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特許7386669ベースプレート、及びベースプレート固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】ベースプレート、及びベースプレート固定方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20231117BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/00 A
E04B1/41 503C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019204972
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021075948
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 真司
(72)【発明者】
【氏名】香川 猛
(72)【発明者】
【氏名】今村 成一
(72)【発明者】
【氏名】安部 聖史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達矢
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-110238(JP,A)
【文献】特開2003-096918(JP,A)
【文献】特開2000-110240(JP,A)
【文献】特開2016-114231(JP,A)
【文献】特開平02-013642(JP,A)
【文献】国際公開第2013/033835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E04B 1/38-1/61
E04G 21/18
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトが設けられた躯体にベースプレートを固定するためのベースプレート固定方法であって、
前記ベースプレートに、前記ベースプレートの一側の面に位置する第1の開口と、前記第1の開口の底面から前記ベースプレートの他側の面に貫通する前記第1の開口の内径より小さい内径の第2の開口と、を有する貫通孔を形成する工程と、
前記ベースプレートの前記貫通孔に前記アンカーボルトを挿入する工程と、
外径が前記第1の開口の内径と同じであり内径が前記アンカーボルトの外径と同じである貫通孔を有するリング状に形成されたスペーサを、自己の前記貫通孔に前記アンカーボルトを挿通して前記第1の開口に嵌合する工程と、
を含むベースプレート固定方法。
【請求項2】
前記躯体に埋設された前記アンカーボルトが前記躯体の面に対して垂直でない場合、前記アンカーボルトが前記躯体の面に対して垂直になるように前記アンカーボルトの姿勢を矯正する工程を含む、
請求項1に記載のベースプレート固定方法。
【請求項3】
前記第2の開口は、前記アンカーボルトの姿勢を矯正する工程により生じた前記アンカーボルトの曲がり部分を収容することが可能な内径及び深さで形成されている、
請求項2に記載のベースプレート固定方法。
【請求項4】
前記スペーサの中心軸に対する前記スペーサの前記貫通孔の中心軸のずれを示す偏心度が異なる複数種類の前記スペーサの中から、前記ベースプレートの前記貫通孔の中心軸と前記アンカーボルトの中心軸との位置関係に基づいて、一のスペーサを選択する工程を含む、
請求項1から3の何れか一項に記載のベースプレート固定方法。
【請求項5】
アンカーボルトによって躯体に固定されるベースプレートであって、
一側の面に位置する第1の開口と、前記第1の開口の底面から他側の面に貫通する前記第1の開口の内径より小さい内径の第2の開口と、を有する貫通孔が形成されたベースプレート本体と、
外径が前記第1の開口の内径と同じであり内径が前記アンカーボルトの外径と同じである貫通孔を有するリング状に形成され、自己の前記貫通孔に前記アンカーボルトを挿通して前記第1の開口に嵌合するスペーサと、
を備えるベースプレート。
【請求項6】
前記第2の開口は、前記アンカーボルトの姿勢を矯正する工程により生じた前記アンカーボルトの曲がり部分を収容することが可能な内径及び深さで形成されている、
請求項5に記載のベースプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースプレート、及びベースプレート固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造や鉄筋構造の構造物は、例えば金属製のベースプレートを介して、コンクリート製の基礎などの躯体に載置される。ベースプレートは、躯体に固定されるアンカーボルトと、アンカーボルトに嵌合するナットによって、躯体に固定される。そのため、ベースプレートには、アンカーボルトが挿入される貫通孔が設けられている。
【0003】
ベースプレートに設けられる貫通口の内径は、ボルトの外径に対してやや大きく、貫通孔にボルトが挿入されると、貫通孔の内壁面とボルトの間に数ミリの遊びができる。そのため、構造物に地震などの振動に起因する力が作用すると、躯体とベースプレートの間に、遊びと同程度の大きさの位置ずれが発生することがある。この位置ずれは、例え数ミリであっても、ベースプレートに載置される上部構造に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
躯体とベースプレートとの位置ずれを防止するために、アンカーボルトに取り付けられたナットとベースプレートとをアーク溶接したり、ベースプレートに設けられた貫通孔とアンカーボルトとの間の隙間に粒状金属を充填し、アンカーボルトとベースプレートとをアーク溶接することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-81787号公報
【0006】
アンカーボルトに取り付けられたナットとベースプレートとをアーク溶接することなどにより、躯体とベースプレートが一体化され、躯体とベースプレートとの位置ずれを抑制することができる。しかしながら、アーク溶接を行う場合には、溶接機や電源などの準備が必要になる。また、周囲への火気対策を行う必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、溶接を用いることなく、ベースプレートの位置ずれを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための実施形態に係るベースプレート固定方法は、アンカーボルトが設けられた躯体にベースプレートを固定するためのベースプレート固定方法である。実施形態に係るベースプレート固定方法は、ベースプレートに、ベースプレートの一側の面に位置する第1の開口と、第1の開口の底面からベースプレートの他側の面に貫通する第1の開口の内径より小さい第2の開口と、を有する貫通孔を形成する工程と、ベースプレートの貫通孔にアンカーボルトを挿入する工程と、外径が第1の開口の内径と同じであり内径がアンカーボルトの外径と同じである貫通孔を有するリング状に形成されたスペーサを、自己の貫通孔にアンカーボルトを挿通して第1の開口に嵌合する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るベースプレート定着部の断面図である。
図2】実施形態に係るベースプレートの断面図である。
図3】(a)(b)(c)は、実施形態に係るスペーサの平面図である。
図4】実施形態に係るスペーサの側面図である。
図5】実施形態に係るベースプレート固定方法のフローチャートである。
図6】実施形態に係るベースプレート固定方法のフローチャートである。
図7】実施形態に係る穿孔作業について説明するための図である。
図8】実施形態に係る穿孔作業について説明するための図である。
図9】実施形態に係るアンカーボルトの姿勢を矯正する作業について説明するための図である。
図10】実施形態に係るアンカーボルトの姿勢を矯正する作業について説明するための図である。
図11】実施形態に係るベースプレートに形成する貫通孔について説明するための図である。
図12】ベースプレートに形成される貫通孔に第2の開口が無い場合のベースプレート定着部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。
【0011】
本実施形態では、躯体に埋設されたアンカーボルトにベースプレートを固定する工事におけるベースプレート固定方法について説明する。躯体とは、基礎、柱、壁、土台、床版などの建造物全体を構造的に支える部分をいう。ここでは、躯体がコンクリートで形成された基礎である場合について説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係るベースプレート定着部の断面図である。ベースプレート定着部とは、躯体に埋設されたアンカーボルトにベースプレートを固定する部分をいう。ベースプレート1は、鉄骨構造等の上部構造と基礎等の下部構造とを接続する部材である。ベースプレート1は、複数のアンカーボルト2で躯体6に固定される。ベースプレート1は、鉄からなる。
【0013】
図2は、ベースプレート1の部分断面図である。図2に示されるように、ベースプレート1には、貫通孔1aが形成されている。貫通孔1aは、第1の開口1bと第1の開口1bに通じる第2の開口1cからなる。第1の開口1bは、ベースプレート1の+Z側の面に位置する凹部である。第2の開口1cは、第1の開口1bの底面からベースプレート1の-Z側の面に貫通している。第1の開口1b及び第2の開口1cは、円柱形状に形成されている。
【0014】
図3(a)(b)(c)は、スペーサ5の平面図の例である。スペーサ5は、リング状に形成されている。スペーサ5は、鉄からなる。スペーサ5には、アンカーボルト2を挿入する貫通孔5aが形成されている。
【0015】
破線は、スペーサ5を貫通孔1aに嵌合した際の第2の開口1cの位置を示している。スペーサ5には、スペーサ5の中心軸に対する貫通孔5aの中心軸のずれを示す偏心度が異なるものが複数種類ある。躯体6の墨付け位置にアンカーボルト2を埋設する穿孔を電動ハンマドリルを使用して掘る際、墨付け位置と掘られた穿孔位置との誤差が発生する。この誤差により、穿孔に埋設されたアンカーボルト2の中心軸と、ベースプレート1に形成された貫通孔1aの中心軸とがずれることがある。このずれに応じた偏心度を有するスペーサ5を選択して使用する。図3(a)は、貫通孔5aの中心軸とスペーサ5の中心軸とが同軸上にある場合の平面図である。図3(b)は、貫通孔5aの外周と貫通孔1aの第2の開口1cの内周とがZ軸方向において重なる位置に貫通孔5aが配置されている場合の平面図である。図3(c)は、貫通孔5aの中心軸が、図3(a)に示される貫通孔5aの中心軸と図3(b)に示される貫通孔5aの中心軸との中間にある場合の平面図である。図3では、3種類のスペーサ5を示したが、偏心度が少しずつ異なる多くのスペーサ5を備えることが望ましい。例えば、貫通孔5aの中心軸をスペーサ5の中心軸から0.5mmずつずらした複数種類のスペーサを備える。
【0016】
図4は、図3(a)に示されるスペーサ5の側面図である。スペーサ5の外径L6は、貫通孔1aの第1の開口1bの内径L1と同じである。スペーサ5の貫通孔5aの内径L7は、アンカーボルト2の外径L0と同じである。スペーサ5の貫通孔5aの内周面は、面取りされている。スペーサ5のZ軸方向の長さL8は、貫通孔1aの第1の開口1bのZ軸方向の長さL3と同じである。
【0017】
次に、上述した貫通孔1aの寸法の例について図2を参照して説明する。第1の開口1bの内径L1は36mmであり、製造誤差は0.15mm以下である。第2の開口1cの内径L2は、内径L1より小さい。内径L2は、スペーサ5の外径L6よりも小さく、アンカーボルト2の外径L0よりも大きく形成されている。スペーサ5は、第1の開口1bに嵌合される。内径L2は、ベースプレート1の貫通孔1aの位置に対する躯体6に埋設されたアンカーボルト2の埋設位置の精度を考慮して決められる。例えば、内径L2は、20mmである。また、第2の開口1cの内径L2及びZ軸方向の深さL4は、後述するアンカーボルト2の姿勢を矯正する工程で生じたアンカーボルト2の曲がり部分を収容可能な長さに設定される。詳細は後述する。第1の開口1bのZ軸方向の深さL3は、ベースプレート1のZ軸方向の長さから深さL4を引いた値である。例えば、ベースプレート1のZ軸方向の長さは20mmであり、第1の開口1bのZ軸方向の深さL3は7mmである。
【0018】
次に、アンカーボルト2が設けられた躯体6にベースプレート1を固定するためのベースプレート固定方法について、図5及び図6に示されるフローチャートを参照しながら説明する。
【0019】
最初に、ベースプレート1に貫通孔1aを形成する(ステップS11)。貫通孔1aは、上部構造の取付位置に合わせて形成される。第2の開口1cは、後述するアンカーボルト2の姿勢を矯正する工程において生じたアンカーボルト2の曲がり部分を収容することが可能な内径及び深さで形成される。
【0020】
次に、墨出しを行う(ステップS12)。墨出しとは、ベースプレート1の貫通孔1aの位置に合わせて、アンカーボルト2を埋設する位置を躯体6に表示する工程である。
【0021】
次に、アンカーボルト2を埋設しようとする躯体6の内部に、鉄骨等の埋設物が存在するか否かを調査する(ステップS13)。埋設物の調査は、躯体6に電磁波もしくは音波を照射し、電磁波もしくは音波の反射波を計測することにより行われる。例えば、鉄骨が埋設されている場合、電磁波もしくは音波は鉄骨で反射する。電磁波もしくは音波を出力してから反射波を受信するまでの経過時間から、鉄骨の埋設されている位置までの距離を特定することができる。電磁波もしくは音波を照射する位置を変えて反射波を受信するまでの経過時間を測定することにより、3点測量の原理に基づいて鉄骨の埋設されている位置を特定することができる。
【0022】
次に、躯体6にアンカーボルト2を埋設する穿孔6aを形成する(ステップS14)。穿孔作業には、電動ハンマドリルを使用する。ステップS13の調査で埋設物がないと判断された場合、図7に示されるように、穿孔6aの深さ方向がZ軸と平行するように、躯体6に穿孔6aを形成する。一方、ステップS13の調査で埋設物があると判断された場合、図8に示されるように、埋設物7を避けて躯体6に穿孔6aを形成する。
【0023】
次に、アンカーボルト2を穿孔6aに固定するための樹脂と樹脂の硬化剤とが分離された状態で収容されているカプセルを穿孔6aに挿入する(ステップS15)。
【0024】
次に、アンカーボルト2を穿孔6aに打ち込む(ステップS16)。アンカーボルト2を穿孔6aに打ち込む場合、電動ハンマドリルを使用して、アンカーボルト2に回転打撃を与えながら、穿孔6aの底までアンカーボルト2を打ち込む。アンカーボルト2に回転打撃を与えることにより、カプセル内の樹脂と硬化剤とを攪拌混合することができる。樹脂と硬化剤とが攪拌混合されることにより、樹脂は短時間で凝固する。
【0025】
次に、穿孔6aから溢れた樹脂を除去する(ステップS17)。穿孔6aから溢れた樹脂をそのままにしておくと、ベースプレート1が躯体6の面(XY平面)に対して傾斜する要因となるからである。
【0026】
樹脂が凝固するまで待ち、アンカーボルト2が躯体6の面に対して垂直である場合(ステップS18:No)、ステップS20に移行する。
【0027】
一方、樹脂が凝固するまで待ち、図9に示されるように、躯体6に埋設されたアンカーボルト2と躯体6の面との成す角度が垂直でない場合(ステップS18:Yes)、アンカーボルト2と躯体6の面との成す角度が垂直になるようにアンカーボルト2の姿勢を矯正する(ステップS19)。具体的には、図10に示されるように、アンカーボルト2の躯体6の外に出ている部分にナット11を螺合する。ナット11は、躯体6と接する位置まで螺合する。そして、ナット11の外径に合うsch(スケジュール)管10をアンカーボルト2とナット11にかぶせる。sch管10の内面は、ナット11に接しているがアンカーボルト2には接していない。アンカーボルト2のネジ山がつぶれることを防止するために、ナット11を螺合した状態でアンカーボルト2の姿勢を矯正する。sch管10と躯体6との接点を支点として、図10に示されるAの位置からBの位置に向かって、sch管10を起す。さらに、アンカーボルト2の躯体6の外に出ている部分と躯体6の面との成す角度が垂直になるまでsch管10を起す。これにより、アンカーボルト2の姿勢は、アンカーボルト2と躯体6の面との成す角度が垂直になるように矯正される。
【0028】
次に、上記の作業の健全性についての確認検査を行う(ステップS20)。健全性の確認検査では、例えば、アンカーボルト2を手で押してガタツキがあるかを確認する接触検査、アンカーボルト2のネジ山のつぶれ等の有無を確認する目視検査、所定の強度でアンカーボルト2を引き抜いてもアンカーボルト2が抜けないことを確認する引張検査などを行う。
【0029】
次に、図6に移り、ベースプレート1に形成された複数の貫通孔1aのそれぞれに、対応するアンカーボルト2を挿入する(ステップS21)。
【0030】
次に、スペーサ5の中心軸に対する貫通孔5aの中心軸のずれを示す偏心度が異なる複数種類のスペーサ5の中から、貫通孔1aの中心軸とアンカーボルト2の中心軸との位置関係に基づいて、一のスペーサ5を選択する(ステップS22)。躯体6にアンカーボルト2を埋設する際の製造誤差により、アンカーボルト2の中心軸が、貫通孔1aの中心軸からずれることがある。複数の貫通孔1aそれぞれについて、このずれに応じた偏心度を有するスペーサ5を選択する。
【0031】
次に、スペーサ5にアンカーボルト2を挿入し、スペーサ5を貫通孔1aの第1の開口1bに嵌合する(ステップS23)。
【0032】
次に、図1に示されるように、アンカーボルト2にナット3を螺合させる。ナット3を締め付けることにより、スペーサ5を介して、ベースプレート1を躯体6に固定する(ステップS24)。ナット3には、緩み止め機能を有するナットを使用する。もしくは、ナット3の緩みを防止するために、2個目のナットを使用してナット3を締め付ける。
【0033】
最後に、後処理を行う(ステップS25)。後処理では、躯体6の表面の凹み等をモルタルやパテ等で埋める作業を行う。
【0034】
以上に説明したように、スペーサ5に形成された貫通孔5aの内径L7は、アンカーボルト2の外径L0と同じである。したがって、アンカーボルト2とスペーサ5との間に隙間はない。また、スペーサ5の外径L6は、ベースプレート1に形成されている貫通孔1aの第1の開口1bの内径L1と同じである。したがって、アンカーボルト2とベースプレート1の第1の開口1bとの間に隙間がなくなる。ベースプレート1に発生したせん断荷重(XY平面方向の荷重)は、ベースプレート1からスペーサ5を介してアンカーボルト2に伝達する。実施形態に係るベースプレート固定方法では、ベースプレート1に発生したせん断荷重がアンカーボルト2の許容せん断力を超えるまで、ベースプレート1と躯体6とのXY平面方向の位置ずれが発生しない。
【0035】
上述したように、本実施形態に係るベースプレート固定方法によれば、溶接等の火気を使用する作業を必要としない。したがって、例えば水素発生装置に近接する場所のように火気の使用が制限されている場所でも、水素発生装置等の停止や周囲への火気対策を必要としない。そのため、工事作業期間の長期化や、工事費用の増大化を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るベースプレート固定方法によれば、ベースプレート1に貫通孔1aを形成する工程を含む。貫通孔1aの第2の開口1cは、アンカーボルト2の姿勢を矯正する工程で生じたアンカーボルト2の曲がり部分2bを収容することが可能な内径L2及び深さL4で形成される。これにより、アンカーボルト2に曲がり部分2bがある場合でも、ベースプレート1を躯体6に密着させて固定することができる。
【0037】
図11を参照して具体的に説明する。図11では、ステップS19の工程でアンカーボルト2の姿勢を矯正した際のアンカーボルト2の曲がり部分2bを破線で示している。貫通孔1aの第2の開口1cは、この曲がり部分2bを収容できるように、第2の開口1cの内径L2と深さL4が設定されている。したがって、スペーサ5を介してナット3でベースプレート1を躯体6に締め付けても、アンカーボルト2の曲がり部分2bがスペーサ5の底部5b(-Z側の面)に接触することはない。これにより、ベースプレート1の下面(-Z側の面)と躯体6との間に隙間ができない。ベースプレート1の上に構築された上部構造の荷重は、躯体6に対してベースプレート1の下面全体で支えられる。
【0038】
図12は、ベースプレート1に形成される貫通孔に第2の開口1cが無い場合のベースプレート定着部の断面図である。アンカーボルト2の外径L0とスペーサ5の貫通孔5aの内径L7は同じである。したがって、スペーサ5を介してナット3でベースプレート1を締め付けると、アンカーボルト2の曲がり部分2bがスペーサ5の底部5bにあたる。そのため、スペーサ5をアンカーボルト2の曲がり部分2bよりも-Z側に押し下げることができず、ベースプレート1の下面と躯体6との間に隙間ができる。ベースプレート1の下面と躯体6との間に隙間ができると、ベースプレート1に掛かった上部構造の荷重をベースプレート1の下面全体から躯体6に伝達できない。そのため、ベースプレート1が傾いたり、ベースプレート1、アンカーボルト2が変形する恐れがある。
【0039】
また、本実施形態に係るベースプレート固定方法によれば、スペーサ5の中心軸に対する貫通孔5aの中心軸のずれを示す偏心度が異なる複数種類のスペーサ5の中から、貫通孔1aの中心軸とアンカーボルト2の中心軸との位置関係に基づいて、一のスペーサを選択する工程を含む。これにより、アンカーボルト2の軸がベースプレート1に形成された貫通孔1aの中心からずれている場合でも、アンカーボルト2をベースプレート1に隙間なく固定することができる。
【0040】
アンカーボルト2のXY平面方向の破断せん断力は、アンカーボルト2のベースプレート1もしくはスペーサ5に接触していない部分の深さL4が短いほど向上する。本実施形態に係るベースプレート固定方法によれば、貫通孔1aを形成して、スペーサ5をベースプレート1に埋め込む構造にしたことにより、アンカーボルト2のベースプレート1もしくはスペーサ5に接触していない部分の深さL4が短くなる。つまり、従来のベースプレート固定方法と比較すると、スペーサ5のZ軸方向の長さL3だけ、アンカーボルト2のベースプレート1もしくはスペーサ5に接触していない部分の深さL4が短くなる。したがって、アンカーボルト2の破断せん断力を向上することができる。
【0041】
なお、図5及び図6に示したフローチャートは一例であり、ベースプレート固定方法は、これに限定されない。例えば、ベースプレート1に貫通孔1aを形成するステップS11の工程は、ベースプレート1にアンカーボルト2を挿入するステップS21の工程までに完了していれば良く、ステップS12からS20の作業と並行して行ってもよい。また、埋設物を調査するステップS13の工程を最初に実施してもよい。
【0042】
また、上記の説明では、ベースプレート1に形成される貫通孔1aが第1の開口1bと第2の開口1cで構成されている場合について説明した。しかし、貫通孔の構成は、これに限定されない。例えば、ベースプレート1に形成される貫通孔は、第1の開口、第1の開口に通じる第2の開口、第2の開口に通じる第3の開口で構成されていてもよい。この場合、第2の開口1cの内径は、スペーサ5の外径L6より小さくする。第3の開口の内径は、ベースプレート1の曲がり部分2bを収容可能な内径であればよく、内径L1及び内径L2との大小関係は問われない。
【0043】
また、上述したL1からL8の長さおよび製造誤差は一例でありこれに限定されることはない。L1からL8の長さは、アンカーボルト2の太さやベースプレート1の厚さ等に基づいて決められる。また、製造誤差は、建築基準等を満たしていることは必須であるが、小さいほどよい。
【0044】
また、上記の説明では、アンカーボルト2の姿勢を矯正する作業を行う場合の例として、埋設物7がある場合を例にして説明した。しかし、埋設物がない場合でも、穿孔6aが躯体6の面(XY平面)に対して垂直に形成されないことがある。また、穿孔6aの内径とアンカーボルト2の外径に差があるので、樹脂が凝固するまでにアンカーボルト2が躯体6の面に対して傾くことがある。このような場合にも、アンカーボルト2の姿勢を矯正する。
【0045】
また、上記の説明では、スペーサ5の形状がリング状である場合について説明したが、スペーサ5をこれに限定する必要はない。スペーサ5は、ベースプレート1とアンカーボルト2との間の隙間を埋めるものであればよい。例えば、複数のスペーサを組み合わせてスペーサ5を組み立ててもよい。また、特定形状のスペーサとクサビを組み合わせたり、複数のクサビを組み合わせることにより、スペーサ5の機能を持たせてもよい。また、第2の開口1cにクサビを打ち込んで、ベースプレート1とアンカーボルト2との間の隙間を無くしてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…ベースプレート
1a…貫通孔
1b…第1の開口
1c…第2の開口
2…アンカーボルト
2b…曲がり部分
3…ナット
5…スペーサ
5a…貫通孔
5b…底部
6…躯体
6a…穿孔
7…埋設物
10…sch(スケジュール)管
11…ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12