(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】車両用冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20231117BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20231117BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20231117BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20231117BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231117BHJP
【FI】
B60L3/00 H
B60L3/00 J
B60L58/26
B60K11/04 H
B60K1/00
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019131781
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】定方 一郎
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012108043(DE,A1)
【文献】特開2000-315513(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 58/26
B60K 11/04
B60K 1/00
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された高電圧機器群を冷却する車両用冷却装置であって、
第1ラジエータ、前記第1ラジエータに隣接して設けられるファン、及び前記第1ラジエータと前記ファンとの間に配置される第2ラジエータを含むラジエータ機構と、
前記第1ラジエータで放熱される第1冷媒が循環することにより、前記高電圧機器群の中の第1グループ機器と熱交換を行う第1冷媒循環回路と、
前記第2ラジエータで放熱される第2冷媒が循環することにより、前記高電圧機器群の中の第2グループ機器と熱交換を行う第2冷媒循環回路と、
前記第1冷媒を冷却するチラーを含み、前記チラーの下流側と前記第1ラジエータの上流側とを流路切替バルブを介して連通する連通回路が形成されたチラー回路と、
前記第2グループ機器の温度に対応する温度関連情報に基づいて、前記第2冷媒循環回路の冷却容量が十分であるか否かを判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記冷却容量が不十分である場合に、前記チラーで冷却された前記第1冷媒が前記第1ラジエータに流れるよう前記流路切替バルブを制御する、車両用冷却装置。
【請求項2】
前記第2グループ機器には、前記車両を駆動させることができるモータ若しくはインバータを含む、請求項
1に記載の車両用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、トラック等の商用車の分野においても、内燃機関を備えず電動モータのみによって駆動する電動トラックの開発が行われている。このような電動車両に搭載される高電圧機器は、動作に伴う発熱を緩和するため、ラジエータにより冷却した熱媒体が循環する回路からなる車両用冷却装置によりその温度が調節される。ここで、バッテリ、インバータ、モータなどの高電圧機器は、最適な作動温度域がそれぞれ異なるため、車両用冷却装置には、複数のラジエータ及び複数の冷媒循環回路が設けられることがある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車両用冷却装置においては、高電圧機器が通常のシステム設計上の冷却容量よりも多くの容量を必要とする場合がある。例えば、インバータのスイッチング素子等が電気的不具合により通常時よりも高温化する場合や、モータハウジング内のオイル循環経路に不具合が生じてモータ内の油量が過多となり、ロータに過負荷が生じてオーバーヒート状態となる場合等である。
【0005】
特に、複数のラジエータと1つのファンとが車両長手方向に並べて配置されるシステムの場合、一方の第1ラジエータとファンとの間に配置される他方の第2ラジエータは、第1ラジエータにより熱交換した後の外気と熱交換を行うことになる。このため、第2ラジエータで通常のシステム設計上の冷却容量よりも多くの容量を必要とする場合、その冷却容量を容易に増大させることは技術的に困難である。
【0006】
このような場合を考慮して、例えばラジエータごとにファンを設けてシステムを冗長化させることで通常時のシステム設計上の冷却容量を増大させることも考えられるが、これは結果としてシステムサイズの増大及びコスト上昇を招く虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ラジエータにより冷却される高電圧機器が緊急時において通常以上の冷却容量を必要とする場合であっても、システムを冗長化させることなく簡易にその冷却容量を増大させることができる車両用冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用冷却装置は、車両に搭載された高電圧機器群を冷却する車両用冷却装置であって、第1ラジエータ、前記第1ラジエータに隣接して設けられるファン、及び前記第1ラジエータと前記ファンとの間に配置される第2ラジエータを含むラジエータ機構と、前記第1ラジエータで放熱される第1冷媒が循環することにより、前記高電圧機器群の中の第1グループ機器と熱交換を行う第1冷媒循環回路と、前記第2ラジエータで放熱される第2冷媒が循環することにより、前記高電圧機器群の中の第2グループ機器と熱交換を行う第2冷媒循環回路と、冷媒を冷却するチラーを含み、前記チラーの下流側と前記第1ラジエータの上流側とを流路切替バルブを介して連通する連通回路が形成されたチラー回路と、前記第2グループ機器の温度に対応する温度関連情報に基づいて、前記第2冷媒循環回路の冷却容量が十分であるか否かを判定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記冷却容量が不十分である場合に、前記チラーで冷却された前記冷媒が前記第1ラジエータに流れるよう前記流路切替バルブを制御する。
【0009】
車両用冷却装置は、第1ラジエータ、第2ラジエータ、及びファンが順に配置されるラジエータ機構において、第2冷媒を介して第2ラジエータにより冷却される第2グループ機器が通常よりも多くの冷却容量を必要とする場合に、連通回路を介してチラーで冷却された冷媒を第1ラジエータへ供給する。このとき、第1ラジエータは、ファンにより取り込まれた外気を、チラーで冷却された冷媒により冷却することができるため、下流側に配置された第2ラジエータに対して冷却された外気を供給することができる。これにより、第2ラジエータは、当該外気により第2冷媒を冷却するため、第2グループ機器に対する冷却容量を増加させることができる。
【0010】
また、このとき、ファンをラジエータごとに設ける手段やファンを大型化する手段を採ることなく、第2ラジエータの冷却効率を向上させることができる。従って、本発明に係る車両用冷却装置によれば、ラジエータにより冷却される高電圧機器が緊急時において通常以上の冷却容量を必要とする場合であっても、システムを冗長化させることなく簡易にその冷却容量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両の全体構成を概略的に示す上面図である。
【
図2】第1冷媒循環回路、第2冷媒循環回路、及びチラー回路を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0013】
図1は、本発明に係る車両1の全体構成を概略的に示す上面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ラダーフレーム2、キャブ3、荷箱4、車輪機構5、駆動ユニット6、インバータ7、バッテリ8、DC-DCコンバータ9、ラジエータ機構10、チラー11、及び「制御部」としてのVCU20を備える電動トラックである。尚、
図1では、車両1の上面からキャブ3及び荷箱4を透過するように見た場合の上面図として表している。また、車両1は、上記の構成の他、
図1では図示を省略する第1冷媒循環回路30、第2冷媒循環回路40、及びチラー回路50を備える。
【0014】
本実施形態において、車両1は、走行用駆動源として電動機(後述するモータ6a)を備える電気自動車として想定されているが、エンジンを更に備えるハイブリッド自動車であってもよい。また、車両1は電動トラックに限定されることなく、電動塵芥車などの他の商用車であってもよい。
【0015】
ラダーフレーム2は、サイドレール2aと複数のクロスメンバ2bとを有する。また、サイドレール2aは、車両1の車両長手方向Xに沿って延在し、互いに車幅方向Yに平行に配置される左サイドレール2L及び右サイドレール2Rからなる。複数のクロスメンバ2bは、左サイドレール2Lと右サイドレール2Rとを連結している。すなわち、ラダーフレーム2は、いわゆる梯子型フレームを構成している。そして、ラダーフレーム2は、キャブ3、荷箱4、駆動ユニット6、インバータ7、バッテリ8、及び車両1に搭載されるその他の重量物を支持する。
【0016】
キャブ3は、図示しない運転席を含む構造体であり、ラダーフレーム2の前部上方に設けられている。一方、荷箱4は、車両1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、ラダーフレーム2の後部上方に設けられている。
【0017】
車輪機構5は、本実施形態においては、車両前方に位置する左右の前輪5a、二つの前輪5aの車軸としてのフロントアクスル5b、車両後方に位置し且つ左右に各二つ配置された後輪5c、及び後輪5cの車軸としてのリアアクスル5dから構成される。そして、本実施形態に係る車両1においては、後輪5cが駆動輪として機能するように駆動力が伝達され、車両1が走行することになる。尚、車輪機構5は、図示しないサスペンション機構を介してラダーフレーム2に懸架され、車両1の重量を支持する。
【0018】
駆動ユニット6は、モータ6a、減速機構6b、及び差動機構6cを有する。モータ6aは、後述するインバータ7から交流電力が供給されることにより、車両1の走行に必要な駆動力を発生させる。減速機構6bは、図示しない複数のギアを含み、モータ6aから入力される回転トルクを減速して差動機構6cに出力する。差動機構6cは、減速機構6bから入力される動力を左右の後輪5cに対して振り分ける。すなわち、駆動ユニット6は、減速機構6b及び差動機構6cを介して、モータ6aの駆動トルクを車両の走行に適した回転速度に減速してリアアクスル5dに駆動力を伝達する。これにより駆動ユニット6は、リアアクスル5dを介して後輪5cを回転させて車両1を走行させることができる。また、モータ6aは、車両1を減速させる場合の補助ブレーキとして、回生制動を行うことができる。
【0019】
インバータ7は、バッテリ8から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ6aへ供給し、車両1に対するアクセル操作に応じてモータ6aの回転速度を制御する。
【0020】
バッテリ8は、車両1を走行させるためのエネルギー源としてモータ6aに電力を供給する二次電池である。バッテリ8は、車両1に必要とされる電力を蓄えるために比較的大型で大容量のバッテリモジュール(図示せず)を内部に複数備える。また、バッテリ8は、複数の電動補機とそれらに電力を供給する配電ユニットとが車両1に搭載されている場合には(いずれも図示せず)、当該配電ユニットにも電力を供給できるよう構成されていてもよい。更に、バッテリ8は、車両1の制動時にモータ6aが回生制御を行うことにより、当該回生制御により発電される回生電力で充電される。
【0021】
DC-DCコンバータ9は、バッテリ8から出力される比較的高圧の電力を降圧して、車両1に搭載される低圧機器に電力を供給するための電力変換装置である。
【0022】
ラジエータ機構10は、本実施形態においては、詳細を後述する第1冷媒循環回路30及び第2冷媒循環回路40を循環するそれぞれの冷媒を冷却するための空冷装置である。本実施形態におけるラジエータ機構10は、第1ラジエータ12、第1ラジエータ12に隣接して設けられるファン14、及び第1ラジエータ12とファン14との間に配置される第2ラジエータ13を含む。
【0023】
チラー11は、バッテリ8の電力により駆動するエバポレータであり、詳細を後述するチラー回路50を循環する冷媒を冷却する冷却装置である。
【0024】
VCU20は、入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM、RAMなど)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタなど(いずれも図示せず)を備え、車両1に搭載される各種コンポーネントの状態監視及び制御を行うことによって車両1の全体を統括制御するための車両制御ユニット(Vehicle Control Unit)である。
【0025】
図2は、第1冷媒循環回路30、第2冷媒循環回路40、及びチラー回路50を示す構成図である。第1冷媒循環回路30、第2冷媒循環回路40、及びチラー回路50からなる冷却機構は、車両1に搭載される高電圧機器群60に冷媒を循環させることで冷却する。尚、
図2においては、VCU20と各構成要素との情報の授受を破線で表している。本実施形態においては、ラジエータ機構10、VCU20、第1冷媒循環回路30、第2冷媒循環回路40、及びチラー回路50により「車両用冷却装置」が構成される。
【0026】
ここで、ラジエータ機構10のファン14は、VCU20からの制御信号に基づいて回転して外気を取り込むことで、当該外気の流路上に設けられた第1ラジエータ12及び第2ラジエータ13を空冷し、それぞれを経由する冷媒を空冷することができる。
【0027】
第1冷媒循環回路30は、本実施形態においては、高電圧機器群60の中の第1グループ機器60aとして分類されるバッテリ8及びDC-DCコンバータ9に対して、第1ラジエータ12で放熱される第1冷媒を循環させることにより、当該第1グループ機器60aを冷却する。
【0028】
より具体的には、第1冷媒循環回路30における第1冷媒は、第1ポンプ31によりバッテリ8及びDC-DCコンバータ9に供給されて第1グループ機器60aを冷却する。このとき、第1冷媒は、第1グループ機器60aとの熱交換により温度が上昇する。そして、第1冷媒は、第1水温センサ32により温度が測定された後、第1バルブ33により流路が選択される。
【0029】
第1バルブ33は、VCU20により制御される電磁弁であり、流入した第1冷媒をチラー11又は第1Tジョイント34のいずれかへ振り分ける3方向バルブである。より詳しくは、第1バルブ33は、例えばVCU20からON信号を受信した場合にはチラー11へと連通する流路が選択され、VCU20からOFF信号を受信した場合には第1Tジョイント34へと連通する流路が選択される。VCU20は、第1冷媒循環回路30の冷却容量で第1グループ機器60aを十分に冷却できる場合には、第1バルブ33をOFFに制御する。
【0030】
OFF状態の第1バルブ33から送出された第1冷媒は、第1Tジョイント34を介して第1ラジエータ12に供給され、第1ラジエータ12で放熱された後、第2Tジョイント35を介して第1ポンプ31に戻る。ここで、第1Tジョイント34は、第1バルブ33と第1ラジエータ12とを連通すると共に、後述する連通回路52と第1ラジエータ12とを連通する。また、第2Tジョイント35は、第1ラジエータ12と第1ポンプ31とを連通すると共に、詳細を後述するチラー回路50と第1ポンプ31とを連通する。
【0031】
このように、第1冷媒循環回路30は、第1ラジエータ12で放熱される第1冷媒が循環することにより、高電圧機器群60の中の第1グループ機器60aと熱交換を行い、第1グループ機器60aを冷却する。尚、第1冷媒循環回路30において第1冷媒が各構成要素を循環する順序は、これに限定されることなく種々の態様を採ることができる。
【0032】
第2冷媒循環回路40は、本実施形態においては、高電圧機器群60の中の第2グループ機器60bとして分類されるインバータ7及びモータ6aに対して、第2ラジエータ13で放熱される第2冷媒を循環させることにより、当該第2グループ機器60bを冷却する。
【0033】
より具体的には、第2冷媒循環回路40における第2冷媒は、第2ポンプ41によりインバータ7及びモータ6aに供給されて第2グループ機器60bを冷却する。このとき、第2冷媒は、第2グループ機器60bとの熱交換により温度が上昇する。そして、第2冷媒は、第2水温センサ42により温度が測定された後、第2ラジエータ13において放熱されて第2ポンプ41に戻る。
【0034】
このように、第2冷媒循環回路40は、第2ラジエータ13で放熱される第2冷媒が循環することにより、高電圧機器群60の中の第2グループ機器60bと熱交換を行い、第2グループ機器60bを冷却する。尚、第2冷媒循環回路40において第2冷媒が各構成要素を循環する順序は、これに限定されることなく種々の態様を採ることができる。
【0035】
チラー回路50は、本実施形態においては、上記したチラー11と「流路切替バルブ」としての第2バルブ51を介して、第1バルブ33と第2Tジョイント35とを連通する。また、チラー回路50には、チラー11の下流側と第1ラジエータ12の上流側に位置する第1Tジョイント34とを第2バルブ51を介して連通する連通回路52が形成されている。
【0036】
ここで、第2バルブ51は、VCU20により制御される電磁弁であり、流入した冷媒を第2Tジョイント35又は第1Tジョイント34のいずれかへ振り分ける3方向バルブである。より詳しくは、第2バルブ51は、例えばVCU20からON信号を受信した場合には第1Tジョイント34へと連通する流路が選択され、VCU20からOFF信号を受信した場合には第2Tジョイント35へと連通する流路が選択される。VCU20は、第1冷媒循環回路30の冷却容量で第1グループ機器60aを十分に冷却できない場合に、第1バルブ33をONに制御すると共に、第2バルブ51をOFFに制御する。これにより、第1冷媒循環回路30における第1冷媒は、第1ラジエータ12での放熱に替えてチラー11で冷却されることにより、第1グループ機器60aに対する冷却容量を増加させることができる。
【0037】
また、チラー回路50は、本実施形態においては第1冷媒循環回路30に対して冷却容量を増加させる補助冷却回路として例示しているが、第1冷媒循環回路30とは独立した冷却回路であってもよい。尚、第1冷媒、第2冷媒、及びチラー回路50を循環する冷媒は、例えば水であってもよく、又は公知の不凍液であってもよい。
【0038】
上記の冷却機構においては、高電圧機器群60に対する冷却制御の要否判断及びその実行がVCU20において管理される。すなわち、VCU20は、高電圧機器群60のそれぞれの温度に対応する温度関連情報を取得することにより、高電圧機器群60に対する冷却制御の要否を判断し、高電圧機器群60の温度がそれぞれの作動域内となるように、ファン14の回転数、第1ポンプ31及び第2ポンプ41による第1流体及び第2流体のそれぞれの流量、第1バルブ33及び第2バルブ51における選択流路などを総合的に制御する。
【0039】
ここで、温度関連情報とは、本実施形態においては、第1水温センサ32により取得される第1冷媒の温度情報、及び第2水温センサ42により取得される第2冷媒の温度情報である。ただし、温度関連情報は、高電圧機器群60のそれぞれに温度センサが設けられている場合には、当該温度センサを介して測定される個々の機器温度であってもよい。
【0040】
ところで、本実施形態のように、第1ラジエータ12、第2ラジエータ13、及びファン14が車両長手方向Xに沿って並べて配置されるラジエータ機構10では、ファン14により取り込まれる外気の流路において、第2ラジエータ13が第1ラジエータ12の下流側となる。このため、第2ラジエータ13は、第1ラジエータ12との熱交換により温度が上昇した後の外気が供給されるため、第1ラジエータ12と比較して冷却容量が相対的に低下することになる。
【0041】
そのため、第2グループ機器60bにおけるインバータ7やモータ6aが、何らかの不具合により通常のシステム設計上の冷却容量よりも多くの容量を必要とする場合には、上記した通常の冷却動作で対応できない虞が生じる。
【0042】
そこで、本発明においては、上記のように第2グループ機器60bに対する冷却容量が不足する場合には、緊急措置として、チラー11で冷却された冷媒が連通回路52を介して第1ラジエータ12に流れるよう第2バルブ51を制御することにより、第2ラジエータ13の冷却容量を増加させる。
【0043】
より具体的には、VCU20は、第2グループ機器60bの温度に対応する温度関連情報、すなわち第2水温センサ42により取得される第2冷媒の温度情報を取得することにより、第2冷媒循環回路40の冷却容量が十分であるか否かを判定する。そして、VCU20は、第2冷媒循環回路40の冷却容量が不十分である場合には、第1バルブ33及び第2バルブ51を共にONに制御する。これにより、第1バルブ33を通過する第1冷媒は、チラー11、第2バルブ51、連通回路52、及び第1Tジョイント34を順に介して第1ラジエータ12へ至る流路を流れることになる。
【0044】
この場合、チラー11で冷却された第1冷媒は、第1ラジエータ12のみにより放熱されていた状態よりも低い温度で第1ラジエータ12を流れるため、ファン14により取り込まれて第1ラジエータ12を通過する外気を冷却することができる。このため、当該外気の流路上において第1ラジエータ12の下流側に設けられた第2ラジエータ13は、冷却された外気との熱交換により第2冷媒を放熱することができ、第2グループ機器60bに対する冷却容量を増加させることができる。
【0045】
以上のように、本発明に係る車両用冷却装置は、第1ラジエータ12、第2ラジエータ13、及びファン14が順に配置されるラジエータ機構10において、第2冷媒を介して第2ラジエータ13により冷却される第2グループ機器60bが通常よりも多くの冷却容量を必要とする場合に、連通回路52を介してチラー11で冷却された冷媒を第1ラジエータ12へ供給する。このとき、第1ラジエータ12は、ファン14により取り込まれた外気を、チラー11で冷却された冷媒により冷却することができるため、下流側に配置された第2ラジエータ13に対して冷却された外気を供給することができる。これにより、第2ラジエータ13は、当該外気により第2冷媒を冷却するため、第2グループ機器60bに対する冷却容量を増加させることができる。
【0046】
また、このとき、ファン14をラジエータごとに設ける手段やファン14を大型化する手段を採ることなく、第2ラジエータ13の冷却効率を向上させることができる。従って、本発明に係る車両用冷却装置によれば、高電圧機器が緊急時において通常以上の冷却容量を必要とする場合であっても、システムを冗長化させることなく簡易にその冷却容量を増大させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 車両
11 チラー
12 第1ラジエータ
13 第2ラジエータ
14 ファン
30 第1冷媒循環回路
40 第2冷媒循環回路
50 チラー回路
52 連通回路
60 高電圧機器群
60a 第1グループ機器
60b 第2グループ機器