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  • 特許-外壁パネルの固定構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】外壁パネルの固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20231117BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
E04B2/56 622C
E04B2/56 622J
E04B2/56 605E
E04F13/08 101P
E04F13/08 101B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019178339
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021055351
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
(72)【発明者】
【氏名】市岡 大幸
(72)【発明者】
【氏名】永田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】田中 潔
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-317060(JP,A)
【文献】実開昭63-025733(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70,2/88-2/96
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠材と横枠材を備える外壁パネルの固定構造であって、上記外壁パネルの上角部が柱の屋外面に対面し、上記外壁パネルを上記柱に接合するパネル接合部材の第1固定部が上記上角部に固定されており、上記パネル接合部材の上記第1固定部から上記外壁パネルの上部側の横枠材に沿って水平方向に離間して位置する第2固定部が、上記柱の横側に位置する横部位を有する柱側固定部材における上記横部位に固定されており、
上記縦枠材と上記横枠材との相互嵌り合いの直角状態を上記外壁パネルの面内における上記縦枠材の上部側の水平方向移動を制限することで維持する直角維持部が、上記パネル接合部材から屋外側に突出して上記縦枠材に接触可能に位置することを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁パネルの固定構造において、上記直角維持部が、上記縦枠材の外側部に、接触可能に位置することを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の外壁パネルの固定構造において、上記直角維持部が、上記横枠材に干渉しない上記縦枠材の内側縁部に、接触可能に位置することを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の外壁パネルの固定構造において、上記柱側固定部材に、上記縦枠材の上移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【請求項5】
縦枠材と横枠材を備える外壁パネルの固定構造であって、上記外壁パネルの上角部が柱の屋外面に対面し、上記外壁パネルを上記柱に接合するパネル接合部材の第1固定部が上記上角部に固定されており、上記パネル接合部材の上記第1固定部から上記外壁パネルの上部側の横枠材に沿って水平方向に離間して位置する第2固定部が、上記柱の横側に位置する横部位を有する柱側固定部材における上記横部位に固定されており、
上記柱側固定部材に、上記縦枠材の上移動を規制する規制部が設けられており、
締結部材が上記縦枠材と上記第1固定部とを固定するとともに、当該締結部材の屋内側部位が、上記第1固定部から屋内側に突出しており、上記規制部が、上記締結部材の屋内側部位の上移動を規制することで、上記縦枠材の上移動を規制することを特徴とする外壁パネルの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外壁パネルを建物躯体の外側に取り付ける外壁パネルの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外壁パネルの上部側について、ボルトとナットによる固定が行え、外壁パネルの下部側で引っ掛け固定とすることができるようにした外壁パネルの固定構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-102338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の外壁パネルの固定構造のように、外壁パネルの上部側でボルトとナットによる固定をする場合においては、高層住宅やラーメン構造住宅のように柱寸法が大きくなると、上記ボルトとナットによる固定のための工具を外壁パネルの裏と柱との間に入れることが難しくなる。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、柱寸法が大きくても外壁パネルの上部側を柱側に容易に固定できる外壁パネルの固定構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の外壁パネルの固定構造は、上記の課題を解決するために、縦枠材と横枠材を備える外壁パネルの固定構造であって、上記外壁パネルの上角部が柱の屋外面に対面し、上記外壁パネルを上記柱に接合するパネル接合部材の第1固定部が上記上角部に固定されており、上記パネル接合部材の上記第1固定部から上記外壁パネルの上部側の横枠材に沿って水平方向に離間して位置する第2固定部が、上記柱の横側に位置する横部位を有する柱側固定部材における上記横部位に固定されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記パネル接合部材の上記第1固定部から上記外壁パネルの上部側の横枠材に沿って水平方向に離間して位置する上記第2固定部を、上記柱側固定部材における上記横部位に固定すればよいので、柱寸法が大きくても外壁パネルの上部側を柱側に容易に固定することができる。
【0008】
上記パネル接合部材に上記縦枠材と上記横枠材との相互嵌り合いの直角状態を維持する直角維持部が設けられていてもよい。これによれば、上記縦枠材と上記横枠材の直角が維持されるので、地震で上記縦枠材が上移動しようとしても、この上移動は抑制される。したがって、上記外壁パネルの下部側の固定が、当該外壁パネルの上移動を生じ得る構造とされる場合でも、この上移動許容量を超えて上記外壁パネルの下部側が躯体側からの離脱するのを防止できる。
【0009】
上記直角維持部は、上記縦枠材の外側部に、接触可能に位置してもよい。これとともに、或いはこれに替えて、上記直角維持部は、上記横枠材に干渉しない上記縦枠材の内側縁部に、接触可能に位置してもよい。
【0010】
上記柱側固定部材に、上記縦枠材の上移動を規制する規制部が設けられていてもよい。これによれば、大きな地震によって上記パネル接合部材が耐えられないような上記縦枠材の上移動が生じた場合でも、上記規制部によって上記縦枠材の上移動を規制することができる。
【0011】
上記規制部は、屋外方向に突出し、上記パネル接合部材の第1固定部に設けられた締結部材の屋内側部位の上方に位置してもよい。これによれば、上記第1固定部に設けられた締結部材を介して上記縦枠材の上移動を規制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明であれば、柱寸法が大きくても外壁パネルの上部側を柱側に容易に固定できる等の諸効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この実施形態の外壁パネルの固定構造を示した図であって、外壁パネルの下部側の固定構造を示した説明図である。
図2図1の下部側の固定構造における受け部を示した説明図である。
図3図1の下部側の固定構造における受け部とこの受け部に嵌るフック部材とを示した説明図である。
図4】この実施形態の外壁パネルの固定構造における外壁パネルの下部側の固定構造を示した概略の水平断面図である。
図5図4の外壁パネルの固定構造における外壁パネルの上部側の固定構造を示した概略の正面図である。
図6図4の外壁パネルの固定構造における外壁パネルの上部側の固定構造を示した側面視による概略の説明図である。
図7】同図(A)、(B)は、図4の外壁パネルの固定構造で用いるパネル接合部材の斜視図である。
図8図4の外壁パネルの固定構造で用いる柱側固定部材の斜視図である。
図9図4の外壁パネルの固定構造における外壁パネルの固定構造の上部側の構造を示した側面視による概略の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1図2および図3に示すように、この実施形態の外壁パネル1の固定構造10において、外壁パネル1の屋内側の下部側には、円柱状の首部11aおよびこの首部11aの先端側に当該首部11aよりも大きな略円盤形の頭部11bを同芯に備えたフック部材11が設けられている。なお、上記フック部材11において、上記首部11aには、上記頭部11bよりも大径の座金11cが外嵌め固定されている。また、柱2の下部側の屋外側面には下支持部3が設けられている。この下支持部3は、上記フック部材11を下から受け止める半円凹部3aを有する。なお、外壁パネル1の固定構造10の下部側は、上記半円凹部3aを有する下支持部3に限らず、躯体側に立設されたピンに上から差し込む構造としてもよい。これら下部側におけるパネル留め構造は、外壁パネル1の下部側の支持において、当該外壁パネル1の柱2に対する上移動が生じ得る構造であり、外壁パネル1が当該留め構造における鉛直方向許容移動量を越えて上移動すると、外壁パネル1の下部側が躯体側から外れるおそれがある。
【0015】
また、例えば、上記外壁パネル1は、断面略コ字状の鋼材からなる縦枠材111と横枠材112とを備える。また、例えば、上記横枠材112の両端部は、絞られて上記縦枠材111内に嵌め込まれている。
【0016】
また、図4および図5に示すように、上記外壁パネル1の屋内側の上角部は、上記柱2の屋外面に対面して位置する。そして、上記外壁パネル1の上角部には、上記外壁パネル1を上記柱2に接合するためのパネル接合部材4の第1固定部41が締結部材であるボルト・ナット6によって固定されている。上記パネル接合部材4は、例えば、鋼板の曲げ処理、孔開け、リブ部形成、エンボス形成、溶接等の加工を行って得られる。
【0017】
上記パネル接合部材4は、横長形状を有し、上記外壁パネル1の上部側の横枠材112に沿って水平方向に延びるように配置される。そして、上記パネル接合部材4には、上記第1固定部41から上記上部側の横枠材112に沿って水平方向に離間した位置に第2固定部42が設けられている。この第2固定部42は、例えば、貫通孔形成とナットの溶接によって得られる。上記第2固定部42と上記第1固定部41との間には、段状部が形成されており、上記第2固定部42は、上記第1固定部41よりも屋内側に位置する。
【0018】
また、上記柱2には、柱側固定部材5が、予め、上記柱2の屋外面側および側面側で溶接されて固定されている。また、上記柱側固定部材5は、例えば、鋼鈑からなり、曲げ加工によって、溶接対象部や補強部等が形成されている。上記柱側固定部材5の上記柱2の屋外面から横方向に出た縦板部位(横部位)51には、水平方向にボルト挿通孔51aが形成されている。そして、上記パネル接合部材4の上記第2固定部42には、図6にも示すように、屋内側から上記ボルト挿通孔51aに挿通されたボルト52が螺着される。
【0019】
すなわち、上記外壁パネル1の上角部は、上記パネル接合部材4を介して、上記柱2の屋外面から横に外れた位置で上記柱側固定部材5に固定され、この柱側固定部材5を介して上記柱2に固定される。このように、上記柱2の屋外面から横に外れた位置において、上記パネル接合部材4の上記第2固定部42を、上記柱側固定部材5に固定すればよいので、上記柱2の柱寸法が大きくても外壁パネル1の上部側を柱側に容易に固定することができる。
【0020】
ここで、上記外壁パネル1の上角部が直接に柱2に固定されるのではなく、上記上角部から上記パネル接合部材4を介して横にずれた位置で上記柱側固定部材5に固定されると、上記縦枠材111の上移動を抑制することが難しくなる。すなわち、上記縦枠材111と上記横枠材112との相互嵌り合いにおける直角状態が維持され難くなる。この実施形態では、図7(A),図7(B)にも示すように、上記パネル接合部材4に、上記縦枠材111と上記横枠材112との相互嵌り合いにおける直角状態を維持する直角維持部43が設けられている。そして、上記直角維持部43として、上記縦枠材111の外側部に接触可能に位置する直角維持部43Aを備える。この直角維持部43Aは、上記パネル接合部材4を構成する鋼板の曲げ加工により形成されており、上記縦枠材111の屋内面側から上記縦枠材111の外側部にかけて90度で曲がり、この外側部において先端側を屋外方向に向けている。
【0021】
また、上記パネル接合部材4は、上記縦枠材111と上記横枠材112の直角を維持する上記直角維持部43として、上記横枠材112に干渉しないように、当該横枠材112の下方および上方に位置し、上記縦枠材111の内側縁部に接触可能に位置する直角維持部43Bを有する。この直角維持部43Bは、上記パネル接合部材4を構成する鋼板の曲げ加工により形成されており、上記縦枠材111の屋内面側から上記縦枠材111の内側縁部の近傍にかけて90度で曲がって先端側を屋外方向に向けている。なお、図6に示す例では、上下に位置する2個の直角維持部43Bのうち、下側の直角維持部43Bのみが直角維持の作用をする。ただし、このように、上下に位置する2個の直角維持部43Bを備えておけば、上記パネル接合部材4を、左右共用品とすることができる。
【0022】
上記直角維持部43(43A,43B)が設けられていると、上記縦枠材111と上記横枠材112の直角が維持されるので、地震で上記縦枠材111が上移動しようとしても、この上移動は抑制される。したがって、上記外壁パネル1の下部側の固定が、当該外壁パネル1の上移動を生じ得る構造とされる場合でも、この上移動許容量を超えて上記外壁パネル1の下部側が躯体側からの離脱するのを防止できる。なお、上記直角維持部43A,43Bの両方を備えるのではなく、一方のみを備える構成とすることもできる。
【0023】
また、図8および図9に示すように、上記柱側固定部材5には、上記縦枠材111の上移動を規制する規制部53が設けられている。上記規制部53は、例えば、上記柱側固定部材5を構成する鋼板の上部を屋外方向に曲げて形成される。そして、上記規制部53は、上記パネル接合部材4の第1固定部41に設けられた上記ボルト・ナット6におけるボルト頭部の上方に位置する。このように、上記柱側固定部材5に上記縦枠材111の上移動を規制する規制部53が設けられていると、大きな地震によって上記パネル接合部材4が耐えられないような上記縦枠材111の上移動が生じた場合でも、上記規制部53によって上記縦枠材111に対して上移動を規制することができる。なお、この実施形態では、上記柱側固定部材5は、上記縦板部位(横部位)51と上記規制部53とを一体に備えたが、これに限らず、上記縦板部位(横部位)51と上記規制部53を別部材で備えてもよい。
【0024】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 :外壁パネル
2 :柱
3 :下支持部
3a :半円凹部
4 :パネル接合部材
5 :柱側固定部材
6 :ボルト・ナット(締結部材)
10 :固定構造
11 :フック部材
11a :首部
11b :頭部
11c :座金
41 :第1固定部
42 :第2固定部
43 :直角維持部
43A :直角維持部
43B :直角維持部
51 :縦板部位(横部位)
51a :ボルト挿通孔
52 :ボルト
53 :規制部
111 :縦枠材
112 :横枠材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9