IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンスの特許一覧

特許7386681スクラップ等級判定システム、スクラップ等級判定方法、推定装置、学習装置、学習済みモデルの生成方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】スクラップ等級判定システム、スクラップ等級判定方法、推定装置、学習装置、学習済みモデルの生成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20231117BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G01N21/89 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019213278
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2020095709
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018223326
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼次 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】多田 隆良
(72)【発明者】
【氏名】松永 博之
(72)【発明者】
【氏名】青山 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 太郎
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-268835(JP,A)
【文献】特開2017-109161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01N 21/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合を撮影するカメラと、
鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部と、
前記推論部による推定結果を出力する出力部と、
を備え
前記推論部は、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合及び重量を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合及び前記鉄スクラップの集合の重量を推定する、
スクラップ等級判定システム。
【請求項2】
積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを持ち上げるクレーンをさらに備え、
前記推論部は、前記クレーンが一部の鉄スクラップを持ち上げる毎に、前記カメラにより撮影された前記クレーンに持ち上げられた一部の鉄スクラップの画像から、当該一部の鉄スクラップに含まれる各等級の割合を推定する、
請求項1に記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項3】
積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを持ち上げるクレーンをさらに備え、
前記推論部は、前記クレーンが一部の鉄スクラップを持ち上げる毎に、前記カメラにより撮影された前記クレーンが一部の鉄スクラップを持ち上げる前の前記積み重なった鉄スクラップの画像から、当該一部の鉄スクラップに含まれる各等級の割合を推定する、
請求項1または2に記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項4】
前記クレーンに持ち上げられた一部の鉄スクラップの画像から推定される各等級の割合と、前記クレーンが一部の鉄スクラップを持ち上げる前の前記積み重なった鉄スクラップの画像から推定される各等級の割合とに基づいて、当該一部の鉄スクラップに含まれる各等級の割合を決定する部分割合決定部をさらに備える、
請求項2または3に記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項5】
前記クレーンが一部の鉄スクラップを持ち上げる毎に推定される各等級の割合に基づいて、前記積み重なった鉄スクラップ全体に含まれる各等級の割合を決定する全体割合決定部をさらに備える、
請求項2ないし4の何れかに記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項6】
前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合及び前記鉄スクラップの集合の重量に基づいて、前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の重量を算出する重量算出部をさらに備える、
請求項1ないし5の何れかに記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項7】
積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを持ち上げるクレーンをさらに備え、
前記推論部は、前記クレーンが一部の鉄スクラップを持ち上げる毎に、前記カメラにより撮影された画像から、当該一部の鉄スクラップに含まれる各等級の割合及び当該一部の鉄スクラップの重量を推定する、
請求項1ないし6の何れかに記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項8】
前記クレーンが一部の鉄スクラップを持ち上げる毎に推定される重量を積算する重量積算部と、
前記積み重なった鉄スクラップ全体の重量を測定する重量測定部と、
前記重量測定部により測定された重量に基づいて、前記重量積算部により積算された重量を補正する重量補正部と、
をさらに備える、
請求項に記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項9】
前記カメラは、前記大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップ、及びそれとは異なる品種の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合を撮影し、
前記推論部は、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合及び異なる品種の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合及び異なる品種の割合を推定する、
請求項1ないしの何れかに記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項10】
前記カメラは、前記大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップ、及び除外品が混在した、鉄スクラップの集合を撮影し、
前記推論部は、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合及び除外品の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合及び除外品の有無を推定し、
除外品が有ると推定された場合に警報を出力する警報出力部をさらに備える、
請求項1ないしの何れかに記載のスクラップ等級判定システム。
【請求項11】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合を撮影するカメラと、
鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部と、
前記推論部による推定結果を出力する出力部と、
を備え、
積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを吊り具によって持ち上げるクレーンと、
前記カメラにより生成された画像から、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像を抽出する加工手段と、
をさらに備え、
前記推論部は、前記部分画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定し、
前記加工手段は、前記部分画像のうち、前記吊り具から下方に向かうに従って徐々に狭まる範囲を表示領域とし、他の範囲を非表示領域とするマスク加工を施す、
スクラップ等級判定システム。
【請求項12】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合を撮影するカメラと、
鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部と、
前記推論部による推定結果を出力する出力部と、
を備え、
積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを吊り具によって持ち上げるクレーンと、
前記カメラにより生成された画像から、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像を抽出する加工手段と、
をさらに備え、
前記推論部は、前記部分画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定し、
前記カメラにより生成された画像中の前記吊り具の範囲を推定する範囲推定部をさらに備える、
スクラップ等級判定システム。
【請求項13】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合を撮影するカメラと、
鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部と、
前記推論部による推定結果を出力する出力部と、
を備え、
積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを吊り具によって持ち上げるクレーンと、
前記カメラにより生成された画像から、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像を抽出する加工手段と、
をさらに備え、
前記推論部は、前記部分画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定し、
前記学習済みモデルは、クレーンの吊り具に持ち上げられた鉄スクラップの集合の画像から抽出された、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像を入力データとして、機械学習により予め構築される、
スクラップ等級判定システム。
【請求項14】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影し、
鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定し、
推定結果を出力する、
スクラップ等級判定方法であって、
前記推定は、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合及び重量を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合及び前記鉄スクラップの集合の重量を推定する、
スクラップ等級判定方法。
【請求項15】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像を取得する取得部と、
鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部と、
を備え
前記推論部は、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合及び重量を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合及び前記鉄スクラップの集合の重量を推定する、
推定装置。
【請求項16】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像を取得する取得部、及び、
鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部、
としてコンピュータを機能させ
前記推論部は、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合及び重量を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合及び前記鉄スクラップの集合の重量を推定する、
プログラム。
【請求項17】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像、及び前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を取得する取得部と、
前記画像を入力データとし、前記各等級の割合を教師データとして、画像から鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する学習部と、
を備え
前記画像は、クレーンの吊り具により持ち上げられた前記鉄スクラップの集合の画像から抽出された、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像であり、
前記部分画像は、前記吊り具から下方に向かうに従って徐々に狭まる範囲を表示領域とし、他の範囲を非表示領域とするマスク加工が施された部分画像である、
学習装置。
【請求項18】
前記学習済みモデルを構築するための入力データとして、等級毎の鉄スクラップの集合の画像も使用される、
請求項17に記載の学習装置。
【請求項19】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像、及び前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を取得する取得部、及び、
前記画像を入力データとし、前記各等級の割合を教師データとして、画像から鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する学習部、
としてコンピュータを機能させ
前記画像は、クレーンの吊り具により持ち上げられた前記鉄スクラップの集合の画像から抽出された、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像であり、
前記部分画像は、前記吊り具から下方に向かうに従って徐々に狭まる範囲を表示領域とし、他の範囲を非表示領域とするマスク加工が施された部分画像である、
プログラム。
【請求項20】
大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像、及び前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を取得し、
前記画像を入力データとし、前記各等級の割合を教師データとして、画像から鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する、
学習済みモデルの生成方法であって、
前記画像は、クレーンの吊り具により持ち上げられた前記鉄スクラップの集合の画像から抽出された、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像であり、
前記部分画像は、前記吊り具から下方に向かうに従って徐々に狭まる範囲を表示領域とし、他の範囲を非表示領域とするマスク加工が施された部分画像である、
学習済みモデルの生成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラップ等級判定システム、スクラップ等級判定方法、推定装置、学習装置、学習済みモデルの生成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電炉メーカーのスクラップ受入現場では、検収員及びクレーン運転者の計2名がスクラップ積載トレーラー及びリフティングマグネットで吊り上げた鉄スクラップを目視で確認し、品種・等級毎に割合を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-286969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検収員は、安全のために離れた場所から鉄スクラップを目視で確認するため、等級割合の判定精度が十分でない場合がある。また、検収員の経験等に依って判定基準にばらつきが生じることもある。
【0005】
特に、大きさに応じた等級が定められたヘビー屑と呼ばれる鉄スクラップについては、種々の大きさの鉄スクラップが混在しているため、等級割合の判定が困難である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、鉄スクラップの等級割合の判定精度を向上させることが可能なスクラップ等級判定システム、スクラップ等級判定方法、推定装置、学習装置、学習済みモデルの生成方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様のスクラップ等級判定システムは、大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合を撮影するカメラと、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部と、前記推論部による推定結果を出力する出力部と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の態様のスクラップ等級判定方法は、大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影し、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定し、推定結果を出力する。
【0009】
また、本発明の他の態様の推定装置は、大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像を取得する取得部と、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の態様のプログラムは、大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像を取得する取得部、及び、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成された画像から前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定する推論部、としてコンピュータを機能させる。
【0011】
また、本発明の他の態様の学習装置は、大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像、及び前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を取得する取得部と、前記画像を入力データとし、前記各等級の割合を教師データとして、画像から鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する学習部と、を備える。
【0012】
また、本発明の他の態様のプログラムは、大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像、及び前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を取得する取得部、及び、前記画像を入力データとし、前記各等級の割合を教師データとして、画像から鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する学習部、としてコンピュータを機能させる。
【0013】
また、本発明の他の態様の学習済みモデルの生成方法は、大きさに応じた複数の等級の鉄スクラップが混在した、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影して得られる画像、及び前記鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を取得し、前記画像を入力データとし、前記各等級の割合を教師データとして、画像から鉄スクラップの集合に含まれる各等級の割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉄スクラップの等級割合の判定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るスクラップ等級判定システムの構成例を示す図である。
図2】ヘビー屑の等級及び要件を示す図である。
図3】スクラップ受入現場の平面図である。
図4】スクラップ受入現場の側面図である。
図5】第1実施形態に係る判定装置の構成例を示すブロック図である。
図6】画像とラベルとの関連付け例を示す図である。
図7】画像の例を示す図である。
図8】学習フェーズの手順例を示すフロー図である。
図9】学習済みモデルの構築例を示す図である。
図10】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
図11】推論結果の出力例を示す図である。
図12】第2実施形態に係る判定装置の構成例を示すブロック図である。
図13】画像とラベルとの関連付け例を示す図である。
図14】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
図15】推論結果の出力例を示す図である。
図16】第3実施形態に係る画像とラベルとの関連付け例を示す図である。
図17】推論結果の出力例を示す図である。
図18】第4実施形態に係る判定装置の構成例を示すブロック図である。
図19】画像とラベルとの関連付け例を示す図である。
図20】画像の例を示す図である。
図21】画像加工の例を示す図である。
図22】第5実施形態に係る判定装置の構成例を示すブロック図である。
図23】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
図24】加工処理を説明するための図である。
図25】加工処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
[システム概要]
図1は、実施形態に係るスクラップ等級判定システム100の構成例を示す図である。スクラップ等級判定システム100は、判定装置1、カメラ2、重量センサ3、出力部6,7、及びクレーン9を備えている。判定装置1は、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介してカメラ2及び出力部6,7と通信可能である。
【0018】
スクラップ等級判定システム100は、スクラップ受入現場においてスクラップ積載車両TからスクラップヤードYへクレーン9により荷下ろしされる鉄スクラップSの等級割合等を判定する。
【0019】
カメラ2は、スクラップ積載車両Tに積載された鉄スクラップSの集合、及びリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの集合を撮影し、生成した画像を判定装置1に送信する。カメラ2の配置については、詳細を後述する。
【0020】
判定装置1は、カメラ2により生成された画像から鉄スクラップSの等級割合等を推定し、推定結果を出力部6,7に送信する。
【0021】
出力部6,7は、判定装置1からの推定結果を出力する。出力部6は、例えば検収員Aが携帯するタブレット型コンピュータ等の端末である。出力部7は、例えば検収書発行用のプリンタである。
【0022】
重量センサ3は、例えばスクラップ受入現場の出入口に埋設された踏板センサであり、スクラップ積載車両Tの車輪から加わる荷重を検知する。
【0023】
スクラップ積載車両Tに積載された鉄スクラップSには、種々の大きさの鉄スクラップSが混在している。鉄スクラップSは、例えばヘビー屑である。図2に示すように、ヘビー屑には、大きさ(具体的には、厚さ、幅又は高さ、長さ)及び重さに応じた等級HS~H4が定められている。
【0024】
[スクラップ受入現場]
図3及び図4は、スクラップ受入現場を模式的に示す平面図及び側面図である。スクラップ受入現場は、スクラップヤードY、及びそれに隣接する車両進入エリアPを有している。スクラップ受入現場に設置されたクレーン9は、リフティングマグネット91をスクラップヤードY及び車両進入エリアPの上方で移動させる。
【0025】
クレーン9は、例えばトロリ式天井クレーンであり、一対のランウェイガーダ92、一対のランウェイガーダ92に跨って配置された一対のクレーンガーダ93、及び一対のクレーンガーダ93に跨って配置されたクラブトロリ94を備えている。ランウェイガーダ92は、建屋柱97によって支持されている。
【0026】
クレーンガーダ93は、ランウェイガーダ92の長手方向に沿って移動可能とされ、クラブトロリ94は、クレーンガーダ93の長手方向に沿って移動可能とされている。クラブトロリ94からはフックブロック98が吊り下げられており、フックブロック98からはリフティングマグネット91が吊り下げられている。
【0027】
図3に示すように、一部のカメラ21は、車両進入エリアPに停車したスクラップ積載車両Tの荷台を撮影するように設置されている(以下、スクラップ積載車両Tの荷台を撮影するカメラ21を「車両撮影カメラ21」という)。車両撮影カメラ21は、例えばスクラップ受入現場の歩廊95及び検収室96等に複数台設置され、スクラップ積載車両Tの荷台全体を上方から撮影する。
【0028】
歩廊95及び検収室96は、従来、検収員がスクラップ積載車両Tの荷台を観察していた場所であり、こうした場所に車両撮影カメラ21を設置することで、従来の検収員の視野を再現することができる。
【0029】
車両撮影カメラ21は、車両進入エリアPにスクラップ積載車両Tが進入すると、スクラップ積載車両Tの荷台に満杯に積み重なった鉄スクラップSを撮影する。続いて、車両撮影カメラ21は、リフティングマグネット91がスクラップ積載車両Tの荷台に積み重なった鉄スクラップSから一部の鉄スクラップSを持ち上げる毎に、荷台に残された鉄スクラップSを撮影する。車両撮影カメラ21は、この撮影をスクラップ積載車両Tの荷台から鉄スクラップSが無くなるまで繰り返す。
【0030】
ここで、荷台に残された鉄スクラップSのうち、車両撮影カメラ21で撮影される表層部分の鉄スクラップSは、次にリフティングマグネット91に持ち上げられる鉄スクラップSとほぼ同じものである。
【0031】
図4に示すように、他のカメラ22は、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを撮影するように設置されている(以下、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを撮影するカメラ22を「リフマグ撮影カメラ22」という)。リフマグ撮影カメラ22は、例えば検収室96、建屋柱97及びスクラップヤードYの地面付近等に複数台設置され、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを側方又は下方から撮影する。
【0032】
クレーン9は、リフティングマグネット91が決まった位置を通過するように、リフティングマグネット91をスクラップ積載車両TからスクラップヤードYまで移動させる。リフマグ撮影カメラ22は当該決まった位置に向かって撮影するように設置され、リフティングマグネット91が当該決まった位置を通過するタイミングに合わせて、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを撮影する。
【0033】
検収室96は、従来、検収員がリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを観察していた場所でもあり、こうした場所にリフマグ撮影カメラ22を設置することで、従来の検収員の視野を再現することができる。
【0034】
さらに、リフマグ撮影カメラ22を検収室96とは逆側に設置したり、スクラップヤードYの地面付近に設置して、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを様々な角度から全体的に撮影することで、従来の検収員では得られなかった視野の画像を学習・推論に利用することも可能となる。
【0035】
リフマグ撮影カメラ22は、リフティングマグネット91がスクラップ積載車両Tの荷台に積み重なった鉄スクラップSから一部の鉄スクラップSを持ち上げる毎に、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを撮影する。リフマグ撮影カメラ22は、この撮影をスクラップ積載車両Tの荷台から鉄スクラップSが無くなるまで繰り返す。
【0036】
[第1実施形態]
図5は、第1実施形態に係る判定装置1の構成例を示すブロック図である。判定装置1は、学習装置でもあり、推定装置でもある。判定装置1は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ及び入出力インターフェース等を含む制御部10を備えている。判定装置1は、例えば1又は複数のサーバーコンピュータで構成される。
【0037】
制御部10は、データベース20にアクセス可能である。データベース20は、判定装置1の内部に設けられてもよいし、判定装置1の外部に設けられ、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介してアクセスされてもよい。
【0038】
制御部10は、画像取得部11、学習部13、推論部14、部分割合決定部15、及び全体割合決定部16を含んでいる。これらの機能部は、制御部10のCPUがROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0039】
プログラムは、例えば光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0040】
[学習フェーズ]
図5に示す制御部10が実現する機能部のうち、画像取得部11及び学習部13は、学習フェーズを実行するための機能部であり、学習装置に相当する。学習フェーズは、学習済みモデルの生成方法に相当する。なお、学習フェーズを実行するための機能部は、判定装置1とは別の装置で実現されてもよい。
【0041】
画像取得部11は、カメラ2により生成された、鉄スクラップSの集合の画像を取得する。取得された画像は、等級割合を含むラベルと関連付けられてデータベース20に格納される。
【0042】
学習部13は、データベース20から画像及びそれに関連付けられたラベルを読み出して、画像を入力データとし、ラベルを教師データとして、画像から鉄スクラップSの集合の等級割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0043】
図6は、画像とラベルとの関連付け例を示す図である。画像とラベルとの関連付けは、同図に示すようなテーブルによって管理されている。「画像ID」は、画像の識別情報である。
【0044】
「ラベル」は、等級割合として、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合を含んでいる。図示の例では、HS、H1、H2、H3、及びH4の等級を含んでいる。
【0045】
「ラベル」には、例えば検収員によって判断された値が付与されてもよいし、実際に測定された値が付与されてもよい。
【0046】
割合は、例えば重量割合であるが、これに限らず、面積割合であってもよいし、体積割合であってもよい。鉄スクラップSに関しては材料が共通するため、面積割合も体積割合も、重量割合とほぼ類似するものとなる。
【0047】
図7(a)及び図7(b)は、複数の等級の鉄スクラップSが混在した鉄スクラップSの集合の画像の例を示す図である。
【0048】
図7(a)は、車両撮影カメラ21がスクラップ積載車両Tの荷台を撮影することにより生成した画像の例である。この画像は、図6に示すテーブルの画像IDが「aaaa」のエントリーに対応する。
【0049】
複数の車両撮影カメラ21で互いに異なる方向から同時にスクラップ積載車両Tの荷台を撮影する場合、生成される複数の画像には同一のラベルが付与される。又は、生成される複数の画像の組を1つの入力データとして扱ってもよい。
【0050】
図7(b)は、リフマグ撮影カメラ22がリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを撮影することにより生成した画像の例である。この画像は、図6に示すテーブルの画像IDが「bbbb」のエントリーに対応する。
【0051】
複数のリフマグ撮影カメラ22で互いに異なる方向から同時にリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを撮影する場合、生成される複数の画像には同一のラベルが付与される。又は、生成される複数の画像の組を1つの入力データとして扱ってもよい。
【0052】
機械学習に利用される画像は、必ずしも車両撮影カメラ21又はリフマグ撮影カメラ22で撮影した画像に限られず、例えば他の場所において撮影された鉄スクラップの画像であってもよい。
【0053】
また、図7(c)に示すような、等級毎の鉄スクラップSの集合の画像(すなわち、同じ等級の鉄スクラップSのみを含む画像)が機械学習に利用されてもよい。この画像は、図6に示すテーブルの画像IDが「cccc」のエントリーに対応する。
【0054】
また、鉄スクラップSの集合の画像からユーザの操作入力に応じて切り出された部分画像を機械学習に利用してもよい。例えば経験のある検収員が着目する部分を画像から切り出して機械学習に利用することで、推定精度の向上を期待できる。
【0055】
図8は、学習済みモデルの生成方法としての学習フェーズの手順例を示すフロー図である。制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行することにより、画像取得部11及び学習部13として機能する。
【0056】
まず、制御部10は、画像及びそれに対応付けられたラベルを取得する(S11、取得部としての処理)。学習フェーズにおいては、画像及びそれに対応付けられたラベルが予めデータベース20に格納され、必要に応じてデータベース20から読み出される。
【0057】
次に、制御部10は、複数用意された画像及びそれに対応付けられたラベルの組から一部を機械学習用のトレーニングデータとして抽出し(S12)、抽出したトレーニングデータを用いて機械学習を実行する(S13、学習部としての処理)。機械学習は、画像を入力データとし、ラベルを教師データとして行われる。これにより、画像から鉄スクラップSの集合の等級割合を推定するための学習済みモデルが構築される。
【0058】
次に、制御部10は、複数用意された画像及びそれに対応付けられたラベルの組からトレーニングデータとは別の一部をテストデータとして抽出し(S14)、抽出したテストデータを用いて学習済みモデルを評価する(S15)。その後、制御部10は、評価が所定以上であった学習済みモデルをデータベース20に保存し(S16)、学習フェーズを終了する。
【0059】
図9は、学習済みモデルの構築例を示す図である。学習済みモデルは、例えば畳込みニューラルネットワークであり、畳込み層、プーリング層、全結合層、及び出力層を含んでいる。特には、ニューロンを多段に組み合わせたディープニューラルネットワークが好適である。
【0060】
出力層には、ラベル(図6参照)に対応する数の要素が設けられる。すなわち、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合に対応する複数の要素が設けられる。
【0061】
出力層の等級割合に係る要素(ヘビー屑の各等級の割合に係る要素)には、例えばソフトマックス関数が用いられる。この場合、出力値が0~1の間の実数で得られるので、出力値を割合として解釈することができる。
【0062】
なお、図示の畳込みニューラルネットワークはあくまでも一例であり、層構造はこれに限られず、畳込み層、プーリング層、及び全結合層の層数が異なっていてもよい。また、サポートベクタマシン、ガウス過程、決定木などのニューラルネットワーク以外の機械学習が用いられてもよい。
【0063】
[推論フェーズ]
図5に示す制御部10が実現する機能部のうち、画像取得部11、推論部14、部分割合決定部15、及び全体割合決定部16は、推論フェーズを実行するための機能部であり、推定装置に相当する。推論フェーズは、スクラップ等級判定方法に相当する。
【0064】
画像取得部11は、カメラ2により生成された鉄スクラップSの集合の画像を取得し、推論部14に出力する。推論フェーズにおいては、画像取得部11により取得された画像は推論部14に直接的に入力される。これに限らず、画像はデータベース20に一旦格納されてから読み出されてもよい。
【0065】
推論部14は、画像取得部11により取得された画像を入力データとし、学習フェーズで構築された学習済みモデルを用いて、画像から鉄スクラップSの集合の等級割合を推定する。推論部14は、推定結果を部分割合決定部15に出力する。
【0066】
部分割合決定部15は、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎に、持ち上げ直前に車両撮影カメラ21により生成された画像から推定された等級割合と、持ち上げ時にリフマグ撮影カメラ22により生成された画像から推定された等級割合とに基づいて、持ち上げられた鉄スクラップSの等級割合を決定する。
【0067】
全体割合決定部16は、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎に部分割合決定部15により決定された鉄スクラップSの等級割合に基づいて、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の等級割合を決定する。
【0068】
図10は、スクラップ等級判定方法としての推論フェーズの手順例を示すフロー図である。制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行することにより、画像取得部11、推論部14、部分割合決定部15、及び全体割合決定部16として機能する。
【0069】
まず、制御部10は、車両撮影カメラ21(図3参照)により撮影された画像を取得する(S21、取得部としての処理)。車両撮影カメラ21により撮影された画像は、リフティングマグネット91に持ち上げられる前の、スクラップ積載車両Tの荷台に積み重なった鉄スクラップSの画像である。
【0070】
次に、制御部10は、取得した画像を入力データとし、学習フェーズで作成された学習済みモデルを用いて、鉄スクラップSに含まれる等級割合(ヘビー屑の各等級の割合)を推定する(S22、推論部としての処理)。また、複数の車両撮影カメラ21で同時に撮影された複数の画像を取得する場合は、それぞれの画像から推定された等級割合を平均化する。
【0071】
次に、制御部10は、リフマグ撮影カメラ22(図4参照)により撮影された画像を取得する(S23、取得部としての処理)。リフマグ撮影カメラ22により撮影された画像は、スクラップ積載車両Tの荷台に積み重なった鉄スクラップSからリフティングマグネット91により持ち上げられた一部の鉄スクラップSの画像である。
【0072】
次に、制御部10は、取得した画像を入力データとし、学習フェーズで作成された学習済みモデルを用いて、鉄スクラップSに含まれる等級割合(ヘビー屑の各等級の割合)を推定する(S24、推論部としての処理)。また、複数のリフマグ撮影カメラ22で同時に撮影された複数の画像を取得する場合は、それぞれの画像から推定された等級割合を平均化する。
【0073】
次に、制御部10は、S22で推定された等級割合とS24で推定された等級割合とを平均化し、平均化された等級割合をリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの等級割合として決定する(S25、部分割合決定部としての処理)。平均化には、算術平均が用いられてもよいし、例えば一方を主、他方を副とするように重みが定められた加重平均が用いられてもよい。
【0074】
ここで、リフティングマグネット91に持ち上げられる前の、スクラップ積載車両Tの荷台に積み重なった鉄スクラップSのうちの、車両撮影カメラ21により撮影される表層部分の鉄スクラップSは、リフマグ撮影カメラ22により撮影されるリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSとほぼ同じものである。すなわち、S21で取得した画像とS23で取得した画像とは、ほぼ同じ鉄スクラップSを異なる視点から表したものと言える。
【0075】
そのため、S25では、S22で推定された等級割合とS24で推定された等級割合とを平均化することで、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの等級割合を決定している。
【0076】
制御部10は、スクラップ積載車両Tから全ての鉄スクラップSが荷下ろしされるまで、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎にS21~S25の処理を繰り返す(S26)。
【0077】
スクラップ積載車両Tから全ての鉄スクラップSが荷下ろしされると(S26:YES)、制御部10は、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎にS25で決定された等級割合を集計し、平均値を算出することで、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の等級割合を決定する(S27、全体割合決定部としての処理)。平均化には、算術平均が用いられてもよいし、例えば重量に応じた重みを乗じた加重平均が用いられてもよい。
【0078】
その後、制御部10は、S27で決定された、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の等級割合を、推定結果として出力部6,7に送信する(S28)。出力部6,7は、受信した推定結果を例えば表示又は印刷等によって出力する。
【0079】
図11は、推論結果の出力例を示す図である。推定結果には、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の等級割合(ヘビー屑の各等級の割合)が含まれている。
【0080】
以上に説明した実施形態によれば、機械学習により予め作成された学習済みモデルを用いて、画像から鉄スクラップSの集合の等級割合を推定するので、推定精度の向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、実施形態によれば、検収員による等級判定レベルのばらつきを無くし、等級判定レベルを平準化することが可能となる。
【0082】
また、実施形態によれば、複数のカメラ2により鉄スクラップSの集合を様々な角度から撮影した画像を利用することで、推定精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0083】
さらに、例えばリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSを下方から覗き込むようにリフマグ撮影カメラ22で撮影する等、これまで検収員を配置することができなかった場所にもカメラ2を設置することにより、検収員の安全を確保しつつ鉄スクラップSの集合を様々な角度から撮影した画像を学習・推論に利用することが可能となる。
【0084】
また、実施形態によれば、等級割合の推定を自動化するので、クレーン9の運転手1人で検収作業を実施でき、検収員の省力化を図ることが可能となる。さらに、クレーン9の運転自動化を組み合わせれば、鉄スクラップの受入、荷下ろし、検収作業の無人化を図ることも可能となる。
【0085】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。上記実施形態と重複する構成又は手順については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0086】
図12は、第2実施形態に係る判定装置1の構成例を示すブロック図である。制御部10は、画像取得部11、学習部13、推論部14、部分割合決定部15、及び全体割合決定部16に加えて、重量測定部12、重量算出部17、重量積算部18、及び重量補正部19を含んでいる。
【0087】
[学習フェーズ]
画像取得部11により取得された鉄スクラップSの集合の画像は、等級割合及び重量を含むラベルと関連付けられてデータベース20に格納される。
【0088】
学習部13は、データベース20から画像及びそれに関連付けられたラベルを読み出して、画像を入力データとし、ラベルを教師データとして、画像から鉄スクラップSの集合の等級割合及び重量を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0089】
図13は、画像とラベルとの関連付け例を示す図である。「ラベル」は、等級割合としての、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級(本例では、HS、H1、H2、H3、及びH4)の割合に加えて、鉄スクラップSの集合の重量を含んでいる。
【0090】
なお、画像IDが「aaaa」のエントリーに対応する、車両撮影カメラ21がスクラップ積載車両Tの荷台を撮影することにより生成した画像(図7(a)参照)には、重量のラベルは付与されない。
【0091】
[推論フェーズ]
図12に示す制御部10が実現する機能部のうち、画像取得部11、推論部14、部分割合決定部15、全体割合決定部16、重量算出部17、重量積算部18、及び重量補正部19は、推論フェーズを実行するための機能部であり、推定装置に相当する。
【0092】
推論部14は、画像取得部11により取得された画像を入力データとし、学習フェーズで構築された学習済みモデルを用いて、画像から鉄スクラップSの集合の等級割合及び重量を推定する。推論部14は、等級割合に係る推定結果を部分割合決定部15に出力し、重量に係る推定結果を重量算出部17に出力する。
【0093】
重量測定部12は、スクラップ受入現場の出入口に設けられた重量センサ3からスクラップ積載車両Tの進入時の重量と退出時の重量とを取得し、それらの差分を算出することで、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の重量(測定重量)を算出する。
【0094】
重量算出部17は、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎に推論部14により推定された、持ち上げられた鉄スクラップSの重量を取得する。
【0095】
また、重量算出部17は、部分割合決定部15により決定された持ち上げられた鉄スクラップSの等級割合と、推論部14により推定された持ち上げられた鉄スクラップSの重量とに基づいて、持ち上げられた鉄スクラップSに含まれる各等級の重量を算出する。
【0096】
重量積算部18は、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎に推論部14により推定された鉄スクラップSの重量を積算することで、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の重量(推定重量)を算出する。
【0097】
また、重量積算部18は、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎に重量算出部17により算出された、持ち上げられた鉄スクラップSに含まれる各等級の重量を積算することで、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量(推定重量)も算出する。
【0098】
重量補正部19は、重量測定部12により算出された鉄スクラップS全体の測定重量に基づいて、重量積算部18により算出された鉄スクラップS全体の推定重量を補正する。
【0099】
また、重量補正部19は、重量測定部12により算出された鉄スクラップS全体の測定重量と、重量積算部18により算出された鉄スクラップS全体の推定重量との比に基づいて、重量積算部18により算出された鉄スクラップS全体に含まれる各等級の推定重量も補正する。
【0100】
図14は、スクラップ等級判定方法としての推論フェーズの手順例を示すフロー図である。制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行することにより、画像取得部11、推論部14、部分割合決定部15、全体割合決定部16、重量算出部17、重量積算部18、及び重量補正部19として機能する。
【0101】
制御部10は、S23で取得されたリフマグ撮影カメラ22(図4参照)の画像を入力データとし、学習フェーズで作成された学習済みモデルを用いて、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSに含まれる等級割合とともに、その重量を推定する(S31、推論部としての処理)。
【0102】
なお、S22において、S21で取得された車両撮影カメラ21(図3参照)の画像を入力データとして学習済みモデルを用いた推定を行うが、ここでは、学習済みモデルにより鉄スクラップSの重量が推定されても、それを使用しない。
【0103】
次に、制御部10は、S25及びS31で決定又は推定されたリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの等級割合及びその重量を掛け合わせて、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSに含まれる各等級の重量を算出する(S32、重量算出部としての処理)。
【0104】
次に、制御部10は、S31で推定されたリフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの重量を積算する(S33、重量積算部としての処理)。具体的には、制御部10は、メモリに格納されたそれまでの積算重量にS31で推定された重量を加算して、積算重量を更新する。さらに、制御部10は、S32で算出された各等級の重量も同様に積算する。
【0105】
次に、制御部10は、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎にS33で積算された重量を、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の重量として決定する(S34)。さらに、制御部10は、S33で積算された各等級の重量も、鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量として同様に決定する。
【0106】
次に、制御部10は、S34で決定した鉄スクラップS全体の重量(推定重量)が、重量センサ3により測定された鉄スクラップS全体の重量(測定重量)と異なる場合に(S35:YES)、測定重量に基づいて推定重量を補正する(S36)。例えば、測定重量を正しい値として、推定重量を測定重量に置き換える。
【0107】
さらに、制御部10は、S34で決定した鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量に、測定重量と推定重量との比(測定重量/推定重量)を掛け合わせることで、鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量も補正する。
【0108】
その後、制御部10は、S27及びS34(又はS36)で決定された、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の等級割合及び重量を、推定結果として出力部6,7に送信する(S28)。出力部6,7は、受信した推定結果を例えば表示又は印刷等によって出力する。
【0109】
図15は、推論結果の出力例を示す図である。推定結果には、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体の等級割合(ヘビー屑の各等級の割合)、鉄スクラップS全体の重量、及び鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量が含まれている。
【0110】
なお、鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量は、次のように算出されてもよい。従来、検収員は、スクラップ受入現場に進入したばかりの鉄スクラップS全体が積載されたスクラップ積載車両Tの荷台を観察するとともに、スクラップ積載車両Tの進入時の重量から車重を引いて得られる鉄スクラップS全体の重量を考慮して、鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量の概略を判断している。
【0111】
これと同様の概略を得るため、スクラップ受入現場に進入したばかりの鉄スクラップS全体が積載されたスクラップ積載車両Tの荷台を撮影した車両撮影カメラ21の画像から鉄スクラップSに含まれる各等級の割合を推定し、それらに重量センサ3で測定した鉄スクラップS全体の重量を掛け合わせることで、鉄スクラップS全体に含まれる各等級の重量を算出してもよい。
【0112】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態について説明する。上記実施形態と重複する構成又は手順については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。第3実施形態に係る判定装置1の構成例及び手順例は、上記図5図8及び図10に示した第1実施形態に係る判定装置と同様である。
【0113】
スクラップ受入現場においてスクラップ積載車両TからスクラップヤードYへクレーン9により荷下ろしされる鉄スクラップSには、ヘビー屑の他に、シュレッダー屑、新断、又は鋼ダライ粉や水分・ダスト等が混在していることがある。
【0114】
そこで、第3実施形態では、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合だけでなく、シュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合も学習・推定する。
【0115】
すなわち、図16に示すように、学習フェーズに用いられる「ラベル」は、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級(HS、H1、H2、H3、及びH4)の割合に加えて、シュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合も含んでいる。
【0116】
学習部13(図5参照)は、このようなラベルを教師データとして、画像から鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともにシュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0117】
そして、推論部14は、学習部13により構築された学習済みモデルを用いて、画像取得部11が取得した画像から鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともにシュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合を推定する。
【0118】
部分割合決定部15は、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともにシュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合を決定する。
【0119】
全体割合決定部16は、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともにシュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合を決定する。
【0120】
図17は、推論結果の出力例を示す図である。推定結果には、スクラップ積載車両TからスクラップヤードYへ荷下ろしされた鉄スクラップS全体に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともにシュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合が含まれている。
【0121】
なお、シュレッダー屑、新断、又は鋼ダライ粉についても、各等級の割合を学習・推定してもよい。
【0122】
以上に説明した第3実施形態には、上記第2実施形態で説明した重量の学習・推定をさらに組み合わせてもよい。すなわち、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級、シュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合及び重量を学習・推定してもよい。
【0123】
[第4実施形態]
以下、第4実施形態について説明する。上記実施形態と重複する構成又は手順については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0124】
スクラップ受入現場においてスクラップ積載車両TからスクラップヤードYへクレーン9により荷下ろしされる鉄スクラップSには、ヘビー屑の他に、銅若しくは鉛等の非鉄金属、密閉物、規定寸法・重量以上のもの、又はダンゴ状の鉄筋等の受入除外品が混在していることがある。
【0125】
そこで、第4実施形態では、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともに、受入除外品の有無も学習・推定する。
【0126】
図18は、第4実施形態に係る判定装置1の構成例を示すブロック図である。制御部10は、画像取得部11、学習部13、推論部14、部分割合決定部15、全体割合決定部16に加えて、警報判定部81を含んでいる。
【0127】
警報出力部8は、例えば回転灯及びサイレン等を含んでおり、判定装置1(警報判定部81)からの出力指令を受信すると、警報を出力する。
【0128】
図19に示すように、学習フェーズに用いられる「ラベル」は、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級(HS、H1、H2、H3、及びH4)の割合に加えて、受入除外品の有無も含んでいる。
【0129】
なお、これに限らず、「ラベル」には、銅若しくは鉛等の非鉄金属、密閉物、規定寸法・重量以上のもの、又はダンゴ状の鉄筋等の受入除外品の種類毎の項目が設けられることが好ましい。
【0130】
学習部13は、このようなラベルを教師データとして、画像から鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともに受入除外品の有無を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0131】
学習済みモデルに畳込みニューラルネットワーク(図9参照)を用いる場合、出力層の受入除外品の有無に係る要素は、例えば0以上1以下の値を出力するシグモイド関数を用いることが好ましい。
【0132】
そして、推論部14は、学習部13により構築された学習済みモデルを用いて、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げる毎に、画像取得部11が取得した画像から鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合とともに受入除外品の有無を推定する。推論部14は、受入除外品の有無に係る推定結果を警報判定部81に出力する。
【0133】
警報判定部81は、推論部14からの推定結果に基づいて受入除外品の有無を判定し、受入除外品が有ると判定した場合に、警報出力部8に出力指令を送信して、警報を出力させる。例えば、受入除外品の有無を表す値(例えば0以上1以下の値)が閾値以上である場合に、受入除外品が有ると判定される。
【0134】
なお、銅又は鉛等の非鉄金属については、鉄スクラップSとの外観上の差が少なく、非鉄金属の識別精度が十分でないおそれがあるため、例えばレーザー、X線、又はγ線を用いた金属成分分析器等を補助的に使用してもよい。
【0135】
以上に説明した第4実施形態には、上記第2実施形態で説明した重量の学習・推定をさらに組み合わせてもよい。すなわち、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級の割合及び重量を学習・推定するとともに、受入除外品の有無を学習・推定してもよい。
【0136】
また、第4実施形態には、上記第3実施形態で説明したシュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合の学習・推定をさらに組み合わせてもよい。すなわち、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級、シュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合を学習・推定するとともに、受入除外品の有無を学習・推定してもよい。
【0137】
また、第4実施形態には、上記第2実施形態で説明した重量の学習・推定、並びに上記第3実施形態で説明したシュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合の学習・推定の両方を組み合わせてもよい。すなわち、鉄スクラップSの集合に含まれるヘビー屑の各等級、シュレッダー屑、新断、鋼ダライ粉、及び水分・ダストの割合及び重量を学習・推定するとともに、受入除外品の有無を学習・推定してもよい。
【0138】
[第5実施形態]
以下、第5実施形態について説明する。上記実施形態と重複する構成又は手順については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0139】
[学習フェーズ]
図20は、本実施形態において学習用画像に加工される前の元画像Lの例を示す図である。元画像Lは、リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの集合をリフマグ撮影カメラ22(図4参照)等のカメラにより撮影した画像である。
【0140】
リフティングマグネット91に持ち上げられた鉄スクラップSの集合は、通常、リフティングマグネット91から下方に向かうに従って徐々に狭まる略逆円錐形状(側面視においては略逆三角形状)となる。
【0141】
なお、リフティングマグネット91は、吊り具の一例である。これに限らず、吊り具としてグラブバケット等が用いられてもよい。
【0142】
図21は、元画像Lに施される画像加工の例を示す図である。まず、図21(a)に示すように、元画像Lにおいてリフティングマグネット91の範囲Nが特定される。リフティングマグネット91の範囲Nは、例えばユーザによって判断され、指定される。
【0143】
次に、図21(b)に示すように、リフティングマグネット91の範囲Nを基準として確定される部分画像LOが元画像Lから切り出される。部分画像LOは、リフティングマグネット91の下方の範囲を少なくとも含むように画定される。
【0144】
具体的には、部分画像LOの左右端は、リフティングマグネット91の左右端よりもやや外側に位置している。部分画像LOの横幅は、リフティングマグネット91の横幅よりもやや広い程度(例えば1.1~1.5倍程度)とされる。
【0145】
また、部分画像LOの上端は、リフティングマグネット91の上端の位置とされる。部分画像LOの下端は、リフティングマグネット91の下端から所定の高さだけ下方に位置している。
【0146】
具体的には、部分画像LOの下端は、部分画像LOと同じ横幅の、吊り部91の下端と重なる底辺を持ち、下方に向かうに従って徐々に狭まる逆三角形(例えば、逆直角三角形など)の範囲NNの下端(頂点)の位置とされる。
【0147】
次に、図21(c)に示すように、部分画像LOのうち、逆三角形の範囲NNを表示領域、他の範囲NFを非表示領域とするマスク処理が施される。例えば、逆三角形の範囲NNの左右に隣接する範囲NFが黒等で塗りつぶされる、又は透過にされる。
【0148】
このように抽出・加工された部分画像LOが、学習フェーズにおける学習用画像として用いられる。これによれば、学習用画像において、着目する必要のない背景部分が除外されるため、学習効果の向上を図ることが可能となる。
【0149】
なお、学習フェーズにおいては、画像から鉄スクラップSの集合の等級割合を推定するための学習済みモデルの他に、画像中のリフティングマグネット91の範囲を推定するための学習済みモデル(以下、範囲推定用学習済みモデルという)がさらに構築される。
【0150】
例えば、範囲推定用学習済みモデルは、図21(a)に示した元画像Lを入力データとし、元画像Lで特定されたリフティングマグネット91の範囲Nを教師データとして、機械学習により構築される。
【0151】
範囲推定用学習済みモデルは、例えばYOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)又はFaster R-CNN等の物体検出モデルである。
【0152】
[推論フェーズ]
図22は、第5実施形態に係る判定装置1の構成例を示すブロック図である。制御部10は、画像取得部11、学習部13、推論部14、部分割合決定部15、全体割合決定部16、重量算出部17、及び重量補正部19に加えて、範囲推定部41及び加工部42を含んでいる。
【0153】
図23は、判定装置1において実現される、スクラップ等級判定方法としての推論フェーズの手順例を示すフロー図である。判定装置1の制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行する。
【0154】
まず、制御部10は、リフマグ撮影カメラ22により撮影された画像(以下、カメラ画像という)を取得すると(S23)、上述の範囲推定用学習済みモデルを用いて、カメラ画像中のリフティングマグネット91の範囲を推定する(S49、範囲推定部41としての処理)。
【0155】
次に、制御部10は、推定されたリフティングマグネット91の範囲に基づいて、カメラ画像に加工処理を施す(S50、加工部42としての処理)。加工処理は、上述の学習フェーズにおける加工処理と同様である(図21参照)。
【0156】
具体的には、まず、図24(a)に示すように、リフマグ撮影カメラ22から取得されたカメラ画像Cにおいてリフティングマグネット91の範囲Mが推定される。
【0157】
次に、図21(b)に示すように、リフティングマグネット91の範囲Mを基準として確定される部分画像COがカメラ画像Cから切り出される。部分画像COは、リフティングマグネット91の下方の範囲を少なくとも含むように画定される。
【0158】
具体的には、部分画像COの左右端は、リフティングマグネット91の左右端よりもやや外側に位置している。部分画像COの横幅は、リフティングマグネット91の横幅よりもやや広い程度(例えば1.1~1.5倍程度)とされる。
【0159】
また、部分画像COの上端は、リフティングマグネット91の上端の位置とされる。部分画像COの下端は、リフティングマグネット91の下端から所定の高さだけ下方に位置している。
【0160】
具体的には、部分画像COの下端は、部分画像COと同じ横幅の、吊り部91の下端と重なる底辺を持ち、下方に向かうに従って徐々に狭まる逆三角形(例えば、逆直角三角形など)の範囲MNの下端(頂点)の位置とされる。
【0161】
次に、図24(c)に示すように、部分画像COのうち、逆三角形の範囲MNを表示領域、他の範囲MFを非表示領域とするマスク処理が施される。例えば、逆三角形の範囲MNの左右に隣接する範囲MFが黒等で塗りつぶされる、又は透過にされる。
【0162】
その後、制御部10は、このように抽出・加工された部分画像COを入力データとし、等級割合及び重量を推定するための学習済みモデルを用いて、部分画像COに写った鉄スクラップSの集合に含まれる等級割合を推定する(図23のS31-S33)。
【0163】
これによれば、等級割合及び重量を推定する際に入力データとして用いられる画像において、学習用画像と同様に、着目する必要のない背景部分が除外されるため、等級割合の推定精度の向上を図ることが可能となる。
【0164】
なお、マスク処理において表示領域とする範囲MNの形状は、逆三角形に限られない。これは、推論フェーズのマスク処理に限らず、学習フェーズにおけるマスク処理においても同様である。
【0165】
例えば、範囲MNの形状は、図25(c),(d)に示すように下方に向かうに従って徐々に狭まる逆台形状であってもよいし、図25(e),(f)に示すように矩形状であってもよい。また、図25(b),(d),(f)に示すように、範囲MNの上方の吊り具91及びその両側も、非表示領域として黒等で塗りつぶしてもよい。
【0166】
[その他]
上記実施形態では、学習時の教師データとして使用される「ラベル」に重量が含まれ(図6参照)、推論時に鉄スクラップSの等級割合とともに重量を推定したが(図10参照)、それとは逆に、リフティングマグネット91が持ち上げた鉄スクラップSの重量を測定する重量測定部を設け、測定される重量を学習・推定の入力データとして用いてもよい。すなわち、学習時の入力データとして画像とともに重量を使用し、推論時に持ち上げられた鉄スクラップSの画像及び重量から等級割合を推定してもよい。
【0167】
さらに、リフティングマグネット91が鉄スクラップSを持ち上げたときの音声を測定する音声測定部を設け、測定される音声を学習・推定の入力データとして用いてもよい。すなわち、学習時の入力データとして画像とともに音声を使用し、推論時に持ち上げられた鉄スクラップSの画像及び音声から等級割合を推定してもよい。
【0168】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0169】
1 判定装置(学習装置、推定装置)、2,21,22 カメラ、3 重量センサ、6,7 出力部、10 制御部、11 画像取得部、12 重量測定部、13 学習部、14 推論部、15 部分割合決定部、16 全体割合決定部、17 重量算出部、18 重量積算部、19 重量補正部、20 データベース、8 警報出力部、9 クレーン、91 リフティングマグネット、92 ランウェイガーダ、93 クレーンガーダ、94 クラブトロリ、95 歩廊、96 検収室、97 建屋柱、98 フックブロック、100 スクラップ等級判定システム、A 検収員、Y スクラップヤード、S 鉄スクラップ、T スクラップ積載車両、P 車両進入エリア

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25