソリンエンジン)の排気経路に設置して、当該車両をWLTP(Worldwide harmonized Light duty driving Test Procedure)によるPhase4のモードで運転した。そして、パティキュレートフィルタを設置した状態のPM排出量Xと、パティキュレートフィルタを取り外した状態のPM排出量Yを測定し、下記の式に基づいてPM捕集率を算出した。結果を表1に示す。
PM捕集率(%)=[(Y-X)/Y]×100
【0072】
(2)圧損抑制性能
各サンプルのパティキュレートフィルタに対して再生処理を実施し、当該再生処理における圧損の変化を測定した。具体的には、上記PM捕集率測定によってPMが堆積したパティキュレートフィルタをエンジンベンチに取り付け、高温の排ガス(温度:500℃、空燃比:14.7)を60分間供給する再生処理を実施した。そして、再生処理開始から0分後(開始直後)と30分後と60分後における圧損(kPa)を測定し、再生処理における圧損抑制性能の変化を調べた。また、本試験では、圧損(kPa)を測定する際に、フィルタ内のPM堆積重量(g)も測定した。圧損の測定結果を図6に示し、PM堆積重量の測定結果を図7に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
3.評価結果
表1に示すように、PM捕集性能の評価では、サンプル2、4において80%以上という高いPM捕集率が確認された。このことから、少なくとも入側層に貴金属触媒(Pd)を含有させないことによって、フィルタ全体のPM捕集性能を向上させやすくなることが分かった。
次に、図6および図7に示すように、サンプル2では、再生処理を行ったにも関わらず、ガス流通性が回復せず、圧損が高い状態のまま(PMが堆積したまま)であった。一方、サンプル1、3、4では、再生処理によってガス流通性が回復して圧損が低下していた。このことから、圧損の増大を抑制するには、入側層と出側層の少なくとも一方に貴金属触媒(Pd)を含有させる必要があることが分かった。
そして、これらの試験結果から、サンプル4は、PM捕集率80%以上という高いPM捕集性能を有し、かつ、再生処理によって回復する好適な圧損抑制性能を有していることが確認された。このことから、サンプル4のように、入側層に貴金属触媒が実質的に含有されておらず、かつ、出側層に貴金属触媒が含有されたパティキュレートフィルタは、PM捕集性能と圧損抑制性能とを高いレベルで両立できることが分かった。
【0075】
B.第2の試験
本試験例では、入側層に貴金属触媒が実質的に含有されておらず、かつ、出側層に貴金属触媒が含有されているパティキュレートフィルタにおいて、PM捕集性能と圧損抑制効果とをより高いレベルで両立させる条件について調べた。
【0076】
1.サンプルの作製
入側層のコート量と、出側層のコート量と、基材の種類とを異ならせた12種類のパティキュレートフィルタ(サンプル5~16)を作製した。各サンプルの詳細を表2に示す。なお、表2中の「基材A」は、隔壁の厚みが0.2mm~0.25mm、セル数が300cpsi、隔壁の気孔率が60%~65%、セル容積が1.3Lのウォールフロー型の基材(コージェライト製、長さ152.4mm)である。一方、「基材B」は、隔壁の厚みが0.2mm~0.25mm、セル数が200cpsi、隔壁の気孔率が55%~60%、セル容積が1.7Lのウォールフロー型の基材(コージェライト製、長さ152.4mm)である。なお、サンプル5~16について、表1に示される以外の条件は、上述した第1の試験のサンプル4と同じ条件に設定した。
【0077】
【表2】
【0078】
2.評価試験
第1の試験と同じ条件でPM捕集性能評価と再生試験を実施し、PM捕集率と再生処理開始後60分の圧損を測定した。PM捕集率の測定結果を図8に示し、圧損の測定結果を図9に示す。なお、図8中の縦軸は「PM捕集率(%)」を示し、横軸は「コート量/有効容積(g/L)」を示す。また、図9中の縦軸は「圧損(kPa)」を示し、横軸は「コート量/有効容積(g/L)」を示す。また、図8および図9では、基材Aを使用したサンプル5~10の測定結果を点線で繋いだ折れ線グラフを記載し、基材Bを使用したサンプル11~16を実線で繋いだ折れ線グラフを記載している。
【0079】
3.評価結果
図8に示すように、基材A、Bのいずれを使用した場合でも、「コート量/有効容積」が増加するにつれてPM捕集率(%)が向上する傾向が確認された。そして、コート量/有効容積が200g/L以上になると、十分に高いPM捕集率が得られることがわかった。一方で、コート量/有効容積が400g/Lを超えるとPM捕集率が向上する程度が鈍化することが確認された。これは、隔壁の細孔内に十分な厚さのウォッシュコート層が形成されたためと推測される。
一方、図9に示すように、基材A、Bのいずれを使用した場合でも、「コート量/有効容積」が増加するにつれて圧損が増大する傾向が確認された。そして、コート量/有効容積が400g/Lを超えたあたりから圧損が急激に増大することが確認された。これは、セルと接する隔壁の表面にウォッシュコート層が形成され、セルに目詰まりが生じたためと推測される。
そして、これらの結果より、PM捕集性能と圧損抑制効果とをより高いレベルで両立させるには、コート量/有効容積を200g/L以上400g/L以下にすると好ましいことが分かった。
【符号の説明】
【0080】
1 排ガス浄化装置
2 内燃機関
3 エキゾーストマニホールド
4 排気管
5 触媒部
6 フィルタ部
7 エンジンコントロールユニット
8 センサ
10 基材
12 入側セル
14 出側セル
16 隔壁
18 細孔
20 ウォッシュコート層
22 入側層
24 出側層
100 パティキュレートフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9