IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図1
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図2
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図3
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図4A
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図4B
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図4C
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図4D
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図5
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図6A
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図6B
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図6C
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図7
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図8A
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図8B
  • 特許-動力付き予冷器ファンアセンブリ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】動力付き予冷器ファンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B64D 13/02 20060101AFI20231117BHJP
   F02C 7/143 20060101ALI20231117BHJP
   B64D 33/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B64D13/02
F02C7/143
B64D33/00 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019131524
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2020037393
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】16/039,489
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マッキン, スティーヴ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】サヘイ, アビシェーク
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0292352(US,A1)
【文献】特開2004-142501(JP,A)
【文献】特開2007-154901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237901(US,A1)
【文献】特開2007-240034(JP,A)
【文献】特開昭58-102039(JP,A)
【文献】特開平01-117996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 13/02
F02C 7/143
B64D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイパスエンジンファン空気を受け取るようになっているインレットプレナム(25)と、
動力付き予冷器ファンアセンブリ(15)であって、
前記インレットプレナム(25)を通して前記バイパスエンジンファン空気を受け取るファン(34)、
前記インレットプレナム(25)及び前記ファン(34)からの気流を制御するようになっている、可変ガイドベーン(39)を有するアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)(38)、
前記ファン(34)を駆動するために連結された回転動力源(30、60)、並びに
前記インレットプレナム(25)、前記ファン(34)、及び前記OGVA(38)からの気流を導くようになっているシュラウド(35)を有する、動力付き予冷器ファンアセンブリ(15)と、
前記シュラウド(35)からの気流を受け取る、前記動力付き予冷器ファンアセンブリ(15)の下流の予冷器(16)と、
前記予冷器(16)からのアウトレット空気の温度を検知し、温度信号(112)をコントローラ(102)に提供するためのセンサとを備え、前記コントローラは、
第1の動作モードでは、前記温度信号(112)に応答して前記OGVA(38)を制御し、かつ前記ファン(34)を制御せず、
第2の動作モードでは、前記OGVA(38)制御、かつ前記ファン(34)の速度を制御する、予冷器システム(13)。
【請求項2】
前記回転動力源(30、60)が、空気圧タービン(30)又は電気モータ(60)を備える、請求項1に記載の予冷器システム(13)。
【請求項3】
前記回転動力源(30、60)が、前記ファン(34)の上流又は下流にある、請求項1又は2に記載の予冷器システム(13)。
【請求項4】
前記回転動力源(30、60)が、選択的に制御可能であり、前記OGVA(38)が、開位置から閉位置までの位置の範囲にわたり調整可能な複数の可変ガイドベーン(39)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の予冷器システム(13)。
【請求項5】
前記回転動力源(30、60)及び前記OGVA(38)を、少なくとも前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードにおいて動作させるように構成された、制御システム(100)を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の予冷器システム(13)。
【請求項6】
前記回転動力源(30、60)が空気圧タービン(30)であり、制御システム(100)が、
前記空気圧タービン(30)に連結された空気供給ライン(50)を通る流れを制御する圧力弁(106)に対してファン制御信号(104)を提供するようになっている前記コントローラ(102)であって、更に、前記OGVA(38)の前記可変ガイドベーン(39)を位置決めするために動作可能に連結されたアクチュエータ(110)に対してOGVA位置決め信号(108)を提供するようになっており、前記温度信号(112)に応答する、前記コントローラ(102)
を含み、
前記第1の動作モードが、前記ファン制御信号(104)が前記空気圧タービン(30)に対する空気の流れを閉じ、前記OGVA位置決め信号(108)が開位置から閉位置までの範囲にわたり前記可変ガイドベーン(39)を調整することを特徴とし、
前記第2の動作モードが、前記ファン制御信号(104)が前記空気圧タービン(30)に対して空気の流れを供給する前記圧力弁(106)を開き、前記ファン(34)に動力供給することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の予冷器システム(13)。
【請求項7】
少なくとも前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードが、前記コントローラ(102)が、前記温度信号(112)に応答して所定の温度を実現するために、同時に、前記圧力弁(106)を通る流れを増加又は低減させることによって前記ファン(34)を動作させるための前記ファン制御信号(104)を調整し、且つ、位置の範囲にわたり前記可変ガイドベーン(39)を作動させるための前記OGVA位置決め信号(108)を調整することを特徴とする、一般的な動作モードを更に含む、請求項6に記載の予冷器システム(13)。
【請求項8】
予冷器(16)の動作を向上させるための方法であって、
ファン(34)を駆動する回転動力源(30、60)、及び、インレットプレナム(25)と前記予冷器(16)の中間に可変ガイドベーン(39)を有するアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)(38)を、前記ファン(34)に配置すること、
前記予冷器(16)からのアウトレット空気の温度を検知し、コントローラに温度信号(112)を提供すること、
第1の動作モードにおいて、前記温度信号(112)に応答して前記OGVA(38)を制御し、かつ前記ファン(34)を制御しないこと、及び
第2の動作モードにおいて、前記OGVA(38)を制御し、かつ前記ファン(34)の速度を制御することを含む、方法。
【請求項9】
温度が高い信号に応答して、前記OGVA(38)を開位置に向けて調整することによって前記予冷器(16)の出力温度を低減させること、及び、温度が低い信号に応答して、前記OGVA(38)を閉位置に向けて調整することによって温度を増加させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記温度が高い信号に応答して前記予冷器(16)を更に冷却するために前記ファン(34)の速度を増加させ、前記温度が低い信号に応答して前記予冷器(16)内の前記温度を増加させるためにファン速度を低減させることによって、前記ファン(34)の速度を制御することを更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、広くは、航空機環境制御予冷器システム用のファン空気補助動力の分野に関し、特に、予冷器へのファンの流れを促進するための小型空気圧タービン又は電気モータによって駆動される、可変出口ガイドベーンを有する単段ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
大きな民間航空機は、エンジン・コンプレッサ・セクションからの抽気に頼る、客室空気圧力及び温度用の環境制御システム(ECS)を採用する。ターボファンエンジンを有する航空機では、コンプレッサからの抽気が、迂回したファンバイパス空気の流れを用いて、当業界で予冷器として知られている熱交換器によって冷却され、次いでECSシステム及びその抽気を使用する任意の他のシステムに経路指定される。現代の高バイパス比のターボファンエンジンでは、ECS流れ要件とジェットエンジンファン圧力比の低減のために、予冷器がますます大きくなっている。予冷器とって利用可能な空間は狭く、予冷器インレットにとって利用可能な長さは、短すぎて均一な流れ分布を保証することができない。流れが均一に分布していない場合、予冷器の熱性能は適切なものになり得ず、予冷器の寿命は熱応力によって大きな影響を受けるだろう。制約された空間内にエンジンを設置する場合、非常に低い圧力比のファンとの予冷器の統合は、ますます困難になっている。高バイパス比のエンジンは、予冷器に必要とされる圧力を生成せず、増大したバイパス比及びファン直径のもとで熱遮断の必要性が高まっている。予冷器の効率を更に劣化させ得るファンダクトの下流の損失も、望ましくない。サイズと流れの両方の制約に対処する解決策として、エンジンの長さを増加させることは、航空機に大きな重量を追加し、ローター動力学の観点から可能ではないだろう。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施態様は、インレットプレナムを通るバイパスエンジンファン空気を受け取るようになっているファン、並びにインレットプレナム及びファンからの気流を制御するようになっているアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)を有する、動力付き予冷器ファンアセンブリを採用する、予冷器システムを提供する。動力付き予冷器ファンアセンブリには、ファンに動作可能に連結された回転動力源が伴う。シュラウドが、インレットプレナム、ファン、及びOGVAからの気流を導き、予冷器が、ファンとOGVAの下流に配置されており、シュラウドからの気流を受け取る。
【0004】
開示される実施態様は、ファンを駆動する回転動力源、及びインレットと予冷器の中間に可変ガイドベーンを有するアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)を、ファンに提供することによって、予冷器の動作を向上させるための方法を提供する。予冷器からのアウトレット空気の温度が検知され、温度信号がコントローラに提供される。第1の動作モードでは、温度信号に応答してOGVAが制御され、第2の動作モードでは、温度信号に応答してファンの速度が制御される。
【0005】
動力付き予冷器ファンアセンブリの特徴、機能、及び利点は、本開示の様々な実装態様において独立して達成可能であり、又は、以下の説明及び図面を参照して更なる詳細が理解可能である更に他の実装態様において組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書で開示される、動力付き予冷器ファンアセンブリの実施態様の配置を示す民間航空機の絵画図である。
図2】ターボファンエンジン及び支持構造体に関連した、本明細書で開示される実施態様の設置の絵画側面図である。
図3】動力付き予冷器ファンアセンブリの第1の構成のブロック図である。
図4A】第1の構成の例示的な一実施態様の絵画表現である。
図4B】ファン、アウトレットガイドベーンアレイ、及びタービンを露出する、インレット及びシュラウドの部分断面を伴う、図4Aの実施態様の側面図である。
図4C】透視図で示されている空気供給ラインを有するタービン及びシャフトの更なる断面を伴う、図4Aの実施態様の詳細側面図である。
図4D】閉位置にあるアウトレットガイドベーンアレイのベーンを示す、図4Aの実施態様の側面断面図である。
図5】動力付き予冷器ファンアセンブリの第2の構成のブロック図である。
図6A】第2の構成の例示的な一実施態様の絵画表現である。
図6B】分かり易いようにインレットとシュラウドの前方部分を取り除いた、逆の角度からの図6Aで示された第2の実施態様の絵画表現である。
図6C図6Aの実施態様の詳細側面図である。
図7】動力付き予冷器ファンアセンブリの第3の構成のブロック図である。
図8A】動力付き予冷器ファンアセンブリ用の制御システムのブロック図である。
図8B】空気圧タービン供給空気と空気軸受け供給空気とを組み合わせた、制御システムのブロック図である。
図9】動力付き予冷器ファンアセンブリの動作のための実施態様の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で開示される実施態様は、インレットプレナムを通るバイパスエンジンファン空気を受け取るようになっている単段ファンを有する動力付き予冷器ファンアセンブリを採用する予冷器システムを提供する。小さい空気圧タービン又は電気モータなどの回転動力源が、ファンを駆動するように動作可能に連結されている。開示される実施態様では、ファンが軸流ファンである。可変ガイドベーンを有するアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)が、インレットプレナム及びファンからの気流を制御するようになっている。インレットプレナムと予冷器を相互連結するシュラウドが、インレットプレナム、ファン、及びOGVAからの気流を、予冷器の中へ導くようになっている。専用空気ラインによって空気圧タービン用の加圧インレット流れが供給され、(膨張後に非常に冷たくなり得る)空気圧タービンの排気ガスが、ファンの上流又は下流のうちの何れかで予冷器の中へ放出される。可変出口ガイドベーンは、二重の用途を有する。(風車状態のように)ファンが動作していないときに、OGVA内の可変ガイドベーンは、予冷器の中への空気を抑制するように使用されてよい。これは、弁を調節する先行技術のファン空気の機能を実行する。ファンが動力供給されているときに、可変ガイドベーンは、ファンからのスワールを除去し、空気をわずかに広げて、予冷器インレット流れを最適化する。
【0008】
図面を参照すると、図1は、ストラットフェアリング14内で包囲されている(図2で詳細に示されている)構造ストラット11を介して主翼に取り付けられているエンジン12を有する民間航空機10を示している。予冷器16が、ストラットフェアリング14内でストラット11の下方に取り付けられている。図2を参照すると、予冷器16は、内部熱交換器用の供給物として、1以上の導管20を通してエンジンのコンプレッサ・セクション18から抽気の流れを受け取る。予冷器16内の熱交換用の冷却流れは、エンジンのファン22内のバイパス流れから引き出され、インレットプレナム25を形成している予冷器インレット24を通して予冷器に供給される。次いで、予冷された空気が、矢印26によって表されているように、1以上の予冷器アウトレットを通してECSに供給される。実施態様において空調システム用の予冷器として説明されているが、本実施態様は、油冷用の類似のファンバイパス空気冷却器、又はファンバイパス空気で冷却されるデバイスのための他の用途で採用されてよい。
【0009】
複数エンジンの航空機では、図2に関連して説明されたものと類似のシステムが、適切な弁を介してマニホールドの中に連結された更なるエンジンのうちのそれぞれ又は1つ用に存在してよい。
【0010】
現代の高バイパス比のエンジンを有する航空機内で予冷器16の所望の動作能力を実現するために、予冷器16及び結合されたインレット24と併せて、動力付き予冷器ファンアセンブリ15を有する、予冷器システム13が採用される。予冷器システム13内で使用される動力付き予冷器ファンアセンブリ15の第1の構成のブロック図が、図3で示されている。回転動力源として作用する空気圧タービン30は、空気圧供給ライン32を介してエンジン12のコンプレッサ・セクション18から受け取った加圧気流によって動力供給される。インレットプレナム25からの流路を提供するダクト又はシュラウド35内に収容された複数ブレードの単段ファン34が、シャフト36を介して空気圧タービン30によって駆動される。前述したように、ファン34は、インレットプレナム25を通して引き込まれるエンジンファンセクション22のバイパス流れから出た空気の流量及び圧力を増加させるようになっている。(図4A図4Dにおいて見られるように)複数の可変ガイドベーン39を有するアウトレットガイドベーンアレイ38(OGVA)は、ファン34の下流に位置決めされ、インレットプレナム25をファン34の下流に配置された予冷器16に連結するシュラウド35を通る空気の流れをガイドし制御するようになっている。可変ガイドベーン39は、OGVA38がファン34からのスワールを除去することを可能にする開(オープン)位置から、ファン34が動作していないときにシュラウド35を通る予冷器16の中への流れを抑制するための閉(クローズ)位置までの、位置の範囲を通して調整可能である。図示されている実施態様では、空気圧タービンが、ファン及びOGVAの下流に位置決めされている。
【0011】
図3の構成のための概念的な実施態様が、図4A及び図4Bで一般的に示され、図4C及び図4Dで詳細に示されている。空気圧タービン30は、(図4Cで最も良くみられる)インレット渦巻部42及びアウトレットディフューザ44を有する、ケース40を有する半径流タービンである。(分かり易くするために図4Cで透視図で示されている)空気圧供給ライン32からの高圧インレット空気は、渦巻き部42で受け取られ、(矢印47によって表されているように)タービン羽根車46を通ってディフューザ44の中へ膨張する。シャフト36を介したタービン羽根車46のファン34との連結は、ファンに回転動力を供給する。示されている実施態様では、タービンケース40が、アウトレットディフューザ44と予冷器16の前方表面構造体17との相互連結によって構造的に支持されていてよい。タービンケース40からシュラウド35又は他の予冷器構造体へのブラケット又は他の支持体が、代替的に又は更に設けられてよい。
【0012】
タービン30からのアウトレット流れが、アウトレットディフューザ44を通して供給される。アウトレットディフューザ44は、シュラウド35を通るファン34からの流れと共に予冷器16の中へ流れを混入させる。タービンホイール46によって引き出される仕事は、出口ディフューザ44による更なる膨張を伴って、アウトレットディフューザ内に冷たいフローストリームを生成する更なる冷却を提供することができる。図4Cで見られるように、シャフト36は、空気軸受け48によって支持されていてよい。空気軸受け48用の供給空気は、供給ライン50を通して供給されてよい。供給ライン50は、必要な場合、(以下の図8Aに関連して見られ且つ説明される)空気冷却器52を含むことができる。その供給空気も、コンプレッサ・セクション18から抽出されてよい。推力軸受け54が、タービンホイール46とファン34との間の推力に反作用するために設けられている。
【0013】
図4A図4B、及び図4Cで見られるように、開位置にあるOGVA38は、ファン34からの流れを予冷器16の中へ導き、流れの中のスワールを除去する。図4Dで見られるように、OGVA38内のベーン39は、インレットから予冷器16の中への流れを抑制するように位置決めされてよい。ベーン39は、示されているようにOGVA38を閉位置に配置する回転を可能にするように、テーパが付けられ若しくはオフセットされ又はそれらの両方であってよい。
【0014】
予冷器システム13内に組み込まれる動力付き予冷器ファンアセンブリ15’の第2の構成のブロック図が、図5で示されている。前の実施形態におけるように、空気圧タービン30は、エンジン12のコンプレッサ・セクション18からの加圧流れを受け取る空気圧供給ライン32によって動力供給される。複数ブレードのファン34は、シュラウド35内で空気圧タービン30の後ろに収容され、シャフト36を介して空気圧タービン30によって駆動される。可変入射角を有する(図6A図6Bで見られる)ベーン39を有するアウトレットガイドベーンアレイ38(OGVA)は、ファン34の下流に位置決めされ、インレットプレナム25をファン34の下流に配置された予冷器16に連結するシュラウド35を通る空気の流れをガイドするようになっている。第1の構成におけるように、ベーン39は、OGVA38がファン34からのスワールを除去することを可能にする開(オープン)位置から、ファン34が動作していないときにシュラウド35を通る予冷器16の中への流れを抑制するための閉(クローズ)位置までの、位置の範囲を通して調整可能である。
【0015】
図5の構成のための概念的な実施態様が、(分かり易くするためにシュラウド及びインレットの前方部分が取り除かれている)図6A及び図6Bで一般的に示され、図6Cで詳細に示されている。前述された実施態様におけるように、空気圧タービン30は、インレット渦巻部42及びアウトレットディフューザ44を有する、ケース40を有する半径流タービンである。空気圧タービン30の取り付けは、タービンケース40からシュラウド35又はインレット24の他の構造体まで延在するストラット31を用いて実現される。(分かり易くするために図6Cで透視図で示されている)空気圧供給ライン32からの高圧インレット空気は、渦巻き部42で受け取られ、タービン羽根車46を通ってディフューザ44の中へ膨張する。タービン羽根車46は、シャフト36を介してファン34に回転動力を供給する。以前の実施態様におけるように且つ図6Cで見られるように、シャフト36は、空気軸受け48によって支持されていてよい。空気軸受け48用の供給空気は、供給ライン50を通して供給されてよい。その供給空気も、コンプレッサ・セクション18から抽出されてよい。推力軸受け54が、タービンホイール46とファン34との間の推力に反作用するために設けられている。
【0016】
タービン30からのアウトレット流れは、アウトレットディフューザ44を通して供給され、ファン34の前の流路の中に混入されるが、空気の流れの膨張及びタービンホイール46による仕事の引き出しによって、アウトレットディフューザ44内に冷たいフローストリームを生成する更なる冷却を提供することができる。ディフューザは、実施態様において軸流を有するように示されているが、シュラウド35内のより大きな領域にわたり膨張される流れのためのアウトレットを設けた、半径流ディフューザ又はそのディフューザのセグメンテーションが採用されてよい。
【0017】
動力付き予冷器ファンアセンブリ15”の第3の構成では、回転動力源が、図7で示されているような電気モータ60であってよい。第3の構成の実施態様の動作のためのファン34及びOGVA38の構成は、第1及び第2の構成において、タービン30への空気圧を電気モータ60への電力で置き換えたものと実質的に同一である。直接的にか又は可変電力継電器64を介してかの何れかで、ケーブル62を通して電源から供給された電力が、シャフト36を介したファン34の動作のために、電気モータ60に投入される。
【0018】
説明され図面で示された第1、第2、第3の構成は、ファン34の下流にOGVA38を配置する。代替的に、OGVA38は、ファン34の上流に配置されて、インレットプレナム25とファン34の中間の流れを制御することもできる。
【0019】
動力付き予冷器ファンアセンブリ用の制御システム100及び一般的な概略構成が、図8Aで示されている。動力付き予冷器ファンアセンブリ15又は15’を通る流れの制御では、OGVA38が、完全にオープンされ、完全にクローズされ、又は完全にオープンと完全にクローズの間の任意の位置に設定され得る。動力付き予冷器ファンアセンブリは、通常、少なくとも2つの動作モードで動作することができる。第1のモードでは、タービン30への空気の流れが閉じられ、OGVA38が、開位置から閉位置まで可変ガイドベーン39を調整することによって、インレットプレナム25から予冷器16までの流れを制御する。第2のモードでは、タービン30への空気の流れが開かれ、タービンがファン34に動力供給する。可変ガイドベーン39が流量を調整するために角度範囲にわたり制御され、空気の流れを調整することによってタービン30及びファン34の速度が流量の範囲にわたり制御される、他の幾つかのモードが利用可能である。全ての動作モードでは、ファン34及びOGVA38が、予冷器から放出される空気の温度が所望の所定温度(例えば、華氏350度)に維持されるように制御される。したがって、動力付き予冷器ファンアセンブリ15内の構成要素の構成は、外部の空気温度、システムへの熱負荷、航空機10の対気速度、及びエンジンファン22の推力設定に基づいて変動することに留意されたい。
【0020】
制御システム100は、空気圧供給ライン32を通る流れを制御する圧力弁106に、ファン制御信号104を提供するようになっている、コントローラ102を組み込んでいる。コントローラ102は、更に、OGVAの可変ガイドベーン39を位置決めするために動作可能に連結されたアクチュエータ110に、OGVA位置決め信号108を提供するようになっている。コントローラ102は、予冷器16内の熱電対又は他の温度センサからの温度信号112に応答する。図8Bで見られるように、空気圧タービン30に動力供給する空気圧供給ライン32、及び空気軸受け48用の供給ライン50は、コンプレッサ・セクション18からからの単一の高圧導管51から供給を受けてよい。冷却器52は、タービンインレット渦巻部と空気軸受けとの両方に供給される空気のための冷却を提供する。その冷却は、両方の用途に対して有利であり得る。導管20を通る予冷器までの抽気供給は、通常、コンプレッサ・セクション18から別々に行われることになるが、ある場合では、高圧導管51を通して行われてもよい。
【0021】
第1の動作モードでは、エンジンファン22からのバイパス空気が、インレット24の中に注入される。上述されたように、インレット24では、空気がファン34及びOGVA38を通るように導かれる。第1の実施例では、外部空気の温度が比較的低く(冷たい空気)、予冷器に対する熱負荷が低い(予冷器16の内側で熱伝達がほとんど必要ない)。このモードでは、ファン34の動作が必要ではないかもしれない。したがって、コントローラ102は、圧力弁106に対して制御信号104を送信しないことになる。圧力弁106は、閉じたままになる。このモードでは、ファン34が、「風車状態」にある(エアストリーム内で自由に回転する)。OGVA38は、温度信号112に応答して必要とされるように、OGVA位置決め信号108によってオープンか又はクローズに調整されて、予冷器から放出される空気の温度が所定の温度に維持されるために必要とされるように、適量な冷却空気を予冷器16に供給する。OGVAベーン39の起動が、OGVA位置決め信号108に応答したアクチュエータ110によって、機械的、液圧的、ガス圧的、又は電気的に実現されてよい。
【0022】
しかし、インレット24内で受け取られるファンバイパス空気の温度が増加した、又は予冷器16に対する熱負荷が増加したときに、システムは、OGVA38の動作がもはや予冷器16のアウトレット空気の温度を調節するのに十分でないポイントに到達することとなる。一実施例として、OGVA38は、完全に開くことができるが、予冷器アウトレット26内の空気の温度は所定の温度よりも高い。この場合、第2の動作モードを参照して、コントローラ102が、予冷器16からの温度信号112に応答して、ファン34を起動するためのファン制御信号104を送信し、圧力弁106を制御可能に開くことができる。上述の第3の構成では、ファン制御信号104が、電気モータ60に対する直接的な電力信号であってよく、又は電気モータに電力を供給する可変電力継電器64に対する制御信号であってよい。第2の動作モードでは、コントローラ102が、所定の温度を維持するために、ファン34とOGVA38の両方を動作させる。例示的な実施態様では、一般的な動作モードでは、OGVA38が、ファン34が起動される前に完全にオープンになる必要がない。むしろ、コントローラ102は、所望の所定温度を実現するために、ファン34及びOGVA38を同時に動作させるように構成されている。一実施例として、ファンの速度が、ファン制御信号104によって一定に保持され得ると同時に、OGVA38が、OGVA位置決め信号108によって調整されて、可変ガイドベーン39を位置の範囲にわたり位置決めする。任意選択的に、OGVA38が、ある所定の位置に維持され得ると同時に、ファン34の速度が、ファン制御信号104によって圧力弁106を通る流れを増加又は低減させることによって流量の範囲にわたり調整される。更に、ファン34の速度とOGVA38の位置の両方が、コントローラ102によって同時に調整されてよい。
【0023】
図9で示されているように、開示される実施態様は、ステップ202で、予冷器からのアウトレット空気の温度を検知すること及びコントローラ102に対して温度信号112を提供することによって、インレットプレナム25と予冷器の中間に挿入された、動力付き予冷器ファンアセンブリ15、15’、又は15”を有する、予冷器16の動作を向上させるための方法200を提供する。第1の動作モード203では、OGVA38が、温度信号に応答して、完全に開位置と完全に閉位置の間の範囲内で制御される。204で、温度が高い信号に応答して、ステップ205で、OGVA38を開位置に向けて調整することによって予冷器の出力温度を低減させ、206で、温度が低い信号に応答して、ステップ207で、OGVAを閉位置に向けて調整することによって温度を増加させる。第2の動作モード208では、ファン34の速度が更に制御され、204で、温度が高い信号に応答して、ステップ209で、ファンの速度を増加させることによって予冷器(16)更に冷却し、206で、温度が低い信号に応答して、ステップ210で、ファン速度を低減させることによって予冷器16内の温度を増加させる。コントローラは、OGVAの調整とファンの速度との間を最適化して、温度変化の即時状態のみならず、傾向状態も制御する。
【0024】
更に、本開示は、下記の条項による実施形態を含む。
条項1.
バイパスエンジンファン空気を受け取るようになっているインレットプレナムと、
動力付き予冷器ファンアセンブリであって、
前記インレットプレナムを通して前記バイパスエンジンファン空気を受け取るファン、
前記インレットプレナム及び前記ファンからの気流を制御するようになっているアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)、
前記ファンを駆動するために連結された回転動力源、並びに
前記インレットプレナム、前記ファン、及び前記OGVAからの気流を導くようになっているシュラウドを有する、動力付き予冷器ファンアセンブリと、
前記シュラウドからの気流を受け取る、前記動力付き予冷器ファンアセンブリの下流の予冷器とを備える、予冷器システム。
条項2.
前記回転動力源が、空気圧タービンを備える、条項1に記載の予冷器システム。
条項3.
前記回転動力源が、電気モータを備える、条項1に記載の予冷器システム。
条項4.
前記回転動力源が、前記ファンの上流にある、条項1に記載の予冷器システム。
条項5.
前記回転動力源が、前記ファンの下流にある、条項1に記載の予冷器システム。
条項6.
前記回転動力源が、選択的に制御可能であり、前記OGVAが、開位置から閉位置までの位置の範囲にわたり調整可能な複数の可変ガイドベーンを備える、条項1に記載の予冷器システム。
条項7.
前記回転動力源及び前記OGVAを、少なくとも第1のモード及び第2のモードで動作させるように構成された、制御システムを更に備える、条項6に記載の予冷器システム。
条項8.
前記回転動力源が空気圧タービンであり、前記制御システムが、
前記空気圧タービンに連結された空気供給ラインを通る流れを制御する圧力弁に対してファン制御信号を提供するようになっているコントローラであって、更に、前記OGVAの前記可変ガイドベーンを位置決めするために動作可能に連結されたアクチュエータに対してOGVA位置決め信号を提供するようになっており、温度信号に応答する、コントローラ、
前記第1のモードが、前記ファン制御信号が前記空気圧タービンに対する空気の流れを閉じ、前記OGVA位置決め信号が開位置から閉位置までの範囲にわたり前記可変ガイドベーンを調整することを特徴とし、
前記第2のモードが、前記ファン制御信号が前記空気圧タービンに対して空気の流れを供給する前記圧力弁を開き、前記ファンに動力供給することを特徴とする、条項7に記載の予冷器システム。
条項9.
前記少なくとも第1のモード及び第2のモードが、前記コントローラが、前記温度信号に応答して所定の温度を実現するために、同時に、前記圧力弁を通る流れを増加又は低減させることによって前記ファンを動作させるための前記ファン制御信号を調整し、且つ、位置の範囲にわたり前記可変ガイドベーンを作動させるための前記OGVA位置決め信号を調整することを特徴とする、一般的な動作モードを更に含む、条項8に記載の予冷器システム。
条項10.
インレットプレナムを通るバイパスエンジンファン空気を受け取るようになっているファン、
前記インレットプレナム及び前記ファンからの気流を制御するようになっているアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)、
前記ファンに動作可能に連結された回転動力源、並びに
前記インレットプレナム、前記ファン、及び前記OGVAからの気流を、前記ファン及び前記OGVAの下流に配置された予冷器の中へ導くようになっているシュラウドを備える、動力付き予冷器ファンアセンブリ。
条項11.
前記回転動力源が、空気圧タービンを備える、条項10に記載の動力付き予冷器ファンアセンブリ。
条項12.
前記空気圧タービンが、インレット渦巻部及びアウトレットディフューザを有する、ケースを有する半径流タービンを備える、条項11に記載の動力付き予冷器ファンアセンブリ。
条項13.
前記アウトレットディフューザが、アウトレット流れを前記予冷器の中へ混入させる、条項12に記載の動力付き予冷器ファンアセンブリ。
条項14.
前記空気圧タービンが、前記ファンの下流にある、条項13に記載の動力付き予冷器ファンアセンブリ。
条項15.
前記半径流タービンからのアウトレット流れが軸流である、条項14に記載の動力付き予冷器ファンアセンブリ。
条項16.
前記空気圧タービンが、前記ファンの上流にある、条項13に記載の動力付き予冷器ファンアセンブリ。
条項17.
予冷器の動作を向上させるための方法であって、
ファンを駆動する回転動力源、及び、インレットプレナムと前記予冷器の中間に可変ガイドベーンを有するアウトレットガイドベーンアレイ(OGVA)を、前記ファンに提供すること、
前記予冷器からのアウトレット空気の温度を検知し、コントローラに温度信号を提供すること、
第1の動作モードで、前記温度信号に応答して前記OGVAを制御すること、及び
第2の動作モードで、前記ファンの速度を制御することを含む、方法。
条項18.
温度が高い信号に応答して、前記OGVAを開位置に向けて調整することによって前記予冷器の出力温度を低減させること、及び、温度が低い信号に応答して、前記OGVAを閉位置に向けて調整することによって温度を増加させることを更に含む、条項17に記載の方法。
条項19.
前記温度が高い信号に応答して前記予冷器を更に冷却するために前記ファンの速度を増加させ、前記温度が低い信号に応答して前記予冷器内の前記温度を増加させるためにファン速度を低減させることによって、前記ファンの速度を制御することを更に含む、条項18に記載の方法。
条項20.
前記OGVAの調整と前記ファンの速度との間を最適化して、温度変化の即時状態及び傾向状態を制御することを更に含む、条項19に記載の方法。
【0025】
ここまで本開示の様々な実施形態を特許法制で要求されるように詳しく説明してきたが、当業者は、本明細書に開示された特定の実施態様に対する変形例及び代替例を認識するであろう。かかる変形例は、以下の特許請求の範囲において規定される、本開示の範囲及び意図に含まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9