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特許7386629植物被覆用組成物、植物被覆用組成物の製造方法、及び、植物の被覆方法
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  • 特許-植物被覆用組成物、植物被覆用組成物の製造方法、及び、植物の被覆方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】植物被覆用組成物、植物被覆用組成物の製造方法、及び、植物の被覆方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/00 20060101AFI20231117BHJP
   C09D 101/00 20060101ALI20231117BHJP
   C09D 105/00 20060101ALI20231117BHJP
   A23B 7/16 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
A01G13/00 A
C09D101/00
C09D105/00
A23B7/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019122021
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021007328
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 翔
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
(72)【発明者】
【氏名】宮田 壮
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-231515(JP,A)
【文献】特開平06-192010(JP,A)
【文献】特表2019-500015(JP,A)
【文献】国際公開第2018/144482(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002483(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105246341(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0025440(KR,A)
【文献】Thomas Paulraj et al.,Porous Celllose Nanofiber-Based Microcapsules for Biomolecular Sensing,ACS Appl. Mater. Interfaces,2018年10月,41146-41154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00
C09D 101/00
C09D 105/00
A23B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の表面に供給され当該植物の表面を被覆する植物被覆用組成物であって、
物質内包カプセル(X)と水性媒体(B)とを含み、
物質内包カプセル(X)が、セルロースナノファイバー(A)を含む外殻、及び、当該外殻で囲まれた空間に内包される油分(C)を含む、植物被覆用組成物。
【請求項2】
油分(C)が、炭化水素系油性成分、天然動植物油脂類及び半合成油脂類からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含む、請求項1に記載の植物被覆用組成物。
【請求項3】
前記植物被覆用組成物の23℃、50rpmにおける粘度が、500~20,000mPa・sである、請求項1又は2に記載の植物被覆用組成物。
【請求項4】
前記植物被覆用組成物の23℃でのTI値(回転数5rpmにおける粘度/回転数50rpmにおける粘度)が、1.2~20である、請求項1~3のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物。
【請求項5】
セルロースナノファイバー(A)の直径(太さ)の平均が、1~1,000nmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物。
【請求項6】
セルロースナノファイバー(A)の繊維長の平均が、0.01~10μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物。
【請求項7】
前記植物被覆用組成物の全質量に対する油分(C)の含有量が0.05~80質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物。
【請求項8】
油分(C)と水性媒体(B)との含有比率が、質量比で、(C):(B)=1:0.1~1:1,000である、請求項1~7のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物。
【請求項9】
物質内包カプセル(X)の平均粒子径が1~60μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物。
【請求項10】
界面活性剤の含有量が、セルロースナノファイバー(A)の全量100質量部に対して、10質量部未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物の製造方法であって、
セルロースナノファイバー(A)が水性媒体(B)中に分散している分散液に、油分(C)を添加し、
油分(C)が添加された前記分散液を撹拌して、油分(C)の少なくとも一部が、前記セルロースナノファイバー(A)の外殻で囲まれる空間内に取り込まれた物質内包カプセル(X)を生成させる、植物被覆用組成物の製造方法。
【請求項12】
油分(C)は常温で固体の固形油分を含み、当該固形油分を常温で液体の有機材料に溶解し、前記固形油分が溶解している前記有機材料を前記分散液に添加し撹拌して、前記固形油分の少なくとも一部が、前記セルロースナノファイバー(A)の外殻で囲まれる空間内に取り込まれた物質内包カプセル(X)を生成させる、請求項11に記載の植物被覆用組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の植物被覆用組成物を植物の表面に供給して、前記植物の表面を前記植物被覆用組成物で被覆する、植物の被覆方法。
【請求項14】
植物の表面に供給した前記植物被覆用組成物を乾燥して、セルロースナノファイバー(A)及び油分(C)の少なくとも一方を植物の表面で膜状にする、請求項13に記載の植物の被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物被覆用組成物、植物被覆用組成物の製造方法、及び、植物の被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果物等の植物は、水分保持や汚れからの保護等を目的として、被覆剤による表面のコーティングが行われている。そして、被覆剤として様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、溶質としてシェラック、ロジンその他の添加剤を加え、溶媒として水及びアルコ─ルを用いて溶解せしめた果実用緩速乾性ワックスが記載されている。この果実用緩速乾性ワックスは、乾燥が早く、着火性がないとされている。
【0004】
なお、例えば、特許文献2に記載されるように、生育中から果実に果実袋を袋掛けして、果実を栽培することが行われている。しかし、果実袋を用いる場合、袋掛けした後は、外部から果実を確認することができず、育成状況の確認のためには、一旦袋から果実を取り出し、再度、袋掛けする手間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭49-117641号公報
【文献】特開2015-134972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、植物被覆用の組成物には、作業性に改善の余地があり、また、植物の保護性能をさらに良好にすることが求められている。例えば、作業性に関しては、液だれを防ぎつつ、容易に塗布や噴霧を行えること、べたつきにくいこと、着火せず安全性が高いこと等が求められる。また、植物の保護性能に関しては、外気、日光等から植物を保護することに加えて、植物の呼吸を妨げないように通気性を高めたり、虫害も防止できるようにしたりすることが求められる。
【0007】
上述した特許文献1に記載される果実用緩速乾性ワックスには、展着性等の作業性や、植物の保護性能に改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、展着性に優れ、油分を含む被膜を植物表面に容易に形成することができ、植物の保護性能が良好な被膜を形成し得る、植物被覆用組成物、植物被覆用組成物の製造方法、及び、植物の被覆方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、セルロースナノファイバーを含む外殻、及び、当該外殻で囲まれた空間に内包される油分(C)を含む物質内包カプセル(X)を含む組成物によって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供するものである。
[1]植物の表面に供給され当該植物の表面を被覆する植物被覆用組成物であって、
物質内包カプセル(X)と水性媒体(B)とを含み、
物質内包カプセル(X)が、セルロースナノファイバー(A)を含む外殻、及び、当該外殻で囲まれた空間に内包される油分(C)を含む、植物被覆用組成物。
[2]油分(C)が、炭化水素系油性成分、天然動植物油脂類及び半合成油脂類からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含む、上記[1]に記載の植物被覆用組成物。
[3]前記植物被覆用組成物の23℃、50rpmにおける粘度が、500~20,000mPa・sである、上記[1]又は[2]に記載の植物被覆用組成物。
[4]前記植物被覆用組成物の23℃でのTI値(回転数5rpmにおける粘度/回転数50rpmにおける粘度)が、1.2~20である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物。
[5]セルロースナノファイバー(A)の直径(太さ)の平均が、1~1,000nmである、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物。
[6]セルロースナノファイバー(A)の繊維長の平均が、0.01~10μmである、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物。
[7]前記植物被覆用組成物の全質量に対する油分(C)の含有量が0.05~80質量%である、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物。
[8]油分(C)と水性媒体(B)との含有比率が、質量比で、(C):(B)=1:0.1~1:1,000である、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物。
[9]物質内包カプセル(X)の平均粒子径が1~60μmである、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物。
[10]界面活性剤の含有量が、セルロースナノファイバー(A)の全量100質量部に対して、10質量部未満である、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物の製造方法であって、
セルロースナノファイバー(A)が水性媒体(B)中に分散している分散液に、油分(C)を添加し、
油分(C)が添加された前記分散液を撹拌して、油分(C)の少なくとも一部が、前記セルロースナノファイバー(A)の外殻で囲まれる空間内に取り込まれた物質内包カプセル(X)を生成させる、植物被覆用組成物の製造方法。
[12]油分(C)は常温で固体の固形油分を含み、当該固形油分を常温で液体の有機材料に溶解し、前記固形油分が溶解している前記有機材料を前記分散液に添加し撹拌して、前記固形油分の少なくとも一部が、前記セルロースナノファイバー(A)の外殻で囲まれる空間内に取り込まれた物質内包カプセル(X)を生成させる、上記[11]に記載の植物被覆用組成物の製造方法。
[13]上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の植物被覆用組成物を植物の表面に供給して、前記植物の表面を前記植物被覆用組成物で被覆する、植物の被覆方法。
[14]植物の表面に供給した前記植物被覆用組成物を乾燥して、セルロースナノファイバー(A)及び油分(C)の少なくとも一方を植物の表面で膜状にする、上記[13]に記載の植物の被覆方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、展着性に優れ、油分を含む被膜を植物表面に容易に形成することができ、植物の保護性能が良好な被膜を形成し得る、植物被覆用組成物、植物被覆用組成物の製造方法、及び、植物の被覆方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の植物被覆用組成物の一例を示す断面図である。
図2】本発明の植物の被覆方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
本明細書において、セルロースナノファイバーをCNFと略することがある。
【0013】
[植物被覆用組成物]
本発明の実施形態に係る植物被覆用組成物は、植物の表面に供給され当該植物の表面を被覆する植物被覆用組成物であって、物質内包カプセル(X)と水性媒体(B)とを含み、物質内包カプセル(X)が、CNF(A)を含む外殻、及び、当該外殻で囲まれた空間に内包される油分(C)を含む。なお、本明細書において、CNF(A)、水性媒体(B)及び油分(C)をまとめて、成分(A)~(C)と称することがある。
【0014】
図1は、植物被覆用組成物の一例を示す断面図である。図1に示す植物被覆用組成物10は、物質内包カプセル(X)及び水性媒体(B)を含有する。物質内包カプセル(X)は、CNF(A)を含む外殻2から構成されている。
本発明の実施形態に係る植物被覆用組成物において、油分(C)の少なくとも一部は、CNF(A)を含む外殻に内包されている。
ここで、「油分(C)がCNF(A)を含む外殻に内包されている状態」とは、CNF(A)を含む外殻が中空粒子を形成しており、当該中空粒子の中空部分に油分(C)が取り込まれた状態を意味する。この際、中空粒子を構成する外殻によって、油分(C)は、中空粒子の外側とは隔てられた状態となっている。このCNF(A)により油分(C)が内包されたものを物質内包カプセル(X)と呼ぶ。
【0015】
本発明の一態様の植物被覆用組成物において、物質内包カプセル(X)は、油分(C)を内包しつつ、且つ、物質内包カプセル(X)の外殻を構成するCNF(A)が、油分(C)を吸着している状態であってもよい。本明細書において、「CNF(A)によって構成される外殻が油分(C)を吸着する」とは、CNF(A)によって構成される外殻の網目構造内に油分(C)が存在することを意味する。
【0016】
物質内包カプセル(X)の外殻に含まれるCNF(A)は、パルプ等の一般的なセルロース原繊維に比べて、微細な構造を有しているため、単位質量あたりの表面積が大きく、結果として、CNF(A)の表面に引きつけられる油分(C)の量も多くなる。
更に、CNF(A)は、複数の繊維が互いに絡み合って外殻を形成するため、CNF(A)によって構成される外殻の網目構造内に油分(C)を取り込んだ状態(つまり、油分(C)を吸着した状態)を保ち易い。
そのため、物質内包カプセル(X)の形成時及び形成からしばらくの間は、意図的に一定の圧力を負荷しない限り、油分(C)の当該物質内包カプセルへの取り込み(すなわち、外殻の網目構造内、及び、外殻より内側の空間に油分(C)が存在する状態)が保たれ、油分(C)が外部へ放出され難くなる。また、物質内包カプセル(X)の存在により、油分(C)が植物被覆用組成物中に沈降することが抑制され、植物被覆用組成物の保存安定性が良好に保たれる。
【0017】
なお、本発明の一態様の植物被覆用組成物において、物質内包カプセル(X)に取り込まれない油分(C)が存在していてもよい。
また、物質内包カプセル(X)には、油分(C)と共に、水性媒体(B)が取り込まれていてもよい。
更に、物質内包カプセル(X)には、空気等の気体も取り込まれていてもよい。物質内包カプセル(X)の形成時の撹拌工程にて、植物被覆用組成物中には空気等の気体が混入するが、物質内包カプセル(X)を構成する外殻の内部に、空気等の気体が取り込まれることも考えられる。
【0018】
ところで、CNF(A)は、水性媒体(B)と水素結合を形成するため、水性媒体(B)との親和性が高い性質を有する。
そのため、物質内包カプセル(X)のCNF(A)を含む外殻は、水性媒体(B)を吸着した状態であってもよい。つまり、物質内包カプセル(X)は、油分(C)を内包し、あるいは加えて外殻に油分(C)を吸着しつつ、且つ、水性媒体(B)が外殻に保持された状態であってもよい。
【0019】
本発明の植物被覆用組成物中において、油分(C)が物質内包カプセル(X)に取り込まれる量が多くなるほど、物質内包カプセル(X)とは分離して存在する油分(C)から構成される液体の量は少なくなる。
また、CNF(A)を含む外殻を備える物質内包カプセル(X)や、物質内包カプセル(X)を形成しておらず水性媒体に分散しているCNF(A)が、水性媒体に含まれる水分子と多く相互作用する程、水性媒体を保持するため、CNF(A)とは分離して存在する水性媒体(B)から構成される液体の量は少なくなると考えられる。そのため、当該植物被覆用組成物中の固形分率は、多いほど好ましい。
本発明の一態様の植物被覆用組成物中の固形分率としては、当該植物被覆用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%、より更に好ましくは98~100質量%である。
【0020】
本明細書において、植物被覆用組成物中の「固形分率」とは、テトロンメッシュ(#200メッシュ)上に植物被覆用組成物を塗布して静置した後に、テトロンメッシュ上に残存している固形分の割合を指し、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
なお、上述のテトロンメッシュ上に残存している固形分には、CNF(A)だけでなく、物質内包カプセル(X)に取り込まれた油分(C)、物質内包カプセル(X)の外殻に保持された水性媒体(B)、及び、物質内包カプセル(X)の外殻の形成には関与していないCNF(A)に保持された水性媒体(B)等の質量も含まれる。
【0021】
本発明の一態様において、植物被覆用組成物に含まれる物質内包カプセル(X)の平均粒子径は、植物被覆用組成物中で物質内包カプセル(X)同士の凝集を抑制する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上、より更に好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、また、植物の表面をより均一に被覆する観点から、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、より更に好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
物質内包カプセル(X)の平均粒子径が1μm以上であれば、植物被覆用組成物中で、物質内包カプセル(X)が互いに凝集しづらくなり、均一に植物へ供給しやすくなる。
また、物質内包カプセル(X)の平均粒子径が60μm以下であると、物質内包カプセル(X)が密に植物表面に供給されるため、植物の表面をより均一に被覆しやすくなる。
【0022】
本発明の植物被覆用組成物に含まれる物質内包カプセル(X)の平均粒子径に対する標準偏差は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下であり、また、通常1μm以上である。
物質内包カプセル(X)の平均粒子径に対する標準偏差が25μm以下であれば、物質内包カプセル(X)ごとの取り込まれている有機溶剤の量の違いが大きくなりすぎず、均一に植物へ供給しやすくなる。
【0023】
上述の構成を有する植物被覆用組成物は、CNF(A)の存在によって、植物被覆用組成物に適度なチキソ性が付与される。このため、植物被覆用組成物が展着性を有することになり、植物の表面に付着させやすくなる。
また、植物被覆用組成物を植物表面に供給した後、物質内包カプセルが開裂し、油分及びCNFが植物表面に膜状に広がることによって、一般的なワックスの塗布と同様に、日光、汚れ等からの植物の保護、植物からの水分の気化を抑制することによる保湿性や鮮度の維持、及び、断熱効果による霜害の防止等の効果が得られる。加えて、CNFが膜状に植物表面を覆うことにより、虫害の予防にも寄与し得る。
更に、CNF(A)によって形成される膜はポーラスであると考えらえるため、植物の呼吸を阻害しにくく、収穫前の植物にあってはその育成を妨げにくく、収穫後の植物においてはその鮮度を保ちやすい。
更に、CNF(A)自体が人体に対して安全な物質であり、水性媒体(B)や油分(C)も安全なものを選択できるので、植物被覆用組成物全体を安全なものとしやすい。したがって、収穫前の生育段階の植物に散布することもできる。
また、CNF(A)は親水基と疎水性部位とを有する両親媒性材料であることから、界面活性剤の役割を果たす。このため、濡れ広がりやすさが確保され、植物被覆用組成物に拡展性を与えることができる。
【0024】
なお、本明細書において、物質内包カプセル(X)の平均粒子径、及び、平均粒子径に対する標準偏差は、対象となる植物被覆用組成物を、デジタル顕微鏡を用いて倍率500~1,000倍にて観察した際に取得した画像から算出することができる。
つまり、当該画像に写し出された粒子のうち、任意に選択した36個の粒子の粒径(物質内包カプセル(X)を構成する外殻の外径)の平均値を上記の「平均粒子径」とすることができる。また、36個の各粒子の粒径の値から、「平均粒子径に対する標準偏差」も算出することができる。上記標準偏差は母集団の標準偏差であり、上記計算においては、36個の粒径の値の全てを対象として標準偏差を算出する。
【0025】
本発明の一態様の植物被覆用組成物の23℃、回転数50rpmにおける粘度は、貯蔵安定性を良好とし、容器内に保存した際に沈降を抑制する観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1,000mPa・s以上、更に好ましくは1,200mPa・s以上であり、また、撹拌容易性及び容器からの取り出し性を良好とする観点から、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは15,000mPa・s以下、更に好ましくは12,000mPa・s以下である。
【0026】
また、本発明の一態様の植物被覆用組成物の23℃でのTI値(回転数5rpmにおける粘度/回転数50rpmにおける粘度)は、貯蔵安定性を良好とし、容器内に保存した際に沈降を抑制する観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは4以上であり、また、容器からの取り出し性を良好とする観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下である。
また、本明細書において、植物被覆用組成物の粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠して、B型粘度計を用いて測定した値を意味する。
【0027】
本発明の一態様の植物被覆用組成物のpHは、形成される粒子が安定し、植物被覆用組成物中で分散状態を維持し易いという観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
なお、本明細書において、植物被覆用組成物のpHは、23℃、相対湿度50%の環境下にて、実施例に記載の方法に基づき測定した値を意味する。
【0028】
本発明の一態様の植物被覆用組成物は、CNF(A)、水性媒体(B)及び油分(C)以外の成分を含有してもよい。
ただし、本発明の一態様の植物被覆用組成物において、CNF(A)、水性媒体(B)及び油分(C)の合計含有量は、前記植物被覆用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは60~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%である。
【0029】
本発明の一態様の植物被覆用組成物の有効成分濃度としては、前記植物被覆用組成物の全量(100質量%)に対して、本発明の効果を発揮させやすくする観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、塗布や噴霧による被覆を容易にする観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
なお、本明細書において、「有効成分」とは、植物被覆用組成物に含まれる成分のうち、水性媒体(B)を除いた成分を意味し、具体的には、CNF(A)、油分(C)、CNF(A)以外の多糖類、及び各種添加剤等を指す。つまり、CNF(A)に取り込まれた水性媒体(B)の質量は含まれない点で、上述の「固形分率」とは異なる。
【0030】
CNF(A)を含む外殻を備え、油分(C)を取り込んでいる物質内包カプセル(X)は、配合するCNF(A)の形状(直径、繊維長、アスペクト比)、成分(A)~(C)のそれぞれの配合量、CNF(A)と油分(C)との配合量比、水性媒体(B)と油分(C)との配合量比、並びに油分(C)の種類等を適宜調整することで、形成し易くすることができる。
次に、植物被覆用組成物を構成する各成分の詳細について説明する。
【0031】
<セルロースナノファイバー(A)>
本発明の一態様で用いるCNF(A)の原料としては、例えば、木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ;クラフトパルプ又はサルファイトパルプを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース;粉末セルロースを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末;コウゾ、雁皮、三椏等の靭皮繊維パルプ;コットンパルプ、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物由来のセルロース系原料;等のセルロース系原料が挙げられる。
【0032】
なお、これらの原料中にリグニンが多く残留してしまうと、当該原料の酸化反応を阻害するおそれがあるため、これらの原料に対して、リグニンの除去を施した、セルロース系原料が好ましい。
また、上述のセルロース系原料を高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散装置、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザー等で微細化したものを使用することもできる。
【0033】
また、これらのセルロース系原料は、化学修飾及び/又は物理修飾して機能性を高めたものであってもよい。ここで、化学修飾としては、アセチル化、カルボキシ化、カルボキシナトリウム化、エステル化、シアノエチル化、アセタール化、エーテル化、アリール化、アルキル化、アクリロイル化、イソシアネート化等によって官能基を付加させること、及び、シリケートやチタネート等の無機物を化学反応やゾルゲル法等によって複合化や被覆化させること等が挙げられる。
また、物理修飾としては、金属やセラミック原料を、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、無電解メッキや電解メッキ等のメッキ法等によって表面被覆させることが挙げられる。
なお、これらの変性処理は、セルロース系原料を解繊時もしくは解繊する前後のいずれに行ってもよい。
【0034】
上述のセルロース系原料は、解繊してナノファイバー化することで、CNFとすることができる。
具体的な方法としては、セルロース系原料が水等の分散媒に分散している分散液を調製した後、セルロース系原料にせん断力を印加することで、CNFを含む分散液とすることができる。
セルロース系原料にせん断力を印加する方法としては、水等の分散媒にセルロース系原料を添加した後、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式等の装置を用いて調製することが好ましい。
この際、分散液にかかる圧力としては、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは140MPa以上である。
このような高圧下で、セルロース系原料に強力なせん断力を印加する観点から、高圧式の装置を用いてせん断力を印加することが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
【0035】
本発明の一態様で用いる、CNF(A)の直径(太さ)の平均としては、形状及び大きさのばらつきが小さい物質内包カプセル(X)を形成し易くすると共に、形成された物質内包カプセル(X)の膜強度を向上させる観点から、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは1.5nm以上、更に好ましくは2.0nm以上、より更に好ましくは2.5nm以上であり、また、また、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは200nm以下、より更に好ましくは100nm以下である。
【0036】
本発明の一態様で用いる、CNF(A)の繊維長の平均としては、物質内包カプセル(X)を形成し易くすると共に、形成された物質内包カプセル(X)の膜強度を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上、より更に好ましくは0.3μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは7.0μm以下、更に好ましくは5.0μm以下、より更に好ましくは2.5μm以下である。
【0037】
本発明の一態様で用いる、CNF(A)の平均アスペクト比としては、物質内包カプセル(X)を形成し易くすると共に、形成された物質内包カプセル(X)の膜強度を向上させる観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上であり、また、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは5,000以下であり、更に好ましくは、3,000以下、より更に好ましくは1,000以下、特に好ましくは500以下である。
【0038】
なお、「アスペクト比」とは、対象であるCNFの太さに対する長さの割合〔長さ/太さ〕であり、CNFの「長さ」とは、当該CNFの最も離れた2点間の距離を指す。
また、対象となるCNFの一部分が、他のCNFと接触して「長さ」の認定が難しい場合には、対象のCNFのうち、太さの測定が可能な部分のみの長さを測定し、当該部分のアスペクト比が上記範囲であればよい。
【0039】
本発明の一態様の植物被覆用組成物において、CNF(A)の配合量は、当該植物被覆用組成物の全量(100質量%)に対して、形状及び大きさのばらつきが小さい物質内包カプセル(X)を形成し易くすると共に、形成された物質内包カプセル(X)の膜強度を向上させる観点から、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.2質量%以上であり、また、物質内包カプセル(X)を形成し易くするように、植物被覆用組成物の粘度を適切に調整する観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0040】
<水性媒体(B)>
本発明の一態様の植物被覆用組成物において、水性媒体(B)は、そのほとんどが、物質内包カプセル(X)が備える外殻に吸着されているか、又は、物質内包カプセル(X)の外側に存在している。
ただし、水性媒体(B)の一部が、物質内包カプセル(X)の内部で油分(C)と共に内包されていてもよい。
水性媒体としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ジエチレングリコール、グリセリン、ピロリドン系溶媒、及び、これらのうち2つ以上の混合物等が挙げられる。特に、物質内包カプセル(X)の分散性がよいことから、水が好ましい。
【0041】
本発明の一態様の植物被覆用組成物において、適度な粘度を有する植物被覆用組成物を調製すると共に、形状及び大きさのばらつきが小さい物質内包カプセル(X)を形成し易くする観点から、水性媒体(B)の配合量は、当該植物被覆用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.7質量%以下、更に好ましくは98.5質量%以下である。
【0042】
本発明の一態様の植物被覆用組成物において、適度な粘度を有する植物被覆用組成物を調製すると共に、CNF(A)の凝集を抑え、形状及び大きさのばらつきが小さい物質内包カプセル(X)を形成し易くする観点から、CNF(A)100質量部に対する、水性媒体(B)の配合割合としては、好ましくは500質量部以上、より好ましくは1,000質量部以上、更に好ましくは2,000質量部以上、より更に好ましくは3,000質量部以上であり、また、好ましくは20,000質量部以下、より好ましくは15,000質量部以下、更に好ましくは10,000質量部以下である。
【0043】
なお、本発明の一態様の植物被覆用組成物は、CNF(A)及び水性媒体(B)を含む水性分散液に、油分(C)を配合してなる。
予め、前記水性分散液を調製した後、油分(C)を配合することで、CNF(A)が油分(C)を取り込み易くなり、形状及び大きさのばらつきが小さい物質内包カプセル(X)を形成され易くなる。
当該水性分散液は、CNF(A)と水性媒体(B)との配合量比が上記範囲となるように、各成分を配合して調製することが好ましい。
また、当該水性分散液には、CNF(A)及び水性媒体(B)と共に、成分(A)~(C)以外の他の成分を含有してもよい。
【0044】
<油分(C)>
本発明の一態様で用いる油分(C)は、好ましくは、炭化水素系油性成分、天然動植物油脂類及び半合成油脂類からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含むことが好ましい。
炭化水素系油性成分としては、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、n-パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ポリイソブチレン、水素化ポリイソブチレン、ポリブテン、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン・ポリピロピレンワックス、スクワラン、スクワレン、プリスタン、ポリイソプレン、ロウ等が例示される。
天然動植物油脂類及び半合成油脂類としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、オリーブスクワラン、セラック樹脂、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、水添ホホバエステル、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、羊脂、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POE(ポリオキシエチレン)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等が挙げられる。
セラック樹脂は、ラックカイガラ虫の体を覆っている樹脂状の分泌物質を原料として、ソーダー法等の公知の溶液抽出法等により精製した樹脂成分である。
この精製後の樹脂成分の主成分は、アレウリチン酸等の直鎖状樹脂酸と、ジャラール酸、ラクシジャラール酸、及びこれらの誘導体等のセスキテルペン系樹脂酸とのエステル化合物である。
使用できるセラック樹脂としては、例えば、精製セラック樹脂、漂白セラック樹脂、脱色セラック樹脂等が挙げられる。
【0045】
油分(C)として、水性媒体(B)の融点より高く水性媒体(B)の沸点より低い温度の間で、液状になるものを用いることで、植物被覆用組成物を製造する際に、油分(C)が組成物全体に均一に分散しやすくなり、また、物質内包カプセル(X)に内包されやすくなる。したがって、油分(C)は、使用する水性媒体(B)の融点及び沸点を考慮して選択することが好ましい。換言すれば、水性媒体(B)は、使用する油分(C)の温度特性を考慮して、油分(C)が液状になる温度が水性媒体(B)の融点より高く水性媒体(B)の沸点より低い温度の間になるものを選択することが好ましい。
【0046】
油分(C)は、また、後述するように、常温で固体の油分を常温で液体の油分に溶解したものであってもよい。また、油分(C)は、全てが上述したような各種の油分からなるものであってもよいし、これらの油分を有機溶媒に溶解したものであってもよい。後者の場合、例えば、上述した炭化水素系油性成分、天然動植物油脂類及び半合成油脂類からなる群から選択される少なくとも一つの成分を、当該成分を溶解可能な有機溶媒に溶解したものを油分(C)として用いることができる。
本明細書においては、有機溶剤に油分が溶解されている場合、その溶液全体を油分(C)という。
【0047】
油分(C)と水性媒体(B)との含有比率は、質量比で、(C):(B)が、好ましくは1:0.1~1:1,000、より好ましくは1:1~1:500、更に好ましくは1:2.5~1:100、特に好ましくは1:4~1:50である。換言すれば、質量比で、(B)/(C)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2.5以上、特に好ましくは4以上であり、また、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。(C):(B)又は(B)/(C)が上記範囲にあると、水分が比較的少ないので乾きやすく、乾くとCNFや油分が膜状に広がりやすい。
【0048】
植物被覆用組成物の全質量に対する油分(C)の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。油分(C)の含有量が上記範囲にあると、植物の被覆面積や被覆量が多くなるので、保湿、防汚などの効果が発現しやすい。
【0049】
<成分(A)~(C)以外の他の成分>
本発明の一態様の植物被覆用組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)~(C)以外の他の成分を含有してもよい。
このような他の成分としては、前記植物被覆用組成物の用途に応じて適宜選択されるが、例えば、着色剤、酸化防止剤、pH調整剤、甘味料、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、防菌剤、殺虫剤、消泡剤、気泡剤、凝集剤、増粘剤、可塑剤、改質剤、防炎剤、難燃剤等が挙げられる。
【0050】
本発明の一態様の植物被覆用組成物において、界面活性剤を含有してもよい。
ただし、界面活性剤を含む植物被覆用組成物を人体に触れる用途に使用する場合、特に、敏感肌の使用者にとって、当該界面活性剤は浸透剤及び刺激的な刺激物ともなる。また、界面活性剤を含む植物被覆用組成物は、当該植物被覆用組成物の物性の安定性に影響を与える懸念もある。
そのため、本発明一態様の植物被覆用組成物において、界面活性剤の含有量は少ないほど好ましい。
上記観点から、本発明の一態様の植物被覆用組成物において、界面活性剤の含有量は、CNF(A)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.1質量部未満、より更に好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0.001質量部未満、最も好ましくは0質量部である。
【0051】
また、本発明の一態様の植物被覆用組成物において、CNF(A)以外の多糖類を含有してもよいが、物質内包カプセル(X)の熱的安定性を向上させると共に、物質内包カプセル(X)を形成し易くする観点から、当該多糖類の含有量は少ないほど好ましい。
上記観点から、本発明の一態様の植物被覆用組成物において、CNF(A)以外の多糖類の含有量は、CNF(A)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.1質量部未満、より更に好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0質量部である。
【0052】
[植物被覆用組成物の製造方法]
植物被覆用組成物の製造方法としては、特に制限はないが、下記工程(1)~(2)を有する方法が好ましい。
・工程(1):CNF(A)及び水性媒体(B)を含む水性分散液を調製する工程。
・工程(2):工程(1)で得た水性分散液に、油分(C)を添加する工程。
なお、工程(1)及び(2)で用いる、成分(A)~(C)の詳細は、上述のとおりである。
【0053】
<工程(1)>
工程(1)は、CNF(A)及び水性媒体(B)を含む水性分散液を調製する工程である。
本工程において、市販の水性分散液を用いる場合には、当該工程は省略してもよく、また、市販の水性分散液に、CNF(A)又は水性媒体(B)を加え、所望の配合量とした水性分散液に調製してもよい。
【0054】
また、成分(A)~(C)以外の他の成分を配合する場合には、工程(1)の水性分散液の調製の際に配合してもよく、工程(2)の後に配合してもよい。
【0055】
工程(1)で得られた水性分散液のpHは、水性分散液中でCNF(A)の凝集を抑え、形成される物質内包カプセル(X)の形状及び大きさのばらつきを小さくする観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
【0056】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得た水性分散液に、油分(C)を添加する工程である。
本工程において、ホモディスパー、ミキサー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて、水性分散液を撹拌しながら、油分(C)を添加することが好ましい。
【0057】
水性分散液を撹拌する際の撹拌速度(回転数)は、CNF(A)の凝集を抑え、形成される物質内包カプセル(X)の形状及び大きさのばらつきを小さくする観点から、好ましくは500rpm以上、より好ましくは1,000rpm以上、更に好ましくは1,500rpm以上、より更に好ましくは2,000rpm以上であり、また、好ましくは5,000rpm以下、より好ましくは4,500rpm以下、より好ましくは4,000rpm以下、更に好ましくは3,500rpm以下、より更に好ましくは3,000rpm以下である。
【0058】
また、油分(C)が常温で固体の成分である固形油分を含む場合、この固形油分を常温で液体の有機材料に溶解した上で、この固形油分が溶解している有機材料を水性分散液に添加し、さらに撹拌を行うことで、油分(C)に含まれる固形油分の少なくとも一部が、CNF(A)の外殻で囲まれる空間内に取り込まれた物質内包カプセル(X)を生成させることが好ましい。
常温で液体の有機材料としては、水性媒体(B)の融点より高く水性媒体(B)の沸点より低い温度の間で液体であって、固形油分を溶解できるものであれば特に制限はなく、固形油分の種類に合わせて任意の有機材料を用いることができる。常温で液体の油分(C)を、常温で液体の有機材料として用いることもできる。この場合、物質内包カプセル(X)に内包される油分(C)の量を多くさせやすくなる
【0059】
水性分散液を撹拌する際の水性分散液の温度は、CNF(A)の凝集を抑え、形成される物質内包カプセル(X)の形状及び大きさのばらつきを小さくする観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、また、添加した油分(C)の揮発を抑制する観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは50℃以下、より更に好ましくは40℃以下である。
【0060】
油分(C)の添加方法としては、物質内包カプセル(X)の粒径を揃いやすくする観点から、一定時間ごとに一定量ずつ添加することが好ましい。
具体的には、水性分散液の全量100質量部に対する、10秒ごとの油分(C)の添加量としては、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは7質量部以下である。
【0061】
油分(C)の添加開始からの撹拌時間としては、物質内包カプセル(X)の粒径を揃いやすくする観点から、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上であり、また、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下、更に好ましくは60分以下、より更に好ましくは40分以下、特に好ましくは20分以下である。なお、撹拌時間とは、油分(C)の添加から撹拌を終了するまでの時間を指す。油分(C)を十分に分散させるとともにカプセルの形成を促進させるため、必要量の油分(C)の添加終了後も、油分(C)添加開始からの上記時間が経過するまで撹拌を継続することが望ましい。
【0062】
[植物の被覆方法]
本発明の一実施形態に係る植物の被覆方法においては、塗布や噴霧によって、植物被覆用組成物を植物の表面に供給して、植物の表面を植物被覆用組成物で被覆する。以下、図面を用いて、植物の被覆方法の一実施形態を説明する。
図2は、植物の被覆方法を模式的に示す、植物表面付近の拡大断面図である。図2(a)に示すように、植物被覆用組成物10を植物20の表面に供給する。
被覆対象物である植物に特に制限はなく、様々な種類の植物が被覆対象物となり得る。植物被覆用組成物が供給される植物の部位にも特に制限はなく、果実、葉、茎、花など様々な部位に適用できる。果物や野菜など食用のものであってもよいし、観葉植物であってもよい。
【0063】
植物被覆用組成物10の供給方法に特に制限はなく、例えば、ブラシ等の塗布器具を用いる塗布法やスプレー等を用いて噴射するスプレー塗布法を用いることができる。手で塗布したり、植物被覆用組成物10に植物を浸漬したりすることもできる。
植物被覆用組成物を噴霧して植物表面を被覆する場合、植物被覆用組成物が適度なチキソ性を有するので、噴霧に最適なレオロジーが得られる。したがって、植物被覆用組成物が噴霧口から垂れることが防止される。また、噴霧後に植物から植物被覆用組成物が落下してしまうことも抑制できる。また、オイルミストには着火性の問題があるが、上記植物被覆用組成物においては、油分を内包したカプセルの周囲が水性媒体で覆われているので、植物被覆用組成物を噴霧しても着火性が低く、植物被覆用組成物を安全に塗布することができる。
外殻2で囲まれた空間に油分(C)を内包する物質内包カプセル(X)は水性媒体(B)に分散しているので、物質内包カプセル(X)を植物20の表面に均一に配置させやすい。
なお、植物被覆用組成物10を植物20に供給した時点では、物質内包カプセル(X)が水性媒体(B)と共に植物20の表面に存在する。
【0064】
自然乾燥や乾燥機による乾燥などによって、水性媒体(B)が蒸発していくと、図2(b)に示すように、水性媒体(B)が少なくなった部位等から物質内包カプセル(X)が開裂する(外殻2の開裂部を符号2aで示す)。そして、開裂部2aから油分(C)が物質内包カプセル(X)の外部へ流出すると共に、外殻2が崩壊してゆく。
そして、最終的に、図2(c)に示すように、外殻2を構成していたCNF(A)が解けて、植物20の表面を覆うように膜状に広がり、油分(C)が更にそれを覆うように広がる。水性媒体(B)は蒸発してほぼ消失する。
こうして、植物被覆用組成物に含まれる物質内包カプセル(X)は、植物の表面に供給された後、水性媒体(B)の蒸発と共に、油分(C)を外部へ放出し、それ自身を構成していたCNF(A)と油分(C)とで植物を覆う。このため、上述したように、日光、汚れ等からの植物の保護、植物の保湿性や鮮度の維持、及び、断熱等の効果が得られる。加えて、CNFが膜状に植物表面を覆うことにより、虫害の予防にも寄与し得る。
植物への植物被覆用組成物の供給は、植物の育成中に行ってもよいし、収穫後のものに行ってもよい。CNF(A)によって植物の表目に形成される膜はポーラスであると考えられ、植物の呼吸を阻害しにくい。このため、収穫前の植物にあってはその育成を妨げにくく、収穫後の植物においてはその鮮度を保ちやすくなる。
【0065】
また、植物被覆用組成物による植物の被覆を手作業で行う場合、水性媒体が乾燥して物質内包カプセル(X)が開裂する前に手洗いすることにより、油分が手に直接付着する前に植物被覆用組成物を取り除くことができるため、べたつきを生じにくい。
【0066】
なお、油分(C)にCNF(A)を添加して撹拌するだけでは、エマルションが形成されない。したがって、そのような混合物を用いても、油分(C)及びCNF(A)を植物表面に適切に散布することができない。したがって、植物の保護や保湿等が不十分になりやすく、また、虫害の防止効果も不十分になりやすい。
【実施例
【0067】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の合成例、製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0068】
[CNFの直径(太さ)の平均、長さの平均、平均アスペクト比]
透過型電子顕微鏡(カールツァイス社製、製品名「LEO912」)を用いて、任意に選択した10本のCNFの直径(太さ)及び長さを測定し、10本の平均値を、対象となるCNFの「直径(太さ)の平均」及び「長さの平均」とした。また、「長さの平均/直径(太さ)の平均」を平均アスペクト比とした。
【0069】
[実施例1]
植物被覆用組成物E1の調製に際し、下記の市販品のCNFを含む水分散液(1)と市販の流動パラフィン(1)とを使用した。
・水分散液(1):製品名「BiNFi-s AMa10002」、株式会社スギノマシン製。直径(太さ)の平均=76.8nm、長さの平均=1.4μm、平均アスペクト比=18.2である、機械処理型のCNFを2質量%含む水分散液。CNF100質量部に対して、水を4,900質量部含有するものであり、pH=7.0であった。
・流動パラフィン(1):製品名「モレスコホワイトP-350」、株式会社MORESCO製。
水分散液(1)5,000質量部(CNF100質量部)を容器に投入し、超高速マルチ撹拌システム(プライミクス株式会社製、製品名「ラボ・リューション(登録商標)」、撹拌羽:ホモディスパー(同社製、羽の直径35mm))を用いて、水分散液を、回転数3,000rpmで撹拌した。撹拌開始後、流動パラフィン(1)を、水分散液の全量100質量部に対して、10秒毎に5質量部の速さで添加した。上記水分散液5,000質量部(CNF100質量部)に対して、流動パラフィン(1)が500質量部(固形分比でCNF:流動パラフィン=1:5)となるまで流動パラフィン(1)の添加を続け、撹拌開始から20分経過後に撹拌を終了し、CNFを含む外殻を備える物質内包カプセル(X)を含む植物被覆用組成物E1を調製した。なお、全ての操作を常温(23℃)で行った。
植物被覆用組成物E1を調製するのに用いた材料や配合量を表1に示す。なお、以下で説明する各実施例及び各比較例の材料や配合量も表1に示す。
【0070】
[実施例2]
水分散液(1)に代えて、下記の市販品のCNFを含む水分散液(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、植物被覆用組成物E2を調製した。
・水分散液(2):製品名「CM化CNF 粉末品」、日本製紙株式会社製のカルボキシメチル化CNF(CM化CNF)を2質量%含むように調整した水分散液。直径(太さ)の平均=約50nm、長さの平均=約2μm、平均アスペクト比=約40であり、CNF100質量部に対して、水を4,900質量部含有するものであり、pH=7であった。
【0071】
[実施例3]
水分散液(1)に代えて、下記の市販品のCNFを含む水分散液(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、植物被覆用組成物E3を調製した。
・水分散液(3):製品名「TEMPO酸化CNF」、日本製紙株式会社製。直径(太さ)の平均=3.8nm、長さの平均=0.7μm、平均アスペクト比=184である、化学処理型のCNFを1質量%含む水分散液。CNF100質量部に対して、水を9,900質量部含有するものであり、pH=7.0であった。
【0072】
[実施例4]
油分として、流動パラフィン(1)500質量部にカルナウバロウ(製品名「粉末 カルナバ蝋」、山桂産業株式会社製)100質量部を溶解したものを用いたこと以外は実施例2と同様にして、植物被覆用組成物E4を調製した。
【0073】
[実施例5]
油分として、流動パラフィン(1)500質量部にカルナウバロウ(製品名「粉末 カルナバ蝋」、山桂産業株式会社製)500質量部を溶解したものを用いたこと以外は実施例2と同様にして、植物被覆用組成物E5を調製した。
【0074】
[比較例1]
流動パラフィン(1)を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較組成物CE1を調製した。
【0075】
[比較例2]
水4,900質量部を準備して比較組成物CE2とした。
【0076】
[比較例3]
流動パラフィン(1)500質量部を準備して比較組成物CE3とした。
【0077】
[比較例4]
撹拌装置を使用せず、薬匙を用いて手混ぜで各成分を混合する方法に変更した以外は実施例1と同様にして、比較組成物CE4を調製した。
【0078】
次に各例で調製した組成物について下記の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0079】
[物質内包カプセルの平均粒子径及び標準偏差]
各例で調製した組成物を、デジタル顕微鏡を用いて倍率500~1,000倍にて観察した際に取得した画像において、ランダムに選択した36個の粒子の粒径(物質内包カプセル(X)を構成する外殻の外径)を測定し、それらの平均値をカプセル径の平均粒子径とした。また、上記36個の粒径の値の全てを対象として標準偏差を算出した。
【0080】
[植物被覆用組成物の粘度及びTI値]
JIS Z 8803:2011に準拠して、B型粘度計を用いて、23℃、回転数5rpm及び50rpmにおける各組成物の粘度を測定した。また、〔回転数5rpmにおける粘度〕/〔回転数50rpmにおける粘度〕の比をTI値とした。
【0081】
[植物被覆用組成物中の固形分率の測定]
上底面の直径7.2cm、下底面の直径6.8cm、高さ8cmの円錐台形のコップを用いて、コップの上底面に、一辺10cmの正方形に切断したテトロンメッシュ(#200メッシュ)を載せて、クリップでコップの淵とテトロンメッシュを固定し、測定用容器を作製した。
実施例及び比較例で調製した組成物10gを、この測定用容器のテトロンメッシュ上に薄く広げるように塗布し1分間静置した。そして、測定用容器内に落下した組成物中の液体の質量w[g]を測定し、下記式から、組成物中の固形分率を算出した。
・固形分率[質量%]=100-(w[g]/10[g]×100)
【0082】
[植物被覆用組成物のpH]
23℃、相対湿度50%の環境下、コンパクトpHメータ(株式会社堀場アドバンスドテクノ製、製品名「LAQUAtwin pH-22B」)を用いて、pH4.01標準液とpH6.86標準液の2点校正を行った後、平面センサ全体を覆うように試料を滴下して測定した。
【0083】
[組成物の展着性]
みかんを水で手洗いして乾燥させた後、机上に載置し、市販のフィンガースプレー容器を用いて、各組成物を上記みかんに対して2プッシュ噴霧して、10分後に目視観察した。そして、以下の基準で展着性を評価し、3及び2を合格とした。
・噴霧直後と見た目が変わっておらず、組成物が机に垂れていない…3
・噴霧直後と比較して、組成物がやや垂れているが、机に垂れていない…2
・組成物が垂れて机に落ちている…1
【0084】
[噴霧後のカプセル有無]
みかんの皮の外表面に、市販のフィンガースプレー容器を用いて各組成物を噴霧し、その直後、デジタル顕微鏡を用いて倍率500倍で観察し、カプセルの有無を確認した
【0085】
[表面のツヤ]
みかんを水で手洗いして乾燥させた後、机上に載置し、市販のフィンガースプレー容器を用いて、各組成物を上記みかんに対して5プッシュ噴霧した。そして、噴霧直後のみかんの表面の状態と、1週間後のみかんの表面の状態とを目視で観察し、両者を比較して、噴霧直後のみずみずしさが保たれているかどうかを以下の基準で判定した。
・噴霧直後とほぼ同等のみずみずしさが保たれている…3
・噴霧直後と比較して、ややみずみずしさが低下しているが問題ないレベル…2
・みずみずしさがない、又は、表面が干からびており、製品として出荷できないレベル…1
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表1、2から、実施例1~5の植物被覆用組成物は、いずれも、CNFを含む外殻内に油分を内包しているカプセルを含んでおり、展着性に優れていることが分かる。また、実施例1~5の植物被覆用組成物を植物に噴霧すると、カプセルが消失してカプセルに内包されていた油分が植物の表面に広がる結果、植物の表面を良好に保護できていることが分かる。
これに対して、比較例1~4の組成物は、油分を内包するカプセルを有しておらず、植物に噴霧した場合に、長期間植物の表面を保護することができないことが分かる。また、比較例2~4の組成物は、展着性にも劣ることが分かる。
【符号の説明】
【0089】
2 外殻
2a 開裂部
10 植物被覆用組成物
20 植物
図1
図2