(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20231117BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20231117BHJP
【FI】
B65D47/34 100
B65D47/34 BRL
B05B11/00 101E
B05B11/00 101G
(21)【出願番号】P 2020015818
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-354803(JP,A)
【文献】特開2009-154900(JP,A)
【文献】特開2010-083493(JP,A)
【文献】特開2011-031929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、
前記ステムの上端部に装着される装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、
前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、
前記口部に装着した状態で、前記押下ヘッドを押下して前記ステムを下方に移動させ前記ポンプを作動させることにより、前記内容液を前記ステム内を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、
前記ポンプは、前記ステムを上方付勢する、合成樹脂製の付勢部材を備え、
前記押下ヘッドは、前記装着筒部を径方向の外側から囲う外筒部を有し、
前記装着キャップは、前記外筒部の内周面に対向する外周面が形成された案内筒を有し、
前記外筒部の前記内周面、および前記案内筒の前記外周面の一方には、他方に向けて突出する被ガイド突起が設けられ、
前記外筒部の前記内周面、および前記案内筒の前記外周面の前記他方には、
前記押下ヘッドが待機位置に位置する状態で前記被ガイド突起が位置するとともに、前記ポンプの作動時に前記被ガイド突起の上下動を許容する作動凹部と、
前記作動凹部から周方向に
沿って螺旋状に延在し、前記押下ヘッドが前記待機位置よりも上方の上昇端位置に位置する状態で前記被ガイド突起が位置して前記被ガイド突起の下方移動を規制するガイド溝と、
が設けられている、
吐出器。
【請求項2】
前記ガイド溝には、前記押下ヘッドが前記上昇端位置にある状態で前記被ガイド突起の前記ガイド溝に沿った前記作動凹部の反対側に向けた移動を規制する規制部が設けられている、
請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記ガイド溝と前記作動凹部との接続部には、前記被ガイド突起が乗り越え可能な突部が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、ステムの上端部に装着された装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、ポンプを口部に装着する装着キャップと、を備え、口部に装着した状態で、押下ヘッドを押下してステムを下方に移動させポンプを作動させることにより、内容液をステム内を通してノズル孔から吐出する吐出器が知られている。
一般に、ステムを上方付勢する付勢部材は、金属材料で形成されるとともに、ポンプのシリンダ内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吐出器では、廃棄に際し、付勢部材をシリンダから取り出しにくく、金属材料からなる付勢部材と、合成樹脂材料からなるその他の部材と、を分別することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、廃棄時の分別を不要にすることができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出器は、内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、前記ステムの上端部に装着される装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、前記口部に装着した状態で、前記押下ヘッドを押下して前記ステムを下方に移動させ前記ポンプを作動させることにより、前記内容液を前記ステム内を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、前記ポンプは、前記ステムを上方付勢する、合成樹脂製の付勢部材を備え、前記押下ヘッドは、前記装着筒部を径方向の外側から囲う外筒部を有し、前記装着キャップは、前記外筒部の内周面に対向する外周面が形成された案内筒を有し、前記外筒部の前記内周面、および前記案内筒の前記外周面の一方には、他方に向けて突出する被ガイド突起が設けられ、前記外筒部の前記内周面、および前記案内筒の前記外周面の前記他方には、前記押下ヘッドが待機位置に位置する状態で前記被ガイド突起が位置するとともに、前記ポンプの作動時に前記被ガイド突起の上下動を許容する作動凹部と、前記作動凹部から周方向に延在し、前記押下ヘッドが前記待機位置よりも上方の上昇端位置に位置する状態で前記被ガイド突起が位置して前記被ガイド突起の下方移動を規制するガイド溝と、が設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、付勢部材が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器の廃棄に際し、付勢部材と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
押下ヘッドが待機位置よりも上方の上昇端位置に位置する状態で、被ガイド突起が周方向に延びるガイド溝に位置しているので、装着キャップに対する押下ヘッドの下方移動が規制されている。この状態から、被ガイド突起がガイド溝に沿って移動するように押下ヘッドを回転させて下降させることで、付勢部材が圧縮されるとともに、被ガイド突起がガイド溝に連なる作動凹部に入り込む。これにより、押下ヘッドが上昇端位置から待機位置まで下降し、被ガイド突起の上下動が許容されるので、押下ヘッドが付勢部材によって上方付勢され、かつ押下可能となり、ポンプを作動させることができる。
ここで、ガイド溝には、押下ヘッドが上昇端位置に位置する状態で被ガイド突起が位置するので、押下ヘッドを待機位置に位置させた状態で付勢部材を圧縮するとともに、押下ヘッドを上昇端位置に位置させた状態で押下ヘッドが待機位置に位置する状態よりも付勢部材の圧縮量を小さくすることができる。これにより、押下ヘッドが上昇端位置に位置する状態で、付勢部材を自然長の状態にすることが可能となる。よって、付勢部材が合成樹脂材料で形成されているので、付勢部材に上下方向の圧縮力を長時間加えると、付勢部材に圧縮変形の癖が付くおそれがあるが、押下ヘッドを上昇端位置に位置させ、付勢部材に上下方向の圧縮力を加えずに流通および保管等を行うことによって、この期間に付勢部材に圧縮変形の癖が付くこと(塑性変形)がなく、吐出器の使用に際して、付勢部材が弾性変形しにくくなっているのを防ぐことができる。
また、ユーザーの使用時においても、押下ヘッドを待機位置から上昇端位置に戻すことが可能であり、例えば吐出器の使用後の保管時に押下ヘッドを上昇端位置に戻す操作を行えば、付勢部材にかかる負荷を低減し、長期にわたって付勢部材による良好な付勢力を保つことができる。
【0008】
上記の吐出器において、前記ガイド溝には、前記押下ヘッドが前記上昇端位置にある状態で前記被ガイド突起の前記ガイド溝に沿った前記作動凹部の反対側に向けた移動を規制する規制部が設けられていてもよい。
【0009】
本発明によれば、被ガイド突起がガイド溝を抜けて、被ガイド突起とガイド溝との係合が解除されることを抑制できる。これにより、装着キャップに対する押下ヘッドの上方移動が規制された状態を維持でき、流通および保管の期間に押下ヘッドが脱落することを抑制できる。
【0010】
上記の吐出器において、前記ガイド溝と前記作動凹部との接続部には、前記被ガイド突起が乗り越え可能な突部が設けられていてもよい。
【0011】
本発明によれば、押下ヘッドを回転させて被ガイド突起を作動凹部とガイド溝との間で双方向に移動させる際に、被ガイド突起による突部の乗り越えに要する抵抗を押下ヘッドに付与することができる。したがって、待機位置に位置する押下ヘッドが上昇端位置に向けて不意に移動することを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃棄時の分別を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る吐出器であって、押下ヘッドが上昇端位置に位置した状態を示す縦半断面図である。
【
図2】実施形態に係る吐出器の要部を示す側面図である。
【
図3】実施形態に係る吐出器であって、押下ヘッドが待機位置に位置した状態を示す縦半断面図である。
【
図4】実施形態に係る吐出器であって、押下ヘッドが待機位置から下降し始めた状態を示す縦半断面図である。
【
図5】実施形態に係る吐出器であって、押下ヘッドが最も下降した状態を示す縦半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る吐出器1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の吐出器1は、ステム21を有するポンプ2と、ステム21に装着された押下ヘッド5と、ポンプ2を内容液が収容された容器体Aの口部A1に装着する装着キャップ7と、を備えている。
吐出器1を構成する全ての部品は、合成樹脂材料により形成されている。
【0015】
容器体Aにおける横断面の中央を通る中心線を容器軸Oといい、容器軸Oに沿って押下ヘッド5側を上側、装着キャップ7側を下側という。また、容器軸Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向から見て、容器軸Oに交差する方向を径方向、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。以下、特に断らない限り、押下ヘッド5が上昇端位置に位置している状態を説明する。
【0016】
容器体Aは、有底筒状に形成され、口部A1の外周面に雄ねじが形成されている。
装着キャップ7は、天壁部71および装着周壁部72を有する有頂筒状に形成され、容器軸Oと同軸に配設されている。天壁部71は環状に形成され、天壁部71の内側に、ステム21が上下動自在に挿入されている。装着周壁部72の内周面に、口部A1の雄ねじに螺合した雌ねじが形成されている。なお、装着周壁部72は、口部A1に、例えばアンダーカット嵌合等されてもよい。
【0017】
装着キャップ7は、天壁部71の内周縁から上方および下方の双方向に向けて延びる案内筒73を備える。案内筒73は、容器軸Oと同軸に配設されている。案内筒73の下端部には、径方向の内側に突出するとともに周方向に沿って延びた内フランジ74が形成されている。案内筒73のうち天壁部71よりも上方に位置する上部の外周面73aには、押下ヘッド5を案内するガイド構造75が設けられている。ガイド構造75については後述する。
【0018】
ポンプ2は、ステム21、ピストン22、シリンダ23、下部弁体24、および付勢部材25を備える。
シリンダ23は、容器軸Oと同軸に配設されている。シリンダ23には、下方に向けて延びる取付筒27が配設されている。取付筒27には、吸上筒28の上端部が嵌合されている。吸上筒28の下端開口部は、容器体Aの底部内に位置する。シリンダ23および取付筒27それぞれの内側は互いに連通している。シリンダ23および取付筒27は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0019】
シリンダ23の上端部には、径方向の外側に向けて突出するとともに周方向に延びるフランジ部29が形成されている。フランジ部29は、パッキン9を介して容器体Aの口部A1の上端開口縁に配置される。フランジ部29の上面には、装着キャップ7の天壁部71の下面が配置される。シリンダ23の下端部内に、下部弁体24が収容されている。
【0020】
下部弁体24は、嵌合筒31と、弁本体32と、を備える。嵌合筒31は、シリンダ23の下端部内に嵌合されている。弁本体32は板状に形成され、シリンダ23の内面における下端開口の周縁部に配置されている。弁本体32は、嵌合筒31の内周面に、弾性変形可能な連結片を介して連結されている。弁本体32は、連結片の弾性変形に応じて上下方向に弾性変位可能に配設されている。以上より、下部弁体24は、シリンダ23内の加圧時にシリンダ23の下端開口を閉塞した状態に保持し、シリンダ23内の減圧時にシリンダ23の下端開口を開放する逆止弁となっている。すなわち、下部弁体24は、シリンダ23内の加圧時に、シリンダ23内の内容液がシリンダ23の下端開口を通じて容器体Aに戻ることを阻止する一方、シリンダ23内の減圧時に、容器体A内の内容液をシリンダ23の下端開口を通じてシリンダ23内に流入させる。
【0021】
ステム21は、口部A1に上方付勢状態で下方移動可能に立設されている。ステム21は、有底筒状に形成され、容器軸Oと同軸に配設されている。ステム21の下部は、シリンダ23の上端開口部より下方に位置している。ステム21の上部は、シリンダ23の上端開口部より上方に位置している。ステム21の下部には、径方向に貫く連通孔34が形成されている。ステム21には、径方向の外側に突出した台座部35が形成されている。台座部35は、ステム21のうち、連通孔34より下方に位置する部分に形成されている。台座部35は、ピストン22を、ピストン22の下方から支持している。台座部35の上面には、上方に突出するとともに周方向に沿って全周にわたって延在するシール突起35aが設けられている。
【0022】
ピストン22は、外筒37、内筒38、およびフランジ39を備え、シリンダ23内に上下摺動可能に嵌合されている。外筒37は、円筒状に形成され、容器軸Oと同軸に配設されている。外筒37は、シリンダ23の内周面に摺接している。シリンダ23において、上昇端位置に位置する外筒37と径方向で対向する部分に、径方向に貫通する貫通孔が形成されている。フランジ39は、外筒37から径方向の内側に突出するとともに周方向の全周にわたって連続して延びている。内筒38は、円筒状に形成され、フランジ39の内周縁から上方および下方の双方向に延びている。内筒38の下端部は、ステム21の台座部35に上下方向で対向している。ピストン22は、内筒38の下端部をステム21の台座部35に上方から密に接触させることで、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、の連通を遮断している。より詳細に、ピストン22の内筒38がシール突起35aとステム21の外周面との間に上方から挿入されることにより、内筒38がシール突起35aの内周面に密接するとともに、内筒38の下端部が径方向の内側に押圧されてステム21の外周面に密接し、内筒38の下端部とステム21の台座部35との間がシールされる。ステム21がピストン22に対して下方移動し、台座部35がピストン22の内筒38から下方に離間したときに、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、が連通する。
【0023】
押下ヘッド5は、頂壁部51および外筒部52を有する有頂筒状に形成されている。押下ヘッド5は、容器軸Oと同軸に配設されている。押下ヘッド5は、頂壁部51から下方に突出した装着筒部53と、装着筒部53から径方向の外側に向けて延び、外筒部52を径方向に貫くノズル筒部54と、を有する。装着筒部53は、外筒部52によって径方向の外側から囲われ、容器軸Oと同軸に配設されている。装着筒部53の下端部は、外筒部52の下端部よりも下方に位置している。装着筒部53の内側には、ステム21の上端部が装着されている。ノズル筒部54の先端には、径方向に開口するノズル孔54aが形成されている。ノズル筒部54の内部は、装着筒部53の内部に連通している。
【0024】
装着筒部53は、装着キャップ7における案内筒73の内側に上下動自在に挿入されている。装着筒部53の下端開口縁は、ピストン22のフランジ39と上下方向で対向している。装着筒部53の内周面のうち、下端部は他の部分より拡径された拡径部53aとなっている。拡径部53aは、ステム21の外周面に対して隙間を設けている。拡径部53aとステム21の外周面との隙間には、ピストン22の内筒38の上部が下方から挿入されている。拡径部53aには、ピストン22の内筒38の外周面が密に接触している。
【0025】
外筒部52は、頂壁部51と一体的に成形された外筒部本体56と、外筒部本体56の下端部内に嵌合されたリング体57と、を備える。リング体57は、外筒部本体56の下端部の内側に嵌入された周壁部57aと、周壁部57aの下端部から径方向外側に突出するとともに周方向全周にわたって延び、外筒部本体56の下端縁に下方から当接する外フランジ57bと、を備える。リング体57の内周面は、外筒部本体56の内周面よりも小径になっている。リング体57の内周面は、案内筒73の外周面に径方向で対向する。なお、外筒部は、全体として一体的に成形されていてもよい。
【0026】
外筒部本体56の下端部の内周面には、周方向に間隔をあけて一対の係合凹部56a(一方の係合凹部56aのみ図示)が形成されている。一対の係合凹部56aは、互いに異なる幅で上下方向に延びるとともに、外筒部本体56の下端面に開口している。周壁部57aの外周面には、径方向の外側に向けて突出し、係合凹部56aに1つずつ位置する一対の係合リブ57c(一方の係合リブ57cのみ図示)が設けられている。係合リブ57cが係合凹部56aに周方向で係合することにより、リング体57は、外筒部本体56に相対回転不能に装着されている。一方の係合リブ57cは、他方の係合リブ57cよりも周方向に大きく形成され、一方の係合凹部56aのみに位置することが可能とされている。これにより、外筒部本体56に対してリング体57を位置決めできる。
【0027】
外筒部52の内周面52aには、案内筒73の外周面に向けて突出した被ガイド突起60が形成されている。被ガイド突起60は、装着キャップ7の後述するガイド溝81と同数(本実施形態では2つ)設けられ、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。被ガイド突起60は、外筒部52の下端部に設けられている。本実施形態では、被ガイド突起60は、リング体57の内周面に形成されている。
【0028】
付勢部材25は、一定の内径で螺旋状に延びている。付勢部材25は、容器軸Oと同軸に配設されている。付勢部材25は、装着筒部53を径方向の外側から囲っている。付勢部材25は、案内筒73より径方向の内側に設けられている。付勢部材25は、自然長の状態で配設されている。付勢部材25の上端部は、押下ヘッド5に下方から当接している。付勢部材25の下端部は、装着キャップ7の案内筒73の内フランジ74に上方から当接している。付勢部材25は、押下ヘッド5が上昇端位置から下降することで、押下ヘッド5を介してステム21を装着キャップ7に対して上方付勢する。なお、付勢部材25の上端部は、押下ヘッド5から離間していてもよい。また、付勢部材25の下端部は、装着キャップ7の内フランジ74から離間していてもよい。すなわち、押下ヘッド5が上昇端位置から下降して後述する待機位置に位置した状態で、付勢部材25が押下ヘッド5を装着キャップ7に対して上方付勢するように構成されていればよい。
【0029】
ここで、装着キャップ7の案内筒73の外周面73aに設けられたガイド構造75について詳述する。
図2に示すように、ガイド構造75は、容器軸O回りに回転する押下ヘッド5を上下方向に導く雄ねじ80と、押下ヘッド5の上下動を所定の回転範囲内で許容する作動凹部82と、を備える。本実施形態では、雄ねじ80は、2条の右ねじとなっている。雄ねじ80のねじ溝は、螺旋状に延在するガイド溝81となっている。本実施形態では、ガイド溝81は、雄ねじ80の条数に対応して、一対設けられている。各ガイド溝81は、雄ねじ80の形状に対応し、上方から見て容器軸O回りを時計回り方向に向かうに従い下方に延びている。以下、周方向のうち上方から見た場合の時計回り方向を巻方向と称する。各ガイド溝81は、容器軸Oを中心として180°延在している。各ガイド溝81の上端部81a(巻方向とは反対側の端部)には、被ガイド突起60が1つずつしている。ガイド溝81は、被ガイド突起60の下方移動を規制している。ガイド溝81の下端部81b(巻方向の端部)には、作動凹部82が連なっている。これにより、ガイド溝81は、作動凹部82から周方向に延在している。
【0030】
作動凹部82は、ガイド溝81と同数設けられている。作動凹部82には、ガイド溝81の下端部81bを通過した被ガイド突起60が位置する。作動凹部82は、ポンプ2の作動時に、進入した被ガイド突起60の上下動を許容するように上下方向に延びている。作動凹部82は、案内筒73の外周面73aから径方向の外側に突出した第1縦壁83および第2縦壁84によって周方向の両側から画成されている。第1縦壁83は、該第1縦壁83が画成する作動凹部82に連なるガイド溝81を下方から画成するねじ山80aの下端部から下方に延びている。第2縦壁84は、該第2縦壁84が画成する作動凹部82に連なるガイド溝81を上方から画成するねじ山80aの下端部から下方に延びている。第1縦壁83および第2縦壁84は、受け入れた被ガイド突起60の周方向の移動範囲を規定している。すなわち、第1縦壁83および第2縦壁84は、作動凹部82が被ガイド突起60を受け入れた状態で、押下ヘッド5の回転範囲を規定している。第1縦壁83および第2縦壁84それぞれの下端部は、装着キャップ7の天壁部71の上面に連なっている。これにより、作動凹部82は、該作動凹部82に連なるガイド溝81を上方から画成するねじ山80aと、装着キャップ7の天壁部71と、によって上下方向の両側から画成されている。作動凹部82の上縁は、周方向に延在している。作動凹部82の最上部は、ガイド溝81の下端部81bに連なっている。
【0031】
各ガイド溝81には、押下ヘッド5が上昇端位置にある状態で被ガイド突起60のガイド溝81に沿った移動を規制する規制部86と、被ガイド突起60が乗り越え可能な突部87と、が設けられている。規制部86は、各ガイド溝81の上端部81aに配置されている。規制部86は、ガイド溝81を横断するように上下方向に延びている。規制部86は、ガイド溝81を画成する上下両側のねじ山80aに連なっている。規制部86は、案内筒73の外周面73aを基準として、ねじ山80aと同じ高さに形成されている。規制部86には、被ガイド突起60が巻方向から接触または近接している。これにより、規制部86は、被ガイド突起60の作動凹部82とは反対側に向けた移動を規制している。突部87は、各ガイド溝81と、該ガイド溝81に連なる作動凹部82との接続部に設けられている。突部87は、ガイド溝81を横断するように上下方向に延びている。突部87は、ガイド溝81を画成する上下両側のねじ山80aに連なっている。突部87は、案内筒73の外周面73aを基準として、ねじ山80aよりも低く形成されている。なお、突部87は、ねじ山80aから独立して、ガイド溝81の底面から突出していてもよい。
【0032】
次に、上述した吐出器1の作用について説明する。
押下ヘッド5を上昇端位置から巻方向に回転させると、被ガイド突起60がガイド溝81に案内されることにより、押下ヘッド5が付勢部材25の上方付勢力に抗しつつ下降する。押下ヘッド5を継続して回転させると、被ガイド突起60がガイド溝81の下端部81bに到達し、突部87を乗り越えて作動凹部82に入り込む。これにより、
図3に示すように押下ヘッド5は、付勢部材25の上方付勢力に抗してステム21とともに押し下げることが可能となる待機位置に位置した状態となる。
【0033】
押下ヘッド5を待機位置から押し下げると、ステム21の台座部35がピストン22から下方に離間し、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、が連通する。この状態からさらに押下ヘッド5を継続して押し下げると、
図4に示すように、装着筒部53の下端開口縁がピストン22のフランジ39に当接することで、ピストン22も押下ヘッド5などとともに下方移動する。これにより、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分が加圧され、シリンダ23内の内容液が、台座部35とピストン22との間の上下方向の隙間、連通孔34、ステム21内、押下ヘッド5における装着筒部53内、およびノズル筒部54内をこの順に通過して、ノズル孔54aから吐出される。この際、下部弁体24の弁本体32が、シリンダ23の内面における下端開口の周縁部に着座した状態に保たれる。その後、
図5に示すように、押下ヘッド5の外筒部52の下端開口縁が装着キャップ7の天壁部71の上面に当接すると、押下ヘッド5の押し下げが規制されて内用液の吐出が完了する。
【0034】
押下ヘッド5の押し下げを解除すると、付勢部材25による上方付勢力により、押下ヘッド5がステム21とともに上方に復元移動する。この過程において、ステム21の台座部35が、ピストン22にピストン22の下方から当接することで、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、の連通が遮断され、その後継続して、ピストン22も押下ヘッド5などとともに上方に移動すると、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分が減圧され、下部弁体24における弁本体32が、連結片を弾性変形させつつ、シリンダ23の内面における下端開口の周縁部から上方に離間することで、シリンダ23の下端開口が開放され、容器体A内の内容液が、吸上筒28内を通してシリンダ23内に流入する。
以上により、吐出器1による1回の吐出動作が完了する。
【0035】
吐出動作が完了した状態で、押下ヘッド5を待機位置から巻方向とは反対側に回転させると、被ガイド突起60が突部87を乗り上げてガイド溝81に入り込む。押下ヘッド5を続けて回転させ、被ガイド突起60を規制部86に接触させることで、押下ヘッド5を上昇端位置に戻すことができる。これにより、吐出試験として吐出動作を行った場合に、押下ヘッド5を上昇端位置に戻すことができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の吐出器1によれば、付勢部材25が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器1の廃棄に際し、付勢部材25と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
押下ヘッド5が待機位置よりも上方の上昇端位置に位置する状態で、被ガイド突起60が周方向に延びるガイド溝81に位置しているので、装着キャップ7に対する押下ヘッド5の下方移動が規制されている。この状態から、被ガイド突起60がガイド溝81に沿って移動するように押下ヘッド5を回転させて下降させることで、付勢部材25が圧縮されるとともに、被ガイド突起60がガイド溝81に連なる作動凹部82に入り込む。これにより、押下ヘッド5が上昇端位置から待機位置まで下降し、被ガイド突起60の上下動が許容されるので、押下ヘッド5が付勢部材25によって上方付勢され、かつ押下可能となり、ポンプ2を作動させることができる。
ここで、ガイド溝81には、押下ヘッド5が上昇端位置に位置する状態で被ガイド突起60が位置するので、押下ヘッド5を待機位置に位置させた状態で付勢部材25を圧縮するとともに、押下ヘッド5を上昇端位置に位置させた状態で押下ヘッド5が待機位置に位置する状態よりも付勢部材25の圧縮量を小さくすることができる。これにより、押下ヘッド5が上昇端位置に位置する状態で、付勢部材25を自然長の状態にすることが可能となる。よって、付勢部材25が合成樹脂材料で形成されているので、付勢部材25に上下方向の圧縮力を長時間加えると、付勢部材25に圧縮変形の癖が付くおそれがあるが、押下ヘッド5を上昇端位置に位置させ、付勢部材25に上下方向の圧縮力を加えずに流通および保管等を行うことによって、この期間に付勢部材25に圧縮変形の癖が付くこと(塑性変形)がなく、吐出器1の使用に際して、付勢部材25が弾性変形しにくくなっているのを防ぐことができる。
また、ユーザーの使用時においても、押下ヘッド5を待機位置から上昇端位置に戻すことが可能であり、例えば吐出器1の使用後の保管時に押下ヘッド5を上昇端位置に戻す操作を行えば、付勢部材25にかかる負荷を低減し、長期にわたって付勢部材25による良好な付勢力を保つことができる。
【0037】
また、押下ヘッド5が上昇端位置に位置する状態と、押下ヘッド5が待機位置に位置する状態と、の2つの状態で押下ヘッド5の高さが異なる。すなわち、押下ヘッド5を押下可能な状態と押下不能な状態とを押下ヘッド5の高さの違いにより容易に識別できる。
【0038】
また、押下ヘッド5が上昇端位置に位置した状態では、被ガイド突起60がガイド溝81によって下方移動を規制されているので、押下ヘッド5の押下が規制される。このため、押下ヘッド5の押下を規制するためにストッパー等の別部材を設ける必要がなく、使用に際して廃棄する部品を削減できるとともに、使用後に押下が規制された状態に戻したい場合に、ストッパー等の別部材の紛失のおそれがない吐出器1とすることができる。
【0039】
また、ガイド溝81には、押下ヘッド5が上昇端位置にある状態で被ガイド突起60のガイド溝81に沿った移動を規制する規制部86が設けられている。このため、被ガイド突起60がガイド溝81を抜けて、被ガイド突起60とガイド溝81との係合が解除されることを抑制できる。これにより、装着キャップ7に対する押下ヘッド5の上方移動が規制された状態を維持でき、流通および保管の期間に押下ヘッド5が脱落することを抑制できる。
【0040】
また、ガイド溝81と作動凹部82との接続部には、被ガイド突起60が乗り越え可能な突部87が設けられている。これにより、押下ヘッド5を回転させて被ガイド突起60を作動凹部82とガイド溝81との間で双方向に移動させる際に、被ガイド突起60による突部87の乗り越えに要する抵抗を押下ヘッド5に付与することができる。したがって、待機位置に位置する押下ヘッド5が上昇端位置に向けて不意に移動することを抑制できる。
【0041】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、ガイド溝81および作動凹部82が装着キャップ7の案内筒の外周面に設けられ、被ガイド突起60が押下ヘッド5の外筒部52の内周面52aに設けられている。しかしながら、ガイド溝および作動凹部が押下ヘッドの外筒部の内周面に設けられ、被ガイド突起が装着キャップの案内筒の外周面に設けられていてもよい。
【0042】
また、被ガイド突起の個数、ガイド溝を形成する雄ねじの条数、およびガイド溝の延在角度は上記実施形態に限定されない。
【0043】
また、上記実施形態では、ガイド溝81が螺旋状に延在しているが、ガイド溝の形状はこれに限定されない。例えば、ガイド溝の一部が周方向に対して傾斜せずに延在していてもよい。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…吐出器 2…ポンプ 5…押下ヘッド 7…装着キャップ 21…ステム 25…付勢部材 52…外筒部 52a…内周面 53…装着筒部 54a…ノズル孔 60…被ガイド突起 73…案内筒 73a…外周面 81…ガイド溝 82…作動凹部 86…規制部 87…突部 A…容器体 A1…口部