(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20231117BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
F16F13/10 L
F16F15/08 K
(21)【出願番号】P 2019129850
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019099080
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】荒川 清香
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-318311(JP,A)
【文献】特開平09-196095(JP,A)
【文献】特開2014-224557(JP,A)
【文献】特開平07-069238(JP,A)
【文献】特開2012-107748(JP,A)
【文献】特開2010-281410(JP,A)
【文献】特開2010-084807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
F16F 11/00-13/30
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる軸部を備え、前記軸部の端部が相手部材に固定される第1部材と、
前記第1部材と間隔をあけて配置されると共に、少なくとも一部が、前記軸線に垂直な方向に前記軸部と間隔をあけて配置される第2部材と、
前記第2部材と前記第1部材とを連結する弾性体からなる防振基体と、
前記相手部材に第1面を向け、前記第1面の反対側の第2面を前記第2部材に向けて、前記第2部材と前記相手部材との間に配置される弾性体からなるストッパと、を備え、
前記第2部材は、前記防振基体が内周面に接着された筒体と、前記筒体に固定された円環体と、を含み、
前記円環体は、前記軸部と隙間をあけて前記軸部の周囲に配置される変位規制部を有し、
前記ストッパには、前記第1面と前記第2面とをつなぐ穴が形成され、
前記ストッパは、前記穴に前記軸部が前記端部から挿入された状態で前記軸部の前記端部と前記変位規制部との間に配置され
前記第1面と前記第2面とを有する本体を含み、
前記第2面は前記変位規制部と軸線方向に対向し、
前記本体は、前記穴の周囲の前記第1面の少なくとも一部から軸線方向に隆起する凸部を備え、前記凸部は前記変位規制部よりも内側に配置され、
前記穴に前記軸部が挿入される前の状態において、前記ストッパの前記穴の内面に、前記軸部の前記端部の太さよりも差渡しが小さい第1部と、前記第1部と前記第2面との間に位置する第2部と、を有し、
前記第1部は前記凸部の内側に形成され、
前記第2部の差渡しは、前記第1部の差渡しよりも大きい防振装置。
【請求項2】
前記穴に前記軸部が挿入された状態において、前記第1部は前記軸部に接している請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記第1部は、前記内面の全周に亘って形成されている請求項2記載の防振装置。
【請求項4】
前記ストッパは、前記第1部と前記第2面との間に段が形成され、
前記第2部は、前記段と前記第2面との間に形成され、
前記穴に前記軸部が挿入された状態において、前記第2部は前記軸部と離隔している請求項1記載の防振装置。
【請求項5】
前記穴に前記軸部が挿入される前の状態において、前記第2部の差渡しは、前記軸部の前記端部の太さよりも大きい請求項1から4のいずれかに記載の防振装置。
【請求項6】
前記穴に前記軸部が挿入される前の状態において、前記内面の差渡しは、前記第1部から前記第2部に亘って大きくなる請求項1から5のいずれかに記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストッパを備える防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パワーユニット等の相手部材に軸部が固定される第1部材と、第1部材と間隔をあけて配置される第2部材と、第2部材と第1部材とを連結する弾性体からなる防振基体と、軸部が貫通し第2部材と相手部材との間に配置される弾性体からなるストッパと、を備える防振装置が開示されている。この種の防振装置では、相手部材と第2部材との間にストッパが介在して、相手部材と第2部材との衝突を緩和する。なお、第1部材が相手部材に固定される前に軸部からストッパが脱落しないように、ストッパと軸部との摩擦を利用して軸部にストッパが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、防振装置が相手部材に固定される前に軸部からストッパが脱落し難くなるようにストッパの穴と軸部との摩擦を大きくすると、防振装置の製造工程において、ストッパの穴に軸部を挿入し難くなるという問題点がある。また、防振装置の製造工程においてストッパの穴に軸部を挿入し易くするためにストッパの穴と軸部との摩擦を小さくすると、防振装置が相手部材に固定される前に、軸部からストッパが脱落し易くなるという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、ストッパの穴に軸部を挿入し易くしつつ、軸部からストッパを脱落し難くできる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の防振装置は、軸線に沿って延びる軸部を備え、軸部の端部が相手部材に固定される第1部材と、第1部材と間隔をあけて配置されると共に、少なくとも一部が、軸線に垂直な方向に軸部と間隔をあけて配置される第2部材と、第2部材と第1部材とを連結する弾性体からなる防振基体と、相手部材に第1面を向け、第1面の反対側の第2面を第2部材に向けて、第2部材と相手部材との間に配置される弾性体からなるストッパと、を備え、ストッパには、第1面と第2面とをつなぐ穴が形成され、ストッパは、穴に軸部が端部から挿入された状態で配置され、穴に軸部が挿入される前の状態において、ストッパの穴の内面に、軸部の端部の太さよりも差渡しが小さい第1部と、第1部と第2面との間に位置する第2部と、を有し、第2部の差渡しは、第1部の差渡しよりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の防振装置によれば、ストッパの第2面側からストッパの穴に軸部が挿入されるときは、軸部の端部は第2部に到達した後、第1部に到達する。第1部の差渡しは軸部の端部の太さよりも小さいので、ストッパの穴に軸部が挿入された状態において、軸部と第1部との摩擦により軸部からストッパを脱落し難くできる。第2部の差渡しは第1部の差渡しよりも大きいので、ストッパの穴に軸部が挿入されるときは、第2部に連なる第1部を軸部が押し広げて軸部が挿入され易くなる。よって、ストッパの穴に軸部を挿入し易くしつつ、軸部からストッパを脱落し難くできる。
ストッパは、穴の周囲の第1面の少なくとも一部から軸線方向に凸部が隆起している。弾性変形し易い凸部の内側に第1部が形成されているので、ストッパの穴に軸部をさらに挿入し易くできる。凸部は変位規制部よりも内側に配置されているので、ストッパの荷重たわみ曲線に、凸部が影響を与えないようにできる。
【0008】
請求項2記載の防振装置によれば、ストッパの穴に軸部が挿入された状態において、第1部は軸部に接している。これにより請求項1の効果に加え、穴の内面と軸部との摩擦によって、軸部からストッパをより脱落し難くできる。
【0009】
請求項3記載の防振装置によれば、第1部は、穴の内面の全周に亘って形成されている。よって、請求項2記載の効果に加え、軸部からストッパをより脱落し難くできる。
【0010】
【0011】
請求項4記載の防振装置によれば、ストッパは、第1部と第2面との間に段が形成され、段と第2面との間に第2部が形成されている。ストッパの穴に軸部が挿入された状態において、第2部は軸部と離隔しているので、軸部の端部側へ向かう力がストッパに加わると、段のところでストッパが屈曲してストッパが軸部の端部側へ移動し難くなる。よって、請求項1の効果に加え、軸部からストッパをより脱落し難くできる。
【0012】
請求項5記載の防振装置によれば、穴に軸部が挿入される前の状態において、第2部の差渡しは、軸部の端部の太さよりも大きいので、請求項1から4のいずれかの効果に加え、ストッパの穴に軸部をより挿入し易くできる。
【0013】
請求項6記載の防振装置によれば、穴に軸部が挿入される前の状態において、内面の差渡しは、第1部から第2部に亘って大きくなるので、請求項1から5のいずれかに記載の効果に加え、ストッパの穴に軸部をより挿入し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施の形態における防振装置の断面図である。
【
図3】
図2の矢印III方向から見たストッパの平面図である。
【
図4】第2実施の形態における防振装置のストッパの平面図である。
【
図5】第3実施の形態における防振装置のストッパの断面図である。
【
図6】第4実施の形態における防振装置のストッパの断面図である。
【
図7】第5実施の形態における防振装置のストッパの断面図である。
【
図8】第6実施の形態における防振装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施の形態における防振装置10の断面図である。防振装置10は自動車のエンジン等のパワーユニットを弾性支持する液封入式防振装置である。
図1は主液室36と副液室37(後述する)との間に圧力差がない状態の防振装置10が図示されている。
【0016】
図1に示すように防振装置10は、軸線Oの方向へ互いに離隔した第1部材11及び第2部材20と、第1部材11と第2部材20との間を連結する防振基体30と、第1部材11に固定されるストッパ40と、を備えている。本実施形態では、第1部材11は、振動源であるパワーユニット(図示せず)に取り付けられた相手部材16(本実施形態ではブラケット)に固定され、第2部材20は車体フレーム(図示せず)に取り付けられる。本実施形態では、防振装置10の軸線Oと鉛直線とが一致している。
【0017】
第1部材11は、鉄系材料やアルミニウム合金等で一体成形された金属製の部材であり、防振基体30が連結される円板状の基部12と、基部12の中央に接続されると共に軸線Oに沿って延びる円柱状の軸部13と、を備えている。軸線Oに沿って軸部13の中央に形成されたねじ穴15は、基部12の反対側に位置する端部14に開口する。本実施形態では、軸部13の外周面は、端部14に向かうにつれて直径が次第に小さくなるテーパ状に形成されている。ねじ穴15に取り付けられたボルト17によって、端部14を相手部材16に突き当てた状態で、軸部13は相手部材16に取り付けられる。
【0018】
第2部材20は、軸線Oに沿って延びる円筒状の金属製の部材であり、筒体21、円環体22及び底部材24を備えている。筒体21は、基部12の直径よりも内径が大きい円筒状の部材であり、筒体21の内周面に防振基体30が接着されている。円環体22は、筒体21に固定される円環状の部材であり、変位規制部23を有している。変位規制部23は、軸部13と隙間をあけて軸部13の周囲に配置される部位である。変位規制部23には、基部12と軸線方向に対向する部分が存在する。底部材24は、筒体21に固定される有底円筒状の部材であり、円環体22の反対側に配置されている。
【0019】
防振基体30は、ゴム製や熱可塑性エラストマ製等の略円錐台状の弾性体からなり、基部12と筒体21とを連結する。本実施形態では防振基体30はゴム製であり、基部12及び筒体21に加硫接着されている。防振基体30は膜部31が一体に成形されている。膜部31は、基部12の変位規制部23側の面に設けられている。膜部31は変位規制部23と基部12との間に介在する。
【0020】
ダイヤフラム32は、ゴム製や熱可塑性エラストマ製等の弾性体からなる略円形状の可撓性膜である。ダイヤフラム32の外周縁には、円環状の固定具33が接着されている。固定具33は、全周に亘って筒体21と底部材24との間に挟まれている。ダイヤフラム32と防振基体30との間に、水やエチレングリコール等の液体が封入され、仕切体34が配置される。仕切体34はオリフィス35を形成し、ダイヤフラム32と防振基体30との間を区画する。これにより主液室36及び副液室37が形成される。オリフィス35は主液室36と副液室37とを連通する。
【0021】
防振装置10は、オリフィス35が、エンジンシェイク等の大振幅振動の入力時に液体が共振するようにチューニングされている。従って、防振装置10に大振幅振動が入力され、主液室36と副液室37との間に圧力差が生じると、オリフィス35を通って主液室36と副液室37との間を液体が流動し、振動が減衰される。
【0022】
ストッパ40は、ゴム製や熱可塑性エラストマ製等の弾性体からなる。ストッパ40は、相手部材16と変位規制部23との間に配置される略円形の本体41、及び、本体41の外周縁から軸線Oに沿って延びる円筒状の側壁42が一体に成形されている。側壁42は円環体22の外側に配置される。ストッパ40は軸部13に取り付けられており、軸部13はストッパ40の本体41を貫通している。
【0023】
図2はストッパ40の軸線Oを含む断面図であり、
図3は
図2の矢印III方向から見たストッパ40の平面図である。
図2及び
図3は軸部13に取り付けられる前のストッパ40が図示されている。
図2では、ストッパ40の穴45に挿入されたときの軸部13が、二点鎖線で図示されている(
図5、
図6、
図7及び
図9においても同じ)。従って、実際にストッパ40の穴45に軸部13が挿入された状態では、軸部13を示す二点鎖線の内側の領域とストッパ40とが重なった部分は、ストッパ40が潰されることを示している。
【0024】
図2に示すようにストッパ40は、第1面43、及び、第1面43の反対側の第2面44が、本体41に形成されている。第1面43には凹凸が形成されているが、第2面44は平面である。本体41の中央には、第1面43と第2面44とをつなぐ穴45が形成されている。穴45は本体41を貫通する。穴45の内面49は、軸線方向から見て、軸線Oを中心とする円形である(
図3参照)。
【0025】
本体41の第1面43には、第1ストッパ面46、第2ストッパ面47及び第3ストッパ面48が形成されている。第1ストッパ面46は第2面44からの距離が最も長く、第3ストッパ面48は第2面44からの距離が最も短い。第2ストッパ面47と第2面44との間の距離は、第1ストッパ面46と第2面44との間の距離と、第3ストッパ面48と第2面44との間の距離と、の中間である。第1ストッパ面46、第2ストッパ面47及び第3ストッパ面48によって、バウンド方向の相手部材16の変位をストッパ40が規制するときの荷重たわみ曲線が設定される。
【0026】
穴45の内面49は、第1面43に連なる第1部50と、第2面44に連なる第2部52と、第1部50と第2部52との間に形成された段51と、を備えている。第1部50は、差渡し(本実施形態では軸線Oを通る弦の長さ)D1が、軸部13の端部14の直径D3よりも小さい部位である。第2部52は、差渡しD2が、第1部50の差渡しD1よりも大きい部位である。第1部50及び第2部52は円筒状の面であり、段51は円環状の面である。段51は、第3ストッパ面48よりも第2面44に近い位置に形成されている。本実施形態では、第2部52の差渡しD2は、軸部13の端部14の直径D3よりも大きい。
【0027】
ストッパ40の本体41には、穴45の周囲の第1面43(第3ストッパ面48)から軸線方向に隆起する凸部53が形成されている。第2面44からの凸部53の高さは、第2面44からの第2ストッパ面47の高さよりも高く、第2面44からの第
1ストッパ面
46の高さと同じである。凸部53は第
1ストッパ面
46につながっている(
図3参照)。凸部53の周縁の差渡し(直径)は、段51の周縁の差渡し(直径)よりも大きい。第1部50は、凸部53の内側に形成されている。第1部50及び第2部52は、穴45の内面49の全周に亘って形成されている。
【0028】
図1に戻って説明する。防振装置10は、相手部材16と変位規制部23との間にストッパ40の本体41が介在する。凸部53(
図2参照)は、変位規制部23よりも内側に配置されている。ストッパ40は、相手部材16に取り付けられたパワーユニット(図示せず)がバウンドしたときの、相手部材16と第2部材20(変位規制部23)との衝突を緩和する。ストッパ40は、相手部材16に固定された軸部13に、摩擦によって固定されるので、自動車の走行時の振動によって第2部材20や相手部材16にストッパ40が衝突して発生する異音を抑制できる。
【0029】
軸部13は、防振装置10の製造時に、ストッパ40の第2面44側からストッパ40の穴45に挿入される。第1部材11が相手部材16に固定される前(車両への防振装置10の組付け前)に軸部13からストッパ40が脱落しないように、ストッパ40の穴45の内面49(
図2参照)と軸部13との摩擦を利用して軸部13にストッパ40が固定される。
【0030】
ここで、第1部材11が相手部材16に固定される前に軸部13からストッパ40が脱落しないように、シアノアクリレート系などの液状やゲル状の接着剤を用いて、ストッパ40を軸部13に接着することがある。しかし、軸部13に接着剤を塗布した後にストッパ40の穴45に軸部13を挿入するときは、接着剤が軸部13の表面を伝って流れてしまい高い接着力が得られないことがある。また、ストッパ40の穴45に軸部13を挿入した後に軸部13とストッパ40との間に接着剤を注入するのは困難である。このように軸部13にストッパ40を接着するのは難しい。
【0031】
これに対しストッパ40によれば、防振装置10の製造時に、ストッパ40の第2面44側からストッパ40の穴45に軸部13が挿入されるときは、軸部13の端部14は第2部52に到達した後、第1部50に到達する。第1部50の差渡しD1は軸部13の端部14の太さ(本実施形態では直径)よりも小さいので、接着剤を使用しなくても、ストッパ40の穴45に軸部13が挿入された状態において、軸部13(端部14)と第1部50との摩擦により軸部13からストッパ40を脱落し難くできる。
【0032】
第2部52の差渡しD2は第1部50の差渡しD1よりも大きいので、ストッパ40の穴45に軸部13が挿入されるときは、第2部52に連なる第1部50を軸部13(端部14)が押し広げて軸部13が挿入され易くなる。よって、ストッパ40の穴45に軸部13を挿入し易くしつつ、軸部13が穴45に挿入された後は軸部13(端部14)からストッパ40を脱落し難くできる。接着剤を使ってストッパ40を軸部13に接着する作業も省略できる。
【0033】
ストッパ40の穴45に軸部13が挿入された状態において、第1部50は軸部13に接している。これにより、穴45の内面49と軸部13との摩擦によって、軸部13からストッパ40をより脱落し難くできる。なお、第1部50は穴45の内面49の全周に亘って形成されているので、軸部13からストッパ40をより脱落し難くできる。
【0034】
ストッパ40は、穴45の周囲の第1面43の少なくとも一部から軸線方向に凸部53が隆起している。隆起した凸部53は径方向の外側に弾性変形し易くなる。変形し易い凸部53の内側に第1部50が形成されているので、ストッパ40の穴45に軸部13をさらに挿入し易くできる。なお、凸部53は変位規制部23よりも内側に配置されているので、ストッパ40の荷重たわみ曲線に、凸部53が影響を与えないようにできる。
【0035】
ストッパ40の第1部50と第2面44との間に段51が形成され、段51と第2面44との間に第2部52が形成されている。ストッパ40の穴45に軸部13が挿入された状態において、第2部52は軸部13と離隔しているので、軸部13の端部14側へ向かう力がストッパ40に加わると、段51のところでストッパ40(本体41)が屈曲して第1部50が軸部13の端部14側へ移動し難くなる。よって、軸部13からストッパ40をより脱落し難くできる。
【0036】
段51は、凸部53が隆起する本体41の第3ストッパ面48よりも第2面44側に形成されているので、第3ストッパ面48よりも第1面43側に段51が形成される場合に比べ、凸部53の体積を大きくできる。よって、凸部53の剛性を高くできる。その結果、凸部53の内側に形成された第1部50と軸部13との摩擦を確保できるので、軸部13からストッパ40をより脱落し難くできる。
【0037】
ストッパ40は、穴45に軸部13が挿入される前の状態において、第2部52の差渡しD2が、軸部13の端部14の太さよりも大きいので、ストッパ40の穴45に軸部13をより挿入し易くできる。また、軸部13の外周面は、端部14に向かうにつれて直径が次第に小さくなるテーパ状に形成されているので、ストッパ40の穴45に軸部13をより挿入し易くできる。
【0038】
図4を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、ストッパ40の穴45の内面49の形状が円形の場合について説明した。これに対し第2実施形態では、穴45の内面61の形状が楕円のストッパ60について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図4は第2実施の形態における防振装置のストッパ60の平面図である。ストッパ60は、第1実施形態における防振装置10のストッパ40に代えて配置される。
【0039】
ストッパ60は、ストッパ60を貫通する穴45に軸部13が挿入された状態で用いられる。穴45の内面61の形状は、軸線Oを中心とする楕円である。内面61は、軸線Oを挟んで対向する第1部62と、第1部62の周方向に連なり軸線Oを挟んで対向する第3部63と、第1部62と第2面44(
図2参照)との間に位置する第2部(図示せず)と、を備えている。第3部63の差渡しD4(軸線Oを通る弦の長さ)は、軸部13の端部14の太さ(直径)よりも大きい。第1部62の差渡しD1(軸線Oを通る弦の長さ)は軸部13の端部14の太さ(直径D3)よりも小さいので、ストッパ40の穴45に軸部13が挿入された状態において、軸部13と第1部62との摩擦により軸部13からストッパ60を脱落し難くできる。
【0040】
図5を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態では、ストッパ40の凸部53の高さが、第1ストッパ面46の高さと同一の場合について説明した。これに対し第3実施形態では、ストッパ70の凸部73が、第1ストッパ面46よりも高い場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0041】
図5は第3実施の形態における防振装置のストッパ70の断面図である。
図5は、ストッパ70の軸線Oを境にした片側の図示が省略されている(
図6、
図7及び
図9においても同じ)。ストッパ70は、第1実施形態における防振装置10のストッパ40に代えて配置される。
【0042】
ストッパ70は、ストッパ70を貫通する穴45に軸部13が挿入された状態で用いられる。穴45の内面71を第1面43(
図2参照)側から軸線方向に見た状態において、内面71の形状は、軸線Oを中心とする円である。内面71は、軸部13の端部14の太さ(直径D3)よりも差渡しD1が大きい第1部72、段51及び第2部52を備えている。第1部72が内側に形成された凸部73は、第3ストッパ面48から隆起している。凸部73の高さは、第1ストッパ面46よりも高い。凸部73は変位規制部23(
図1参照)よりも内側に配置されているので、ストッパ70の荷重たわみ曲線に、凸部73が影響を与えないようにできる。
【0043】
図6を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施形態および第3実施形態では、第1部50,72と第2部52との間に段51が形成される場合について説明した。これに対し第4実施形態では、第1部82と第2部83とが滑らかに連なる場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第4実施の形態における防振装置のストッパ80の断面図である。ストッパ80は、第1実施形態における防振装置10のストッパ40に代えて配置される。
【0044】
ストッパ80は、ストッパ80を貫通する穴45に軸部13が挿入された状態で用いられる。穴45の内面81を第1面43(
図2参照)側から軸線方向に見た状態において、内面81の形状は、軸線Oを中心とする円である。内面81は、第1部82及び第2部83が滑らかに連なっている。第1部82及び第2部83は円錐状に形成されている。第1部82が内側に形成された凸部84は、第3ストッパ面48から隆起している。
【0045】
第1部82は、差渡しD1が、軸部13の端部14の太さ(直径D3)よりも小さい部位である。第2部83は、差渡しD2が、差渡しD1よりも大きい部位である。第2部83の差渡しD2は、軸部13の端部14の太さD3よりも大きく、穴45に軸部13が挿入された状態において、第2部83は軸部13と離隔する。穴45に軸部13が挿入される前の状態において、内面81の差渡しは、第1部82から第2部83に亘って大きくなるので、ストッパ80の穴45に軸部13をより挿入し易くできる。
【0046】
図7を参照して第5実施の形態について説明する。第4実施形態では、滑らかに連なる第1部82及び第2部83が円錐状に形成される場合について説明した。これに対し第5実施形態では、円筒状に形成された第1部92と、円錐状に形成された第2部93と、が滑らかに連なる場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7は第5実施の形態における防振装置のストッパ90の断面図である。ストッパ90は、第1実施形態における防振装置10のストッパ40に代えて配置される。
【0047】
ストッパ90は、ストッパ90を貫通する穴45に軸部13が挿入された状態で用いられる。穴45の内面91を軸線方向から見た状態において、内面91の形状は、軸線Oを中心とする円である。内面91は、第1部92及び第2部93が滑らかに連なっている。第1部92は円筒状の面であり、第2部93は、第2面44に向かうにつれて差渡しが次第に大きくなる円錐状の面である。本実施形態では、第2部93には径方向の内側に凸となる丸みが付されている。第1部92が内側に形成された凸部94は、第3ストッパ面48から隆起している。
【0048】
第1部92の差渡しD1は、軸部13の端部14の太さ(直径D3)よりも小さい。第2部93の差渡しD2は、軸部13の端部14の太さD3よりも大きい。穴45に軸部13が挿入された状態において、第2部93は軸部13と離隔する。穴45に軸部13が挿入される前の状態において、第2部93の差渡しは、第2面44に近づくにつれて大きくなるので、ストッパ90の穴45に軸部13をより挿入し易くできる。
【0049】
図8及び
図9を参照して第6実施の形態について説明する。第1実施形態から第5実施形態では、液体の共振現象を利用する液封入式の防振装置10について説明した。これに対し第6実施形態では、液体を用いない防振装置100について説明する。
図8は第6実施の形態における防振装置100の軸線Oを含む断面図である。
【0050】
図8に示すように防振装置100は、自動車の車体などに取り付けられたブラケット等の相手部材101と、サスペンション機構などに用いられるアーム102と、を弾性的に結合する。防振装置100は、第1部材110と、第1部材110と離隔して第1部材110を囲み第1部材110の径方向の外側に配置される第2部材120と、第1部材110と第2部材120とを結合するゴム製や熱可塑性エラストマ製等の略円筒状の弾性体からなる防振基体130と、第1部材110に取り付けられるストッパ140と、を備えている。
【0051】
第1部材110は、軸線Oに沿って中央を貫通する穴113が形成された円筒状の軸部111を備えている。穴113には、軸部111を相手部材101に固定するためのボルト(図示せず)が挿通される。ボルトが締結されることにより、軸部111の両方の端部112を相手部材101に密着させた状態で相手部材101に軸部111が固定される。
【0052】
第2部材120は、軸部111の外径よりも内径が大きい円筒状の金属製の部材である。第2部材120はアーム102に圧入される。第2部材120の軸線方向の長さは、軸部111の軸線方向の長さよりも短い。第2部材120は軸部111の軸線方向の中央に配置され、軸部111の外周面および第2部材120の内周面に防振基体30が接着される。
【0053】
ストッパ140は、ゴム製や熱可塑性エラストマ製等の弾性体からなる板状の部材である。軸部111が中央を貫通したストッパ140は、第1面141を相手部材101に向け、第1面141の反対側の第2面142を第2部材120に向けて、第2部材120と相手部材101との間に配置される。ストッパ140は、第1部材110に対する第2部材120の軸線方向の相対変位を規制し、アーム102や第2部材120と相手部材101との衝突を緩衝する。
【0054】
図9はストッパ140の軸線Oを含む断面図である。ストッパ140の中央には、第1面141から第2面142までつながる穴143が形成されている。穴143はストッパ140を厚さ方向に貫通する。穴143の内面144は、軸線方向から見て、軸線Oを中心とする円形である。
【0055】
穴143の内面144は、第1面141に連なる第1部145と、第1部145と第2面142との間に位置する第2部146と、を備えている。第2部146は第1部145に滑らかに連なっている。第1部145及び第2部146は、第2面142に向かうにつれて差渡しが次第に大きくなる円錐状の面である。第1部145の差渡しD1は、軸部111の端部112の太さ(直径D3)よりも小さい。これにより第1部145と軸部111との摩擦により、ストッパ140は軸部111に固定される。
【0056】
第2部146の差渡しD2は、軸部111の端部112の太さD3よりも大きい。穴143に軸部111が挿入された状態において、第2部146は軸部111と離隔する。穴143に軸部111が挿入される前の状態において、第2部146の差渡しは、第2面142に近づくにつれて大きくなるので、ストッパ140の穴143に軸部111をより挿入し易くできる。
【0057】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0058】
実施形態では、端部14に向かうにつれて外周面の直径が次第に小さくなるテーパ状に軸部13が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、軸線方向の全長に亘って軸部13の外周面の直径が同一となるように、軸部13の寸法を設定することは当然可能である。また、軸部13は棒状であれば良く、軸部13の断面形状は適宜設定できる。
【0059】
実施形態では、ストッパ40,60,70,80,90の第1面43に、高さが異なる第1ストッパ面46、第2ストッパ面47及び第3ストッパ面48が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1ストッパ面46、第2ストッパ面47及び第3ストッパ面48を省略して、第1面43を平坦にすることは当然可能である。
【0060】
実施形態では、ストッパ40,60,70,80,90,140の内面49,61,71,81,91,144の形状が、軸線方向から見て(平面視において)円形または楕円形の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。平面視におけるストッパの穴の形状は、例えば矩形等の多角形、星形多角形などを採用することができる。このときのストッパの第1部の差渡し及び第2部の差渡しは、ストッパの平面視において、穴の中心(軸線O)を通る直線を穴の内面で切り取った線分のうち最も短い線分の長さである。
【0061】
実施形態では、ストッパ40,60,70,80,90,140が、ゴム製や熱可塑性エラストマ製等の弾性体からなる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。金属製や合成樹脂製などで形成された補強部材を弾性体に埋め込んでストッパとすることは当然可能である。補強部材の大きさや形状はストッパの大きさや形状などに応じて適宜設定される。
【0062】
各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形しても良い。
【0063】
例えば第1実施形態から第5実施形態における防振装置のストッパを、第6実施形態における防振装置のストッパに採用することは当然可能である。同様に第1実施形態から第5実施形態における防振装置のストッパに、第6実施形態における防振装置のストッパを採用することは当然可能である。また、第4実施形態のストッパ80の穴45の内面81や、第6実施形態のストッパ140の穴143の内面144において、第1部82,145と第2部83,146との間に段51を設けたり、第5実施形態におけるストッパ90の第2部93の形状を、第4実施形態におけるストッパ80の第2部83の形状に変えたりすることは当然可能である。
【0064】
実施形態では、自動車用の防振装置について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。自動二輪車や鉄道車両、産業用車両などに用いられる防振装置にも適用され得る。また、防振装置10はエンジン等のパワーユニットを弾性支持するエンジンマウントに限定されるものではなく、例えばボデーマウント、サブフレームマウント、デフマウント等、各種の防振装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10,100 防振装置
11,110 第1部材
13,111 軸部
14,112 端部
16,101 相手部材
20,120 第2部材
21 筒体
22 円環体
23 変位規制部
30,130 防振基体
40,60,70,80,90,140 ストッパ
41 本体
43,141 第1面
44,142 第2面
45,143 穴
49,61,71,81,91,144 内面
50,62,72,82,92,145 第1部
51 段
52,83,93,146 第2部
53,73,84,94 凸部
O 軸線
D1 第1部の差渡し
D2 第2部の差渡し
D3 端部の太さ