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▶ テカン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】サンプルピペッターのための中空針
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020017585
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2020134520
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】19156762.7
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501442699
【氏名又は名称】テカン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TECAN Trading AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・ヴュルグラー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・キュンメルリ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・エルプ
(72)【発明者】
【氏名】パウル・タナセスク
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特許第4246152(JP,B2)
【文献】特開2014-066706(JP,A)
【文献】国際公開第2009/024522(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第19905644(DE,A1)
【文献】米国特許第04643196(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107702949(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/15 - 5/157
A61M 5/32 - 5/34
G01N 1/00 - 1/34
G01N 35/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル容器のクロージャを挿通するための中空針(1)であって、前記中空針(1)は縦軸(L)に沿って延在する円筒状の中空断面を備え、第1端には先端(2,20)を有し、前記中空針(1)は前記先端(2,20)を含む第1部分(10)を有し、前記中空針(1)は前記第1部分(10)より大きい直径を有する第2部分(11)を有し、
前記第1部分(10)と前記第2部分(11)との間の遷移部(3)が、前記第1部分(10)から前記第2部分(11)へと延在する少なくとも1つのカッティングエッジ(30)を備え、各カッティングエッジ(30)が隣接する2つの斜面(31,32)によって形成されていることを特徴とする、中空針(1)。
【請求項2】
前記遷移部(3)が、前記第1部分(10)から前記第2部分(11)へと延在する2つ以上のカッティングエッジ(30)を備える、請求項1に記載の中空針(1)。
【請求項3】
前記カッティングエッジ(30)が、前記遷移部(3)の円周に沿って均等に分布している、請求項1又は2に記載の中空針(1)。
【請求項4】
前記カッティングエッジ(30)が、前記縦軸(L)に対して実質的に垂直に延在する、又は前記カッティングエッジ(30)が、前記縦軸(L)に対して90°以下の角度で延在する、請求項1から3のいずれか1つに記載の中空針(1)。
【請求項5】
記2つの隣接する斜面(31,32)が前記縦軸(L)に対して等しい角度で延在する、又は前記2つの隣接する斜面(31,32)が前記縦軸(L)に対して異なる角度で延在する、請求項1から4のいずれか1つに記載の中空針(1)。
【請求項6】
前記先端(2)が、前記縦軸(L)に対して斜めに、実質的に横断面全体にわたって延在する第1表面(200)を備える、又は前記先端(20)が、前記縦軸(L)に対して実質的に横断面半分にわたって延在する第1表面(200)と第2表面(201)とを備える、請求項1から5のいずれか1つに記載の中空針(1)。
【請求項7】
前記カッティングエッジ(30)の前記斜面(31,32)が、前記縦軸(L)に沿って、前記先端(2,20)の前記表面(200,201)と位置合わせされている、請求項6に記載の中空針。
【請求項8】
前記カッティングエッジ(30)の第1斜面角度(310)が、前記先端(2)のエッジ角度(2050)、又は前記先端(20)の第2表面角度(2010)に実質的に一致し、前記カッティングエッジ(30)の第2斜面角度(320)が、前記先端(2,20)の第1表面角度(2000)に実質的に一致する、請求項7に記載の中空針。
【請求項9】
前記先端(2,20)が、前記第1表面(200)で提供されている開口(130)、又は前記第1表面に隣接して提供されている開口(130)を有する、請求項6に記載の中空針(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの凹部(4)が前記第2部分(11)で提供され、前記凹部(4)は前記縦軸(L)に沿って少なくとも前記第2部分(11)の領域にわたって実質的に延在する、請求項1から9のいずれか1つに記載の中空針(1)。
【請求項11】
2つ以上の凹部(4)が前記第2部分(11)で提供され、前記凹部(4)は前記第2部分(11)の円周に沿って均等に分布されている、請求項10に記載の中空針(1)。
【請求項12】
前記中空針(1)が、前記第2部分(11)の前記第1部分(10)と反対側で、前記第2部分に隣接する第3部分(12)を備える、請求項1から11のいずれか1つに記載の中空針(1)。
【請求項13】
前記第2部分(11)の前記直径から突出し、前記中空針(1)の前記第1端と反対の位置の第2端から離間して設けられている止め部(8)を、前記第3部分(12)が備える、請求項12に記載の中空針(1)。
【請求項14】
前記中空針(1)が内側管(5)と外側管(6)とを備え、前記内側管(5)が前記中空針(1)の長さ全体にわたって延在し、前記先端(2,20)が前記内側管(5)で形成され、前記外側管(6)が前記内側管(5)の周囲に沿って、少なくとも前記第2部分(11)の領域にわたって延在する、請求項1から13のいずれか1つに記載の中空針(1)。
【請求項15】
少なくとも1つのカッティングエッジ(30)が前記外側管(6)で形成されている、請求項14に記載の中空針(1)。
【請求項16】
前記中空針(1)が、前記外側管(6)に隣接して、前記内側管(5)の周囲に沿って前記中空針(1)の前記第1端と反対の位置の第2端へと延在する接続管(7)を備える、請求項14又は15に記載の中空針(1)。
【請求項17】
前記先端(2,20)が少なくとも1つのカッティングエッジ(203,204)を備え、前記遷移部(3)の少なくとも1つのカッティングエッジ(30)が、前記先端(2,20)の少なくとも1つのカッティングエッジ(203,204)と位置合わせされている、請求項1から16のいずれか1つに記載の中空針(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験室の自動操作用装置におけるサンプルピペッターのための、特に密封されたサンプル容器からサンプル液を採取するための中空針に関し、サンプル液を採取するため、サンプル容器の封が中空針によって挿通される。サンプル液がキャップ付きのサンプル容器へ分配されることも可能で、サンプル液を分配する前に、中空針がキャップを挿通する。例えば、実験室の自動操作用装置は、クロマトグラフィー又は分光計のためのピペッティングロボット又はオートサンプラーであり得る。分析物、分析物の溶液、若しくは生体体液を含む容器、又は試薬を含む容器として、サンプル容器は定義され得る。クロージャ(closure)は、一体型のプラスチック若しくはゴムの膜、又はプラスチック若しくはゴムのストッパーを有するクロージャであると理解され得る。
【背景技術】
【0002】
中空針は先行技術から既知であり、サンプル容器のクロージャを挿通するために、第1部分と第2部分とを含む円筒状の中空断面を備える。第1部分は中空針の先端を含み、第2部分は第1部分より大きい直径を有する。円錐状の領域が、第1部分を第2部分に接続する。中空針の先端は、第1部分の幅にわたってクロージャが切られるのに用いられるカッティングエッジを含む。
【0003】
より大きな直径を有する第2部分がクロージャに押し刺されることになるや否や、必要な挿通力が増加するという欠点を、先行技術の中空針は有する。引き抜く際、クロージャに貫通している中空針に作用する型締力が大きくなり得るので、クロージャがサンプル容器から引き離される、又はサンプル容器と共にクロージャがサンプルホルダーから引き抜かれる。増加した穿刺力は、実験室の自動操作用装置の機構にも負担を掛け、早期の磨耗及び割れという結果をもたらす。クロージャを挿通する際、クロージャは単に挿通されるだけであることと、クロージャの素材が打ち抜かれることがないこととが保証もされなくてはならない。打ち抜かれた素材が針を詰まらせ得る、又はサンプルを汚染し得るため、この両方は是が非でも避けられるべきである。
【発明の概要】
【0004】
クロージャを挿通又は貫通する際に型締力が可能な限り小さい中空針を提供することが、本発明の目的である。
【0005】
この目的は請求項1の特徴を有する中空針によって解決される。中空針の他の実施形態はその他の請求項の特徴によって定義される。
【0006】
本発明に係るサンプル容器のクロージャを挿通するための中空針は、縦軸に沿って延在し、第1端に先端を有する円筒状の中空断面を備える。中空針は、先端を含む第1部分と、直径が第1部分より大きい第2部分とを有する。第1部分と第2部分との間の遷移部(transition)は、第1部分から第2部分へと延在する少なくとも1つのカッティングエッジを備える。クロージャが挿通された際、クロージャはカッティングエッジによってさらに切り開かれ、このことによって横から中空針に作用する型締力が減らされることを、カッティングエッジは目的にする。
【0007】
一実施形態では、遷移部は、第1部分から第2部分へと延在する2つ以上のカッティングエッジを備える。
【0008】
一実施形態では、カッティングエッジは、遷移部の円周に沿って均等に分布されている。例えば、2つのカッティングエッジが円周上に互いに対向して提供され得る、又は3つのカッティングエッジが縦軸を中心として120°の角度で互いにオフセットされて提供され得る。原理的には、任意の数のカッティングエッジが、遷移部の円周に沿って互いに任意の角度で配置され得る。
【0009】
一実施形態では、カッティングエッジは縦軸に対して実質的に垂直に延在する、又はカッティングエッジは縦軸に対して90°以下の角度で延在する。縦軸に対して垂直に位置合わせされたカッティングエッジは、生産するのが容易であり、縦軸に対して斜めであるカッティングエッジにより、中空針の第1部分と第2部分との間の遷移部がクロージャに差し込まれる際に、切断長が連続的に増加する。
【0010】
一実施形態では、各カッティングエッジが、2つの隣接する斜面によって形成され、2つの隣接する斜面は縦軸に対して同じ角度で延在する、又は2つの隣接する斜面は縦軸に対して異なる角度で延在する。例えば、第1斜面は第1角度で延在し、第2斜面は第2角度で延在する。
【0011】
2つの斜面角度は、先端の表面角度に一致し得る。非対称に角度を調整された表面を有する先端については、先端の第1表面が第1表面角度で位置合わせされている。第1表面に対向する先端の表面が、又は第1表面に対向する2つの隣接した先端の表面から生じる交差エッジが、表面角度より小さいエッジ角度で配置されている。従って、縦軸方向に先端の第1表面に位置合わせされた第1斜面角度は、先端の第2表面又はエッジに位置合わせされた第2斜面角度よりも小さい。例えば、先端の第1表面角度が15°で対向するエッジ角度が4°であれば、第1斜面角度が4°で第2斜面角度が15°となり得る。従って、針の先端がクロージャに差し込まれた際、針は第1側に押される。遷移部がクロージャに差し込まれた際、針は第1側と反対側に押される。従って、針に掛かる非対称の荷重が相殺され、結果として針の歪みがほとんど又は全く生じない。対称な針の先端では、カッティングエッジの斜面も対称に形成される。
【0012】
一実施形態では、実質的に横断面全体にわたって、縦軸に対して斜めに延在する第1表面を先端は備える。このデザインは製造が容易であるが、中空針の先端がサンプル容器のクロージャに差し込まれた際、第1表面側において、より大きい径方向力が中空針の先端に作用する。あるいは、実質的に横断面半分にわたって、縦軸に対して斜めに延在する第1表面と第2表面とを先端は備える。中空針の縦方向の重心軸に関して、先端の対称デザインのため、クロージャへ差し込む間に中空針の先端に作用する径方向力は、縦方向の重心軸に関して対称である。
【0013】
一実施形態では、カッティングエッジの斜面は、縦軸に沿って先端の表面に位置合わせされている。
【0014】
一実施形態では、カッティングエッジの第1斜面角度は、先端のエッジ角度、又は先端の第2表面角度に実質的に一致し、カッティングエッジの第2斜面角度は、先端の第1表面角度に実質的に一致する。
【0015】
一実施形態では、先端は第1表面で提供されている開口を有する、又は先端は第1表面に隣接して提供されている開口を有する。
【0016】
一実施形態では、縦軸に沿って少なくとも第2部分の一部にわたって実質的に延在する少なくとも1つの凹部を第2部分は有する。少なくとも1つの凹部は、中空針がクロージャへ押し刺された場合にクロージャへの通路チャネルを制限し、中空針への液体の吸引又は中空針からの液体の放出の間に圧を均等化するために、サンプル容器の内側が環境へ接続されることを許す。
【0017】
一実施形態では、2つ以上の凹部が第2部分で提供されており、第2部分の円周に沿って均等に分布している。例えば、2,3,4,5,6以上の凹部が、円周に沿って均等に分布し得る。任意の数の凹部が不均等に配置されることも可能である。
【0018】
一実施形態では、中空針は、第2部分における第1部分と反対側に、第2部分と隣接する第3部分を備える。第3部分は第2部分より大きな直径を有していてよい。しかし、直径は同じであってもよい。第2部分と第3部分との間の遷移部は、ステップ形状又は連続的であり得る。
【0019】
一実施形態では、第2部分の直径を超えて延在し、中空針の第1端の反対に位置する第2端から離間して設けられる止め部を、第3部分は含む。第3部分は第2端で形成される円錐体をさらに含めてよい。
【0020】
一実施形態では、中空針は内側管(inner tube)と外側管(outer tube)とを備える。内側管は中空針の長さ全体にわたって延在し、先端は内側管に形成されている。外側管は、内側管の周りを少なくとも第2部分の部分にわたって延在する。外側管が内側管上に押入され得ることになるように、外側管の内寸は内側管の外寸と一致している。例えば、レーザー溶接、ティグ溶接、又はろう付などの任意の接合方法を用いて、外側管は内側管に堅固に接続され得る。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つのカッティングエッジが外側管に形成されている。カッティングエッジは、外側管が内側管上に押入される前に作られてよく、このことによってカッティングエッジを製作することがより容易になる。
【0022】
一実施形態では、中空針は、内側管の周囲に外側管から中空針の第2端へと延びる接続管(connecting tube)を備える。接続管が内側管上に押入され得るように、接続管の内寸は内側管の外寸に一致している。例えば、レーザー溶接、ティグ溶接、又はろう付などの任意の接合方法によって、接続管は、内側管に恒久的に接続され得る。
【0023】
一実施形態では、中空針の第2端で形成される円錐体は、接続管に形成される。
【0024】
一実施形態では、中空針は、内側管の周囲を第3部分のエリアにわたって延在するスリーブ形状の止め部を含む。止め部が接続管上に押入され得るように、止め部の内部寸法は接続管の外部寸法と一致している。例えば、レーザー溶接、ティグ溶接、又はろう付などの任意の接合方法によって、止め部は、接続管に恒久的に接続され得る。
【0025】
一実施形態では、内側管、外側管、及び接続管は第1素材を備え、止め部は第2素材を備える。あるいは、これらの要素全てが、同じ又は異なる素材を備えてよい。例えば、両方の素材がCrNi鋼である。例えば、第1素材がX2CrNiMo17-12-2であり、第2素材がX8CrNiS18-9である。
【0026】
例えば、内側管は0.5mmの内径、0.8mmの外径、及び155mmの長さを有する。例えば、内径は0.3mmから0.7mmの範囲であってよく、外径は0.6mmから0.8mmの範囲であってよい。例えば、外側管は0.8mmの内径、1.6mmの外径、及び111mmの長さを有する。例えば、内径は0.6mmから0.8mmの範囲であってよく、外径は1.4から2.0mmの範囲であってよい。例えば、接続管は0.8mmの内径、2mmの外径、及び34mmの長さを有する。例えば、止め部は2mmの内径、4mmの外径、及び4mmの長さを有する。例えば、遷移部のカッティングエッジの第1斜面は、縦軸に関して15°の角度で位置合わせされ、第2斜面は4°の角度で位置合わせされている。例えば、外側管の凹部の長さは83mmであり、幅と深さは0.3mmである。例えば、非対称の第1実施形態の先端については、先端の第1表面が縦軸に関して位置合わせされた表面角度は15°であり、第1表面に対向する第3エッジのエッジ角度は4°である。例えば、表面角度は10°から20°であってよく、エッジ角度は2°から6°であってよい。例えば、対称の第2実施形態の先端については、第1表面及び第2表面の表面角度は15°である。例えば、表面角度は10°から20°であってよい。
【0027】
一実施形態では、先端は、少なくとも1つのカッティングエッジを備え、遷移部の少なくとも1つのカッティングエッジは、先端の少なくとも1つのカッティングエッジと位置合わせされている。仮に先端が2つ以上のカッティングエッジを有するなら、遷移部は同数のカッティングエッジを有し、遷移部の各カッティングエッジは、先端の対応するカッティングエッジと位置合わせされている。ここで、位置合わせされているとは縦軸に沿ってそれぞれと位置合わせされているということを意味する。
【0028】
中空針の前述の実施形態は、それぞれが矛盾しない限り、任意の組み合わせで用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施例が以下の図を用いてより詳細に説明される。これらは単に説明的な目的のためであり、限定的に解釈されるべきではない。
図1】本発明に係る中空針の側面を示す図。
図2図1の中空針の断面図。
図3A図1のV部の詳細図。
図3B図2のX部の詳細図。
図3C図3Aの背面図。
図4図2のY部の詳細図。
図5図2の線B-Bでの断面図。
図6A図3CのW部の詳細図。
図6B図3Bの先端の詳細図。
図6C図6Aの背面図。
図7A】先行技術に係る中空針の断面図。
図7B】本発明に係る中空針の断面図。
図8A】代案の中空針の先端の詳細図。
図8B図8Aの中空針の先端の断面図。
図8C図8Aの背面図。
図9A】先行技術に係る中空針の断面図。
図9B】本発明に係る中空針の断面図。
図10】本発明に係る中空針をサンプルピペッターに挿入するためのステップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明に係る中空針の側面図であり、図2図1の中空針の断面図である。中空針1は縦軸Lに沿って延在する円筒状の中空断面を備え、第1端に先端2が設けられている。中空断面は円形、楕円形、又はn角形の横断面を有することができ、ここでnは3以上である。n角形の横断面は正多角形、又は不規則な多角形であってよい。中空針1は、先端2を含む第1部分10を有する。中空針1は第2部分11も含み、第2部分11は第1部分10よりも大きな直径を有する。第1部分10と第2部分11との間の遷移部3は、第1部分10から第2部分11へと延在している少なくとも1つのカッティングエッジ30を備える。示されている実施形態では、中空針1は、第2部分11に隣接し、中空針の第1端と反対に第2端へと延在する第3部分12をさらに備える。第1部分10の長さは、第1部分10の直径の数倍であり、第2部分11の長さは、第2部分11の直径の数倍、及び第1部分10の長さの数倍である。第3部分12の長さは第1部分10の長さの数倍であり、第2部分11の長さの数分の1である。第2部分11の中央エリアには、いくつかの凹部4が円周に沿って均等に分布されている。
【0031】
先端2に向いた凹部4の端部は、カッティングエッジ30から離間して設けられ、先端2から離れる方に向いた凹部4の端部は、第3部分12から離間して設けられる。第3部分12は、第2部分11よりもわずかに大きな直径を有する。第3部分12は、第2部分11から中空針1の第2端へと延在する接続管7を備える。第3部分12では、円錐体70が中空針1の第2端で形成されている。第3部分12は止め部8を含み、止め部8の直径は接続管7の直径よりも大きく、止め部8の幅は止め部8の長さと本質的に等しい。止め部8と中空針1の第2端との距離は、止め部8の長さの数倍である。中空針1は、第1端、つまり先端2から第2端、つまり円錐体70へと延在する内側管5を備える。先端2は内側管5の第1端を囲む。中空針1は、第2エリア11で内側管5の周りに隣接して延在する外側管6をさらに備える。凹部4は外側管6に形成される。中空針1は、第3エリア12で内側管5の周りに隣接して延在する接続管7をさらに備える。止め部8はスリーブとしてデザインされ、接続管7の周りに延在し、接続管7に対して配置されている。内側管5、外側管6、接続管7、及び止め部8は、レーザー溶接によって互いに堅固に接続されている。
【0032】
図3A図1のV部の詳細図を示し、図3B図2のX部の詳細図を示し、図3C図3Aの背面図を示す。これらの図は、第1部分10と、凹部4の一部を含む第2部分11の一部とを示す。カッティングエッジ30と第1斜面31とは、遷移部3に見える。カッティングエッジ30は、中空針の縦軸Lに対して本質的に垂直に延在する。第1斜面31は、内側管5に外側管6を組み付ける前に、外側管6を斜めに研削することで作製される。内側管5の内側では、中空の通液路13が内側管5の長さ全体にわたって延在している。第1斜面31は、第1角度310でカッティングエッジ30から斜めに中空針1の第2端方向に延在している。第2斜面32は、第2角度320でカッティングエッジ30から斜めに中空針1の第2端方向に延在している。本説明では、第1角度310は第2角度320の数倍である。遷移部3に向いた凹部4の端部は、中空針1の第2端に向いた第1及び第2斜面31,32の端から離間して設けられる。
【0033】
図4図2のY部の詳細図を示す。中空の通液路13を含む内側管5は縦軸Lに沿って延在する。外側管6は、第2部分11で内側管5を囲み、接続管7は、第3部分12で内側管5を囲む。接続管7は、外側管6と面一である。止め部8は接続管7のエリアを囲む。止め部8の肉厚は接続管7の肉厚より厚い。
【0034】
図5図2のB-B線に沿った断面図であり、中空針1の第2エリア11での凹部4のエリアの断面図を示す。6つの凹部4が、外側管6の円周に沿って均等に分布されている。凹部4の深さは、外側管6の肉厚の半分よりも大きく、外側管6の肉厚は内側管5の肉厚の数倍である。
【0035】
図6A図3CのW部の詳細図を示し、図6B図3Bの先端の詳細図を示し、図6C図6Aの背面図を示す。中空針1の先端2は、縦軸Lに対して表面角度2000で延在する第1表面200を備える。第1表面200は内側管5を研削することで、作成され得る。
【0036】
縦軸Lに対して第1表面200の反対側で、第2表面201と第3表面202とが提供され、第2表面201は第1表面200と第3表面202とに対してある角度をなして配置されている。第1エッジ203は、第1表面200と第2表面201との交差線によって形成され、第2エッジ204は第1表面200と第3表面202との交差線によって形成され、第3エッジ205は第2表面201と第3表面203との交差線によって形成されている。第3エッジ205は縦軸に対してエッジ角度2050で延在する。先端2がクロージャに差し込まれた際、第1径方向力が第1表面200側から中空針1に作用する。第2表面201、第3表面202、並びに第3エッジ205のデザインは、第1力方向と反対方向に第2径方向力を生む。従って、中空針1の先端2は側面に向けてほとんど押されず、中空針がより中心軸に沿った姿勢で試料容器に差し込まれることを可能にする。中空の通液路13は内側管5全体にわたって延在し、第1表面200によって囲まれている開口130に通じる。
【0037】
図7Aは先行技術に係る中空針の断面図9を示し、断面図9図6Aから6Cに示されている先端がクロージャに押し刺される際に生じる。第1カッティングエッジ203によって、第1部分90がクロージャに切り込まれ、第2カッティングエッジ204によって、第2部分91がクロージャに切り込まれる。第1及び第2部分90,91の外端は、第1部分10と内側管5の直径に対応する直径にそれぞれ位置する。仮に第2部分11、すなわち外側管6がクロージャに押し刺されることになれば、部分90,91は広げられなくてはならず、中空針に作用する径方向の型締力を生み出す。増加した径方向力は、中空針をクロージャに押し刺す、又は中空針をクロージャから引き抜くのに必要な力も増加させる。
【0038】
図7Bは本発明に係る中空針の断面図を示し、図6Aから6Cに係る先端がまずクロージャに押し刺され、次いで図3Aに示されている、円周上で相対する2つのカッティングエッジ30を含む遷移部3がクロージャに押し刺される際に、断面図は生じる。先端2が再び第1部分90と第2部分91を生み出す。遷移部3がクロージャに押し刺される際に、カッティングエッジ30が第1部分90に隣接する第3部分92と、第2部分91に隣接する第4部分92とを生み出す。第3及び第4部分92,93の外端は、第2部分11、すなわち外側管6の直径に対応する直径上にそれぞれ位置する。遷移部3がクロージャに押し刺される際に、遷移部3のカッティングエッジ30は切断力を生じさせるが、仮にカッティングエッジ30が無ければ、切断力はクロージャを広げるのに必要な力を下回る。全ての部分90,91,92,93が合わせて第2部分の直径にわたって本質的に延在するので、クロージャを広げるのに必要な力はより小さい。
【0039】
図8Aは代替の中空針の先端20の詳細図を示し、図8B図8Aの中空針の先端20の断面図を示し、図8C図8Aの背面図を示す。この実施形態では、第1部分10、すなわち内側管5は圧縮され、次いで縦軸Lに対して対称に2つの側面から研削切断される。このことは第1表面200と第2表面201とをもたらす。第1表面200は縦軸Lに対して第1表面角度2000で方向付けられ、第2表面201は第2表面角度2010で方向付けられている。第1表面200と第2表面201との交差線は第1エッジ203をもたらす。あるいは、2つの第1表面200と2つの第2表面201とが先端20へと研削される可能性があり、2つの第1表面200は互いに対して斜めに方向付けられ、2つの第2表面201は互いに対して斜めに方向付けられている。このことは、互いに対して斜めに方向付けられている2つの第1エッジ203を生み出す。第1及び第2表面の対称の配置と方向付けは、第1エッジの対称の配置と方向付けをもたらす。示されている先端20では、中空の通液路13は開口130へ通じ、第1表面200に隣接して位置する。
【0040】
図9Aは先行技術に係る中空針の断面図を示す。図8Aから8Cに示される先端20は、中央の第5部分94のみを切って、クロージャ内に進む。第5部分94は第1部分10、すなわち内側管5の直径にわたって本質的に延在する。内側管5を圧縮することで、先端20が内側管5の端で広くなり、第1カッティングエッジ203が内側管5の直径を超えて突き出ることになる。
【0041】
図9Bは本発明に係る中空針の断面図を示す。遷移部3のカッティングエッジ30によって、第3部分92と第4部分93がクロージャに切り込まれ、第3及び第4部分92,93は中央の第5部分94に対し横に隣接し一直線になる。
【0042】
図10は、本発明に係る中空針1をサンプルピペッター100に差し込むためのステップを示す。サンプルピペッター100は、チューブ103がスライド可能に取り付けられている接続スリーブ102を含むホルダー101と、中空針がホルダー101に接続され得るのに用いられるユニオンナット104とを備える。ピペッティングのために、正又は負の圧が、チューブ103で生じさせられ得る。ホルダー101は水平及び垂直に動かされ得る。中空針1の接続管7は円錐体70と共にチューブ103に差し込まれる。チューブ103は中空針1と共に、止め部8に至るまで接続スリーブ102に押し込まれる。ユニオンナット104は、先端2から中空針1を軸として止め部8に至るまで押し込まれ、ユニオンナット104は接続スリーブ102に堅く締結される。
【符号の説明】
【0043】
1 中空針
10 第1部分
11 第2部分
12 第3部分
13 中空の通液路
130 開口
2 先端
20 先端
200 第1表面
2000 第1表面角度
201 第2表面
2010 第2表面角度
202 第3表面
203 第1エッジ
204 第2エッジ
205 第3エッジ
2050 エッジ角度
3 遷移部
30 カッティングエッジ
31 第1斜面
310 第1角度
32 第2斜面
320 第2角度
4 凹部
5 内側管
6 外側管
7 接続管
70 円錐体
8 止め部
9 断面図
90 第1部分
91 第2部分
92 第3部分
93 第4部分
94 第5部分
100 ピペッター
101 ホルダー
102 連結部
103 チューブ
104 ユニオンナット
L 縦軸
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10