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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20231117BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231117BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/01 451
B41J2/175 501
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020014590
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121467
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】岸田 雄太郎
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-054857(JP,A)
【文献】特開2006-213061(JP,A)
【文献】特開2012-232595(JP,A)
【文献】特開2015-168243(JP,A)
【文献】特開2009-137091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0111696(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるためのインク加温機構とを備え、
前記インク加温機構は、インクが通過するインク通過部が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、前記加温部本体に貼り付けられ前記加温部本体を加熱するヒータと、前記加温部本体に取り付けられ前記加温部本体の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの検知結果に基づいて前記ヒータを制御するヒータ制御部とを備え、
前記インク通過部は、インクが流れるインク流路およびインクが溜まるインク溜まりの少なくともいずれか一方によって構成され、
前記加温部本体には、前記ヒータが貼り付けられるヒータ貼付部と、前記温度センサが取り付けられるセンサ取付部とが形成され、
前記インク通過部に流れ込むインクの流れ方向をインク流れ方向とすると、
前記センサ取付部は、前記ヒータ貼付部の前記インク流れ方向における上流側に突出して設けられていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インク通過部に供給されるインクが収容されるとともに前記インクジェットヘッドに供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構を備え、
前記圧力調整機構の少なくとも一部は、前記加温部本体に収容され、
前記圧力調整機構の内部には、インクが流れる第2インク流路が形成され、
前記センサ取付部は、前記圧力調整機構の、前記第2インク流路が形成された部分の外郭表面と近接していることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記加温部本体には、前記圧力調整機構の一部が収容される圧力調整機構収容部が形成され、
前記センサ取付部は、前記圧力調整機構収容部の一部を構成していることを特徴とする請求項2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記圧力調整機構は、前記インク通過部の上側に配置され、
前記センサ取付部は、前記ヒータ貼付部の上側に配置されていることを特徴とする請求項2または3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記ヒータ制御部は、前記加温部本体の温度が所定の基準温度となるように前記温度センサの検知結果に基づいて前記ヒータを制御するとともに、前記インク通過部に流入するインクの影響による前記加温部本体の温度低下量を前記インクジェットヘッドからのインクの吐出が開始された後の前記温度センサの検知結果に基づいて算出し、算出した前記加温部本体の温度低下量に基づいて前記基準温度を更新することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インクジェットプリンタの外部温度を検知するための第2の温度センサを備え、
前記ヒータ制御部は、前記インクジェットヘッドからインクが吐出される前に、前記第2の温度センサの検知結果に基づいて前記基準温度を初期設定することを特徴とする請求項5記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるためのインク加温機構を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリントヘッドチップにインクを供給するためのインク供給装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインク供給装置は、プリントヘッドチップに供給されるインクが収容されるインク貯蔵部を備えている。インク貯蔵部は、扁平な直方体状に形成されており、インク貯蔵部の中には、インク収容空間が形成されている。また、特許文献1に記載のインク供給装置は、プリントヘッドチップに供給されるインクを加温するための予熱プレートおよび予熱ヒータを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のインク供給装置では、インク貯蔵部に、予熱プレートを経て流入するインクが収容されている。予熱ヒータおよび予熱プレートは、長方形の平板状に形成されている。予熱ヒータの外形と予熱プレートの外形とは同形状になっている。予熱ヒータは、予熱プレートとインク貯蔵部との間に配置されており、予熱プレートを通過するインクを加温するとともに、インク貯蔵部に収容されるインクを加温する。
【0004】
特許文献1に記載のインク供給装置では、予熱プレートの表面に、温度センサが取り付けられている。このインク供給装置では、使用されるインクの粘度に応じて適正な基準温度が予め設定されており、温度センサによって測定される温度と基準温度とが比較される。また、温度センサの測定温度が基準温度よりも低ければ、予熱ヒータに電力が供給されて予熱ヒータが発熱し、温度センサの測定温度が基準温度よりも高ければ、予熱ヒータへの電力の供給が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-213061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のインク供給装置では、予熱ヒータの外形と同形状の外形を有する予熱プレートの表面に温度センサが取り付けられている。そのため、このインク供給装置では、予熱ヒータの熱が予熱プレートを介して温度センサに直接的に伝わりやすくなり、温度センサの検知結果に予熱ヒータが及ぼす影響が大きくなるおそれがある。温度センサの検知結果に予熱ヒータが及ぼす影響が大きくなると、予熱プレートを通過するインクの温度を温度センサで適切に検知することが困難になり、その結果、温度センサの検知結果に基づいてインクを適温に加温できなくなるおそれがある。また、インクを適温に加温できなくなると、プリントヘッドチップに供給されるインクの粘度のばらつきが大きくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるためのインク加温機構を備えるインクジェットプリンタにおいて、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの粘度のばらつきを抑制することが可能なインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるためのインク加温機構とを備え、インク加温機構は、インクが通過するインク通過部が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、加温部本体に貼り付けられ加温部本体を加熱するヒータと、加温部本体に取り付けられ加温部本体の温度を検知する温度センサと、温度センサの検知結果に基づいてヒータを制御するヒータ制御部とを備え、インク通過部は、インクが流れるインク流路およびインクが溜まるインク溜まりの少なくともいずれか一方によって構成され、加温部本体には、ヒータが貼り付けられるヒータ貼付部と、温度センサが取り付けられるセンサ取付部とが形成され、インク通過部に流れ込むインクの流れ方向をインク流れ方向とすると、センサ取付部は、ヒータ貼付部のインク流れ方向における上流側に突出して設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のインクジェットプリンタでは、インク通過部が内部に形成される加温部本体に、ヒータが貼り付けられるヒータ貼付部と、温度センサが取り付けられるセンサ取付部とが形成されており、インク通過部に流れ込むインクの流れ方向をインク流れ方向とすると、センサ取付部は、ヒータ貼付部のインク流れ方向における上流側に突出して設けられている。すなわち、本発明では、ヒータ貼付部のインク流れ方向における上流側に突出したセンサ取付部に温度センサが取り付けられている。
【0010】
そのため、本発明では、ヒータの熱が温度センサに直接的に伝わりにくくなり、温度センサの検知結果にヒータが及ぼす影響を低減することが可能になる。したがって、本発明では、インク通過路を通過するインクの温度を、加温部本体を介して温度センサによって適切に検知することが可能になり、その結果、温度センサの適切な検知結果に基づいて、インクジェットヘッドに供給されるインクの温度のばらつきが抑制されるようにヒータを適切に制御することが可能になる。そのため、本発明では、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの粘度のばらつきを抑制することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、ヒータ貼付部のインク流れ方向における上流側に突出したセンサ取付部に温度センサが取り付けられているため、ヒータで温められる前のインクの温度が温度センサの検知結果に反映されやすくなる。したがって、本発明では、温度センサの検知結果に基づいて、インクジェットプリンタの外部温度(環境温度)を反映したヒータの制御が可能になる。たとえば、インクジェットプリンタの外部温度が低くて、ヒータで温められる前のインクの温度が低い場合には、温度センサで検知される温度が低くなりやすいため、温度センサの検知結果に基づいて、ヒータの加熱温度を高くすることが可能になる。また、インクジェットプリンタの外部温度が高くて、ヒータで温められる前のインクの温度が高い場合には、温度センサで検知される温度が高くなりやすいため、温度センサの検知結果に基づいて、ヒータの加熱温度を低くすることが可能になる。その結果、本発明では、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの粘度のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0012】
さらに、本発明では、センサ取付部が、ヒータ貼付部のインク流れ方向における上流側に突出して設けられているため、たとえば、ヒータ貼付部に貼り付けられるヒータの一部を切り欠くとともに、ヒータの切り欠かれた部分に温度センサを取り付ける必要がない。したがって、本発明では、ヒータ貼付部の全体にヒータを貼り付けることが可能になり、その結果、ヒータによって加温部本体を効率的に加熱することが可能になる。
【0013】
本発明において、インクジェットプリンタは、インク通過部に供給されるインクが収容されるとともにインクジェットヘッドに供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構を備え、圧力調整機構の少なくとも一部は、加温部本体に収容され、圧力調整機構の内部には、インクが流れる第2インク流路が形成され、センサ取付部は、圧力調整機構の、第2インク流路が形成された部分の外郭表面と近接していることが好ましい。このように構成すると、ヒータで温められる前のインクの温度が温度センサの検知結果により反映されやすくなる。したがって、温度センサの検知結果に基づいて、インクジェットプリンタの外部温度をより反映したヒータの制御が可能になる。その結果、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの粘度のばらつきをより効果的に抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、加温部本体には、圧力調整機構の一部が収容される圧力調整機構収容部が形成され、センサ取付部は、圧力調整機構収容部の一部を構成していることが好ましい。このように構成すると、圧力調整機構の一部が収容される圧力調整機構収容部を利用して、加温部本体に温度センサを取り付けることが可能になる。したがって、加温部本体にセンサ取付部が形成されていても、加温部本体の構成を簡素化することが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、圧力調整機構は、インク通過部の上側に配置され、センサ取付部は、ヒータ貼付部の上側に配置されている。
【0016】
本発明において、ヒータ制御部は、加温部本体の温度が所定の基準温度となるように温度センサの検知結果に基づいてヒータを制御するとともに、インク通過部に流入するインクの影響による加温部本体の温度低下量をインクジェットヘッドからのインクの吐出が開始された後の温度センサの検知結果に基づいて算出し、算出した加温部本体の温度低下量に基づいて基準温度を更新することが好ましい。このように構成すると、インク通過部に流入するインクの影響による加温部本体の温度低下量が大きくて、インク通過部に流入するインクの単位時間当たりの流入量が多いと推定される場合に、基準温度を高い温度に更新することが可能になるとともに、インク通過部に流入するインクの影響による加温部本体の温度低下量が小さくて、インク通過部に流入するインクの単位時間当たりの流入量が少ないと推定される場合に、基準温度を低い温度に更新することが可能になる。
【0017】
したがって、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの単位時間当たりの供給量が多くなって、インク通過部を通過するインクの通過時間が短くなる場合に、高い温度に更新された基準温度と温度センサの検知結果に基づいてヒータを制御して、インクジェットヘッドに供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になるとともに、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの単位時間当たりの供給量が少なくなって、インク通過部を通過するインクの通過時間が長くなる場合に、低い温度に更新された基準温度と温度センサの検知結果に基づいてヒータを制御して、インクジェットヘッドに供給されるインクが所定温度以上に加熱されるのを防止することが可能になる。その結果、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの粘度のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0018】
本発明において、インクジェットプリンタは、インクジェットプリンタの外部温度を検知するための第2の温度センサを備え、ヒータ制御部は、インクジェットヘッドからインクが吐出される前に、第2の温度センサの検知結果に基づいて基準温度を初期設定することが好ましい。
【0019】
インクジェットプリンタの外部温度が高ければ、インク通過部に流入するインクの温度が高くなるため、インク通過部を通過するインクに加えられる熱量が少なくても、インクジェットヘッドに供給されるインクを所定温度まで加温することは可能である一方で、インクジェットプリンタの外部温度が低ければ、インク通過部に流入するインクの温度が低くなるため、インク通過部を通過するインクに加えられる熱量が多くないと、インクジェットヘッドに供給されるインクを所定温度まで加温することが困難になるが、このように構成すると、インクジェットプリンタの外部温度が高い場合に、第2の温度センサの検知結果に基づいて基準温度を低い温度に初期設定することが可能になるとともに、インクジェットプリンタの外部温度が低い場合に、第2の温度センサの検知結果に基づいて基準温度を高い温度に初期設定することが可能になる。
【0020】
したがって、インクジェットプリンタの外部温度が高い場合には、低い温度に初期設定された基準温度と温度センサの検知結果に基づいてヒータを制御して、インクジェットヘッドに供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になるとともに、インクジェットプリンタの外部温度が低い場合には、高い温度に初期設定された基準温度と温度センサの検知結果に基づいてヒータを制御して、インクジェットヘッドに供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になる。そのため、インクジェットプリンタの外部温度にかかわらず、インクジェットヘッドに供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になり、その結果、インクジェットプリンタの外部温度にかかわらず、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの粘度のばらつきを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明では、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるためのインク加温機構を備えるインクジェットプリンタにおいて、インク加温機構からインクジェットヘッドに供給されるインクの粘度のばらつきを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの斜視図である。
図2図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図3図2に示すキャリッジの周辺部分の一部の斜視図である。
図4図3に示す圧力調整機構の断面図である。
図5図3に示す加温部本体の構成を説明するための断面図である。
図6図3に示すインク加温機構の構成を説明するためのブロック図である。
図7図3に示すヒータの制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図8図3に示すヒータの制御方法の一例を説明するためのグラフである。
図9図6に示すヒータ制御部に記憶されるテーブルの一例を説明するための図である。
図10】本発明の他の実施の形態にかかるヒータの制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(インクジェットプリンタの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の斜視図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。図3は、図2に示すキャリッジ4の周辺部分の一部の斜視図である。図4は、図3に示す圧力調整機構11の断面図である。
【0025】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、印刷媒体2に印刷を行う。印刷媒体2は、たとえば、印刷用紙、布帛または樹脂製のフィルム等である。プリンタ1は、印刷媒体2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)と、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を主走査方向(図1等のY方向)へ移動させるキャリッジ駆動機構5と、キャリッジ4を主走査方向へ案内するためのガイドレール6と、ヘッド3に供給されるインクが収容される複数のインクタンク7とを備えている。以下の説明では、主走査方向(Y方向)を「左右方向」とし、上下方向(図1等のZ方向)と主走査方向とに直交する副走査方向(図1等のX方向)を「前後方向」とする。
【0026】
ヘッド3は、紫外線硬化型のインク(UVインク)を吐出する。また、ヘッド3は、下側に向かってインクを吐出する。ヘッド3の下面には、複数のノズルが配列されるノズル面(インク吐出面)が形成されている。ヘッド3は、ノズルからインクを吐出させる圧電素子(ピエゾ素子)を備えている。ヘッド3の下側には、プラテン8が配置されている。プラテン8には、印刷時の印刷媒体2が載置される。プラテン8に載置される印刷媒体2は、図示を省略する媒体送り機構によって前後方向に搬送される。キャリッジ駆動機構5は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ4に固定されるベルトと、プーリを回転させるモータとを備えている。
【0027】
また、プリンタ1は、プリンタ1の外部温度Taを検知するための温度センサ10(以下、「外部温度センサ10」とする。)と、ヘッド3に供給されるインクの圧力を調整するための圧力調整機構11と、ヘッド3に供給されるインクを温めるためのインク加温機構12とを備えている。外部温度センサ10は、たとえば、サーミスタである。外部温度センサ10は、プリンタ1の操作パネル13上に配置されている(図1参照)。本形態の外部温度センサ10は、第2の温度センサである。
【0028】
インク加温機構12は、ヘッド3へのインクの供給経路において圧力調整機構11とヘッド3との間に配置されている。インク加温機構12には、圧力調整機構11からインクが供給される。圧力調整機構11には、インク加温機構12に供給されるインクが収容されている。具体的には、後述の加温部本体21の内部に形成されるインク流路21aに供給されるインクが圧力調整機構11に収容されている。ヘッド3は、インク加温機構12から供給されたインクを吐出する。圧力調整機構11およびインク加温機構12は、キャリッジ4に搭載されている。
【0029】
圧力調整機構11には、インクタンク7からインクが供給される。具体的には、インクタンク7は、圧力調整機構11よりも上側に配置されており、水頭差によってインクタンク7から圧力調整機構11にインクが供給される。圧力調整機構11は、機械式の圧力ダンパであり、圧力調整用のポンプを用いることなく、ヘッド3に供給されるインクの圧力を機械的に調整する。また、圧力調整機構11は、ヘッド3の内部に形成されるインク室が負圧となるようにヘッド3に供給されるインクの圧力を調整する。
【0030】
圧力調整機構11の内部には、インクが流れるインク流路15が形成されている。具体的には、圧力調整機構11の本体フレーム14の内部にインク流路15が形成されている。本形態では、2本のインク流路15が本体フレーム14の内部に形成されている。インク流路15の一部は、ヘッド3の内部圧力を負圧にするための圧力室16となっている。本形態のインク流路15は、第2インク流路である。
【0031】
圧力調整機構11は、圧力室16の壁面の一部を構成する薄膜状の可撓膜17を備えている。また、圧力調整機構11は、圧力室16へのインクの流入を止める閉位置に向かって付勢される封止弁18、および、封止弁18から離れる方向に付勢される開放弁19等を備えている。開放弁19は、可撓膜17に固定されており、可撓膜17は、圧力室16の容積が大きくなる方向に付勢されている。開放弁19は、圧力室16の中のインクの量が減少すると、圧力室16へのインクの流入が可能となる開位置に向かって封止弁18を押す。封止弁18が開位置に移動すると、圧力室16にインクが流入する。
【0032】
圧力調整機構11は、左右方向の厚さが薄い扁平な直方体状に形成されている。圧力調整機構11は、インク加温機構12に取り付けられている。本形態では、1個のインク加温機構12に2個の圧力調整機構11が取り付けられている。1個のインク加温機構12に取り付けられる2個の圧力調整機構11は、左右方向で隣り合うように配置されている。
【0033】
(インク加温機構の構成)
図5は、図3に示す加温部本体21の構成を説明するための断面図である。図6は、図3に示すインク加温機構12の構成を説明するためのブロック図である。
【0034】
インク加温機構12は、ヘッド3の外部に配置されるヘッド外インク加温装置である。インク加温機構12は、ヘッド3に供給されるインクを温めることで、ヘッド3に供給されるインクの粘度を低下させる機能を果たしている。インク加温機構12は、ヘッド3の上側に配置されている。インク加温機構12は、ブロック状に形成される加温部本体21と、加温部本体21に貼り付けられるヒータ22と、加温部本体21に取り付けられる温度センサ23(以下、「加温部温度センサ23」とする。)とを備えている。
【0035】
ヒータ22は、シート状に形成されたシートヒータである。また、ヒータ22は、導電パターンと、導電パターンを両側から挟む絶縁シート(絶縁フィルム)とを備えるプリントヒータである。本形態では、1枚のヒータ22が加温部本体21に貼り付けられている。ヒータ22は、加温部本体21を加熱する。加温部温度センサ23は、たとえば、サーミスタである。加温部温度センサ23は、加温部本体21の温度を検知する。また、インク加温機構12は、加温部温度センサ23の検知結果に基づいてヒータ22を制御するヒータ制御部24を備えている。ヒータ制御部24には、ヒータ22および加温部温度センサ23が電気的に接続されている。また、ヒータ制御部24には、外部温度センサ10が電気的に接続されている。
【0036】
加温部本体21は、全体として略直方体状に形成されている。また、加温部本体21は、熱伝導率の高い金属材料で形成されている。たとえば、加温部本体21は、アルミニウム合金で形成されている。加温部本体21の内部には、インクが流れるインク流路21aが形成されている。具体的には、インク加温機構12に取り付けられる2個の圧力調整機構11のうちの一方の圧力調整機構11からヘッド3に供給されるインクが流れる2本のインク流路21aと、他方の圧力調整機構11からヘッド3に供給されるインクが流れる2本のインク流路21aとの合計4本のインク流路21aが加温部本体21の内部に形成されている。本形態では、インク流路21aによってインクが通過するインク通過部が構成されている。
【0037】
インク流路21aは、加温部本体21の下端部を構成する流路形成部21bに形成されている。流路形成部21bの上側は、圧力調整機構11の下側部分が収容される収容部21cとなっている。すなわち、加温部本体21には、圧力調整機構11の一部が収容される収容部21cが形成されており、圧力調整機構11の一部は、加温部本体21に収容されている。本形態の収容部21cは、圧力調整機構収容部である。
【0038】
上述のように、流路形成部21bの上側が収容部21cとなっており、圧力調整機構11は、インク流路21aの上側に配置されている。収容部21cは、上面が開口する箱状に形成されている。流路形成部21bの上端には、圧力調整機構11からインク流路21aに向かってインクが流入するインク流入部21dが形成されている。流路形成部21bの下端には、インク流路21aからヘッド3に向かってインクが流出するインク流出部21eが形成されている。
【0039】
ヒータ22は、加温部本体21の左右の側面および前面に貼り付けられている。ヒータ22の上端は、収容部21cの上端(すなわち、加温部本体21の上端)よりも下側に配置されている。また、ヒータ22の上端は、収容部21cの下端(すなわち、流路形成部21bの上端)よりも上側に配置されている。ヒータ22の下端は、収容部21cの下端(すなわち、流路形成部21bの上端)よりも下側に配置されている。また、ヒータ22の下端は、流路形成部21bの下端(すなわち、加温部本体21の下端)よりも上側に配置されている。加温部本体21の、ヒータ22が貼り付けられる部分は、ヒータ貼付部21fとなっている。すなわち、加温部本体21には、ヒータ22が貼り付けられるヒータ貼付部21fが形成されている。
【0040】
加温部温度センサ23は、加温部本体21の前面に取り付けられている。たとえば、加温部温度センサ23は、ネジ(図示省略)によって加温部本体21の前面に固定されている。加温部温度センサ23は、ヒータ22の上側に配置されている。すなわち、加温部温度センサ23は、ヒータ貼付部21fよりも上側で加温部本体21に取り付けられている。加温部本体21の、加温部温度センサ23が取り付けられる部分は、センサ取付部21gとなっている。すなわち、加温部本体21には、加温部温度センサ23が取り付けられるセンサ取付部21gが形成されている。
【0041】
センサ取付部21gは、ヒータ貼付部21fから上側に突出している。すなわち、加温部本体21の、ヒータ貼付部21fから上側に延設された部分がセンサ取付部21gとなっており、センサ取付部21gは、ヒータ貼付部21fの上側に配置されている。センサ取付部21gの下端は、ヒータ貼付部21fの上端に繋がっている。また、加温部温度センサ23は、収容部21cの前面の上端側部分に取り付けられている。すなわち、収容部21cの上端側部分はセンサ取付部21gとなっており、センサ取付部21gの前面に加温部温度センサ23が取り付けられている。センサ取付部21gは、収容部21cの一部を構成している。なお、加温部温度センサ23は、センサ取付部21gの左右の側面(すなわち、収容部21cの左右の側面の上端側部分)に取り付けられていても良い。
【0042】
また、センサ取付部21gは、上下方向において、圧力調整機構11の圧力室16と略同じ位置に配置されている。すなわち、センサ取付部21gは、圧力室16の横に配置されている。また、センサ取付部21gは、圧力調整機構11の、インク流路15が形成された部分の外郭表面と近接している。具体的には、センサ取付部21gは、本体フレーム14の、インク流路15が形成された部分の外郭表面と近接している。より具体的には、センサ取付部21gは、本体フレーム14の、インク流路15が形成された部分の外郭表面と接触している。なお、本体フレーム14の、インク流路15が形成された部分の外郭表面と、センサ取付部21gとの間にわずかな隙間が形成されていても良い。
【0043】
圧力調整機構11は、インク流路21aの上側に配置されており、インク流路21aには、下側に向かってインクが流れ込む。すなわち、本形態では、インク流路21aに流れ込むインクの流れ方向(下方向)をインク流れ方向とすると、センサ取付部21gは、ヒータ貼付部21fの、インク流れ方向における上流側(上側)に配置されている。すなわち、センサ取付部21gは、ヒータ貼付部21fのインク流れ方向における上流側(上側)に突出して設けられており、加温部温度センサ23は、ヒータ貼付部21fのインク流れ方向における上流側で加温部本体21に取り付けられている。
【0044】
(ヒータの制御方法)
図7は、図3に示すヒータ22の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。図8は、図3に示すヒータ22の制御方法の一例を説明するためのグラフである。図9は、図6に示すヒータ制御部24に記憶されるテーブルの一例を説明するための図である。
【0045】
ヒータ制御部24は、加温部本体21の温度(より具体的には、印刷媒体2の印刷時の加温部本体21の温度)が所定の基準温度Tbとなるように加温部温度センサ23の検知結果に基づいて(すなわち、加温部本体21の温度に基づいて)ヒータ22を制御する。また、ヒータ制御部24は、ヘッド3からインクが吐出される前に、外部温度センサ10の検知結果に基づいて(すなわち、プリンタ1の外部温度Taに基づいて)基準温度Tbを初期設定する。さらに、ヒータ制御部24は、インク流路21aに流入するインクの影響による加温部本体21の温度低下量を、ヘッド3からのインクの吐出が開始された後の加温部温度センサ23の検知結果に基づいて算出し、算出した加温部本体21の温度低下量に基づいて基準温度Tbを更新する。
【0046】
具体的には、ヒータ制御部24は、以下のように、ヒータ22を制御する。なお、以下では、ヒータ22の制御方法の一例として、ヘッド3に供給されるインクの最適温度が45℃程度である場合のヒータ22の制御方法を説明する。
【0047】
図7に示すように、たとえば、印刷媒体2の印刷指令がプリンタ1の制御部に入力されると、ヒータ制御部24は、外部温度センサ10によってプリンタ1の外部温度Taを検知する(ステップS1)。その後、ヒータ制御部24は、ステップS1での外部温度センサ10の検知結果に基づいて基準温度Tbを初期設定する(ステップS2)。より具体的には、ヒータ制御部24は、ステップS2において、ヘッド3に供給されるインクの最適温度とステップS1での外部温度センサ10の検知結果とに基づいて基準温度Tbを初期設定する。
【0048】
本形態では、ヒータ制御部24に、外部温度センサ10で検知可能な複数の外部温度Taと、外部温度センサ10で検知可能な複数の外部温度Taのそれぞれに予め対応付けられた基準温度Tbとがテーブル化されて記憶されている。たとえば、図9に示すテーブルがヒータ制御部24に記憶されており、ヒータ制御部24は、ステップS1で検知された外部温度Taに対応付けられる基準温度TbをステップS2において初期設定する。
【0049】
たとえば、ステップS1で検知したプリンタ1の外部温度Taが15℃である場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2において、基準温度Tbを52℃に初期設定する(図8(A)参照)。また、たとえば、ステップS1で検知したプリンタ1の外部温度Taが25℃である場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2において、基準温度Tbを48℃に初期設定し(図8(B)参照)、ステップS1で検知したプリンタ1の外部温度Taが35℃である場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2において、基準温度Tbを44℃に初期設定する(図8(C)参照)。
【0050】
その後、ヒータ制御部24は、ヒータ22に電力を供給して加温部本体21を加熱する(ステップS3)。ヒータ22によって加熱される加温部本体21の温度が、初期設定された基準温度Tbに到達すると(図8参照、ステップS4)、ヘッド3からのインクの吐出が開始される(ステップS5)。すなわち、印刷媒体2に向かってインクが吐出され始める。ヘッド3からのインクの吐出が開始されてインク加温機構12からヘッド3へのインクの供給が開始されると、インク流路21aの中のインクが流れて圧力調整機構11からインク流路21aにインクが流入するため、インク流路21aに流入するインクの影響によって加温部本体21の温度が低下することがある(図8参照)。
【0051】
ヘッド3からのインクの吐出が開始された後、所定時間が経過すると、ヒータ制御部24は、加温部温度センサ23によって加温部本体21の温度を検知する(ステップS6)。また、ヒータ制御部24は、ステップS6での加温部温度センサ23の検知結果に基づいて、加温部本体21の温度低下量を算出する(ステップS7)。すなわち、ヒータ制御部24は、ステップS7において、インク流路21aに流入するインクの影響による加温部本体21の温度低下量を加温部温度センサ23の検知結果に基づいて算出する。具体的には、ヒータ制御部24は、ステップS6で検知した加温部本体21の温度を基準温度Tbから引いた値を、インク吐出開始からステップS6までの経過時間で割った単位時間当たりの温度低下量をステップS7で算出する。
【0052】
その後、ヒータ制御部24は、ステップS7で算出した加温部本体21の温度低下量に基づいて基準温度Tbを更新する(ステップS8)。たとえば、ステップS7で算出した温度低下量が大きい場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2で設定した基準温度Tbよりも高い温度を基準温度Tbとする基準温度Tbの更新を行う(図8(A)~(C)の破線参照)。
【0053】
また、たとえば、ステップS1で検知したプリンタ1の外部温度Taが15℃または25℃であって、かつ、ステップS7で算出した温度低下量が小さい場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2で設定した基準温度Tbよりも低い温度を基準温度Tbとする基準温度Tbの更新を行い(図8(A)、(B)の実線参照)、ステップS1で検知したプリンタ1の外部温度Taが35℃であって、かつ、ステップS7で算出した温度低下量が小さい場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2で設定した基準温度Tbと同程度の温度を基準温度Tbとする基準温度Tbの更新を行う(図8(C)の実線参照)。
【0054】
さらに、たとえば、ステップS1で検知したプリンタ1の外部温度Taが15℃または25℃であって、かつ、ステップS7で算出した温度低下量が大きくも小さくもない場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2で設定した基準温度Tbと同程度の温度を基準温度Tbとする基準温度Tbの更新を行い(図8(A)、(B)の一点鎖線参照)、ステップS1で検知したプリンタ1の外部温度Taが35℃であって、かつ、ステップS7で算出した温度低下量が大きくも小さくもない場合には、ヒータ制御部24は、ステップS2で設定した基準温度Tbよりも若干高い温度を基準温度Tbとする基準温度Tbの更新を行う(図8(C)の一点鎖線参照)。
【0055】
その後、ヒータ制御部24は、印刷媒体2の印刷が終了するまで、ステップS8で更新した基準温度Tbに基づいてヒータ22を制御する(ステップS9、S10)。具体的には、ヒータ制御部24は、印刷媒体2の印刷が終了するまで、加温部温度センサ23で検知される温度が、ステップS8で更新された基準温度Tbとなるようにヒータ22を制御する。
【0056】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ヒータ22が貼り付けられるヒータ貼付部21fの上側に突出したセンサ取付部21gに加温部温度センサ23が取り付けられている。そのため、本形態では、ヒータ22の熱が加温部温度センサ23に直接的に伝わりにくくなり、加温部温度センサ23の検知結果にヒータ22が及ぼす影響を低減することが可能になる。したがって、本形態では、インク流路21aを通過するインクの温度を、加温部本体21を介して加温部温度センサ23によって適切に検知することが可能になり、その結果、加温部温度センサ23の適切な検知結果に基づいて、ヘッド3に供給されるインクの温度のばらつきが抑制されるようにヒータ22を適切に制御することが可能になる。そのため、本形態では、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの粘度のばらつきを抑制することが可能になる。
【0057】
また、本形態では、ヒータ貼付部21fのインク流れ方向における上流側に突出したセンサ取付部21gに加温部温度センサ23が取り付けられているため、ヒータ22で温められる前のインクの温度が加温部温度センサ23の検知結果に反映されやすくなる。したがって、本形態では、加温部温度センサ23の検知結果に基づいて、プリンタ1の外部温度Taを反映したヒータ22の制御が可能になる。その結果、本形態では、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの粘度のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0058】
特に本形態では、センサ取付部21gは、圧力調整機構11の、インク流路15が形成された部分の外郭表面と近接しているため、ヒータ22で温められる前のインクの温度が加温部温度センサ23の検知結果により反映されやすくなる。したがって、本形態では、加温部温度センサ23の検知結果に基づいて、プリンタ1の外部温度Taをより反映したヒータ22の制御が可能になり、その結果、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの粘度のばらつきをより効果的に抑制することが可能になる。
【0059】
本形態では、センサ取付部21gがヒータ貼付部21fの上側に突出している。そのため、本形態では、たとえば、ヒータ貼付部21fに貼り付けられるヒータ22の一部を切り欠くとともに、ヒータ22の切り欠かれた部分に加温部温度センサ23を取り付ける必要がない。したがって、本形態では、ヒータ貼付部21fの全体にヒータ22を貼り付けることが可能になり、その結果、ヒータ22によって加温部本体21を効率的に加熱することが可能になる。
【0060】
本形態では、センサ取付部21gは、圧力調整機構11の一部が収容される収容部21cの一部を構成している。そのため、本形態では、加温部本体21にセンサ取付部21gが形成されていても、加温部本体21の構成を簡素化することが可能になる。
【0061】
本形態では、ヒータ制御部24は、インク流路21aに流入するインクの影響による加温部本体21の温度低下量を加温部温度センサ23の検知結果に基づいて算出し、算出した加温部本体21の温度低下量に基づいて基準温度Tbを更新している。具体的には、ヒータ制御部24は、加温部本体21の温度低下量が大きくて、インク流路21aに流入するインクの単位時間当たりの流入量が多いと推定される場合には、初期設定された基準温度Tbを高い温度に更新し、加温部本体21の温度低下量が小さくて、インク流路21aに流入するインクの単位時間当たりの流入量が少ないと推定される場合に、初期設定された基準温度Tbを低い温度に更新したり、初期設定された基準温度Tbを同程度の温度に更新している。
【0062】
そのため、本形態では、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの単位時間当たりの供給量が多くなって、インク流路21aを通過するインクの通過時間が短くなる場合に、高い温度に更新された基準温度Tbと加温部温度センサ23の検知結果に基づいてヒータ22を制御して、ヘッド3に供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になるとともに、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの単位時間当たりの供給量が少なくなって、インク流路21aを通過するインクの通過時間が長くなる場合に、初期設定された基準温度Tbと同程度の温度または低い温度に更新された基準温度Tbと加温部温度センサ23の検知結果に基づいてヒータ22を制御して、ヘッド3に供給されるインクが所定温度以上に加熱されるのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの粘度のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0063】
本形態では、プリンタ1の外部温度Taが高くて、インク流路21aに流入するインクの温度が高ければ、インク流路21aを通過するインクに加えられる熱量が少なくても、ヘッド3に供給されるインクを所定温度まで加温することは可能である一方で、プリンタ1の外部温度Taが低くて、インク流路21aに流入するインクの温度が低ければ、インク流路21aを通過するインクに加えられる熱量が多くないと、ヘッド3に供給されるインクを所定温度まで加温することが困難になるが、ヒータ制御部24は、ヘッド3からインクが吐出される前に、外部温度センサ10の検知結果に基づいて基準温度Tbを初期設定している。具体的には、ヒータ制御部24は、プリンタ1の外部温度Taが高い場合に、外部温度センサ10の検知結果に基づいて基準温度Tbを低い温度に設定し、プリンタ1の外部温度Taが低い場合に、外部温度センサ10の検知結果に基づいて基準温度Tbを高い温度に設定している。
【0064】
そのため、本形態では、プリンタ1の外部温度Taが高い場合には、低い温度に初期設定された基準温度Tbと加温部温度センサ23の検知結果に基づいてヒータ22を制御して、ヘッド3に供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になるとともに、プリンタ1の外部温度Taが低い場合には、高い温度に初期設定された基準温度Tbと加温部温度センサ23の検知結果に基づいてヒータ22を制御して、ヘッド3に供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になる。したがって、本形態では、プリンタ1の外部温度Taにかかわらず、ヘッド3に供給されるインクを所定温度まで加温することが可能になり、その結果、プリンタ1の外部温度Taにかかわらず、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの粘度のばらつきを抑制することが可能になる。
【0065】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0066】
上述した形態において、ヒータ制御部24は、図10に示すように、ステップS8において基準温度Tbを更新した後、所定時間が経過するまで、ステップS8で更新された基準温度Tbに基づいてヒータ22を制御しても良い(ステップS9、S11)。たとえば、ヒータ制御部24は、ヘッド3による1スキャンの印刷動作が完了するまで、ステップS8で更新された基準温度Tbに基づいてヒータ22を制御しても良い。この場合には、たとえば、ステップS8において基準温度Tbを更新した後、所定時間が経過すると、ステップS10へ進み、印刷媒体2の印刷が終了していない場合には、ステップS6に戻る。
【0067】
ステップS10を経た後のステップS7では、ヒータ制御部24は、たとえば、今回のステップS6で検知した加温部本体21の温度を、前回のステップS8で更新した基準温度Tbから引いた値を所定の経過時間で割った単位時間当たりの温度低下量を算出する。この場合には、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの単位時間当たりの供給量が印刷媒体2の印刷中に変動しても、インク加温機構12からヘッド3に供給されるインクの粘度のばらつきを抑制することが可能になる。
【0068】
上述した形態において、加温部温度センサ23は、センサ取付部21gの内部(すなわち、収容部21cの上端側部分の内部)に取り付けられていても良い。また、上述した形態において、外部温度センサ10は、プリンタ1の本体フレームに取り付けられていても良いし、キャリッジ4に搭載されていても良い。また、上述した形態において、加温部温度センサ23によってプリンタ1の外部温度Taを適切に検知することができるのであれば、加温部温度センサ23によってプリンタ1の外部温度Taを検知しても良い。すなわち、プリンタ1の外部温度Taを検知する温度センサと、加温部本体21の温度を検知する温度センサとが共通の加温部温度センサ23であっても良い。
【0069】
上述した形態では、ヒータ制御部24は、外部温度センサ10で検知されるプリンタ1の外部温度Taに基づいて基準温度Tbの初期設定を行っているが、ヒータ制御部24は、ヘッド3に供給されるインクの仕様に応じて(具体的には、ヘッド3に供給されるインクの最適温度に応じて)基準温度Tbの初期設定を行っても良い。また、上述した形態において、ヒータ制御部24は、基準温度Tbを更新しなくても良い。
【0070】
上述した形態において、圧力調整機構11の全体が収容部21cに収容されていても良い。また、上述した形態において、本体フレーム14の、インク流路15が形成された部分の外郭表面と、センサ取付部21gとの間に大きな隙間が形成されていても良い。さらに、上述した形態において、ヒータ22は、シートヒータ以外のヒータであっても良い。また、上述した形態において、加温部本体21に形成されるインク流路21aの本数は、3本以下であっても良いし、5本以上であっても良い。
【0071】
上述した形態において、インク流路21aに代えて、加温部本体21の内部に、インクが溜まるインク溜まり(インク室)が形成されていても良い。この場合には、インク溜まりによって、インクが通過するインク通過部が構成されている。また、上述した形態において、インク流路21aに加えて、加温部本体21の内部にインク溜まりが形成されていても良い。この場合には、インク流路21aとインク溜まりとによって、インクが通過するインク通過部が構成されている。
【0072】
上述した形態において、プリンタ1は、圧力調整機構11に代えて、ヘッド3に供給されるインクが収容されるサブタンクを備えていても良い。また、上述した形態において、プリンタ1は、プラテン8に代えて、印刷媒体2が載置されるテーブルと、テーブルを前後方向に移動させるテーブル駆動機構とを備えていても良い。さらに、上述した形態において、プリンタ1は、三次元造形物を造形する3Dプリンタであっても良い。また、上述した形態において、ヘッド3が吐出するインクは、水系のインクであっても良いし、ソルベントインクであっても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
10 外部温度センサ(第2の温度センサ)
11 圧力調整機構
12 インク加温機構
15 インク流路(第2インク流路)
21 加温部本体
21a インク流路(インク通過部)
21c 収容部(圧力調整機構収容部)
21f ヒータ貼付部
21g センサ取付部
22 ヒータ
23 加温部温度センサ(温度センサ)
24 ヒータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10