(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】密閉物検出システム、密閉物検出方法、推定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20231117BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/00 610B
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2019213326
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】多田 隆良
(72)【発明者】
【氏名】植村 欣司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼次 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 太郎
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-042499(JP,A)
【文献】特開2020-176909(JP,A)
【文献】黒崎泰充 他2名,都市ごみ処理プラントにおけるビジョン技術,日本ロボット学会誌 ,社団法人日本ロボット学会,1995年05月15日,第13巻 第4号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄スクラップの集合を撮影するカメラと、
学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成されたカメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定する推論部と、
前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれると推定された場合に報知する報知部と、
を備え
、
積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを持ち上げるクレーンをさらに備え、
前記推論部は、前記クレーンに持ち上げられた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、前記クレーンに持ち上げられる前の前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、及び前記クレーンから降ろされた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像のうちの2以上に基づいて、前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
密閉物検出システム。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、前記学習用画像中の前記密閉物の範囲をさらに教師データとして構築され、
前記推論部は、前記カメラ画像中の前記密閉物の範囲をさらに推定する、
請求項1に記載の密閉物検出システム。
【請求項3】
前記密閉物の範囲をマークした前記カメラ画像を表示する表示部をさらに備える、
請求項2に記載の密閉物検出システム。
【請求項4】
前記鉄スクラップの集合を撮影する、互いに異なる位置に設けられた複数の前記カメラを備え、
前記推論部は、複数の前記カメラによりそれぞれ生成された複数の前記カメラ画像から前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
請求項1ないし3の何れかに記載の密閉物検出システム。
【請求項5】
前記推論部は、前記クレーンに持ち上げられた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像から、前記クレーンに持ち上げられた前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
請求項
1ないし4の何れかに記載の密閉物検出システム。
【請求項6】
前記推論部は、前記クレーンに持ち上げられる前の前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像から、前記クレーンに持ち上げられる前の前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
請求項
1ないし5の何れかに記載の密閉物検出システム。
【請求項7】
前記推論部は、前記クレーンから降ろされた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像から、前記クレーンから降ろされた前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
請求項
1ないし
6の何れかに記載の密閉物検出システム。
【請求項8】
少なくとも一部の前記学習用画像は、鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれた画像である、
請求項1ないし
7の何れかに記載の密閉物検出システム。
【請求項9】
少なくとも一部の前記学習用画像は、前記密閉物が単体で含まれた画像である、
請求項1ないし
8の何れかに記載の密閉物検出システム。
【請求項10】
鉄スクラップの集合をカメラにより撮影し、
学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成されたカメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定し、
前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれると推定された場合に報知する、
密閉物検出方法
であって、
前記推定は、積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを持ち上げるクレーンに持ち上げられた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、前記クレーンに持ち上げられる前の前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、及び前記クレーンから降ろされた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像のうちの2以上に基づいて、前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
密閉物検出方法。
【請求項11】
鉄スクラップの集合を撮影するカメラにより生成されたカメラ画像を取得する取得部と、
学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定する推論部と、
前記推論部による推定結果を出力する出力部と、
を備え
、
前記推論部は、積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを持ち上げるクレーンに持ち上げられた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、前記クレーンに持ち上げられる前の前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、及び前記クレーンから降ろされた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像のうちの2以上に基づいて、前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
推定装置。
【請求項12】
鉄スクラップの集合を撮影するカメラにより生成されたカメラ画像を取得する取得部、
学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定する推論部、及び、
前記推論部による推定結果を出力する出力部、
としてコンピュータを機能させ
、
前記推論部は、積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップを持ち上げるクレーンに持ち上げられた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、前記クレーンに持ち上げられる前の前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像、及び前記クレーンから降ろされた前記鉄スクラップの集合を撮影した前記カメラ画像のうちの2以上に基づいて、前記鉄スクラップの集合に前記密閉物が含まれるか否か推定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉物検出システム、密閉物検出方法、推定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スクラップ加工会社では、クレーンにより鉄スクラップをスクラップヤードから吊り上げ、トラック又は船に積込む。また、電炉メーカーでは、クレーンにより鉄スクラップをトラック又は船から吊り上げ、スクラップヤードに荷下ろしする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電炉メーカーで受入れられる鉄スクラップには、ボンベ、消火器、ジャッキ、ロール等の密閉物が混入していないことが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、鉄スクラップの集合に含まれる密閉物を検出することが容易な密閉物検出システム、密閉物検出方法、推定装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の密閉物検出システムは、鉄スクラップの集合を撮影するカメラと、学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成されたカメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定する推論部と、前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれると推定された場合に報知する報知部と、を備える。
【0007】
また、本発明の他の態様の密閉物検出方法は、鉄スクラップの集合をカメラにより撮影し、学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラにより生成されたカメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定し、前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれると推定された場合に報知する。
【0008】
また、本発明の他の態様の推定装置は、鉄スクラップの集合を撮影するカメラにより生成されたカメラ画像を取得する取得部と、学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定する推論部と、前記推論部による推定結果を出力する出力部と、を備える。
【0009】
また、本発明の他の態様のプログラムは、鉄スクラップの集合を撮影するカメラにより生成されたカメラ画像を取得する取得部、学習用画像中の密閉物の有無を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記カメラ画像から前記鉄スクラップの集合に密閉物が含まれるか否か推定する推論部、及び、前記推論部による推定結果を出力する出力部、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄スクラップの集合に含まれる密閉物を検出することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】スクラップ出荷/受入現場の例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る密閉物検出システムの構成例を示す図である。
【
図5】学習フェーズの手順例を示すフロー図である。
【
図6】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
【
図8】推論フェーズの別の手順例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
[システム概要]
図1は、実施形態に係る密閉物検出システム100が設置されるスクラップ出荷/受入現場の例を示す図である。
図2は、密閉物検出システム100の構成例を示すブロック図である。
【0014】
密閉物検出システム100は、スクラップ出荷/受入現場において鉄スクラップSに混入した密閉物Eを検出するためのシステムである。密閉物Eは、例えばボンベ、消火器、ジャッキ、ロール等である。
【0015】
以下では、密閉物検出システム100をスクラップ加工会社のスクラップ出荷現場に適用した例について説明する。スクラップ出荷現場では、クレーン9により鉄スクラップSがスクラップヤードYから持ち上げられ、トラックT又は船Bに積込まれる。
【0016】
スクラップヤードYには、種々の大きさの鉄スクラップSが混在している。鉄スクラップSは、例えばヘビー屑である。
【0017】
クレーン9は、リフティングマグネット91を備えており、クレーン運転室R内の運転者Aによって操作される。クレーン9は、リフティングマグネット91に代えて、グラブバケット等を備えてもよい。なお、クレーン9は、油圧ショベルであってもよい。
【0018】
スクラップ出荷現場には、1又は複数のカメラ2が設置されている。カメラ2は、スクラップヤードYに積み重なった鉄スクラップS、クレーン9により持ち上げられた鉄スクラップS、トラックT又は船Bに積込まれた鉄スクラップS等を撮影する。
【0019】
また、スクラップ出荷現場には、密閉物Eの検出を報知するための例えば回転灯及びサイレン等を含む報知部3が設置されている。また、クレーン運転室R内には、カメラ2により撮影された動画像を表示する表示部4が設置されている。
【0020】
スクラップ出荷現場に設置されたカメラ2、報知部3、及び表示部4は、密閉物検出システム100の一部である。
【0021】
なお、密閉物検出システム100は、電炉メーカーにおけるスクラップ受入現場に適用されてもよい。スクラップ受入現場では、クレーン9により鉄スクラップSがトラックT又は船Bから持ち上げられ、スクラップヤードYに荷下ろしされる。
【0022】
図2に示すように、密閉物検知システム100は、推定装置1、カメラ2、報知部3、表示部4、データベース5、及び学習装置6を備えている。これらの機器は、例えばLAN等の通信ネットワークを介して相互に通信可能である。また、推定装置1、データベース5、及び学習装置6は、クラウド環境内に設置してもよい。
【0023】
推定装置1は、制御部10を備えている。制御部10は、CPU、GPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータである。制御部10のCPU又はGPUは、ROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行する。
【0024】
制御部10は、取得部11、推論部12、及び出力部13を備えている。これらの機能部は、制御部10のCPU又はGPUがROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0025】
プログラムは、例えば光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0026】
学習装置6も、推定装置1と同様に制御部60を備えている。制御部60は、取得部61、学習部62、及び保存部63を備えている。なお、学習装置6は、1又は複数のサーバコンピュータで構成されてもよいし、クラウド環境内に設置されてもよい。
【0027】
推定装置1及び学習装置6は、データベース5にアクセス可能である。データベース5には、学習装置6により構築された学習済みモデル51が、推定装置1により読出し可能に保存されている。
【0028】
カメラ2は、鉄スクラップSの集合を撮影し、生成した画像を推定装置1に出力する。報知部3は、推定装置1からの指令に応じて密閉物Eの検出を報知する。表示部4は、推定装置1からの指令に応じて画像を表示する。
【0029】
図1に示すように、カメラ2の1つは、スクラップヤードYに積み重なった鉄スクラップSの集合を撮影するカメラ21(以下、「ヤード撮影カメラ21」という)である。ヤード撮影カメラ21は、スクラップヤードYを上方から下方に向かって撮影する。
【0030】
また、カメラ2の他の1つは、クレーン9により持ち上げられた鉄スクラップSの集合を撮影するカメラ22(以下、「クレーン撮影カメラ22」という)である。クレーン撮影カメラ22は、クレーン9により持ち上げられた鉄スクラップSをより多く撮影できるよう、クレーン9により持ち上げられた鉄スクラップSを側方から水平に又は下方から上方に向かって撮影することが好ましい。
【0031】
また、カメラ2のさらに他の1つは、トラックT又は船Bに積込まれた鉄スクラップSの集合を撮影するカメラ23(以下、「積込み撮影カメラ23」という)である。積込み撮影カメラ23は、トラックT又は船Bの荷台を上方から下方に向かって撮影する。
【0032】
ここで、ヤード撮影カメラ21により撮影されるクレーン9に持ち上げられる前の鉄スクラップSの集合と、クレーン撮影カメラ22により撮影されるクレーン9に持ち上げられた鉄スクラップSの集合と、積込み撮影カメラ23により撮影されるクレーン9から降ろされた鉄スクラップSの集合とは、ほぼ同じものである。すなわち、ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23は、ほぼ同じ鉄スクラップSの集合を互いに異なる態様で観察している。
【0033】
なお、密閉物検出システム100の実現には、少なくとも積込み撮影カメラ23を設けることが好ましい。推定精度の向上のために、ヤード撮影カメラ21及びクレーン撮影カメラ22の一方又は両方を組み合わせることが好ましい。
【0034】
[学習フェーズ]
図3は、学習フェーズに用いられるデータセットの例を示す図である。
図4は、データセットに含まれる学習用画像の例を示す図である。学習フェーズに用いられるデータセットは、学習用画像、ラベル、及び範囲を含んでいる。
【0035】
「ラベル」は、学習用画像L中の範囲Nに含まれる物体が密閉物Eであることを表す。具体的には、「ラベル」には、ボンベ、消火器、ジャッキ、ロール等の密閉物の種類が記載される。「範囲」は、学習用画像L中の密閉物Eを含む範囲Nを座標により表す。「ラベル」及び「範囲」は、例えばユーザによって判断され、付与される。
【0036】
図4(a)及び
図4(b)は、鉄スクラップSの集合に密閉物Eが含まれた学習用画像Lの例である。
【0037】
このうち、
図4(a)は、ヤード撮影カメラ21により撮影されたスクラップヤードYに積み重なった鉄スクラップSの集合、又は、積込み撮影カメラ23により撮影されたトラックT若しくは船Bに積込まれた鉄スクラップSの集合の学習用画像Lである。
図4(b)は、クレーン撮影カメラ22により撮影されたクレーン9により持ち上げられた鉄スクラップSの集合の学習用画像Lである。
【0038】
学習用画像Lは、スクラップ出荷現場に設置されたカメラ2で撮影された画像に限らず、他の場所において撮影された鉄スクラップSの集合の画像であってもよい。
【0039】
さらには、
図4(c)に示すような、鉄スクラップSを含まず、密閉物Eを単体で含む画像が、学習用画像Lとして用いられてもよい。
【0040】
図5は、学習装置6において実現される学習フェーズの手順例を示すフロー図である。学習装置6の制御部60は、同図に示す処理をプログラムに従って実行することにより、取得部61、学習部62、及び保存部63として機能する。
【0041】
まず、制御部60は、学習用画像、ラベル、及び範囲を含むデータセットを取得する(S11、
図3及び
図4参照)。データセットは、トレーニングデータ、検証データ、及びテストデータに分けられる(例えば、8:1:1)。
【0042】
次に、制御部60は、データセットからトレーニングデータを取得する(S12;取得部61としての処理)。
【0043】
次に、制御部60は、取得したトレーニングデータを用いて機械学習を実行する(S13;学習部62としての処理)。具体的には、制御部60は、学習用画像を入力データとし、ラベル及び範囲を教師データとして、カメラ画像から密閉物の有無及び範囲を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0044】
学習済みモデルは、例えばYOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)又はFaster R-CNN等の物体検出モデルである。
【0045】
次に、制御部60は、検証データにより学習済みモデルを検証し(S14)、正解率が上がるよう学習済みモデルを修正し(S15)、再びトレーニングデータにより機械学習を実行することを繰返す。このサイクルは、数百回程度繰り返される。
【0046】
次に、制御部60は、テストデータを取得し、取得したテストデータを用いて学習済みモデルを評価する(S16)。
【0047】
その後、制御部60は、評価が所定以上であった学習済みモデルをデータベース5に保存し(S17)、学習フェーズを終了する。
【0048】
[推論フェーズ]
図6は、推定装置1において実現される、実施形態に係る密閉物検出方法としての推論フェーズの手順例を示すフロー図である。推定装置1の制御部10は、同図に示す処理をプログラムに従って実行することにより、取得部11、推論部12、及び出力部13として機能する。
【0049】
まず、制御部10は、カメラ2からカメラ画像を取得する(S21;取得部11としての処理)。カメラ画像は、例えばカメラ2により所定のタイミングで撮影された静止画像である。これに限らず、カメラ画像は、例えばカメラ2により撮影された動画像に含まれる複数の静止画像(フレーム)から抽出される1つの静止画像であってもよい。
【0050】
具体的には、制御部10は、ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23(
図1参照)の1又は複数からカメラ画像を取得する毎に、同図に示す処理を実行する。
【0051】
ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23の1又は複数は、クレーン9により鉄スクラップSの集合がスクラップヤードYから持ち上げられ、搬送され、トラックT又は船Bに積込まれる1行程ごとに、少なくとも1つのカメラ画像を撮影し、制御部10に出力する。
【0052】
ヤード撮影カメラ21は、クレーン9によりスクラップヤードYから鉄スクラップSの集合が持ち上げられる前のタイミングで、スクラップヤードYで積み重なった鉄スクラップSの山の表層部分(すなわち、クレーン9に持ち上げられる前の鉄スクラップSの集合)を撮影する。
【0053】
クレーン撮影カメラ22は、鉄スクラップSの集合を持ち上げるクレーン9が所定の高さに到達したタイミングで、クレーン9に持ち上げられた鉄スクラップSの集合を撮影する。
【0054】
積込み撮影カメラ23は、クレーン9により鉄スクラップSの集合がトラックT又は船Bに荷下ろしされた後のタイミングで、トラックT又は船Bに積込まれた鉄スクラップSの山の表層部分(すなわち、クレーン9から降ろされた後の鉄スクラップSの集合)を撮影する。
【0055】
次に、制御部10は、学習フェーズで構築された学習済みモデルを用い、カメラ2から取得されたカメラ画像を入力データとして、カメラ画像に写った鉄スクラップSの集合における密閉物Eの有無及び範囲を推定する(S22;推論部12としての処理)。
【0056】
密閉物Eの有無の推定は、密閉物Eの確度を表す数値を算出することによって実現される。そして、密閉物Eの確度を表す数値が閾値を超えた場合に、密閉物Eが含まれると判定される。例えば、学習済みモデルの密閉物Eの有無を表す出力層にソフトマックス関数が用いられ、密閉物Eの確度が0~1の間の数値として出力される。
【0057】
鉄スクラップSの集合に密閉物Eが含まれると判定された場合(S23:YES)、制御部10は、報知部4(
図1及び2参照)を駆動して、密閉物Eの検知をアラームで報知する(S24;出力部13としての処理)。
【0058】
さらに、制御部10は、カメラ画像に推定された密閉物Eの範囲をマークし、密閉物Eの範囲がマークされたカメラ画像を表示部4(
図1及び2参照)に出力する(S25及びS26;出力部13としての処理)。
【0059】
図7は、表示部4の出力例を示す図である。表示部4に出力されるカメラ画像Cには、密閉物Eを囲む範囲Mがマークされている。また、密閉物Eを囲む範囲Mに隣接して、密閉物Eの確度を表す数値も付されている。
【0060】
同図では、クレーン撮影カメラ22により撮影されたカメラ画像Cを例示したが、ヤード撮影カメラ21及び積込み撮影カメラ23により撮影されたカメラ画像も同様に、密閉物Eを囲む範囲M及び密閉物Eの確度を表す数値が付される。
【0061】
以上に説明した実施形態によれば、学習済みモデルにより密閉物Eの有無を推定することで、鉄スクラップSの集合に含まれる密閉物Eを検出することが容易となる。また、密閉物Eの範囲を推定することで、鉄スクラップSの集合内の密閉物Eの位置を特定することが容易となる。
【0062】
また、実施形態によれば、クレーン運転室R内に設置された表示部4(
図1参照)に、密閉物Eの範囲Mがマークされたカメラ画像C(
図7参照)が表示されるので、クレーン9の運転者Aが密閉物Eの位置を特定することが容易となる。
【0063】
また、実施形態によれば、ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23(
図1参照)により、ほぼ同じ鉄スクラップSの集合を互いに異なる態様で撮影した複数のカメラ画像に基づいて密閉物Eの有無を推定するので、複数のカメラ2を用いる場合には密閉物Eの検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0064】
なお、ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23をそれぞれ複数台設けてもよい。特に、クレーン撮影カメラ22は1台だと片側しか見られないため、複数台にすることが有効である。
【0065】
[変形例]
図8は、推論フェーズの別の手順例を示すフロー図である。同図に示す処理は、クレーン9により鉄スクラップSの集合がスクラップヤードYから持ち上げられ、搬送され、トラックT又は船Bに積込まれる1行程ごとに実行される。
【0066】
まず、制御部10は、ヤード撮影カメラ21により撮影されたクレーン9に持ち上げられる前の鉄スクラップSの集合のカメラ画像を取得し(S31;取得部11としての処理)、カメラ画像に写った鉄スクラップSの集合における密閉物Eの有無及び範囲を推定する(S32;推論部12としての処理)。
【0067】
また、制御部10は、クレーン撮影カメラ22により撮影されたクレーン9に持ち上げられた鉄スクラップSの集合のカメラ画像を取得し(S34;取得部11としての処理)、カメラ画像に写った鉄スクラップSの集合における密閉物Eの有無及び範囲を推定する(S35;推論部12としての処理)。
【0068】
また、制御部10は、積込み撮影カメラ23により撮影されたクレーン9から荷下ろしされた後の鉄スクラップSの集合のカメラ画像を取得し(S37;取得部11としての処理)、カメラ画像に写った鉄スクラップSの集合における密閉物Eの有無及び範囲を推定する(S38;推論部12としての処理)。
【0069】
各推定の結果、密閉物Eの確度を表す数値が閾値以上であった場合(S33,S36,S39;YES)、制御部10は、上記実施形態と同様に、アラームによる報知とともに、密閉物Eの範囲をマークしたカメラ画像を出力する(S24~S26;出力部13としての処理)。
【0070】
一方、密閉物Eの確度を表す数値が閾値未満であった場合(S39;NO)、制御部10は、ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23により撮影された複数のカメラ画像のそれぞれの密閉物Eの確度の合計を算出し、合計が所定以上であるか否かを判定する。なお、ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23を複数台設けた場合には、閾値を適宜調整する。
【0071】
判定の結果、密閉物Eの確度の合計が所定以上であった場合(S40;YES)、制御部10は、上記実施形態と同様に、アラームによる報知とともに、密閉物Eの範囲をマークしたカメラ画像を出力する(S24~S26;出力部13としての処理)。
【0072】
一方、密閉物Eの確度の合計が所定未満であった場合(S40;NO)、制御部10は処理を終了する。
【0073】
これによれば、ヤード撮影カメラ21、クレーン撮影カメラ22、及び積込み撮影カメラ23により撮影された複数のカメラ画像のそれぞれでは密閉物E有りと推定されない場合であっても、密閉物Eの確度の合計に基づく判定を行うことによって、密閉物Eの検出漏れを抑制することが可能となる。
【0074】
密閉物Eの確度の合計は、密閉物Eの確度を単純に合算したものだけでなく、密閉物Eの確度に所定の重みを乗算した上で合算したものであってもよい。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0076】
1 推定装置、10 制御部、11 取得部、12 推論部、13 出力部、2(21-23) カメラ、3 報知部、4 表示部、5 データベース、51 学習済みモデル、6 学習装置、60 制御部、61 取得部、62 学習部、63 保存部、9 クレーン、91 リフティングマグネット、100 密閉物検知システム、Y スクラップヤード、T トラック、B 船、R クレーン運転室、A 運転者、S 鉄スクラップ、E 密閉物、L 学習用画像、N 範囲、C カメラ画像、M 範囲