(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】養生された建具用面材、建具用面材の養生方法、及び建具用面材の取付方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/70 20060101AFI20231117BHJP
E06B 3/82 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
E06B3/70 Z
E06B3/70 F
E06B3/82
(21)【出願番号】P 2019228168
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】深町 勝明
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-93344(JP,A)
【文献】実公昭58-26921(JP,Y2)
【文献】特開2010-163799(JP,A)
【文献】特開2018-118785(JP,A)
【文献】特開平11-81688(JP,A)
【文献】特開2004-359301(JP,A)
【文献】特開2003-175916(JP,A)
【文献】特開2018-52532(JP,A)
【文献】特開2006-310870(JP,A)
【文献】特開2019-147578(JP,A)
【文献】特開2002-029514(JP,A)
【文献】特開2005-220636(JP,A)
【文献】特開平8-158660(JP,A)
【文献】特開平11-13355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
A47B 1/00-97/08
E04G 21/24
E04G 21/30
B65B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品取付部が形成された建具用面材と、
該建具用面材を覆う養生フィルムと、を備え、
該養生フィルムには、前記部品取付部を囲むように貫通孔が形成され
、
前記建具用面材の周縁部に形成された小口面は、前記養生フィルムで覆われている養生された建具用面材。
【請求項2】
前記養生フィルムには、切込み線が形成されている請求項1に記載の養生された建具用面材。
【請求項3】
部品取付部が形成された建具用面材の両面に沿って熱収縮可能な養生フィルムを配置して、該養生フィルムを前記建具用面材の周縁部に沿って溶着して、前記養生フィルムを熱収縮して、前記建具用面材を養生する建具用面材の養生方法であって、
予め、前記養生フィルムには、前記部品取付部を囲むように貫通孔が形成されている建具用面材の養生方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の養生された建具用面材を対象物に取り付ける建具用面材の取付方法であって、
前記部品取付部に部品を取り付けて、前記養生された建具用面材を対象物に取り付けて、前記養生フィルムを剥がす建具用面材の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、養生された建具用面材、建具用面材の養生方法、及び建具用面材の取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、収納扉や室内ドア等の建具用面材は、運搬時や建築現場で施工時に損傷しないように、一部の施工者は、段ボールやビニール等を建具用面材の大きさに応じて切断し、養生テープ等で養生している。施工期間には様々な損傷リスクがあるため、建具用面材を養生することが好ましいが、多くの施工者は工数増加を嫌い、建具用面材が養生されない場合が多い。そこで、工場等で、熱収縮フィルムで建具用面材を覆うようにしたものが提案されている(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、建具用面材の幅方向の両側には錠やヒンジが取り付けられる加工があり、建具用面材の幅方向の両側ではこれらの加工を含むように建具面材の高さ方向の全域にわたって熱収縮フィルムで覆われておらず、建具用面材が露出している。このため、建具用面材の幅方向の両側は、運搬時や建築現場での施工時に損傷してしまう虞れがある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建築現場での施工性を向上させつつ、損傷が抑制されるように養生された建具用面材、建具用面材の養生方法、及び建具用面材の取付方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る養生された建具用面材は、部品取付部が形成された建具用面材と、該建具用面材を覆う養生フィルムと、を備え、該養生フィルムには、前記部品取付部を囲むように貫通孔が形成され、前記建具用面材の周縁部に形成された小口面は、前記養生フィルムで覆われている。
【0007】
本開示の一態様に係る建具用面材の養生方法は、部品取付部が形成された建具用面材の両面に沿って熱収縮可能な養生フィルムを配置して、該養生フィルムを前記建具用面材の周縁部に沿って溶着して、前記養生フィルムを熱収縮して、前記建具用面材を養生する建具用面材の養生方法であって、予め、前記養生フィルムには、前記部品取付部を囲むように貫通孔が形成されている。
【0008】
本開示の一態様に係る建具用面材の取付方法は、上記に記載の養生された建具用面材を対象物に取り付ける建具用面材の取付方法であって、前記部品取付部に部品を取り付けて、前記養生された建具用面材を対象物に取り付けて、前記養生フィルムを剥がす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る養生された建具用面材の斜視図である。
【
図2】養生されていない建具用面材の斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る建具用面材の養生方法を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係る建具用面材の養生方法の熱収縮前の状態を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る養生された建具用面材を対象物に取り付けた図である。
【
図6】一実施形態に係る養生された建具用面材を対象物に取り付けた図である。
【
図7】一実施形態の変形例1に係る養生された建具用面材の斜視図である。
【
図8】一実施形態の変形例2に係る養生された建具用面材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態に係る養生された建具用面材について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、養生された建具用面材(以下、単に「養生面材」と称することがある)100は、建具用面材(以下、単に「面材」と称することがある)1と、養生体2と、を備えている。本実施形態では、面材1として、玄関収納に設置される扉(玄関収納扉)を例に挙げて説明する。
【0011】
図2に示すように、面材1は、板状に形成されている。面材1の板面の一方の面を表面1aとし、面材1の板面の他方の面を裏面1bとする。面材1の周縁部に形成された、表面1aと裏面1bとを連結する面を小口面1cとする。
【0012】
面材1の長手方向を高さ方向と称することがある。面材1の短手方向を幅方向と称することがある。
【0013】
面材1の裏面1bには、丁番取付部(部品取付部)11及び把手第1取付部(部品取付部)12が形成されている。
【0014】
丁番取付部11は、面材1の幅方向の一方側の端部近傍に形成されている。丁番取付部11は、端部よりもわずかに幅方向の内側に、上下2箇所に形成されている。
【0015】
丁番取付部11は、それぞれ円形状をなす丁番第1穴部11a及び丁番第2穴部11bを有している。丁番第1穴部11aは、丁番第2穴部11bよりも大きな円形状をなしている。丁番第2穴部11bは、丁番第1穴部11aの上下に離間して配置されている。丁番取付部11には、建築現場等で丁番46が取り付けられる(
図5参照)。
【0016】
把手第1取付部12は、上下に離間して2箇所に形成されている。把手第1取付部12は、円形状をなす把手第1穴部12aを有している。把手第1取付部12には、建築現場等で把手47を固定するための螺子48がねじ込まれる(
図5参照)。
【0017】
面材1の表面1aには、把手第2取付部(部品取付部)13が形成されている。把手第2取付部13は、上下に離間して2箇所に形成されている。把手第1取付部12は、円形状をなす把手第2穴部13aを有している。把手第2穴部13aは、面材1の裏面1bに形成された把手第1穴部12aと連通している。把手第2取付部13には、建築現場等で把手47が取り付けられる(
図6参照)。
【0018】
図1に示すように、養生体2は、2枚の養生フィルム21,22を有している。養生フィルム21,22によって、面材1が全体的に覆われている。養生フィルム21,22によって、面材1の表面1a、裏面1b及び小口面1cは覆われている。
【0019】
養生フィルム21,22は、熱収縮可能なフィルムである。養生フィルム21,22は、熱収縮して、面材1に密着するように配置されている。
【0020】
養生フィルム21は、面材1の表面1aから小口面1cの厚さ方向の途中部分にまで配置されている。養生フィルム22は、面材1の裏面1bから小口面1cの厚さ方向の途中部分にまで配置されている。養生フィルム21,22の周縁部21c,22cどうしは、熱溶着によって接合されている。
【0021】
養生フィルム22には、丁番取付部11に対応する箇所に、丁番取付孔(貫通孔)26aが形成されている。養生フィルム22には、把手第1取付部12に対応する箇所に、把手第1取付孔(貫通孔)27aが形成されている。養生フィルム21には、把手第2取付部13に対応する箇所に、把手第2取付孔(貫通孔)28aが形成されている(
図6参照)。
【0022】
丁番取付孔26aは、養生フィルム22を貫通する貫通孔である。丁番取付孔26aは、丁番第1穴部11a及び丁番第2穴部11bを一体的に囲むように形成されている。丁番取付孔26aは、略円形状をなしている。丁番取付孔26aの形状は、略円形状に限られず適宜設定可能である。
【0023】
把手第1取付孔27aは、養生フィルム22を貫通する貫通孔である。把手第1取付孔27aは、把手第1穴部12aを囲むように形成されている。把手第1取付孔27aは、略円形状をなしている。把手第1取付孔27aの形状は、略円形状に限られず適宜設定可能である。
【0024】
図6に示すように、把手第2取付孔28aは、養生フィルム21を貫通する貫通孔である。把手第2取付孔28aは、把手第2穴部13a(
図2参照。以下同じ。)を囲むように形成されている。把手第2取付孔28aは、略円形状をなしている。把手第2取付孔28aの形状は、略円形状に限られず適宜設定可能である。
【0025】
図1に示すように、養生フィルム22には、切込み線31が形成されている。切込み線31は、上下方向に直線状に延びている。切込み線31は、養生フィルム22を貫通する点線をなしている。切込み線31は、養生フィルム21に形成されていてもよく、面材1の幅方向に延びていてもよい。
【0026】
次に、建具用面材1の養生方法について説明する。
図3に示すように、面材1には、丁番取付部11、把手第1取付部12及び把手第2取付部13(
図2参照。以下同じ。)が形成されている。
【0027】
養生フィルム21,22は、それぞれローラー41,42に巻き付けられている。巻き付けられた養生フィルム21,22は、不図示の搬送装置によって、面材1の表面1a及び裏面1bに沿って配置されるように搬送される。搬送される際に、不図示の切断装置によって、養生フィルム22には丁番取付孔26b及び把手第1取付孔27bが形成され、養生フィルム21には把手第2取付孔(不図示。以下同じ。)が形成されるとともに、養生フィルム22は面材1よりも少し大きい大きさに切断される。この段階での丁番取付孔26b、把手第1取付孔27b及び把手第2取付孔の大きさは、
図1に示す熱収縮後の丁番取付孔26a、把手第1取付孔27a及び把手第2取付孔28aよりも小さい。
【0028】
次に、
図4に示すように、不図示の溶着装置によって、養生フィルム21,22の周縁部21c,22cどうしを熱溶着する。
【0029】
次に、不図示の熱収縮装置によって、養生フィルム21,22を熱収縮する。これによって、
図1に示すように、養生フィルム21,22は高さ方向及び幅方向に収縮する。熱収縮前の丁番取付孔26b、把手第1取付孔27b及び把手第2取付孔は、それぞれ大きな丁番取付孔26a、把手第1取付孔27a及び把手第2取付孔28aとなる。丁番取付孔26aは、丁番取付部11の丁番第1穴部11a及び丁番第2穴部11bを一体的に囲む。把手第1取付孔27aは、把手第1取付部12の把手第1穴部12aを囲む。把手第2取付孔28aは、把手第2取付部13の把手第2穴部13aを囲む。
【0030】
次に、建具用面材1の取付方法について説明する。
建築現場には、
図1に示すように、面材1は、養生された状態(養生面材100)で納品される。
【0031】
図5に示すように、施工者は、面材1の丁番取付部11に丁番46を螺子等の固定具で取り付ける。
図5及び
図6に示すように、施工者は、面材1の把手第2取付部13(
図2参照。以下同じ。)に把手47を配置して、把手第1取付部12から螺子48をねじ込んで、把手47を取り付ける。
【0032】
養生面材100の丁番46を、玄関収納の側板(対象物)51に、螺子等の固定具で取り付ける。施工者または施主が、養生フィルム22の切込み線31から養生フィルム22を破り、養生フィルム21,22を剥がして完成する。
【0033】
このように構成された養生された建具用面材100によれば、面材1は養生フィルム21,22で覆われ、養生フィルム21,22には丁番取付孔26a、把手第1取付孔27a及び把手第2取付孔28aが形成されている。これによって、現場での養生作業が省略されるため、施工性を向上させることができる。
【0034】
養生体2を剥がす際には、切込み線31に沿って養生フィルム22を破り始めればよいため、養生体2を剥がしやすい。
【0035】
面材1の丁番取付部11、把手第1取付部12及び把手第2取付部13をそれぞれ囲む最小限の領域のみを露出するように、養生フィルム21,22には丁番取付孔26a、把手第1取付孔27a及び把手第2取付孔28aが形成されている。これによって、養生フィルム21,22が面材1を覆った状態で、丁番取付部11に丁番46を取り付けて、把手第1取付部12及び把手第2取付部13を利用して把手47を取り付けることができる。よって、丁番46及び把手47を取り付ける際に養生フィルム21,22を剥がす必要がなく、面材1の損傷を抑制することができる。
【0036】
<変形例1>
次に、上記に示す実施形態の変形例1に係る養生された建具用面材について、主に
図7を用いて説明する。以下の説明において既に説明したものと共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0037】
図7に示すように、面材1Aは、室内ドアであってもよい。面材1には、丁番取付部(部品取付部)11A及びハンドル取付部(部品取付部)14が形成されている。
【0038】
丁番取付部11Aは、面材1の小口面1cから内方に向かって凹むように形成されている。丁番取付部11Aは、上下2箇所に形成されている。
【0039】
ハンドル取付部14は、面材1の両面(
図1では、一方の面のみ示している)1a,1bに形成されている。ハンドル取付部14は、例えば複数の穴部を有している。
【0040】
養生フィルム21,22には、丁番取付部11Aを囲むように丁番取付孔(貫通孔)30aが形成されている。丁番取付孔30aは、養生フィルム21,22の周縁部21c,22cを挟んで養生フィルム21,22の両側にまたがって形成されている。養生フィルム21,22には、ハンドル取付部14を囲むようにハンドル取付孔(貫通孔)29aが形成されている。
【0041】
このように構成された養生された建具用面材100Aによれば、面材1Aは養生フィルム21,22で覆われ、養生フィルム21,22には丁番取付孔30a及びハンドル取付孔29aが形成されている。これによって、現場での養生作業が省略されるため、施工性を向上させることができる。
【0042】
面材1Aの丁番取付部11A及びハンドル取付部14をそれぞれ囲む最小限の領域のみを露出するように、養生フィルム21,22には丁番取付孔30a及びハンドル取付孔29aが形成されている。これによって、養生フィルム21,22が面材1Aを覆った状態で、丁番取付部11Aに丁番46Aを取り付けて、ハンドル取付部14にハンドル49を取り付けることができる。よって、丁番46A及びハンドル49を取り付ける際に養生フィルム21,22を剥がす必要がなく、面材1Aの損傷を抑制することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、上記の実施形態では、面材1を2枚の養生フィルム21,22で覆っているが、これに限られない。1枚の養生フィルムを面材1の一の辺で折り返して面材1を覆うようにしてもよい。
【0045】
図8に示すように、面材1の丁番取付部11及び把手第1取付部12に重なるように、養生フィルム22に切込み線32,33を入れてもよい。切込み線32は、丁番取付部11の丁番第1穴部11a及び丁番第2穴部11bの配列に沿って、上下方向に直線状に延びている。切込み線33は、把手第1穴部12aの配列に沿って、上下方向に延びている。このように構成された養生された建具用面材100Bによれば、建築現場で、養生フィルム22を切込み線32,33に沿って破って、養生フィルム22に丁番46及び把手47や螺子48を取り付けられるくらいの大きさの孔を開ければ、丁番46及び把手47を取り付けることができる。
【0046】
上記に示す実施形態では、部品取付部として、丁番取付部11,11A、把手第1取付部12、把手第2取付部13及びハンドル取付部14を例に挙げて説明したが、これに限られない。部品取付部は建具用面材に取り付けられる各種部品に対応し、引手、ラッチ、上吊り引戸の部品等が取り付けられるための加工であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…建具用面材,面材、1a…表面、1b…裏面、1c…小口面、2…養生体、11…丁番取付部(部品取付部)、12…把手第1取付部(部品取付部)、13…把手第2取付部(部品取付部)、21,22…養生フィルム、26a…丁番取付孔(貫通孔)、27a…把手第1取付孔(貫通孔)、28a…把手第2取付孔(貫通孔)、31…切込み線、51…側板(対象物)、100…養生された建具用面材,養生面材